所得連動返還型奨学金制度有識者会議(第12回) 議事録

1.日時

平成28年8月30日(火曜日) 16時~18時

2.場所

東京工業大学キャンパス・イノベーションセンター 国際会議室

東京都港区芝浦3-3-6 東京工業大学(田町キャンパス) キャンパス・イノベーションセンター1階

3.議題

  1. 所得連動返還型奨学金制度について
  2. その他

4.出席者

委員

小林委員,阪本委員,島委員,濱中委員,樋口委員,不動委員,吉田委員

文部科学省

常磐高等教育局長,松尾大臣官房審議官,井上学生・留学生課長,川村学生・留学生課課長補佐

オブザーバー

遠藤理事長(日本学生支援機構),高橋理事長代理(日本学生支援機構),大木理事(日本学生支援機構),藤森奨学事業戦略部長(日本学生支援機構),宗野顧問弁護士(日本学生支援機構)

5.議事録

【小林主査】  それでは,時間になりましたので,ただいまから所得連動返還型奨学金制度に関する有識者会議(第12回)を開催いたします。


本日は,御多忙の中,また台風で大変なときに出席いただきましてまことにありがとうございます。なお,赤井委員は欠席でございます。


きょうは,一応これで区切りということでありまして,非常に多くの検討課題はまだ残っておるのですけれども,1つの区切りとして大体の制度の設計を終えたいと考えております。もともとこの所得連動型制度というのは,新しい制度でありますので,やってみなければ分からないという部分もたくさんあります。そういうところで,絶えずこういったものは,基本的な方針は変わらないとしても,制度の手直しということが必要であると考えております。そのあたりも踏まえまして,きょう,残った大きな課題については大体の方向性は決めたいと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。


それでは,議事に入ります。まず議事概要の確認についてですが,資料1,第11回議事概要(案)の内容を御確認ください。修正意見等がございましたら,9月7日,水曜日までに事務局まで御連絡をお願いいたします。その後,私と事務局で修正内容を調整させていただいた上で,議事概要として確定させ,文部科学省のウェブサイトに掲載させていただく予定でございます。


それでは,議事を進めます。前回の会議,第11回では,「新たな所得連動返還型奨学金制度の創設について」の第1次まとめ案の中で,今後検討すべき課題について事務局から説明を受けた上で,皆様から御意見を頂きました。きょうは,先ほど申し上げましたように,これを審議まとめとして最終的にまとめていきたいと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。


では,まず事務局から本日の資料について御説明をお願いいたします。


【川村課長補佐】  それでは,資料2に基づきまして御説明させていただきます。「新たな所得連動返還型奨学金制度の創設について(審議まとめ)」の案でございます。こちらにつきましては,本年3月にお取りまとめいただきました第1次まとめをベースといたしまして,追加の検討事項について文章を書き加えたものということで構成をいたしております。


したがいまして,1ページからずっと冒頭のところにつきましては,前回の1次まとめから時点更新をしたのみで,文章については基本的に修正をいたしておりません。


10ページをお開きいただけますでしょうか。この部分だけ少し追記をさせていただいております。10ページ,(2)「新制度の考え方及び改善の方向性」のところでありますけれども,1つ目の丸,「現在」と書かれているところでありますけれども,ここのところで,「将来の奨学金の返還については」と中段にあるところの次の文,「このことにより」というところで,「意欲と能力を有する者の高等教育機関への進学機会を確保し,卒業後に奨学生が社会で活躍することで生産性の向上や所得の増加などの社会的便益をもたらし,社会全体の成長に資する効果を生み出すことが期待される」ということで,社会的便益についての文章追記をさせていただいております。


それから,ずっと,以降は第1次まとめと同じ文章でございますので,説明は省略をさせていただきまして,今回新しく加わりました部分は17ページ以降になります。17ページの(13)「貸与総額の上限設定」からが今回追記文章としていたしたものでございます。これまで会議で御議論いただきました論点ペーパーをそのまま転記する形で基本的には構成をしておりますので,既に前回会議までに御議論いただいて方向性が固まったものについては,この枠囲いを実線の四角とさせていただいておりまして,そのまま転記をいたしておりますので,簡単に御説明いたします。  まず「貸与総額の上限設定」につきましては,「異なる学校種について一回ずつ貸与を受けることができ,加えていずれかの学校種で一回のみ貸与を受けることが可能である現行制度を維持する」という方向性をこれまでの御議論で頂いております。


次の項目でございます。18ページ,(14)でありますけれども,「貸与年齢の制限」でございます。これにつきましては,前回御議論がございましたので,文章を前回から修正をいたしておりますので,御説明をいたします。「年齢のみを理由とした貸与自体の制限は行わない」として,「新所得連動返還型による返還を認めるかは返還不能となるリスクを踏まえた制限設定を検討」するということでございます。学び直しの推進等によりまして,3行目,「中高年齢で大学等に入学し卒業した場合,返還能力があるうちに返還終了しないケースが発生することが想定」をされます。「年齢のみを理由として貸与自体を制限することは適当ではないと考えられ」ますが,新所得連動による返還を可能とするかどうか否かについては,返還不能となるリスク,年齢を含めて,これを勘案した上で,制限を設けるかどうか判断することが適当であるということで,文部科学省及び日本学生支援機構において検討することが求められるとさせていただいております。


続いて(15)「学生等への周知方法・内容」につきましては,実線で囲っておりますけれども,前回と同じ文章でございまして,「高等学校への周知を重点的に行うとともに,新たな広報手法(ソーシャルメディア)の活用や分かりやすいパンフレットの作成等を進める」ということでございます。


(16)「海外居住者の所得の把握・返還方法」でございます。こちらも前回と同じ,「定額返還型の場合の返還月額とする」。


(17)「有利子奨学金への導入に係る検討」につきましては,「無利子奨学金における新制度の運用状況も見つつ,導入に向けて検討する」ということで,前回と同じでございます。


(18)「デフレ・インフレ等の経済情勢の変化に伴う詳細設計の見直し」。「経済情勢の変化を踏まえ,本制度における返還条件の設定については随時見直しを行う」ということで,前回と同じでございます。


(19)「保証制度」。こちらは若干文章を修正いたしております。「機関保証に移行(ただし,保証料の引下げを併せて検討)」ということでございます。文章中,次のページ,20ページに参りまして,こちら,基本的には1次まとめ,又は前回の会議での資料と同じでございますけれども,保証制度を機関保証とする場合の段落の下から4行目のところ,「このため」のところでありますけれども,「このため,少なくとも新所得連動」については,「機関保証に移行しつつ,今後,定額返還型を含む無利子奨学金制度全体の保証制度についても機関保証に移行することを検討すべきである。その際,保証料の引下げについても併せて検討すべきである」という形で記載をいたしております。


それから,(20)でございます。こちら,点線でありまして,前回の会議で積み残しとなった検討課題でございます。「既に返還を開始している者等への適用」でございます。これにつきましては,これまでの議論におきまして,既に返還を開始している方々の中で,現行の返還負担緩和策を講じてもなお返還が困難な方について,更なる負担軽減策として,1つ目は,新所得連動返還型制度の適用,2つ目は,減額返還制度のより柔軟な活用,このいずれかにつきまして検討するということでございます。


現行制度におきましては,既に返還を開始している方等につきましても,減額返還,また返還猶予制度等によりまして返還負担を軽減する措置が講じられております。新制度,平成29年度新規貸与者から適用することといたしておりますが,仮に既返還開始者全員につきまして新制度を適用した場合,シミュレーションでもお示ししましたが,返還金が大幅に減額することが想定をされます。このため,既存の軽減措置を講じてもなお返還が困難な方々に対象を限定しつつ,更なる負担緩和策として新所得連動型の適用,また減額返還制度のより柔軟な活用の検討をすべきであるということでございます。


新所得連動の適用を認める場合,こちらは返還月額最低2,000円となるということ,また,毎年度の申請なしに所得に応じた返還月額が設定される一方で,制度間の移行に伴います事務手続の増大や既返還開始者からのマイナンバーの提出を求める必要性,また,人的保証の場合に,この機関保証に移行することが必要となってまいりますので,保証料の一括支払が必要となるといった課題がございます。


一方,減額返還のより柔軟な活用につきましては,現在の制度,返還月額を2分の1に減額するものでございますが,例えば既存制度を拡充して減額幅をより大きくする制度を新設するといったことが考えられます。新所得連動の適用を認める場合の課題を踏まえますと,当面は減額返還制度の柔軟な活用によりまして負担軽減を図ることが望ましいと考えられますが,両者のメリット,デメリットを踏まえて御検討をいただければと存じます。  続きまして,(21),こちらも積み残しの課題であります「返還初年度及び2年度目の返還月額」でございます。こちらは,返還初年度につきましては,3つパターンを記載いたしておりまして,まず1つは,2,000円とするパターン。2つ目は,定額返還型での返還月額の半額を返還月額とするパターン。3点目は,初年度の給与等の自己申告に基づき返還月額を設定するというパターンでございます。2年度目は,前年の課税対象所得の9%ということで記載をいたしております。


新所得連動制度,前年の所得に応じて返還月額が決定されますが,返還初年度,基本的に前年所得0円でございますので,どう設定するかということの検討が求められます。また,2年度目につきましても,例えば4月に就職した場合には,勤労月数9か月となりますので,通常,通年勤務するよりもより少ない額で計算されることになってまいります。


この点につきまして,例えば初年度については,前年所得をもとに返還金を算出いたしますと,返還月額2,000円となるのが基本となります。これで返還負担は緩和はされますが,一方で,初年度の返還金が一時的に大幅に減少することとなってまいります。


また,2点目として,初年度でも収入自体は見込まれますので,例えば定額返還型での返還月額の半額を返還月額と設定するということが考えられます。こういたしますと,初年度の返還金は一定程度確保される一方,収入が低い場合にも一定の返還を求めることとなりますので,十分な負担緩和とならないことも考えられます。


更にといたしまして,3点目の,初年度については例えば就職後に給与等の自己申告を求めまして,申告された収入額に基づきまして返還月額を設定し,申告がない場合,定額返還による返還月額とするといった方法も考えられますが,申告された金額の根拠を給与明細等で確認することとなりますと,事務負担が著しく増大することが懸念をされます。


