特定研究大学(仮称)制度検討のための有識者会議(第2回) 議事録

1.日時

平成27年10月14日(水曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省15階 15F特別会議室

3.議題

  1. 特定研究大学(仮称)のコンセプトについて(2)
  2. その他

4.出席者

委員

岸座長、上山委員、國枝委員、郷委員、酒井委員、佐藤委員、菅委員、高橋委員、橋本委員、松本委員

文部科学省

常盤高等教育局長、義本大臣官房審議官(高等教育担当)、氷見谷国立大学法人支援課長、吉田国立大学法人支援課企画官、春山国立大学戦略室長

5.議事録

【岸座長】  おはようございます。お集まりいただいたので,始めさせていただきたいと思います。今日は,特定研究大学に関する論点と検討課題ということで,直接ここに絞った話をしていきたいというように事務局が準備を進めている段階だと思います。  それでは,次に,直接議題に入るということでよろしいんですかね。それでは,事務局から議題について説明をお願いしたいと思います。

(事務局より資料1に基づき説明)

【岸座長】  ありがとうございました。この前の議論を踏まえてまとめていただいたんですが,まずこれはまとめの文章的ではあるんですが,何かお気付きになった点,それからこういうことではないとか,それに加えて御意見等ございましたら、どうぞ、お願いしたいと思います。全体が四つになっておりますね。特定研究大学のコンセプト。これでコンセプトになっているんですかね。それも含めてですね。それから2番目が,改革の在り方。3番目が,法人化以降の大学が直面する課題。実装化にはどれぐらい時間がかかるか。はい,どうぞ。
【橋本委員】  おまとめいただいてありがとうございます。ただ,申し訳ないのですけれども,自分の印象と少し違いまして。実は前回の会議の後,何人かの先生と,あるいは外の方と結構このことを議論したのですけれども,批判的というか,これに対して意義をなかなか認めづらいという先生方,あるいは産業界の方の基本的なスタンスは,国立大学改革を12年前にもやって,それで今回は何が違うのかということなのです。前回できなくて,今回も同じようなことをやったら同じ結果になるだけじゃないかと。ましてや特定研究大学という,こういうお墨付きを与えることによって,かえって甘くしてしまうんじゃないかというようなことで,大変傾聴に値する意見をたくさん伺いました。  前回私から,質問というかお願いをした箇所ですけれども,今回の特定研究大学と,資料5ページ目の運営費交付金の在り方にある重点支援3のカテゴリーと,この二つはコンセプトとして何が違うのかというのを明確に出す必要があると思います。今日まとめていただいたものは,余りその差が私には見えませんでした。つまりこれは,特定研究大学を何のために今やろうとしているかということなのです。目的は,世界と競争できる,世界トップクラスの大学を形成するということであり,そのためになぜ新たにこの制度が必要なのかというと,今までの制度の中,国立大学改革の中ではできなかったからです。あるいは,今度の3類型の中でもできない,足りないところがあるからこれをやるわけです。前回も申し上げましたけれども,やはり大学には風土のようなものがあって,ボトムアップ的にも,あるいはトップダウン的にも,そういう中では達成できなかったことがある。例えば松本先生も随分御苦労なさったわけです。そういうものを思い切って破るような,そういうエンジンにしようというのが今回の特定研究大学だと思うのです。  そうすると,現状の大学のことで判断するのではなくて,国際的なレベルの大学のスタンダードに沿うような,できるだけ高いハードルを課すということが重要です。そのハードルを背伸びしてでもジャンプしてでも超えてくるような大学について,しっかりと,その大学が自分たちでマネジメントできるような自由度を与えましょうというものです。高いハードルと高い自由度,その組合せによって,特定研究大学という制度が設計されている。ですから,3類型の3番目のものとは全然違って,もっと高いものを要求して,それになりたいところは手を挙げなさいという,そういうコンセプトだというふうに理解しています。もともとの特定研究大学の設計に私は関わりましたけれども,この制度は,そういうアイデアとイメージで作ってきたつもりでいます。  でも,今日の資料を見ると,何かそういう感じにはなってなくて。ただこう書いているだけで,同じようなことがまた繰り返されてしまうんじゃないかなという危機感を持ったのですけれども,いかがなものでしょうか。
【事務局】  説明をさせていただきましたように,橋本先生がおっしゃるように,競争力会議の中の御議論も踏まえて,今この議論をしているわけでございますので,重点支援3と特定研究大学においては明らかな違いを出していかなきゃいけないのは,そのとおりでございます。  5ページに,資料の指標という形で出させていただきましたので,その辺が何となく曖昧に見えるというふうな印象を持たれたかもしれませんけれども,私どもとしては橋本先生がおっしゃったように,むしろ国際的なスタンダード,あるいはそれに対応するようなしっかりした要件ということを設定して,それによって大学に,ある程度覚悟をもってやっていただくというところが大事だと思いますので,その辺の議論も深めていかせていただければ有り難いなと思っているところでございます。
【岸座長】  でも,なかなかそこら辺,この文章だとつかみにくいですね。最も大事なのは,やはり現状の大学がどういう状況にあるかという評価なんですよね。法人化後ですね,特に。法人化後,いろいろな大学が本当に努力はしましたよね。だけど,この前の3分類の中で,案外1と2は割とそれなりに使命を果たしてきたところはあるんですが,あえていうと旧帝大に属するようなところが世界のトップに伍してやっていけていないんだという認識なんじゃないですかね。それを何とかするんだというようなことを,もう少し分かりやすく書いていただかないと問題かなと思って。要するに,今の認識みたいなのが何かはっきりしないんですよ。結構頑張っているような,頑張っていないような書き方かなというのは,ちょっと気になるんですけどね。  それから,この前の議論からいうと,現在執行部というのは本当に努力しているんですけれども,教員の方に全く行き渡っていないというのは,この前大分指摘されておりましたよね。ですから,教職員の意識変革がないんじゃないかということで,法人化との違いを,ああ,そうか,私は意見を言うことができなかったから,今急に言いたくなったのかもしれないけど。法人化との相違ということをしきりに言われているんですが,法人化自身の大問題に対する議論が余りないんですね。私の話をまたちょっと言っちゃうようなところがあるんですけど,法人化って,あれ,ひどい法人化だと思っているんですよね。いや,一見いいんです。  一見いいんですけれども,具体的には経営協議会って,ある種の海外のボードに相当するようなものなんですけれども,あれは総長が任命するんですよね。それから,学長選考会議とか,学長の解任会議というのは,経営協議会を中心に作り上げるから,これも学長の任命なんですし。そういうものが本当にチェック機能なり,引っ張る機能になっているのかというのはいつも疑問なんですよ。  それから,理事なんですけれども,法人だと理事が必要なのは分かるんですけれども,会社の株主総会で決める理事的な取締役とは全く違って,これも学長が決めてしまうので,反したら首にすれば全部終わりなだけなんですね。私もやったこともあるんですけれどもね,首にしちゃうというのはね。ですから,そういうことを考えると,不十分な部分も随分あったんじゃないかという認識も大事だと思うんです。  それに加えて,すぐ皆さんが言うのは交付金の減額なんですけれども,交付金は確かに減額されたんですけれども,物価が上がらない日本で,どうなんですかね。競争的資金が十分増えてますから,本当に貧乏なのかというのは若干疑問がないわけではないんです。いまだに一流国に比べても,理系の持っている研究施設がいい大学で劣っているという気は余りしてないんです。そういうところも大事なところで,全てを競争的資金に持っていくのも反対だし,それから,日本の場合は持っていくこと自体無理ですよね,財政的にね。そこをよく考えないといかんなという気がしております。  そんなことで,まずは日本の今の状況がどうかと。ランキング一つ見ても,余りにもひどいよと。トップの大学を何としても短期間に上げるような方策をしないといけないと。国大協が今,いろいろ報告書等を出しているし,一昨日,そのまとめを筑波大の永田先生が日経にまとめていますけれども,これはよくできているんですよ。本当のことをみんな書いてあるんですよ。だけど,実行の指針みたいなものがないから,いつまでたってもこれでは同じ状況から抜け出せないと。もうそれは10年間で本当はあきらめる。または駄目だという結論でここは始まったと私は理解しているんですが,国大協の意識はそこまではいってないのかなという気がして。余りがっかりしたというと,親しい先生に対して申し訳ないという気もあるんですけれどもね,それが現状じゃないかなと。ですから,ここで何か少し思い切ったことをやるために作ったものにしては,今日の事務局はやはり86大学を十分意識したすばらしいペーパーになっていると言わざるを得ないのかなというのが,さっきから読んでいた印象なんですけれども。  どうなんでしょう,これぐらいのペーパーでやっていくと,国大協のペースと合ったようなので,何かある種の突破をするには少し難しい状況が続いて,数年ぐらいまたこんなことをやってしまうのかなと。これは今回の趣旨には合わないような気もするんですが,今日は私も委員の1人であるから若干意見を言わせていただきますが,ワン・オブ・ゼムだと考えてください。  それとあとは,特定研究大学,高いハードルと高い自由度というようなことを言われていますけれども,一番の要点は,経営と教育研究の分離の問題と,それから,教授間に横たわる,ある種の過剰な,非常にこれ,いいところもあるんです。過剰な平等主義なんですね。この平等主義があるからプライドが高いので,国の研究機関じゃない大学の人間の意識の高さと責任感というのは,投票権を持つとか,大学院が同じように来るとかいう,悪い平等主義の延長でもあるんですね。ですから,全てが悪いわけではないんですけれども,しかし大事なことは,それではもう成り立ちませんよというところをもう1回認識し合わないと。  