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理工系人材育成に関する産学官円卓会議(第4回) 議事録

1.日時

平成27年10月22日(木曜日)15時30分~17時30分

2.場所

経済産業省本館17階西7 第1特別会議室

3.議題

  1. これまでの議論の論点整理及び今後の進め方
  2. 博士人材の活躍の促進方策、博士人材育成の充実についての有識者ヒアリング

4.出席者

委員

内山田委員,野路委員(代理:松﨑委員),横倉委員,須藤委員(代理:富田委員),秋山委員,上野委員,藤嶋委員,小畑委員,神谷委員

文部科学省

常盤高等教育局長,佐野審議官(高等教育局担当),北山専門教育課長,関専門教育課企画官,猪俣大学改革推進室長

経済産業省
井上産業技術環境局長,宮本大学連携推進室長,星野産業技術環境局審議官,髙科産業技術政策課長

オブザーバー

一般社団法人産学協働イノベーション人材育成協議会 北野代表理事,一般社団法人スーパー連携大学院コンソーシアム 福田副会長,一般社団法人八大学工学系連合会 伊藤会長

5.議事録

【宮本大学連携推進室長】  本日は,第4回の理工系人材育成に関する産学官円卓会議となっております。
委員の皆様方におかれましては,御多忙にもかかわらず本会議に御出席いただき,誠にありがとうございます。
経済産業省大学連携推進室の宮本でございます。よろしくお願いいたします。
本日は,大西共同座長におかれましては,所用により御欠席です。また,野路委員,須藤委員におかれましても御欠席となっておりますが,野路委員の代理といたしまして,経済同友会イノベーションエコシステム委員会副委員長でおられます,コニカミノルタ取締役会議長の松﨑正年様に御出席いただいております。それから須藤委員の代理といたしまして,産業競争力懇談会実行委員会,委員長代理の富士通研究所取締役会長の富田達夫様に御出席いただいております。
本日の議事進行は内山田座長にお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

【内山田座長】  本日の座長を務めさせていただきますので,皆様よろしくお願いいたします。
今,宮本室長から話もありましたが,既にこの円卓会議,3回にわたって進めてまいりましたので,今日は,この3回の間に皆さんからいろいろ頂いた問題提起ですとか,あるいは議論の内容を踏まえて,どういうことが大きなテーマであるかというまとめを,たたき台を事務局につくっていただいていますので,それについて御議論を頂きたい。大きくここを我々としては攻めるということでよいかという議論と,それが御了解いただいた上で,一つの大きなテーマと思っています博士課程人材のポスドクの活用,あるいは人材育成というこの2点ついて,今日は御議論を頂きたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
それでは,まず事務局より配付資料について確認をお願いいたします。

【宮本大学連携推進室長】  マスコミの方でカメラ撮影の方がおられましたら,ここまでとさせていただきたいと思います。
それでは,配付資料を確認させていただきますが,座席表,議事次第,その後ろに委員の名簿がございます。その後,資料1から始まりまして資料2,資料3,資料4,資料4については参考資料,それから資料5,資料6,資料7-1から7-2,7-3,7-4,7-5と用意させていただきました。その後ろに前回の議事録の資料8。それから,藤嶋委員提出資料を最後に付けさせていただいております。
もし不足等ございましたら,御連絡ください。

