所得連動返還型奨学金制度有識者会議(第9回) 議事録

1.日時

平成28年4月28日(木曜日) 14時~16時

2.場所

一橋大学一橋講堂 特別会議室101、102

東京都千代田区一ツ橋2-1-2 学術総合センター1階

3.議題

  1. 所得連動返還型奨学金制度について
  2. その他

4.出席者

委員

小林委員,阪本委員,濱中委員,樋口委員,吉田委員

文部科学省

松尾大臣官房審議官,井上学生・留学生課長,川村学生・留学生課課長補佐,八島学生・留学生課課長補佐

オブザーバー

高橋理事長代理(日本学生支援機構),大木理事(日本学生支援機構),藤森奨学事業戦略部長(日本学生支援機構),宗野顧問弁護士(日本学生支援機構)

5.議事録

【小林主査】  それでは,時間になりましたので,ただいまから所得連動返還型奨学金制度有識者会議第9回を開催したいと思います。皆様には,新年度御多忙中の中,また,お足元が悪い中にもかかわらずお集まりいただきまして,誠にありがとうございます。本日,赤井委員,島委員及び不動委員は欠席であります。それから,樋口委員は少し遅れて見えられるということです。日本学生支援機構に異動がありましたので,お伝えしたいと思います。大木理事が着任されました。一言御挨拶をよろしくお願いいたします。


【大木理事】  どうぞよろしくお願いいたします。


【小林主査】  よろしくお願いします。


それでは,議事に入ります。まず,議事概要の確認についてですが,資料1,第8回議事概要(案)の内容を御確認ください。修正意見等があれば,5月10日火曜日までに事務局まで御連絡,お願いいたします。その後,私と事務局で修正内容を調整させていただいた上,議事概要として確定させ,文部科学省ウエブサイトに掲載させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。


それでは,議事を進めます。前回の会議では,当会議の中で方向性が定まっていなかった事項が幾つかあるわけですが,それについて今後こういうことを検討する必要があるということを確定いたしたわけであります。新たな所得連動返還型奨学金制度の創設についての第1次案をまとめることができました。皆さんの御協力に感謝いたします。既に第1次まとめ案は文部科学省のホームページにアップされております。


そこで,本日は,第1次まとめ案の中で,今後検討すべき事項として積み残しになった課題について引き続き検討を進めていきたいと思っております。ただ,これはいずれもなかなか難しい事項で残ったということもありますので,本日,もちろんまとまれば意見として集約したいと思っていますが,きょうはいろいろな意見を頂戴したいというふうに私の方は考えております。そういうことでよろしくお願いいたします。


では,事務局から,本日の資料について御説明,よろしくお願いいたします。


【川村課長補佐】  それでは,資料に基づきまして御説明させていただきます。「資料2」とございます「今後検討すべき事項」というもの,それから,資料3-1以降,関連資料の束ということで御用意しておりますけれども,こちらの両方を使いながら御説明をさせていただきます。


資料2,今後検討すべき事項につきましては,第1次まとめの中で,今後検討すべき事項として記載をされた事項,それぞれ7項目ございますけれども,新所得連動型制度について,丸1からということで,順に記載をしております。この点線の中身が第1次まとめにおきまして検討すべき課題として挙げられているものでございます。


まず1点目,貸与総額の上限設定でございますけれども,現行制度におきましては,複数の大学や大学院等に在学した場合に,それぞれの大学等で貸与を受けることが可能でございまして,貸与総額が多額となるということで,新所得連動型では,返還月額が所得に応じて決まるために,所得が低い場合に要返還額に大幅に返還額が満たないケースが生じる可能性があるということでございまして,上限設定についての検討でございます。


検討事項といたしまして,現行の貸与制限,どういう制度になっているか,また,貸与額・返還額がどういう現状にあるかということの資料3-1ということで御説明をさせていただきます。


資料3-1,横長の表をごらんいただけますでしょうか。貸与制限に係る現行制度でございますけれども,第一種奨学金におきましては,貸与可能な進学例ということで,例えば,学部4年間,修士2年間,その後,専門学校2年間ということで,進学先の学種がそれぞれ異なる場合には,全てにおいて修業年限分の貸与が可能となっております。


貸与が制限される場合でございますけれども,例えば,学部,修士と行った後,学部に行く分についてはここは1回だけ貸与が可能となっております。その後,例えば,修士ですとか専門学校といった形で,この学校種に行く場合には,これは貸与が不可となっておりまして,過去に貸与を受けた学種で再度貸与を希望する場合は,通算して1回のみ貸与が可能となっております。


なお,平成28年4月より,有利子奨学金においても貸与制限を行うこととなりまして,有利子奨学金の場合には,学種ごとに通算して1回のみ再度貸与可能ということでございます。


それから,次のページでございますけれども,無利子奨学金の貸与額の規模感でございます。3つパターンを並べておりますけれども,一番上が貸与額が低い場合の例でございます。学部4年間で月額3万円で4年間借りた場合に,144万円の貸与額となります。これが修士2年間で120万,博士3年間で288万ということで,博士まで行った場合には522万が累計になるというものでございます。


真ん中の段,最も貸与額が多い場合には,私立自宅外ということで,学部段階で307万円,修士では211万円,博士では439万円ということで,957万円というのが累計となってまいります。


貸与割合が最も多いパターンが一番下でございまして,私立の自宅生の場合,学部で259万円,修士で211万円,博士で439万円ということでございまして,累計としてこれぐらいの規模の貸与総額になるという資料でございます。


それでは,恐縮ですが,資料を戻っていただきまして,資料2,丸2でございます。貸与年齢の制限につきまして,第1次まとめの中では,大学等における学び直しの推進で,今後,社会人学生が増加するという中で,新所得連動返還型におきましては,返還期間が長期にわたる可能性があるということで,中高年で大学に入学し卒業した場合に,返還が終了しないケースが発生することが考えられるということでございます。


検討事項ということで,現在の貸与者の年齢別の人数,それから,諸外国の状況を踏まえた上での貸与年齢の制限の検討が必要であるということでございます。資料3-2をごらんいただけますでしょうか。縦長の,新規採用者の年代別の件数でございます。第一種,第二種別に掲載しておりますけれども,一番多いのは10歳から19歳のところで,合計で12万5,000件というのが新規貸与者の最も多い年代となってまいりますが,40代以上で504件というのが平成26年度の貸与件数でございます。この中には50代,60代,70代で貸与を受けられた方もいらっしゃいますので,そういった方々が新所得連動で返還した場合に,返還が終了しないケースがあり得るというところが課題となってまいります。


参考といたしまして,下のところに,諸外国における年齢制限,年齢の条件についてございますけれども,例えば,イギリスにおきましては,年齢制限自体はございませんが,60歳以上の方については,世帯年収によって貸与総額が制限されるという制度となっております。アメリカ,オーストラリアにおきましては,年齢制限はないというふうに承知をしております。


なお,返還免除の有無につきましては,返還期間又は死亡免除等が各国において用意をされております。


こういった現状に基づきまして,すみません,資料2の方にお戻りいただきまして,現行制度におきましては,貸与年齢の上限が制限されておりませんので,中高年で貸与を受けた場合に返還が終了しないケースが生じる可能性がございまして,貸与年齢の上限の制限,若しくは新所得連動による返還を年齢によって認めるか否かというところが論点になってこようかと思います。


続きまして,資料2を1ページおめくりいただきまして,学生等への周知でございます。丸3のところ,新所得連動型制度におきまして,これは新たな制度でございますので,返還方法,また,猶予等の救済措置,デフレ,インフレ等による返還負担等につきまして,学生等に周知を図ることが極めて重要であるということで,その方法,内容を検討,検証が必要であるということが指摘をされております。


検討事項といたしまして,まず,平成28年度の周知・広報計画についての御報告を申し上げます。資料3-3をごらんいただけますでしょうか。オレンジの資料でございます。こちら,日本学生支援機構の方で作成をした資料でございますけれども,まず,高等学校予約段階の周知・広報をどうするかということで,高校3年生に対しましては,周知用のチラシ,この次につけておりますが,こちらを高等学校に既に送付いたしまして,周知を依頼されているところでございます。JASSOのウエブサイトにも掲載しておりまして,このチラシを使って,まずは周知を図るということでございます。


それから,学校担当者等への説明でございますけれども,都道府県が主催する学校担当者向けの説明会において資料等を配布いたしまして説明をするということで,各県の今後の予定というのをこういった形で進めていくということでございます。今,26道府県での説明の実施が予定されておりますけれども,他の都府県にも働き掛けていくというような現状でございます。