もっと言っちゃうと,教授の権利のようなところだと思っているところに踏み込むことがなくて,改革をしようとして本当にできるのかということなんですね。一番大事なところだけは手をつけないで,ほかをいじっているという状況に,今陥っているんじゃないかと。若干,一生懸命作ってくれたペーパーなんですけれども,今日は早く来いと言われて,少しさっきから割と読んではいるんですけれども,その感がなきにしもあらずなんですね。  ですから,その辺までを本当に含んで,これだけ大学が問題だということで,科学技術基本法も関係し,いろいろな強化策を打たれた。しかし,どうしても落ちる方向にいってしまう。これをよくみんなで認識して,普通の理想論の改革だけでは駄目なので,どこかに大きな穴をあけようというのが特定研究大学だと思っているんですが,そこのところの意識が本当に私の言うようなことでいいのか。いやいや,それはやり過ぎ,またはどこか欠点があるぞと。かえって慌てるといいことはないぞというのか,その辺の御意見を是非これ,入れつつ,全体をやっていくので,最後の,いいんですけど,これ,非常に実装までは時間をかけるという感じですね。これで本当にこの特定を、研究を、取り出した。この頃批判はあるんですよね。何か文科省は1回か2回会議やって,すぐ決めてしまうとか。ですから,じっくりやった方がいいというのは分からないわけじゃないんですけれども,じっくりやった教育関係の報告書というのが1980年ぐらいからたくさん出ているんですけれども,結局じっくりやって,何かそれほどよくなったのかというのもまた難しいところなので,やはりいろいろな方向に少しずつ早めに手を打っていくということも大事なんじゃないかなという気がしている次第なんです。  私がまた余り余計なことばかり――余計というか,しゃべってしまってもしようがないんですが,ちょっと思いついたことを,今日だけは。この前,一言もしゃべれなかったという気があるので,少し意見を言わせていただきました。ですから,余り気になさらないで,各先生からまた是非御意見を頂きたいと思うんですが,いかがでしょうか。はい,どうぞ。
【菅委員】  この特定研究大学,何とか大学というところになるんでしょうけれども,まず一つはランキングを上げてほしいというのがあると思うんですね。先日私,ちょっと専攻の教授会で話合いがあったんですけれども,第2回の資料の一番後ろのランキングのところを見ると,ランキングを上げるのはサイテーションなんですよ。これだけなんです。もう1点で多分絞ってやれば,サイテーションを上げさえすれば,東京大学にしても京都大学にしても東北大にしても,それだけでかなりランキングは上がっていくんですね。だから,1点集中すれば,多分ランキングは上がると思います。それはクリアなんですよ。論文引用数だけが落ちているということなので。
【岸座長】  研究力も案外駄目なんですよね。
【菅委員】  研究力は,それでもめちゃくちゃ悪いわけではないんですよね。
【橋本委員】  落ちたのはサイテーションなんですね。
【菅委員】  そうですね。サイテーションがものすごく落ちているんですね。
【岸座長】  研究力は同じぐらいで。それは世界でいうと,10か20ぐらいなんでしょうね。
【菅委員】  もちろんそれを上げていく必要はある。恐らくサイテーションも……。
【岸座長】  だけど,文句なしにサイテーションだと。
【菅委員】  そこを1点集中すれば,多分ランキング自体は僕は上がると思うんですね。ただ,私の経験からいうと,サイテーションが多いものは基礎研究なんですよ。アプライドサイエンスというか,応用に近いものとなると,サイテーションは下がっていくんですね。ただ一方で,応用研究の方が社会的インパクトは高いというのは当然なんです。だから,ものすごく難しいなと思うのは,ランキングを上げながら,もう一つ特定研究大学に課そうとしているのは,社会的なインパクトを与える応用研究もしっかりしてくださいよということなんですね。だから,そこはひょっとすると相反することを大学に要求していることになる。それを理解した上で,どうやって特定研究大学がインプルーブメントをしていくかということですね。  橋本先生がおっしゃっているように,大学の風土を壊すということは非常に重要な一手になるとは思います。先ほども岸先生もおっしゃっていましたけれども,やっぱり平等による不平等。それから,まだ大学の先生の中には,真理を追究する科学のみが高度な研究であると。もちろんサイテーションでいうとそのとおりなんですけれども。そうでないという,それだけではないという考え方もしっかり根付かさないといけないということになると思うんですけれども。そういうミッションを非常にクリアに出した上で,この特定研究大学というハードルをどこまで高めるかというのを決定していかなくちゃいけないんじゃないかなと思います。
【岸座長】  今のはあれですか,ノーベル賞とは言わないけど,ノーベル賞的な研究を目指すか,イノベーション的なものというのは非常に矛盾があるというか。こっちはサイテーションに余り関係ないですよね。
【菅委員】  そうですね。イノベーションは,私は大学の先生にはイノベーションできないと何度も言っているんです。できるのはインベンションだけです。もちろんインベンションが実装されてイノベーションに変わって,社会的インパクトを与えればノーベル賞の価値が出てくる。基礎研究も,社会的インパクトを与えないとノーベル賞の価値は出ないという,今コンセプトになっているわけですね。ただ,ノーベル賞は必ずオリジンにノーベル賞を与えるというルールというか,根底に流れている部分があるので,必ず基礎研究の人もノーベル賞を取ります。だからそういう意味では,ノーベル賞に関していえば大きな違いはないんですけれども,やはりイノベーションというのはまた全然違うカテゴリーだと私自身は思っていますし,それから,そのためにはいろいろな人材を含めていかなくちゃいけない。先生が使う時間もまた違うというところを,特定研究大学の中ではどういうふうに取り扱うかというのも重要だと思います。そこはやっぱり給料の差が全部平等であるとかだったりするのは,非常にある意味不平等かもしれないし。その辺もやっぱり特定研究大学は,かなりシリアスに考えていかなきゃいけないんだと思います。
【事務局】  1点補足させていただきます。今の黄色いファイルの一番最後のところに記述しているので,ちょっと念のため申し上げますけれども,2014年と比べて今年のTimes Higher Educationのランキングの順位は下がっていますけれども,それは論文引用についてのデータソースが昨年と今年で変わっているということですので,実力ベースで大幅に落ちたというよりも,データソースが変わったことによる低下というのがあります。
【岸座長】  何だっけ,エルゼビアを使ったんでしたっけ。
【事務局】  はい。ということなので,そこはここでの共通の事実認識としてお願いしたいということが一つです。ただ,そうは言ってもここ数年,やはり各国の研究力が高まる中で,大学の研究力が高まる中で,同じデータソースを使っていたとしても,徐々に落ちてきているというのは間違いないので,そういう中でどういうふうにそこでの存在感というのでしょうか。ランキングというものをどう評価するかというのはもちろんいろいろな御意見があると思うんですけれども,そのランキングが低下することによって,留学生にしても研究者にしても,国際的な優秀な人材のけん引力がやはり弱まってきてしまうのではないかという懸念もあるわけですので,ランキングについてもある一定の配慮をしなければいけないだろうと思います。そのときにこのランキングが,もちろん論文引用というのが非常に重要な日本のキーだとは思いますが,そうは言っても教育と研究と論文引用と,あと国際とか産業連携とか,一応まんべんない指標になっているということを考えると,その中で国際的な存在感を高めるためには,やはりある程度満遍なくやるのか,それとも何か1点突破でのブレークスルーを見いだすのかという議論が,多分一つはあると思うんです。  その上で,1点突破するんだったら,何を1点突破するのかという問題と,それからもう一つは,じゃあ1点突破じゃなくて,やっぱり総合力必要だよねということになるとすれば,総合力を高めるということになると,さっき先生がおっしゃったように,今までと余り変わりばえしないよねというようになるわけです。総合力を高めるときの,何かガバナンス上のブレークスルーみたいなことを考えるのかとか,そういう観点で,我々も実は悩みながら作っているので,迫力がないというお話もありましたけれども,それではどこに切り口を見いだしていくのが,一番日本の大学の研究力とか,あるいは国際的な存在感を高めるときに,どこを切り口にすればいいのかということを,むしろ先生方からいろいろ御意見をいただければ有り難いかなと思っております。
【菅委員】  もう一ついいですか。
【岸座長】  今,サイテーションを増やせと言っているんですね。非常に分かりやすく。みんなで引用し合えと。
【菅委員】  そうです。研究力はみんな高いですよ,日本は。ある程度の研究力は持っていて。それが突然がくっと落ちることなんて,多分あり得ないです。ただ,サイテーションは,結構戦略で変わってくると思います。例えば,いい論文を1報出して,その1報について,別のどうでもいいような論文をいっぱい出して,それをサイテーションすれば,サイテーションナンバーは上がるわけですね。恐らく戦略的にアジアのほかの国,特に中国はやっているんだと思います。そこを日本はするかどうかはまた別にしても,そういうことをちゃんと理解した上で,じゃあどうやってサイテーションナンバーを上げていくか。私は余り自分自身の研究にそれは重要視していません。ユニークな研究をすれば,誰もサイテーションしないので,それはそれで私はいいと思っているんですね。  ただ,世界的な評価というところで見ると,ユニークな研究ももちろん認めてくれていますし,サイテーションの高い研究も認めているというのは現状だと思うので,余りあやふやな,全部を上げましょうというのは多分アピールとして無理なので,今は意図的にサイテーションがネックだから,それを上げる戦略をとれば,ランキングは上がりますよということが言いたかっただけです。
【岸座長】  ほか,どうぞ。