【内山田座長】  ということですので,よろしくお願いいたします。

【宮本大学連携推進室長】  それでは,私から資料1と2について御説明をさせていただきます。
資料1「『理工系人材育成に関する産学官円卓会議』における論点整理」といたしまして,これまで第1回から第3回まで開催させていただいている中で,皆様方からどういった意見が出てきたかにつきまして,過去の議論を整理させていただいたものでございます。
2枚物でございますけれども,大きく三つのテーマで整理をさせていただきました。まず一つ目のテーマが「博士人材の活躍促進方策,博士人材育成の充実」という固まりでございます。もう一つは,2.といたしまして「産業界ニーズと大学教育のマッチング方策,専門教育の充実」,三つ目が「理工系人材の裾野の拡大,初等中等教育の充実」ということで,三つの異なる課題が議論されていたと理解しております。
まず一つ目,「博士人材の活躍促進方策,博士人材育成の充実」につきましては,専らこれまで多くなされていた議論といたしましては,日本の博士取得者は就職率が余りよくない。そういうこともあって博士離れが進んでいるのではないかという御指摘がございました。つまり,優秀な人材が博士に進まなくなっているのではないかということです。一方で,日本の博士はリーダーになる能力として少し課題があるのではないかという議論がされていたと思います。
それから,産学連携の共同研究を進めることによって人材交流をすることができ,その結果,企業における博士の積極採用につながるのではないか,このような議論もなされていたかと思います。そのほかのことも書いております。
二つ目の内容といたしまして,「産業界のニーズと学校教育のマッチング方策,専門教育の充実」でございますけれども,そこに関しては,大学院教育が専門分野に特化した狭い範囲の教育研究となっており,産業界からするとユニバーサルな教育になっていないのではないかといったような議論があったり,修士人材について,採用後,企業で再教育をやっているというような御発言もあったかと思います。
それから,各産業分野においてどのような人材が求められているかについて,そもそも大学側,教育機関側にちゃんと伝わっていないのではないかと,そういった御議論もあったかと思います。
それから,特に中小企業につきましては,中小企業において理工系人材が量的に圧倒的に不足している,これはグローバル人材も含めて不足しているのだという御議論もありました。
それから,三つ目として「理工系人材の裾野の拡大,初等中等教育の充実」の論点に関しましては,小学校3年生ごろまでに理科実験を体験させるということが裾野の拡大にとっては重要ではないか,こういった意見が多く出ておりました。また日本において,女性を含めて理工系人材が少なくなっている原因は,本当のところ一体何なのかと,こういったところを追究すべきではないかというような御意見もありました。
それから,教育内容が将来の職業,社会にどうつながっていくのかということを企業と学校が協働して学生に伝えていくことが重要だという御意見が多く出ていました。そういったあたりを,これまでの1回目から3回目までに多く発言されたものを中心にまとめさせていただきました。
これを踏まえまして,資料2を見ていただきますと,今申し上げましたように,三つの大きなくくりごとに課題が違いますので,三つのテーマそれぞれで議論させていただくことがいいのではないかと思っております。内山田座長からも御説明いただきましたように,本日は,「博士人材の活躍の促進方策,博士人材育成の充実」について,外からのプレゼンターの方々にも来ていただきまして,議論させていただくということを考えております。
それから,次回第5回につきましては12月18日を予定しておりますが,二つ目のテーマである「産業界のニーズと大学教育のマッチング方策,専門教育の充実」について議論をさせていただければと考えておりますし、第6回についてはまだ日程調整できておりませんが,「理工系人材の裾野の拡大,初等中等教育の充実」について議論させていただくとともに,このときに我々からも行動計画の骨子案を提示させていただきだいと思っております。その後,第7回,場合によっては第8回に引き続き議論をさせていただければと考えております。
私からは以上です。

【内山田座長】  ありがとうございました。
ただいまの宮本室長の説明にありましたとおり,これまでの委員の皆様から頂きました御意見を大きく集約しますと,課題は先ほど御説明のあった三つに分類できるのではないかと思っております。この会議のゴールは,理工系人材育成戦略を受けました産学官の具体的な行動計画の作成ですので,大西座長及び事務局と相談いたしまして,先ほどスケジュールの説明がございましたが,本日を含めて3回はそれぞれの課題について有識者より御発表いただき,それをもとに,今後どのような取組を行うかについて十分な議論をしていきたいと思っております。
そのような進め方でよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
ありがとうございます。それでは,その方針で進めさせていただきます。
本日は,三つの大きな課題の一つでもあります「博士人材の活躍の促進方策,博士人材育成の充実」について議論していただければと思います。
まず,経産省より資料3について説明をお願いします。

