所得連動返還型奨学金制度有識者会議(第4回) 議事録

1.日時

平成27年12月18日(金曜日)16時~18時

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 所得連動返還型奨学金制度について
  2. その他

4.出席者

委員

小林委員,阪本委員,島委員,濱中委員,樋口委員,不動委員,吉田委員

文部科学省

常盤高等教育局長,佐野大臣官房審議官,渡辺学生・留学生課長,川村学生・留学生課課長補佐,八島学生・留学生課課長補佐

オブザーバー

甲野理事(日本学生支援機構),宗野顧問弁護士(日本学生支援機構),藤森奨学事業戦略部長(日本学生支援機構)

5.議事録

【小林主査】  それでは,定刻になりましたので,ただいまから所得連動返還型奨学金制度有識者会議,第4回を開催いたします。皆様,御多忙の中,お集まりいただき,ありがとうございます。本日,赤井委員は欠席であります。それから,濱中委員は内閣府の会議で少々遅れておりますが,出席されると思います。

 それでは,議事に入ります。まず,議事概要の確認についてですが,資料1,第3回議事概要(案)の内容を御確認ください。修正意見等がありましたら,12月25日までに事務局に御連絡をお願いいたします。その後,私と事務局の方で修正内容を調整させていただいた上,議事概要として確定させ,文部科学省ウエブサイトに掲載させていただきます。よろしくお願いいたします。

 それでは,次の議事に入ります。前回の第3回の会議では,新しい取得連動型返還奨学金制度を導入した際の回収金予測のシミュレーションを実施する上で条件設定について皆様から御意見を頂きました。それに基づきまして,回収金予測のシミュレーションを実施いたしましたので,事務局の方からまず御説明をお願いいたします。

【川村課長補佐】  それでは,資料を御説明させていただきます。まず,資料2を御覧いただければと思います。今回,新所得連動返還型奨学金制度の創設につきまして,現行と新制度のイメージをまず御確認いただければと存じます。現行につきましては,全て貸与総額259.2万円の場合で試算をいたしておりますけれども,現行の所得連動返還型,これは平成24年度からの制度でございますが,対象は無利子奨学金のみということで,申込時に保護者等(家計支持者)の年収が300万円以下の場合に自動的に適用対象となります。年収が300万円を超えない場合には,期間の制限なく返還猶予が可能となっておりまして,300万円を超えますと,一律1万4,400円の返還月額となり,15年で返還終了となるモデルでございます。下が現行の定額返還型でございまして,これは申請による返還猶予は通算10年となるということでございます。

 右側,新制度でございますが,まず,新所得連動型につきましては,これまでの御議論で無利子奨学金から先行的に導入するということで,有利子については将来的な導入を検討するということで御議論を頂いておりました。新所得連動型につきましては,この所得に応じて返還月額が変わるという仕組みでございます。こちら,右側にございますとおり,初任給280万円,毎年度15万円ベースアップというモデルで計算しますと,18年間で返還が完了するということで,最終の返還月額は1万9,830円というモデルでございます。例えば年収が300万円の場合には8,500円,400万円の場合には1万3,100円ということで,これは右上にございますとおり,9%で試算した場合の返還月額ということでございます。

 返還猶予,この赤い枠のところにつきましては,この年数については検討課題となっておりますし,また,左側にございます返還月額の下限のところ,5,000円とするか,2,000円とするか,また,返還開始の最低所得金額をどうするかという点につきましては,前回も議論がございまして,シミュレーションの条件として設定をさせていただいております。下側,定額返還型の(拡張版)でございますが,こちらにつきましては,現行ではこのパターンですと,15年,1万4,400円というのが標準となりますが,これを,例えば返還期間を少し延長して20年,月額1万800円というような返し方,あるいは返還期間を短くして早く返し終わるということで,2万1,600円という設定をするといった,返還年数の選択を可能としてはどうかというような案でございます。

 それでは,続きまして,資料3を御覧いただければと思います。

 資料3は,検討課題別の試算条件設定一覧でございます。これまで御議論いただきました試算条件を一覧にしてまとめているものでございまして,1点目,学校種につきましては,高等専門学校,大学,短大,専門学校,大学院ということでございます。2点目,奨学金の種類は,無利子奨学金ということでございまして,3点目,奨学金申請時の家計支持者の所得要件につきましては,今回のシミュレーションでは,2,全員適用という条件のもとで仮に設定して試算をしております。4点目,貸与開始年度は平成29年度新貸与者から。5点目,返還方式につきましては,新所得連動型と定額返還型でございまして,6点目,返還を開始する最低所得金額につきましては,前回も御議論ございましたとおり,年収0円から返還とするか,年収300万円から返還とするか,この2つのパターンで試算を行っております。7点目,最低返還月額につきましては,2,000円とするか,5,000円とするか,この2つのパターンで設定をしております。8点目,返還猶予の申請可能所得・年数につきまして,返還猶予申請可能所得につきましては,現行と同じく年収300万円を設定しておりまして,申請可能年数,上限につきましては,通算10年とする現行の定額と同じ年数か,若しくは現行の所得連動と同じく期間制限をなしとするかという,この2つのパターンを設定しております。9点目,返還率につきましては,新所得連動型のみでございますが,9%で仮に設定をして試算をいたしております。10点目,返還期間につきましては,1,35年,2,65歳まで,このいずれかを返還期間として設定をして試算しております。11点目,所得の算出方法につきましては,課税対象所得としておりまして,これは給与等所得から所得控除(試算上は,給与所得,基礎社会保険料控除のみ)でございますが,これらを控除した金額をこの所得として設定をいたしております。12点目,個人主義又は家族主義,これは返還者が被扶養者になった場合の世帯収入の考え方でございますが,個人主義と家族主義,双方,家族主義につきましては,試算上,本人に代わって配偶者等が返還する場合のみでございますが,これを勘案した上で試算をしております。13点目,保証制度につきましては,人的保証又は機関保証でございますけれども,仮に本人が返還できない場合でも,本人以外の者,人的保証ですと連帯保証人,機関保証ですと保証機関が全て返還すると仮定をした上で試算をいたしております。

 それでは,次の資料,資料4でございます。

資料4が試算結果となっております。まず,その前提といたしまして,この試算の条件として,先ほど御説明したとおり,仮置きした条件に基づきまして試算をいたしました。政府統計を用いて回収金,回収予測のシミュレーションを行っておりまして,検討課題の論点ごとに条件を変化させて試算を実施しております。試算を行いましたのは,JASSOから委託を受けましたアクセンチュア株式会社でございます。

 まず,試算の前提,こちら,先ほど御説明した学校種でございますが,貸与者数は約15万8,000人,平成25年度の新規貸与者数と同数でございます。貸与総額(要返還額)は3,553億円でございまして,これは学校種ごとに現行の各貸与額のうち平均貸与額に最も近い金額を使用して算出をいたしております。

 それから,試算の方法につきましては,まず,返還モデルの構築というものを行いました。これは賃金構造基本統計調査や,就業構造基本調査等の政府統計を用いまして,返還者の就業の状況や年齢の推移に応じて,収入(所得)と支出を推計するモデルを構築いたしまして,これを約8万パターン作成いたしました。その上でそれぞれのモデルとなる返還者について,収入と支出の差が返還金額を上回っている場合に返還をするとして試算をいたしました。ただし,仮に支出について生活を切り詰める場合にも,生活保護の水準は下回らないという前提で試算し,条件を設定しております。それから,実際の試算におきましては,親からの援助等,また,やりくり等もございますので,それを考慮することとし,補正値として月額2,000円を上乗せいたしております。

次のページが試算の結果でございます。まず,ここでは,要返還額に対する総回収額の割合をお示ししております。白丸でございますとおり,先ほど御説明した15人8,000人を対象として,要返還額3,553億円に対して,貸与を終了した者,これは本人以外からの回収も含めて,最終的に回収できる金額というものを試算いたしております。

 グラフの方を御覧ください。左側3本が現行制度,右側5本が新制度でございます。

 まず,一番左でございますけれども,こちらは,現行の定額返還型のモデルでございます。月額返還額は1万4,400円,年収0円から返還するとして,返還猶予10年ということでございますが,こちらは,返還割合が100%となっております。100%のところを見ていただきますと,下のところに(90.1%)と括弧がございますけれども,こちらにつきましては,本人からの回収割合を内数として記載しております。今回のシミュレーションでは,本人以外からの回収があるという前提で,本人が返せない場合にそこからの回収を含めて100%となるという試算でございますので,実際には返還,現在100%ございませんが,シミュレーション上は100%回収できるということとなっております。その右側が現行の所得連動型でございまして,こちらにつきましては,返還猶予の上限が設定されてない,制限なしというパターンで,この場合には90.6%という回収割合になります。その右側の白いバー,こちらは定額返還型と所得連動型を7対3の割合で混ぜたものでございまして,これは実態として,現在,新規貸与者につきましては,定額と所得連動がこの割合でおりますので,その実態に近い割合として計算した場合に,全体として97.2%の回収率となるという試算でございます。

 右側,新制度の方にまいります。まず,(a)と書いておりますピンクのバーでございますが,こちらが新所得連動型で最低返還月額を2,000円,年収0円から返還するとして,返還猶予の制限がなしとした場合でございます。これと条件を変える形で,それぞれ(b),(c),(d)という形でバーを設けておりますが,上の方,黒丸,検討課題6とございますが,返還を開始する最低所得金額については,(a)と(d)を比べます。(d)につきましては,年収300万円からの返還となるという条件でございまして,(a)は年収0円から返還,(d)は年収300万円から返還,つまり,300万円以下の場合返還しなくてよいという条件でございます。こうした場合,(d)につきましては,回収総額が65.4%ということで,(a)と比べて15%程度回収率が下がるという結果でございます。

 続いて,検討課題7については,最低の返還月額,これは(a)と(c)を比べます。(a)では2,000円,(c)では5,000円というものでございます。見てまいりますと,(c)は84.3%ということで,(a)に比べまして3%強回収率が上がっているという状況でございます。

続いて,課題8でございます。返還猶予の申請可能年数でございますが,これは(a)と(b)を比べてまいります。(a)の方は制限なし,(b)の方は10年が返還猶予の上限という試算でございますが,(b)の方が98.9%ということで,(a)に比べまして18%程度回収率が上回るという結果,試算となっております。なお,一番右に黄色いバーがございますが,こちらは定額返還型の(拡張版)ということで,返還月額を若干下げまして1万1,400円と設定した場合にどうなるかということでございますが,これは,回収率は100%ということで試算をされております。

