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理工系人材育成に関する産学官円卓会議(第5回) 議事録

1.日時

平成27年12月18日(金曜日)10時~12時

2.場所

中央合同庁舎第4号館 共用1214会議室

3.議題

  1. 産業界のニーズと大学教育のマッチング方策,専門教育の充実についての有識者ヒアリング
  2. その他

4.出席者

委員

内山田委員(代理:永里委員),野路委員,横倉委員,須藤委員,大西委員,藤嶋委員,小畑委員,神谷委員

文部科学省

常盤高等教育局長,佐野審議官(高等教育局担当),北山専門教育課長,関専門教育課企画官,猪俣大学改革推進室長

経済産業省
井上産業技術環境局長,宮本大学連携推進室長,星野産業技術環境局審議官,髙科産業技術政策課長

オブザーバー

NPO法人DSS 辻代表(株式会社大学成績センター代表取締役),一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会 福原常務理事,大阪大学
西尾総長,東京大学大学院 光石工学系研究科長

5.議事録

【北山専門教育課長】  それでは,定刻になりましたので,第5回理工系人材育成に関する産学官円卓会議を開催します。委員の皆様方には,御多忙にも関わらず,本会議に御出席いただき,まことにありがとうございます。
文部科学省専門教育課長の北山と申します。よろしくお願いいたします。
本日は内山田共同座長が所用により御欠席ですが,代理として日本経済団体連合会未来・産業委員会産学官連携推進部会長で,旭リサーチセンター常任顧問の永里善彦様に御出席いただいております。また,秋山委員,上野委員におかれましては,御欠席となっております。
本日の議事進行は,大西共同座長が行われる予定ですが,本日,急きょ総合科学技術・イノベーション会議への出席が求められたとのことであり,1時間ほど遅れていらっしゃいます。座長の到着まで私の方で進行を勤めさせていただきますので,どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,まず,配付資料について確認させていただきます。

【関専門教育課企画官】  失礼いたします。
まず,お手元の資料1からでございますけれども,基本的に今日のプレゼンの順番でそろえております。資料1は経済産業省からの資料でございます。資料2はDSSと日本オープンオンライン教育推進協議会からの資料でございます。そして資料3は大阪大学,西尾総長の資料でございます。資料4は東京大学,光石先生からの資料でございます。そして資料5が第4回の議事録でございます。過不足等がございましたら事務局までお申し付けくださいませ。よろしゅうございますか。

【北山専門教育課長】  それでは,議題に入りたいと思います。本日は,産業界のニーズと大学教育のマッチング方策,専門教育の充実についてということで御議論いただければと思いますが,まず,経済産業省事務局より,資料1について説明をお願いします。

【宮本大学連携推進室長】  それでは,資料1について説明させていただきます。
この円卓会議の中で産業界の技術者1万人に対するアンケート調査をさせていただき,産業界のニーズを少し可視化するような試みをさせていただいて,皆さんに御紹介させていただいていると思いますが,前々回の第3回のときに,日本の状況で幾つかのいろいろなところにいろいろなミスマッチがあるということは,示唆されるのは分かったんだけれども,このようなミスマッチは海外ではどうなっているんだろうかということを座長から質問されておりましたので,これは他国の状況もどうなっているかを少し調べてみようということで調査をいたしまして,その結果を幾つか,5か国ほどどんな状況になっているかというのを調べましたので,それを資料1にまとめさせていただきました。具体的には,調査をするに当たりましてはNEDOの海外事務所,それから外国各国の日本大使館の方々,それから部分的にはJETROの人たち,それからJSTの人たちといういろいろな方々,それから日本にいる各国の大使館の方々とかにインタビューさせていただいたりしながら,そういった人たちを通じていろいろな大学のヒアリングとかをしていただいたものをまとめたものとして作成いたしました。
5か国ほど,米国から始めますが,1ページを見ていただきますと,幾つかどんな状況になっていたかを簡単に説明させていただきます。まず,米国につきましては,いろいろなところにヒアリングした結果,アメリカの大学は基本的に私立大学が中心でございますけれども,定員という制度は当然存在しませんが,アメリカの大学は基本的には徹底した競争をしていると,学生の獲得,それから学生の就職先の確保とかそういうことをやっていると。それから授業料も高いので,借金して高い授業料を納めている学生も多い中で,就職先がないというようなことだと学部の存続ができないんだと,そういう競争原理が厳しく働いているということで,我が国のミスマッチのようなものを説明した際には,こういう状況は米国においては考えられないというようなことをいろいろな人に言われたということでありまして,我々がヒアリングしている中で,アメリカはマーケットメカニズムでそういったミスマッチが調整される非常にうらやましい国だなという感触を持ったような感じです。政府の施策としては,そういう意味では個別の具体的な細かい分野についてというようなことは,マーケットで調整されるということで特に施策は存在せずに,基本的にはSTEM(Science,Technology,Engineering,Mathematics),科学・技術・工学・数学といった分野の卒業生を100万人増加させるんだといったような,理工系を増やすんだというざっくりとした政策がとられているというのが米国の特徴でございます。
それから次のページをめくっていただきましてドイツの状況でございます。ドイツにつきましては米国とまたがらりと変わりまして,ドイツは職能別教育というものに力を入れているということであり,具体的には分野,職種もドイツの職業教育法に基づいて330の職業を定め,それぞれの職業ごとに必要とする能力は何だといったことを規定すると。必要に応じて要らなくなってきた職業は削除したり,新たな職業として必要なものは追加したりといったことをやりながら,それぞれの職業ごとに職業教育カリキュラムみたいなものを策定するということをやっているようでございまして,それにもう一つ加えますと,デュアルシステムという名前で呼ばれているみたいですけれども,基本的に企業に派遣してOJTで教育するということは非常に一般的に行われているということでありまして,また大学の学科の構成を決める会議には大学関係者に加えて外部有識者,経済界の人たちといった人を入れて学科の構成の在り方とかそういうことを議論すると,非常にミクロに1個ずつ細かく規定して,それを積み上げているという方式でございまして,顕著な人材ミスマッチは起きていないというような論調で書かれているレポートがいろいろ存在したという状況でございました。
それから三つ目の国として英国,イギリスについても調べました。イギリスにつきましては恐らく国立大学の仕組みが日本とよく似ていると思うんですけれども,定員の制度はございますし,運営費交付金の制度もございます。そういった中で,イギリスの中では特に金融産業がそれなりに大きいものですから,優秀な理工人材が金融系に流れてしまっていて,製造業における理工系人材が不足しているというような報告が幾つかされておりましたし,特にコンピューターサイエンスの分野においては急速に需要が高まっているにも関わらず,その分野を専攻する学生が減っていると,これは問題だということがイギリスでは議論されているということのようでございました。教育の仕組みといたしましては,イングランド高等教育財政カウンシル(HEFCE)というところがございまして,そこに産学のメンバーからなる委員会(SIVS)を設置して,そこで高等教育に関する調査データをとっていると。どういうデータをとっているかを見ますと,どういった学科の卒業生がどういった就職先,どういった分野の仕事に就いているかといったようなことを中心に統計をとっているようでございますけれども,そういったデータに基づいて,国全体として戦略的に重要なんだけれども人が足りないといった部分は教育体制として強化しなければいけないというようなことを,どういった分野なのかということを検討していると。こういった中で,特にイギリスの中では二つの分野について特別に対策を検討する委員会が立ち上がっているようでございまして,その一つは先ほど申し上げたコンピューターサイエンスの分野の人材育成をどうてこ入れするかということと,それからSTEM,これはアメリカと一緒ですございますけれども,一般的理工系をどうやって増やすかということだと思いますが,その二つの分野に関して特別な委員会が立ち上がって検討しているということのようでございます。また,それからインターンなりを企業に派遣してOJTなり何なりをして産学連携教育に携わらせるということについては,全体の1割程度の学生が実際にそういうことに取り組んでいるんですが,これについては非常に効果が高いということが産業界若しくは学生側,大学側で認められていますので,この動きはどんどん増える方向にあるというようなことでございました。
4ページ目を見ていただきますと,先ほど卒業生の就職先の調査データをとっていると申し上げたものをネットで探しますとございましたので,それを取り出してみたものですけれども,縦にいろいろな学科の分野が並んでございます。それぞれの学科の卒業生がどういった分野の就職先に就職しているかということを,卒業生に対する多分アンケートか何をとっているんだと思いますが,どれぐらい大学で学んだ内容と懸け離れた内容の就職先に就いているかといったようなものが分野によってどの程度違うかみたいなことを見たり,こういったデータを参考に分野の重要性なり何なりを判断しているということのようでございました。
それから5ページ目を少し見ていただきますと,四つ目の国としてシンガポールについても調査いたしました。シンガポールにつきましては,ここも大学卒業後の6か月時点でのGraduation Employment Surveyという卒業生の調査というのを大々的にやっているということでございました。実際にはそういったデータを使いながら,産業ニーズと,それから大学での教育の定員とか需要・供給のミスマッチがどういった分野にどの程度存在するかということを把握して,それを大学の学部定員に反映するというようなことを毎年やっているということでございます。真ん中より少し下のところ,二つ目のポツを見ていただきますと,具体的にはNational Manpower Councilというところの下で産業界のニーズや学生の関心に関する調査をしていると。具体的には卒業生がどういった分野に就職しているかという就職状況のデータであったり,あるいは就職したときの初任給がどの程度になっているかと,初任給が高くなっていると人材がひっ迫しているんだと考えるみたいでございますけれども,そういったデータを使いながらそれぞれの学部の定員をNational Manpower Councilで決める。学部の中の学科ごとの定員については,大学の中でこういったデータも使いながら決めていくということでございまして,ある大学,シンガポールには五つの国立大学がございましたけれども,そのうちの一つにヒアリングさせていただいたところ,そこではある分野で更に学生の定員を増やさなければいけないということになると,教員を増やさなければいけないということになるわけでございまして,教員は国内でできる限り調達するわけですが,足りない場合には海外から教員を見つけてきて教員をやってもらうということです。一方で,あるところで拡充しますと別のところでは定員を縮小するというような動きもあるわけでございますけれども,その場合にはどうするのかということを聞いたところ,縮小する分野ではサバティカルの機会などを使っていただいて,別の需要のあるような分野で教育ができるような感じに新分野への開拓をしていただいているというような方向で運用しているという回答でございました。
それから,企業等におけるOJT若しくはインターンシップのような活動につきまして,これもまた非常に積極的でございまして,中長期インターンシップはエンジニアリング系では約3~6か月,全ての学生に義務付けされていて,したがって大学としては相当多くの企業に派遣しなければいけないということで,この国立大学では3,000の企業とMOUを結んで,そこに学生たちを送り込んでいるということでございました。
それから最後にインド,少し途上国も調べてみようということで,インドについて調べさせていただきました。インドは少し産業の特徴としてはITサービス分野の産業が非常に強くて,製造業はちょっと弱いという特徴がございますけれども,そういった国でどうなっているかというと,やはりIT分野,サービス産業中心に人材育成が活発である反面,製造業においては人材が不足していると,全般的な傾向はそうでございました。大学はIIT(インド工科大学)のようなものもございますし,技能者を養成するものとしてITIのようなものもといろいろなものがございましたけれども,最後の7ページを見ていただきますと,マクロなデータで見ますと,いろいろな分野ごとに赤の折れ線がどの程度の採用に関して求人があるかということをプロットしたものでございまして,一方で青,緑,赤の棒グラフになっておりますが,この青が年間の学士取得者,それから緑が修士取得者,それから赤が博士取得者の国全体の数でございまして,分野ごとにこうなっていて,ちょっと右の方にございますITの分野では非常に学生の輩出の量が多くなっていまして,特に修士に関しては圧倒的にITがほとんどであるという状況になっていまして,分野によって若干ミスマッチがあるようにも見受けられますが,全体的には求人と学生の輩出がそれなりに相関しているような印象を受けるようなデータであるということが判明いたしました。
私からは,こういうように幾つかの国の産業ニーズと,それから大学教育,高等教育の関係について少し調査,整理させていただきましたので報告させていただきました。
以上でございます。