【宮本大学連携推進室長】  それでは,資料3を御覧ください。
表紙をめくりまして1ページ目を見ていただきたいと思いますが,我々の方で,特に博士人材を中心に,日本以外の国でどのように博士人材が教育,活用されているか,またその実施に当たって産学官がどのように連携しているかということを調べまして表にさせていただきましたので,御紹介させていただきます。
まず,フランスにおいては,博士学生がフランスの国内の企業に就職するということ,つまり海外の企業に博士課程の学生が流出しないようにという観点で,博士の学生を自国の国内の企業,研究機関に就職することを促進するような取組をやっているようです。政府からの奨励金の形で支援し,年間約1,300人の博士課程の学生を国内の企業,研究機関で雇用して研究開発に携わらせる。その結果,国内の企業,研究機関への就職率が非常に高くなっています。
米国につきましては,政府の取組という意味合いでは,一般的な産学の連携の在り方として,学生の企業での就業体験に単位を認めることで,アメリカの学生の就業体験を促進しています。その結果として,博士も含めて多くの学生が企業に就職していることがわかりました。
英国につきましては,博士・修士号を取得された方を6か月から3年間企業に派遣して,彼らの専門分野の知見を企業の課題解決に役立ててもらうというKTPと呼ばれるプログラムを行っています。KTPの事務局が共同研究先の企業を探す役割を果たしており,その結果として,多くの博士,修士が実際にそういった企業へ就職しているということです。この取組に対して政府助成が行われています。
ドイツにつきましては,これはフランホーファーのような研究機関が大きな役割を果たしているようでございまして,研究所に多くの学生が派遣されて,企業との共同研究の場で教育をしているということで,実際にフランホーファー研究所では約2万2,000人の方が仕事をしておられるわけですが,そのうち6,400人ぐらいは学生です。その結果として,博士取得後に産業界で活躍する方が多くなるということです。
最後に韓国の例でございますが,企業と大学が契約を結んで,大学に学科を設置・運営するというようなことを法律に基づいてやっています。二つのタイプがありまして,採用条件型学科と再教育型学科がございます。採用条件型学科は,大学の学生の教育内容について企業側が主導し,そのかわりに企業は採用を保証するというような,ある意味で,企業内大学のようなものを作る取組をしています。もう一つは,企業の技術者の再教育について大学のカリキュラムを使いながら行っています。採用条件の教育については年間約1,000人,企業の技術者の再教育,学び直しに関しては約1万1,000人規模でやっているようです。
最後のページに幾つかの例を紹介させていただきます。左側に大学と学科名,人数を書いており,右端には実際に大学の学科と契約をしている企業の名前を示しています。これらの企業が大学の教育内容に意見を出して,そのかわり採用を保証することをやっています。また,中小企業がこのようなことをやりたいという場合には,大学の学科と1対1の関係を結ぶことが難しい場合がございますので,この振興院等が幾つかの中小企業を束ねた第三者契約形態で実施しているようでございます。

【内山田座長】  ありがとうございました。
本日は,八大学工学系連合会より伊藤会長,スーパー連携大学院コンソーシアムより福田副会長,産学協働イノベーション人材育成協議会より北野代表理事にお越しいただいております。それぞれ10分程度で御発表いただきたいと思います。皆様の全員の発表が済んだ後で文科省が資料7について説明いたしますので,その後まとめて今の宮本室長の発表も含めて質疑を行いたいと思います。
それでは,まず伊藤会長,よろしくお願いいたします。