 では,次のページにまいります。3ページにつきましては,回収実績を踏まえた補正値でございます。これは,先ほどのグラフとほとんど同じグラフでございますが,一番左側のところ,定額返還型の数字を御覧いただきますと,100%の下に(93.1%)という数字がございます。これが定額返還型の本人からの回収率でございますけれども,先ほどのグラフではシミュレーション上は(90.1%)という数字が出ておりましたけれども,実際の回収率,15年前に貸与した奨学金について,現在,93.1%という回収実績の数字が出ておりますので,それに合わせる形で補正を加えたものでございます。これを全体について補正をいたしまして,個別の数値につきましては御覧をいただければと思いますが,全体として本人からの回収率が上がっているというような結果となっております。

 これに基づきまして,下のところの表を御覧いただければと思いますが,下のところは金額ベースで,要返還額に対して,総回収額がどの程度になるかという金額を記載しております。これは回収不能額というところで,4のところを御覧いただければと思いますが,例えば新制度のピンクのところで,返還猶予制限なしで,月額2,000円,年収0円からとした場合に,総回収額,要返還額に比べまして,592億円回収不能額が出てくるということでございます。そこから右にまいりますと,緑のところにつきましては32億円,青のところは458億円,紫のところは1,152億円という回収不能額が出てくるということでございます。その下,6のところにつきましては,白いバーが現行制度をずっと続けていきますと,この回収率になるのではないかというところでございまして,これを基準に,右の方を見てまいりますと,現行の制度と比べまして,ピンクのバーは523億円マイナス,緑のバーにつきましては36億円のプラス,青は389億円のマイナス,紫は1,083億円のマイナスという試算となるということでございます。

 それでは,次のページにまいります。

3番目は,返還期間による影響でございます。先ほど御覧いただきましたシミュレーションにつきましては,65歳までを返還期間として設定いたしまして,それ以降につきましては,返還が免除されるという設定でございますけれども,これを65歳と35年間,返還開始から35年間ということで条件を分けて設定いたしました。右の赤枠のところを御覧いただきますと,65歳までの場合は80.7%という回収,返還開始から35年とした場合は78%ということで,2.7%の差ということで出ております。

 それでは,次のページにまいります。

 5ページでございますが,個人主義・家族主義による影響を試算いたしております。こちらにつきましては,上の1つ目の丸にございますとおり,返還者本人が返還することを個人主義,それから,返還者が家事を主として行う者であって,配偶者等の収入・所得から返還する場合,いわゆる専業主婦等の方でいらっしゃいますが,この場合,家族主義,例えば主婦,女性であれば旦那さんの給与から支払うという場合が家族主義ということで設定をしております。下の赤枠のところを御覧いただければと思いますが,個人主義が左側のピンクのところでございまして,80.7%という数字に対しまして,家族主義につきましては,(a)のスリーダッシュと書いてあるバーですが,85.9%ということで,5.2%回収率が上がるという数値になっております。黄色のバーは変化はございませんが,本人からの回収率のところを少し,細かいですが,御覧いただくと,個人主義が88.6%,家族主義が97.4%ということで,本人からの回収率が上がるという結果となっております。

 資料4の説明は以上でございまして,資料5の方にまいりたいと思います。

 資料5でございますが,こちらは,定額返還型,それから,所得連動型の適用割合に応じた回収額の試算でございます。資料4のシミュレーション結果に基づきまして,定額返還型・所得連動型の適用割合,これ,全ての返還者のうち,何%がそれぞれの方になるかということで,4つのパターンを設定いたしまして,回収額を試算いたしました。

 まず1つ目,現行制度のパターンでございますが,定額返還型と所得連動型が7対3となる。新制度の1つ目として,定額返還型ゼロ,所得連動100ということで,全て所得連動型で返還した場合ということで,こちらにつきましては,先ほど資料4で御覧いただいた試算と同じ設定でございます。それから,その下,新制度の2というところは,定額と所得連動,新制度のもとで5対5の割合で適用するとした場合,新制度3につきましては,定額と所得連動7対3ということで,現行と同程度の割合で所得連動の適用者がいるとした場合,それぞれの試算でございます。

 試算に当たりましては,新制度の所得連動型の条件として,先ほど複数条件がございましたが,以下,3つの条件の設定をいたしております。

 まず,最低返還月額が2,000円,年収0円から返還,返還猶予の期間の制限がなし,65歳まで返還として,個人主義であるという条件。それから,その下のところは返還猶予の期間として,10年の上限を設けた場合でございます。それから,3つ目として,上記の条件において,返還者が延滞なく全ての金額を返還すると仮定した場合の返還額の条件を設定しております。

 回収額の内訳として,シミュレーションにおいて試算された本人から返還される金額と本人以外から返還される金額を分けて記載いたしております。本人以外から返還される金額の中身としては,機関保証の場合には,保証機関からの代位弁済,人的保証の場合には,連帯保証人からの返還ということで,このシミュレーションでは全て100%返還されるものとして試算をいたしております。それから,下の青いところが本人から返還される金額ということでございます。

 それでは,ページをおめくりいただきまして,結果を御覧いただければと思います。

 まず,この前提といたしまして,今回のシミュレーションでは,政府統計等を用いた返還者モデルによる試算を行っておりますので,現実の返還実態とはかい離がございます。特に,本人以外からの返還予測のところ,薄い水色のところが実態よりもかなり多めに見積もられて出ておりまして,例えばここにつきましては,機関保証でこの薄い水色のところ,代位弁済でございますが,代位弁済に進む場合には,3か月以上の延滞で個人信用情報への登録,また1年以上で延滞をしますと,代位弁済になる際に,更に重い信用情報登録がなされますので,そういったことに対する心理的,経済的な影響というのは,このシミュレーションでは考慮がされておりませんので,シミュレーションの限界があるということを踏まえた上で御覧をいただければと思います。

 まず,左側の現行制度とあるところでございますが,これは,定額7割,所得連動3割ということで,現行に近い形でのシミュレーションでございますけれども,回収率の全体の割合として98.1%という値となっております。次に,新制度1,仮に新所得連動を100%適用するとした場合に,返還猶予の制限をなしとした場合には,83.3%という数字でございまして,こちらは,左側の現行制度と比べて,約15%のマイナスとなっております。金額にしますと,下の表のところにございますけれども,新制度1の現行制度との回収額の差というところで,三角523という数字がございますが,ここの差は金額にすると,全体としては523億円の差が出てくるということでございます。

次に,返還猶予10年の場合には,回収率全体で99.1%となります。ただ,この薄い水色のところ,本人以外からの回収率が17%というシミュレーションとなりまして,これは実態よりもかなり多い試算でございます。仮にこれを全て代位弁済で行うというようなことをした場合には,機関保証の場合は,保証料率というものがございまして,これが現在と比べて相当程度上昇することが想定されますので,今後の検討課題となろうかと思います。

 それでは,これだけ代位弁済にいかずに,本人が返還不能に陥らないという前提で,延滞することなく,全て返還できると仮定した場合に回収率がどの程度になるか,試算したものがその右のバーでございます。この試算では,65歳までで,それ以降については返還免除という設定となっておりますので,そのことを考慮いたしますと,回収率が89.3%ということで,全て延滞なく返したとしても,約1割は本人に請求されないというような予測,仕組みとなるということでございます。

 その右の方につきましては,新制度2,3ということで,定額返還型と所得連動の割合をそれぞれ5対5,7対3にしたものでございますけれども,この定額返還の方が回収率,特に本人からの回収率が高くなりますので,右にまいりますと,回収率,特に本人からの回収率が上がってまいります。一番右の新制度3というところにまいりますと,これは現行の割合と同じ7対3というところでございますが,本人からの割合が現行とかなり近い水準となってくるということでございます。

 説明は以上でございます。

【小林主査】  ありがとうございました。かなり詳細のシミュレーションですので,まず,このシミュレーションについて御質問をお受けしたいと思いますか,いかがでしょうか。結構細かな設定をしていろいろやっておりますので,なかなか頭に入りにくいかもしれませんけれど,これから,これに基づきまして議論していきたいと思いますので,その前に是非,もし疑問点等ございましたら,クリアにしておいていただきたいと思いますので,いかがでしょうか。ございませんでしょうか。

 これは飽くまでシミュレーションということでありまして,最後に説明がありましたように,必ずしも現実の,奨学金の返還者の行動をそのままモデル化できているわけではないということもありますし,それから,政府統計を使って,その収入と所得とに応じてシミュレーションを行った結果だということを念頭にしていただきたいと思います。それから,最後に説明がありましたように,代位弁済の場合,また人的保証の場合には連帯保証人が,全て支払うというような形で計算しておりますので,回収率は非常に高いというようなことになっておりますけれど,そのあたりのことも,少々実態とはかい離があるかもれないということは御注意いただきたいと思います。

 よろしいでしょうか。また,もし,疑問点等ございましたら,戻っていただいて,御質問等をお受けしたいと思いますが,それでは,とりあえず,このシミュレーションを前提にして,今日の資料3にあります,次の検討事項について御意見をお伺いしたいと思います。それでは,説明をよろしくお願いいたします。

【川村課長補佐】  先ほど御説明した資料3でございますが,この資料3,検討課題別の試算条件設定一覧というものでございますが,これは前回までお配りしておりました検討課題ごとの論点となっていたものでございます。それにつきまして,今回,下線を示すような形でシミュレーションの条件として設定をさせていただきましたけれども,今回のシミュレーション結果を踏まえて,それぞれの論点につきまして御意見を賜れればと存じます。よろしくお願いいたします。

【小林主査】  ありがとうございました。

 それでは,資料3に基づいて,この新制度について検討していきたいと思いますが,最初に,3の問題ですけれど,家計支持者の所得要件について現行では300万円以下が全員に適用ということですが,今回のシミュレーションは,第1種奨学金について,奨学生全員に適用するという形で行ったわけですが,これについては非常に大きな論点ですので,後でまた検討したいということにしたいのですが,よろしいでしょうか。