【北山専門教育課長】  ありがとうございます。
今の点につきましては,後ほど御議論いただく際にまた戻ってくることができればと思います。
本日は四名の先生方にお越しいただいております。NPO法人DSS代表の辻太一朗様,一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)常務理事の福原美三様,大阪大学総長の西尾章治郎様,東京大学大学院工学系研究科長の光石衛様でございます。それぞれ10分程度で御発表いただければと思います。皆様の発表後にまとめて質疑を行いたいと思います。
それでは,最初に辻代表と福原常務理事,お願いいたします。

【NPO法人DSS(辻)】  NPO法人DSSの辻と申します。本日はこのような機会を頂きまして,大変ありがとうございます。
私からは,今日の産業界ニーズと大学教育のマッチングの方策と,その専門教育の充実というところで,是非この場で御検討いただきたい提言をお持ちしております。それと,参考として提言の推進に役立つようなある取組を紹介したいと思います。
ページをめくっていただきまして1ページ目ですけれども,企業の採用活動が理工系人材に大変影響を与えている,特に専門知識の取得という意味で影響を与えているということを少し御紹介させていただきます。大学で育成されている企業にとって有用な素養として,大きく分けて考えると,知識と汎用的能力と分けてみることができます。知識で言うと,下にイメージ図を描いていますけども,学業においては一般教養や専門教育の知識でしょうし,学業外の活動としては仕事の理解とか人間関係を理解する何らかの知識と。それから汎用的能力というところで言うと,学業を通して得られる分析力であるとか理解力など様々な力があると思います。それから学業外でも対人力とか初対面でのコミュニケーション力など,ポイントは何かといいますと,現在の多くの企業の採用選考の部分で言うと,1点目に書いていますが,どちらかというと学業よりも学業外の活動のことに着目することが多い。それから専門知識の取得レベルよりも汎用的能力の取得レベルを確認していることが多い。右の方に少し理工系と文科系の図でイメージを描いていますけれども,これは理工系よりも文科系の方がより顕著ではありますが,例えばゼミとか研究室の活動の話も聞くんですけれども,どちらかというとそれはどういう活動をしていたかとか,そこでどういう取組をしたかという能力部分を聞く場合が多いです。それから提出書類に関しましても,応募時に成績表,最近は履修履歴という言い方をしていますけれども,どういう科目を取ったかとか,そこでの成績というのを提出させない場合が結構多いです,入社後とか内定後とか。それに比べてリーダーシップをどの点で発揮したかとか,強みは何ですかというのは,割と最近エントリーシートといいますけれども,これはもう応募時にほぼ全企業が出させている。ですから,どちらかというと学業外の活動,それから汎用的能力を聞く傾向がある,それによって,下に書いていますが,学生は学業の優先順位を下げやすい環境がどちらかというと作られている。それから理工系学生には専門知識の習得意欲を少し阻害する要因が採用活動にもあるということかと思います。
2ページ目で,この提言に関しまして,少し関連する私どもの活動を紹介させていただきますけれども,DSSと大学成績センターというのがありますが,設立の目的としましては,企業の採用活動においての学業,履修履歴の活用を通じて,大学生の学業への優先順位を高めていこうというのが我々の活動でございます。NPOは2011年に設立し,大学成績センターというのは13年に設立しています。大学成績センターは,これを進めていく上に,次に紹介します履修履歴のデジタル化というのを企業に提供するためにどうしても株式会社が必要だったので作りました。ただし,これに関しましては社会的な役割ということもあり,株式会社ではあるんですけれども完全に株式会社の機能を放棄しまして,事業をこれ以外しないとか,データの利用は2次利用以降は一切しないとか,それから会社規模も数人程度以上は大きくしないとか,そのような制約の中でやっています。
活動内容ですけれども,少し紹介させてもらいますと二つありまして,一つ目は採用活動における履修履歴活用の企業のメリットを啓もうしていくということです。今年の経団連の採用指針にも履修履歴の活用が入りましたけれども,履修履歴は成績の確認だけではない利用方法があるということを言っています。それからもう一つは,面接で利用することで汎用的能力を多面的に見ることができるんだということで,実は企業の方で履修履歴を若干活用する動きが出てきています。二つ目に,これが今日の話に割と関係するところですけれども,履修履歴のデジタルデータ化ということを推進しています。これは企業にとって履修履歴活用の利便性を向上させる,特に技術者の採用では,この場でも何人もの委員が基礎科目の重要性と言っていますけども,基礎科目が検索しやすくなったり,それから評価の厳正度,評価のばらつきとかがあるのかどうかという大学の厳正度が分かりやすくなる。それから学生にとっては無料の履修履歴の保管場所になるということ。それから,社会的には成績評価の見える化によって成績の信頼性を向上させるということを目的に作ったものでございます。
下の方が簡単な形で,学生がその保管場所に自分の履修履歴を登録し,それをデジタルデータで企業に送り,企業はデジタルデータでそれを受け取るということが2014年から始まりまして,今年は112社に利用いただいています。学生にとっては自分の専用ページから送るだけということですし,企業は使い方が楽になるということです。
次のページが今回,皆様に是非御検討いただきたい理工系人材に関する提言になっております。一つは理工系人材の育成レベルの向上に極めて効果的なポイントは何かというと,当然のことではありますが学生の履修行動を変えていくということかと思っています。二つありまして,一つ目は専門の基礎科目の修得レベルを高める,二つ目が専門外の活動の場を広げるための科目を修得する。下にイメージを書いていますけれども,一つ目は,例えば電気工学科のAさんというのが自分の電気工学の,電気・電子系の基礎科目を真剣に学ぶということです。そうすることによって,技術者として必要な基礎科目であって,現実的には実は入社後に学び直しをしているというのはここでも言われていますけれども,それをきっちり学ばせるということですし,そうすることによって質的な向上を図る。二つ目が電気系のAさんも自分が行きたい企業とか役割によって少し違うところの分野を広げて取るということです。専門外の基礎科目の修得によって実は活躍の場を広げる,専門外の科目でもそれを習得していることで技術者の活躍の場が広がるとか,今回,個々の学科の卒業生の数と産業界のニーズに若干のずれがある。例えばバイオ系の生物学系の学生も,少し化学系の無機化学とか有機化学をしっかり勉強することによって化学系の会社に行くことが可能になるのではないかというようなことを言っております。
このような履修行動を改善していくためにということで,ここでしていただきたいことは次のページでございます。そのために推進することで極めて効果的と思われることが二つあります。一つは学生の,自分の入社後に必要となる基礎科目,又は入社に必要となる基礎科目を,産業界のニーズをまず見える化するということです。それから二つ目に,学生にその科目が実際に必要なんだということを実感するのは何かといいますと,採用時点です。ですから,やっていただきたいことの一つ目は産業界のニーズの見える化,将来必要となる科目をまず学生に理解してもらう。具体的なやり方は様々ありますけれども,下に少し例を書いています。これは単純な例です。各企業・職種で基礎科目ごとの必要段階を,例えば絶対必要とか,できれば持っていた方がいいということを3段階ぐらいでバーッとつけてもらって,それを集計することで3段階から5段階ぐらいで,例えばAは同一業界ではほぼ全ての企業が必要としている科目だとか,Bはこの業界で多くの企業が必要としている科目はこれだとか,そのようにある程度の優先順位を見える化することによって,学生が自分が行きたい業界,企業はこういう科目を履修している方がいいんだなというのをまず理解する。実は,後で紹介しますJMOOCの方では経団連様の協力を得て10社から約300人ぐらいのアンケートを実施しまして,また,経産省の調査も踏まえて,約50ぐらいの基礎科目というのを一応設定しております。それから二つ目,学生にとってそれが本当に重要だと納得させて,それを履修させるということが重要になるんですけれども,そのためには採用選考時点で習得レベルを確認していただく,それによって学生が実感するということです。採用場面では,実はそんなに科目ごとに習得レベルを確認しているとは思えていません。一つは何かというと,人事が基礎科目を実はきちっと分かっていない場合もあるんじゃないでしょうか。それから成績証明書という紙ですから,基礎科目のチェックは極めて煩雑になってくる。それから評価の信頼性が分からない。これは先ほど四角に書いていますけれども,履修履歴をデジタルデータ化することによって,データですからこういう科目を持っている学生というのを応募者の中から検索することが極めて簡単にできます。また,デジタルデータになりますから各大学がどのような評価にばらつきがあるのか,それもこの科目ではどういうばらつきがあるのかというのが見える化できますので,ある程度産業界もニーズが見える化できれば企業にとっても有益ではないかと。この2点を産業界の方でしていただくことで,自分の将来にとって必要となる基礎科目の習得レベルを高めることに,学生がそれを理解し,実感するということでモチベーションが高まり,学生の基礎科目の履修行動が変化するのではないかということが今回の御提案といいますか,御議論いただきたい点です。
この後は参考として,ある種,推進に関連する活動を紹介させていただきたいと思います。