【伊藤会長(八大学工学系連合会)】  八大学工学系連合会の会長を務めております伊藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。本日は,八大学連合会がまとめました博士人材に関する提言について御説明する機会を頂きまして,誠にありがとうございます。時間が限られておりますので,早速中身に入らせていただきます。
まず,八大学連合会についてですが,2ページ目にございますように,我が国の工学系八大学25研究科の学部長,研究科長が集まりまして,教育・研究・運営の在り方について共通の課題を議論し,認識を共有するとともに,産学官の対話を促進しつつ各方面にメッセージを発信するということを目的として活動しております。既に60年余りの歴史がある工学部長会議です。この中で,事業を行う提言分科会が毎年八大学としての提言をとりまとめまして,昨年度は博士人材の問題に焦点を当てて提言をまとめました。本日も,こうしてその御理解を得るために参上している次第です。
先に提言の結論を述べさせていただきますと,3ページ目のような形になります。今,我が国において博士人材の活躍の場が広がっていかない。その理由といたしまして,優秀な学生が博士課程に進学しない。苦労して博士学位をとっても,産業界において博士のキャリアパスがみえてこない。その結果,博士課程への進学率が上がらず,また優秀な人材を大学が輩出できないという悪循環に陥っているかと思います。これを何とか,この図に描きましたように正の循環,プラスの循環にもっていきたいというのが願望でございます。どこから始めるかが最大の問題でございますが,大学がなすべき取組としては,トップに,優秀な学生が修士で就職するのではなくて,博士課程に進学するような取組を強力に進めていきたいと思います。
次に,単に進学を勧めましても駄目でしょうから,大学のなすべきこととして,魅力あるリーダー育成プログラムの設計と実行を図りたいということです。産業界の方にも,共同研究のテーマから学術的な要素を抽出して,博士課程の学生が研究課題として当たれるような学から産への応用展開力を養成するようなテーマをお願いしたいと思っております。
それから,博士インターンシップの充実を図ります。また,政府,産業界の方には,博士課程学生に対する給付型奨学金,授業料免除,TA,RAの雇用等,手厚い経済的支援の実施をお願いし,また最後に,産業界の皆様には博士課程修了者の採用数の増加,イノベーションの創出マインドの醸成につながるような明るいキャリアパスの確保を是非お願いしたいと思っております。
大学のみができることではありませんので,そのような正の循環が回るような各方面の御理解と御協力が今是非とも必要であります。それが提言でございますが,お手元の資料に沿って,まず背景から順に御説明したいと思います。
4ページに,我が国の博士人材はまだまだ不足しているということをデータでお示ししております。左側は博士学位取得者数について,国の経済規模の観点から回帰分析した結果です。横軸GDPに対しまして博士数をみますと,日本の理工系博士取得者数はかなり下の方にございまして,回帰線から半分程度とかなりかけ離れております。
また,右の方の図は理工系博士号取得者数の推移をみましたものです。多くの国は1人当たり実質GDPの増加,つまり経済成長を反映して博士数が増加しているのに対しまして,我が国の博士数は伸びがみられないという,日本が特殊な状況にあるといえます。
次のページに,八大学で工学を修める学生のフローを集計したものがございます。学部でおよそ1学年あたり8,000名の学生がおりまして,修士課程におきましても約8,000名の学生が在学しております。博士課程には約2,200名となっております。問題は,修士から博士への進学率がせいぜい10%程度,800名程度にとどまっているというところにあります。欧米の主要大学におきましては,半数近い学生が博士,Ph.D.の取得を目指すという現実を考えますと,我が国の工学研究の中核を担うべき八大学工学系におきまして,博士課程への進学率は相当低いレベルにとどまっているということがいえます。
このことをよりイメージするために,次のページで,私が所属します京都大学工学研究科の博士課程の実態を紹介したいと思います。左の方の表は実数で書いておりまして,最初のカラムが今年2015年度の数でございまして,次のカラムが最近5年間の平均値です。ですので,増減の傾向がおよそわかっていただけるかと思います。