保護者等に対しましては,PTA連合会が主催する説明会においての説明資料配布等を予定されております。


大学院の予約採用につきましても,同じくチラシ等での周知を予定されております。


チラシにつきましては,その次の資料,緑のもので,日本学生支援機構の方で作成されております。定額返還型と新所得連動型,社会人になって返す月額がそれぞれ選べるということで,一定額を返還するか,年収に応じた月額による返還となるかということで,選択可能になるという旨をお知らせするとともに,裏面では,Q&Aによりまして,条件ですとか,また,対象等につきまして案内をしております。


それから,次,すみません,資料2の方にお戻りいただきまして,丸4でございますが,海外居住者の所得の把握・返還方法でございます。マイナンバー制度によりましては,海外居住者の所得を把握することができないという制度になっておりますので,卒業後に海外に居住する方について,どういう形で所得を把握し,返還をするかということについて検討が必要でございます。マイナンバー制度におきましては,住民票を除して海外に転出した方については,マイナンバーが付与されません。また,取得後に海外に転出した場合につきましては,マイナンバーの利用ができなくなりますので,所得を把握することができないということでございます。


現在,海外に居住している方がおられますが,返還方法といたしましては口座振替が原則でございまして,日本学生支援機構が指定する国内の取扱い金融機関での口座加入又は振り替えということで,返還をされております。ただし,日本国内の金融機関での口座加入がどうしてもできない場合には,送金手数料を本人負担の上,学生支援機構の指定口座に送金するということも可能となっております。


検討事項としましては,マイナンバーによる所得把握が不可能となるということで,返還額の設定をどのように行うか,検討が必要となってまいります。


次のページでございます。丸5,有利子奨学金への導入に係る検討でございます。新所得連動型制度につきましては,無利子奨学金から先行的に導入することとされておりますが,有利子奨学金への導入について,無利子奨学金における運用状況を見つつ検討を行うことが必要であるということで,検討事項として,有利子への導入に当たっての課題の整理がまず必要であろうかと思います。


関係資料,3-4から3-6でございます。恐縮ですが,資料3-4をまずごらんいただければと思います。資料3-4につきましては,無利子と有利子の事業規模につきまして比較したものを,資料として御用意しております。平成28年度の予算人員でございますが,無利子におきましては貸与人員が約48万人,有利子は84万人ということで,2倍弱といった規模となっております。有利子が2倍弱ということでございます。事業費におきましても,3,200億と7,700億ということでございます。返還者数,一番下でございますが,無利子は154万8,000人,有利子は245万人ということで,有利子の規模が大変大きくなっております。


資料3-5をごらんいただけますでしょうか。有利子奨学金の財政構造について御説明をいたします。有利子奨学金につきましては,基本的に民間資金を原資としておりまして,財政融資資金,財投機関債,民間資金借入金等によりまして,これを原資といたしまして奨学金の貸与を行っております。平成28年度は7,700億円規模の貸与でございます。これを卒業して返還するということでございますが,28年度の返還金は元金相当として5,179億,利息として408億円ということで,この元金を基に日本学生支援機構が償還をするということで,それぞれ元金と利息ということでございます。


利子補給金ということで,在学中につきましては利子が掛からない制度となっておりまして,これは一般会計の方から利子分の補給金というものがございます。返還期間が長くなった場合におきましては,日本学生支援機構から民間市場への利息が上がってまいりますので,返還する方から返還金の利息分というのが上がってくるといった課題がございます。


それがどれぐらい上がるかということで試算をしたものが資料3-6でございます。資料3-6は,貸与総額が240万円,月額5万円を有利子で貸与した場合の返還額の試算でございます。一番下が現行の定額返還の場合の返還総額,また,返還年数,利子総額でございまして,例えば,現行の固定0.16%の貸与利率である場合,240万に対して3万870円の利子が掛かるということでございます。これが1%の場合は19万7,000円,3%上限の場合には61万8,000円ということでございますが,これが上の方に参りまして,年収400万円,300万円,200万円の場合に利子額がどういう形になるかということでございます。


上の年収400万円の場合には,返還月額は1万3,460円でございますけれども,0.16%で3万1,000円,1%で21万円,3%で82万円ということで,現行と比べて若干利子総額が上がってまいります。


これが年収300万円になってまいりますと,0.1%で4万6,000円,1%で33万円,3%で165万円ということで,年収300万円が仮にずっと続いた場合には,例えば,3%ですと,返還年数が38年という形になります。


年収200万円の場合には,0.16%で8万8,000円の利子総額,1%の場合には75万円ということで,現行と比べてかなり利子負担が重くなってまいります。3%の場合には,利子が非常に高くなりますので,返還することがそもそもできないというようなことになってまいりまして,年収200万円の場合には,返還年数がかなり現行と比べて長くなってくるというような課題がございます。こちらが有利子奨学金を導入する場合の課題でございます。


すみません,資料2の方にお戻りいただきまして,丸6でございますが,デフレ・インフレ等の経済情勢の変化に伴う詳細設計の見直しということで,新所得連動型における返還の負担におきましては,物価が重要な要因となるということで,今後,デフレやインフレ等の経済情勢の変化に伴いまして,実質所得を考慮に入れた上で,制度の安定性・公平性について随時見直しを行っていくことが必要であるというような指摘がございます。


検討事項といたしまして,デフレ・インフレが実質的な返還額にもたらす影響を踏まえた上で,どういった課題があるかということを整理する必要があるのではないかということでございます。


最後,丸7でございますが,既に返還を開始している者等への適用ということでございます。新制度は,平成29年度の新規貸与者から適用することとしておりますが,既に返還を開始している方,また,現在貸与を受けている方に適用するかどうかについても検討が求められるということでございます。


検討課題といたしまして,まず,返還猶予制度,また,減額返還制度というものが現在の救済措置としてございますので,それとの関係の整理がございます。その上で,仮に既に返還を開始している方に適用する場合に,適用する範囲,対象者,また,後ほど御説明しますが,返還金が減少いたしますので,その財源の確保,さらに,返還方法が変更になることに伴いまして,契約変更手続等,事務コストが増加するという点,さらには返還中の方からマイナンバーをどのように取得するかということも検討課題となってまいります。


資料3-7の方をごらんいただけますでしょうか。横長の,返還困難者への救済措置という資料でございます。現在の救済措置でございますけれども,まず,減額返還制度がございます。これは平成23年1月に導入されたものでございまして,経済的理由により返還が困難となっている方のうち,当初の割賦金額を減額すれば返還が可能となるという方について,一定の要件を満たすことで,割賦金額を2分の1に減額して,返還期間を延長することで負担軽減を図るという制度がございます。平成26年度は1万6,000件余りを承認したということでございます。これはある種の所得に応じた返還額の変更という制度でございますけれども,右側にございますとおり,5年間で返還すべき金額を,返還期間を10年延ばすということで,返還月額を2分の1にするというような制度でございます。


それから,返還期限猶予制度でございますけれども,こちらは在学猶予と一般猶予がございますけれども,一般猶予につきまして,これは経済困難,また,災害,病気等での猶予ということで,承認事由といたしましては,参考のところにございますとおり,経済困難の理由による承認が87.4%ということでございます。大体年収300万円以下の方につきましては,その事由が続いている間,返還が猶予されるということで,通算して通常の場合は10年が限度となっておりますけれども,こういった猶予制度がございます。


こういった猶予,また,減額返還制度がある中で,更に既に返還を開始している方について,新所得連動型制度を適用するかどうかということが課題となってまいります。


続きまして,資料3-8でございますけれども,既に返還を開始している方に新所得連動を適用した場合,返還金が減少するというイメージでございます。例えば,現在,私立自宅生で借りられた方が返還額1万4,400円でございますけれども,1万4,400円を返還するところ,新所得連動に移行した場合は,返還金が減少いたします。例えば,年収144万円までの方につきましては,1万4,400円が2000円という形で返還額が減少しますので,一時的に返還金の総額が減少してまいります。これを全ての方に適用するとした場合には,相当な額の返還金の減少になりますので,その分,それを原資として新たに貸与することができなくなってまいりますので,現在の貸与規模を続ける場合には,追加で財源が必要となってまいります。こういった課題がございますので,仮に既返還者に適用することとした場合,その範囲をどのような形で考えるかということが課題となってまいります。


それから,すみません,机上資料で,委員の先生方だけに御用意しております,平成26年度末の猶予年数別債権数というものがございます。横長の資料でございますけれども,猶予利用年数別の債権数ということで,返還猶予制度は現在10年が上限でございますけれども,10年までの期間,どれぐらいの期間を利用されている方が何人いるかという資料でございます。第一種におきましては,1年以下,また,それからずっと参りまして,10年以下というところまでそれぞれ数字が入っておりまして,今,こういった返還猶予期間をどれだけ利用しているかということも参考にしつつ,既に返還を開始している方についてどのように適用するかということも検討されることが考えられますので,資料として御用意をさせていただいております。  説明は以上でございます。


