資料2 私立大学等の振興に関する検討会議「これまでの議論のポイント」(案)

(1)私立大学がこれまで果たしてきた役割

○ 我が国の私立大学は,多様性に富んだ優れた人材の育成や,多様な知的価値の創造等を通して,我が国のあらゆる面での発展に大きく貢献。

○ 学生のうち私立大学の学生は約8割。特に学部教育を中心に我が国の高等教育の拡大に貢献し,社会の発展と安定に不可欠な極めて厚い中間層の形成にも寄与。

○ 地方に所在する私立大学は,地域で活躍する人材育成の拠点,生涯学習の拠点,地域からのイノベーションの中心等,地域の知的基盤として大きな役割。

○ 私立短期大学は,短期の高等教育の機会を提供する重要な役割を果たし,女性の社会進出,地域の発展と教育の機会均等に大きく貢献。

 

(2)私立大学を取り巻く状況の変化と課題

○ グローバル化・ボーダレス化,知的基盤社会の急速な発達(ビッグデータ・IoT,第4次産業革命),それに伴う産業構造や社会の変化が進展。

○ こうした社会では,学んだ知識・技能を実践・応用する力,さらには自ら問題の発見・解決に取り組み,社会に新たな価値を創造する力の育成が不可欠。

○ 知的基盤社会で人材育成の重要性が増す中で,社会の変化にいち早く対応し,建学の精神に基づき多様な人材を輩出する私立大学の役割はさらに重要に。

○ 少子化の影響等により,地方の中小規模の大学で帰属収支差額がマイナスの大学は4割超で,平成33年頃から再び大きく減少する18歳人口への対応が急務。

○ 厳しい環境に備え,地域・社会の信頼と支援を得るとともに,未来へ向かう改革を進めるため,学校法人のガバナンスの強化,情報公開の推進が必要。

○ これらの取組は私立大学の大きな課題であると同時に,今後の私立大学の一層の振興,我が国の高等教育のさらなる発展につながる契機ともなり得るもの。

 

(3)今後の私立大学振興の方向性について

○ 私立大学は,国公立大学とともに公教育としての高等教育の重要な一翼を担い,高い公共性を有し,社会的責任を負い,今後も我が国の高等教育で重要な役割。

○ 各私立大学は,激しく変動する社会のニーズに的確に対応し,教育・研究の質の向上を図っていくことが求められる。このため,私学の強みである経営のダイナミクスを活かし,ガバナンスを強化し,様々な分野において未来を切り開く取組に果敢に挑戦することが必要。

○ また,短期大学を含め私立大学は,地域における高等教育機会の確保等に引き続き大きな役割を果たすことが重要。

○ こうした取組の推進には,社会からの一層の支援が不可欠であり,支援の充実とともに,支援を受けるにふさわしい運営の適正と透明性を確保することが重要。

 

1・私立大学等のガバナンスの在り方について

○ 高い公共性を有する学校の運営主体としての社会的責任を十分に果たせるよう,他の公益的な法人と同等以上の運営の適正と透明性を確保し,社会から信頼され支援される,これまで以上に公益性を備えた存在であり続けることが必要。

○ 平成16年の私立学校法の改正では,理事会の設置等,理事・監事・評議員会の権限・役割分担を明確にするなど,学校法人の管理運営制度について改善。

○ 学校法人制度の根幹である理事会・評議員会・監事制度については,まずは本来期待されている役割が十分に果たされるよう,機能の活性化を図ることが必要。

○ その上で,他法人制度に係る改革の状況や考え方も参考としつつ,各機能の強化や情報公開の推進により,透明性あるガバナンスが担保されるよう改善を図る。

 

(理事・理事会,評議員・評議員会)

     ・  理事会機能の実質化・実効性を確保する(理事会における議決事項の明確化,理事会への業務執行者の報告事項の明確化,適時・適切な実効性ある理事会の開催,学内理事及び外部理事の役割の明確化,研修の強化等)