【松本委員】  大学の価値が下がっているんじゃないかというような印象を,このランキングが与えてしまっているというのは大変残念なんですけれども。前回,上山先生がスタンフォード大学の例をお話しされました。あれはスタンフォードが世界の中の大学として上がっていくプロセスをお話しいただいたと思っているんですが,それにはサイテーションとかいうことは一切出てきませんでした。実動をとっているうちに上がっていって,こういった標準的な大学評価の基準に照らし合わせて上がってきたという結果だと思うんですね。今おっしゃったように,ランキングを上げるだけの腐心をしても駄目だと思うんですね。  私は,委員長、おっしゃったように,あるいは橋本委員がおっしゃったように,このペーパーは特定研究大学ではなくて,大学改革を一般に通用するような,よく考えられた文章だと思うんです。全部はできないから10か20かその辺はやりましょうということが何となく感じられるんです。本当に特定研究大学の別枠として,別枠ですよ,3類型とかそんなんじゃなく,特定の本当に世界中からうらやましがられるような環境を持った,また成果も上がるような大学を作りましょうということであれば,このペーパーどおりではいかないような気がします。マネジメントだってすっかり変えないといけないし,立派な大学であっても,大学の中身は,学問の中身は違いに応じてすごく違いますよね。それ全体を引っ張っていくというような仕組みはなかなか難しいんです。  端的に申しますと,先進的な研究をしている自然科学系の研究科,あるいは研究所というのは,その都度成果が出ていると思うんですけれども,もっと時間スケールが長いものでやりたいという文系の研究もたくさん,半分近くいるわけですね。こういう評価のときには,それも全部引っくるめて分母で割りますから,パーキャピタルでいうと下がっちゃうんですよね。だから,これに余り左右されることはないという意見は,大学ではかなり強いと思います。だから,どうするんだという話は,やっぱり特定研究大学の場合は,そこをどう考えるんだという考え方を示してやっていかないと,恐らく難しいと思います。  大学改革,法人化になって,ほとんど全ての大学が頑張ったと思うんです。私も,京大はちょっと遅れてましたが,できることは全部やろうと思ってやってみたんですが,例えば今お話ししましたサイテーションを上げるにはどうしたらいいかというような話は,当然周辺で出ておりました。これは恐らく中国で明らかなように,外国で研究していたやつが帰ってきて,外国に,特にアメリカに仲間のいる人たちが研究をやりますと,サイテーションは当然上がるんですよね。そういうことは日本でできるかというと,なかなか今は難しくてできないので,大学そのものを見せるという努力が必要で。そうすると,サイテーションが上がるということはありました。ここにデータはありませんが,QSで京大も,パーキャピタルで考えたり,サイテーションの仕方が変わって,落ちていることは落ちているけれどもそんなに落ちなかったという面もあります。だから,それは作戦で決まることでマイナーな話で,大学全体の研究レベルをどう上げていくかというようなことで,ここに書いてあるような中では,恐らく大学のマネジメントだと思います。  これは随分と政府も,私ども、考えていただいたんですが,研究力という点からいいますと,ほとんど大学院でやっています。学部では研究というのは余り問題にされません。大学院の運営は,教育研究評議会と経営協議会で大体決まります。学部もその一部ですけれども,ほとんど大学院の意識が強いんですね,研究大学といっているところは。ところが,教育研究評議会の規定は一切ありません,今度の学校教育法の中には。したがって,彼らが従来どおりの運営をしたいという多くの研究科があれば,学長は力を発揮できない構造になっています。これは一時そういう話が出たと思うんですけれども,ちょっと先送りになったんですね。だから,特定研究大学のように特殊な大学で,どう研究を効率的に進めるかという議論の的を絞ってやらないと,ここに書いてある,国立大学全体のレベルを上げようという話と一緒にすると,なかなかこれ,浸透しないんじゃないかという気がします。  私,個人的には前々から,全く個人的な意見ですけれども,ワールドプレミア大学を1個か2個作るべきだというふうに思っているんですね。その場合は,既存の大学をそのまま移すという答えだけでは,答えを得られないと思っているんです。例えば,沖縄科学技術大学というのは,かなり無理をしてというか,変な形でできましたが,普通の国立大学と全く違う運営をしておられます。かなり自由度も高くて,ロケーションが悪いために学生が悪いといったら怒られますけど,特殊な事情なので,学生が余り集まっていない,日本の学生が集まっていないという事情がありますが,あれが仮に東京にあったら,かなり力をつけていたと思うんですね。カルテックみたいになったと思います。ですから,やり方次第で,1個や2個持ち上げる,あるいは選ぶ,あるいは部分的に選んで特出しをするというような考え方でもしない限り,恐らく急には変わらないと思いますね。10校なり15校なり,あるいは数校選んでそのカテゴリーにしても,恐らく反対意見の方が多く出ると思います。それに近いところは,なぜ違うんだと。それぞれみんなここに書いてあることは努力していますからね。  パーキャピタルで判断するのか,総合力で判断するのか,結果は随分違います。東京大学は国立大学で一番教員も多いし,設備も立派ですし,トータルとしては絶対優位です。だけど,パーキャピタルやると,部分的には小さな大学,地方の小さな大学でも勝てるところはあるんですね。そういうのをどういう考えるかということも含めて,特定研究大学を議論するのであれば,そこまで突っ込むべきだという気がいたします。
【岸座長】  しかし先生,いい組織を作るには,全体に上げるというのは難しいんですよね。例えば,京都大学の理学部を上げて,それを落とさないで次に工学部を上げるとか。やっぱり大学経営って私,オックスフォードにちょっといたとき,えらくそれを教わったというか,聞かされたこともあるんですけれどもね,一緒に上げるというのは何せ無理だと。いいのを作って落とさないで次にいいのを作っていくんだというような意見もありますけれども,現実には難しかったですか。
【松本委員】  うちは理学部からはイノベーションもたくさん出ていますし,優秀だったということは言えると思います。これは過去形で申し上げますけれども。
【岸座長】  だから,落ちちゃいけないんです。
【松本委員】  現在形で言いますと,かなりポリティカルな要素が入るんですね。先生がおっしゃった平等主義みたいなものが,理学の場合は特に多いと思うんですね。これは悪いことではないんですが。そのために改革案が出ると,反対ということになるんですね。急先ぽうは理学部でした。理学部だけじゃなくてほかの学部も,いい人はいいんですけれども,理学部の中でもたくさんいろいろな専門家がおられますから,でこぼこがやっぱりあるんですね。そうすると,そのでこぼこのとがったところを応援しようよねというと,それはまずいという議論が学部全体で決定されるんですよ。そのほかに研究所って京都大学はあったんですけれども,研究所はそういう縛りは余りないので,伸びるところは伸びてましたね。だから,かなりマネジメントのやり方で,まだまだ伸ばせる余地はあるんだろうという気はいたします。
【岸座長】  ですから,大学の中でもそういう伸ばし方。だから,日本の中でもどこでもいいんですけれども,一緒に伸ばすというのはもう無理なので。伸ばすというのと,特殊なものですよね。そういうものを作っていくのに,特定というのがいいんだなと思って見ていたんですけれども。  ほか,どうぞ,何なりと。
【松本委員】  済みません,ちょっと1点追加したいんですけれども。大学が悪い,悪いと言いますけれども,やっぱり世界中眺めたら,大学に対する投資がマイナスなのは日本だけなんですね。その環境下で何とかやるというのは難しいので,言われたように,全体を上げたら一番いいんですけれども,全体を上げられなければ,プラスのところも,あるいはマイナスのところもあるという現状をお互いが認識し合わないと前へ進まないと思います。かなり悪いです,これは。過去の設備,過去の成果で今何とか大学がもっているという感じですね。文科省も随分と努力をしていただいて,設備も新しくしていますが,何せ全体にレベルを上げようと思うと,それぞれは余りとがったものは見られなくなっているんですね。
【岸座長】  それではあれですか,いわゆる旧帝大みたいな話ですか。地方の大学も,ものすごく大学改革やっていますよね。
【松本委員】  私もそう思います。
【岸座長】  割とそれなりの役目,就職とかは果たしているような気がするんですよ。ですから,問題なのは……。
【松本委員】  国大協でもいつもそういう話が出るんです。いつもそんな話が出るんですけどね。なぜ旧帝大だけに議論を絞るんだという議論が出ますし,ほかのカテゴリーの大学もユニークで,社会では負けないよということを必ずおっしゃるんですね。事実,そういう部分があるだろうと思います。でも,その大学全部じゃないんですね。旧帝大でもそうです。全部いいわけじゃないんですよ。そこをどんなふうに考えるかというのは,大学の判断。それから,国のこういう特定みたいなのをやるんだったら,その判断基準ですよね。そこを決めずに前へ行きますと,何かふにゃふにゃとした話になるかなという気はいたしています。
【岸座長】  といっても,いい大学というものをある程度作らないと,留学生は来ないですよね。いい留学生は。
【松本委員】  留学生に関していうと,例えばヨーロッパにある大学と日本の大学を比べると,国の周辺の状況が違いますので一概には比較できませんが,交流研究大学みたいな観点からいいますと,大学院生は結構来ていると思います。分野にもよりますが,すばらしい研究をやられている教員がおれば,その周辺には必ず欧米の大学院生もやってきますね。ただ,一般に留学生というと学部みたいなイメージがあるんですが,これは逆立ちしても来ないと思いますね,今の状況では。
【岸座長】  分かりました。ほかどうぞ。先生。