【小林主査】  ありがとうございました。


ただいまの御説明に対しまして,まず,御質問ございませんでしょうか。特に事実関係等ではっきりさせておきたいというようなことがございましたらお願いいたしたいと思いますが,いかがでしょうか。


よろしいでしょうか。また議論の中でも御質問等が出てくると思いますので,それでは,ここから,これまでの説明を踏まえまして,今後検討すべき事項について,順番に自由に発言していただければと思います。先ほどありました様々な資料,あるいは机上資料も参考にしていただきたいと思います。


この順序に従っていきたいと思うのですが,所得連動返還型の場合,今までの議論でもよくあったことですが,それぞれの事項が相互に関連しておりますので,なかなか1つの事項だけに限定するというのは難しいところもありますけれど,一応,この順序に従ってやっていきたいと思います。


初めに貸与総額の上限設定についてですけれど,これにつきましては,2つ異なる問題が含まれておりまして,1つは,事務局から説明がありましたように,複数の奨学金を貸与した場合に貸与総額が大きくなる,特に所得連動返還型では貸与総額が大きくなった場合に返し切れないという問題が生じることをどうするかという問題,これは資料3-1にある問題です。


それから,もう一つは,これはこの有識者会議の前の学生への経済的支援の在り方会議のときによく議論になったことですけれど,貸与総額自体が大き過ぎることが返還困難を生んでいるのではないかということで,もう少し減らすべきだという意見が出ていました。これはもともとの貸与額を減らすという意味ですので,議論として若干違うことですが,その2つが入っております。


それに関連しまして,2番目の事項と関係するわけですが,社会人の学び直しとか通信制の大学とかの進学に際しては,やはり年齢的に返すのが難しい場合には貸与総額を制限するべきではないかという意見もあったと思いますので,そのあたりを含めて御意見を頂ければと思います。


先ほど申し上げましたように,きょう,議論が集約できればそれに越したことはございませんけれども,きょうは委員の方からいろいろな意見をまずお伺いしたいと思っておりますので,よろしくお願いします。


まず,それでは,異なる学校種,現行では1回だけ通算して認めるという制限を掛けているということですけれど,これについてはいかがでしょうか。  これは吉田委員にお伺いしたいのですけれど,たしかアメリカの場合には,最初のローンを返済しない限り次のローンを申し込めないというようなスキームがあったような記憶があるのですけれど,そういうことはなかったですか。


【吉田委員】  すみません,そのことについては確認をしてからまたお答えしたいと思うんですが,貸与総額についてももちろんアメリカでは規定があります。ですので,毎年借りられる額が少しずつは上がっていくんですが,学部時代の総額というのは決まっていますし,それから,大学院時代に借りたものというのは,学部時代と合計して,ここで言うところの累計額でやはり貸与総額が決まっています。


こちらで示されているように,過去に貸与を受けた学種で再度貸与できるかどうかということについては,細かい規定は連邦のサイトの上では確認はできなかったんですけれども,現在は大学院生の場合は利子補給付きのスタフォードローンですと,6万5,500ドルまで累計で借りられます。それから,利子の補給の付いていないものについては,13万8,500ドルまで。かなり高額にはなります。これは学部時代のものも含めたものです。ですので,実際,アメリカでも借り過ぎているという話はあります。


【小林主査】  ありがとうございました。


イギリスとかオーストラリアの場合は授業料相当額がまず充当しますから,授業料と連動しているということになります。これがかなり現在高額になっておりますので,イギリスの場合でいうと9,000ポンドですから,総額はその3年分ということになります。それに生活費についてもローンという形になりますので,貸与総額は相当大きくなるわけで,回収ができないことが問題になっているということですね。


それから,オーストラリアの場合も,最初は授業料相当額は相当低かったのですけれど,現在,相当上がってきておりますので,やはり未回収が生じるのではないかということが問題になっているというような,そういう状況があるかと思いますけれど,それらを踏まえまして,いかがでしょうか。最初の問題ですけれども,現行では1回限り認めるということでやっているわけですが,それについては特に御意見はございませんでしょうか。


どうぞ。


【濱中委員】  意見というよりもまずは質問になりますけど,今,この問題を検討するに当たっては,現行の回数制限を踏襲するか,それとも現行より更に制限をきつくすることを考えるべきか、ということが論点になるのでしょうか。


【小林主査】  主な論点といたしましては,貸与総額が多くなるから回収が難しくなるということですので,制限する方向だと考えられますが,もちろん逆の考え方があってもいいと思いますので,どちらかということではないかと思います。


【濱中委員】  個人的には,諸外国の例を見ても普通,制限がありますし,先ほどオーストラリアの例が出ましたが,最近変わっていなければということになりますけれども,大分前に調査に行ったときは,オーストラリアはフルタイム学生として7年分の在籍についてはHECSと呼ばれるローンが利用できるという形になっています。無制限に何度も税金が入った形での補助,支援が行われるというのは,国際的に見ても余りないとすると,総額で制限するのか年数で制限するのかちょっと微妙ですけれど,やはり何らかの制限は掛けるべきだと思います。学部で2回貸与されたとしても,学部に2回で8年ですから,そのあたりまでは良いかなという気もしますけれども,他の学種も含めて10年以上まで可能となると、ちょっと長すぎるのではないかというふうには思います。


【小林主査】  逆に,そうしますと,現在1回だけ借りられるというのは,これはどういう考え方に基づくかということをもう少し事務局から御説明していただけると有り難いと思うんですけれども。


【川村課長補佐】  考え方?


【小林主査】  考え方ですね。


【川村課長補佐】  考え方でございますか。考え方は,すみません,当時,制度を創設したときのことは私は承知しておりませんので,現行の無利子につきましては,学種ごとに1回ずつは借りられるということで,更に学びたいといった場合にどう対応するかというときに,同じ学校種で1回までは認めようというところで現行制度としてはなっているということでございます。


【小林主査】  やはり学び直しという観点が,そういう言葉を使っているかどうかは別ですけれども,入っているのではないかと思いますけれど,これについていかがですか。


どうぞ。


【阪本委員】  制限のことなんですけれども,ここで議論するのは,所得連動型に限って制限をきつくするという。確認なんですが。


【小林主査】  はい。所得連動型の場合には,返済できないおそれがありますので,その辺との関係で,総額を規制するべきかどうかという議論です。


【阪本委員】  であれば,現在の制限で可能であればそれはそれでよいという判断をするということになりますよね。その場合に,例えば,下の累計額でいう729万円とかというので,どれぐらいその後返済の期間が掛かるのかという観点がちょっと分からないので,そのあたりが何か明らかになるような資料等があればいいかなというふうに思いますが。


【小林主査】  これはシミュレーション上でできる話だと思いますので,次回にこの場合にどの程度返還期間がかかるのかとか,そういうことを少し出していただければ,モデルケースで結構だと思いますので,1次まとめ案で形は決まっていますので,それをシミュレーションしていただければ,何年くらい掛かってどの程度返済できるか,あるいは返済できないことになるのかということが分かりますので,それがあった方が,確かに阪本委員が言われるように非常に議論はしやすいと思いますので,確かにいきなりここで出して,どちらがいいでしょうかと言われてもお困りだと思います。


これも今までずっと出てきた問題ですけれど,もちろん教育費の負担を軽減したり,社会人の学び直しを支援するという意味では優しい制度の方がいいわけですけれど,そうしますと回収が落ちるという,何回も出てきた問題ですけれど,そういう問題がありますので,もう少しそういう根拠があった方が確かに議論がしやすいと思いますので,それでは、そのようにということでよろしいでしょうか。


どうぞ。


【濱中委員】  シミュレーションの際にちょっと考慮していただきたいのは,資料3-1を見ると順番に貸与を受けた場合の累計額になっているのですが,学び直しということであれば,恐らく学部と修士は連続して通ったとしても,その後一旦社会人として働いている期間に,それまでに借りている470万4,000円のかなりの部分は返還された状態で新しく借りるということになることです。何かしら制限を設けるにしても,貸与総額というよりは,残元金というんですかね,残高で制限を掛ける方が合理的かも知れません。


【小林主査】  先ほどアメリカの事例についてちょっとお聞きしたのもそういうことがありまして,特に比較的高齢になってから学び直しということで考えた場合には,もう返済は終わっている可能性もありますので,そういうときに逆に通算して1回しか借りられないというのがいいかどうかということも議論できると思いますので,もう少し柔軟に考えるべきという考え方もあるかと思いますので,残額というのは確かに一つの考え方だろうと思います。ありがとうございました。