こうした前提を踏まえまして,返還金が次の世代の奨学金の原資となっているこの制度構造,あるいは,低所得の場合の返還負担を軽減するといった新制度の制度趣旨に鑑みまして,初年度の返還月額を検討する必要があろうかということでございます。


2年度目につきましては,9か月分となりますけれども,返還負担の軽減の観点からは,制度の基本である9%とすることが適当ではないかということでございます。


これに関連いたしまして,委員の先生方,机上資料として横の1枚紙,「新所得連動導入時の初年度返還金試算について」という資料を御用意いたしております。初年度の返還額,先ほどのマル1 ,マル2 ,マル3 のパターンでどうなるかという試算でございます。


規模といたしまして,貸与人員,14万5,000人,事業規模,3,258億円という平成28年度の事業規模をもとに算出をいたしました。  まず一番左の列でありますけれども,「10:0」と書いてありますが,これは全員が定額返還型を選択した場合でございます。一番右の列は,新所得連動が10でありますので,全員が新所得連動を選択した場合でございます。その場合の初年度の返還額でありますけれども,仮に。すいません,先に2列目の最低月額の2,000円で返還した場合でございますけれども,一番左の列,定額返還を全員選んだ場合は,初年度約188億返ってくるという試算となっております。これが2,000円という設定で,全員新所得連動を選択いたしますと,大体34億まで落ちるということで,約150億の返還金の減が初年度出てまいります。  その上の定額返還で月額の半額を初年度の返還月額として設定した場合,これは,新所得連動を全員選択した場合には94億ということで,90億程度の返還金の減が出てまいります。


一番下のシミュレーションは,これまでシミュレーションでお示ししておりましたものでありまして,最も当年度の所得に応じた返還月額9%という設定での返還月額に近いものでありますけれども,こうした場合には,一番右は124億という金額となりますが,これはなかなか実務上,マイナンバーでの捕捉が難しいということがございますので,困難であろうかとは思います。


仮に5対5の場合でまいりますと,定額返還で返還月額の半額の場合は,140億ということで,約40億の減。2,000円になりますと,110億ということで,70億の減でございます。


新所得連動を70%選択した場合には,半額で120億でありますので,60億の減。2,000円の場合は,80億でありますので,約100億の減ということで,返還月額の初年度の設定によりまして,返還金が減少する規模感につきまして,試算でございますけれども,お示しをいたした資料でございます。  それでは,審議まとめの方にお戻りを頂きまして,(22)「返還方式の切替え」でございます。こちらにつきましても,前回積み残しとなっておりました。マル1 ,マル2 ,2つパターンを記載いたしておりますけれども,マル1 の方は,貸与終了時に決定した返還方式を返還終了後まで継続するということで,切替えを認めないというものでございます。マル2 は,定額返還型から新所得連動返還型の切替えについては可能とするということで,切替えを認めるというものでございます。  返還方式,こちらは貸与開始時に選択いたしまして,貸与終了時までに決定することといたしておりますが,返還を開始してから返還方式を切り替えることを可能とするか,検討が必要となってまいります。


まず新所得連動から定額返還型への切替えにつきましては,所得が低い間は新所得連動によりまして返還月額を抑え,所得が高くなった時点で定額に切り替えて,月額が上昇することを避けるという,いわば両得といったパターンが可能になりますので,制度趣旨に鑑みまして,この切替えを認めることは適当ではないという御議論であったかと思います。


一方,定額返還から新所得連動への切替えにつきましては,定額を選択して返還が困難となった場合の救済策として切替えを可能にすることも考えられます。ただし,現行制度においても,猶予制度,また減額制度の負担緩和策を活用することが可能であること,また,切替えに伴う事務手続,また,人的保証を選択している場合の機関保証の移行に伴う保証料の一括支払が必要となってまいります。こういった前提を踏まえまして,切替えの可否について御議論いただければと思います。


なお,切替えを可能とする場合であっても,定額返還型から新所得連動返還型への切替えを1回のみ可能とするということが適当であろうかということでございます。


それ以降につきましては,これまでの前回第1次まとめの内容をそのまま基本的には記載いたしております。5ポツの「今後検討すべき事項」でございますが,割賦月額,返還期間の検討ですとか,また,返還期間における一定期間経過後の返還免除制度,また,マル3 として返還金の回収における徴収方法ということで,源泉徴収等の国も参考にすべきではないかという御意見。また,マル4 として,民間奨学事業団体との連携ですとか,事業貢献の促進といったことで,こちらは第1次まとめと同じ内容でございます。


最後,マル5 でありますけれども,「給付型奨学金の創設に向けた検討」ということで,こちら,第1次まとめでも記載ございましたけれども,その後,政府決定等におきまして状況が変わっておりますので,記載を更新いたしております。返還不要の給付型奨学金制度につきましては,経済対策におきまして,平成29年度予算編成過程を通じて制度内容について結論を得,実現するということとされております。新所得連動返還型制度,将来の返還負担に対する,返還に対する不安・負担を軽減する制度でございますが,あくまで貸与型の奨学金制度でありまして,本人の卒業後の所得に応じて返還月額を設定する制度でございます。


一方,家計支持者の所得が低い世帯の子供たちについては,所得に対する進学費用の占める割合が高く,経済的負担が重くなるということがございますので,それらの多くを貸与型の奨学金で用意することに躊躇いたしまして,進学を断念せざるを得ない方々が存在するということで,その場合,進学した場合にも,多額の奨学金の貸与を受けざるを得ず,過度な負担を負う場合が多いということで,意欲と能力を有するにもかかわらず,経済的理由により大学等への進学,また就学を断念せざるを得ない状況にある子供たちの進学を後押しし,経済負担を軽減するためには,給付型奨学金は重要かつ効果的な施策と考えられ,今後,制度創設に向けて積極的に検討を進めていくことが求められるということで記載をいたしております。


説明は以上でございます。


【小林主査】  ありがとうございました。ただいまの事務局からの説明について,まず全体として御質問ございませんでしょうか。事実関係等で御質問とかございませんでしょうか。よろしいでしょうか。


それでは,随時質問があればお受けしたいと思いますが,最初の方については,今の説明にありましたように,3月のまとめと同じですので,特に論点を絞ってこれから審議していきたいと思います。


10ページに付け加えられた部分があるということですが,これは教育の社会・経済的な効果を記したものですので,特に御異論はないかと思います。


11ページからですけれども,このあたりも,議論がまとまった点については特に触れる必要はないかと思いますが,もし何かありましたら,随時おっしゃっていただければと思います。


問題は,残っているのは,(13)です。17ページの(13)からで,「貸与総額の上限設定」ということですが,これにつきましては,前回でほとんど議論が尽きておりまして,こういう形で1回のみ認めるというようなことで議論が出たと思います。前回欠席された委員の方もいらっしゃいますので,こういう形でよろしいでしょうか。


そうしましたら,次に,「貸与年齢の制限」,18ページに行きますが,これは根本的な議論といたしましては,リスクをどういうふうに考えるかという問題がありまして,そのうちの1つに年齢というものもあるということなので,年齢だけを取り上げて,それを制限するというのは好ましくないというような議論だったと思います。そういう意味で,ただ,実際に,それでは,リスクをどういうふうに見積もるかということですけれども,これまで日本学生支援機構の奨学金については特にこういったリスクの評価というのは行っていないわけでありますし,それが望ましいかどうかという議論も実は要りますし,これは新所得連動型だけではなくて,JASSO奨学金全体に関わる問題ですので,引き続き検討したいというのが事務局案ですが,これについてはいかがでしょうか。


何もしないでいいということではないとは思いますけれども,なかなかこれは,この場ですぐ検討という課題ではないということで引き取らせていただくというような形になっていますが,いかがでしょうか。


【濱中委員】  正直言って,これに該当する方がどれくらいの人数であるかというのは,やってみないと分からないところがあります。対象者が余りにも多くて,返還額が少なくなる,あるいは社会的に見てどう考えても不公平だという状況になったらやはり考えざるを得ないと思いますけれども,現状ではそれがどれくらい見積もれるのかというのはよく分からないので,今後検討するというまとめ方でよろしいのではないかと思います。


【小林主査】  議論として出たのは,念のために補足いたしますと,社会人の学び直しで高齢の方が奨学金を借りた場合,新所得連動型を適用した場合には回収が非常に低くなるのではないかということから議論が始まったわけですけれども,現行では,年齢に関わりなく認めているわけでありますので,それを新所得連動型だけに限るというのはどうかということと,先ほど申しましたように,年齢だけがリスクの要因ではないからというようなことだったので,特にそういうことで,今回は引き続き問題としてあるから検討するという形にさせていただければと思いますが,いかがでしょうか。


これは本気で議論しますとかなり難しい問題になるかと思うのですけれども,不動委員,いかがですか。こういうリスクの問題というのは専門だと思いますが。


【不動委員】  本当は,さっき濱中委員がおっしゃったように,どれだけの人がこれを利用するかというのが分からない状況でありますし,今ここで考えても結論が出ないようなことかと思いますので,今後の検討課題という格好にしておくのがよろしいかと思います。


【小林主査】  ありがとうございました。ほかに御意見ございませんでしょうか。


では,「貸与年齢の制限」ということは,検討課題で,積み残しという形になってしまいますけれども,実際やってみて手直しを考えると先ほど申しましたけれども,そういうことを含めて将来の課題としたいと思います。


それから,(15),(16)については特に問題はなかったと思います。ただ,私の方から,(16)についてですけれども,これは定額返還にするということですけれども,例えば本人が海外に赴任しているのだけれども,マイナンバーが使えると,そういう状況もあり得るわけです。例えば日本の会社勤務で海外に出張しているというようなケースとか。ですから,これもケース・バイ・ケースで,全く認めないということではなくて,可能な場合には選択できるというようなことを入れてもいいのではないかと思うんですが,いかがでしょうか。特にそんな無理な話ではないと思いますので,よろしいでしょうか。


それから,(17)については,これは非常に大きな問題ですので,有利子について導入するということは検討する必要があるかということですけれども,これも今後の検討課題ということでまとめさせていただいております。


(18)についても同じです。


それから,(19)は大きな論点だったわけですが,基本的にこの会議といたしましては,機関保証であるということで,ただ,保証料の引下げができるのではないかということについても検討する必要があるということでまとめさせていただきました。この点については特に御意見がなかったと思いますが,いかがでしょうか。特に欠席されている委員の方,これはかなり大きな変更になりますので。よろしいでしょうか。