【上山委員】  まず最初に,ランキングのお話が出ましたけれども,これは私,あるところにも書きましたけれども,2003年にTimes Higherが出て,その後上海交通大学が出ました。このランキングというものをそもそも作り始めたのは,ヨーロッパ,あるいは中国だったということに注目すべきだと思います。それは明らかにアメリカ一極集中になっている高等教育の現状に対するアンチテーゼだったと思いますね。だから,ランキングを作ることによって,国内における大学の意識を改革して,アメリカにどんどん人材が引き抜かれている現状に対して、我々はどうするのかという,そういう呼びかけがやっぱり中国にしても,ヨーロッパにしてもあった。今,ヨーロッパで大体30ぐらいランキング,グローバル大学ランキングが出ていますから。でもそのようなランキングはアメリカでは生まれないですね。  というのは,アメリカは別に自分の国の大学が世界で何位だということは余り関心がない。ランキングという現象そのものは、1925年に実はアメリカで生まれているのですけれども,そのときは国内における大学のそれぞれの分野で,どの大学が強いかということを指標化して,大学院に研究のために進むのであればどの大学に自分は行きますかということをはっきりさせるために作ったと。ですからランキングという現象はその頃からありますが、世界の中でハーバードが1位とか,スタンフォードが1位かということはさほど関心がない。むしろ,それぞれの分野ごとに競争力をどう高めていくかという競争があると考えた方がいい。このことが結局,先ほど松本先生がおっしゃったみたいに,大学のマネジメントのところにはっきり関わっていて,自分の大学の戦略としては,ここを伸ばしていくことによって大学全体のレピュテーションを上げていくという,そういう判断ができる。その指標としてのランキングというのは間違いなく存在しうると思うんですよね。  そういう意味で,ランキングというものを,ある意味では大学の経営とかマネジメントの指標として活用するということは重要でしょうけれども,それがグローバルの中でどうなっているかということを一喜一憂するということは,僕はアカデミアの環境を整えるには,さしていいことではないだろうと思います。  もう一つは,これもいろいろなところで申し上げたけれども,日本の研究大学の現場のマネジメントを行っていく体制というのは,非常にやっぱり不備だと思うんです。実際やはりどう考えたって,この間スタンフォードの話はしましたけれども,エクセレンスのところを伸ばしていくというのが戦略として全体的にあって,それを伸ばしていこうとすると,学内における資金的なリソースの再配分をしていかなければいけないということがマネジメントサイドには求められるわけですけれども,今の現状だと,それをやった瞬間に学内における反発は非常に強いと。したがって,先ほど研究科の人たちからの大きな反発があったということを松本先生おっしゃいましたけれども,間違いなくどこでもそれが起こると。  これを解決するためには,やっぱりそれは大学本部とかマネジメントの人たちが,資金的な意味で学内を説得する武器を持たないと,恐らく駄目だろうなと思います。具体的にいうと,資金がアディショナルにそこに入ってきて,その配分力を大学本部は持っていると。これから以降5年ぐらいの間,本部が持っている資金をどのように再配分するかの最初の端緒をつける力を私たちが持っていると。そこの中でのネゴシエーションが,既存の大学人の人たちとの間で起こってくる。それがない限り,今の現状では、本部のマネジメントの力を発揮することは,恐らく無理だと思います。そういう意味で,特定研究大学ということであるのであれば,そのマネジメント力を高めるための原資,それへの公的資金は恐らく難しいだろうなと思いますけれども,外部資金,民間の資金なんかじゃないかなと,僕は個人的には思ったりしますけれども,それを手にすることによって初めて学内を説得することができると。そういうことが起こるんじゃないかなと思います。  実際にアメリカの例を見ても,伸びていくところのきっかけは,最初に大学改革をやる原資を,大学本部が取ってきているということだと思います。スタンフォードもそうですし,カルテックもそうですし。その力を背景にして初めて学内における発言権を大学の本部が経営力として表明することができるということなんだろうなと思います。そのための環境をどう作っていくのかということが重要ではないかと思ったりいたします。
【岸座長】  経営力って本当に出そうとすると,人事をいじるか,お金を配るぐらいしかないんですよね。大学の場合の人事というのは,学術が絡むから,やっぱり専門家がやる以外ないんですね。そうするとやっぱりお金ですね。あれですか,スタンフォードなんかは間接費を集めて,それをどんどん取った人にまた戻したりやっているんですか。日本はそれが多いんですよね。
【上山委員】  間接経費の話もいろいろなところでしますけれども,間接経費というのはとても重要な,大学の経営力に直結するお金で,多くの場合はそれは前回言いましたが,プロボストのところに集まって,それが奨学金のような形で還元をされていくわけですよね。だから,留学生は,日本の大学は結構来ていると先生おっしゃいましたけれども,例えばまさに日本で勉強したいという,研究をやりたいという留学生はあるとは思いますけれども,例えばそれをグローバルに取り合っているかどうかというのはちょっと分からないですよね。  アメリカでも大体今頃,秋頃になると,次,自分がどの大学に行くかということを考え始める。みんな各研究大学を回って,どれぐらい奨学金出してくれるのか,研究環境がどれぐらいいいのか,スタイペンがどれぐらいもらえるのかということを見定めながら,自分の次の大学院を選ぶわけですけれども,そういう人材を日本の研究大学が争ってとるぐらいのことができるかというと,それは奨学金の面でもそうでしょうし,様々な面でもなかなか今の現状では難しいでしょうけれども。彼らはそういう意味では,次の自分たちの研究力の基盤になる大学院生の優秀な人間をとってくるかというのは,それは研究経営の非常に重要な要素ですけれども,それをやるための原資として,間接経費みたいなものはものすごく重要なわけですよね。それは日本の大学には与えられていないわけですから,そういう意味での優秀な大学院生マーケットに参画できていないということはあって。それはやっぱり財務的なものが大きいのだと思います。だから,間接経費なんかをちゃんと充実させていかなければ,それは難しいと思いますね。
【岸座長】  各大学の使い方の努力で,この特定研究大学がある程度うまくいくというのは理解できるんですが,全体の額を増やすことによって,特定大学を作るというのは,今の財政状態じゃうまくいきませんよね。ですから,そこら辺はやっぱりよく考えて進まないといかんなという気がするんですけれどもね。  ほかの先生,いかがでしょうか。どうぞ。
【酒井委員】  やはり人も資金も,マーケットなり全体のアトラクティブネスというのを絶えず重要視していると思っております。個別校,あるいは個別の特定研究大学の非常に優れた大学とともに,全体のアトラクティブネスの上昇も,国家戦略としても中長期にわたり確保していくという観点も重要ではないかと思います。資料の3ページに全分野の論文数のシェアがありますが,例えば中国のシェアは、全分野の論文数で,2000年代の前半から日本のシェアを追い越し,また日本は1990年代の後半に10%弱のところだったのに対し,今5%まで急激に落ちているようです。日本のシェアの下落の率は,最も大きい国のようにも観察されます。仮に事実としてこうした比較がされますと、全世界のグローバリゼーションが進んだ中では,世界の優秀な学生たちは、世界のどこの国へ,そしてその国のどの大学に行くか、といった選択の仕方をしてくるのではないかと思われますし、上記のような日本に関するデータは有利にはならないかもしれません。  それから資金の方も,日本国内から得るだけではなくて,海外から得ようということを考えた場合に,やはり日本の優れた大学に,あるいは教育環境に入ってこようという方々を海外から得ることもものすごく大事だと思います。大学全体の評価のかさ上げは当然重要ですし、同時に特定研究大学という,国際的に非常に優れた大学に、より自由度を与えられ,進んだ経営をやっていかれるというアプローチであれば、国内にのみならず、世界に対するアピールもよりよく可能にならないかと気がします。そうすれば今までとは違うアプローチということもあり得るかもしれないと思った次第でございます。
【岸座長】  これ,特定を作るというのは,ほとんど国内対策が問題になるんですよね。差別化というやつ。それは余り気にしないでやっちゃった方がいいという意見ととっていいですか。
【酒井委員】  海外とのことも含め、戦略的にアプローチすることが必要ではないかと思います。
【岸座長】  そうだと思うんです。
【酒井委員】  国内では国家財政面では一定の制約があるのではないかと思いますので、国内も,日本の民間企業からの資金や,海外からの資金も含め、うまく工夫しながら集める努力や、それに値するほどの改革を日本はやろうとしているんだというのを発信していくのも重要ではないか。そうすると,今までなかったことも起こるかもしれません。
【岸座長】  その期待ですね。いろいろ御議論いただいたんですが,さて,どうですか。ほかの先生方。
【佐藤委員】  前回休ませていただきました。また,私は私学関係者ですし,それも,9割以上は学士課程の学生を抱えている学校であります。しかし,今日各委員の御意見や前回からの資料を見させていただくと,こういう特定研究大学を設定していく上で,やはり私は日本の大学でも教員のモビリティを考えないといけない,モビリティを可能にするための仕組みも考えないと,と思うんです。かつてUniversity of Californiaの学長や機構長をした友人がいて,そこで学長が教員を採ろうと思うと,報酬を幾らこの教員に支払うか,転居を必要とするか,そうであれば住まいの手当て,車の手当てはどうするか。時には,家族の仕事まで準備するかということまで,学長の裁量の中でできる。そして,世界的に優秀な教員を確保するための権限は全て学長に委ねられている,ということを聞いたことがあります。ですから,ここでの議論とは少し違うのかもしれませんけれども,教員,研究者のモビリティを考えないと,とんがった特定研究大学はできないのかなというのが,御意見を伺っていて感じた点です。  それからもう一点は,沖縄科学技術大学院大学設置のときに少し関わらせていただきました。大変に優秀な研究者たちを集めて,発足をさせた。しかし,発足した後,一般からは何をやっているかが見えないんです。それはもっともっと知られて良いのではないかと思います。そういう意味で,優れた取組があったらそれをみんなで共有していくというようなことも必要だと思います。  それから,日本の国立大学でも,学校教育法の改正によって,学長のもとにガバナンスを集中させることはしたんですが,アメリカの例を見ると,ボード・オブ・リージェンスや,ボード・オブ・ガバナンスか,いろいろな形はあるにしても,基本的にオフィサー(最高執行責任者)であるプレジデントはそこには構成員としては乗らないのが原則です。ボード(理事会)は外にあって,ボードの役割は大きく言って三つあって,1に優秀な学長を選ぶこと。2に選んだ学長を支持して財源の確保を中心として必死になって働くこと。3に学長を評価して,学長に実績が上がっていなければ学長を解任することがその使命であります。日本の場合と違って、理事者は執行の役割はないと言っても良いと思います。日本の場合は、国立大学法人も、公立大学法人も、学校法人も理事者に求められているのは執行に対する責任であるということですから、学長のガバナンスについてもアメリカと日本の場合は、異なると言って良いのではないでしょうか。  国立大学法人の学長選考会議の構成についても,国立大学法人法の改正の議論の中で、産業界からも2分の1以上を,学外者にすべきという強い意見はありましたけれども、今は半数ということになっているのではないでしょうか。学長の選考についても、原則的に学内から選ばれていて学外から優秀な人を選ぶということは国立大学では少ないような気がします。外から優秀な人を選ぶというような目が必要なのかなという気がします。余り参考になる意見ではありませんが,今日の討論を伺っていて感じたことです。