どうぞ。


【樋口委員】  ちょっとよろしいですか。議論する上で教えていただきたいんですが,今,給付型の話が大分議論がなされてきて,それが実行されるかどうかというのは今後決定されるんだろうと思いますけれど,それとの組合せというのを考えていくものなのか,給付型を選んだ人というか,ほとんど給付型の人たちと思うんですけれども,それを選んだ上でこういった貸与の議論,足りない部分について貸与を認めるというような形でのローンが組める,奨学金が組めるというようなスタイルというのを考えていくのかによって,総額のところというのは相当変わってくるのかなというふうに思っておりまして,この後の議論も大分それと関連してくるところはあるので,ちょっと教えていただけますかね。


【小林主査】  事務局からどうぞお願いいたします。


【井上学生・留学生課長】  給付型の方はまだ文科省においても検討中でありますので,明確なことは申し上げることはできないんですけれども,現在も例えば,無利子を借りる方が,総額が足りないということで無利子と有利子を2つ,ダブルで借りていらっしゃる方がいたりしますので,恐らく実際,ユーザーの立場に立てば,給付というものが仮にできたとして,給付を受けたのに加えて貸与も受けたいという方は出てくるのではないかと想定されます。


【樋口委員】  おのずからそのときにはプライオリティーというか,借りる方にしても,借りるというか,ユーザーがとおっしゃいましたけれども,そちらのスタンスから考えても,まずは給付でいって,その後どうするかとかという話になってくるわけですよね。もしそうだとすると,ここでの議論というのも,この後,それを想定した上で議論していくのかどうかということによって,大分全体的な議論というのが変わってくるなというふうに思うんですね。


【小林主査】  どうぞ,審議官。


【松尾大臣官房審議官】  今,樋口先生が言われたとおりであります。ただ,一方で,多分,学生の立場からすれば,給付というのはできれば給付して,貸与ということになるんだと思います。ただ,中でのいろいろな議論がございまして,本当に給付ができるのかどうかといって,できたとして,給付の規模がどうなるのかとか,あるいは,本当に渡し切りにするのがいいのかというのがありまして,今の免除のような形で実質的な給付にするのがいいのか,実はまだいろいろなパターンがございます。


したがいまして,なかなか結果が見えない中で御議論を頂くので,恐らく条件,こういうパターンであればこうであるとか,あるいは,総額であれば,大体が総額こうなんだけれども,その中でパターンとしていろいろなパターンがあったときにどうしていくのかという,飽くまでも暫定的なシミュレーションといいますか,頭の体操をしていただくということにしか多分ならないんだと思いますが,さはさりとて,やっぱり借りる方,あるいは給付を受ける,できるかどうかはあれですけれども,にしてみると,何となくイメージをつかんでいただくことが必要でありますので,御議論していただいて,その中でエッセンスを少しまとめていきながら,いろいろなことが条件が,バウンダリーコンディションが決まった段階で少し集約をしていくと。多分,そんな御議論,そこが決まるまで何も進めないということになると,すごくデッドタイムが出てきますので,そういった少し頭の体操をしていただきながら,バウンダリーコンディションとうまくすり合わせをしていくというようなパターンで御議論いただけると有り難いと思います。


【樋口委員】  シミュレーションですから,何通りもできるというのがシミュレーションで,それぞれについて議論をしておくというのもいいと思うんですけれども,組合せが物すごく多くなってきますよね。それによって大分議論が変わってくるだろうなというところがあって,この後の有利子のところとの組合せとかということについても,またそこで1つ組合せが出てくる。無限大とは言いませんけれど,相当の組合せというのをシミュレーションでやっておく必要が出てきて,どちらが建設的かなという話です。


【松尾大臣官房審議官】  ただ,給付型の議論も,さはさりとて,確実に全部が給付型になるわけではないと思います。あり得るパターンとしては,渡し切りなのか,免除なのか,あるなしは別途として,金額的にもそんな大きな金額で給付ができるかというと,今の財源の観点から言ったりなんかすると,やっぱりそこは難しゅうございます。過去の一般奨学金と特定奨学金のことであっても,恐らく一部は何割かは免除にして,支払ったらこれを免除にするというような形でありますので,金額的にも多分その給付の,あるいは給付的なものができたとしても,それでもって全額それで学校に行けますという形にはなるというのは相当ないのではないかと思います。そういう意味で言うと,ある一部はそういうことでパターンとしておると。


だから,大きな全体が給付で全部行ってしまえば,それは無限大のパターンでありましょうけれども,恐らくはあったとしても何らかの一部ということにならざるを得ないのではないかと思いますので,それを前提に御議論いただくというのが一番建設的なのかなというふうに思う次第であります。なかなか確定したことが現段階で言えなくて恐縮なのでありますけれども。


【樋口委員】  例えば,今の丸1,丸2の議論をするときにも,幾ら給付を受けている人を想定するのか,あるいは給付を受けていない人も出てくるというのは当然そうだと思うんです。それによって,幾らまで総額を設定するのかというところはかなり違ってくるだろうなというふうに思って,考え方を整理するというのはあれなんですが,金額ベースで議論し切れるのかなというところですね。


【松尾大臣官房審議官】  確かにおっしゃるとおりで,ある程度考え方の整理を頂いて,それでシミュレーションはその後というのも,そこは物すごくそうだと思います。


【小林主査】  今の議論で出てきた問題ですけれども,給付型をすることによって総額を減らせる面が確かにあるわけですが,もう一つ確認しておきたいことは,先ほど併用のことを少しおっしゃっていましたけれど,併用する場合には逆に増えるわけですよね。これは全く併用のことは入っていない議論なので,そうすると,かなりまた幅は,給付型で減る部分もあれば,併用していくことによって総額がもっと大きくなる場合までいろいろなケースがあるわけですね。ですから,そのあたり,どこまで学生生活費が必要かということと,それと,それをどういうふうにして調達するかということを組み合わせて考えなければいけないと思いますので,少しまた事務局と御相談して,考え方の整理をして,その辺,シミュレーションができれば一番望ましいので,そこまで次回できるかどうか分かりませんけれど,そういうことで進めさせていただければと思いますが,よろしいでしょうか。


ありがとうございました。


ですから,2番目の議論に非常に入っているわけなんですが,総額を規制するといいますか,総額の問題と同時に,特に年齢の高い方についてどういうふうに考えていくべきかという問題が,これは前回までの議論でも,きょうは御欠席ですけれども,島委員の方から,65歳なり30年,どちらか選択にするべきだという議論も出ておりまして,これは法律改正が必要だということもありまして,たしかすぐには間に合わないというお話だったと思いますが,そういった,現行ではこれは貸与されている方が死亡するまでということで一応決着したわけでありますけれども,その場合でも更に年齢の制限を課すべきかと。そういう議論なんですが,それについてはいかがでしょうか。


これもなかなか学び直しを促進するという観点からは,制限を掛けてしまうというのはどうかという意見も片方ではありますけれど,相当御高齢の方が借りられたときに,本当に所得連動型で返し切るのかという問題があるということでありますので,御意見を頂けたらと思いますが。


どうぞ。


【濱中委員】  単純に年齢で区切ると,別に所得連動型ではなくて,現行の返還方法でも,70代で借りた方が20年という返還期間で本当に返せるのかというのはかなり疑問ですよね,正直言って。とはいえ、樋口先生が前からおっしゃっていたと思うのですけれども,年齢で単純に区切るというのはちょっと理屈が立たないかなと。特に学び直しが話題になっていますけれども,1回目の高等教育を受ける人にとっては,生涯のうち1回の高等教育機関への進学費用を、年齢を理由に支援できないというのはおかしいのではないかと思うので,私は年齢で制限するよりは,やはり先ほど議論した貸与総額なり貸与年数の方で制限を掛けるというのが筋かなというふうに思います。


そもそも年齢によって制限を掛けて良いのかという問題はともかくとしても,現行制度では,制限を掛けずに貸しているわけですよね。恐らく在学採用になるので,大学の方が適格と判断するかどうかということで,JASSOは貸し手としての責任を負わないという仕組みになっているのだと思いますが,それを今早急に変えるのは難しいかなと思います。


【小林主査】  ほかにございますでしょうか。


どうぞ。


【阪本委員】  学び直しというふうに言った場合に,例えば,30代から40代の人たちが新たなチャンスを求める場合と,文系の方ではよくあることですけれども,半分趣味の延長的な形で学び直しを,65歳ぐらいから来られるというのはかなり意味が違って,新たな投資としてこられるケースというのは,この中に含めて考えてもよいとは思うんですけれども,そういう最後の,第二の人生的な形で学び直しをされる方に関して,そもそもこういう,形としてはローンの形をとるのがいいというふうにはやっぱり思えないので,目的でというのはなかなか難しいとは思うのですけれども,ある程度推定される目的によって制限が掛かるような制度をうまく考える必要はあるのかなというふうに思ったりします。