【日本オープンオンライン教育推進協議会(福原)】  続きまして,JMOOCの常務理事をしております福原でございます。お手元の資料の5ページから,今辻さんから御提案のありました内容を具体化する,より推進するために特に技術系の学び直し,これは企業人のみならず,就職を目前にしているような学生さんにとっても効果的・効率的な手段の提供になるだろうということで紹介させていただきます。
基礎科目修得の効率化ということで書かせていただいておりますが,私ども日本オープンオンライン教育推進協議会は,本質的には次の二つのところが特徴でございます。誰でもオンラインの登録だけで大学レベルの授業をインターネット上で無償で受講できますよということ。それから,しっかり受講した方に対して,単なるコンテンツ提供ではなく,これは学習,教育サービスとして提供しております。学習者の学習行動,学習履歴を把握しまして,修了条件を満たすと修了証を先生の名前で提供するということをやっておりますが,大学,企業それぞれにどんな効用があるかということを下に書かせていただきました。大学では,当然通常提供されているカリキュラムの中に使っていただくことが自然で効果的な活用であると考えますが,具体的には専門の基礎科目について,あらかじめMOOCで学習することと講義を併用することで習得レベルを高めることにつながるだろうと。いわゆる知識の習得というのを学習,教室に集まる前に習得していただくと,いわゆるフリップドラーニング,反転授業型になりますが,実際に対面で行うときはそれを更に定着させる,あるいは問題解決能力を醸成するという形で組み合わせていただくことで,より深いレベルの学習につなげられるのではないかと思っております。それから,もちろん専門外のところについては,深いレベルというよりは基本的な基礎知識を習得するということでの活用というのは,オンラインの学習機会を使ってより広くできるだろうと思います。
企業におきましても,当然多忙な社会人が学習機会をオンラインで提供するということで基本的なメリットはあるわけですけれども,具体的には入社前・入社後での社員の学び直しということで活用していただくことが現実的かと思っております。社内研修は既に実施されていると思いますが,それも更に知識の習得に関してはオンライン化してしまう。実際に集合したときについてはより深いレベルの知識定着を図ると,アクティブラーニングを活用するというような効用があろうかと思います。
6ページ目でございますが,先ほどちょっと辻さんから紹介させていただきましたが,経団連様にも御協力いただきまして,会員企業の方々,若手の社員の方に実際に学び直した体験を,大学時代の基礎科目の名前で書いてくださいというアンケートをとらせていただき,約400強を集めていただきました。また,経済産業省様の調査と突き合わせまして,各系統ごとに上位のものをピックアップしたものが下のリストに書いてある科目でございます。約50ほどございますが,こういうものが実際に企業人から見たときにニーズが高い,本当に学び直したというものに当たります。こういうものの中から上位のものから順に,当面JMOOCとしては来年度は10科目から20科目,2年以内に50科目をMOOCの形で開講していこうということを予定しております。講座の提供に当たりましては,本会の委員としてお参加いただいている各大学の皆様,とりわけ国立高等専門学校機構様,小畑先生のところには積極的に御協力いただいておりますが,日本の大学のみならず,MOOCについては海外の方が非常に大きく,もう既に数千科目が提供されているような事情もございますし,日本にこだわる必要は必ずしもございませんので,活用できるものは大いに海外,特にMIT,スタンフォード等のこの分野について秀でているもの,具体的に言うと特に情報科目なんかはそういうものを活用するということも可能性の一つとしてあるだろうと考えております。
最後のページで,簡単でございますがJMOOCについてポイントのみ紹介させていただきます。MOOCについては御案内のことと思いますが,今世界じゅうに広がっていて,3,000万人以上受講しているというような状況にございますが,既にアジアでも急速にこの動きが大きくなっております。中国,韓国,タイ等でも始まっております。基本的な流れは一般的方々が学習するというわけですが,一番最後のチェックのところに書いておりますが,欧米の中では企業との連携が既に始まっております。ある調査によりますと既に企業の7%が組織的な活用をしているという調査もございます。私どもはこういう流れの中で,是非欧米のみならず日本の環境の中でも同じようなオンライン提供が実現できるようにということで活動してまいりました。現在までに登録者が16万人強,各大学,45大学,企業にも42社に御参加いただきまして,100を超える講座を今までに提供しているところでございます。下のところは受講の流れということで簡単な模式図でございますが,講義データは非常に構造化された,学習者にとって学習しやすい形になっておりますので,調査によりますと往復の通勤時間の中で10分間の映像をしっかり見て,問題を解決する,問題を解く,レポートを書くというのは例えば夜,空いている時間のところでゆっくりやるというような使い方がされているようでございます。
簡単でございますが私どもの説明とさせていただきます。以上でございます。

【北山専門教育課長】  辻代表,福原常務理事,ありがとうございました。
引き続きまして,大阪大学の西尾総長から,よろしくお願いいたします。

【大阪大学(西尾)】  大阪大学総長の西尾章治郎です。ヒアリングにお招きいただき,ありがとうございます。本日は,産学協働による情報系人材の育成について,述べさせていただきます。
2ページを御覧ください。最初に,情報技術,ITが核となったイノベーションの幾つかの事例を紹介させていただきます。現在,「UBER(ウーバー)」,「airbnb(エアビーアンドビー)」,「いろどり」というようなインターネットや情報ネットワークを基盤として革新的なサービスが展開され,ビジネス分野のイノベーションが起こっています。また,フェイスブックの経済効果等についても衝撃的な数値が挙がっております。
一方で,一時期トラブルの多かった宇宙機の信頼性の向上は,IT分野のユニットをJAXAに設けたことが大きく貢献していると言われております。また,最近,自動車の自動走行プロジェクトについても,成功の鍵を握っているのは先進的なIT,特にセンサー技術とビックデータ解析技術だと言われています。つまり,ビジネス分野のみならず宇宙科学から交通手段に至る広範な分野におけるイノベーションのコアはITと言えます。
3ページを御覧ください。第5期科学技術基本計画の中で,情報技術への社会からの期待として挙げられるのが,「超スマート社会の実現」と「超スマート社会 競争力の維持・強化」であります。特に,後者については,新しい価値を生み出す事業の創出や新しい事業モデルを構築できる人材,ビッグデータや人工知能等の基盤技術を新しい課題の発見・解決に活用できる人材などの強化が述べられています。
4ページを御覧ください。高度IT人材の必要数及び育成数については様々なデータが公表されてきました。例えば,平成17年には,42万人不足しているというデータが出まして,当時,文部科学省の科学官をしておりました私としては,専門教育課長とともに早急に何らかの手を打たなければ,と考えました。
5ページを御覧ください。そこで,先導的ITスペシャリスト育成推進プログラムを立ち上げまして,8拠点大学,延べ27大学・大学共同利用機関からなる大型人材育成プログラムを立ち上げました。もちろん企業にも参画いただきまして,専門的スキルを有するとともに,社会情勢の変化等に先見性をもって対処できる世界最高水準のソフトウェア技術者,高度セキュリティ人材の育成を図りました。
6ページを御覧ください。さて,現在・今後における情報技術者の人材像を,高度ソフトウェアエンジニア,知的システムエンジニア,IT開拓リーダ,Webエンジニアの四つに整理しました。大阪大学は,産学連携という観点からは,Webエンジニア以外の三つのタイプの人材育成事業を強力に推進しております。以下では,それらの人材育成事業について概要を説明いたします。
7ページを御覧ください。最初に,高度ソフトウェアエンジニア育成の取組として,専門教育課で推進しております「情報技術人材育成のための実践教育ネットワーク形成事業enPiT」について紹介します。これは,大阪大学が中心となり,15連携大学,79参加大学が参画し,実践的な情報技術の教育を,1 クラウド,2 セキュリティ,3 組込み,4 ビジネスアプリケーションの4分野で実施しています。連携企業110社等と協働することで,大学単独では実施不可能な四つのメリットを有していることが特徴です。
8ページを御覧ください。enPiTの産学連携活動においては,特別講演やセミナー,ロボット制御に関する競技会等の活動を行ってきました。enPiTの取組についての評価は,産業界・受講生からも高い評価を得ており,高度ソフトウェアエンジニアの育成において,顕著な成果を上げています。なお,enPiTの関連大学をはじめとする全国の大学の総力を結集しますと,毎年2000名程度の人材育成が見込まれます。この数値でも十分とは言えないとは思いますが,逆に,この程度の数の人材の確保が可能になるという状況です。
9ページを御覧ください。三つ目の知的システムエンジニア育成に関しては,第5期科学技術基本計画でもその重要性はうたわれているものの,国内においては,データアナリストをはじめ,組織的な育成が全くなされておりません。そこで,大阪大学では,数理・データ科学教育研究センターを本年度立ち上げ,産業界と連携をしながら,関連基礎知識を習得するための教育プログラムを強力に推進しております。
さらに,学内における教育研究プロセスの過程で得られるビッグデータをサーバに蓄積し,それらのデータを交差させることにより,理系・文系を問わず異分野融合研究を推進します。そのための「データビリティセンター」の設置を進めており,産業界や関連病院などとも連携を図っていきます。このセンターを通じて,他分野にわたるビッグデータアナリストを養成していきます。
10ページを御覧ください。専門教育課からは,ビックデータやAI,IoT等の分野で超スマート社会を構築する人材の育成を,enPiTの枠組みを適用して学部レベルで推進するプログラムが来年度に向けて概算要求されております。
11ページを御覧ください。最後に,IT開拓リーダ人材について述べます。生命系では,格段の省エネルギーのもと,環境変化に柔軟に調和する共生系ダイナミクスが形成され,頑強性と持続可能性を有しつつ35億年を生き抜いてきており,パラダイムシフトの鍵が潜んでいます。
また,我が国の情報分野の国際競争力が低迷していますが,その要因として,「もの・システム」づくりにおいてユーザの視点に立ったイノベーションが実現できていない,という指摘があります。ユーザが「何を欲し」,「何に安らぎ」を感じているかを科学的に知るためには,認知・脳科学の知識が必要です。
大阪大学では,三つの領域,つまり,情報,生命,認知・脳科学の3領域を対象として相互のダイナミクスを共通的に捉えることができる人材こそがIT開拓をけん引できると確信し,産業界と一体となって博士人材育成を鋭意推進しております。
12ページを御覧ください。その人材育成は,文部科学省の博士課程教育リーディングプログラムにおいて推進しておりますが,他の六つの大学でもそれぞれの考え方のもとでIT開拓リーダを養成しており,各大学とも毎年20名程度育成しております。
13ページを御覧ください。イノベーションを創出するIT開拓リーダを育て,社会からの期待に応えるに当たって,イノベーションのパラダイムシフトについて真剣に考える必要があります。この図は,オープンイノベーション1.0とオープンイノベーション2.0の相違を明確に表しています。従来のオープンイノベーションは,想定された複数要素がある一定の方向に収束することを促進する上でのHow to do型のイノベーションを重視した傾向があります。それに対して,今後のオープンイノベーション2.0では,ネットワーク状に複雑,混とんとして絡み合う複数要素を対象として,イノベーション・エコシステムを構築するために何をしたら良いのか,つまり,What to do型のイノベーションが非常に重要になってきます。
14ページを御覧ください。そのような状況の中で,これらからの情報技術教育のミッションとしては,「How重視」ではなく,「What重視」のもとで,ITを駆使してイノベーションの核となるべき人材を輩出することだと考えております。そのための土壌育成に必要なものとして,基礎知識,実践力,知識と好奇心,実行力,よい意味での自己主張・アイデンティティ,として整理しました。先ほど紹介をさせていただきました,大阪大学の取組はこれらに対して,将来的に対応できるものと自負しております。
15ページを御覧ください。大阪大学は,関西で実施しております産業界のための人材教育であります,「組込み適塾」にも貢献しております。これは,組込みシステム産業振興機構が主催しており,多くの大阪大学の先生方が運営・教育に携わっております。この組込み適塾では,組織のリーダとなりうる人材教育を目的として実施し,毎年多くの受講希望者があることから,関西地区での産業界の人材教育の一つの成功事例として高く評価されています。
16ページを御覧ください。最後に,産業界の皆様へのお願いを述べさせていただきます。
一つ目は,情報系も含めた,理工系専門教育の修了者をプロとして扱っていただきたいということです。
二つ目は,博士課程修了者,いわゆるドクターの学生のより一層積極的な採用をお願いいたします。
三つ目は,企業における戦略的な事業展開の中核として,IT開拓リーダの資質を人材の積極的な活用,キャリアパスを提供いただければと思います。
最後に,大学での人材教育,特に,実践教育への産業界の皆様の御協力をお願いいたします。
以上を持ちまして,産学協働による情報系人材の育成についての発表を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。