そうしましたら,機関保証ということでよろしくお願いします。それから,これは20ページにも書いてありますけれども,奨学金全体を機関保証に移行するかどうかという問題も実は入っておりまして,あるいは,第1種奨学金の定額返還型について機関保証にするかどうかという問題も入っておりますので,これもある意味では引き続きの検討課題ということになります。


それから,(20)についてですけれども,これは先ほど事務局から説明がありましたように,新所得連動型を適用するというよりも,現在様々な制度が残っておりますので,減額返還制度をより有効に活用することで対応した方が現実的ではないかというようにまとめさせていただきましたが,これについてはいかがでしょうか。


【吉田委員】  前回既に返還を開始している方のうち,現行の制度を使い切ってなお返還が困難な方たちについては所得連動への移行を検討してはいかがでしょうかという発言をいたしましたけれども,このような対案が出てくるのであれば,こちらの検討もやはりすべきであると思います。返還月額が2分の1のものを例えば3分の1にするとか,そういうふうに更に柔軟に対応しながら,そういった返還が難しい方たちがデフォルトしないような形で救っていくというようなことを考えられるのであれば,無理に所得連動の適用ということでもないと思います。要するに,現在返還されている方たちについても,何らかの柔軟な対応というものがあってしかるべきではないかなと思いましたので,前回発言いたしました。


質問なのですが,今回,これは2つ並んで提示されておりますけれども,どちらかを選ぶということなのでしょうか。それとも,2つとも残しておいて,今後,文科省とJASSOで検討していただくということなのでしょうか。


【小林主査】  事務局の方からお願いします。


【川村課長補佐】  (20)の最後の段落のところで,新所得連動の適用を認める場合の課題を踏まえると,当面は減額返還制度の拡充により負担軽減を図ることが望ましいということで記載をいたしておりますので,基本的には当面マル2 の方で対応するということで,こちら,原案として記載いたしております。


【小林主査】  ただ,新所得連動型にもいろいろな問題があるので,そう簡単には移行できないのですけれども,これはかなり長いスパンの問題になりますので,そのときには考えられるというような含みは入っているかと思いますけれども,それでよろしいですか。審議官,どうぞ。


【松尾大臣官房審議官】  今小林先生が言われたとおりでございますけれども,当面はこの減額返還制度であるとか,それを更に柔軟にしていくと。ただ,将来的にはやっぱり所得連動をきちっと拡充するということも検討の余地がありますので,それはちょっと時間をかけて検討させていただくということで,2段構えでございますが,あくまでも当面はマル2 でやらせていただければということでございます。


【小林主査】  ありがとうございました。よろしいですか。


【吉田委員】  はい。


【小林主査】  ほかにこの点について御意見ございませんでしょうか。


【濱中委員】  ちょっと頭の中でシミュレーションしてみただけなので,正確かどうか分からないのですが,減額返還で対応するという方針で基本的にはいいと思うんですけれども,その場合の基準みたいなものは文部科学省とJASSOでよく考える必要があるだろうと。特に新所得連動型での返還額との関係というのはよく考えないとならない。柔軟に減額返還をどんどん認めていったら,新所得連動型で,その所得に対して返還する額よりもはるかに少額である期間がかなり長くなってしまうと、それはそれでまた不公平さを生むわけですから,両者の関係の返還額の見合いを見つつ,適切に設定していただければよいかと思います。


【小林主査】  ありがとうございました。ちょっと補足しますと,減額返還の場合には,返還額が半分になりますので,返還期間は自動的に2倍になるわけですよね。これが3分の1となりますと,3倍になるということになりますので,15年ということになるとかなり長くなりますので,そのあたりも考える必要があるのではないかというような御意見だったと思います。


ありがとうございました。ほかによろしいでしょうか。


【不動委員】  21ページのところで,人的保証の場合に,機関保証に移行するための保証料の一括支払が必要となるというところの課題があるということなんですけれども,これは希望によっては機関保証に変えたいという人については,保証料を更に貸し増しをしてくれるというか,というような対応というのは検討できるんでしょうか。であれば,貸し増してくれるのであれば切り替えたいよという人も柔軟にできるんじゃないかなと思ったんですけれども。


【小林主査】  これはどういうように考えたらよろしいんですか。事務局からまずお願いいたします。


【松尾大臣官房審議官】  そこはちょっと課題がございます。実は日本学生支援機構,法律でいいますと,学生に対して貸与するということになっておりますので,多分既に返している方というのはもう学生を卒業されている方ですので,その方に対して貸し増しをするということは基本,法律上できないことになります。したがって,そこの法律上の問題をどう整理するかというのは,今不動先生が言われたことになりますので,そこは検討せねばならない課題があろうかと思います。


一方で,じゃあ,どれぐらいの保証料率になるかというのを試算してみますと,月々多分2,000円とか,それぐらいになります。そうすると,それを1年間やると2万4,000円,4年間で約10万円。これが一般的な保証料率でありますので,それと,これから所得連動になったときのプラスマイナスというのが恐らくお返しされている方のプラスマイナスになると思います。それで,一方で書きましたのは,保証料率をどこまで引き下げることができるかということも併せて検討することによって,機関保証制度への導入であるとか,移行であるとか,そこはちょっと考えなきゃいけないので,少し研究させていただかないといけないことになろうかと思います。


先ほど言われた貸し増しにつきましては,今のJASSOの法律では,学生ということになっていますので,そこは若干法律上の困難があるというのが現状でございます。


【小林主査】  ありがとうございました。どうぞ。


【遠藤理事長】  松尾審議官の補足をいたしますと,法律上の問題で,学生に貸すということになっておりますけど,できないんですけど,金融論的なというか,金融技術的なあれからいきますと,この種の貸出しについては,利息追い貸しという形で分類されます。したがって,金融機関が貸し出し審査を受ける金融庁とか,あるいは日本銀行の考査とか,そういうときに,貸出し内容の審査を受ける場合に,こうしたものに対しては不良債権というふうに認定されます。利息追い貸しというふうに分類されるものですから,松尾審議官の法的な立場での保証料率の後払い的なものを融資するというのはできないということと同時に,金融技術的にもこれは不良債権の温床になるということで,禁じ手といいますか,やってはいけないということになっておりますので,ちょっと補足させていただきます。


【小林主査】  ありがとうございました。そうしますと,なかなか難しいということなんですが,不動委員,よろしいですか。


【不動委員】  はい。


【小林主査】  1つとして,検討課題というふうに最初は思っていたのですけれども,今の理事長の御発言ですと,かなりこれは難しいと。単なる法的な問題だけではないということなので,特にここではこの問題にこれ以上言及しないということでよろしいでしょうか。


ありがとうございました。どうぞ。


【島委員】  先ほど濱中委員がおっしゃった,減額返還制度を用いた場合の額が新所得連動型の最低返還月額との関係がどうなるかという点は非常に重要なポイントだと僕も思います。ただ,先ほどの事例だと,むしろ,新所得連動型よりも更に低くなるというふうなことを御心配されていたように聞こえたので,逆に言えば,本当に困っている人に対して,2分の1,3分の1にしても,やはり返還が困難,新所得連動型の最低返還月額2,000円よりかなり上回るような額になるケースが仮にあり得るのだとしたら,この2分の1というやり方ではなくて,実際に何千円というふうな形での設定の仕方みたいなものも検討の在り方としてはあってよいのではないかと思いますので,補足をさせていただきます。


【小林主査】  減額を率ではなくて定額で行うということですね。これも1つの考え方としてあり得るかと思いますが,そのあたりは,具体的に,学校種,それから設置者によっても現在違っているわけですので,そのあたりも踏まえて,どのあたりが最適かということは少し計算してみないと分からないところもあると思いますので,そのあたりを含めて今後検討していくということでよろしいでしょうか。御意見いただいたということで。


ありがとうございました。ほかに御意見ございませんでしょうか。これは有利子のことを考える場合にも同じような問題が出てきます。利子が入るだけ,余計複雑な問題になりますけれども,よろしいでしょうか。


そうしましたら,こういう形でまとめさせていただきます。


それから,次,(21),これが大きな問題ですけれども,返還初年度及び2年度をどうするかという問題でありまして,3つの考え方ということで提案させていただいているわけでありますが,これも実際やってみないと分からないというようなところもあります。定額,現行の2,000円にするのか,それとも一定の割合,例えば返還月額の半分にするのか,それから,今島委員が言われたように,ほかの定額という考え方もあるかもしれませんし,初年度の給与等の自己申告額で推定の所得を出して,それに対して9%掛けるという考え方とあると思いますけれども,いかがでしょうか。


【樋口委員】  趣旨はよく分かるんですが,事実関係として,例えば21ページの説明の2行目のところに,「返還初年度は前年の所得が0円である」と書いてあるんですが,これは学生だからという想定だと思うんですね。ところが,学生アルバイトというのは相当に多くなされておりまして,しかも税制上は,源泉徴収で税金が全部とられる。そして,後で確定申告という形で返還されると。返還される人はそうなっているわけで,タックスレコードとしては残ってくると思うんです。特に確定申告しない人はとられっ放しということで,本来税金を払わなくてもいいところを払っているというようなこと。  学生アルバイトというのは相当の数多いんじゃないかと。少なくともいろんな統計を,労働力調査であるとか見ますと多いということになっている。そうなると,0円であるということがまず言い切れないだろうというようなことですね。それと,どういうふうに評価するかというところも,学生時代の所得といったものを,レコード上は残ってくるので,どうしたらいいんだろうと。初年度というのは0というふうに見なしていいのかどうかというような新たな問題というのが多いんじゃないかと。大学生の場合,どれぐらいの学生がアルバイトしているでしょうかね。かなり年収としても多いというような調査結果が出ていたりするので,ちょっと教えていただけると。


【川村課長補佐】  アルバイトにつきましては,申し訳ございません,ここ,0円と記載しておりますのは事実関係が誤っている部分があると思いますので,修正が必要かと思います。実際にこの所得連動返還型で2,000円を超えてくるラインといいますのが,所得が144万円ぐらいのラインになってまいります。そうしますと,月12万円ぐらいを超えてくると,次の年に,9%で計算した場合に2,000円を超えてくるという返還額になってまいりますので,通常のアルバイト,月12万円稼ぐ学生がどれだけいるかということはございますけれども,基本的には2,000円というふうな返還額になるケースが多いのではないかと思われます。学生のアルバイトの平均収入,データはございますけれども,ちょっと今手元にございませんで,御紹介できないんですけれども。