・ 評議員会機能の実質化及びチェック機能を充実する(評議員会の本来的な機能である大学運営への幅広い意見の反映と理事会の意思決定に対するチェック機能の実効性担保・形骸化防止,中長期的計画に関しての意見聴取,監事の選任や理事・監事の報酬基準の策定プロセスへの評議員会の関与の深化等)

・ 理事の善管注意義務や法人・第三者に対する損害賠償責任を明確化する

(評議員もその権限に応じて明確化)

 

(監事・会計監査人)

・  牽制機能の実効性を確保する(監事監査基準・同規則等の作成,重点監査項目等を盛り込んだ具体的な監査計画の作成,充実した監査報告書の作成,監事の業務の支援体制の充実,違法行為差止請求権の付与,職務対象の明確化,職責に応じた適切な報酬の支給等)

・ 監事の善管注意義務や法人・第三者に対する損害賠償責任を明確化する

・  会計監査人による監査について,私立学校振興助成法から私立学校法へ根拠を変更する(学校法人会計基準についても同旨)

 

(情報公開等)

・ 社会への説明責任を果たし,健全なガバナンスに資するよう,分かりやすく開かれた情報の公開を推進することが必要。

・ 在学する学生と保護者,高校等の関係者等に対して,正確で十分な情報の提供を行うとともに,広く一般国民に対しても必要な情報を提供することが必要。

・ 国公私共通の仕組みである大学ポートレートや学校教育法に基づく情報公開等と併せて総合的に学校法人の公益性の確保を図っていくことが必要。

・  私学団体や文部科学省等が協力し,望ましいガバナンスの在り方のガイドラインや留意すべき点等を示して,各法人の自主的な取組を促進すべき。

 

2・私立大学等への経営力の強化について

○ 各私立大学の持つ強みや特色をより伸ばす方向で選択と集中を行い,教育研究の質の向上を図り,有望分野への展開を進めるなど,社会の変化に柔軟に対応した取組が重要であり,以下の点を踏まえ,各大学の取組の一層の強化と,それを支える支援の充実が必要。

(中長期的なビジョンの策定と実現に必要な取組について)

○ 困難な時代でも安定した経営を行うためには,強み・弱みを踏まえ,中長期的な学内外の環境の変化の予測に基づく,適切な将来ビジョンの検討・策定が必要。

○ ビジョンの実現には,経営陣と教職員がビジョンを共有し,教職員からも改革の実現に向け積極的な提案を受けるなど,法人全体の取組とすることが重要。

 

(大学間連携等の促進について)

○ 限られた資源の中で相互に強み・弱みを補いながら,最大限,求められる役割を果たすためには,大学コンソーシアム等の大学間連携の一層の推進が必要。

○ 各私立大学の特色化・資源集中を本格的に促していくため,施設設備・調達等の共同化や教育研究資源の有効活用による連携など,さらに進んだ連携を促進。

○ 特に地方の大学では,地元自治体や産業界等と大学がプラットフォームを形成し,地域と大学が密接に連携する取組を支援し,地域に大学が貢献すると同時に,地域からも支援を得るなど,幅広い連携を進めていくことが重要。

○ 各法人が一定の独立性を保ちつつ規模のメリットを活かす「ホールディングカンパニー形式」や,国公私の設置者の枠を超えた連携・協力,事業譲渡的な承継など,建学の精神が継承される,多様な連携・統合の方策の検討が必要。

 

(文部科学省・日本私立学校振興・共済事業団等の支援の充実について)

○ 各大学の強み・弱みを把握する取組やそれに基づくビジョンの策定に関して,日本私立学校振興・共済事業団(以下「私学事業団」という)や文部科学省などは,十分なアドバイスを行う体制の充実が求められる。

 

3・経営困難な状況への対応

○  18歳人口の大幅な減少期を迎え,前述の経営力の強化に最大限の取組を行う場合においてもなお,経営困難な状況に陥る学校法人が生じることは避けられないものと考えられる。