【北山専門教育課長】  西尾総長,ありがとうございました。
では,最後に光石東京大学大学院工学系研究科長からお願いいたします。

【東京大学(光石)】  おはようございます。ただいま御紹介いただきました東京大学の光石と申します。本日はこのような機会を頂きましてありがとうございます。
資料4を用い,「産業界・世界と連携した理工系人材育成について」と題しまして説明させていただきます。
2ページを御覧ください。最初に,企業対話を実施しております。これは日本を代表する主要20社以上と東京大学大学院工学系研究科とで行っている対話で,既に10回程度開催しております。そこでは目標とする人材像ですとか,キャリアパスの明確化ということについて議論しております。例えば,育成すべき人材像に求められる能力としましては課題設定能力,課題解決能力が一番重要である,しかしながら,専門的にもとがっていてほしいということが言われています。また,企業からの期待といたしましては,成功体験と失敗体験の両方をしてきてほしい,さらに,国際舞台での経験もしてきてほしいと言われています。
3ページを御覧ください。これは10回ほど行ってきました企業対話の議題の一覧でございます。最近の例で申し上げますと,博士人材育成につきましては修博一貫制度について,また,最近の就職状況につきましてはただ単に就職活動の時期の問題だけではなく,マッチングをいかにしてとるかということで,学生が10個も20個もエントリーシートを書かなくても良いように,また企業もそれに翻弄されなくても良いように,そのような仕組みはどのようなものであるかということの議論をしております。また,産学連携につきましては文科省からの予算がどんどん減る状況で大学がいかに生きていくかということで,本気の産学連携といったようなことの議論をしております。
4ページを御覧ください。これは,これからの社会に求められる高度理工系人材に関するものであります。右下の部分はCOCNから提言されたもので,高度な専門知識だけではなく,課題を発見し解決する力,幅広い教養と高い倫理感,競争を勝ち抜く強い意志,市場ニーズを感じ取る知性と感性,自ら学ぼうとする強い意欲といったような能力が必要であると言われています。左側にありますように専門知識の深みとともに,横方向の広がりが必要ということです。これはよくT型と言われているものですが,従来は知識の広がりだけを言っていたわけですが,これからは自分の専門以外の人材をいかにオーガナイズしてリーダーシップを持ってグループとして活躍できるようにするかといった,そういうリーダーとしての素養というものが求められるということであります。
5ページを御覧ください。少し話題は変わりますが,これは東大の機械系の就職状況であります。これは学部・修士についてのデータであります。電機,機械,情報・通信・サービスその他製造に多くの学生が行っています。
6ページを御覧ください。これは最近40年間の学生の就職動向です。これも学部・修士のデータです。上半分が製造業で,下半分が非製造業となっており,1990年頃には2000年には誰も製造業に行かなくなるのではないかと心配したわけですが,実際にはそのようなことはありませんでした。最近では製造業の方が多くなっているという状況であります。ここではエネルギーですとか,JR,旧国有企業は非製造業に分類されております。
7ページを御覧ください。これは学部と修士で就職している人数の割合です。1990年,あるいは1995年の頃から学部よりも修士まで行って就職している学生の方が多い状況であることが分かると思います。最近では,学生はほとんどが修士まで進学して就職していますので,カリキュラムを議論する際には,学部だけではなく修士までの教育をどうするかということを考えて検討しないといけないと思います。
その次,8ページを御覧ください。これは先ほどの企業対話に続くものです。少し先の課題をどのようにして解くかということで,企業数社と学生あるいは教員とが一緒になって議論するという試みがなされております。これを私たちはミニ企業対話と呼んでいます。
次に9ページを御覧ください。これはProject Based Learningで,いわゆるPBLと言われているものです。産業界から課題を提供いただき,数人のチームでその課題を解くもので,右上の図にありますように産業界からカスタマー,プロジェクトマネジャーも産業界から,リーダー,メンバーは学生,ファシリテーターとしてはポスドクですとか若い教員というスキームで実施しております。このスキームは良いスキームであると評価をいただいております。学生が有効と感じたものとして,チームワーキング,コミュニケーション能力があります。また,リーダーシップの涵(かん)養に役に立ったと言われています。このPBLには企業の若い方にも入っていただいており,企業側の人材育成にもメリットがあると評価をいただいております。
10ページを御覧ください。これは化学系での試みであります。2番目の項目のところにありますプラクティススクールを長年実施しております。企業Xとは15年程度実施しておりまして,従来のインターンシップでは個人で参加しますが,ここでは学生をグループで企業に送り込むということをしており,その内の何人かはリーダーシップをとることになります。その意味で,ただ単に個人で行くのではなく,グループで行くということが,非常に効果があると言われています。右上は掘り下げ型の専門知識と,横展開方向の講義の紹介です。こういった講義を産業界と一緒に構築することを行っています。
次の11ページを御覧ください。この図では左側が研究で,右側が教育となっており,上に行けば行くほど社会や産業界に近いものとなっております。従来からある寄附講座や応用研究・共同研究は,それぞれ緑やブルーの丸のところになっており,最近では共同研究を更に教育にも用いるという,赤の丸で示されている社会連携講座が非常に増えておりまして,右側のリストが現在実施されているものです。
続きまして12ページを御覧ください。これは世界の工学系トップ大学と連携した教育・研究で,ケンブリッジ,インペリアルカレッジ・ロンドン,スウェーデン王立工科大学,フランスのグランゼコール,スイス連邦工科大学チューリッヒ校,MIT,UCバークレー,それから東大がメンバーです。これは東大がイニシアティブをとって始めたもので,世界の工学系のトップ大学と連携した教育・研究を実施しようというものです。学生並びに教員の交流を図るということで,国際インターンシップですとか,集中講義,ワークショップを行っています。従来は国際化というと何か外国に行けばいいという感じがあるかと思いますが,国際的に切磋琢磨できる教育環境を実現するということが重要であると考えており,場所は問わずに実施したいということです。
13ページを御覧ください。これは,そうはいっても外国にも行っていることを示したものです。また,MITと国際講義を実施しているものの紹介でございます。
次の14ページを御覧ください。もちろん英語力強化ということは重要なのですが,東大工学系ではバイリンガルキャンパス構想ということを言っておりまして,日本人には英語の教育を,外国人には日本で就職できるように日本語の教育を行っています。
続きまして,15ページを御覧ください。工学教程という教科書シリーズを作っています。ここで注目していただきたいのは国際展開のために英語化も行っているということです。修士課程では例えば18%がインターナショナルスチューデントということで,彼らを対象としてこういう英語の教科書を使うということもありますし,それからこれを海外展開する,特に東南アジア方面に展開するといったことも考えております。
続きまして,16ページ,17ページですが,これはセットで御覧いただければと思います。達成度調査を行っており,これは8大学工学部長会議を中心に行っています。基礎力・人間力,それから専門ごとの専門力調査を行っています。
17ページを見ていただきますと,色の付いた図があるかと思います。この図では横軸方向がキーワードになっており,100ほどのキーワードが並んでおります。それをどれくらい学生が理解しているかというのが縦軸方向ということになっており,個々の学生のデータが縦軸方向に並んでいます。ブルーはよく理解している,赤は理解できていないということです。この100のキーワードについて,現在は大学の教員が選んでいますが,今後は産業界の方と一緒にこのキーワードを選んでいき,どれくらい学生が理解しているかということを見て,それを実際の教育現場にフィードバックしたいと考えております。
続きまして,18ページを御覧ください。このようなカリキュラムの検討を最近はかなり実施していますが,社会あるいは御父母になかなかそういったことが伝わっていませんので,御父母のためのオープンキャンパスを平成22年より実施しています。グラフにおいて,満足度は左の方が高く,次第に上がってきているということがわかるかと思います。
最後,19ページです。今,大学における専門教育が実社会のニーズとマッチしているかどうかということが言われているということですが,この図で言いたいことは10年先,あるいは20年先を考え,そこを予測するのか,あるいは日本としてどのような産業構造にするのかということを考えるのかということはあるかもしれませんが,人材育成を行わないといけないのではないかということです。そのときに専門だけではなく,どのような機能を果たす人を育てるのかということも考えつつ育成していく必要があるのではないかということです。是非,現在の状況だけではなく,将来どうすべきであるかということを考えて,この会議で議論をお願いしたいと思っております。
以上です。

【北山専門教育課長】  光石先生,ありがとうございました。
それでは,今の四名の方のプレゼンテーションについて御意見を頂きたく存じますので,よろしくお願いいたします。
須藤先生,お願いいたします。

【須藤委員】  どうもありがとうございました。四名の方からいろいろとプレゼンテーションしていただいたんですけれども,最初にDSS,それからJMOOCのお話ですが,産業界からのニーズの見える化というのは非常に大事なことだと思っています。この会でも前々回,私からいろいろな業種別にこんなことを学び直していますというデータをお出ししたんですけれども,それからJMOOCのデータも先ほどちょっと出てきていますので,ほぼ同じようなことを学び直しているということですので,基本的にはニーズはあのような方向だと思うんですね。それをもう少し学生あるいは大学側に徹底する仕組みの方が大事じゃないかなという気がしています。それが一つです。
それから採用時点での確認をもう一つしたらどうかという御提言がありましたけれども,確かに産業界ではいろいろとそういった確認もしようとしているんですが,やはり人数が多いというので,どうしても面接等の短時間のお互いの確認しかしていないというのがありますので,これは少し産業界としても考えるべきかなという気がしています。
それから大阪大学のお話ですけれども,これは情報系の話ですので,我々産業界が第5期の科学技術基本計画の場とかいろいろなところで提言している方向とほとんど同じですので,これはまさにこのとおりだと思います。How toも大事ですけれども,やっぱりWhat to doというのが大事だろうと思いますし,この分野はやはりIoT,CPSというこれから取り組もうとしているところで重要ですので,ほぼ同じ認識で大学とできているんじゃないかなという気がしています。
それから最後に東京大学のお話の中で専門以外のところがもう少し考えなきゃいけないという御提言といいますかお話があったと思うんです。専門ももちろん大事なんですけれども,もう少し将来を見て創造力とか,課題を見つける力といったところの教育も非常に重要なことでありまして,先ほどのDSSの提言にはそこは余り入っていなかったんですけれども,専門教育についてはいいと思うんですが,それ以外の独創性とかプロジェクトマネジャーをやるための資質といったところをどうやって育成してくるかというこの東京大学の試みは非常に重要だと思いますので,この辺も少しこの場で議論したらいいかなという気がしています。
以上です。

【北山専門教育課長】  永里先生,お願いします。

【永里委員(代理)】  最後の資料4の東京大学の中で,やっぱり2030年を見据えてのバックキャストというか,あるいは2030年はどんな産業構造になっているかとか,あるいはどういうことをやらなきゃいけないということのためには,やっぱり総合大学である,例えばの話,東京大学みたいなところを中心にして,産業界を入れてそういう共同研究をすべきだろうと思いますね。それで,産業界というのは御存じのとおり短期の方に強くて,超長期については非常に弱いところがありますので,是非産業界も入れてそういう2030年の産業構造その他を研究し,そしてそのための理工系人材はどうあるべきか,どういう科目にすべきか,カリキュラムはどうあるべきかという方向へ持っていってほしいと思います。
以上です。

【東京大学(光石)】  それについて発言してよろしいですか。後の方がいいでしょうか。

【北山専門教育課長】  そうですね,横倉先生まで頂いた後でお願いいたします。

【横倉委員】  よろしいですか。
情報系人材,IT,大変重要かと私も思っておるんですけれども,今まで,過去の,宮本さんからのデータでもIT教育のところに需要との関係でミスマッチがかなり大きくあったかと思うんですが,最初の宮本さんの資料でもイギリスでしたか,かなりその辺が同じような感じになっているなというのが情報として出たんですけれども,高度人材といいますか大学院レベルでのところで先ほど御説明があったようなことの取組というのは大変結構かと思うんですが,その前の大学の4年の中での教育が,もしかしたらそこから少し見直さないと上につながっていかないのかなと思いまして,私自身は情報系の4年制の中で学ぶ内容を詳細に承知しているわけではないんですけれども,そこのところがちょっとどうなのかなとは感じたところであります。