【樋口委員】  たしか源泉徴収のときに税務署からの指導みたいなのがあって,そのときに8%,課税所得の8%ですか,課税所得って,収入の8%になっているのかね,今。本人が申告していませんから,まず源泉徴収の段階で幾らとるかというときに,8とか10%というのが出ているんじゃないでしたかね。そうなると,2,000円ということは,2万円だともう既に2,000円払っているんですね,税金を学生の時代に。というようなことで,後でもちろんそういった人たちに対しては戻ってくる,確定申告をすればと。ところが,確定申告をする学生というのがすごい少ない。私はゼミで指導しておりまして,ちょっとあれなんですが,それで春合宿の経費を出せみたいなことをやっているんですが,少なくとも相当の学生が払わなくていい税金を払っているということになっているんですね。今度働き出してのときに,0というふうに見なしていいのかというところの問題というのをどう考えたらいいんでしょうかという,ちょっとややこしい問題を提起しているんですが。


【小林主査】  学生生活調査等によりますと,30万円ぐらいが平均だろうと思います。私立と国立,自宅,自宅外で若干違いますが。そうしますと,まさしく課税所得としては0になる。


それから,もう一つ,これはたまたま私が関与したことですけれども,現在,学費を奨学金だけでなくアルバイトで補おうとしていて,月額20万円とか,それぐらいのアルバイトをして,かなり無理な生活設計しているということがあります。そうしますと,そういう人たちが課税所得が例えば150万あるからといってとるのがいいのかというようなこともありますので,これはなかなか難しい問題だと思います。


そういう意味では,事実関係としてこの記述がおかしいというのは樋口先生の御指摘のとおりで,確かに学生といっても全く所得がないわけではないわけですから,そこのところは少し記述を改めさせていただきます。その上で,大部分の学生は確定申告をしないということで,所得がなかなか把握できないと思いますけれども,マイナンバーになってこの辺がどうなるか,私も詳しくは分かりませんが,いずれにいたしましても,そういう課題があるということも事実ですので,今言ったような私の申し上げた事例もそんなに多いかどうかも分かりませんし,そのあたりを含めて,こういったことも課題としてあるということで,まず記述自体を改めておくということでよろしいでしょうか。その上で,この選択の問題なんですけれども,いかがでしょうか。どうぞ。


【吉田委員】  失礼します。今,マイナンバーで,実際所得のある学生もいるという話が出ましたので,アメリカの例を紹介させていただくのですが,アメリカで初年度の所得連動型返還の返還月額を決定する際には,これまで確定申告をしている人については,過去2年間のデータがあれば,それを使うということになっています。ただ,過去2年間に確定申告をしていなかった場合ですとか,確定申告をしていても,今年の所得が大幅に異なるといったような場合には,現在の所得を証明するものを自己申告します。つまり,給与明細等を送って,今年の所得はこれだけですというのを自己申告するというふうになっております。また,現在の所得がない場合も,その旨を申告するということで,初年度の返還額を確定するという方法がとられているそうです。


日本の場合,昨年度までが学生で,今年から働き始めて,全くマイナンバーにもそういった所得のデータがないという状況で,初年度の額を決定するときにどうするかということですが,1つは,事務量は増えますが,給与明細等の申告によって初年度の額を確定するという方法があると思います。ただ,事務量が多くなります。そこで,定額返還型での返還月額の半額という案が出てきたのだと思いますが,シミュレーションをしてみて,もし半額よりも自分の返還額が実際には低いというような人については,申告をしてもらって,それで返還額を決定するといったようなことをやれば,もしかしたら事務量は半減するのかもしれません。以上です。


【小林主査】  ありがとうございました。アメリカの場合には,まず確定申告が大原則ということですが,学生の場合はそれがなされないということも当然ありますので,その場合には,ここでいう3番ですね,何らかの所得の証明を出してもらって,それで推定の所得を出すという方式でやるということだそうです。それができないかということで,吉田委員の方から,ただ事務負担のこともあるので,それも考えなければいけないという御意見だったと思いますが,いかがでしょうか。


これは機構側にお伺いしたいんですけれども,実際問題として相当な事務量だと思うのですけれども,所得の問題ですから,間違いがあってもいけませんし,かなり入念なチェック等が要ると思うのですが,そのあたりを含めて,現実的な問題としてあり得るのかどうかということですね。


【藤森奨学事業戦略部長】  量的な部分についてはなかなか想像のつかない部分もあります。今現在も,卒業初年度の方は減額返還制度について証明を免除するというような簡便な方法を取り入れていますけれども,必ずしも申請される方,多くはない状況にあります。そういったこともあって,どれぐらいになるか分からないですが,1件1件の事務はきちんとやるだけのこと,それだけの手はかけてはおるという事実関係だけは御説明できると思います。


【小林主査】  先ほど吉田委員から提案あったように,デフォルト,未返還という意味のデフォルトじゃなくて,最初の設定として,例えば定額なりにしておいて,申告があった場合だけこういった推定所得でやるというような,それぐらいでしたらできるということでしょうか。そのあたり,いかがですか。これもなかなか予測つかない問題ではあると思いますけれども。


【藤森奨学事業戦略部長】  私たち,実施機関ですので,制度としてそれが望ましいということであれば,何らかの方法でそれを実現せざるを得ないということではあります。どのぐらいになるかというのはなかなか難しいところです。


【小林主査】  すいません。それは今の段階ですぐできる,できないというのはなかなか難しいとは思いますけれども,実際問題としてかなり負担が増えるということも事実なので,そのあたりを含めて検討が要るということであると思いますが,いかがでしょうか。


【濱中委員】  できるということらしいですが,1学年あたりの新規の要返還者が何万人になるのか正確な数値は分かりませんけど,そのうちの半分が所得変動を選んだとして何万人という数に対して,給与所得を一々確認して,それに応じた返還額を各人に設定するというのはちょっと現実的ではないように外部から見ていても思います。


もう一つは,JASSOが仮にできたとしても,給与明細を提出してもらうということは,まずは奨学生がその作業をしなければならないわけで,中には期限までに提出しない人が一定の割合で生じることも想定されます。その場合、「あなたは提出しなかったから,定額返還の人と同じ返還額になります」で済むのか。また別の混乱が起こるだろうということを考えると,全員の人について給与明細を求めて所得を確定して,それに応じた返還額を決定するというのは余り現実的ではないと思います。それだったら,ある程度の額にして,もしそれで返還が厳しいのであれば,所得の申告とともに申請ベースで,2,000円にするなり,猶予を認めるというような制度にする方が合理的かなというふうには思います。


ただ,その場合の定額を幾らにするかというのはいろいろ考え方があり得ます。今までのシミュレーションから,大卒1年目の所得の中央値というのは分かっているわけですから,所得の中央値が幾ら,そこから計算される返還額が幾らというのを,そういうのをきちんと計算した上で決定する必要があると思います。2,000円では返還額が少なすぎて事業が回らないということでは話にならないので,それもきちんとシミュレーションして,一律2,000円では無理だということも示した上で,ある程度の初年度の負担増をお願いするということもやむを得ないかなと思います。いずれにしても財源との絡みなので,これ以上申し上げにくいということはありますが。


【小林主査】  ありがとうございました。ほかに御意見ございませんでしょうか。どうぞ。


【阪本委員】  制度が始まって,初年度のインパクトというのと,単に制度がある程度回転し出してから初年度の返還額が下がるということはちょっと分けて考える必要があるのかなと思ったりもします。ですので,この制度が始まってからしばらくの間どうするのかという対応と,それから,制度がある程度確立してから,その後でどういうふうに対応するのかというのは,ちょっと考え方を変えないといけないのかなと思ったりもします。


制度の本来の趣旨であれば,所得にできるだけ連動する方がいいわけですから,なかなか難しいのかもしれませんけれども,この制度を作ってしばらくの間に,例えば大学の4年間の間の確定申告をするようにという教育をするであるとか,そういうことも含めまして何らかの形を考えるべきかなというふうには思うんですが,濱中委員がおっしゃるように,最初は現実的な対応をするということが非常に大事ではないだろうかと考えます。


【小林主査】  ありがとうございました。ほかに御意見ございませんでしょうか。


今までの議論ですと,基本的には何らかの,どのように設定するかは別といたしましても,定額を納めてもらうと。しかし,申請によっては,猶予なり,2,000円なり,減額にするのか,所得連動にするのか,その辺は分かりませんけれども,申請によるものも認めると。そういうような議論で進んできたかと思いますが,いかがでしょうか。どうぞ。


【島委員】  先に結論から申しますと,濱中委員のおっしゃっていることに賛成です。基本的な一定額を出して,それが返還が難しい場合にきちんと対応をとるというやり方です。そうじゃない,在学の最終年度の仮に所得が把握できたとして,先ほど小林委員長がおっしゃったように,比較的に経済的に苦しいからこそ,一生懸命アルバイトして,それがたまたま何らかの事情で一定の額を超えて,その人たちの返還額が多くなるというのは,そもそも所得連動型奨学金の趣旨にも合わない形になることになるんじゃないでしょうか。


【小林主査】  ありがとうございました。先ほどちょっと分かりにくい説明してしまったのですけれども,奨学金を借りていて,なおかつアルバイトが多いという学生が,授業料を例えば奨学金で全部充ててしまって,生活費についてアルバイトで,全く家庭からの仕送り等なくてやっている学生がいるので,そういう学生にとっては所得が高くなるので、奨学金の返還が非常に苦しくなるということです。すいません。私の説明が少しわかりにくくて申し訳なかったのですけど。


大体議論といたしましては,基本的には定額返還の半額の形式をまずデフォルトとして,それについて申請で,所得連動型なり,2,000円にするか,そこは議論ありますけれども,認めるというようなことだったと思いますけれども,よろしいでしょうか。


基本的にはほとんど,その場合は2,000円になるということだろうということですが,あと,猶予というやり方もあるかと思います。


それから,念のために申し上げますと,この問題は唐突に出てきたわけではなくて,濱中委員の方からもう既に指摘はあったのですけれども,課題として後回しになってきたということであります。