【岸座長】  ありがとうございました。モビリティから始まって,いろいろ今御意見いただいたんですが。ひとわたりいかがでしょうか。どうぞ。
【國枝委員】  前回出ておりませんでしたし,それから,私は私立大学の,しかも規模の小さい大学におりますので,少しずれた発言になるかもしれないと思いますので御容赦ください。今,佐藤先生のおっしゃった,学長の裁量権との関わりがあるかもしれませんが,サイテーションの数を上げるとか,研究の成果を顕著な形で発表していくという意味では,特定研究大学全体というよりも,特定の大学の特定分野に集中していかないと,資金も結局色が見えず,全体に水増ししたような状態にしかなっていかないのではないかと思われます。特定研究大学といっても,その中に分野が,文系から理系まであるわけです。今回はかられているのは,大体理系の分野だと推測しますけれども,そうなったらある大学が特定研究大学と指定されたときに,そこに乗れる分野と乗れない分野が出てくるわけですから,はっきり最初から明らかにしていくということをしないと,効果が薄れてしまうのではないかということを感じました。
【岸座長】  やはり強い分野をどう特定してやっていくかというようなことなんですね。分かりました。強いのは伸ばす,落とさないというのも大事なんですけれども。そうか,京都なんかも物理落っこちちゃっているんですか。
【松本委員】  何とも言えませんけれども,全体レベルをどの基準で比較するかということで決まってくるんですけれどもね。そんなに私は落ちているとは思いませんが,そんなに伸びているとも思いません。これは物理だけじゃなくて,理学部例えば一つとると,物理も化学もありますし,生物もありますし,植生物,そのほか地球科学もありますし,地学もありますね。明らかに私が見てみると,どこの教室が業績を上げているかって見えるんですけれども,じゃあここをやったらどうですかというようなことを言うような仕組みになっていないんですね,学部自主性が非常に強い大学ですから。  ですから,私は特定の分野を大学の中から選んで,そこに応用するというのは一つ案が出ましたけれども,それを国が大学を離れて判断するのは非常に難しいと思います。ですから,上山先生がおっしゃったように,学長に権限があって,学長が自分の大学の中のリソースを見て,どういう作戦でどうやったらいいかということをできるような自由度を与えるというのなら,今の大学でできると思います。  例えば,よく分かりませんが,私が京都大学にいたときは,総長,執行部が自由に選べる金は,事業費1,700億円のうちで高々40億円。それで操作するわけですね。非常に難しいです。
【岸座長】  東大なんかよりは随分多いです。
【松本委員】  間接経費は東大の方がもっと多いです。
【岸座長】  東大は全部下へ持っていかれちゃうから。
【松本委員】  いや,そんなことないです。半分,東大の執行部が持っています。
【岸座長】  ああ,そうですか。
【松本委員】  どこの大学もみんなそうですけれども。その中でどうやるかというのが,大学の個性が出るんだろうと思いますけれども。総長裁量経費はうちは非常に少なくて,できるだけやるなというコンセンサスがずっとあって,4億円ぐらいしかなかったですね。何もできないです。
【岸座長】  ああ,少ない。
【松本委員】  その中で,仕方がないから外から稼いできて,例えば留学生を呼ぶのに金がないよねという話だったら,香港まで出かけていって,香港の金持ちに金を出してくれと。それは京大のためだけ動くわけにはいきませんから,日本の優秀な大学に全部出してくれという話をして,結構それはうまくいきましたよね。少しずつ努力はできるんです。ただ,感じたのは,間接経費等も含めて,学長裁量があれば,みんなの意見を聞いてやれると思いましたね。大分いろいろなことができましたけど。  例えば,1大学に二,三百億円の裁量経費をぽんと出したら,三つ選ぶんだったら900億で済みますよね。二つだったら400から500,600あたりで決まりますよね。それでその大学が変われば,ものすごい投資価値はあると思うんですね。  だから,その評価を誰がどうやってやるか,どのぐらいできるかということを仕組みとしてしっかりやっておかないと,またもめるもとになると思うので,どう選ぶかというのは大変難しいと思います。小さい大学でも,すごく頑張っている大学もありますしね。何を基準にして選ぶかということ。ハードルと,橋本先生はおっしゃいましたが,それをきっちり決めないと,何となく国立大学の改革,一般の話にすっと落ちていくかなという気がします。
【岸座長】  どうぞ。
【上山委員】  本当にそのとおりだと思うんですよね。だから,日本の大学の人たちは,例えば僕はこの間,スタンフォードの話をしましたけれども,4,500億円ぐらいのうちの3分の1が裁量的に動かせるんですよ。そういう大学と競争しているわけですよね,京都大学も東京大学も。やっぱり人的な移動の話も出ましたけど,例えば海外の優秀な人たちをリクルートするそのときに,大学の文書の中で英語でセデュースという言葉を使っていて驚きました。セデュースというのは,異性を誘惑するような意味を持つ言葉ですが,わざわざその言葉で,セデュースをするんだと。ということは,優秀な研究者の研究室ごと引っ張ってくるとか,その人たちの,それこそ家族,奥さんの仕事だって与えるとか,そういうぐらいの裁量権のある政策を,各大学が本部を中心にやるわけですよね。その原資を彼らは持っていると。その原資を持っている大学と,曲がりなりにも,東大にしても京大にしても一流大学は,グローバルなところで競争,表面的に出てくるのはランキングかもしれませんけれども,競争を強いられているわけですよね。  だとすると,それはセデュースすることができるようなお金を国家が入れるかどうかです。例えば,シンガポール国立大学がそうですが,ああいう独裁国家だったらぼこんと放り込んで,あそこでそれこそ世界中の優秀なところの研究室ごと引っ張ってくれば,二,三年でばーっと上がっていくわけです。そういうことを果たしてこの国ができるのか。もしそれをやるのであれば,それは当然アカウンタビリティが必要ですから,これだけハードルを上げているから我々はやるんだという根拠が必要になってくると。  今の現状の国立大学の執行部が、その説明に耐えられるかですよね,学内に対する説明として。例えば300億もらえると、300億毎年大学の本部に入ってくれば,多分日本の研究大学は劇的に変わると思います。そのときには、それだけの根拠を,当然ながら世間に対しても,ほかの国立大学に対しても示さなければいけないですから,そのハードルを果たして日本の国立のどの大学がクリアすることができるのか。学内に対してですよ。学内に対する説明として,クリアできるかと。これはものすごく難しいだろうなと。  公的資金を入れることが、僕は入れればいいとは思いますが,できるかどうか。難しいでしょうね。あるいはもう一つは,民間の資金を入れるかという。民間の資金が入る仕組みを作るかと。この間,濵口先生が,民間のお金を寄附なり何なり取るのは幻想だとおっしゃっていたんです。それは非常に手厳しい話で,まあ,そうだなと。それは特許でお金を稼ぐとか,寄附金を集めるなんて,今の状態では幻想ですよと言われたのは実感として,大学経営に関わっていた方の非常に重みのあるお言葉だったと思うんですよ。さはさりながら,そこをどう突破できるかということも,一方で考えないといけないと。それは今,松本先生が,日本の大学のために香港の金持ちにアクセスしていると。その場合、京大のためにでいいと思うんですよ,それは。京大のために入れろという,そういう戦略を各大学が,自分のためだと。日本の金持ちも,それから海外の財団も,これだけの戦略を持っているので,5年もするうちにここを中心に日本の学術環境が大きく変わるということを訴えるような,それが果たしてできるかということなんだと思うんですよね。やれば僕は,可能性は,幻想かもしれないけれども,幻想じゃないチャレンジがあるかなと思ったりもしております。
【岸座長】  民間の篤志家が何かお金を出す期待はあるかもしれないんですけれども,メーカーはね,大学の基礎研究を支援するなんて,会社の定款にどこにもないですからね。よほどのことがないと出てこないんですよね。そこのところはやっぱり分けて考えないといかんなと思うんですけれども。  それでは,また今,手を挙げていただいたので,少し特定大学をどうやったら進められるかというのをもう1回頭に置いて,一つお願いします。