右のものは,これをわかりやすく円グラフに示したものでございまして,大まかにいいまして,日本人の内部進学が3分1,外国人留学生が3分の1,社会人ほかの編入学と欠員が3分の1という状況でございます。これをみますと,少なくとも博士課程では国際化は十分に進んでいる。これ以上増やすと,日本の大学の先端技術を支える博士研究,人材育成が外国人主体になりかねません。また,本当に大学の研究を支えて貢献してくれているのは3分の1の内部進学者でございまして,私どもは内部進学者のこの貢献に対して十分に報いていないという印象を強くもっております。
7ページに入りますが,米国が大学モデルとして常によいとは限りませんが,比較いたしますと,博士人材の多くが学術界,産業界を問わず種々の職業に幅広く活躍しているということから,産業の研究開発能力,競争力を支えているように感じます。博士学位が社会でのキャリアアップに有利に働く,そのための能力を高めていく仕組みが博士教育の課程の中に組み込まれているように感じます。社会,大学,更に学生自身の認識も含めまして,博士人材はイノベーションの担い手であるということを再認識して,大学においては博士教育プログラムの中にその要素を取り入れていくべきと考えております。
既に国際人材育成という面からは幾つも提案がなされておりますが,工学教育でみますと,産業界とも共同研究の軸の上で行うことが有効な施策ではないかと感じております。
次に,国際的にみますと,博士課程の学生に対する経済支援の面では大きな差異を感じます。8ページのこの図は,横軸に経済支援を受ける割合,縦軸に大学の学費を示したものでございまして,大きく四つのカテゴリーに分けて考えられます。まず,欧州の場合は下の方に分布しておりますが,そもそも学費が安い上に多くの学生が各種奨学金を受給しております。一方,右上の方のアメリカの授業料が高いということは有名でございますが,その分,各種奨学金の受給率,受給額も高くなっておりまして,支援を強化しております。
こうしてみますと,日本の状況はやはり異質でございまして,学費は高い,経済支援は少ないという厳しい状況に博士課程の学生が置かれていることは明らかでございます。
9ページは,日本の場合,公的な経済支援の割合が教育ローンに偏っているということを示したものでございまして,時間の関係上,それ以上は割愛させていただきます。
10ページは日米比較でございますが,アメリカでは多くの大学院学生が給付型奨学金,リサーチ・アシスタント等によりまして,返済義務のない生活費相当分の支援を受けております。一方日本では,学費,生活費の心配なく学業に専念できる学生は,JSPS特別研究員など少数に限られまして,TA,RAの給与は生活を支えるにはほど遠いものでございます。大学の学費免除額でも大きな差があります。したがって,日本では,25歳になっても親の支援を受けて博士課程を続けるケースが多く,学生に自立できない精神的な負担を強いております。これが進学率低下の一つの大きな要因となっていると考えております。
御存じのように欧米では,公的研究費や産業界からの研究費の多くが大学の研究室に流入いたしまして,そこで大学の博士課程学生が研究者として雇用されて,生活支援に活用されております。我が国おいても,奨学金システムの充実及び研究費を活用した博士課程学生への合理的で手厚い支援について真剣に検討し,着手すべきであると考えております。
次の11ページは大学修了後の収入の伸びを示したもので,米国では博士人材の多くが幅広く活躍しておりまして,博士学位取得後の平均年収は,修士修了生と比べて,修了後30年で比較しますと1.5倍程度になっているということは,注目に値するエビデンスと思われます。
以上,さっと時間の関係上急いで申しましたが,12ページの方にもう一度総括いたしまして,このような提言をまとめさせていただきました。この正循環を回すことは非常に重要でございますが,申し上げましたように,大学のみでは実現できません。中ほどに書きましたように,社会のニーズと博士人材に期待される役割を徹底的に考える場を産学官連携して構築していただきまして,博士課程教育改革を推進していきたいと考えております。
また,円卓会議の皆様におかれましては,教育問題ですから短期的な視点ではなく,20年先の社会を見据えた産業とニーズ,それから労働人口が6,000万人から5,000万人に減少していくという中で,産業を維持発展させるために必要なチームジャパンを支える博士人材の質,量,多様性など深い御議論を頂きまして,また我々に御教示いただければ有り難いと感じております。どうもありがとうございました。