そうしましたら,これは実際の財源がどうなるか,シミュレーションがどうなるかとか,いろんな要素がありますので,そのあたりを含めて,今後のことは,そういった検討結果を踏まえて,基本的な方向としては定額の半額ぐらいということで,ただ,猶予申請を認めるというようなことで行きたいと思いますが,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。


ありがとうございました。


次に,これも大きな論点ですけれども,「返還方式の切替え」という問題です。前回までの議論ですと,まず新所得連動型を選択した人が定額型に切り替えると。これは特に予想されるのは,定額返還型よりも,所得が上がって返還額が上がったときに,いや,それは払いたくないから定額にしてくれというようなことで,実はアメリカはこの方式ですけれども,こういったことは認めにくいと。しかし,逆はあり得るのではないか。つまり,現在の仕組みですと,定額返還型で返還ができなくなった場合には,猶予するとか,機関保証に入っている場合には,ある程度の期間を経て代位弁済に移ってしまうわけですけれども,そこまでいきなり行くのではなくて,新所得連動型で,返還額は少なくなりますけれども,そういった返還も認めることがあり得るのではないかと,そういうことだと思うのですが,いかがでしょうか。


ただし,この場合は,繰り返しますが,保証料を先に払っていないと,この切替えはできないので,そのあたりはかなりハードルが高くなるということも事実ですので,そのあたりを含めて御意見いただきたいのですが,いかがでしょうか。


では、少々論点を確認したいと思いますが,新所得連動型を選んだ場合に,定額型に切り替えられないという点について,これについては前回特に御異論はなかったと思いますが,これはよろしいでしょうか。


そうしますと,行ったり来たりはできないということをまず確認したいと思います。その上で,定額返還型から新所得連動型への切替えを認めるかどうかということについてはいかがでしょうか。保証料を支払うということが前提になるわけですが。もちろん定額型で機関保証に入っている場合にはその問題は起きませんけれども,人的保証の場合には保証料を払うという問題があります。特に御意見ございませんでしょうか。原案でよろしいでしょうか。どうぞ。


【阪本委員】  まず1点だけ確認なんですけれども,こちらもいいとおっしゃった新所得連動返還型から定額返還型の形なんですが,私,前回休ませていただいたので,既に確認されたことなのかもしれませんけれども,仮に非常に所得の低い方で,何らかの方法で返還が可能であるという場合に,定額返還型に切り替えなくても返還するという形は,何らかの形で,一括ではなくて,というのは可能であると考えてよろしいでしょうか。


【小林主査】  今おっしゃったのは,すいません,はっきりさせたいのですけれども,定額の場合に。


【阪本委員】  新所得連動返還型を選んでいて,定額の返還よりも返還する月額が低いケースですね。なんだけれども,その形を維持したまま,何らかの形で余裕のある時期には少し返還額を増やしたいというような形ですね。これは何らかの方法があるのかなと思いまして。


【小林主査】  繰上返還を認めるかどうかという問題ですね。それはJASSOの方からお答えしていただければと思いますが。


【藤森奨学事業戦略部長】  現在の定額返還でも,御本人にゆとりがあれは,一部の繰上げという方法もございます。もちろん全額もありますけれども。ですから,今回も,議論の流れの中では,同じように認めていくものというふうに承知してきております。


【小林主査】  新所得連動型についても,そうすると繰上返還が可能だという理解でよろしいということですね。ということですが,よろしいでしょうか。


【阪本委員】  はい,分かりました。


【小林主査】  もちろんこれは錯覚を起こしやすいわけですけれども,返還していただくというのが大前提ですので,返還が難しい人にとって新所得連動というのは一種の保険として機能するわけでありまして,返していただくという意味では,返還月額が変わったり,それから期間が変わるわけですけれども,基本的には返してもらうということで作っているわけですから,そのところは同じだろうと思います。もちろん余裕があれば早く返していただくというのも1つの選択肢だということだと思います。どうぞ。


【島委員】  少し自分自身の頭の整理も含めてなんですけれども,定額返還型で返していて苦しくなった人を救うために新所得連動型への移行を認めるという議論ですよね。ただし,そのときに,機関保証をもともと受けていた人であれば,それはできると。ただ,人的保証を選んでいた人には,一括の支払が必要になるということになっていて,その場合は,これはほとんどミッションインポッシブルですよね。この点についてどう考えるのかということがクリアにならない限り,全てが機関保証の人だったらいいんですけれども,新所得連動返還型に移し替える制度にすることの意味というか,効果というのが少し分かりにくいかなと考えます。


そういう意味においては,委員長が,新所得連動返還型から定額返還型への切替えに関しては,もうなしということで,我々も議論が済んでいて,オプションとしては,定額返還型から新所得連動返還型への切替えというオプションか,マル1 の返還方式を返還終了まで継続するというオプションも,これもまだ生きているという理解でよろしいでしょうか。


【小林主査】  いや,これはどちらかという問題だと思いますが。


【島委員】  つまり,まだ1というオプションもあるということでよろしいわけですよね。


【小林主査】  いえ,これは,切替えを認めるかという議論ですから,切替えを認めないというのが1の議論です。


【島委員】  じゃあ,1のオプションはもうなくなっているということですか。


【小林主査】  いや,それを,ですから,議論していただきたいということを言っているわけでありまして。


【島委員】  分かりました。


【小林主査】  ですから,今島委員が言われたように,機関保証に入っているかどうかというのが1つの論点になることは事実なので,その問題が入っているので,かなり話がややこしくなっているわけですけれど。ですから,定額返還で機関保証に入っている場合,それから人的保証の場合と,2通りあるわけです。その場合,問題は,切り替えをもし認めるとすると,人的保証の場合には保証料が要るという,そういうある意味負担を増やすようなことがあるので,ややこしいということですけれども,機関保証の場合にはその問題は発生しないわけです。それを踏まえていかがでしょうか。どうぞ。


【阪本委員】  今おっしゃった人的保証のようなケースで,例えば20ページの「既に返還を開始している者等への適用」のマル2 の「減額返還制度のより柔軟な活用」というのが,ここでも検討する余地があるのかどうかというのが恐らく大きな課題だろうと思いますが。


【小林主査】  それはおっしゃるとおりです。どうぞ。


【濱中委員】  そうなんですよね。ただ,そこまで行くと,選択肢があまりに増え過ぎて,一体どういうオプションがあるのか,よく分からなくなってきている感じはします。定額返還型から新所得連動返還型への切替えを可能にするというのは,最初は事務手続等々煩雑だからやめた方がいいかなと思っていたのですが,1回限りの変更だったらあり得るかなと。このパターンに該当するのは,最初に定額返還を選んでいるというから,早く返し終わりたいと思っていた人が途中でちょっと苦しくなってきたというケースになるはずです。先ほどの初年度の返還額をどうするかという議論の裏返しになりますが,そういうケースに該当する方というのは,始めのうちは早く返すのに貢献していただけるわけですから,途中で苦しくなったときの変更を認めるというのもありかなと思います。


機関保証の問題については,正直言って,切り替えたければ今すぐ一括で納めてくださいというのはやはり現実的ではないし,それが出来る人はほとんどいないと思います。ただし,我々のこれまでの議論として,今後はなるべく機関保証を中心にしていこうという発想ですから,貸与の開始の時点で,機関保証の方をなるべく選んでもらう。将来,新所得連動返還型を選ぶ可能性があるということを考えている人は,機関保証を最初から選んでくださいという形で,高校等においてもそういう指導をしていくことが大切になってくるかなと思います。


【小林主査】  これも何回も強調していることですけれども,周知が非常に重要である。これは返還方式は選択ということになりましたので,逆に言うと,選ぶためにきちんとした情報を提供しない限り,選択できないことになりますので,そのあたりは十分に対策をとっていただきたいというふうに何回も申し上げてありますけれども,今の問題はまさしく御指摘のとおりでありまして,もし定額返還型を選んで,人的保証だけど,将来は新所得連動型に変わりたいというような人が出てくる可能性があるわけですから,そういうときに,機関保証でないと保証料は一括で払うことになりますよということは十分周知していただくという必要であると思います。


ほかに御意見ございませんでしょうか。


そうしますと,基本的には,皆さんの中で,切替えを認めないという意見はなかったと思いますので,今のような保証料の問題という大きな問題がありますけれども,基本的には認めるということでよろしいでしょうか。


ありがとうございました。では,しつこいようですが,周知を前提に認めていくということでよろしくお願いいたします。


「今後の検討すべき事項」。今回の中でも今後検討すべき事項が今までの中にもかなり入っていたわけでありますけれども,それ以外に,ここに挙げられているような項目がございます。これらについては,何回もここでも取り上げられたようなことでありまして,これについて御意見ございませんでしょうか。あるいは,これ以外に取り上げるべき検討課題がありましたら,是非御意見を頂きたいんですが,いかがでしょうか。


【樋口委員】  検討すべき課題じゃないんですが,22ページのところに「参考」というのが一番下のところに付いているんですが,これはどういう意味かなと。なぜ参考という形で。イメージしてもらいたいということで出したんですよね。


1つは,これ,モデルケースのところに,初任給281万,毎年17.9万円のベースアップ。これ,ベースアップという言葉は適当じゃないだろうと。昇給でしょうと。ベアじゃないですよね,これ。定昇もありますから。じゃあ,17.9万円毎年上がっていくというのは,伸び率6.7%ぐらいなんですかね。現実の社会を考えると,すごい伸びだなと。現状考えると,名目給与が7%台に乗っていくというような,まさに今議論しているのは,3%に乗るかどうかというようなところですから,かなり高額の伸びになってくるわけで,これを一般的な返還者のモデルケースというふうに呼ぶのかどうかというところでは,かなり議論を,これ,こういうふうに考えていたのかということで,議論を呼びそうで,何をモデルケースと置いても,ちょっと議論を呼びそうだなと。これ付ける必要あるんですかという,逆に言えば,参考というところですね,ということなんですが。