【菅委員】  まさしくそのお話をちょっとさせていただきたいと思います。先ほど國枝先生がおっしゃっていたものは,ものすごく私,そのとおりだと思います。これは前にも申し上げたんですけれども,日本の学部が相当バリアが,各ウォールが一番大きな弊害を生み出しているというふうに思っています。私も橋本先生も化学なんですけれども,スクール・オブ・エンジニアリング,スクール・オブ・サイエンスにいるわけですね。でも,私も工学的なことも薬学的なこともやっていますし,橋本先生ももともとサイエンス出身で,今工学部をやっていらっしゃるわけですけれども,化学としてまとまれば,別に何てことはないんですよ。だから,特定研究大学というんだったらやっぱり学部を全部,少なくともある分野に関しては,学部を超えた一つの塊になって,その分野はこれから伸びていくという強いメッセージが外に出せるようにならないと駄目じゃないかと思うんです。  だから,私の個人的な意見としては,特定研究大学というのがもしできるとすれば,そこには分野で,分野の中には学部を超えたものが完全にでき上がって,学部から大学院まで一貫して,その分野で教育をさせると。学生にとっても非常にクリアに,化学で勉強すれば,これだけのたくさんのいろいろな先生たちの,いろいろな研究に携わっていけるというようなクリアなビジョンが出てこないと,今のように農学部,工学部,理学部,薬学部と分かれているという状態だと,なかなか外から見ても見えないというふうに私自身は思います。
【岸座長】  それも非常に大きなハードルなんですね。どうぞ。
【松本委員】  同じようなことを申し上げますが,学部というのは明治時代に大体できたんですね,基礎が。100年以上たっているのに,1文字学部がまだどんと中心にあって,その下に2文字学部があって,最近できたやつは4文字とか10文字ぐらいあって,そういう構成で,一番コアのところは変わっていないんですよ。そのバリアは非常に大きいというふうにお話しいただきましたが,そのとおりだと思います。  京大ではそれは駄目よねということで,今,化学の方で言われましたが,化学に限らず,例えば化学ですと,京大理学部もいますし,工学部にもいますし,研究所もいますし,農学部にもいますし,医学部にもいるし,薬学部にもいるんですね。ところが人事はそれぞればらばらでやっていますから,力の結集ができていない。だから,学域ごとに教員を編成し直しましょうと提案しました。これは猛烈に反対が起こりました。起こりましたけれども,2年でオーケーをとりました。一応形だけはできているんですね。実体は伴っていません。そういう形をしないと,旧来の学部,実際学部の中には教室もあって,教室の教授会が実際的に動かしているという状況を変えないといけないんですけれども,それはなかなか変わりません。一応枠組みを変えたんですが,それは人事権、まあ,人事権は必要なんですけれども,今座長言われたように専門領域で決めるんですよね。できることは配分権だと思うんですよ。この領域に何%の人事,教員のポストを渡します。あとは自分たちでやってください。その配分権ですら,今ないんですよ。配分権は本部が持ちますという提案をしたら,これは総スカンでしたけれども。それでも一応粘り強くやったら,ある程度しようがないよねということになりました。  ですから,そういう配分権を保証する。それから,学長裁量権のような,数百億ちゃんと一応建物から,人から,強いところに投資できるというような構造を作れば,幾つかの大学は世界でコンピートできるという気がいたします。
【岸座長】  郷先生,いかがでしょうか。
【郷委員】  私もいろいろな御意見が出ましたので,繰り返しになりますけれども,沖縄科学技術大学院大学の国際評価をつい最近,メンバーに入らせていただきまして。それで佐藤先生,さっきおっしゃっていましたけれども,わりかし小さいんですね。50人ぐらいしかスタッフがいなくて。しかも学部とか学科というのがなしで,大学院しかないんですけれども,先生方が非常に融合,新しい領域の方ばかりと言っていいかと思いますけれども,ほとんど先生がいい研究をしていらっしゃる,優れた研究をしていらっしゃる方。しかもほかで余りない,やっていない研究。しかも人事が,話を聞くと,例えば大学,大学院,ずっと同じ大学にいて,そこで教員ポストを取って,お仕事はたくさん論文はあるけれどもという方よりは,世界,出身大学,大学院,ポスドクは違う国でとか,そういう非常に流動的な形で,そしてしかも新しいスタイルの研究をしていらっしゃる方を採るという,その人事のところが全然普通の今までのお話のありましたようなのとは全然違う。しかもそれは,多分学長が中心になってなさっているという,そういうシステムだという。人事が全然違うということが一つ。  これは考え方が違うということですよね。新しい領域を切り開くというのは,いつまでも同じ分野で論文を書いていたら,それはたくさん増えるに決まっていると。それよりは少し分野を変えて,新しいことにチャレンジしている人を採るという,そこはなかなか普通,日本の中では余りやっていないんじゃないかと思います。  それからもう一つは,大学院生が世界から来てますけれども,彼らが見に来たときの旅費とか,何段階か見学に来て,それでどんなにいいかという大学を見てもらうときから,もうちょっと,3回ぐらい来るんですね。試験が2回ぐらいあるというのもありますけれども。それは世界中から優れた人が来ていて,しかも面接をしてみると,非常にしっかりしています。それはなぜ来たかというと,やはり先生の研究ですね。先ほど優れた研究をしている先生の名前を調べて,もちろん応用に近い研究をしていらっしゃる方もあるし,非常に基礎をしていらっしゃる方もありますけれども,そこが全然普通の日本の学部,どこどこの研究科の試験なんかと違うスタイルで選ばれている。もちろん非常に豊かな財源があるので,大学院生に対しても奨学金も出していらっしゃるし,もちろんTAとかでその報酬も出していくから,非常に恵まれた環境であるということも確かですが,大変システムとしては全く日本の今までの大学,大学院がやっていることとは違う。まだ先生方,着任されてから数年ですので,研究成果という意味ではまだまだこれからだと思いますけれども,成果は非常に楽しみだと思います。  申し上げたかったことは,やはりかなりの資金が要るんですね。大学院生を世界から,優れた人を連れてくるためには,何度か本当に来てもらって,来てもらうための旅費とかも出しているという。そこら辺は,やはり非常に豊かだからできるんだと思いますけれども。それが知られていないというのは,先ほどおっしゃられたんですけれども,私もとても残念に思います。少し文科省じゃない大学だからということもあると思うんですけれども,せっかく国内にそういう大学があるのに知られていないということが一つと。  それから,私はこういうことを申し上げると非常に驚かれると思うんですけれども,国立大学は,やはりみんな歴史を持っていますので,変えるのというのはなかなか大変ですが,公立大学とか,わりかし最近できた大学は,非常にユニークな,学長の持っていらっしゃるイメージで動いています。しかも小さいんですね,サイズが。そういうところを見ますと,私も私学を作るときの経験があるので,やはり新しく作るということに対する魅力というのは,私はいつも頭から離れません。それで国立大学も幾つか,本当にこれは全くおかしいことを申し上げるんですけれども,一度全部新しく作り直すというようなことができれば一番いいなと。これは全く妄想で,とんでもないことを申し上げていることは分かっていますけれども。要するに,新しく作るということが,やはりどこかではもしかすると考えなきゃいけないことかなと。純増は難しいと思いますから,どこかを壊して作るということだと思います。それで理想的な,今のお話にありますような学長,それから資金,優秀な先生を集める,大学院生を集めるということが一つの理想形かなと。とんでもないことを申し上げます。
【岸座長】  確かにとんでもないことなんですが,そうか,それを国でやるか,大学の中でやるか,そんな感じですね。それを大学の中でやれるようなところが,特定研究大学になってもらうと。そういう考えもあるわけですね。難しいな,本当に。分かることは分かるんですけれども。しかし,今やらないと,これ,どんどん落ちちゃうんじゃないですか。菅流の,みんなでサイテーションを引き合って少し上げても,40が30までいって,落ちる方は毎日20ずつ落ちるから,20落ちるのを10落ちるのに止めるぐらいになりそうな雰囲気なんですよね。  ということで,今,日本中の大学改編から学部の改編,それから,資金の配分の仕方,それから人事を新分野まで。エキスパートとして学長が見るのではないんですけれども,やはり新分野をもう少し立てていくという意味で,本部も当然人事まで関与するということも大事なんですね,今のお話を伺うと。  それから,教授固有の,何といっても日本の国立大学,教授の住み心地がよくできているんですね。これは本当に楽にできていますね。でき過ぎですかね。でも,これをやはり悪平等として断ち切ると。そういうように全部ポジティブにとると,早いところ特定研究大学を作るというのも一つの方法だと思うんですが,今日はどちらかというと割といい話がたくさん出たんですが,今度面接やるんですね。面接をやりながら、プレゼン、面接じゃないか。
【事務局】  ヒアリングという形で,大学と意見交換をしていただく予定です。
【岸座長】  そうすると,大学は後ろを背負ってくるから非常に保守的になって,話をするかな。
【事務局】  むしろ特定研究大学という新しい仕組みを作るときに,結局今の法人制度でできることであれば,御提案を聞いても仕方がないので,むしろできないような,こういう新しい提案があるということを出してきてくださるところをお呼びして,御意見を聞くということだと思っています。
【橋本委員】  先ほど松本先生がおっしゃったように,例えば人事の配分権を執行部が持つとか,そういうなかなかやろうといってもできないことをしっかり要件に入れる。そして,その要件ができるだけ高い方がよいという,そういうことをするとなると,やはり松本先生のように経験のある方,あるいは今やっていて思っておられる方に,そういう例をたくさん挙げていただくということがポイントじゃないかなと思います。
【事務局】  幾つかございまして,大学から伺っていますと,実はこういう構想を持ってきてやりたいという教育研究のそういう卓越性を目指した目標,あるいはビジョンみたいな話もありますけれども,あわせて今お話ありましたように,国の制度として縛っているので,これをやっぱり緩めてほしいというような話がある一方,今でも学内ではできるけれども,なかなかやっぱりいろいろな日本の慣行の中でできないことという両面がありまして,その両面を恐らく御披露いただくということで,今お話をしているところでございます。
【岸座長】  でも,今言ったようなことを,本当はやろうと思えばできるんでしょうか,大学が。高等教育が小うるさいという話はよく聞くんですけれどもね,こういう大事なことで縛っているという話は余り聞かないんですね。だから,こちょこちょうるさいんでしょう,みんな。だけど,人事どうするとか,配分どうするとか,大事なことで縛っているわけではない?