 では,次に進めさせていただきます。次には,6番の問題ですが,返還を開始する最低所得金額ということで,年収,今回の場合は0円と300万円と,一番極端な例をとってシミュレーションしたわけでありますけれど,これについてはいかがでしょうか。このシミュレーションの結果で申しますと,例えば最初の方のシミュレーションの1,2ページ目のところですね。これを見ますと非常に大きな差がありまして,年収300万円で行った場合には,65.4%しか回収できないというようなシミュレーションになっているわけです。ですから,所得連動型というのは300万円から返還を始めるというのが現行と同じとすると本来の在り方であろうと思いますが,これはいき値と呼ばれるものですが,これが非常に高くなりますと,当然ながら返還猶予が増え,あるいは返還額が少額のため,将来,最終的にはデフォルトになるということがあります。それがシミュレーションの結果として出てきたわけでありますけれど,これについてはいかがでしょうか。何か御意見ございませんでしょうか。

 現実の問題として,いき値を300万円ということになりますと,かなり回収が見込めないということになっておりますけれど,はい,どうぞ。

【宗野顧問弁護士】  こちらの300万円から返還か,0円から返還かという議論なんですけれども,ただ,猶予の制度がありますので,要は,スタートは0円からカウントはするけれども,300万円までは猶予できるという考え方の枠組みであること,最低月額を2,000円とするか,5,000円とするかは,まだ議論の余地はありますけれども,要は300万円以下でも,返還義務を課した上で,少なくても払いたいという人は払っていただき,猶予の要件を満たしていれば,猶予を申請していただくという形でしていただいた方が,時効の中断の話もありますので,いいのかなとは思います。そうすれば,実際には所得が少なくて猶予を希望されるのであれば,現行と同じように300万円以下で猶予を認めるのであれば,違和感はないと思います。

【小林主査】  ということは,300万円ということでよろしいのではないかという御意見ですね。

【宗野顧問弁護士】  ごめんなさい。0円から返還にした上で……。

【小林主査】  ごめんなさい。すいません。逆ですね。0円からということで。

【宗野顧問弁護士】  ただ,猶予の対象者が,300万円までは猶予の手続を行えるとすれば,実際上,年収300万円以下の奨学生が負担するかどうかというのは,奨学生側の判断に委ねられているという形になると思います。

【小林主査】  という御意見ですが,いかがでしょうか。

【樋口委員】  ちょっと質問,よろしいですか。

今の6の年収というのは,これは後で関連してくる個人主義・家族主義ということでいうと,個人の年収がゼロ,年収300万円という想定なんでしょうか。それとも,例えば家族主義ということが夫婦合算の年収がゼロ,年収300万円,この後との関連で言うと,ここの年収ゼロという意味はどちらなのでしょうか。例えば専業主婦で年収ゼロですということは,御主人の,夫の方の年収があっても,ここの想定ではゼロというカウントになっている。飽くまで個人主義のベースになっているのかどうかということですが。

【川村課長補佐】  今回のシミュレーションでは個人主義のベースでシミュレーション自体はしておりますけれども,その設定をどういう形にするかということについては御議論あるかと存じますし,ただ,一方で,現在のこの判断する際の基準としては,個人主義しか用いていないという現状はございます。

【小林主査】  よろしいでしょうか。

この問題は,次の議題としても検討していただきたいと思いますが,関連するところといたしましては,このシミュレーションについては,資料4の一番後のところに個人主義と家族主義といいますか,専業主婦の場合に家族から返還してもらうというようなことでシミュレーションしますと,5%程度上がるというような試算も出ているということであります。

 いかがでしょうか。ほかに御意見がございませんということでしたら,その年収ゼロということでよろしいでしょうか。どうぞ。

【濱中委員】  意見というほどでもないのですが。今日は,年収の分布の資料が出てないんですけど,前回まで出ていたものを見ると,どうも20代は300万円以下という人がかなりの比率を占めているので,300万円から請求開始ということになると,実質的に最初の数年間はほとんど返さないという方が大半になってしまう可能性がある。その場合,30歳ぐらいになって,むしろ生活費がもう少し掛かるようになったときに,急に返還が開始されることになってしまい,返還者にとってもあんまりメリットがないかなと思います。したがって,現状の1万4,000円前後の返還よりは,もう少し割賦額を低くした上で年収が低くても継続的に返していただく,そして場合によっては猶予を認める,そういう方式の方が合理的かなと私自身は思います。

【小林主査】  ありがとうございました。今の御意見も,年収の方はゼロから,それではスタートしてよろしいという御意見ですね。よろしいでしょうか。ほかに御意見がなければ,これは,前回もそうでしたが,いろんなことが全て連動しておりまして,1つ動かすと1つ変わるというような形になっていますので,今の個人主義と家族主義と問題もそうですけれど,そこで議論がぐるぐる回ってしまうわけですけれど,とりあえず年収はゼロからということで,今は置いて議論を進めたいと思いますが,よろしいでしょうか。

 そうしましたら,これはそうさせていただきます。

 それから,最低返還月額ですが,これは2,000円と5,000円ということでシミュレーションしていただいて,もう見ていただくと分かりだと思いますが,2ページ目のところ,2,000円のものと5,000円のもので比べたものがありますが,4%程度違うというような試算になっているわけですが,これについてはいかがでしょうか。この辺の感覚,最低返還月額が,当然ことながら人によって負担感というのは相当違いますので,そのあたりのことについては是非御意見を頂いて決めたいと思いますが,いかがでしょうか。どうぞ。

【島委員】  先ほどの話に関連することをもう一度お話しさせていただきたいんですけれども,今回,所得の低い方に所得ゼロでも2,000円を請求するというやり方に関して,違和感を持たれるということもあり得ると思うんですけれども,従来のマジョリティである定額返還型だと,結局1万4,400円請求する形になっているのが,所得連動型になったら,これが2,000円になるという形になっている。そのときに,これを2,000円にするか,5,000円するかということなんですけれども,それであれば,そもそもやはり所得の低い人にとってより返しやすい額を設定するということを考えたときに,2,000円というのは,そもそも制度の趣旨として適当なのではないかと思います。

さらに,資料4の2ページ目の(a)と(c)を比較したときに,決して,率で見れば,(a)で80.7%,(c)で84.3%,5,000円にすることによって4%弱上がるということにはなっているんですけれども,マクロの財政的観点からすれば,重要な額の差にはなるかもしれませんが,今度の所得連動型の根本的な趣旨ということを考えたら,やはりこれは2,000円の方が適切なんじゃないかと思います。

【小林主査】  ありがとうございました。2,000円の方が適切ではないかという御意見ですが,ほかに御意見ございませんでしょうか。どうぞ。

【阪本委員】  今,島委員がおっしゃったように,所得の低い方々が返済しやすいということに加えて,デフォルトになりにくいという論点から考えても,2,000円にしておいた方がよいのではないかという気がします。

【小林主査】  ありがとうございました。その観点も確かに重要な観点だろうと思います。

 ほかに御意見ございませんでしょうか。

 そうしましたら,これも2,000円ということで,一応決めさせていただくということでよろしいでしょうか。

 それでは,次に,返還猶予の申請可能所得ということですけれど,これは,現行では年収300万円までということになっているわけですが,一番大きな問題は,これを,現行の10年の形にするのか,それとも期間制限なしで,これが現在の所得連動型の基礎となっている300万円以下の場合は返還猶予が無期限といいますか,ずっと続くということでありますけれど,それについては,当然のことながら,返還猶予が長くなればなるほど,デフォルトになる可能性は高いわけでありますので,現行の返還猶予10年で試算すると,どうなるかということをやってみた結果でありますけれど,これもシミュレーションを見ていただくと分かるように,かなりの違いが出てきております。

 (a)と(b)を比べていただければ,今の2ページ目のところですが,80.7%と98.9%ということでありますので,かなり大きな差になるわけです。19%程度差があるということですが,これについてはいかがでしょうか。ただ,これは非常に大きな変更になります。というのは,現行の制度は,今,申し上げたように,返還の猶予に関しては無期限ということになっておりますので,これを10年で区切るということになると,かなり大きな変更になりますので,そこについては,是非御意見を頂きたいところですが,いかがでしょうか。

つまり,一番この焦点になっていることでありますけれど,当然のことながら,返還する者にとっては優しい制度にするということが当然のことですけれど,そうしますと,回収額は落ちるという,こういうトレードオフの関係がありますので,そこをどう勘案するかという問題であると思いますが,いかがでしょうか。

【宗野顧問弁護士】  ちょっと1点,捕捉したいと思います。こちらの返還期限に制限があるかないかというのが,まず前提であるんですけれども,現行でも,返還猶予の事由によっては,例えば生活保護を受けている場合は無期限になります。実際には年収300万円以下の場合といっても,要は,300万円以下の経済困難の事由の場合は10年ですよと。ただ,生活保護を受給しているような状況の場合は無期限になるので,生活保護が受けられない方,例えば自身の所得が少なくても,御家族からお金が入っているような場合だと,生活保護は受けられませんから,そういう方が上限10年の対象になります。それを前提に考えないと,ちょっと議論がずれてきますので,そういう形で考えると,例えば10年とかの場合に,例えばずっと300万円以下だったとしても,生活保護を受けられないということは,御家族とか,配偶者からお金が入っているということなので,そうした場合,例えば月2,000円請求するのが酷かというと,そこはちょっと,酷とまでは言えないのかなと思います。そこの前提を外しちゃうと,ゼロの人から取るというのは不当だという話になるんですけれど,現行の規定では,そういう話にはならないとは思いますので,この点を補足したいと思います。

【濱中委員】  今の意見に関連して,一応確認をしておきたいんですが。現行制度では,生活保護の方は制限期間のない猶予が認められる。ほかに,あとは何でしか。災害はそうですよね。それから,病気,疾病もそれが続く限りはそうだし,失業の場合も就職活動していれば,何か月かは認められるんでしたっけ,制限期間なしの猶予に入るんでしたよね。

【藤森奨学事業戦略部長】  失業の場合は,経済困難ということで,それは300万円以下の方の整理になります。

【濱中委員】  失業の場合は,現状だと10年が上限の期間に含まれると。そうすると,無期限の猶予というのは,在学猶予は別として,生活保護と病気。

【藤森奨学事業戦略部長】  病気,あと,災害の状況が続いているというようなケースと。

【濱中委員】  そのパターンでしたか。

【藤森奨学事業戦略部長】  基本的にはそうですね。

【濱中委員】  ありがとうございます。

【島委員】  今のお話,とても重要な論点だと思うんですね。我々は関係者だから,ある程度共有できている部分があるとしても,この資料をぱっと見たら,正に説明がないと誤解が生じていたような気がするので,今の段階で我々に対する説明の資料だから,抜けていたとしても,よりそういった情報は反映されておかれる必要があるんじゃないでしょうか。