【小林主査】  いかがですか。


【川村課長補佐】  すいません。失礼いたしました。いろいろ不備がございまして。前回,第1次まとめでも実は同じ文章が入っておりまして,その際には,大体フルタイムで働かれている方が通常昇給していくと,何年ぐらいで返し終わって,最終的な返還額が幾らぐらいになるのかというのを分かるように書いた方がいいのではないかという御指摘ございましたので,就業構造基本調査,賃金構造統計調査に基づきまして,年齢ごとの給与というものを割り出しまして,現実的には高いということもございましたが,賃金構造統計調査に基づきますと,大体15年間かけてこれぐらいの給与が上がっているというデータがございましたので,それで記載をさせていただいているものでございます。


【樋口委員】  これですと15.5年ですから,22歳で大学を出て37歳なんですよね。37歳の平均所得,個人で考えたときに,530万円になるかどうか。これは多分530万円になるんですね。というような数字になっているんですが,現行ではもしかしたらそうなのかもしれないけれど,これを想定していいのかどうかというようなところもね。もしこうなってくれるんだったら,変動入れる必要ないよねと。まさに順調に伸びてくれるわけですからということになるので,これが一般的な返還者のモデルケースというふうに言って示されると,ちょっと誤解を生むんじゃないかなと思うんですが。


【小林主査】  ありがとうございます。確かにちょっと不用意な書き方になっているかなと。私の方ももう少し気をつければよかったのですけど。これはまずどういうデータかということを示した方がいいというのは御指摘のとおりで,しかも,これ,男子と女子で相当違うはずですし,いろいろ言えば,いろいろ問題があることは事実です。シミュレーションのときにこういうことをやったということで,ごく一部だけを抜き書きしたものなので,こういう形になっていますので,これは御指摘のようになくてもいいのかなと。もし付けるとしたら,参考資料で後ろの方に,こういう計算するとこういうことになりますと。


【樋口委員】  幾つか出した方がいいと。この1つだとあれなので。


【小林主査】  ええ,幾つか出して,ということだろうと思いますので,そういうふうに扱わせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。


ありがとうございました。ほかにございませんでしょうか。どうぞ。


【濱中委員】  今後検討すべき事項ということではないですけれども,新所得連動型でなくて,現所得連動の扱いをどうするかというのは,議論したような気もするし,していないような気もするのですが,一言書いといた方がよいのかなと。現所得連動の対象者に該当する方は,今後も新所得連動型を選択しても300万以下であれば返還はいらないということになるのですかね。


【小林主査】  いや,要らないのではなくて,猶予になる。


【濱中委員】  まあ,自動的に猶予になるという言い方が正確でしょうか。それはともかく,現所得連動と新所得連動の組合せという人が今後発生するということなのですか。そこはかなり複雑になるので,一応整理しといた方がいいかなというのを今急に思い出しました。


【小林主査】  その点いかがですか。どうぞ。


【松尾大臣官房審議官】  現在所得連動に入っている方,これは大学に入るときに家計の所得が,年収が300万円以下の方というのは,現行の所得連動ですけれども,その併用になります。したがいまして,今,濱中先生が言われたように,組合せといいますか,2つ併存することになりますので,相当複雑にはなると思うんですが,今入っておられる方々が新しい所得連動で不利益にならないということを前提とした制度設計になっておりますので,当面の間は2つ併存ということになっていたかと思います。


【小林主査】  それを明示的に書いた方がいいという御指摘だったと思いますので,それはいかがですか。


【川村課長補佐】  すいません。現行所得連動という形では,13ページの(7)のところでありますけれども,「返還猶予の申請可能所得及び年数」のところで,箱書きの中で,申請時の家計支持者の年収300万円以下かつ本人返還時の年収300万円以下の方については,申請可能年数を期間制限なしとするということで,現行所得連動が引き続き適用されるということで記載をさせていただいています。


【小林主査】  よろしいですか。


【濱中委員】  分かりました。既に記載があるということですね。


【小林主査】  ええ。これは,最後のところに給付型奨学金のことが書かれていますけれども,給付型奨学金も入るということになると,給付型奨学金と所得連動型と定額ということで,かなりその意味でも複雑な制度になりますけれども,逆に言うと,オプションが増えて,特に低所得層にとっては,どの程度のものができるかによりますけれども,給付型も入りますので,そのあたりを含めて,特に所得の低い人たちに対してどの程度の学生支援ができるかということは,全体の組合せで考えていくべきだと思います。ですから,ある意味ではここの議論を超えている話だと思いますけれども,そういうことも含めて,最後の「創設に向けた検討」というところに少しそういうことを書いていただければなと思いますけれども。どうぞ。


【島委員】  24ページのマル5 の給付型奨学金の創設に向けての検討,今,委員長がおっしゃったところなんですけれども,これまでの会議でも何度か発言しましたが,閣議決定も含めて,給付型の奨学金の充実ということが述べられているんですが,要するに,進学の時点では貧しかったが,大学に行くことによってよい就職先が見つかって,その後は豊かになったというパターンもあれば,進学の時点では豊かだったが,その後職が見つからなくて困る人もいるわけですね。そういうふうに考えたときに,給付は給付でも,要するに,進学以前の事前的に貧しかった,豊かだったというところで,給付の決定をするのか,進学した後,就職の状況に基づいてどうしても返せない人に対して返還を免除するという形での給付という発想もあってよいのではないかということを,もう一度だけ述べさせていただければと思います。


【小林主査】  ありがとうございました。これは議論が混乱しやすい点ですので,確かに,所得連動型が結果的に給付になる部分があるわけですけれども,これはいわゆる給付型奨学金とは全然性格が違うものですので,その2つはきちんと分けるべきだと思います。


ほかに御意見,あるいは新しい提案でも結構ですが,ございませんでしょうか。どうぞ。


【樋口委員】  すいません。新しい提案でも何でもないんですが,確認というか,勉学のために教えていただきたいんですが,OECDであるとか,国際比較のための統計でこういったものを見るときに,スチューデントローンであるのか,スカラシップであるのかというような分類で出てくるわけですね。定義として,スカラシップというのは,給付をもらえる。それに対して,スチューデントローンというのはまさに返還があると。日本の場合,奨学金に返還があるという。だから,分類上はスチューデントローンにOECDの方では出てくるんだろうと思うんですが,何となく,これ,奨学金と本当に呼んでいいのかという。むしろ学生ローンじゃないかと。後で返せというわけですから。ここのところの日本語というのはうまいなと思っているんですが,逆に言えばですね。奨学金制度という言葉で使って,実は返せというのは,なかなか国際的には通用しないような用語を使っている。この問題というのは,すこぶる給付型と関連してくる話でして,どちらも奨学金と日本では呼んでいるわけですが,本当は違うんじゃないのというふうに思うんですが,これは専門の先生方の間ではどうなんでしょうと。


【小林主査】  私の方からまずお答えしますと,これは非常に歴史的な経緯がありまして,そもそも大日本育英会を作ったころまでさかのぼる話になりますけれども,そのときに奨学金という言葉でやっているわけです。それ以来,ですから,日本育英会は英語でジャパン・スカラシップ・ファンデーションという名前になっていまして,それを使っているので,ずっと奨学金ということになっているというのが歴史的ないきさつだと思います。  御指摘のとおり,それが国際的に見てどうなのかということに関していいますと,まず中国は奨学金というのは給付です。貸与奨学金というのは形容矛盾になります。いわゆるローンについては,貸款という言い方がきちんとありますので。ついでに言いますと,ニードベースの方は助学金。奨学金というのは,業績のメリットベースというふうにきちんと言葉を使い分けております。日本はそこのところが,先ほど言いましたように,歴史的な経緯として曖昧になっているということがございます。


ただ,では,全くのローンかと申しますと,やはりこれだけある意味では寛大な処置が付いているという意味で,教育的な配慮というように言われると思いますけれども,そういうものが付いているという意味では,ただのローンとはやはり性格が違う。もしただのローンにするんでしたら,例えばもっと猶予期間が短くなるとか,いろんな問題を逆に発生させるおそれがある。


ですから,これは日本の今までの歴史的な経緯の中でできてきたのですけれども,そのあたりも大きな問題ですけれども,そろそろはっきりさせないといけないかもしれない。日本の奨学金については国際的にはスチューデントローンという言い方になっていると思います。というのが私の個人的な意見ですが,文科省の方はいかがですか。


【濱中委員】  文科省の前に。


【小林主査】  どうぞ。


【濱中委員】  日本語で言うときには,日本の奨学金制度ってほとんど貸与だったので,国内限定であれば奨学金と書いてあれば貸与だなというイメージがあるはずで,奨学金なのに返還があるのはおかしいという議論は,個人的にはどうなのかなと常に思っています。ただし,日本育英会時代から,この奨学金の英訳がスカラシップローンとなっているはずです。これが,英語として通じるのかというのは,ちょっと検討していただいた方がよろしいかなと思います。


【阪本委員】  私もここは非常に関心のあるところなんですけれども,一番間違ってはならないのは,議論するときに,メカニズムとしてローンなのか,給付なのかということはきちっと理解しながらやらないと,それによって,その制度が一体何の目的に対してメリットがある制度なのか,あるいは,何の目的に対して得意な制度であるのかということが変わってくるはずなんですね。恐らく個人の中での異時点間の所得の配分であるとかということには,やはりローンというので対応していくというのが,ローンプラスアルファ保険で対応していくというのが恐らくいい形だと思います。やっぱり低所得者に対する対応としては,一定程度給付型というのを入れていかなければどうしてもいけないということになると思いますので,今更奨学金という言葉をどうするかという問題とは別に,議論のときにはそこはしっかりと区別していく必要があるんだろうなと思います。


【小林主査】  どうぞ。


【常盤高等教育局長】  文科省どうですかと振られたので,川村君が答えにくそうにしているので,私が申し上げますけれども,多分これ,制度が発足したころは,奨学金を借りる方も,大日本育英会のころというのはかなり限られていて,まさにむしろ育英的な色彩が強かったんだろうと思います。そして,そういう方ですから,大学を出ればかなりの所得も期待できるということで,そういう方々が次の世代の学生のために,返還することによって次の世代の貸与の資金を循環させるという形で成立していたものだと思いますけれども,それが大学進学率が非常に急速に高くなっていく中で,性格がだんだんだんだん育英から奨学といいましょうか,経済的な援助という形になってきたこともあって,資金の呼び名の適切性も含めてこういう議論が出てきているんだろうと思います。


