資料1 ICTを活用した教育の本格的普及について(案)

(1) 目的

○ 法科大学院では、これまでいくつかの大学において、ICTを活用した遠隔授業(以下、「遠隔授業」)が実施されてきたところ、地方に立地する法科大学院の募集停止や、継続教育へのニーズ等も相まって、今日、その機運が更に高まりつつある。

○ しかしながら、各法科大学院では、専門職大学院設置基準や法科大学院認証評価等への適合性を考慮するあまり、遠隔 授業等の実施に二の足を踏むとの指摘がある。

○ そこで、

1 法科大学院が立地しない地域に居住する法曹志望者や、時間的制約の多い有職社会人が、地方大学や自宅・職場等において、直接の対面授業に近い形で法科大学院の講義を受講することで、法曹資格取得のための途を確保することが可能となること、

2 遠隔地に立地する法科大学院との地理的・時間的制約を乗り越えた連携が促進されることで、複数の法科大学院がそれぞれの強みを活かし合いながら、教育の質を向上することができるようになること、

3 現職の法曹や、企業の法務部や役所などで法律実務を扱う社会人が、科目等履修制度等の活用により法科大学院の講義を受講することで、キャリアアップに活かすことができるようになること、

を目的として、法科大学院において遠隔授業を実施する場合の要件(設置基準上の考え方)を明確化することで、法科大学院における遠隔授業の普及促進を図ることとする。


(2)メディアを活用した授業に関する法令解釈

○ 法科大学院教育の質の確保と遠隔授業の普及を両立させる観点から、遠隔授業を実施する際の法令上の要件のうち、以下の3点を明確化することとしてはどうか。

<専門職大学院設置基準>

1 教育効果要件の適合性について

●ゼミ形式の授業や実務基礎科目の一部(弁護実務、ローヤリング、模擬裁判、クリニック等)について、教育効果要件に適合するための配慮事項を明確化してはどうか。

【現状】

○ 専門職大学院設置基準第8条第2項では、「十分な教育効果が得られる専攻分野に関して、当該効果が認められる授業(以下、「教育効果要件」)」について、メディア授業の実施が可能とされている。

○ 設置基準制定時(平成15年)の施行通知では、「現地調査やインターンシップ等の実習等が主体となる授業について、メディアによる授業を行うことは通常想定されない」と記載されているのみで、他の条件については判然としない。

【検討事項】

○ 法科大学院では、講義形式による一斉授業を中心に遠隔授業が実施されているところ、特に、ゼミ形式の授業や実務基礎科目の一部(弁護実務、ローヤリング、模擬裁判、クリニック等)について、直接の対面授業と遠隔授業の組み合わせ(ブレンディッド形態)の活用など、教育効果要件への適合にあたって配慮すべき事項はどのようなものか。

<メディア告示>

2 遠隔授業の実施形態について

●タブレット端末等を用いて授業に参加する形態について、告示上の考え方を明確化してはどうか。

●オンデマンド形式による授業の実施については、大学教育全体の中での状況を参考にしつつ、その在り方について引き続き検討してはどうか。

【現状】

○ メディア告示では、遠隔授業等の実施形態として、

・同時かつ双方向に行われるもので、授業を行う場所以外の教室、研究室又はこれらに準ずる場所において履修させるもの
・ (同時かつ双方向を要件としないが、)指導補助者が教室等以外の場所で学生等と対面するか、又は授業の終了後すみやかにインターネット等の方法により十分な指導を併せ行い、かつ、当該授業に関する学生等の意見交換の機会が確保されているものの2の形態が規定されているが、タブレット端末等を用いて授業に参加する形態については告示制定時には想定されていなかったものと考えられる。

【検討事項】

○ タブレット端末等を活用した授業形態については、教室等の場所で履修することは想定されないため、現状では2号要件への適合が求められているところ、特に学生同士が切磋琢磨する環境の確保など、教育効果の観点からサテライト形態と同様に取扱うことが望ましいものとなるための配慮事項とはどのようなものか。

○ ビデオ・オン・デマンド・システムなど同時・双方向配信以外のシステムを活用した形態については、法科大学院では現在まで正規の授業として採用された事例がなく、教育の質の確保の観点からの課題も多いと考えられる。そのため、大学教育全体の中での状況を参考にしつつ、引き続きその在り方を検討することとしてはどうか。

3 面接授業に相当する教育効果について
●授業科目や実施形態にかかわらず、直接の対面授業に相当する教育効果を創出するための配慮事項を明確化してはどうか。
●遠隔授業を主体として学位を取得するにあたっての配慮事項を明確化してはどうか。

【現状】

○ メディア告示で要件とされている「面接授業に相当する教育効果」について、制定時(平成10年)の通知では、配慮事項として、
・ 教員と学生の映像・音声等によるやり取り
・ 学生の教員に対する質問の機会の確保
・ 板書等に不都合回避のためのプリント配付等の工夫
・ 受信側の教室に、システム管理のための補助員を配置/必要に応じTAを配置することも有効
・ 受講者が過度に多くならないようにすること

が記載されている。

【検討事項】

○ 上記通知は一般の大学に対して発出されたものであるところ、法科大学院において遠隔授業を実施する観点から、

他に配慮すべき事項はあるか。

○ 遠隔授業を主体として「法務博士(専門職)」を取得するにあたり、授業単位での配慮事項のほか、
・ 遠隔授業により取得可能な単位数の上限
・ LMS(ラーニング・マネジメント・システム)等の活用による授業時間外における指導等

について、実施する法科大学院に対して何らかの配慮を求める必要があるか。


(3)その他

○ 遠隔授業の円滑な実施に最低限必要とされるシステム環境や、教職員のスキル向上(FD・SD)についても今後検討が必要ではないか。

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高等教育局専門教育課専門職大学院室

(高等教育局専門教育課専門職大学院室)