【内山田座長】  では,福田副会長よろしくお願いいたします。

【福田副会長(スーパー連携大学院コンソーシアム)】  スーパー連携大学院で副会長を務めております電気通信大学長の福田でございます。本日は,私たちが考えている日本版「Industrial Ph.D.制度」の創設を提言として出させていただく機会を頂きどうもありがとうございます。
お手元の資料5に従いまして,まずおめくりいただいた2ページ目に,私の今日のコンテンツを示しております。最初に,今の伊藤先生のお話にもありましたが,既に多くの指摘がなされている日本における博士育成の課題と問題点の要点を再確認した後,産学官連携の必要性を強調し,私の今日の主題であります「Industrial Ph.D.制度」に関する提言を述べさせていただきます。加えて,その制度とよく似た諸外国の事例として,ヨーロッパにおける取組の紹介を,これは時間の許す範囲でお話しさせていただき,私どもスーパー連携大学院コンソーシアムが進めております博士育成の試みをお示しした後,最後に要望を述べさせていただきたいと思います。
おめくりいただきまして,最初の話題として,これまでいろいろな所,いろいろな方面で博士人材育成の課題,問題点が指摘されております。ここでは中央教育審議会答申を挙げておりますが,そこでは,博士学位が示す能力やその保証の問題,教育指導自体が担当教員の研究室で閉じている嫌いがあること,大学と産業界の間で人材育成に関する共通認識が十分ではないということなどが,さらに,特に伊藤先生がおっしゃられたように,学生にとってみますと,博士取得までのプロセスや経済負担,キャリアパスに関する十分な見通しを描くことができないという状況にあることなどが指摘されています。産業界からも,例えば経団連の提言にありますように,産業界側と大学側の博士人材像のミスマッチが随分前から指摘されています。
これらの問題点等の解決方策として,次のプレートにありますように,前回の円卓会議での御議論を挙げさせていただきますと,秋山委員からは,実用研究の推奨を,藤嶋委員や横倉委員からは,共に企業との共同研究の推進を述べておられると思います。特に秋山委員からは,大学における実用研究に対する評価や予算などの強化策の必要性を指摘されておられます。いずれも,私どもが今回「日本版Industrial Ph.D.制度」として提言,要望を行いたいと思うに至った考え方と通じるものと理解しております。
次の5ページ目は,先ほど引用しました中教審の答申とほぼ同じころにNature誌に「The future of the Ph.D.」という表題の特集の話です。この特集は,養成される博士人材の社会・産業界とのミスマッチ,それに起因する就職問題,それがメインテーマで,非常に激しい論調の論文が幾つか載っております。高度人材としてのPh.D.育成の重要性,必要性は認める,でも,今のままでPh.D.は本当に価値があるのかとまで言っており,改革なくば閉鎖を,という論調の非常に強い危機感が述べられているのがこの特集でした。
このような議論を経て欧米,特にヨーロッパでは,いわゆるアカデミア博士とは異なる,アカデミア分野以外で活躍する博士,Industrial Ph.D.の育成システムの整備が進められて今に至っているようです。これら特にヨーロッパのIndustrial Ph.D.システムの共通点は,後で触れますが,企業と協力して行う学位研究を必須としていることと,学生は当該企業に雇用されるかそれに近い形の経済支援を受けているということを強調しておきたいと思います。
次のプレートで,もう少し私たちなりの認識で,日本における博士人材に関して考えておくべきことを挙げさせていただきます。一言で申せば,博士人材の多様性だと思います。かみ砕けば,専門分野の多様性,活躍分野の多様性,これが日本には欠けているのではないかと思います。すなわちイノベーションの創造プロセスや経済・社会の構造が日々大きく変わるというこの大変革の時代においては,例えば②のように,従来の専門分野にはとらわれない新しい分野開拓能力を有する博士人材が必要ですし,④のように,アカデミア以外の分野で活躍する博士の増加,更に⑤のように,自ら起業して新しいベンチャーを起こすようなチャレンジ精神のある博士,そういう人材が必要とされております。
そして,特に今挙げました②とか④とか⑤のような博士人材の育成は,正直なところ大学のみで完結させるのは非常に困難です。産学連携のスキームが必要不可欠であるということだと思います。
次のプレート以降で,私たちが持っているIndustrial Ph.D.に関する基本理念の話をさせていただき,それを実現するための「日本版Industrial Ph.D.制度」に関する提言をお示ししたいと思います。このプレートで簡単にですが書いてありますように,私どもは,先ほど申しました大変革の時代を迎えようとしている今,産学共同研究型の学位研究と産学連携による人材育成の両輪駆動,それによって生まれる博士,そういう人材が社会のイノベーションを先導していくのだという見方に立っております。
その理念のもとで,私どもスーパー連携大学院で,どのような教育をしているかをお示しすると,次のプレートになります。私どもは,左下の方にありますように,まず企業,大学,行政等がイコールパートナーシップのもとで共同運営するコンソーシアムを形成しています。今現在このプログラムには,大学が6大学,企業が十幾つ参加しております。そのコンソーシアムで,総合的な資質を醸成するためのカリキュラムを産学官協働で構成して提供し,併せて産学共同研究型の学位研究を課すという,そういうデュアルシステムから成る修士・博士一貫の教育プログラムを立ち上げ,運営しています。