お答えにはなっていないんですけれども,そういう実態をどうやってより解消して,本来の給付型といいましょうか,給付を内容とする奨学制度に変えるかということが,ある意味議論がもう行き着いたと言ったらいけないのかもしれませんけれども,あるレベルまで達したところで,今回このような形でまた新しいステージに入る検討をできるような状況になってきましたので,そういう給付型奨学金を,これから制度設計に向けて,この秋,また検討することになりますので,その中で,今,御意見いただいたようなことについても,何らかの整理ができればいいかなと思ってございます。ちょっとお答えになっていないかもしれませんけれども,コメント的で申し訳ございません。


【小林主査】  理事長,どうぞ。


【遠藤理事長】  2つの側面から理事長の立場でお話しさせていただきます。一昨年,私ども,学生支援機構になって10年たちました。そのときに,いろいろいきさつ,小林先生が言われた制度発足のときのことも勉強いたしまして,国のお金100万円と天皇家のお金100万円,この200万円で制度が発足した。最初の議論のときは,もちろん給付型であるべきだということで議論があったということが私どもの記録の中にございます。ですから,当然奨学金という名前で。ただ,できるだけ多くの人に学びのための資金を提供するという観点から,限られた財源の中で,常盤局長が今言われましたように,先行きの循環ということも考えて,貸与型で。スタートのときの議論を読んでおりますと,やはり大激論になっております。したがって,スタートのときのいきさつからいきますと,理念としては奨学金であると思っています。


それから,2点目として,金融論的な観点,また申し訳ございませんけれども,まず,ローンというものについては,無利子は存在しません。それから,有利子であっても,それは必ず利ざやをとる。商売ということであります。御案内のように,私どもの無利子奨学金は,財源は返還者の返還金と一般会計からの国民の皆さんの税金でございます。それから,第2種の有利子につきましても,さやはとっておりませんで,財投資金から調達をして,それとイコールでもって有利子。したがって,もしローンというものだとすると,金融論的に言えば,それはローンじゃないよということだと思います。


したがって,ただ,今の形でもってこれは国際的にどう通用するのかと。英訳すると何なのかというと,先だっても常盤局長と私,2人並んで,民主党の先生に国会で参考人として呼ばれたときに,これは何なんだと,ローンじゃないのかと言われて,英語で言ったら何だと言われまして,これはスカラシップローンと言わざるを得ない。そうしたら,おまえら,ローンじゃないかと追及をされたんですけれども,ただ,本当に純粋金融技術的にいきますと,我々はこれでさやをとってもうけているわけでも何でもないということであって,この1兆1,000億円に及ぶ財源をどう少ない国家予算の中で繰り回していくかということを考えますと,現実には奨学金というふうな呼び方が私は正しいと思っております。ただ,英語で訳した場合には,スカラシップローンと。スカラシップローンって何かコウモリみたいだなと。スカラシップなのか,ローンなのか,どっちなのかという議論を呼ぼうかと思うんですけれども,これは特殊日本的独特の用語というふうに御理解をいただければと思っております。すいません。


【小林主査】  ありがとうございました。私の方も若干補足したいのですけれども,スカラシップという言い方は大体メリットベースが多いのですが,ただし,これ,学術的な言葉ではないので,実はかなり国によっても,あるいは同じアメリカでも使い方は様々です。明確に定義されていないで使っているという方が実は多いと思います。ただ,スカラシップといった場合にはメリットベースで,グラントといった場合にはニードベースという大体の基準はあります。日本の場合には,それが大日本育英会の最初のときから両基準です。つまり,育英と奨学ですので,これは国際的に見るとかなり珍しいと思います。中国の一部の奨学金にこういった両基準を使っているものがありますけれども,それ以外には余り多くはないようです。そういう意味では,日本独自でありまして,ですから,非常に難しいわけであります。


ただ,それが,だから悪いと言っているのではなくて,むしろ日本はそういう形でずっとやってきたわけですから,それをどういうふうに整理していくかという,そういう問題で,局長が言われたように,そういうことを考えなければいけない時期に来ているのではないかと思います。


それから,言い方ですけれども,例えばイギリスですと,ニードベースのバーサリーという言い方もしますし,それから,それ以外に,アローアンス,補助というのもオーストラリアとかイギリスではありますので,国際的に見ても,これはそんなに明確に定まっているわけではないというのがまず1点です。


それから,無利子はローンではないというふうに理事長おっしゃいましたけれども,ドイツでは,ローンという言い方はしていないのですけれども,無利子です。完全に無利子のものというのは,ドイツと日本だけです。それ以外には,イギリスとかオーストラリアが無利子だと言っているのですけれども,これはインフレにインデックスされていますので,実質的には上がります。ですから,そういう意味では,完全な無利子でやっているのは日本とドイツだけです。アメリカの場合にも無利子という言い方をするんですけれども,これは在学中だけ利子をとらないというのでありますので,日本でいったら,日本の有利子がアメリカでは無利子と言われているというふうに,何かもうわけがわからないような状況になっているわけでありますので,そういう意味でも整理が必要だと思いますので,これはまた機会を見て整理していきたいと思います。


最初に局長が言われたように,発足のころはエリート段階のもので,それがずっと育英会という名前で進んできたのですけれども,これだけの2.6人に1人が借りるという状況になっていますので,そういう点も含めて制度設計が必要だというのはそのとおりだと思いますので,この場の議論を超えますので,またそういう場を設けていただければと思います。


【樋口委員】  よろしいですか。何をもってローンと呼ぶかって,支援の話になってきますと,特に異次元の金融政策とっていることにおいては,マイナス金利ということもある状態になってきておりますので,いろんな定義があるのかなと思います。


どういうふうに呼ぶかというのは,私も別にそれにこだわっているわけじゃないんですが,ほかの国でも貸与が当たり前だというような意識が国民の間にあるとすると,それはやっぱり払拭していく必要がある。特に今回,これだけ給付という形が入ってくるのが,初めて入るというのはすごく学生を有利にするんじゃないかというような話ということじゃないと思うんですね。まさにグローバルスタンダードの視点から考えると。そちらがどうも当たり前じゃないかというような流れ。今起こってきているいろんな問題,まさに返還できないというような問題というのは,実はますます今後,デフレがどうなるか分かりませんけれども,重要な問題。所得格差の問題であるとか考えていくと,重要な問題になってくるわけでありまして,今までやっていたのが,これが正常だというふうには必ずしも言えない世界情勢だし,日本の情勢なんだろうと。それは是非PRしていただいた方がよろしいんじゃないかなと。中には,学生ローンというのが当たり前なんだというふうに,それが当然だと受け止められているような向きというのも社会にはありますし,先生方にも多いかと思いますので,それは是非お願いしたいと思います。


【小林主査】  ありがとうございました。どうぞ。


【濱中委員】  それに関連してなんですけれども,国際基準といったときに,授業料の扱いというのがまた国際的に異なっていることも考慮する必要があります。授業料をそもそも徴収していない国,あるいはそうした時代においては,何か学生への経済的支援をすれば全てそれは給付型の奨学金ということになります。一方、我が国では明治の初め以来,ずっと授業料を徴収していまして,しかもかなり早い段階から授業料免除という形である種の給付を行ってきたわけです。それ給付型の有無については、授業料と公的な補助とのセットで国際標準というのを考える必要があるかなと思います。


【小林主査】  ありがとうございました。非常に本質的な論点がいろいろ出てきて,最後になって,まだまだ課題が多いということがまた改めて確認されたようなことになりましたけれども,ここでは所得連動型に限ってということでお話を進めさせていただいたわけですけれども,なかなかそれだけでは済まない問題が多々あるということが最後に確認されたのではないかと思います。


ほかにいかがでしょうか。どうぞ。


【島委員】  これもこれまで何度か申し上げてきたことなんですけれども,新しい制度が導入される。それはやはり学生にとって,若しくは卒業後の新しい社会人にとって,返還負担を和らげて,適切な経済活動を行うための制度として我々は議論してきたわけですけれども,その制度そのものだけではなくて,その制度がきちんとワークするように,この中にもありますけれども,情報の周知徹底だとか,そういう様々な新しい制度導入に伴う学生に対する問合せなどに対する対応の体制を充実するだとか,制度プラスアルファの体制整備みたいなことも改めてもう一度重要性を指摘させていただければと思います。


【小林主査】  ありがとうございました。それも非常に重要な論点で,この制度は新しいだけに手直しも必要だろうということを申し上げましたけれども,逆に言いますと,検証がずっと必要なわけでありまして,どういう形で返還していくのかということをずっとフォローアップしていく必要もあるわけです。これは非常に長期にわたる問題で,それを見ながら手直ししていくということになりますので,そのあたり,一言何か検証が必要だということを書き添えていただければと思います。


ありがとうございました。ほかによろしいでしょうか。皆さん大体言いたいことは言い尽くされましたでしょうか。どうぞ。


【宗野顧問弁護士】  (22)番の「返還方法の切替え」のところなんですけれども,こちらの点では,保証料の一括支払の点だけがデメリットとして挙げられているんですけれども,人的保証から機関保証に切り替えたいというときに,要は既に返還が苦しくなってというときに,前倒しでやってくれていればいいんですが,既に延滞が発生していたような場合に,じゃあ,通常の機関であれば、既に滞納している人に保証するのかというと,延滞解消しないと駄目ですよみたいな話が議論として出てくる可能性があるので,そういう点からすると,滞納が生じている場合には,切替えだとかというのが認められないことがあるので。あらかじめ機関保証している場合であれば,要は,定額返還から新所得連動返還,返還方法の切替えというだけなので,そこはある程度保証機関側でも認めてくれる可能性は大きいと思うんですけれども,その切替えだけじゃなくて,実はもう既に滞納していますよという話だと,それはなかなか難しい。機構側の猶予の制度も,新しく認められた,延滞据置き猶予に関しては,延滞したままでも猶予を認めますよというのがありますけれども,それまで基本的には事前申請が原則ですから,延滞解消しないと猶予が認められないとか,過去さかのぼって,猶予の事由があることを証明した上で,猶予を認めてもらうという形になるので,そういった点で,人的保証を選択していた場合,要は,切替えに関してもいろいろハードルが大きくはなるので,そういった面でも,定額返還,もし仮に切替えを認めるというのであれば,将来そういうことを考えているのであれば,機関保証を選択しないと,苦しくなったときにもう既に選択できないことがあり得るので,事前にそういうのを選択してくださいというのを説明を加えるといいかと思います。