【小林主査】  ありがとうございました。このあたりのことは,是非,この新しい制度を考えるときに,現行の制度でどれだけのことができているかということも当然考えなければいけないわけですので,そのあたりのことは,明示的にするという御指摘だと思いますので,それは事務局の方でよろしくお願いします。

【樋口委員】  ちょっと質問させていただきたいんですが,今の申請可能所得,年収300万円(所得約114万円),この間の差額というのは,ここで言う所得というのは,課税対象所得を意味するのでしょうか。この差というのは,186万円というのは何ですか。

【川村課長補佐】  課税対象所得でございます。これは実際の判断基準としては,年収で今は判断をされております。飽くまでこの所得のところは御参考としてお示ししているものでございます。

【樋口委員】  そうすると,例えば個人ベースの給与所得年間300万円というのは,相当高いかなということなんですが,そう判断していいんですか,年収300万円というのは。

【川村課長補佐】  学生支援機構の方で,現在判断する際にはそういうことで判断されていらっしゃいます。

【藤森奨学事業戦略部長】  いわゆる税込みの収入ベースで,給与所得の場合300万円というのを1つの基準にしております。

【樋口委員】  ということですか。

【藤森奨学事業戦略部長】  はい。

【樋口委員】  そうすると,月額に直すと,ボーナスは別にすれば,大体20万円月収ということですね。

【藤森奨学事業戦略部長】  学校卒業,出たての若い方とかでは,そういうふうに入るケースも,実際には基準に入る方は多いと思います。

【樋口委員】  大体,大卒初任給の平均が21万円から22万円だと思うんですが,半分ぐらいがその対象になるということですか。

【藤森奨学事業戦略部長】  対象になる方が全員猶予を申し出てられているわけではないものですが,基準としてはそうなります。もう一つは,その基準で半額ずつ返すという減額返還を選ばれる方とか,あるいはそれでも返している方とかがむしろ多いというのが実態でございます。

【樋口委員】  所得というのは,課税対象所得が114万円というふうに考えているんですかね。

【渡辺学生・留学生課長】  今,これを検討する上で,恐らく今後,返還する方々全ての方のデータをとる可能性があるので,そうすると,極力学生支援機構の方で計算するのではなくて,市町村民税を,市町村からデータを入手しますので,その際に計算されている所得をそのまま入手して,それを使って計算するのが合理的ではないかと考えております。したがって,このシミュレーション上では全ての控除を加味してないんですけども,実際はお子さんがいれば扶養控除等も含め,控除された後の所得に対しての9%が計算されるという方に考えております。

 それから,現状,卒業後の初年度,卒業初年度というのは,3月に卒業したら,10月から返還を開始するんですけれども,10月から半年間の返還の率なんですけれども,これは直近のデータで今,97%ぐらい返していらっしゃる。つまり,年収300万円に満たない方が大部分なはずなんですけれども,今,97%ぐらいの方が実際には通常返還されているというデータがございます。

【樋口委員】  ですので,逆に言えば,300万円というのはかなり高い数字,現行に比べて,というふうに映るのかなと思うんだけど,どうなんでしょうか。

【小林主査】  これはもう既に説明がありましたように,ずっと300万円できてしまっているというのが大きいのです。それを,ですから,先ほど最初にお示ししましたように,そこをいき値にしますとすごく回収率が悪いということになってしまって,それを何とかしたいというのがここの大きな論点ですけれど。ただ,JASSOの基準というのは,大体300万円で全部やってきていますし,現行の制度が300万円でやっていますので,そこを動かすというのはなかなか難しいということだと思います。どうぞ。

【渡辺学生・留学生課長】  ただ,もちろん,これは今回行っているシミュレーションは300万円を前提として,年収300万円で所得114万円ということを前提として計算したものが資料の4とか,5とかに出てきているわけなんですけれども,例えば資料5の中で,先ほど説明させていただきましたように,新しい制度で1,2,3というパターンを書いていますけれども,所得連動100%というものと,所得連動が3割で定額が7割というものでは,明らかに,例えば延滞することなく,本人が全て返還した場合の額も違っておりますので,恐らく現状の貸与を前提とした奨学金制度を運用していく上で,本当にどういうことが考えられるのかというのは,むしろ御議論いただきたい論点ではあるんですけども,そうした議論をしていく際に,例えば300万円ということについても,本当にそれでよいのかというのはむしろ一度御議論いただく必要があるのかもしれないとは思っております。

【濱中委員】  返還の開始のときの300万円と,猶予を認めるかどうかの300万円は相当意味が違っていて,返還の開始について300万円というのはやはり高過ぎるだろうというのは,先ほど申し上げたとおりです。実際問題として,20代のうちは6割ぐらいでしたかね,300万円以下の年収なので,もうほとんど返還しなくてよいという時期ができてしまうということです。ただ,猶予の300万円については,猶予を申し出る上でいろんな事情,とりわけ家庭の事情があると思うんですけど,そういったことを余り考慮しなくても済む,いろんな事情を逐一考慮しなくても,まあまあ,この線に置いておけばよいだろうということが,多分今の300万円という額をJASSOさんが採用してきた理由だと思うんですね。そういう意味では,猶予の基準として年収300万円については、かつては余り表にも出していなかったそうですが,現在な,これぐらいが目安ですよということで公表していますし,申請もかつてに比べればしやすくなっているわけですから,これまでの経緯もありますので,余り動かさない方がよいのかなと思います。

【小林主査】  若干補足しますと,今,言ったことは,オーストラリアのHECSが正しく経験していることでありまして,いろんな事情を考慮すると,家族の状況でありますとか,そういうことまで考えなければいけない。ところが,それをやりますと切りがないというところがありまして,そこでいき値を若干高めに設定しておくことで,そういった面をカバーするということでやっている。ただ,そうしますと,先ほど来申し上げていますように,デフォルトに陥る可能性も高くなりますから,返還猶予と,確かにいき値の問題は違うので,そこは区別しなければいけないと思いますけど,現行ではどちらも300万円ということになっていますので,そこをどう考えるかという,そういう問題だろうと思います。

 この点について,特に私の方で,原案には検討項目としてアンダーラインがなかったものですから,300万円については特に御意見を求めなかったのですが,先生,よろしいですか,とりあえずは。

【樋口委員】  はい。むしろ,シミュレーションではいろんなケースについてシミュレーションをやっていただいているんですが,この300万円となったときに,何%ぐらいの人がこれに該当してくるのかという,正に所得分布との関係になってくると思うんですが,相当高いんじゃないかなと思うんですね,300万円以下というと。

【小林主査】  高いです。

【濱中委員】  最初の2年,23,24歳のときは,たしか6割か7割が該当するのではなかったかと思うんですが。

【小林主査】  そうです。就業構造基本調査等で見ると,6割,7割が300万円以下。

【樋口委員】  免除ということになりますね。

【小林主査】  はい。

【渡辺学生・留学生課長】  前回,第3回の会議で資料2の別紙2という形でお配りした,ちょっと今日,机上資料としては準備してないのですが,それによると,25歳から29歳の方で年収300万円に満たない方の率が64.2%,この25歳から29歳の方の返還者数は約60万人いらっしゃいます。それから,30歳から34歳ですと,約42万人返還者がいらっしゃるうちの55.4%が年収300万円未満。35歳から39歳ですと,返還者が約20万人いらっしゃって,その層でも年収300万円未満が50.2%いらっしゃるというのが,JASSOのデータと賃金構造基本統計調査と就業構造基本調査等を基にした試算の数値でございます。

【樋口委員】  ここ,今,配っていただいた試算値というのは,これ,無業者は入ってないんですよね。就業している人だから。

【川村課長補佐】  就業構造基本調査の方で無業者も入っております。

【樋口委員】  無業者入れて100万円以下が……。

【小林主査】  前回先生の御指摘で無業者が入ってないということなので,事務局の方で作り直した数値です。

【樋口委員】  そうですか。7.0,無業者7.0というのも入っているんですか。年収ゼロですよね,無業者。

【濱中委員】  無業者が入っていると,これぐらいだと思いますね。

【樋口委員】  そうですか。

【濱中委員】25歳なので。23,24歳だともう少し,やっぱり新卒のとき,就職できなかった人がいたりして率が上がるんですが,25から29だとこれぐらいで多分正しいと思います。

【島委員】  返還者数のデータだということも,想定とのずれの原因になるんじゃないでしょうか。

【濱中委員】  大卒のみということが多分前提になっていますし。

【樋口委員】  要するに,専業主婦等々もこれに入っているということですか。

【小林主査】  入っているということですね。はい。

【樋口委員】  こんな低いですか。

【小林主査】  確かに返済,返還の猶予の金額というのは,今までいき値についてはかなり議論したわけですけど,猶予が現行のとおりだということで,特にアンダーラインも引いてなくて,そういう意味では検討も余りしてないので,今,先生の御指摘もありましたので,これは今,ここですぐには決められませんので,もう一回検討するということでいかがでしょうか。ありがとうございました。

それでは,もう一つの大きな問題は,猶予を無制限に認めるか,それとも現行のとおり10年にとどめるかということで,これは相当回収額が違ってきますので,このあたり,ただ,先ほど申し上げましたように,現行制度の所得連動型は無期限に認めているわけですから,そこをどういうふうに勘案するかという問題です。それについてはいかがでしょうか。

【島委員】  今,委員長がおっしゃった現行の所得連動型との比較ということも大事かと思うんですけれども,現行の定額返還型との関係性も同時に考えるべきなのではないかと思います。

【小林主査】  はい。

【島委員】  そういう意味では,通算,要するに回収率が本当にこれで変わってくるので,期間制限,自分の子供がお金を借りて,将来返す立場になった際に,その方がなかなか就職が決まらないし,その後もなかなか返せないという期間が10年気付いたらたってしまったと。その後,個別信用とかというふうな話を考えたときに,期間制限がなくなるというのは極めて借りる方からすれば安心だなと,正直思うわけですけれども,やはり制度のサステーナビリティーとかということを考えると,簡単に期間制限なしにするのは難しいだろうとは思います。

 ただ,そのときに現状ではなしか,通算10年かという2オプションになっているので,例えばこれが15年になったらどうなるのかだとか,そういうことはいま少し検討してもよいのかなというふうなことは感じています。そのときに,期間10年でやっていることによって,その問題が生じている人たちが実際いるので,この人たちの量的な数字だとか,そういうふうなこともちょっと併せて検討していただいたらよいのではないかと思います。