【小林主査】  お二人の意見とも,年齢で機械的に切るというのは少々問題があるということは共通しているかと思いますけれども,それを具体的にどこで判断するかという判断基準がなかなか難しいと思うんですけれど,確かに在学採用の場合,大学が推薦するという形になっていますので,そこで大学側というのも一つですけれども,それもまた難しいような気がするのですが,そのあたりはいかがなんでしょうか。大学に投げられても,大学側もなかなか困ると思うのですが。


私,放送大学の方の客員教員もやっていますけれど,放送大学ですと,そういったまさしく60代,70代で,しかも専攻を3つも4つも卒業されている方もいらっしゃいまして,10年,15年と大学でずっと学生をやっておられる方もいますし,そういう方にとっても,ちょっと語弊があったら申し訳ないのですけれど,先ほど阪本委員が言われた,趣味とかというのとは少々違うのではないかなという気もしないではないので,そこは中高年の場合は,投資じゃなくて趣味だからというのは少々どうかなという気は私自身はしますけれど,難しい問題だとは思いますが。


ほかに御意見。どうぞ。


【阪本委員】  すみません,今の趣味という言葉が問題があれば,将来の所得の獲得を目的としていないという意味で申し上げたつもりです。 【小林主査】  私も別に言葉だけでそんなに問題視することではございませんので。


ほかに御意見ございませんでしょうか。


どうぞ。


【樋口委員】  今度,雇用保険の法律改正をこの間やって,今,65歳までが加入ということだったんですが,天井を外すということで,65歳を過ぎてもと。早晩,年齢差別の話と関連するテーマというのが出てきて,特にこの場合,公的な制度ですから,年齢でやるということはそれに抵触しないのかどうかというところというのはやっぱり考えておく必要があるんじゃないかなというふうに思いますよね。


【小林主査】  それと,厚労省の事業としてかなり社会人の学び直しをやっておりますので,そのあたりとも,先ほどの給付型と同じ問題ですけれど,やはりここだけで見ないで,そちらも見て,社会人の学び直しをどう考えるかという視点から見直すということが必要ではないかと思うんですけれど。そのあたり,厚労省の事業とか,次回,少し紹介していただけますか。その方が,あと,ここに参考資料として,授業料減免が一番初めのところに書いてありますけれど,国立大学・私立大学等の授業料減免ということで406億円ですから,これもかなりの規模ですので,これは余り周知されていないような気がするんですね。これだけ大きな事業規模になっているのですけれど,余り周知されていないということは私自身は問題だと思っていまして,そういう意味で,このことも併せて次回少しこういう制度があるということを,給付型の制度が幾つか既に走っているわけですから,それについても少し資料を用意していただければと思うのですが,よろしいでしょうか。ありがとうございました。


ほかに御意見ございませんでしょうか。


そうしましたら,きょうの議論としては,年齢で切るということはやはり非常に望ましくないということについては御同意を得たかと思います。


次に,学生等への周知の方法・内容ですが,これについてはいかがでしょうか。先ほどこういう形で説明会等を行うということとか,パンフレットの説明があったわけですが。


どうぞ。


【吉田委員】  すみません,資料3-3にありました,上から2行目のところの「学校担当者等」の説明のところなんですけれども,先ほどたしか26都道府県で現在行われているということなんですが,これはなかなか全都道府県ということにはならないのでしょうか。どのように推進をされているのか,取組についてもう少し御説明いただければと思うんですけれど。


【小林主査】  それでは,JASSOの方からお願いいたします。


【藤森奨学事業戦略部長】  これにつきましては,全部の都道府県に一応,アンケートというか,調査の紙をお送りいたしまして,どういう取組を可能としているか,そもそもそういう教職員の方の進路指導,そういった会議等に私どもの職員を派遣できるか,あるいは資料を配布していただけるかということを,協力を要請しつつ調査をして,積極的な回答を頂けたところが今のところ26ということで,まだこれから働き掛けは続けて,だんだん増えていますので,徐々に増やしてはいるところでございます。


【吉田委員】  非常に大事だと思っています。特に高等学校の進路指導の先生,主事の方とか又は担任の先生がどれだけこういった制度について周知をしているかによって,高校生,生徒に情報が伝わる確率がかなり違ってくると思っていますので,是非全都道府県で行っていただけるように働き掛けるべきではないかなというふうに思っています。


【小林主査】  ありがとうございました。


ほかにございませんでしょうか。どうぞ。


【濱中委員】  意見というよりは質問に近いのですが,資料3-3は新所得連動返還型制度に関する周知についてということで説明会を実施するとなっていますけれど,実際にはこれは奨学金全般の説明会になりますよね。だとすると,所得連動返還型も含めて第二種奨学金から,併用貸与からありとあらゆる返還方法の組合せを説明することになってかなり複雑というか,組合せをちょっと考えただけでも何パターンになるのか分からないぐらいたくさんあるわけで,それに猶予の説明とかもしなくてはならない。所得連動返還型に特化した説明会ではなく、そういうのも全部ひっくるめた説明会ということになりますよね。


【藤森奨学事業戦略部長】  もちろんそれだけではなくて,例えば,高校生の方に見てもらう,あるいは高校生の方や保護者に見ていただくためのいわゆるビデオ,動画を作ってホームページに載せたり,全国の高等学校にDVDのディスクにして配ったりとかいうこともやっていますし,あと,今年度からの取組として,申込みの画面の中で,周知ということの結果というとあれなんですけれども,こういう奨学金は,例えば,借りたもので返さなければいけないということを知っていますかということ,そういうことを一つ一つ確認してもらうような仕掛けも組み込んだりとか,そういうことをやりつつ,先生方にそういったツールも活用していただきながら御指導をお願いするというようなことになろうかと思います。


【濱中委員】  結局のところ説明会等において重要なのは,新しく作った制度を学生さんに推すのか推さないのかという点だと思います。恐らく今までのJASSOのやり方だと,「返還方法は2つあります,どちらかを選んでください。」という説明の仕方をすることになると思うんですね。だけど,委員の立場からは,せっかく新しい制度を作ったわけですからなるべくこちらを利用してもらいたいという思いはもちろんあって,そこをどう考えるかが結構重要かなと。自分たちで設計した感じでは,所得連動型を選択することに不利益はほとんどないというふうには理解しているのですが,選択制にするって決めてしまったので仕方ないですけれど,どちらの返還方法をデフォルトと考えて説明するのかによってかなり気分が変わってくると思うんです,受け取る側(がわ)も。そこのところをちょっと教えていただけるといいかなと思うんですけれど。


【大木理事】  その辺のウエートの置き方,どういう制度ができて,どういう形で事業展開していくかというところに依拠する部分が非常に強いと思いますので,よく文部科学省の方と調整しながら,先生方のここでの雰囲気も踏まえて,どうするか考えていきたいと思います。


【小林主査】  頂いたパンフレットの裏のFAQで,真ん中の4番目のところで,「奨学金を返すときのことが心配で,借りるべきか迷っています」というところについて,新所得連動型は年収に応じて返還することができるようになり,年収が少ない場合は定額返還型よりも返還負担が軽減されますので,奨学金の利用を検討してみてくださいと。そういうことをうたっているのですが,「なお」のところでは,返還月額が低額になるため,年収が少ない場合には返還期間が長くなる場合がありますので御注意くださいと。これは両方書いた方がいいので書いているとは思うのですが,これだと選択になかなか迷うことになるわけです。ですから,そのあたりのことをどう考えるかという問題で,確かに難しいので,私は個人的な意見としては,ホームページに載せているからとか,こちらで説明しているからというだけではなかなか今の学生とか保護者に十分に伝わるのかなというのは非常に危惧します。今の学生は,ホームページなんか余り見ないで,むしろSNSとかを使って情報を交換しているわけですから,そのあたり,SNSの利用とか,そういうことはお考えになっておられないんでしょうか。


【大木理事】  今現在はホームページの周知だけになっておるわけですけれど,これの作りを見ても,後ろにホームページのサイトを書いただけになっておるわけで,これを例えば,二次元バーコードを付けたらどうなるかなとか,それから,SNSと言われて,どれを選択するかにもよるでしょうけれども,例えば,ビデオなんか,動画の資産があるのであれば,それをユーチューブに転用したときにどういう効果が出るだろうか,いろいろな展開の仕方を考えてみようと思います。


【小林主査】  是非御検討いただきたいと思います。


それから,もう一つ,私,すみません,気になるのは,問合せへの対応をどういうふうにするかということで,これがなかなか厳しい問題だと思うのですが,これは文部科学省と日本学生支援機構の両方に問合せが直接来るということは十分考えられるわけでありますけれど,その対応はどのようになっているんでしょうか。