【北山専門教育課長】  では,ただいまの御発言を受けて,光石先生と,あと西尾先生からそれぞれお願いできますでしょうか。

【東京大学(光石)】  永里様の意見に関連して,少し違うかもしれないのですが,資料4の26ページ,参考資料に書いているところを見ていただきたいと思います。これは今から25年先に学部・修士・博士それぞれについてどれくらいの数の学生を育てなければいけないか,また,どれくらいの数の留学生を受け入れて,どう育てるかべきかということを議論したものです。これについてはいろいろと意見もあるかと思いますが,先ほども申し上げましたように,人材育成というのは時間が掛かりますので,少し先を見て産業構造をどのようするかという議論とともに,どういう分野の人材をどれくらい育てていくのかということを是非とも考えなければいけないと思いますので,この円卓会議でも議論していただければと思います。

【大阪大学(西尾)】  情報系に関する大変貴重なコメントをいただきましてありがとうございました。今日お話しした内容の大部分が大学院教育の部分でございます。特に大学院教育で文部科学省からサポートいただいているプログラムについては,産業界の方々と全くイーブンな形でカリキュラムの策定などを考えることが前提となっていることが多分にありますので,先ほどコメントを頂きましたように,方向性としてはかなり一致しているのではないかと思っています。御指摘のように,学部の方でどうなのかということは大きな問題だと思います。私は学部レベルというよりも,むしろ,高校レベルの教科「情報」の教育に関して,大きな見直しが必要かと思っております。例えば,高校における教科「情報」の内容が本当に時代的な要請に合った内容になっているのかという問題があります。それと学部の情報に関する教育においても,情報処理という概念が出てきて50年以上たった現時点において,情報分野のコアカリキュラムとは一体何なのかということを,もう一度ここで見直す必要があるのではないかと思います。そういう観点からも,御指摘いただきました点を今後真摯に考えていきたいと思っています。ただし,先ほどの今後社会として強いニーズがあることが予想されますビッグデータ解析などの分野に関しては,例えば,文部科学省の来年度の概算要求では,大学院ではなくて学部レベルでenPiTの枠組みを用いて人材育成プログラムを立ち上げるということですので,対応がなされていると考えることができます。大阪大学で行っております該当分野の人材育成についても,学部レベルを対象として統計学,データマイニング技術など,いわゆるデータ解析科目を多く設けております。そういう点で,委員から御指摘いただいたことに関して,ある部分については改善はなされていると思っております。
どうもありがとうございました。

【北山専門教育課長】  ありがとうございます。
藤嶋先生,お願いします。

【藤嶋委員】  先ほどの宮本大学連携推進室長の説明の中でアメリカ,ドイツ,イギリス,シンガポール,インドの5か国の状況の紹介はありましたが,中国の状況のデータは調べていないのでしょうか。

【宮本大学連携推進室長】  いや,時間的な制約とマンパワー的なものがありましたので,今のところ我々は5か国についてやったということで,ちょっと中国は調べておりません。

【藤嶋委員】  中国の動向は,非常に重要だと思います。是非調べていただけるとよいと思います。それからもう一つ,永里先生の今のお話にもありましたが,私たち私学の理工系大学は多くの人材を輩出していると思います。私たちの大学では,大学としての「あるべき姿」をどうすべきか,5年後,10年後の状況を考えながら,様々な検討・予測を行い,具体的計画を立案しています。先ほど,2030年という話もありましたが,これから10年後の世の中がどうなっていて,特に18歳人口が110万人付近にまで減少する7~8年後がどうなっているか,私たちは常に考えているのですが,このあたり,皆さんはいかがでしょうか。

【北山専門教育課長】  今の点につきまして――永里先生。

【永里委員(代理)】  先ほどちょっと言いましたけれども,そういうことに関して産業界は弱いので,やっぱり総合大学といいますかそういう文系,社会系,人文社会系を持っている大学が主体となって,理系を入れてそういう共同研究したらどうかというのが私の提案です。あるいはもう一部進んでいると思いますけれども,以上です。

【北山専門教育課長】  ありがとうございます。
今,2030年に向けて理系産業人材というものを育てるための方策というのを産学が一緒になって考えていくということが必要ではないかということで,共同研究なども進めてはどうかというお話を頂きました。また,enPiTの事業についてのやりとりというのも何点か頂きまして,その中では,私ども,そもそも今回西尾総長にお願いしてenPiTの紹介を頂いたのは,これが産学間での人材のマッチングというのを非常にうまくやっている事例ではないかということからお願いいたしまして,また,学部レベルに対して広げることも必要ではないかという横倉先生の御発言について,先ほど西尾先生からも若干御紹介いただきましたが,現在,概算要求で学部段階でも同じような取組を行えるようにということで要求を行っているところでございます。この事業は大学院で行っているものですが,今年の春に行政事業レビュー,いわゆる仕分に引っ掛かったところなんですけれども,その中でも委員の先生方から非常に有意義な事業なので続けるようにという意見を頂いたということがございまして,それを続けることにしているところでございます。
あと,大体今まで御発表いただき,御議論いただいたのはそういった点かと思いますが,もし最初に須藤先生から御発言いただいた点につきまして,辻代表から御発言がございましたらお願いします。

【NPO法人DSS(辻)】  今のようにもともと基礎科目では極めて,特に若手人材において重要だということがあって,多くのところでどういう教育をするかというのは極めて重要で,いろいろ御議論いただいているところかと思うんですけれども,一方で学生の履修行動を変えていくということが全体への影響というのはやっぱり大きいのではないかと思っています。学生が要するに自分から自らの,大学へ入るとき,また入った後,どういう方向に,そこで変わるわけですけれども,そのときにできる,どういう方向に行きたいか,じゃあ,この科目をとかっていう彼らのモチベーションをどう上げてあげるかということが,一方で何を教えるか,どう教えていくかと同時に学生にそれを見せるようにしてあげる,そこにはやはり大学にも当然伝えるんですけれども,企業側がこうなんだよということが一番分かりやすいですし,それから学生が頑張るのは何かといったら,大学1年に入ったら先輩からこの科目は重要だよとかまず聞いていく,それは何かといったら就職に関係するからというのが,就職のために勉強するわけではないんですが,関係していることを見せてあげることでより彼らがその行動に移りやすくなるんじゃないかと。当然基礎的な能力,汎用的な能力は極めて重要ですけれども,一方で今会社に入ってからいろいろ学び直しているという現実があったりとか,その科目を取っていないことで,例えばバイオ系の子はほかのところに行けないとか,そこをずらしてあげるためには学生の履修行動を少し変えてあげることをしていくことが,何を教えるかと同時に極めて有効ではないかということで今回の御提案をさせていただいた次第です。そのためには企業がまず見える化をする。それで,今まではすごく大変だったと思います。でもデータ化ができてくるとだんだんそれが楽になってくるので,それによって企業にとっても実際にメリットがあるからということで,まず見える化を明確にし,それを少しでも採用場面でやっていくことで学生のモチベーションを履修行動に変えていくということが重要だと思います。

【北山専門教育課長】  ありがとうございます。
また,企業に入社した後の学び直しという点についてMOOCの活用ということもあるんではないかという御指摘も須藤先生からございましたが,福原常務理事,いかがでしょうか。

【日本オープンオンライン教育推進協議会(福原)】  企業人は大変忙しい中でどう学び直すか,本当の必要性に困られて,多分実際に働いている方々は学生時代の教科書を見たり,あるいは様々なコンテンツを探したりいろいろ苦労されているんだと思うんですね。多分そういうものに対してもより効果的で,かつ現実的に実際に社会人の方々がしっかりした基礎知識を学び直せる環境を提供するというのは,ある意味重要な社会的使命だろうとも思っていますし,今進められている教育再生実行会議の提言の中でも第6次,第7次等で大学の学び直し機会をより社会人に広めるべきであるとか,第7次の中でもICTの大いなる活用で,特にMOOCについても戦略的に活用を図るべきであるという御提言もございますけれども,そういうことについても是非JMOOCとしても積極的に提供を実現できるようにしていこうということで,産業界のニーズとしっかりマッチさせたものを,特に大学に講座提供に関してはお願いする,それがひいては大学の中での基礎科目の知識の部分についてのより効果的な学ぶ機会の提供にもつながるだろうと思っておりますので,是非この辺を産業界,大学と連携しながら,具体的なプログラム提供ということで進めていきたいと思っております。
以上でございます。