【小林主査】  という御意見ですが,1つの提案として,10年というのと,今は無期限という2つのオプションしかないわけですけれど,これがもう少し違う形,15年とかというのもあり得るのではないかということですが,いかがでしょうか。

【島委員】  あり得るというか,そのシミュレーションしてみていただいたときに,その返還率がどのくらいになっているのかというのは,その確認してみてもいいのではないかという提案です。

【小林主査】  これは,シミュレーションについて,15年でやってみたらどのぐらい変わるかということ,あるいはそういうことでしたら,5年とか,逆に20年とか,いろいろ変え得ますから,そのあたりどの程度やるかということですけど。

【島委員】  はい。実際その資料4のページ2の,今,議論しているのは,(a)と(b)の比較ということになるわけですね。返還猶予10年ということであれば,98.9%ということになっていて,で,制限なしにすると,これが80.7%まで落ちると。現実問題その2割が返ってこないということであれば,これは制度的にやはりサステーナブルなものだとは言い難いというふうに個人的には思うのですが,それを,条件を変えたときにどの程度変わるのかというのは,単純にこの(a)と(b)の間に関して見ることそのものは,悪いことではないんじゃないかとやはり思います。

【小林主査】  という御意見ですが,いかがでしょうか。いずれにしてもシミュレーションはやっていただけると思いますので,それは問題ないかと思いますが,事務局,それでよろしいですか。シミュレーション,可能年数を変えたものをシミュレーションしていただくということで,ここではそれ以上,どちらかということではないということで,ペンディングということで進めたいと思いますが,いかがでしょうか。

【阪本委員】  ちょっと確認だけお願いしたいんですけども,この場合,返済猶予を申し出た人だけが返済猶予になるという形でシミュレーションをされていると思うんですが,その割合とかというのはどういうふうに考えられているんですか。それとも300万円を切ったら,全て返済猶予を申し出るというシミュレーションになっているのでしょうか。

【川村課長補佐】  これは返還において,支出と収入の差額で出しておりますが,それが返せないというふうになった場合には猶予を申し出るという設計になっております。

【阪本委員】  分かりました。

【小林主査】  よろしいですか。

【阪本委員】  はい。

【小林主査】  どうぞ。

【宗野顧問弁護士】  現行の制度の比較という観点からすると,現行は10年間,生活保護とかを除いた経済困難の場合は10年です。そうした場合,今まで猶予でゼロだったものが,300万円に一旦達するとその後は,例えばシミュレーションで1万4,000円を払うしかないという選択肢になっていますけれども,今回の場合,確定ではないですが,仮に2,000円とした場合,じゃあ,10年猶予された後に,所得がゼロから300万円の間ですけれども,月2,000円を返してもらうというのが,それが,要は負担感として過大なものでなければ,猶予の期限を10年に区切っても,それほど酷ではないのかなというふうな観点も考えられると思います。今までだったら,1万4,000円に一律になってしまうので,それでは払えないよという話になると思うんですけれども,本当に収入がなくて,生活保護を受けているというのであれば,猶予を受けられますし,生活保護以下の収入の場合でも,何らかの収入がある場合や,何らかの家計の援助がほかにあり,生活保護を受けられないというのであれば,制度の維持の観点からすると,2,000円程度負担を求めた上で,仮に何か特別な事情,例えば病気だとか,そういう事情があれば,フォローがあるのがよいのではないか。新たな所得連動というのが全体の人を対象とするといった,制度を広げるという話になっていますので,そうすると,余り猶予期間の制限を下げてしまうと,今度は制度が維持できないという考えもありますので,ちょっとその点も検討する際には考慮した方がいいのではないかと思います。

【渡辺学生・留学生課長】  参考までに,これは平成25年度のデータですけども,猶予者のうち,経済困難等の猶予というのは,一般猶予というカテゴリーに入るんですけれども,一般猶予は平成25年度末で9万1,500件,そのうち,経済困難,失業等による猶予というのが7万9,000件,それから,生活保護が4,000件,病気が8,000件。ですから,9万1,000件のうちの1万2,000件ぐらいは,先ほどの生活保護と病気ということで,これは今の所得連動と関係なく,その方々はその状態である限りは猶予されるということで,7万8,000件がその10年間の猶予となる,そういう状態になっています。

【小林主査】  ありがとうございました。どうぞ。

【濱中委員】  今,宗野先生がおっしゃったように,そもそも無理なく返せるように所得に連動させようということなので,本筋からいけば,経済的困難事由とする猶予はなくてもいいという考え方もあり得ると思うんですね。ただ,突発的に何か起こったときのことがあるので,やはり最低限緊急避難みたいな猶予は必要だろうということであって。それに10年必要かと言われると,私自身は正直疑問ではありますけど,これまで10年ということでやっているので,期限を設けて10年ぐらいにするのが適当ではないかと考えます。

【小林主査】  ほかに御意見ございませんでしょうか。

【樋口委員】  今,おっしゃった突発的事項に対する対応とすると,例えば今,想定しているのは,前の年の所得に対して住民税は決まってきますから,それより更に遅れるんですね,実際に適用うんぬんというときには。突発的というのが,1年以上のラグを置いていいのかという,基本的な問題が起こってくるのかなと思います。ですから,失業手当,雇用保険給付で考えれば,正に待機期間3か月というのが自発的に離職したときの猶予なんですね。それで,失業したら,すぐその月から給付するという,正に突発的なものに対する対応という形でやっているんですが,住民税についてはちょっと1年以上の時間的なずれを伴って,その突発的というものに対応していく,今度,逆に給与が上がったときには,また1年遅れて,その分自分でためておけということなんですよね,支払えるように。この時間のずれというのは,すごく重要な問題になってくるのかなと思うんですが。

【濱中委員】  そうですね。要するに,何か起こって低所得になれば,次の年度からは請求額がうんと下がるわけですから,また余裕ができるのですが,その期間を何かしらの形で猶予してあげないと,すぐに延滞何か月という状態になってしまう。そうならないために,最低限の猶予は必要だろうということで,次の年になれば,請求額自体が,もし所得が全くなければ,今度2,000円まで下がるわけですから,大丈夫ではないかと。逆に上がったときは1年遅れるからいいのか。ある程度ためておくということで。もともとたくさんもらっているときはある程度ためておくというのは仕方がない。住民税もそうですから,そういう考え方でよいのではないかと思うんですが。

【島委員】  タイミングの問題は,今,おっしゃったとおりだと思うんですけど,先ほど僕がした発言,10年以上の点に関して,私が発言をしたのは,正直申しまして,従来の10年たったら1万4,400円に上がる。それによって困難を抱えている人たちがかなり数がいるということに基づいてした発言で,自分の中で,今度は新制度になれば,それが2,000円になるんだということをちょっと誤解しておりましたので,更に言えば,他の制度との整合性という観点からも,やはり10年ということで問題ないんじゃないかというふうにちょっと意見を変えさせていただきたいと思います。

【小林主査】  ありがとうございました。この問題,非常に重要な問題だとは思います。それで,所得連動型の欠陥として,今のタイミングの問題というのは非常に大きな問題としてあるわけですが,1つ議論として前に出てきたことは,各国の所得連動型は,前年の所得だけでもう全くほかのことは考慮しないと。したがって,病気は,先ほどJASSOの方で猶予があるということでしたが,失業したりとか,そういうことも,ほかの国の場合は全く考慮しない。それは何らかの資産をもう作っているだろうという,そういう前提で動いていますので,そういうことをしないのですが,JASSOの場合には,それを何らかの形で,急変したときにもう少し何か救済制度みたいなものを作っておいた方がいいという,そういう御提案ですね。ですから,その1年前の急変ではなくて,現在の急変に対してどうするかという,そういう問題だと理解しているんですけど。

【樋口委員】  恐らくここでの議論というのは,経済学でいうところの恒常所得の低下に対する対応,どうするかという話と,変動所得,正に何か事故が起こって所得が急減したと,それに対する対応をどうするかということで,どちらかというと,割と恒常的な所得の変動,1年のラグが発生しますから,事故に遭って,今月所得がありませんでしたと。しかし,前の年の所得に応じて決めるんですよということになったときに,その人たちは払わなくちゃいけないわけですね。そこはちょっと意識的に区別して議論していかないと,事故とかっていう話に対する対応,これも重要なことで,ちょっと別途考えないといけないんじゃないかと。ここはどちらかというと,恒常的に所得が低下してしまって働けなくなったとか,恒常的に低所得になっているというようなときに対する対応策ですということを分けないと,ちょっと議論が複雑になるし,本当の対応ができないんじゃないかと思いますね。

【小林主査】  ありがとうございました。議論として,現在議論しているのは,正しく恒常的な場合でありまして,ただ,以前の議論で変動した場合,どうするかという議論があったので,それは別途検討するということで,今回はそれは先に送りたいと思います。

これ,いかがでしょうか。ほかに御意見ございませんでしょうか。

 そうしましたら,基本的には通算10年でやるということですが,シミュレーションもやっていただくということがありますので,とりあえずは10年で置いておくと……。

【島委員】  先生,すいません。先ほど私が申し上げた誤解に基づくシミュレーションをしていただきたいという話だったので,私自身は,そのシミュレーションそのものはもう必要ないんじゃないかと考えていますので,もし他の先生方がそのシミュレーションの必要なしということであれば,そのシミュレーションの件も含めて,取下げさせていただければと思います。

【小林主査】  ただ,せっかくの提案ですから,シミュレーションを一応形の上でやってみたらどうですか。

【島委員】  それであれば,もちろんそういうことであるなら。

【小林主査】  せっかく御提案あったので,どの程度変わるかということを見るだけですので。

次の問題も実はよく似ていまして,返還率9%で,9%というのは一体どういう根拠かということは,前回も委員の方から御質問があったのですが,これはイギリス型が9%だということと,アメリカ10%ですけれど,そのあたりが所得に対しては,負担を考えるとその程度だろうというような答えしかないと思いますが,これもシミュレーションをやってあるわけでありませんで,赤井委員の方から,10%とか上げたらどういうふうになるかということで,御質問も受けていますので,これもちょっとシミュレーションをやって,今回9%に置いておくということで,次回以降シミュレーションで少し,逆に下げたらどの程度落ちるかとか,そういうことも考えてシミュレーションをやりたいと思いますが,いかがでしょうか。よろしいですか。では,ここでは9%と仮置きをしていきたいと思います。