○ 自主性・自律性に配慮しつつも,学校法人が経営破綻に陥らないよう,経営悪化傾向にある学校法人に対し,経営状況をよりきめ細かく分析したうえで,早期の適切な経営判断が行われるよう支援・誘導し,状況に応じてさらに踏み込んだ指導・助言を行うことが必要。

○ その主体としては,所轄庁である国のほか,国と私立学校の中間団体的な性質を持つ,私学事業団の活用も考えられる。(特殊法人としての制約や国との役割分担といった諸課題を含め,今後検討が必要。)

○ 学校法人の経営破綻に際し,学生の修学継続の保障のための相互扶助の仕組みや授業料の保証等,転学支援の在り方,学校法人が解散した際の学籍簿の扱い等について早急な検討と具体化が必要。

○ 学校法人の破綻の際の処理手続きに関する法制や運用全般についても,より適切な方策がないか検討し,必要な改善を図るべき。(経営破綻が不可避な場合の所轄庁の判断による清算等の準備行為の過程への移行,役員に重大な責任がある場合の所轄庁選任の管財人による運営の適正化や財産の保全等)

 

4・私立大学等の財政基盤の在り方について

○ グローバル化や少子高齢化等急速に変化する社会経済構造の中,私立大学等の経営力を強化し,安定的・継続的に質の高い教育・研究を行うためには,多元的で安定的な財政基盤を築くことが必要。

 

  (財政基盤の多元化による強化・確立)

○ 現在の収入のほとんどが学生納付金となっており,増加する教育研究経費を現役の学生の負担に大きく依存するという構造から,広く学内外の資源を活用し,社会全体で大学という学びの場を支える構造への転換が必要。

○ 安定的・継続的な教育研究のためには,基盤的経費である私学助成の総額の確保・充実は不可欠。

○ 私立大学等の資源を活用しつつ,社会全体のイノベーションを加速するためには,私立大学に対する研究資金の充実も必要。

○ 多元的な財政基盤のためには,同窓のネットワークの強みをいかした寄附金募集の促進や,資産の有効活用が必要。

○ 産学連携については,個人(大学)対組織(企業)の関係から組織対組織の関係への発展を図り,産業界からの一層の支援の獲得も必要。また,大学間連携や地域における自治体との連携を強化し,相互に支え合う仕組みを構築していくことも必要。

 

(私学助成の充実,仕組みの再構築等)

○ 今後,ますます重要となる私立大学等の役割を考えれば,その教育研究活動を支える基盤としての私学助成の総額の確保・充実は不可欠。

○ あわせて,国民の理解を得ながら,私学助成の充実を図るためには,私学助成の在り方について,以下のような観点からその見直しを図る必要がある。

1.    教育研究の質の向上に向けた取組の一層の強化・促進

2.    私学助成を通じた教育・研究の成果の可視化

3.    社会の多様なニーズを踏まえたダイナミックかつスピーディに進める改革の促進

4.    自らの強みや特色の重点化に向けた支援

5.    他大学や関係機関等との連携促進

6.    地域に貢献する私立大学の支援

7.    学生の経済的負担の軽減

 

(4)今後の検討及び方策の推進について

○ 私立学校法等の改正を含む検討が必要な私立大学等のガバナンスや経営困難な状況への対応は,大学設置・学校法人審議会の学校法人分科会その他の検討の場で,学校法人制度全体として整合性が得られるよう引き続き検討を行う。

○ 高等学校以下の学校のみを設置する都道府県知事所轄法人を含めた制度改正を行う場合には,関係者を含め幅広く意見を徴しながら検討することが必要。

○ 今後の各高等教育機関の役割・機能の強化に関する論点整理等も踏まえ,中央教育審議会大学分科会における高等教育の将来像の検討や,内閣府の「地方大学の振興及び若年雇用等に関する有識者会議」での検討に,本検討会議で示された私立大学等の振興の方向性を勘案した検討が行われることを期待。

○ 上記会議等に関連して,私立大学等に関する有識者の提言がさらに求められる場合には,必要に応じて本検討会議においてさらに検討。

 

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高等教育局私学部私学行政課

(高等教育局私学部私学行政課)