【野路委員】  今の件で,この提案というのは,基礎科目をやるというのは非常にいいことだと思うんですね。事例を挙げると,例えば我々の会社でもモーターの開発,ハイブリッドモーター開発をやっているんですね。そうすると,最初は電気工学系だと思ったけれども,活躍するのはほとんど機械工学系です。というのは,冷却だとか絶縁だとか振動だとか,最終的にはそういうところに行くんですね。設計するというのは構造を作り上げていくわけですから,電気工学は原理だけだと,これも大事なんですね。だけれども,会社に来ると物を設計していくわけですね。インバータなんかもそうです。我々のところでいろいろなキャパシタを使って,あるいはインバータを作ったりしているんですけれども,素材産業とかデバイス産業をやっているところというのは材料とかそういうところに行き着いてくるし,我々みたいな機械工学系の自動車とかの研究とかになると,やっぱりそういうところなんですね。それぐらい世の中はどんどん変わってきてしまっているということだし,もう一つは,もう一点は,コンピューターで非常に重要なのはCAEだと思うんですね。いわゆるシミュレーションが,私が会社に入ったときはシミュレーションというのは全部社内でやっていました,プログラム開発を。今はもうほとんど世の中にいっぱいあるわけですね。だからそれをいかに活用できるかという技術というか技能というのが非常に必要なんで,世の中がどんどん変わってしまっているからこういう専門科目が大きく変化しているという理解で,私はここにあったこの項目はもう全く同感で,最後の6ページですか,そのとおりだと思いますよね,これはほとんど必要です,全部。そうなると,東大の先生がおっしゃっていた,私は,7ページの学部・修士の就職者数の変化ってありますよね,このとおりで,前々回も私は言ったんですけれども,修士の教育は,大学はどうするんだと,うちの場合,ほとんど90%以上が修士ですよ。それで学士と修士と初任給を同じにしたんだけれども,相変わらず修士ばっかり来るんですよね。皆裕福かどうか分かりませんがそういう実態なんですよ。修士で2年間余分に,我々の時代と違って,学士と違って教育しているわけですから,そこをこの専門教育とか何かでもっと充実させてもらうと,非常に優秀な専門教育をしっかり把握した学生が入ってくることになると思うんですね。だから大学の方も修士をどういうぐあいに,修士の段階でどんな教育をするんだと。それと研究も,我々の学士のときの4年制の研究と修士の研究とは何が違うんだと。相変わらず教授とかそういうお手伝いみたいな形でやっているのか,お金がないからね。あるいは産学連携みたいな産業界とつながりがあるようなテーマで修士の研究テーマがあるのか,そこら辺がちょっと聞きたいなというのが1点です。
もう一点は,産業構造の話が出ましたけれども,宮本さんからもミスマッチが出ましたが,ミスマッチがなぜ起きるかというと,いわゆる産業界で発展している分野のところが就職数が多いわけですね。それで,一方では大学ではバイオとかそういうところの研究関係が強いから,どうしてもミスマッチが起きるということなんですね。だから,産業界が発展していないから他方でミスマッチが起きている,これが今代表的なやつがAIですよ。AIなんか,我々は今から始めている,自動車業界もそうですが,もう遅れたらいかんと言って一生懸命今頑張っているわけですね。だけど,今は大学の数学科を出た学生をうちもずっと回って歩いているんですけれども,ほとんど既に遅しで,しょうがないからシリコンバレーの方で向こうの大学とやっているというのが実態なわけです。だから難しいのは,10年後どうなるかとかいう話とかそういう話も大事なんだけれども,それは幾ら考えても私は答えが出ないと思うんですね。やっぱりなぜアメリカはAIとかソフトウェアの技術者がどんどん増えたかというと,間違いなく金融関係で数学を履修した学生がいっぱい金融関係に就職したわけです。引っ張りだこだったわけです。そこでどんどん,どんどんと就職できていったと,だから数学科の学生がどんどん増えたと,そのうちにAIでディープラーニングという新しい開発みたいな研究が進んできて,それでそれに乗って次はいろいろな形で,金融機関もフィンテックとか,あるいは今の自動運転とか,うちもやっていますけれども,うちの場合も自動運転なんかほとんど欧米のベンチャー企業の技術です。だからそこの分析をよくしておかないと,10年後というのをどうやって見るかというのは,議論してもなかなか難しいところがあると思うんですね。
もう一点は,10年後とかそういうことを見る上で,皆さんもおっしゃったとおり,是非大事なのは科学技術会議等でやはり国家プロジェクトで何を,世の中をどう変えていくんだと,どんな社会にしていくんだと,だからどんなプロジェクトを国家プロジェクトでやるんだという,この科学技術で今出口を決めたやつをSIPとかImPACTでやっておられますけれども,あそこがやっぱり僕はキーじゃないかと思うんですね。あそこが成功すると,そこに学生とかいろいろな企業が参加してどんどん,どんどん好循環に行くと。だから少し過去の分析を経済産業省でも見てもらって,どういうぐあいにするのかというところが先の話としては大事だろうと思うんですね。
三つ目は,そうはいっても現実的に今日本の強い産業界はどこだと,弱いところはどこだと,そうすると,経済産業省でも是非見てほしいんですけれども,どうしても今強いのは自動車とか機械とか工作機械だとかそういうものが強い,あるいは素材関係は強い,あるいはデバイス関係は強いですよね。iPhoneは負けたけれどもデバイスは強いですよね,部品関係は。だからここはやっぱりバイオだとかそういういろいろな大学でやっておられる技術が生かされているんだろうと思うんですね。だけど機械系のところはちょっと,内山田さんもこの前おっしゃっていましたけどやっぱりミスマッチが一部起きているから,さっきの専門教育みたいな話が出るんだと思うんですね。
あと,じゃあ,一方,弱いところというのは間違いなくソフトウェア産業ですね。3次元CADも全部全滅,それでEPR等も全滅,もう日本の大手のソフトウェア産業業界というのはないんですね。オービックがありますけど,それぐらいですよね。ソフトウェア産業は大体7割がメンテナンスの仕事ばかりやっていると。だから前向きな新しいパッケージを作るとか,新しいそういうシミュレーションのプログラムを開発するとか,CADの開発をするとかいうのが非常に遅れているというのがソフトウェア産業だし,サービスのところ,金融の一部,ここら辺も同じですよね。だからそうすると,経済産業省も含めて,じゃあ,ここら辺はどういうぐあいにするのか,東大の先生とか,松尾先生とか東大総長とかにいろいろ話を聞くと,じゃあ,AIは今から追い付くのか,そうじゃなくてもっと先を行くのか,ディープラーニングの先を行った研究をしてもらって,10年後,15年後で勝負するのかとかそういうことが議論になっているんですけれども,そこら辺をやはり経済産業省をはじめとして産業界の人たちも踏まえながらどうやってみるかと,そしたらもうある程度リスクをとって科学技術の予算をそこに集中投資するというようなことをやらないと,なかなか総花的にあれもこれもといっても予算は限られていますし,そこがやっぱり僕はキーじゃないなかという気がしました。
以上です。

【北山専門教育課長】  ありがとうございます。
大西先生が総合科学技術会議から到着されまして,先ほどちょっとお話しさせていただいたような内容で御議論が進んでまいりまして,今,野路先生から新たな方向の御議論というのを展開していただいているところでございます。この後の進行をお願いしてもよろしゅうございますでしょうか。済みません。

【大西座長】  ここで段差ができてもいけないから,今日はやってくれますか。

【北山専門教育課長】  分かりました。
そのようなことで,西尾先生,今の最後の点についてお願いできますか。

【大阪大学(西尾)】  講義等を受けたことのログをきっちり取っておくということは私も重要なことだと思います。一方,例えば,学生が入学したときに大学全体においてカリキュラムの体系がどのようになっているのかということが立体的に把握できる,つまり,カリキュラムの体系をより可視化して提示することも大切だと考えます。どの科目を修了したら,その次にどのような科目を受ける準備ができているというような,いわゆるカリキュラムのナンバリングに相当することを提示すると学生に取って有意義だと考えます。そのようなカリキュラムの構造を参照しながら,学生は自分が描く将来とか,今後就職したい分野と照らし合わせて,どのような科目の取り方をしていったら良いのかを自らデザインすることは非常に有効であると思います。それと,各学生がどういうカリキュラムを受けてきたかというログを取っておくということが,例えば自身の就職を考えるときに,どの分野の科目が不足しているのかということを自ら発見していく上でも大事ではないかと思います。
また,野路委員がおっしゃった修士と学部の違いということに関して,2030年において日本がどうなっているのかについていろいろ予測する,特に,人文学・社会科学系,自然科学系が一体となってそのような分析するということは大事かとは思います。ただし,現実的には,2030年がそこで描いた社会のようになるかどうかというのは非常に不確定な面があります。そういうときに,学部と修士の違いをどういう形で出すのかということですが,もちろん専門知識はより深まります。ただし,それだけではなくて,修士課程を修了した人材は,世の中がどのように動こうとも,その変化にきっちりと柔軟に対応しながら,そこでリーダーシップを発揮していける人材として育てることが重要です。それが,当方の発表でも申し上げていました「What to do」型の人材です。そこで,どういうことをきっちりと学ばせたら良いのかということなのですけれども,物事を多角的に考えられる,これは幾何学の問題で言えば様々な角度からの補助線を引いて問題を多角的に考えられる,というようなことでして,結局のところ「教養を備える」ということだと私は思っています。いろいろな角度から物事を捉える資質を高めるということが,学部から大学院へ行く過程においてより重要になってくると考えます。
もう一つは,与えられた状況においていかに最適な解を導き出すかというのは,「デザイン」という言葉そのものです。ある拘束条件の下での最適な解を見出していく,この「デザイン力」をどう育むかが重要であると考えます。
したがいまして,私は学部レベルと修士レベルの違いは,専門知識に加えて,今申し上げました教養とかデザイン力をより十分に備えているかというところに現れてくるように思います。さらに,コミュニケーション能力を修士課程の間に高めることを実現することができましたら,先ほど申し上げましたように,世の中がどう変わろうともそれに対応して,十分に能力を発揮できる人材が育成できると考えます。
以上です。

【北山専門教育課長】  ありがとうございます。
永里先生と野路先生からの御発言について,光石先生。

【東京大学(光石)】  まず,どの委員の方の回答になるかはわかりませんが,今,専門知識といっても断片的な知識はウェブを見れば結構載っているので,そういうものは比較的得られやすいと思います。また,細かい知識は教科書を見てもう一度勉強すれば良いと思います。重要なのは,ある分野での体系化された知識が身に付いているかどうかということであり,これは学部教育あるいは修士の段階できちっとやっておく必要があると思っています。ですから,単なる断片的な知識で,何かを知っているというようなものではない知識を教え込むというのが重要と思っています。
修士については,もちろん修士論文のクオリティーは高いのですが,実は昔はある単位数を何でもいいから取って卒業し,就職すればいいという状況だったと思います。私は機械系に所属していますが,最近ではさすがにそれではまずかろうということで,例えば,固体力学・材料分野,熱・流体分野,機力・制御分野,設計・生産分野,バイオ分野と五つの専門分野を設けており,その内の一つを深く学ぶということを実施しております。それだけはまだ足りないので,共通基盤科目ということで,例えば数学が入っており,そこからもある程度の単位を取らないといけないようになっています。
それから博士では,工学リテラシーとかコンピテンシーといったような,先ほどの人間力に相当する課題設定力・解決力といったようなものを涵(かん)養する講義を取らないといけないようになっています。実は,博士教育については随分議論していますが,博士からでは遅く,修士あるいは学部からそのような科目を学ばなければならないということで,修士段階でも課題設定力・解決力を涵(かん)養する演習が恐らく必要かと思います。
このため,先ほども紹介しましたPBLですとか,インターンシップ,それからスタジオ型教育プログラムというのを実施しています。しかしながら,その内容が必ずしも学位論文になるとは限らないので,これはこれとして演習,あるいは,PBL的なものとして社会からの課題について解くという訓練として実施しています。社会で何が求められているかということを知って,更にその上で学位としての論文,アカデミックな論文をきちっと仕上げるという教育にしていくのが重要と思っています。
また,専門性が違ったとしてもフレキシビリティーを持っていれば,いろいろな分野のことを,またもう一回最初から勉強してでもできると思います。少なくとも一つの専門分野と,ほかにも適用できるというフレキシビリティーを持たせておく教育が重要と思っています。
それからもう一つ,今,バイオに関係した予算や研究者は多いが,なかなか産業がないということが問題になっていますが,東大の工学系にもバイオエンジニアリング専攻があります。そこの設立趣旨として,この分野の産業が現在はないので,この分野を将来育てていく人材を育てたいということでその専攻を作りました。今バイオ分野が勝ち組と言っていいか,負け組と言っていいかはわかりませんが,この分野を将来,日本は更に挑むのか,負け組で行くのかというようなことはよく考えないといけないと思います。ただ,バイオ分野は負け組になるとまずいと私は思います。今,バイオ分野でミスマッチがあるかもしれませんが,程度,あるいは,適切な量はもちろんあると思いますが,その分野をどうするのかということについて,ただ単に今の状況だけを見て議論しないでいただきたいと私は思います。
以上です。

【北山専門教育課長】  神谷先生,お願いします。

【神谷委員】  DSSの辻さんの発表,ありがとうございました。ちょっとお聞きしたいところがあるんですが,いわゆる産業界と学生の知識のマッチングを図るという取組としてはよく分かったんですが,それによって履修行動を変える,いわゆる学生が主体的に学習に取り組むという取組だとは思うんですけれども,これをいつ,何年生ぐらいからという,4年生とか終わりの方じゃなくて,もう最初のところから取り組んでみえるのかという点と,もう一つは,1ページにあります採用場面での企業の確認方法という図を見させていただいて,私は工業高校に勤めておりますけれども,非常によく似た体系図になっているなと思います。対人力とかチームワークが重視されて,専門知識が余り重要視されていないというところなんですが,この専門知識の面積を増やすという取組に結び付けることができるでしょうかねというところなんですが。