 それから,次の返還期間の問題ですが,35年,これはシミュレーション上,35年ということでやってもらっているわけですけれど,これを65歳まで延長した場合にどうなったかということについてもシミュレーションをやってもらったわけです。その結果が3のところ,65歳と35年ということで,大卒が22,23歳ぐらいですと35年間で58歳ぐらいのときと65歳ぐらいまでのところということで,これについては,前回,社会人の場合,どうするかとか,そういう問題もありますけど,これはまた別途考えるべき問題だと思いますので,ここでは,期間の問題だけに限定して考えたいと思いますが,これは前回も年金の支給開始年齢まででいいのではないかという御意見もありましたので,見ていただくとお分かりのように,実際には2%程度しか,2%も変わらないですが,これについてはいかがでしょうか。実際この年齢で所得というのは下がっているところなので,なかなか伸びないんですね。どうぞ。

【宗野顧問弁護士】  こちらの最初にシミュレーションするときに,返還の開始年齢を何歳で設定したかをお聞きしたいんですけれども,例えば25歳で開始すると,35年というと60歳前に終わってしまうと,それは65歳までとった方が回収が増えるというもの分かるんですけれど,そこが,例えば40歳からというと65歳までだったら返還期限は20年しかないみたいな,前提によってちょっと条件が変わってきてしまうので,そこの前提をお聞きしたい。

【川村課長補佐】  こちらにつきましては,大学卒業の場合には,ストレートで入学をして卒業した場合ということを設定しておりますので,22歳,それから,高等専門学校,それから,専門学校等につきましては,それぞれ2年間,短大についてもということで,年齢はストレートで進学した場合の卒業開始,卒業年次からということで設定しております。

【小林主査】  御意見ございませんでしょうか。どうぞ。

【阪本委員】  これ,感覚的なものでしかないですけれども,この程度しか変わらないのであれば,社会人入学というようなものがこれから増えてくる場合に,制度の簡素化というものから考えると,35年で区切った方がいいのではないかというような気がします。

【小林主査】  そういう御意見ですが,いかがでしょうか,ほかの委員の皆さん。

もう一つは,現行は,御参考までに申し上げますと,そこにありますように,本人が死亡するということまでずっと返還が続くのですが,これは前回余り考えなくていいのではないかというような御趣旨だったと思いますが,いかがでしょうか。

ほかに御意見がございませんですので,35年ということで進めさせていただきたいと思いますが,いかがでしょうか,よろしいでしょうか。どうぞ。

【濱中委員】  社会人学生のように貸与を受ける年齢が高いことを考慮して35年の方が年齢よりはいいだろうというプランを提案されたのだと思います。しかし35年で本当にいいのかという点については逆に考えなくてはいけないことがあって,大卒だと二十二,三から始まれば35だと57だから,一応まだ現役のうちですよね。その場合、35年である根拠というのはどう考えればよいんですかね。40年じゃ駄目なのかとか,そういう話は当然あり得ると思うんですけど,それはいいんですかね,35で。

【小林主査】  これは,たしか現行の最長が20年で,年間の猶予が10年,減額返還が5年ですので,それを足すと35年というのが根拠だったと思います。それで,社会人の場合,確かに前回も問題になりましたけど,これはむしろ別途考えるべき問題だろうと思います。例えばイギリスの場合でいうと,50歳以上はもう新しいローンを組めないというような制限をかけておりますけど,その辺どう考えるか。ここでは別途に考えたいと思いますが,いかがでしょうか。論点としては,社会人の学び直しということで重要なので,考えなければいけない検討課題だとは思いますけれど,ここでその問題も出すと,ちょっと議論が複雑になりますので,とりあえず35年ということでいかがでしょうか。よろしいでしょうか。じゃあ,そういうふうにさせていただきます。

 先ほど質問がありました所得の算出方法については,そこにありますとおり課税所得ということで,実際課税所得に何が含まれるかということについては,市町村が現実にはやっておりますので,そこはもう少し事務局の方で調べていただいて,現実どうなっているかということは次回御報告したいと思っております。

 論点の12番で個人主義,家族主義,これも非常に大きな問題であります。これはいろんな考え方があるわけですけれど,現行では,ほとんどの国が個人主義を採用しているということでありますけれど,これについては,別の資料で検討していただきたいと思っておりますので,資料6について,事務局の方から御説明をお願いいたします。

【川村課長補佐】  それでは,資料6を御覧いただけますでしょうか。縦長A4の紙でございます。

返還者が被扶養者になった場合の(世帯)収入の考え方についてということで,(素案)でございます。このペーパーにつきましては,日本学生支援機構で作成いたしまして,論点,現状,対応例ということでまとめております。まず,論点として,専業主婦(夫)やニート等,被扶養となっている者の多くは収入が少ない傾向が認められ,本人の所得証明を提出させ,その収入を確認することによってのみ返還猶予を認める,あるいは新所得連動型での返還を認めるということにつきましては,その他の返還者との公平性に欠けるおそれがあるため,配偶者や父母等の扶養している者の状況を把握し,返還を求める等の措置を検討すべきではないかということでございます。

 現状といたしまして,奨学金の貸与の契約自体におきましては,契約当事者のみを拘束いたしますので,配偶者や父母等の扶養者が所得証明書を提出する義務はないと考えられます。また,機構が取得できる情報ということで,これは扶養関係のものでございますが,マイナンバーを活用して取得できる情報として,まず,この本人のマイナンバー,これは新制度におきましては,貸与開始時に把握をするという予定となっておりますが,これにおいて,本人が扶養控除の対象となっているか,すなわち,被扶養者であるかどうかが判断をされます。それを把握できます。もう1点は,本人が扶養している人数もございますけれども,これは扶養者側の方ですので,被扶養者であるか否かというのはマイナンバーを活用して把握をできるということでございます。一方で,取得できない情報としては,本人が誰に扶養されているのか,あるいは本人が誰を扶養しているかということで,扶養者の方が,例えば夫であるのか,親であるのか,兄弟であるのかというところについては取得ができないということとなっております。また,配偶者の同意を得て取得できるという情報につきましては,この同意を得ましたら,配偶者,父母等,扶養者のマイナンバーを使いまして,扶養者の収入等を把握できるということとなります。

 こうした実態を踏まえまして,新制度における対応例ということでございますが,まず,返還者が被扶養者となった場合に家族主義を適用するということの可否,手続について以下にまとめております。

 まず,被扶養になった時点で,本人に対して事情や扶養者の収入等の状況を確認してはどうかということでございまして,まず,事情書,扶養者のマイナンバーの提出を求めまして,収入等の状況を確認することといたします。その場合,扶養者のマイナンバーの提出は任意でございますので,扶養者からマイナンバーが提出されるかどうかについては,この時点では義務づけはできないということになります。仮に提出された場合に,本人の収入,それから,扶養者の収入の合計が一定金額以下の場合には,新所得連動型での返還を認め,より返還負担が軽減された形での返還というものを続けることが可能になるという制度ということが考えられます。

 一方で,本人と扶養者の収入の合計が一定金額を超えている場合には,これは定額返還型に移行していただいて,そこでの返還を求めるというような考え方が取り得ると思われます。事情書,あるいは扶養者のマイナンバーが提出されない場合には,新所得連動型で引き続き負担軽減を受けるということは認めずに,定額返還型に移行して返還を求めるというような対応が考えられるのではないかと思われます。

 検討が必要な事項といたしまして,扶養者の範囲をどうするか,配偶者に限るのか,父母まで入れるのか,さらには兄弟姉妹,その他親族,支援者,どこまでの範囲とするのかということ等について検討が必要ではないかと考えられます。

 以上でございます。

【小林主査】  世帯収入をどのようにとるかということですけど,これは現実にマイナンバーでどういうものができるかということとあわせて,事務局の方から,今,こういう御報告と御提案だったのですが,これについていかがでしょうか。特に樋口先生,この御専門ですので,是非御意見いただきたいのですが。結局……。

【樋口委員】  裏の理屈もありますけどね。

【小林主査】  ええ。結局全員の所得が把握できれば,等価可処分所得とかできるのですけれど,どうもマイナンバーではそこまでできないということらしいのです。それで,こういう形で一定の,できるだけ出してもらうというような仕組みを作りたいという御提案だと思いますが,よろしいでしょうか。

【樋口委員】  特典を受ける,あるいは控除してもらえる人の方が証明をするという考え方でしょうから,それは妥当な,嫌であれば,別にこういう手続をとらなくてもいいというような考え方でしょうか。

【小林主査】  はい。今まで問題になっていたのは,不利益な申告をしなければいけないことだったんですが,逆にこういう形で負担の軽減を認めるということで対処したいということであります。いかがでしょうか。どうぞ。

【宗野顧問弁護士】  事情書や扶養者のマイナンバーの提出がない場合には,定額返還型での返還を求める。これは,要は基礎となる所得が分からないから定額にしますよという趣旨だと思うんですけれども,その1つ上の一定額を超えている場合は,定額返還型にすることについて,新所得連動型ではなくて,定額返還型とする理由をお聞きしたいと思います。

【川村課長補佐】  ここ,御指摘の点は論点であると考えておりまして,一定金額を超えている場合には,例えば旦那さんの所得に応じて新所得連動に応じた返還月額を設定するという考え方もあり得ると思います。ただ,そうした場合に,旦那さんの所得が高い場合にはかなり負担が高くなってまいりますので,その点を,例えば専業主婦の方の返還月額としてどのように捉えるかという点はあろうかと思いますので,この(案)では定額返還で一定ということにしてはどうかというものでございますが,論点であろうかと思っております。

【宗野顧問弁護士】  ありがとうございます。

 あと,じゃあ,追加で。

【小林主査】  どうぞ。

【宗野顧問弁護士】  あと,こちらの所得の捕捉に関しては,任意ではあるものの,マイナンバーを前提とされるということですが,出してもらうときにも,マイナンバーじゃなくて,所得証明を出してもらうというやり方もあるんですけれども,こちらはやはり事務処理の便宜としては,マイナンバーが確実だというふうな理解でよろしいでしょうか。

【川村課長補佐】  これは飽くまでマイナンバーを使って,最も簡素にできる方法として作成しているものでございますが,一方で,マイナンバーで全て機械で申請をして,例えば軽減措置が受けられるというようなことになってまいりますと,そのことに対するモラルハザードの観点からのその考え方もございますので,一定程度事務の手続が必要ではないかというような考え方もあろうかと思いますので,それは日本学生支援機構における事務処理の負担増加の点と合わせて考える必要があろうかと思います。