【小林主査】  ありがとうございました。その説明も,先ほどの周知の中に,重要なことだと思いますので,事務局の方で入れていただければと思います。


ほかにございませんでしょうか。


大体意見としてはこれで集約されたと考えてよろしいでしょうか。


何回も繰り返して申し上げますけれども,新しい制度でありますので,やってみなければ正直分からないというところがあると思います。その場合も,基本的な大きな方向性としては会議で十分議論していただいたと思いますので,それは維持しつつも,細かな点については現実に合わせて修正が、これからやっていく中で必要でしょうし,それからまた,いろんな想定すべき点はいろいろ議論したと思いますけれども,またやっていく中で想定外の問題も出てくるかもしれませんので,そのあたりは,文部科学省と日本学生支援機構の方で,制度を実際に動かしながら部分的な手直しをしていただく,それから検証もしていただくということで進めていくということを本会議の方として認めていただければと思うんですが,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。


ありがとうございました。そうしましたら,このまとめも,そのような点に沿いまして,私と事務局で最終的な案を作りまして,もちろん皆様には事前に回覧いたしますが,そういう形でまとめさせてよろしいでしょうか。  ありがとうございました。では,後日またまとめさせていただいて,皆さんに提供いたします。


ありがとうございました。かなり短い期間に詰めて議論していただいて,かなり専門的な内容の議論が多くて,なかなか難しい議論が多かったわけでありますけれども,これで、一応まとめをすることができました。主査として皆さんにお礼申し上げます。


それでは,きょうは理事長も御列席ですので,まず理事長の方から一言御挨拶いただければと思います。


【遠藤理事長】  改めまして,JASSOの理事長の遠藤でございます。この有識者会議ですけれども,第1回目と最後の12回ということで,真ん中がないんですけれども,真ん中の皆さんの貴重な御意見につきましては,会議に出席しておりました担当の者から逐一報告を受けておりまして,議論の方向性は私なりに把握しておりました。本当に長い間御議論いただきましてありがとうございます。


第1回目で私申し上げて,事務方としては,どんな制度になってもやれないとは言いませんというようなことを申し上げたんですけれども,本音を申し上げますと,シンプル・イズ・ベストなんですが,ただ,学生のために何がいい制度なのか,どうあるべきなのかという視点で御議論いただいている中で,取り入れるべきものは是非事務的にも取り入れていかなければいけない,そう思っております。


幸い,7ページ目に記載されておりますとおり,この実務を行っていくに当たっては,システム対応が不可欠でございまして,このシステムにつきましては,文科省さんに鋭意頑張っていただきまして,必要な予算を確保しておりまして,システム作業を進めているところでございます。


同時に,先週でございますけれども,私どもの内部の会議,私自身,マネージャーとしてのリスクとしまして,こういう新しい制度を遂行していく場合には,システムと具体的な奨学事業部における実務の遂行と,これが連動して進められていかなければいけない。システムはシステム,事務体制は事務体制,ばらばらになりますと,しまったときにさあやろうと思ったらできないということが往々にしてございます。そういうことのないように,先週,私どもとしては,最終回を踏まえまして,システムと事務の連動ということで私どもの経営体制をしっかり確立するということを改めて確認したところでございます。


今回,新しい所得連動を遂行するに当たり,また皆さんの御議論を私ども拝見していて,本当に画期的だと思いましたのは,新所得連動においては,マイナンバー制度の活用と同時に,全部原則として機関保証にすると。実は私ども,人的保証等で法的対応を宗野先生のところでやっていただいておりますけれども,基本的には人的保証に伴う法的な問題というのが非常に大きいです。大きいというか,大半でございます。


したがいまして,そういう流れの中で考えますと,最終期間が定められていない新所得連動につきましては,原則機関保証というふうにしていただいたことが私ども事務方としては最大の喜びといいますか,こうあるべきだということで喜んでおります。実務としてはこの体制でやっていけると自信を持っております。


それから,いろいろな御議論いただいた中で,若干,私どもJASSOで奨学金の仕事をしていて,こういうことがあればなと思っておりますのが18ページのことでございまして,「貸与年齢の制限」という(14)番のところですけれども,返還不能となるリスクを踏まえ,制限設定を検討というのが括弧書きの中にあります。実は金融の世界では,貸すも親切,貸さぬも親切という言葉がございまして,貸さぬも親切というのは,審査をすると。これ以上貸したらむしろ借り手の方が不幸になるかもしれない。したがって,貸さない,ノーという審査をするのも借り手にとってはプラスになるんじゃないかという議論です。私どもの奨学金の場合,貸さぬも親切はございません。一定の要件さえ満たされれば全て貸与するということになって,結果として不幸なケースに陥る場合もございます。


したがって,貸与年齢の制限の場合には,私ども,皆さんの御議論を聞いていて,ああ,ここで我々に審査機能を持たせてもらえればなと。要するに,一定年齢になったら,ここは私どもが審査をして,これ以上は貸さない,ノーと言えるような仕組みというものも1つ考えられるのかななんて,この御議論を伺っていて思ったところでございます。


それから,「今後検討すべき事項」の中で,今常盤局長ほか皆さんで御努力いただいております給付型奨学金制度というもの,これもまた私どもの仕事としては実務的に対応できる形で頭の体操をしているところでございます。


最後に御指摘がございました新所得連動につきましても,世の中的にしっかりと広報の体制,周知徹底というものをやるべきだという御意見,まさにそのとおりだと思いまして,私どももこの1か月ほど,ここにおります奨学金担当の大木理事を筆頭といたしまして,今までの広報体制の大幅改革というようなこと,あらゆる局面でもって,こういう点はこう直していこう,こういう点はこうしていこうということで,今具体的な対応を進めているところでございますので,また先生方の御意見等も踏まえて,しっかりと広報,あるいは周知徹底,充実させていきたいと思っておりますので,また引き続き御指導よろしくお願いしたいと。本当に長い間,御議論いただきまして,ありがとうございました。


【小林主査】  どうもありがとうございました。それでは,最後に常盤局長の方からも一言御挨拶いただければと思います。よろしくお願いします。


【常盤高等教育局長】  文部科学省の高等教育局長の常盤でございます。先生方には,大変それぞれのお仕事御多忙の中に,所得連動返還型奨学金制度有識者会議に御出席を賜りまして,具体的な制度設計のための議論を尽くしてきていただきまして,まことにありがとうございます。


昨年9月に,平成29年4月進学者から新たな所得連動返還型奨学金制度を導入できるようにということで,この会議を立ち上げ,10月2日に昨年第1回の会議を開催いたしました。そして,この間,今年の3月末には第1次まとめを取りまとめていただいた次第でございます。そして,第1次まとめを踏まえて,4月以降も,今後検討すべき事項について,引き続き御審議を頂き,12回にわたる会議の検討成果として,本日審議まとめの案の取りまとめを頂いたということでございます。大変ありがとうございました。


この間,今年,特に1月から6月まで開催されました通常国会におきましては,若者の学業を更に促進するという観点から,奨学金制度について,各政党から非常に多くの御関心を寄せていただきました。活発な国会審議が行われたということでございます。


ちょっと横にそれるかもしれませんが,文部科学省には多分100までは課がないかと思いますけれども,70,80は課という組織があるんですけれども,この通常国会では,最も国会質問を通告された課が学生・留学生課でございまして,奨学金の問題が文部科学省の全ての施策の中で最も国会の中で注目をされたという,そういう状況でございます。


こういう中で,6月にいわゆる1億総活躍プラン,それから,8月には経済対策が政府で閣議決定をされました。その中で,給付型奨学金の実現,無利子奨学金の拡充,そして所得連動返還型奨学金制度,こういうことを含めまして,政府としての奨学金制度の拡充という方向性が示されたところでございます。


これを受けて,来年度に向けての概算要求,明日が概算要求の締切りでございますけれども,私どもといたしましては,給付型奨学金の創設,それから,無利子奨学金の貸与人員の増員,そして所得連動返還型奨学金制度のシステム開発,こういう点についての予算の要求をしていく予定としております。


給付型奨学金について,更に実は,来年度の予算編成過程の中で制度を具体化して実現するというところまで踏み込んだ閣議決定を今頂いておりますので,この秋に更にまたその点でも議論を深めていきたいと考えているところでございます。


今回御議論いただいております所得連動返還型奨学金制度につきましては,本日お取りまとめを頂きました審議まとめをもとにいたしまして,来年4月から着実に開始ができますように,日本学生支援機構と連携・協力して,必要な制度改正や,生徒,学生,保護者などへの周知ということをしてまいりたいと考えてございます。先ほど小林主査の方から,基本的な具体的な制度設計を行って,その中でこれからまた,想定外のことも含めて,いろいろ実施面では課題もあるかもしれない。そのときに,文部科学省とJASSOとでよく連携をして事柄を進めるようにということでございましたけれども,これから,今回具体的な制度設計についてお取りまとめいただいたわけでございますけれども,詳細な設計,あるいは運用というところについて,まだやはり課題もあろうかと思います。その際,是非先生方には引き続き御指導いただきたいということをお願いを申し上げまして,この間,御協力いただいたことに対して改めて感謝を申し上げまして御挨拶としたいと思います。ありがとうございました。


【小林主査】  どうもありがとうございました。理事長,局長から非常に力強いお言葉を頂いて,バトンはしっかり渡されたと思っておりますので。ただ,まだやれということでありますので,これは委員の皆さんも一緒ですので,まだ任期はありますので,そのつもりでお願いいたします。


しかし,一応はこれで区切りが付いて,私としても,皆さんの御協力でまとめることができて,本当にほっとしております。


では,最後に事務局から事務連絡,よろしくお願いいたします。


【川村課長補佐】  先ほど小林主査からもございました,後日,この審議まとめにつきましては,本日の御意見を踏まえた修正につきまして,主査と調整させていただきました上で,委員の先生方にも最終的に御確認をいただければと思っておりますので,よろしくお願いいたします。


【小林主査】  それでは,これをもちまして所得連動返還型奨学金制度に関する有識者会議(第12回)を締めさせていただきます。皆さん,御協力どうもありがとうございました。




―― 了 ――

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高等教育局学生・留学生課