【井上学生・留学生課長】  基本的には,奨学金,文科省でも現在も来ますが,どちらかというと一般的なお問合せで,恐らく借りる方のお問合せはほぼ100%,今,JASSOに行っていると思うので,実際は恐らく今回,御質問は,迷っている方が自分の状況を説明して,どっちが適切かとか,そういったケースが多くなると思うんですね。だから,恐らくそこら辺に対応できるような体制をとることが大事だとは思っておりますが,まだそこは検討途上というところでありますけれども。


【松尾大臣官房審議官】  多分,現実,実際どうなるか分からないんですけれども,各個人からすると,恐らくJASSOに問い合わせる,文科省に問い合わせるというよりも,本当に学校に相談をしたり,身近だと思います。それで,JASSOとか我々のところに来るのは,学校の方からとか,そういう問合せはあると思うんです。したがって,どういうレベルのというか,どういう方が来るのかというのをよく精査をして,それで,文科省に来てもJASSOに来ても一枚岩で答えられるような形にして,さっきの重きの置き方もそうなんですけれども,というようなことで少し対応するか,あるいはどこかでワンストップにするか,あるいは本当に学校の先生方とよく密にして連絡をとれるようにするか,少しそこは工夫をしないといけないかと思います。


あと,それから,やっぱり先ほど大木理事からもありましたけれども,ただ単にホームページうんぬんというんじゃなくて,本当に届くようにしていかないと,多分,使われないでしょうし,いい制度を作っても,本当に周知されなければそのままになってしまいますので,そこは少し工夫をしてみたいと思いますので,またお知恵を拝借というか,多分,広報するだけというよりも,本当に大学であるとか,あるいは地元の親御さんに届くようにするにはPTA会を使ったらいいのかとか,いろいろなやり方があると思いますので,現地に本当に届くようにするにはどうすればいいのかというのをまた御意見を頂ければ,親御さんを含めて周知をできるような形にしたいと思いますので,よろしくお願いします。


【小林主査】  どうぞ。


【吉田委員】  今の御意見についてなんですけれども,例えば,アメリカでは,各高校レベルで必ず奨学金の説明会というのをやっています。カウンセラーが主催をするんですけれども,そこに地域のNPOの方たちが協力したりとか,そして,州の奨学金課の方がそこに行って説明をするということをやって,学校レベルで説明会を行っています。そこに親御さんたちが夜やってきて話を聞くという。対面で説明を聞くので,非常によく分かるという,そういう地道な活動をかなり活発にやっておられるというのがあります。ですので,PTAの活用は非常に大事ですし,また,そういうものを支援してくれるような,こういったNPOのようなものがあれば,そういうところとネットワークを作っていくと。そういうこともできるのではないかなと思います。


【小林主査】  アメリカの場合,政府が保証している民間の金融機関の連邦政府ローンという非常にややこしい仕組みがあったわけですが,これは比較的サービスがいい。それに対して,政府の直接のローンというのが,政府がやっていることなのでお役所的で対応が悪いというのは,当初,相当問題になったのです。その1つが電話対応です。電話に対して非常に不親切だというので問題になった。あるいはつながらないというか,そういうことが問題になったわけで,現在では政府ローンに,直接ローンに一本化していますので,その問題は直接はなくなったのですけれど,いずれにいたしましても,これは分かりやすいたとえで言いますと,郵政の民営化までは非常に日本の郵便制度も不親切だったと思うのですが,民間と競い合った結果,両方がよくなったというような経緯があります。それと同じようなことがアメリカであったと言われております。私が危惧しているのは,これだけ複雑な制度を確かに高校の先生方に十分理解していただいて,生徒とか保護者に伝えていただかなければならないということが非常に大きな課題だということと,それから,少ないとは思いますけれど,JASSOに対しても問合せとかがあると思いますから,そういうときにまた対応を誤ると,JASSOの方がまた非常に不親切だということだけが言いはやされるということになりかねないので,そのあたりのことを御配慮を十分お願いしたいということです。


それから,もし必要でしたら,やはりそれなりの予算措置なりを考えていただかないと対応できない部分もあると思いますので,そういうことを是非御検討いただければというふうに思いますが。


いかがでしょうか。どうぞ。


【樋口委員】  よろしいですか。パンフレットを作るのは難しいなというふうに思いながら,解決策なしに,ないものねだりでどうしたらいいんだろうかという。本来,新所得連動型を今回導入した目的というのは一体何だろうかということを考えると,やっぱりデフレという,本人ではどうにもならないリスクが発生する,それに対する対応という形でこういった制度が可能になりますよというふうに言っているわけですね。


年収に応じて,年収が低いと返さなくてもいいというようなお話という場合に2つあって,まさに本人では回避することができないようなリスクが起こってしまったために年収が低くなって,時には失業してというようなことというのがあって,そのときにはこの制度というのはまさに対応しますよと。


ところが,本人の意図によって年収を下げるということもあり得るわけですね,本人の責任といいますか。年収が少ないと負担が軽減されますというと,何となくそちらの可能性も誘導してきて,基本的な問題というのは,やっぱり今回はデフレという問題があるわけで,まさにデフレを想定するのか,要するに,期待,エクスペクテーションというのをデフレなのかインフレなのか,自分の所得がどうなるのかというようなことに連動して,こういったものが損だ得だという議論というのが起こってくるのであって,何でも所得が低いと返さないでいいからそっちを利用したらどうですかというのは,教育上どうなんだろうというところがすごく気になるんですね。


じゃ,それをパンフレットにどういうふうに反映するのかと。例えば,これ,問合せをするときに,今からインフレになるんですか,デフレになるんですかというような話を聞かれたら,これ,どうにも答えようがないですよね,多分。だから,10%のインフレ率があって,それに応じて給与も所得も増えてきますよと。ただ,中には増えない人もいますよというような,厳格に言おうと思えば言うほど,すごく複雑な記述になってくる。そうすると,パンフレットとしての意味を逆に持たなくなってくるというところで,ほどほどのところをどういうふうに落としていったらいいんだろうかということは,すごく難しいなというふうに思うところがあるんですね。


【小林主査】  今,樋口先生が言われたのは,一般に所得連動型ローンと言われるものの特質の問題で,その長所と短所なので,長所としては保険的な機能ですよね。安心できるということがあります。今言ったような変動,これはインフレとかデフレとかいう変動もありますし,個人自体が失業したり病気になったりしたときの対応というようなこともあります。


ただ,欠点としては,モラルハザードが生じる可能性があるということなんですが,これは私は300万のところで返還猶予がありますので,そこが一つの非常に大きな値になりますので,そこのあたりの人についてはモラルハザードの心配が少しあるかなと思いますが,基本的には,それも10年ですので,それほど心配しなくてもいいんじゃないかなと。そういうふうには思っていますけれど,ですから,書き方は難しいんですけれど,返還の負担をそれほど恐れないと。いろいろなリスクに対応できますよというようなことを書くというのが本来の筋かなというふうに思いますが。確かに余り詳しく書けば書くほど難しくなってしまうという問題があります。


【樋口委員】  だから,新所得連動型というのはなぜ今回導入したのかというようなところというのは,ちょっと必要かなと。これ,そうじゃなくて,その制度ができた後,まさに利用者という形でやっているわけですけれどというところを少し入れていった方がよろしいのかなと。じゃないと,どっちが損ですか,どっちが得ですかという話にどうしてもなってしまう。


【小林主査】  ありがとうございました。


ほかに,この周知に関して御意見ございませんでしょうか。


どうぞ。


【阪本委員】  例えば,大学なんかでも必ず返還の説明会等というのがあって,恐らくまだ在学期間中は変更できるということになりますので,大学等にもしっかりとこういうのがどういう形で特徴があるのかというようなことも説明していく必要があると思うんですけれども,もし借りる側(がわ)だったらということで私なんかが思うのは,じゃ,自分の将来を見据えた上で,一体どういう返済のパターンになるのかというようなことが分かると,イメージもしやすいし,返還に対する恐怖感と言うと大げさですけれども,そういったものも少し和らぐんではないかなというふうに思います。


ただ,先ほどからおっしゃっているように,パンフレットにそれを入れるのってすごく大変だと思うので,少なくとも,先ほどもありましたけれども,実際に質問を一番たくさん受けるであろうという大学の事務方であるとか,高校の先生方であるとか,そういうところに少しそういうイメージの分かるような,例えば,こういうふうな形で所得が伸びていった場合にはこのぐらいの返済の仕方で何年ぐらいで終わるんですよというようなことがあると,少しイメージがつきやすいのではないかなというふうに思ったりします。


【小林主査】  ありがとうございました。2つ言われたと思いますが,1つは大学ですよね。これは次の年度のことということで余り今回出ていなかったんですけれど,当然,大学なり専門学校なりに同じような問題,ガイダンスしていただくという問題があります。