【橋本委員】  それはボトムアップ的にできないということですね。だから,文科省なり国が縛っているんじゃなくて,大学のルール上できないということです。
【岸座長】  できないんでしょう。だから,ほとんど大学の問題だよね。
【橋本委員】  だから,こういうところをクリアしないと指定しない,というふうに要件として挙げてしまえば,大学のそういう人たちを説得するための題材にも使うことができるということだと思うんですね。
【岸座長】  使うと。だから,ボトムアップだと思い過ぎている。いや,ボトムアップのいいところもたくさんあるんですけれどもね。
【橋本委員】  そのとおりですけれども。
【岸座長】  もちろんそれはあるんですよ。さっきもちょっと言ったんですけれども,国立研と大学ってやっぱり違うんですよ。それは国立研は,やっぱり選挙をやっているから,教官の参加意識がどこかにあるんですね。国の研究機関というのは,やっぱりそれがないんですよ。それは行ってみるとよく分かるんですよ。だから,全部が悪いわけじゃもちろんないので,総長を選んでいるから全部悪いというわけではないんですね。だけど,そこのところの難しさですよ。先生,まだ御意見。
【松本委員】  この特定研究大学の議論というのは,少しスポットを当てるところが狭くなりましたけれども,この中に,例えば大学の評価みたいなのがいろいろあるんですけれども,じっと客観的に考えると,大きな大学,例えば東京大学のような大きな大学,あるいは旧帝大と言われる規模の大きな大学が,どういう社会的評価を受けてきたか。結構出てきた人材で評価されていると思います。社会のあちこちでいろいろな方々が活躍しておられますけれども,そういう部分が今までのやり方だけやりますと,欠落していくんですね。だから,ここに教育が書いてあると思うんですけれども。そういう側面もちゃんと考えているということを,メッセージ,ベースとして,特定研究大学とは別にしっかり出さないと,大学総スカンで,総反対に回るだけなんですよね。それはそれできっちりやる必要があると,私は思います。  しかし一方では,いわゆる世界の中でコンピートできるような研究レベル,研究環境,あるいは大学,あるいは大学の一部というのをしっかり作りますというメッセージを併せて出さないと,なかなかいかないと思います。反対ばかり出ると思いますね。それを最後に思いました。
【岸座長】  ありがとうございます。実現のための重要な要件になってくると思いますね。はい,どうぞ。
【高橋委員】  私は大所高所の話ではないんですけれども,今までの皆様方のお話に触発されたことで2点申し上げます。一つは,最初に岸委員長がおっしゃった,国立大学の法人化についての評価というものができなかったところの反省というのがされているかどうかというところです。ちょっと前にお話にありました,システム上問題がある,ルール上できないものと,ルール上はロジカルにはできるけれども,個別の研究者やトライアルでは、何となくの風習だとか,今までの前例の有無でできないものというのは,まず二つ種類がありますが,とりわけ後者の部分も結構あるのではないかと思います。そこに関しては,新たな資源や投資をしなくても,ちょっとしたルールの改編や挑戦を推すことによって変わっていくものが結構あると思います。  この点について,具体的にイメージをしていただくためには,このペーパーの7ページの大学現場が直面する課題と改善の在り方のところにも関連しますが,いわゆる研究環境,研究基盤を,今持っている資源を使いこなすという方向性なのではないかと思います。例えば,大型の研究施設で,研究者がとてもハッピーなのは,着任したらすぐ使える,長時間使える,いつでも使える,誰でも使いこなせるということかと思います。例えばそれは,欧米の一流機関では,ラボごと移れる,とか移動後1週間でフルスピードで研究ができるなんていうのも,実際は研究者も人間なので,そういうソフトの環境というのがとても魅力に映るというのは,一研究者,個人個人の生の声としてよく聞くところです。  実際それを実現しているのは,ITインフラで支えている、ですとか,新しいトライアルに対して技官がちゃんとサポートしている、等になります。こうみると、実は今も持っているけれども,横のつながりがなかったりして使いこなせていない面もあるのではないかと思う訳です。是非大所高所的なルール変化とか,そういう大がかりなことでなくても,できるところはある、という着眼点も大切にしたいと思います。  それに関してもう一つだけ申し上げたいんですけれども,最近情報関係の先生が,いわゆる研究有力著名大学のトップの座から,小さな私立に移られたという例を聞きました。エッセンシャルな理由は、というと,研究者もやはり人間なので,ファミリーのこと等、研究外の要因もあるとは思うんですけれども,一つには,情報という研究分野がとりわけ直面している,社会の課題へ対応する研究スタイルが実施しにくかった面があるようです。情報管理,個人情報保護,研究倫理等をふまえつつも新しい研究のやり方をやるときの学内の理解、ルールの運用等が,やはり大きな大学,クラシックな大学だったりするとなかなか難しいと。なので,自分の研究をやれる環境に移りましたということなんですね。  マイナンバーやセキュリティの問題等で,日本はちょっとまずいですね、というのは何となく皆さん思っていると思うんですけれども,とりわけ情報分野に関しては,研究分野がかなり社会との接点が多いという特徴があるとすると、その課題から見えることがあるかと思います。つまり、今我々は,既存のディシプリンをよりとがらすということを念頭においたニュアンスが強いイメージですが,研究分野は20年,30年で結構変わっていくものもあると思うので,これから新しいものを生んでいくというところも,ソフト面としての研究大学の魅力につながるんじゃないかと思い、そこも含めた視点を持ちたいと思います。関連部分としては、7ページの中で,書いてはあるんですけれども,ちょっとさっくりした感じであるので,研究基盤,それから新たな投資が必要とされないソフト的な充実ということを入れていただければと思います。以上です。
【岸座長】  研究基盤と,それを使いこなすのを含めたソフト面の重要性等を指摘していただきました。ただこれ,全体がこの文章は,理系をあげればいいという感じの文章でもあるんですよね。文系について,何か御議論いただけますか。荒っぽい,文系はつぶしちゃえなんて議論が今出ているので困っているんでしょうけど。
【高橋委員】 情報提供させていただきます。イギリスはやはり大学評価,上山先生はよく御存じかもしれませんけれども,財政を投資するときの評価として,大学評価はすごくシビアにされているというふうに伺います。その中で,やはり人文社会科学系も,ある程度の評価をしなくちゃいけないときに,定量的なサイテーションとかでは、著者の平均人数や年何報出す、というような論文を書くカルチャーが違うので難しいけれども,例えば政策に何らかの知恵を提供したですとか,サイエンティフィックな,アカデミックに裏打ちされた知見をパブリックに伝えるというような活動も評価に入れているということを聞いたことがあります。なので,学問の,最終的には論文を書くカルチャーも含めて,そういうところは定性的なものでも入れるのがいいのではないかと思います。
【岸座長】  では,ちょっと一度。
【事務局】  今,高橋先生のお話に関連して,この基礎資料の,人文のことも御議論いただく一つの材料としまして,第1回資料のところを開いていただきまして,基本的な考え方,資料3というのがございますけれども,その3ページに,今高橋先生がおっしゃっていただいたような,目標の一つの例として,研究分野の中では,経済とか社会とか文化とか政策へのインパクト,社会貢献なんかも含めて考えるということについても出しております。その辺も含めて御議論いただければと思います。
【岸座長】  どうぞ。
【橋本委員】  特定研究大学のこの議論をするときに,私たちの最初のコンセプトですけれども,理系だけを対象にしているわけじゃなくて,やはり文系の学部が非常に重要であるということを念頭においています。特にこれからは理系・文系じゃなくて,その融合分野が重要だというのはコンセンサスとしてありますので,そこの文系のところを強くしなければいけないという意識は明確に持っています。ただし,文系の人文学部の何かが必要だからもっと金くれといっても,なかなかそれは取れないわけですよね。そういう意味では,今日の議論でもあるように,財政基盤をしっかりするということが重要なので,そのための手段として,どうしても理系が中心になっているという状況があります。ただしそれで,これは上山先生がよく言われるように,アメリカの大学でも財政基盤のしっかりしたところは,それを使ってマネジメントの中で各大学が自分の得意な,自分たちが重要だと思う文系分野に大きく投資することによって,そこも一緒になって伸びている。そういう明確なデータがよく上山先生が出されるんですけれども,そういうイメージでこれも作っています。  先ほど松本先生が言われたことと併せて申し上げると,やはりこれを出すときにはそういう,文系を強くするというか,大学全体がよくなるための手段としてこれをやっているんだということは,明確なメッセージとして打ち出す。それが第一義的にあると私たちは理解していますので,そのように出していただきたいなと思います。
【岸座長】  分かりました。じゃ,文系の話。あと,教育絡みでちょっと気になるんですけれども,菅先生が,基礎研究をやっている方がサイテーションが上がるというような話と,基礎,応用,開発,大学がやるというような話と,リベラルアーツの話というのはどういう感じで結びつけていくんでしょうね。この特定研究大学と。というのは,特定研究大学がどちらかというと,どういうとられ方をするかなと思うんですけれども,今,社会に合わせちゃうと,開発,応用とかイノベーションに向かうところを強化するのかなととる人が多いですよね。でも,それだけだとちょっと。それだけではいかないだろうという気がするんですよね。どうぞ。