【宗野顧問弁護士】  分かりました。ありがとうございます。

【小林主査】  よろしいでしょうか。ほかに御意見ございませんでしょうか。

 これは,先に御説明するべきだったかもしれませんけど,シミュレーション上は,4のところにありますように,5%程度,家族主義に移行することによってプラスになるというのは,飽くまでシミュレーション上の話ですけど,ということなので,回収を上げるという意味ではこちらの制度ということと,もともとの議論として,本人が収入がないからといって全く返さないということは不公平ではないかという,その2つの議論からきたと思いますが,こういう形で解決できるということでありますので,これに特に御異論がなければ,この形で進めさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。ありがとうございました。

 それでは,そういうことで,家族主義のものを導入すると。それで,その際,どういう形がいいのかということは,JASSO側の事務手続とか,そういう問題,現実的には技術的な問題がありますが,その辺はまたJASSOと文科省の方で議論していただくということになるかと思います。

 先ほどこの話のときに,先に話しておくべきだったと思いますが,先ほどちょっと補足するのを忘れたのですが,11番の所得の算出方法で課税対象所得が,市町村ですので違っているということをお話ししましたが,先ほど渡辺課長からありましたように,ここに扶養控除が入っているわけです。ですから,実際にはここでも家族主義といいますか,家族の観点は含まれているというふうに,このシミュレーションの場合はやっていないのですけれど,実際にはここに家族の要因というものを考慮した所得の算出がなされているということですね,それでよろしいですね。

【樋口委員】  これ,ちょっとよろしいですか。まだ残っている議題が2の検討が必要な事項の扶養者の範囲というところですが,これは,通常夫婦かなと思うんですが,親族全員までという,生活保護の話であればあり得るんですが,どうなんでしょうかね。

【小林主査】  すみません。ありがとうございました。どうぞ。

【宗野顧問弁護士】  先ほど専業主婦を前提とすれば,配偶者という形でいいと思うんですけれども,例えば事情書で,いわゆるニートで働いてないけど,親からお金をもらって生活していますという場合に,家計支持者のものを求めるという趣旨でどこまで広げるのかという話,すなわち,誰が家計を支持しているのかというのが中心にはなってくると,配偶者が家族かといった区分けは余り意味がないか,事情書で出てきた人のものを出してもらうという話にはなるかと思います。ただ,事情書で違う人,うそをついて少ない人から支援していますと言われちゃうと,ちょっとそこはどうしようもないという形にはなるかと思います。そういう意味では,基本的には父母,兄弟姉妹ぐらいが,一番ありそうなところだと思いますけれども,そこはある程度性善説といいますか,ちゃんと本当のことを言ってもらっているという前提で,じゃあ,その人の所得が分かるものを出してくださいというふうに考えているのではないかと思います。

【小林主査】  現実の問題として,先ほどありましたように,300万円以下であっても,かなりの方が返しているという現実があるということなので,この場合は父母とか,兄弟姉妹がかなり返しているのではないかということですね。ですから,そのあたりをどういうふうに勘案するかという問題だろうと思いますけど。どうぞ。

【濱中委員】  マイナンバーでは,誰の扶養に入っているかということは分からないということは,結局扶養に入っていることだけは分かったので,所得税法上の扶養者に該当する人の収入,所得を申告してくださいというお願いになるんですよね。ということは,申告されるのは1人ですよね。要するに,親族の分も含めて,3人分出してくださいとかではなくて,実態として誰が扶養しているかではなくて, 誰か1人になるんだと思います。

 しかも,それが正しいかどうかというのを確認する手段はないわけですね。

【宗野顧問弁護士】  誰の扶養か分からないと。

【濱中委員】  分からないし,こうですと言われたら,それを信じるしかないということで。

もう一つ,これ,事情書って言うのが何だかよく分からないんですけど。事情書って,何の事情なんですかね,これ。

【小林主査】  これはJASSOの方からですね。

【藤森奨学事業戦略部長】  ここで事情書と呼んでいるのは,多分現行の所得連動を申請する際,誰かの扶養に入っているときに,こういう事情で,例えば小さい子供がいるとか,障害者を抱えているとかということを書いていただいていることを想定して,ちょっと事情書という言葉を使ったんだろうと思います。言葉はもっと,まだ検討の余地はあるかと思います。要するにどなたの,確認するすべというのは,なかなか難しいところがあると思いますが,どの人の扶養に入っているかをその人のマイナンバーは補足できないので,扶養者を明確にしていただくという趣旨かなと思います。

【小林主査】  よろしいですか。

【濱中委員】  事情書っていう名前が,何かちょっと違うかなと思います。現行の所得連動の事情書は,要するに,猶予の申請の段階で事情だから,返還が困難である事情を書くものですが,この場合は,単に誰かの扶養に入っていますと,扶養者は誰ですというだけの情報だと思われるので,名前はちょっと工夫する必要があるかもしれませんね。

【小林主査】  前に御報告があったと思いますけど,専業主婦であってもその対象になるというケースが幾つかあると,例えば育児とか,そういうものを出してもらうわけですね,それと同じようなことだというように……。

【藤森奨学事業戦略部長】  それは必要だと思います。

【小林主査】  そのあたりは,技術的な問題ですけれど,ここで議論するということではないですけれど,JASSOの現行の事情書を出していただけますか。そうしますと,皆さんイメージがはっきりすると思いますので,次回でもちろん結構ですので,今,現行でどういう形で行われているかということを出していただければと思いますので,よろしくお願いします。

 そうしますと,私の理解が正しいのかどうかよく分かりませんけど,誰の扶養に入っているか分からないけれど,とにかくこの人だというのを申告してもらって出してもらうと。そうすると,それが父母とか,兄弟姉妹でなくて,例えばその他の親族とか,支援者とかということもあり得るわけですよね。そこをどう考えるかという問題だろうと思うんですけど。

【藤森奨学事業戦略部長】  事例としては非常に少ないだろうとは思いますけど。

【小林主査】  ええ,少ないのは分かっているのですけれど,つまり,範囲を決めるかどうかというのは,この提案ですけれど,範囲を決める必要があるのかというのがよく分からないということです。つまり,どなたかが支援しているわけですね,払っていると。だから,それが誰か,例えば父母だとか,兄弟姉妹だとかというのが,証明がなければ分からないわけですね。そうなってくると,もうこの人が実際には扶養していますよと,そういうことしか分からないわけですから,これで範囲というのは余り意味がないんじゃないかというのが私の印象ですけど,いかがですか。

 繰り返しになりますが,書類を出してもらうわけじゃないですね,この人が誰に当たるのかというのは。

【藤森奨学事業戦略部長】  正直言って,ちょっとそこまでのまだよく整理されてはいないんですけれども……。

【小林主査】  どうぞ。

【渡辺学生・留学生課長】  趣旨としては,ある人が自分自らは働かずに,ただし,生きていくためには何らかの金銭的な支援が必要で,それが生活保護であるのか,あるいは誰かの扶養に入っているのか。この場合は誰かの扶養に入っているということを想定しているんですけども,扶養している人がいれば,その扶養している人は,何らかその扶養控除なりを受けているはずで,その扶養控除を受けている人の書類なりを出してほしいって,そういうふうにすればよいという,そういう理解でよろしいですか。

【小林主査】  私もそれでいいのではないかと思うのです。その人がどういう親族だとか,そういうことは余り関係がないのではないかと思ったんですが,いかがでしょうか。

 これは次回また少しJASSOと事務局で検討していただいて,クリアにしていただければと思いますが,今日どうしても決めなければいけないというわけではないので,いかがでしょうか。それでよろしいでしょうか。どうぞ。

【宗野顧問弁護士】  関連してちょっと別の問題になりますけれども,要は,本人と扶養者の収入の合計が一定額を超えている場合でも,扶養者の方も奨学金を借りている場合もあるので,その場合にどれくらいになるのか。要は,同じ300万円以上でも,奨学金を2本返すとなると,やっぱりそれは不足だという話は,多分議論は出てくると思いますので,その部分,そこは申請のときに扶養者の方に何か奨学金を借りていれば,奨学生番号を書いてもらえば,そこは返還状況だとか,それは捕捉ができると思いますけれども,そこの部分の設定をどうするか。それは一応別途考えないといけないと思います。所得が多いと思ったら,本人と扶養者で奨学金が2本とか,若しくは別の,子供の分の奨学金も返さなきゃいけないとか,何かそういう事情もあるかもしれないので,そこをこの返還額,一定額を超えるとしても,状況によっては,そこはまた変わってくると思うので,そこは設定をちょっと検討していただいた方がいいかと思います。

【小林主査】  これも次の検討課題として,確かに重要な論点でありまして,これだけ奨学金を借りる人が多くなってくると,その問題は当然起きているわけでありまして,アメリカでもこれは大きな問題になっていますので,両方が奨学金を借りて返還をしている場合,どのように考えたらいいかということでありますので,これは次の検討課題として考えたいと思います。

 ということでよろしいでしょうか。あるいは今,何か御意見があれば伺っておきたいのですが,いかがですか。

【宗野顧問弁護士】  誤解を招かないようにという趣旨なんですが,資料3の12では,この家族主義という形で,「試算上は」と書いています。あくまでも試算上の話で,本人に代わって配偶者等が返還する場合のみというのは,試算としては,結局配偶者の所得しか分からないから,配偶者の所得で計算しましたというぐらいの意味だと思いますけれども,これだけちらっと見ちゃうと,配偶者が払わなきゃいけないのかみたいな,払わせるつもりなのかというふうに誤解されてしまうといけないと思います。正確に書いているのは,資料4の5ページですね。配偶者等の収入・所得から,要は可処分所得の中から払っていただくという,可処分所得を考えるときに,御家族の,要は家計支持者のものを参考にすると。あくまでも払うのは本人ですよという立て付けをちゃんと説明しておかないと,これだけ見ると,家族主義を採用して,ほかの人から取るようになったのかというふうに,痛くもない腹を探られるのはよろしくないので,そこだけちょっと補足したいと思います。

【小林主査】  ありがとうございました。

そうしますと,先ほど幾つか残されている論点ありますけれど,基本的には家族主義的な考え方,この案という意味ですけど,家族主義的な考え方をとっていくということで,12番は決めたいと思いますが,よろしいでしょうか。

 そうしますと,一応今日の検討課題としては……。

【樋口委員】  ちょっとよろしいですか。

【小林主査】  はい,どうぞ。

【樋口委員】  先ほどの議論で残っているのは,所得の算出方法のところ,11番のところというのがまだ議論されてないかなと思うんですけど,ここでは給与等収入と書いてあるので,含みを持たせていると思うんですが,財産所得であるとか,要は給与所得,勤労所得以外のものをどう考えるのか。ここについては何か原案というか,何かあるんでしょうか。