それから,もう一つは,これは私も実は感じていたんですが,このラインがどう動いていくかという議論というのは,図というのは余りないんですね。ですから,モデルケースとしては,このラインに沿って所得がなっていく場合には返還月額がどう変わっていって,何年で,例えば,15年ぐらいで返し終わりますよというモデルケースみたいなのを示すだけでもイメージは確かにできますので,それを少し考えていただければというふうに思います。  どうぞ。


【吉田委員】  私もモデルケースを示してあげることは非常に大事だと思います。


あと,それに加えて,細かい点なんですけれども,この1枚紙の裏側のFAQのところに,「新所得連動型の対象となるのは大学生だけなの?」というところ,これは大学,短大,専修学校専門課程で学ぶというふうに出ていますが,学校種としては高専と大学院が抜けているような気がいたします。すみません,細かいことで。


【小林主査】  それは大事です。ありがとうございました。


ほかには。これはもちろんどんどんこういったもの,質問が来ると思いますから,それに応じてどんどん増やしていくということになるかと思いますけれど。


どうぞ。


【藤森奨学事業戦略部長】  すみません,おっしゃるとおりです。ただ,作るときに高等学校の予約採用,要するに,高等学校から進学していく生徒さんを想定して,絞って書いてしまったので,ただ,確かに誤解を招くということで。ちょっと考えさせてください。すみません。


【小林主査】  よろしいでしょうか。またお気付きの点がありましたら,戻っていただいても結構です。いろいろこれから,既に走り出している部分もあるわけですけれど,これは非常に重要な問題だと思っていますので,引き続きいろいろな方策を考えていただければというふうに思います。


次に,海外居住者の問題なんですが,これは諸外国でも同じような問題があって,これも所得連動型の一つの欠点だというふうにも言われております。なかなかうまい方法というのはないわけですけれど,基本的には御本人が所得連動型を選ぶ場合には,本人が所得証明を出すしかないということになるわけですよね。それ以外の場合は定額型になるという整理じゃないかと思いますが,いかがでしょうか。ちょっとほかにありようがないような気がいたしますけれど。


よろしいでしょうか。どうぞ。


【吉田委員】  すみません,オーストラリアやイギリスではどのようになっているのかという情報があると,もう少し考えやすいのではないかと思います。やはり同じ問題が起きていると思いますので。


【小林主査】  基本的には両国とも所得が使えないので,そこから落ちて,定額型なりに近い形でやっているというふうに聞いています。


よろしいでしょうか。これはもしほかに知恵があればということで,またいい方法があればということで進めさせていただきたいと思います。


次が非常に大きな問題で,有利子奨学金についてなんですけれど,これをどういうふうに考えていくかということの,これは1回でとても結論が出るようなお話ではありませんので,ただ,先ほど事務局から御説明がありましたように,利用者はこちらの方が非常に多いわけで,新所得連動型を適用していただきたいという声もあると思いますので,ただ,利子の問題というのは非常に大きな問題としてありますので,そこをどう考えるかということでありますけれど,これについてはいかがでしょうか。


【樋口委員】  これ,有利子奨学金の場合,固定金利を想定して,在学中のというか,借りているときの金利をそのまま生涯にわたって返済するという形ですよね。変動金利にはなっていない。


【藤森奨学事業戦略部長】  今,現行の制度で申しますと,二通り,固定の利率と,それから,5年ごとの見直しの利率を本人が選択できるような制度になっております。


【樋口委員】  その選択はどの時点でするんですか。


【藤森奨学事業戦略部長】  まず,申込みのときに一応選んでいただくんですが,今回のこれと同じように,卒業の手前までに変えることができますというやり方をとっております。


【樋口委員】  要は,名目金利でやるわけで,インフレ,デフレの話というのは,本来,物価が実質金利に上乗せされたりすることによって名目金利が動くという形になるわけですよね。それでいて,固定するというのは名目金利の方を固定していくということで,今,例えば,0.何%とかって想定が出ていましたけれど,マイナス金利というようなこととかという可能性もなきにしもあらずなんですよね,今のこの御時世においては。そうなってくると,こういった議論をあらかじめ今,有利子奨学金へこの方法を導入するかどうかというような前に,金利をどう考えていくのかと。有利子の利子部分というのを。というような,そもそも論が入ってこないと,ちょっとここからスタートすると,すごく狭いところを議論しちゃうことになるなというふうに思っていまして。


【小林主査】  確かにオーストラリア,イギリスも,インフレスライドでインデックスがあると思うんですね。ですから,それは先生がおっしゃったように,まさしくそれを考えているわけでありまして,全く無利子でやっているのは,実はドイツだけだと思います。ですから,この議論というのは確かに必要なわけで,今まではこの議論は実は全然していないんですね,ここでも。ですから,それをどういうふうに考えていくかということをもう少し整理することが必要かと思いますけれど。それは非常に重要な論点だと思いますが。


どうぞ。


【濱中委員】  よろしいですか。その点を考えると,無利子の奨学金の方も返還額を当然物価にスライドさせなければならないのではないかと思うわけですが,それを今、議論すると,大変なことになると思うのでやめますけれど,本来はそうあるべきです。物価が上がれば借り得ということになるし,むしろ問題は,樋口先生が先ほどおっしゃったように,デフレの場合で,現在は、借りた分の価値が大きくなっていること自体が返還を難しくしているという側面が大きい。公平性の観点から言えば,上がるときも下がるときも,本来は物価にスライドするような仕組みが望ましいし,アメリカはそうはなっていないですけれども,イギリス,オーストラリアはそういう仕組みにしていますね。


【樋口委員】  まさにインフレスライドと言おうか,デフレスライドと言おうか,それをどう入れていくのか入れていかないのかというところが関連してくるところだと思うんですね。まさに年金の問題と全く同じ問題を。


【小林主査】  これは相当大きい問題で,確かに今,濱中委員が言われたように,本来は無利子も同じ問題を持っているわけでありまして,国によって考え方が相当違うわけですよね。アメリカは全く考慮していないし,イギリス,オーストラリアは実質,物価スライドを導入しているということですから,そのあたり,ただ,私が分からないのは,今まで日本の特に無利子奨学金に関してはそういうことは一切考えないでやってきたわけですよね。ですから,インフレの時代は非常に返済が楽だったわけで,それが現在のようにデフレになりますと,返済が大変だということになってきているわけなので,そこも含めてもう一度検討するべきじゃないかという御提案だと思いますが,いかがでしょうか。


ただ,これはいろいろな問題を生じますよね。その部分,じゃ,調整した部分を今度はどこから財源を持ってくるかとか,そういう話もありますので,非常に大きな問題だとは思いますが。


【樋口委員】  まさにインフレに対するリスクニュートラルな制度にするのか,それとも,誰がリスクを背負うのかというような議論になるわけですよ,これは。


【小林主査】  そういうことですね。これはきょうは御提案だけ頂いて,少しまた検討させていただきたいんですけれど,先生,何か御提案ありますか。非常に難しいとは思いますけれど。


【樋口委員】  有利子の場合には,今度,インフレに金利の変動という新たなリスクがまた重なってくるんですね。今まではインフレ,デフレの議論でよかったんですけれど,そこに金利の高騰,下落というのがダブルのリスク,今度また為替のリスクというのがさっきも海外の話とかというのだと入ってきて,それがちょうど相殺し合うような仕組みというのができれば本来はいいんでしょうけれど,往々にして相殺しないんですね。


【小林主査】  こう言うと身もふたもないですけれど,100%の解決策というのはないので,どの国も困っていると思いますけれど。


【樋口委員】  ただ,有利子奨学金を議論するのであれば,それをちょっと考えないとというふうに思いますね。


【小林主査】  ですから,きょうは御提案いただいたということで,また次回以降に少し整理して検討事項をまとめたいと思いますが,ほかにこの点についていかがでしょうか。非常に大きな問題提起だと思いますが。よろしいでしょうか。  そうしましたら,ひとわたり進めたいと思いますが,既に返還を開始している者についての適用ということなんですが,これについても積み残しの課題として挙げられてきたわけでありますが,そもそも適用するのかどうか,それから,その場合,どこまで適用の範囲にするのか,それから,当然,適用することによって少なくとも一旦は回収額が落ちますので,それをどうするか,あるいは,契約変更についてJASSOの方でかなりの事務が発生しますので,そのコストをどうするかとか,様々な問題があるわけですが,これについてはいかがでしょうか。