【NPO法人DSS(辻)】  一つは,私どもがやっている取組と先ほどの提言は別の話で,ここで御提案させていただいたということです。ですから,我々が先ほど提言したように産業界の構造を見られるようにしたりということをしているわけではないということは,ひとつお含みおきを。
もう一点の方で,今の1枚目というのはある種の概念図であって,全部の会社がこうかということでもないと思います。ただ全般的にこの傾向があって,今回,この円卓会議の議論でも何回かやっぱり基礎的な知識って重要なんだという,これは知識の部分がありましたし,それから現実に今バイオ系の卒業生が就職は,実はそこは余りないと,ところが機械,電気系とかIT系は全然足らないと。今現在,ここのミスマッチがどうしても起きている。これを学部で解決することってすぐには無理なので,ですから学生が今JMOOCも含めていろいろ取れるような方向はあるわけなので,学生にそのことを知らせてあげれば,学生が自ら動くことによって,また企業でもどういう科目を,単なるちょっとしたシシじゃなくて科目レベルをどうしていたかというのを確認することで,今現在あるミスマッチ,いうなら理工系人材を,言い方は悪い,うまく活用するといいますか,ということが可能じゃないかと思っています。
それから,光石先生がおっしゃいましたように,やっぱり学科の教育としては体系的に,かつフレキシブルにしていくということがやっぱり学科としての責任,それができれば入った以降もいろいろなことを柔軟にしていける能力は身に付くと,私はそのとおりだと思います。ただ一方で,今現在バイオ系の出身者と機械系,理工系にちょっとずれがあることを少し解決するためには,産業界としてこういうのが重要ですよと,それから,なおかつそういう科目をきちっと何らかの形で大学の中でも学科を超えて取っていたりすると,それは企業側でもちゃんと参考にするよというのを見せてあげると,今現在のミスマッチを割と解消することにつながるんじゃないかということで,できたら産業界の方ではこういう科目がこの業界は割と重要かなとか,それから企業の方でも,どんな科目をしてきたんだ,ああ,じゃあ,君は学科は違うけれどもいいよねとかいうふうなことをしてもらうと,学生の方がそういう行動に行こうとすると。よく言うんですけれども,指導とかすごく重要だと思います。でも,指導は重要なんですけれども,サッカーでも,どんないいコーチがやっても選手側が頑張ろうという気にならなかったらなかなかうまくいかないので,学生の方にこういった科目をちゃんと頑張った方がいいんだなということを理解させてあげることで大きく変わるんじゃないでしょうか。ですから,ここの場で産業界はこういうニーズを持っているんだというようなことを明確にしていくような動きをとっていただくと,学生側の行動が変わるのでいろいろな仕掛けが逆にやりやすくなるんじゃないでしょうかということが今回の話です。

【北山専門教育課長】  ありがとうございました。
小畑先生……。

【藤嶋委員】  ちょっといいですか。

【北山専門教育課長】  小畑先生で,その次に藤嶋先生,お願いします。

【小畑委員】  西尾先生と光石先生のお二人にお聞きします。お二人の話された取組は大変意欲的なものだと思います。この円卓会議の主題は,産業界が期待する人材像と大学で実際に育てている人材との間に大きなギャップがあるので,それを何とかして埋めるための具体策を考えることだろうと思います。そういう意味では,お二人がお話しされた取組はそのギャップを,お話を伺っている限りはかなりの部分を,埋めている取組かなと思いましたが,現在の取組の内容で両者のギャップがほとんど埋められているとお考えなのか,あるいはこの点がまだ不十分なのだというところがあれば,差し支えない範囲で御紹介いただければと思います。
それから,この取組を通して産業界とのつながりがより太くなっただろうと想像するんですね。その結果として,産業界から大学へ提供される資金が大幅に殖えたのかどうなのか,差し支えない範囲でお答えいただけますでしょうか。
それともう一つ,お二人の先生方の所属されている大学は日本での研究大学のトップグループ,一番上を走っている大学だろうと思います。そのような大学では,例えば工学系と限定してもピュアサイエンスに非常に近い領域を研究している先生方がたくさんいらっしゃるだろうと思います。そういう先生方の産業界との結び付きをより強めた取組に対して示す反応はいかがでしょうか。

【北山専門教育課長】  では,最初に西尾先生からお願いしてもよろしいですか。

【大阪大学(西尾)】  まず,こういうプログラムを通じて産業界とのギャップというものがなくなり,ほぼシームレスに繋がるようになってきているのかということですけれども,私自身は,完全にシームレスとは言えないまでも,相当改善がなされてきていると思っています。例えば,先ほど来のenPiTと博士課程教育リーディングプログラムについては,それらのプログラムの実施に当たっては,産業界と大学は全く対等な形で人材育成プログラムを考えることが重要視されています。しかも,それらのプログラムの推進に当たっては,産業界の方々にも講師として来ていただき,例えばイノベーションというのはどういう形で起こっているのかということをオムニバス形式で話していただくようなことが頻繁に行われています。そのようなことからも,産業界とのギャップは,相当浅くなってきていると私は思っております。
以上のように両者のギャップは浅くなってきている中で,現実的に就職段階で困っていることがあります。博士課程教育リーディングプログラムでは,先ほど申し上げましたように,生命,脳・認知科学,情報の三つの分野を対象としつつ,そのどれか一つの分野に軸足を置きつつ,他の二つの分野の知見も深めることを鋭意進めるプログラムとなっています。我々としては,このようなプログラムによって,先ほど来申し上げているように複数領域の知見を持って,世の中がどう変わろうともリーダーシップを発揮して活躍できる人材を育成していくことを目指しております。ところが,就職の段階になったときに,その軸足としている専門分野の研究開発を会社としては閉じてしまっている場合に,その分野を軸とする学生は会社としては要りません,とおっしゃる場合が多いですね。会社のトップ方々の判断としては,そういう多角的な見方ができる人材を是非雇用したいと思っておられる場合は多いのですけれども,人事部レベルでは軸とする専門分野で判断をなされ,なかなか採用をなさらないということがあります。ですから,私は博士課程教育プログラムを推進するに当たり,このプログラムで育てた人材の就職に関しては,人事部ではなくて会社のトップの方々に直接面接してくださいということをお願いしています。したがいまして,就職活動においては,育てている学生と産業界の採用プロセスとのミスマッチがあるということは確かです。
それから御質問のありました産業界からの資金が来ているのかということについてお答えします。私は大学における産学連携の最も重要なところは,4,5年先にイノベーションを起こすための研究開発の共同研究ではないと思っています。大学における最も大事な恒久的なミッションは高度な人材をどれだけ育てるかということですので,産学連携活動も人材育成に寄与すべきと考えています。その観点から,研究開発関連ばかりでなく,人材育成プログラムに企業から資金投下をしていただけますことを強く要望します。
それと最後の御質問は何だったかな・・・。

【永里委員(代理)】  ピュアサイエンスの。

【大阪大学(西尾)】  ピュアサイエンスに関わる研究者の方々が,産業界との結び付きをより強めた取組に対してどのように思っているのか,ということについては意識的な変化は着実に起こっていると考えます。また,私自身もピュアサイエンスの分野においても産業界との共同研究をすることが今後は重要だと思っています。それは,企業としてもなかなか中央研究所などを維持できないようになってきている状況の中で,今後は企業と大学がピュアサイエンス分野においても,真髄を究めるような基礎研究の段階から産業界と大学が一体になって推進すべきであると考えています。ピュアサイエンスの方々,例えばバイオ関係の基礎的な研究をなされている方々も,最近では企業との連携をしていかないと研究継続がなかなか困難であるという認識は徐々に浸透しつつあります。ただし,大学として絶対に認識を誤ってはならないところは,企業との連携活動を推進したとしても,応用指向に走るのではなく,大学としては真髄を究める基礎研究を重要視するという立場を崩さないということだと考えます。今後の第3期中期目標期間中において,企業との連携を今後どのように図っていくのかということが,大学の教育研究活動の発展にとっての鍵だと思っています。

【北山専門教育課長】  光石先生,お願いします。

【東京大学(光石)】  企業対話でギャップが埋まったのかということにつきましては,5年も続けていますと大分双方の理解は進んだと思っております。しかし,まだまだ一部の企業,一部の大学教員ということになりますので,なかなかこのギャップが埋まったとは言えないと思いますが,前よりは良くはなっていると思います。例えば,いろいろな教育プログラムで横方向の能力を広げる,すなわち,経験や知識を広げるというプログラムを実施しているわけですが,研究をやらずに何をやっているんだというようなことを言う教員もまだ多いのが実態でございます。
次に,産学連携のお金は増えたのかということにつきましては,実際にはまだ増えておりません。しかしながら,先ほど紹介しました社会連携講座はどんどんと増えている状況にあります。昔は共同研究というと一人の教員,一つの研究室と企業との間で実施されていたと思いますが,最近はなかなか一人の教員だけでは解決できないような問題が多いので,先ほどのモーターで機械の課題か電気の課題かといった例にありますように,誰か目利きがいて,その人が大学の中のいろいろな教員に当たって,この問題は誰のところに行けば解けるかというような指示を出す形態をとっているものというのはかなりうまくいっています。したがって,大学の中の仕組みについて,そういう方法や構造をとることによって共同研究,あるいは社会連携講座,産学連携というのはもっとうまくいくようになるのではないかと思います。
ピュアサイエンスにつきましては,西尾先生から既に話はありましたが,実は10回ほど行っております企業対話の中で,1回だけ理学系研究科に出席いただいたことがあります。今日は博士問題が議論の中心ではないと思いますが,今,理学系研究科は博士に進学する学生はたくさんいるけれども就職に困っている,一方で工学系研究科は博士に進学する学生の数は少ないけれども就職は何も問題ないというような状況です。理学系の方をピュアサイエンスと言うとすると,そこの教員並びに学生に,企業からこのような人材が求められているとか,もっと人数も欲しいというような情報が必ずしも伝わっていないような気がします。このため,例えば,今実施しているような企業対話のようなものをピュアサイエンスの先生方も実施する機会をもう少し増やせば,そこの問題は改善するのではないかと思います。

【小畑委員】  どうもありがとうございます。

【北山専門教育課長】  ありがとうございます。
藤嶋先生,済みません,お待たせしました。

【藤嶋委員】  今までの議論でもありましたように,学生は,ある分野・専門を選んで学部で基礎教育を受け,卒業論文を仕上げ,その後,修士課程の2年間で研究者としての訓練を積みます。なるべく多くの学生に博士課程に進学してほしいと思っていますが,途中段階で学部教育の成果をきちんとチェックすべきと考えています。前々回,私たちが作成したオリジナル教科書「機械工学」を皆さんに配付していますが,例えばこの「機械工学」であれば,まず4力学が基礎にありますので,これをきちんと学部段階で習得し,その上で修士課程,そして博士課程へと進んでほしいと思っています。学部を卒業する際のチェックですが,例えば本学の薬学部では最終年次に,これまで学んできた薬学教育を踏まえて,総合学習を行う授業科目を置いており,これにより学部6年間の教育の成果を確認しています。つまり,大学設置基準で決められている卒業の要件が124単位以上(医学・歯学・薬学・獣医学関係を除く)の修得となっていますが,この中にいわゆる卒業試験に相当する科目を含んでいるところがあるようです。例えば医学部あたりはこれに該当するだろうと思いますけれども,薬学部の多くもこれを取り入れていると思います。私は,これを理工系の学部でも実施できないかと考えていまして,4年生で卒業論文の発表と時を同じくして,いわゆる卒業試験を課して学部時代の成果をきちんと確認し,一定の成果が確認できなければ卒業できないという案です。これにより,学生はそれぞれの専門分野を一生懸命基礎から学び直してくれると思います。こうした事例をどこかの大学で行っているでしょうか。私は是非試行したいと思っています。これが文部科学省(大学設置基準)上,問題がないのかどうか聞いてみたいと思った次第です。

【北山専門教育課長】  文科省ではまずそういった点について,何かやるべき,やるべきでないということは言っていないかと思いますけれども,西尾先生,よろしいでしょうか。

【大阪大学(西尾)】  今おっしゃったのは多分学生の質の保証ということだと思います。学部卒業のときには,どちらかと申しますと取得単位数が重要であり,今おっしゃったような学科試験的な形での審査は行っていないとは思います。ただし,それに類することがありまして,現在では,工学系,情報系ではほとんどの学生は修士課程に進みます。我々の情報科学研究科では,4年生の夏休み期間中に,その試験の一環として学科試験を行っております。そのために学生たちは,学部で学んできたことを全部おさらいして大学院試験に臨みますので,藤嶋先生がおっしゃったことが部分的に実現できているという状況です。