【小林主査】  今のところ,マイナンバーで資産等が捕捉できないのです。本格的な試算テスト等をやるかどうかということは,それ以上は議論していないです。

【樋口委員】  例えばそれこそ自営とか,家業とかというのが,この場合,勤労所得というふうに限定されがちで,それが何かいろいろなところで7・5・3だとか,うんぬんという議論になってきているわけですが,一応基本は総合所得なんでしょう,考え方としては。

【藤森奨学事業戦略部長】  いわゆる事業所得の部分,自営業の方ですとか,あるいは農業の方ですとか,そういうものはここでは簡単には書き切れなかったんですけれども,そういうことは現状でも猶予なんかのときにも見ていますし,今回も当然対象にはなると。マイナンバーで頂く情報の中にもそれはとれると考えています。

【樋口委員】  そうですか。

【渡辺学生・留学生課長】  ちょっと単純化して申し上げると,今,返還猶予の300万円というのは,給与所得の場合は300万円が基準になっていますけども,自営業の場合は200万円で返還猶予の上限がきます。そういう差はあります。

【樋口委員】  なるほど。

【小林主査】  よろしいですか。少し蛇足になりますが,1つの考え方として,所得連動型のローンの返還に際して,大学の教育によって受けた者に対して支払うという考え方があります。そうしますと,資産とかは含まれないというのは,これはかなり理屈の話ですけど,そういう考え方もあるということを御参考までに申し上げたいと思います。

 そうしましたら,この問題は,先ほど申し上げましたように,実際に課税対象所得というのがどういうものなのかということは,もう一回次回調べていただいて,事務局から出していただくということで,基本的には,実際の現実的な問題として,それしか所得が把握できないということがありますので,その中身がどうなっているかということを見るということですね。それで,もし何か過不足があれば,その辺をもう一回考えるというようなことにしたいと思いますが,よろしいでしょうか。ありがとうございました。

 そうしましたら,残っている問題はまだ幾つもあるのですが,1つ,保証制度の問題で,今日は検討の対象にはなっていないのですが,これは,先ほど少し説明がありましたように,保証料をどうするかということもありますし,それから,資料5の方でありましたように, 2枚目のところですが,このシミュレーション上は代位弁済に入るということになっていますけれど,これは飽くまで形式的にもう代位弁済を全て行うということになっていますので,非常にこんな大きな形になるわけですけれど,これがどうなるかということも,これから議論しなければいけない問題ですので,これについては,次回以降ということになるかと思います。

 こちちで用意した議題は以上ですが,ほかに委員の方でこういう論点が抜けているということを,検討課題としてあるということでありますとか,あるいはこういうことを事務局として次回までに調べておいていただきたいということがあれば,伺いたいんですが,いかがでしょうか。どうぞ。

【阪本委員】  返済率の9%のところで,それをどうするかというようなお話があって,以前から9%にするか,10%にするかによって一番変わってくるのは,その返済のスピードであると。その場合,この奨学金の形で言うと,返還されたものが次の貸出しに回るという形からすると,これを入れたときにどのような資金の流れになるのかというのが,各年度別にある程度分かった方が,制度のフィージビリティーという点ではいいんじゃないかと思いまして,そういう資料がもし出せるようであればお願いしたいなと思います。

【小林主査】  今日お出ししたのは,あくまでも個人がどういう形で返還するのかというモデルですので,これが返還額が決まって,年度ごとにどのようになってくるかということで,最初のうちは返還しない人がかなり多いわけですから,そうなってくると,累積的に積み上がってくるという,そういうことになりますので,そのあたりのシミュレーションといいますか,試算を出していただきたいということですが,いかがですか,事務局側。

【渡辺学生・留学生課長】  非常に重要かつポイントを御指摘になりまして,ただし,かなり単純化した形のシミュレーションになると思います。例えば9%であれば,現状回収は,これ,35年間,9%で薄く長くなのですが,10%になれば,多少トータルの回収額は余り変わらないということは何となく分かってきたんですけども,それがどれぐらいの期間で回収できているのか,そこ,きいてくるはずですので,ちょっと単純化,多分詳細な形でのものは難しいかもしれないんですけれども,可能な範囲で試算をしてみたいと思います。

【阪本委員】  ちょっと補足ですけど,恐らく私が思うには,きいてくるのは,この返済率よりも,どれだけの人が定額を選んで,さらに,ここでは定額返済も10年,15年,20年というふうに分けてありますので,どれだけの率でそれを選んでくるかというのがきいてくるんじゃないかなというふうにも思ったりもしますが,それはどうでしょうかね。

【渡辺学生・留学生課長】  多分それは御指摘のとおりなんですが,仮定の数字は出せますけども,ちょっと多分現実とはかなり違ってくると思います。

【阪本委員】  だから,こういう何パターンかというので見られるだけでも違うかなと思います。

【渡辺学生・留学生課長】  はい。

【小林主査】  出していただけるということでよろしいですか。

【渡辺学生・留学生課長】  ちょっと事務局の方で具体的な幾つか,多分これも幾つかのパターンで考えてみる必要があると思いますので,少し整理してみたいと思います。

【小林主査】  検討していただくということでよろしいでしょうか。

 ほかにございませんでしょうか。どうぞ。

【吉田委員】  すいません。定額返還のお話が出たので,ちょっと伺いたいんですけれども,今,第1種の奨学金に対して新所得連動と定額返還を入れるという,この資料2がありますが,有利子の第2種にもこの定額返還というのは適用するというふうに考えてよろしいんですか。もしそうであれば,その制度の7割ぐらいを占める第2種奨学金の方に定額返還を入れた場合の,この返還年数が選択できるというものについても,一応何らかのシミュレーションみたいなものは出しておかれた方がよろしいのではないかなと思いますが,いかがでしょうか。

【小林主査】  という御指摘なんですが,いかがでしょうか。

【渡辺学生・留学生課長】  検討の視野には当然入ってはいるんですけども,ちょっと有利子の方は,金利の問題もありまして,まず,この検討会では無利子についての議論を終息させた後に,有利子についても検討していただければと考えております。

【吉田委員】  ということは,この定額返還型の拡張版というものは,第2種については,今回の議論では全く入っていないというふうに理解をしておいてよろしいでしょうか。すいません。私の理解がちょっと曖昧でしたので確認です。

【渡辺学生・留学生課長】  可能性として,有利子奨学金についても検討する必要があると思っています。ただし,まずは,無利子についての制度を固めた上で,有利子に対する適用についても,今後の検討課題として御議論いただけると思っております。

【吉田委員】  やはり無利子の奨学金から先行的に導入ということで,有利子を貸与している貸与者から何らかのやはり説明を求められるということは考えられると思いますので,有利子についても,今後,固めていくということで理解できました。ありがとうございました。

【小林主査】  よろしいですか。ほかに,どうぞ。

【樋口委員】  基本的にこういう問題がなぜ起こっているんだろうかということを考えると,やはり相当にデフレという問題が厳しくのし掛かっているわけですね。それによって,物価が下がっていく世の中で,給与も下がって,そして,返還できない。今日の議論もみんな名目所得の議論に基づく制度設計ということをやっているわけですが,こういう状況は当分続くんだろうという想定のもとに,物価の変動というのは考慮しないでいいかと思いますが,制度のサステーナビリティーを考えると,附帯条項みたいなものをつけていかないとまずいかもしれない。要は,デフレのもとにおける議論というのが今,起こっているわけですが,インフレが起こってくれば,名目の所得はやっていても,全く制度が変わってしまう可能性があるわけですね。ということは,その条件をある程度考慮に入れた上での議論をしているんだというようなことというのは,認識しておかなくちゃいけないし,どこかで制度の持続可能性を考えても,それは入れておいた方がいいだろうと思います。

【小林主査】  ありがとうございました。確かにその議論も重要な論点でありまして,イギリスで試算が度々変わるのは,正しく樋口先生がおっしゃったように,インフラ・デフレの率を変えると相当変わってきますので,その辺も確かに,これ,30年先のことまで考えなければいけない議論ですので,その辺も考慮に入れていくということは考えたいと思います。ありがとうございました。どうぞ。

【濱中委員】  今の点に関連して思い出したんですけど,現行の割賦額って,それこそバブル期の非常に景気がよかった時代の直後に改定をして少し上げたんですね、たしか平成6年でしたか。3,000円ぐらいずつ,その前の時期より返還割賦額を上げていて,ところが,そこから20年たって,20年の間,実はデフレだった。そこで割賦額の調整をしてないわけですよね。そのことが返還を厳しくしていることのかなり大きな理由を占めているんじゃないかと私は考えていまして,割賦額を出す計算表があるんですけど,あれをもう少し、例えば5年おきとか,定期的に見直すんだといった,そういうルールみたいなものを,定額の返還については考えてもよいのかなと思いますね。

【小林主査】  ありがとうございました。

  ほかに御意見ございませんでしょうか。不動委員,どうぞ。

【不動委員】  返還が厳しくなったときというのは,銀行でいきますと,ローンの返済が厳しくなったというときなんかは,本当に,ルールはもちろんあるんですけれども,個別事情を勘案して,ここで言う事情書というものを勘案して,個別に対応するわけなんですけれども,この奨学金についても個別事情を勘案して返還額,どうしようかということを個々に対応するという理解でよろしいんでしょうか。

【小林主査】  先ほど別に,2つに議論を分けた方がいいということで,保留分になっているのですけれど,もともとの議論の流れからいうと,そういうことも想定するべきだというのはありまして,繰り返しになりますけど,各国の所得連動型,その辺考慮してないんですけれど,日本はそういうことを考慮してもいいのではないかというような議論があったかと思います。

現行のいろんな制度があるわけですけれど,それをどういう形で残していくかとか,そういう議論もまだしてないので,そのあたりは検討課題として残っているということでよろしいと思いますが,よろしいですか。ありがとうございました。

 ほかに御意見ございませんでしょうか。

 それでは,どうも長時間ありがとうございました。次回の予定について,事務局からお願いいたします。

【八島課長補佐】  次回,第5回につきましては,1月の中下旬を予定しております。日時,場所,決定しましたら,また,お知らせしたいと思います。

【小林主査】  それでは,これをもちまして,今回の所得連動返還型奨学金制度についての有識者会議を閉じたいと思います。長時間,どうもありがとうございました。

 

―― 了 ――


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