これは確認なんですが,資料3-7に,減額返還制度と返還猶予制度の説明が先ほどありましたけれど,これが一種,二種とも利子負担がないという理解でよろしいんですよね。これは余りJASSOの方では積極的に周知していないとは思うんですけれど,普通,先ほど来の議論でもありましたけれど,諸外国の例ですと,大体こういうときに利子が付くんですね。それがJASSOの場合は全く利子が付いていないということで,そういう意味では,奨学生に対しては寛大な制度でありますけれど,逆に言うと,コストが掛かっている制度でもあるわけですね。ですから,そのあたり,減額返還制度という現行の制度がありますので,そのことも当然,今までの人についてはこちらの制度が適用されますので,それを拡大するというのが一つの考え方でありますし,猶予制度については10年ということで一応決着したわけですが,それをどうするかというようなことも,現行制度との関係というのもあります。ですから,そのあたりをどういうふうに考えていくかという問題だろうというふうに思いますが,いかがでしょうか。


どうぞ。


【宗野顧問弁護士】  一種奨学金が対象となっていますので,こちらの返還金を次の奨学金を借りる方に回していくというスキームをとっているわけなので,今回,採用した場合というのは,2年ないし4年後から減少するという話になるんですけれども,今,貸していらっしゃる方に範囲を広げるということになると,直近で返還がその分減るという事態が生じてくるので,それについて新たな予算措置をとらないと,翌年度以降の一種奨学金の貸せる人の人数だとか額が減ってしまうという話になるので,そういうところについてはちょっと慎重に考えないと,要は,この方だけ,貸している方だけじゃなくて,新たに借りる方に影響するというところの視点が必要かとは思います。


【小林主査】  つまり,条件として,財源が確保されない限りできないということでしょうかね。


【宗野顧問弁護士】  できないというか,そうした場合は次の新規募集者を減らすしかないというふうな話になるかとは思います。


【小林主査】  いずれかの事態が起こるということですね。そういうことを前提にして,適用範囲を拡大するかどうかという議論をしなければいけないという御指摘だと思いますが。


どうぞ。


【濱中委員】  確かにそれはおっしゃるとおりで,お金がなければ制度は回らないので仕方ないですけれど,ただ,前にも申し上げたかと思いますが,できれば現在在学中の方については遡って適用できるような仕組みを考えてほしいなと。在学者に限っても財源が足りなくなる可能性はありますけれど,1つメリットとしては,大学に現在いる学生に適格認定の際とか,その他説明会とかの場で、所得連動返還型ができるからということで周知をかけてもらえれば,大学にとっても本格的な導入の前に、説明の予行演習の機会みたいなものとして活用できるわけですし,これを言うと批判されるかもしれませんが,所得連動型に切り替えるためにはマイナンバーの提出が必須になるわけですから,今後の引っ越したときの住所の捕捉とか,そういう時に事務的に容易になる可能性もあります。希望者については卒業前であれば切り替えられるような方向で考えていただければと思います。


【小林主査】  その場合,1つ問題になるのは,機関保証ですよね。機関保証に入っていない場合には,保証料を遡って払わなければいけないという問題が生じるわけですけれど,そのことを前提にしても,そういう制度を設けた方がいいのではないかという御提案ですね。


いかがでしょうか。少なくとも在学中の方に関しては認めたらどうかという御提案なんですが。


これは先ほどありましたように,財源の問題が絡んできます。それで,適用した場合に,特に数年間は相当回収額が減少するということは当然予想されますので,そのあたりをもう少し議論,検討した上で,また次回以降,出すことが必要じゃないかと思います。ですから,その辺のフィージビリティーを少し事務局と相談させていただきたいと思いますが,いかがでしょうか。


それから,これも確認なんですが,事務コストというのはどの程度見込めばよろしいんですか,こういう契約更改というのは。


【大木理事】  今,ちょっと出てくる数字が手元にございませんけれども,いずれにしても,ここ10年ぐらいのタイム,ですから,育英会からJASSOになってというような期間でもって見てみても,実は事務コストの問題というのはほとんど破綻寸前というか,今までのようにとにかく常勤の事務職員でもって入れているという状況はなくなって,人件費じゃなくて事業費をそこにつぎ込んでやりくりしながら,非常勤を使ったり,派遣を使ったりしながら,ごまかしごまかしやっていますが,ですから,今,典型的には既に返還を開始している者に適用なんていうことになったときに,一体全体何が起こるだろうかということを考えておかにゃいかんと。それで,人数が増えて,業務量が増えているというのは明々白々な中で,事故が起こることが一番とにかく心配なわけでございまして,それが今現在,独法には多少緩くなったりとかということはあるにしても,人件費の制約が当然ありますので,そうした中で,要は,こういう事業を行う中でもって人件費的な要素,これは事業費と考えられなくもないわけなんですけれども,そうしたところをどうするのかというのはとても悩ましい話です,少し言わせていただくと。ですから,そこはポイントとしては非常に大きいかなと思っています。


【小林主査】  ですから,先ほどの周知の問題もそうなんですけれど,なかなかJASSOだけで対応するというのは難しいところに来ているのではないかというふうに思いますので,それは財源なり予算とかの関係が当然出てまいりますので,そのあたりは是非御検討いただければというふうに思いますけれど。


ほかにございませんでしょうか。


ひとわたり検討事項について,事務局で用意していただいたものについて検討いたしまして,ほかに検討事項とか,あるいは次回以降こういうことを検討すべきだとか,あるいはこういうことをもう少し調べておいた方がいいということがございましたら教えていただければというふうに思いますが,いかがでしょうか。


どうぞ。


【阪本委員】  今,高等教育に進学する人を増やしたいという観点からすると,余りいい話ではないのかもしれませんけれども,やっぱり少子化が進んでいって,これからまだ進学には,それが上がらないということになったとすると,奨学金を必要とする人たちがこれからどれぐらいの人数になっていくのかというところというのは,ちょっと基礎資料としてはほしいかなという気はしなくもないです。


【小林主査】  ちょうどJASSOの方で学生生活調査が出たところで,例えば,申請したけれど不採用になった人がどれぐらいいるかとかというのはそこにも出ていますので,そういったニーズ,それについては幾つか資料を出せるのではないかというふうに思いますけれど,それは濱中委員の方がやられているので,どうですか。


【濱中委員】  それも大事だと思いますけれど,多分,もうちょっとマクロな観点から,18歳人口等々,要するに学齢人口の変化が,どれぐらい今後の奨学金の需要に影響を与えるかという観点からの議論も必要だということですよね。特に2020年問題というんですか,18歳人口が再び大きく減少する2020年以降どうなるかという予測は難しいですけれど,ただ,これまでの流れからみて,急激に貸与者数が減少するということは考えにくく,むしろ増えるのではないか。進学率が上がると,ますます所得が低い方の進学が増えるので,実は奨学金の必要度は上がる可能性も結構高い。仮に今の高等教育の規模が維持されるならば,上がる可能性はかなり高いですよね。それが減るということは,恐らく大学がぱたぱたと倒れるという事態なので,それはそれでまた違うところでお金が大量に必要になると。そういう議論になるかと思います。どこまで厳密に議論できるかは分かりませんけど,そういう観点からの議論は必要だという御意見だと受け取りました。


【小林主査】  確かにマクロの人口動態と,それから,進学者数予測というのはかなり難しいんですけれど,少なくともそういった視点も必要だということは事実だと思います。


それと,たしかJASSO奨学金は現在,少し貸与人員は減少しているんじゃないんですか,ここ数年。そんなことはないですか。


【藤森奨学事業戦略部長】  今,基本的に有利子の方が,要するに,希望者で基準に合致する方は全員とりましょうというやり方をここ数年やっています。一方で,この間,無利子の方の人数を増やしていただいているということもあります。まず,予算規模で言うと,そういうことで総体では少しずつ落ちてきておりますけれども,まだ一方で一種の方で希望者で適格者が全員とれているというところまでは行っていない状況。全体はそんなイメージでございます。


【小林主査】  そのあたりも,それじゃ,次回,奨学生がどういうふうに推移しているか,一種と二種の関係もありますので,あるいは,併用者がどれぐらいいるかとか,そういう資料を出していただければ議論がしやすいと思いますので,それは事務局と相談させていただきます。


ほかにございませんでしょうか。


きょうの議論というのは,非常に積み残しの課題で,冒頭申し上げましたように,難しい議論でありまして,そう簡単に結論が出るような話ではないので,きょうはこういうことを議論していくときの御意見を頂いたということで,とどめさせていただきたいというふうに思っております。


次回以降,きょう,いろいろ御意見を頂きましたので,それを踏まえまして,少し資料とか考え方を整理した上で,もう一度出したいと思っております。  そういうことで,ほかに御意見がなければ,時間的には早いんですが,このあたりで閉めたいと思いますが,よろしいでしょうか。


それでは,最後に次回の会議日程について事務局から御説明をよろしくお願いいたします。


【八島課長補佐】  第10回は5月中の開催を予定しております。日時,場所等については,決定次第,御連絡申し上げます。


以上です。


【小林主査】  以上で所得連動返還型奨学金制度の有識者会議第9回を終了いたします。御協力,どうもありがとうございました。


―― 了 ――

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