【上山委員】  ちょっと印象的なことがあったのでお話しするとイギリスの大学って実はオックスフォードもケンブリッジもカレッジで,カレッジの中に文科系も理科系もみんな集まって一つの文化の中で大学の教育と研究をやるというと,そういう伝統がある。そういう意味では,全人的なという感じの研究体制を作ってきた伝統があるところなんですが,オックスフォードの中で,チャールズ・スノーという人が,『二つの文化と科学革命』という本の中で、それは50年代後半から60年代のことですけれども,要するに文科系の世界と理科系の世界が完全に分かれてしまっていると指摘したことがあります。せっかく同じカレッジにいるのに,会話が成り立っていないということを嘆いた文章を書いたことがあるんですね。実は,そうやって文科系と理科系ということを一緒にやろうとしているヨーロッパの中でも,二つの文化むしろそれはずっと広がってきている。  ところが,僕はアメリカの研究大学でも,スタンフォードなんかでいろいろ話をすると,むしろアメリカの研究大学の方が,こういう人文科学系,社会科学系と理科系との間の距離は,より縮まっている感じさえします。縮まっているという言い方をするのはちょっと語弊があるかもしれませんが,少なくとも垣根をそんなに設けないでおこうと。実はその境界の中に新しいアイデアとか,知識とか,そういうものを作ってくる源泉があるということを体感として我々は思っていると主張する人が結構いるんです。だから,ヨーロッパがもともと伝統的にそういうことをやっていたにもかかわらず,むしろ国際的な競争力とかイノベーションとかということを強調するが余りに,人文社会科学系と理科系との間というのは,逆にいえば実は広がってきている。せっかく同じカレッジで,寝食を共にしながら会話が成立していない。飯を食いながら,ちょっと面白いアイデアが宇宙についてあるんだよということを文科系の人と話すような伝統があった大学で,なかなかそこで起こっていないということを嘆く声が実は高まっている。  僕は,なぜアメリカの大学がこんなに強くなってきたかということを考えるときに,やっぱり知識基盤というものの根底的な考え方に,我々はとにかく新しい面白いアイデアを作るということで言えば,それは文科系であろうが理科系であろうが古典学であろうが関係ない,インスパイアされるものがある方が,実は考えもしなかったようなイノベーションにつながっていくという,そういう土壌ですよね。  だから,この間菅先生おっしゃったみたいに,ハーバード行ってみたら,何かもっとゆったりしているよという感覚は,これは実は肝だと思うんですよ。文科系,人文科学系というのは,そんなに時代遅れと主張するのは,むしろ今の先端のイノベーション的には余り役に立たないと思うんですよね。だから,もう一度日本のアカデミアの中に,そういうある意味での理想的なもの取り戻すためには,やっぱり財務環境を良くし,特定研究大学になるのかもしれませんけれども,そこの中から全く知らなかったようなアイデアが出てくるような環境をどう作っていくかという,そこの中で人文科学系と自然科学系の融合みたいなアイデアが初めて実装化されるということだと思うんですよね。  全体もちょっと言いましたけれども,スタンフォードでも,あれだけ産学連携を称揚した途端に,実は人文科学系というか,ジェネラルエデュケーションという言葉が盛んになったというのは,そういうようなことを肌で,やらなければ実は先端にはいけないんだよという感覚もあったんじゃないかと。そういう意識を,本当の意味での融合の世界の中で,日本のアカデミアの中でも取り戻すという位置付けに,人文社会科学の支援ということで入れてほしいなと。
【岸座長】  先生の御意見だと,やはりあれですね,特定研究大学にはどんどんまい進すべきであるが,財政問題をやはり常に配慮しないと,結局うまくいかないかなという危惧の面もあるというような捉え方ですかね。
【松本委員】  今の御発言と関係ある,情報提供になるのか意見になるのか分かりませんが。文系の方々の評価をどうするかというのは非常に難しい。学内でも大きな問題で。私のとったスタンスは,自分たちで評価基準を作ってください。理系の人たちが文系に要求するんじゃなくて,文系の人たちが,自分たちはこうだ。パブリケーションの在り方も,考え方も全く違いますし,文系の人たちと会議なんかで議論しますと,文系では40年に1冊本を書けばいいんだと,はっきりおっしゃる先生もおられますし,価値観が全然違うんですね。だから,彼らなりの評価基準を作って,世に問うてください,そういうことを言ってきました。なかなか進みはしていないように見えますけれども,内部では多分,潜熱変化が起こっているんだろうと思いますね。  もう一つは,融合。理系,文系と分けるのはそもそもおかしいという認識を私なんかは持っているんですけれども,学問もきっとそうだろうと思ってですね。理系,文系問わず,いろいろな研究科とか学部に属している人が一緒になってやりたいというのはあるんですね,学内に。例えば,宇宙なんていうのは理系の一部のちょっと変わった人がやっているというイメージでしたけれども,じっと学内を見てみるといろいろありましてね。宇宙考古学をやりたいとか,宇宙文学をやりたいとかいう人もいるんですね。それでユニットというのを作って,各学部から出てきて,研究単位としてくださいとやったら,たくさん集まってくるんですよ。だからそのときに,学内の人事配置にうるさい部局の先生が,教員は必ずどこかから出せと。そうでなければ,うちらが削られることは困ると。本部が出せと。本部にないの分かっているから,できないというふうに思っているんですね。  そういういろいろ制限はあったんですが,一応スタートしました。ユニットという名前で。いろいろな融合分野,防災もそうですね。理系だけではできない。そういう意味で,非常に大きなユニットができて,今,30近くユニットができています。難点は,財政基盤がない。人事の配置権もそこには及んでいないということで,苦労しておられますけれども,そういうところに例えば応援をするメッセージ,こういう条件に入れていただければ,新しいムーブを起こす大学が,少し新しい競争力をつけて,世界の中でユニークなもので勝てるかなという気はいたしますね。条件ですね。
【岸座長】  28日,ヒアリングをやりますよね。これについて,今何も準備はしておかないでいいんですか。
【事務局】  失礼します。28日に関しましては,御提案をいただける大学の方から来ていただくということで考えておりまして,これに関して事前に何か,今ここの議論も,各大学の皆様も聞いてくださっていますので,そういう委員の先生方の御議論も踏まえつつ,大学が今,自分たちが考えていただいていることをおっしゃっていただく場というふうに考えているところでございます。
【岸座長】  分かりました。
【菅委員】  昨日,MITのインダストリアルリエゾンオフィスの人に来ていただいて,文科省の方とディスカッションしていただいたたりしたんですけれども。その中で,インダストリアルリエゾンオフィスというのは,外部の企業とコンタクトして,大体1,000万弱のメンバーシップ費を払ってもらっていろいろやっているという,非常にすばらしい,またそれは別途お話ししますけれども。その中で彼らがサポートしている一つのカンファレンスがMITの中にあって,それはスローンスクール。スローンスクールなので,ちょっと文系というのはちょっと微妙ですけれども,スローンスクールのビジネススクールの人たちの学生が,ローカルのIT企業,あるいはバイオベンチャーといったベンチャー企業のCSO,CEO,CTOと,そういったCレベルの人たちと,それからキャピタリストと,大学の先生とを呼んで1日カンファレンスして。その中で何が問題かを洗い出して,その場でチームを学生で組んで,そのソリューションを提案するという,非常にインターディシプリナリーなことをやっているんです。  そういうアクティビティというのが日本でなくて,ベンチャー企業が出ない,出ないといっているのは,非常に大学の基盤としても薄い。教育が十分できていないという,そういう問題点も抱えているのかなというのを,本当にひしひしと感じました。だから,そういうシステムとして取り入れられることというのは,やはり特定研究大学というところはしっかりと基盤の中に入っていくべきじゃないかなと思います。
【岸座長】  ありがとうございました。特定研究大学の要件のような話も大分頂いたような気がいたします。いずれにしろ,今、日本のトップ大学というところが完全に一つマンネリというか,飽和に達したようなところがあって,その突破口として出てきた特定研究大学ですね。やはり一つは,どうやったらこれが育つのかという観点から,もう1回みんな考えてみるべきだと思いますね。それと同時に,次回ヒアリングをして,皆さんの御意見を集めたいと。  護送船団方式は,大体文科省もやめたようですからね,その中の上の方を伸ばすというので,これ,嫌がられるんですよね。上だけを伸ばすというと,日本人はね。しかし,そこも少し度胸を決めてやらないと,何も前に進まないなという気がします。  ということで,今日はこの辺でよろしいですか。
【岸座長】  あと気になるのは,今が大事なんですけど,文科省の書類って結構長期的だよね。ゆっくりやろうという感じ。
【事務局】  スケジュール感を申し上げますと,この特定研究大学(仮称)の議論に関しましては,実は年内に一つ結論を得ていただきたいと思っております。それに基づきまして,必要な制度改正があるということが結論の中に入りましたら,それに伴う法律改正等も準備していきたいと思っておりますので,スピード感はむしろあるというふうに考えているところでございます。
【岸座長】  はい,分かりました。
【松本委員】  実行のスピード感を言っておられるんですよ。
【事務局】  実行に関しましては,制度が整いますことが,法律改正ということをもとになりますと,一番早急にやりますと通常国会ということになりまして,制度が実装するのが29年の4月が一番早いということになりますので,再来年の4月ということでございます。
【岸座長】  やっぱり健康年齢のうちにやってほしいというかね。  どうもありがとうございました。今日は随分入り込んだ話もできたような気もします。あとはどちらかというと,今日はちょっとポジティブの方にもっていった感じもありますけれども,多分今度のヒアリングで,ネガティブな話も聞けるんじゃないかと思いますね。それから,学長経験の先生方からいうと,改革をやって失敗した例なんていうのは非常に興味がありますので,松本先生とか郷先生も,いろいろ次にはまたそういう御準備もお願いできれば面白いかなという気もしているんですけれども。あんまり話したくないものですからね。
【松本委員】  個人名が特定できるような話はしにくいですね。しかし,個々のテーマについてお話をするということは不可能じゃないんですけれども,全般的に大学のガバナンス改革,随分文科省は取り組んでくださったんですけれども,抜け落ちているなというところを申し上げたいと思います。このままでいったら育っていくかというと,そうでもないよねという認識が,まだ現場ではあります。どの学長に聞いてもそういうふうにおっしゃいます。そういうことをちょっと申し上げたいと思います。
【岸座長】  分かりました。個人的には,総長と,学部長の関係と,理事の関係なんていうのは,経営協議会に出ていておかしいなと思うことはたくさんありますよね。まあ,それはいいとして,またそういう経験も是非お聞かせいただければと思います。今日はどうもありがとうございました。
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