【藤嶋委員】  そうですね,はい,それは分かります。

【北山専門教育課長】  お願いします。

【東京大学(光石)】  学部卒業時のチェックではないのですが,今はほとんどの学生が修士で就職するというような状況からしてというのが一つの理由で,またもう一つの理由として,外国から優秀な留学生を採りたいときに,アメリカで実施しているような書類選考という方法が考えられますが,日本人の学生は今は大学院に入るときにかなり厳しい試験がある一方で,書類で選考すると専門知識を持っているかどうかの確認が不十分になることもあり,入り口が多少甘くなる可能性がありますので(修士の)出口を締めるしかないということがあります。このため,例えば,先ほど工学教程を紹介させていただきましたが,そこではこれだけは必ず勉強しておいてほしいということを示していますので,それを用いて修士1年の終わり頃に,ある意味でQE(Qualifying Exam.)というようなものになりますが,本来は別の使い方かもしれませんが,そういったところでしっかり学力をチェックすることを検討しようとしています。今は必ずしもできていないのですが,修士1年の終わり頃にしっかりと基礎科目,また,例えば機械系であれば4力が身に付いているかどうかのチェックをその頃に実施するのも良いのではないかと思っております。

【北山専門教育課長】  辻さん,お願いします。

【NPO法人DSS(辻)】  先ほどおっしゃったのは,一つは出口での質の保証というのは極めて重要だと思います。でも,残念ながら一方で企業から見たら評価の信頼というのも実は薄いのも事実で,我々,先ほどデータ化と言いましたけれども,実際,大学院のGPAは平均で言ったら3.5ぐらいですから,大体が一番最高評価がついているというのが実際ですし,それから,基礎科目に関してもきちっと評価がばらついている大学もあれば,残念ながらほとんどの場合Aがついている大学もあるのは事実は事実なんです。ですから,ある種,質をちゃんと担保していくというのも重要なんですが,一方で重要なのは見える化をしていくということがある種分かりやすい方法ではないかということで,我々の活動は,今そのデジタルデータ化というのは見える化をしていこうと。だから教えていることは,いろいろな大学でいろいろな教え方もありますし,いろいろなことがあるんですけれども,それがどんなふうに,単純に評価がばらついているかとかというのが見える化していくことが,やはりある種の担保につながっていくんじゃないかとは思います。

【北山専門教育課長】  永里先生。

【永里委員(代理)】  質の保証についてですけれども,その前に藤嶋先生が中国についてはどうかとおっしゃったんですが,そこのところをちょっと言いますと,きのう,日本学術会議の大西さんと経団連で会議を持ったんですけれども,そのときに,中国は今や人文社会系に非常に力を入れているという学術会議の副会長の御発言がありました。これは,我々が感じているところの理工系重視の中国のはずなのにということなんですね。その心は,多分国威発揚のために研究しているんだろうと思います。
これはちょっと脱線で……。

【大西座長】  人文ですね,社会じゃなくて人文系。

【永里委員(代理)】  人文系です,ごめんなさい。国威発揚だろうと僕は思っています。
で,もう話題を質の保証に行きまして,先ほどの宮本室長のお話の中にイギリスの例が出てきていて,ここは運営費交付金を出していまして日本と似たようなところがあるんですが,実はサッカーで言う1部リーグ,2部リーグみたいものがありまして,大学もそういうふうに分けていて競争原理が働くようになっているんです。それで入替え戦もあります。そういうような感じがありますので,イギリスのことについては質の保証について,オックスフォード大学の日本事務所長のアリソン・ビールは言っていますけれども,マスコミ系の調査がちゃんと進んでいて,大学を全部ランクしていて,逆に質の保証がされていると思ってよろしいと,イギリスの中では。というのは,イギリス人が全部,というか関係者は全部分かっている,あの大学の質はこうだとか,というようなことを言っています。したがって,私は何を言いたいかというと,先ほどの辻さんのお話でばらつきがあったりいろいろなものあるようですけれども,イギリスのこの制度,こういうのももう少し研究なさったらいいと思います。おととし,経団連はイギリスの教育制度,高等教育について調査に行って,その辺のことをちょっと探ってきたんですけれども,もっともっと研究すべきだろうと思います。で,英国の状態を分析すべきだろうということをもう少しやってみたらどうでしょうかということです。
以上です。

【北山専門教育課長】  ありがとうございます。

【須藤委員】  済みません,よろしいですか。

【北山専門教育課長】  はい。

【須藤委員】  時間もないのでちょっと短めにしますけれども,よろしいですか。

【北山専門教育課長】  お願いします。

【須藤委員】  宮本さんからせっかくいろいろな海外のデータが出てきたんですけれども,米国以外はかなり大学以外の人たちが中に入っていろいろなところに提言していると,学科の定員,学部の定員とかそういうところまで入っているという話があったんですが,例えば日本でそういうことがどこまでできるのか少し議論する必要があるかなと思うんですね。先ほど大学の中でカリキュラムが少し体系化されてやっているというのは,非常に我々はすごく興味があるんですけれども,どんなふうに体系化されて一つの学問を教えていただいているのか,この辺はちゃんと我々も知らないと誤った判断をしてしまうのかなという気がするので,どの辺まで大学以外の人がそういうカリキュラムの中身とかまで入り込めるのかというのは少し検討する必要があるかなと思うんですが。

【北山専門教育課長】  ありがとうございます。ちょっと時間も来ておりますので,経済産業省からよろしゅうございますか。

【宮本大学連携推進室長】  今日の議論を少し聞かせていただきました中でも一つ,教育というのは将来を見据えてやらなきゃいけないので,20年,30年後がどうかということも踏まえて考えるべきじゃないかという議論もありましたけれども,一方で,多分その20年,30年後はこうなるんだろうというのがそのとおり当たればその検討はいいと思うんですが,みんなそうなるはずだと思って,結局違いましたということになると全部がこけてしまうということもあると思うので,多分そこがなかなか実質的に難しいのかと。ただそういう議論が出てくる背景としては,産業ニーズと大学側の教育のミスマッチを小さくするということを考えているときに,産業界のニーズというのは時々刻々変わりやすい性質がある一方で,大学の教育というのはそう簡単にころころ,ころころとは変えにくいというところがあるのでそこの話が難しくなっているだろうということなので,その話は多分日本だけでもなくて,海外もみんな同じ状況だということだと思います。それを海外では,私がいろいろ調べた限りでは,例えば就職にちゃんとつながっているかというようなところをチェックしながら何らかの補正を掛けるというようなことを,いろいろな国で違う方法を,皆違う方法でしたけれども何か努力しているのかなと感じました。多分,恐らく今日の議論の中で,一つはそういう各国がやっているような産業ニーズに合わせて学部の教育内容もちょっとずつ補正をかけるという方法が一つと,それからもう一つは,多分今日の御提案の中では学生の行動も少し世の中の変化に対応できるように柔軟に行動するような選択肢を与えていくと,そこは産学協働して情報をちゃんと学生に提供することで,産業界のニーズがガッと変わっている中でも学生の努力である程度そこもクッションとして対応できるようにするというのも,一つ非常に面白いアイデアかなと思って拝聴させていただきました。
私からは以上です。

【北山専門教育課長】  ありがとうございます。
佐野審議官。

【佐野大臣官房審議官】  今年の最後になりますので,今年1年間,皆さん,どうもありがとうございました。
個々の点については,もう皆さんの御議論を踏まえて,また,文科省としてもいろいろな政策の次の展開の立案に結び付けていきたいと思います。実は,今まさに予算編成の真っただ中で,先ほど少しお話もありましたが,予算の方でも財政審から運営費交付金を1%削減だとか意見がありますが,運営費交付金につきましても私学助成につきましても,減らさない方向で今鋭意頑張っているところでございますし,先ほどの,まさにこの会議の趣旨でもありますミスマッチを解消するといったことで実施しておりますenPiTについても,1.5倍以上の予算を何とか確保していきたいと思っております。
一番冒頭に辻代表がおっしゃられた履修行動を変えて,それを企業もきちんと見ていただくというあの点は非常に重要で,つい最近,私も採用活動の開始時期を前倒しするという議論を経済界の皆さんとずっとやらせていただいたんですけれども,やはり履修履歴を企業の方にきちんと見ていただく,ただし,ただ単に見ていただくのではなくて,先ほどお話もありましたけれども,企業の方が見てちゃんと分かるようにというか,そこできちっと見ていただくという,そこの双方向で見ていただくということも非常に重要かと思っております。
いずれにしましても,いろいろな意見を賜りまして,今後また取りまとめに入っていくような段階になってくるかと思いますが,引き続き来年もよろしくお願いします。どうもありがとうございました。

【北山専門教育課長】  大西先生,お願いいたします。

【大西座長】  済みません,最後に一つ。今日総合科学技術・イノベーション会議が午前中にあったのでちょっと遅れてまいりました。そこで第5期の科学技術基本計画を会議として決めて,閣議決定は最後の手続として残っています。その新しい5期は来年4月からですけれども,最後のところに投資目標というのが書かれて,それは最後に,12月10日に入ったんですが,GDP比で1%やろうと。これは今までと同じなんですが,額としては経済成長が3%強で続いたとして,5年間で全体で26兆円というのが投資規模です。実は,この中は科学技術関係予算というのがそういう額になるんですけれども,大学の運営費交付金もすっぽり入っているパッケージになるんですね。ですから,そういう意味ではそういう政府の大きな方針の中で大学の役割というのも大きくなっていくんではないかと。
それからもう一つ,50ページぐらいの基本計画なんですけれども,その中に企業という言葉が,私が数えて143回出てきます。今までは大体20回平均なんですね。第5期ですから今まで4期あるわけですが,それは大体20回で四つ併せて80回と,ここで143ですから圧倒的に企業の出てくる回数が多いと。つまり,大学と企業の人材面に関する連携はもとより,研究面の連携も非常に強調されているということだと思うんですね。ですから,まさに円卓会議でそういう議論が行われているということの意味が第5期の計画の中でも裏付けられたのではないかと。
今日の御議論も,長くはしゃべりませんけれども,私どもの大学でも,例えばJABEEとか何で入って,大学教育のカリキュラムについて外の目でチェックしてもらっているということをやってきているんですが,さっき須藤さんが言われた企業の目から見てどうかとか,より多角的というか,さっきの大学,企業の役割分担がありながらも,全体として日本の科学技術政策を支えていくという観点からの質の向上というのをどうしていくのか,今日すごくいい御指摘があったと思いますので,まとめに向けて是非こういうものをインプットとして使っていけたらと思います。
今日はどうもありがとうございました。

【北山専門教育課長】  ありがとうございました。
では,本日はここまでとさせていただきます。前回と同様になるんですが事務的な連絡です。本日のテーマについて委員の皆様方から具体的な御意見,アイデアを出していただきまして,それを踏まえた形で事務局で行動計画の素案を準備させていただきたいと思っております。また連絡させていただきます。
また,次回につきましては1月28日木曜日の14時から16時ということで予定させていただいております。正式な場所等は追って御連絡させていただきたいと思います。
本日は辻取締役,福原常務理事,西尾総長,光石研究科長には,お忙しい中お越しいただきましてありがとうございました。
本日はこれで終了いたします。ありがとうございました。

── 了 ──

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