このプログラムの特徴を私どもはこう考えています。すなわち,欧米にはIndustrial Ph.D.制度は,これは後でお示ししますが,博士課程での共同研究型学位研究のみで構成されておりますが,私たちはグローバルな環境下で活躍することのできるイノベーティブな博士人材,そういう人材を育成するには,修士の段階からしっかりした基礎教育と専門教育を施して,その高い専門性に基づくアナロジーに立脚した抽象化スキルを習得させ,それでもって産学共同研究型の学位研究を行わせるというプロセスが必要ではないかと考え,こういう修士・博士一貫のプログラムを立ち上げております。
このプログラムが目指すアウトカムズ,それは人材であり,更に共同研究から生み出されるイノベーティブな研究成果です。この二つのアウトカムズは,図の一番上の黄色い部分に書いてありますように,理工系人材育成戦略における方向性の中の重点1の「理工系プロフェッショナル,リーダー人材育成システムの強化」,重点3の「地域企業との連携による持続的・発展的イノベーション創出」の具体化につながるものと思っております。
ただ,この機能を更に展開していくには課題もございます。その課題が右上に囲ってある,Industrial Ph.D.と私たちが名づけているその資格の称号の公的認定が必要ではないか,さらに,産学共同研究プロジェクトへの財政支援が必要ではないかということです。こういう一段上の制度がこのような人材育成システムには必要だということ,これが今日の提言の中核です。
次の9ページは前回の大西先生のお話の中で御紹介いただいたものと同一のものですが,これに基づいてお話しさせていただきます。
ここでは,私たちが付けた英語の名前の省略形のIPSCAI制度と呼ばせていただきます。提案したいこのIPSCAI制度というのは,産学官の連携をプラットホームとして二つのサブシステムから構成されています。一つは,左側にあります「Industrial Ph.D.の称号の認定及び授与に係る公的制度」です。もう一つは,右側にあります,「学位研究として取り組んだ産学共同研究プロジェクトへの財政支援制度」です。特に後者の財政支援制度では,後ほどお話ししますヨーロッパの制度のように,プロジェクト学生を当該企業が雇用するときの人件費,雇用が不可能な場合には給付型奨学金等,そういうものへの補助が必要であろうと思います。さらに,このプロジェクト学生の所属大学への研究費支援が含まれるべきと考えます。
繰り返しになりますが,ここでは,この二つのサブシステムから構成される「日本版Industrial Ph.D.制度」を国として創設する,そういうことをここで提案させていただきたいと思います。このような国の公的制度があれば,今現在は私どものスーパー連携大学院がそれに類したことを進めておりますが,スーパー連携大学院に限らず,産学共同研究型学位研究をベースとする各種の博士人材育成プログラムが国内各所で立ち上がると思います。そうすれば,イノベーティブ人材育成と地域活性化に結びつくイノベーションの創出が継続的に進展していくのではないかと考えます。
次に,IPSCAIに関して,それを創設した場合に期待される効果をまとめてありますが,今言葉で簡単に申しましたことの繰り返しになりますので省略させていただきます。
次の11ページに,諸外国の例として,このIndustrial Ph.D.制度の運用で一番長い歴史,44年の歴史を持っているデンマークの例を御紹介いたします。
デンマークでは,このIndustrial Ph.D.システムを国の「Danish Agency for Science, Technology and Innovation」という機関が運営しております。そして仕組みのところに書いてありますように,まずは企業が学位レベルの研究テーマを公開し,そのいろいろなテーマに対して興味を持った学生が,教員や企業と組んでAgencyにアプライする。そして,Agencyで審査を受け採択されるというものです。採択された学生は3年間企業に雇用されて,その雇用経費の2分の1,及び大学に対しては共同研究費が国から保証されるそうです。採択率は平均すると約60%だそうです。
このシステムの効用又は実績を次のページに示します。図の左側にあります三つの棒グラフ,これはこのシステムに参加している企業の所在地や規模や業種です。所在地は何も中央の首都圏だけに限られたものではなく,地方の企業もきっちり参加している。規模についても,大企業だけではなく中小も参加している。更に注目すべきは,参加企業の業種はテクノロジーだけではなく,非常に広い分野にわたっている。このように好ましい成果を上げています。
更に右側の折れ線を見ていただきますと,これはIndustrial Ph.D.制度に参加している企業と参加していない企業,それについて,この制度に参加したエポックをタイミングとして,それ以降に特許出願などの生産性がどう変化しているかを描いたグラフです。御覧のように,Industrial Ph.D.に参加した企業は生産性を長期に渡ってあげています。
次のページがフランスのCIFREの例,これは先ほどお話がありました。省略させていただきます。
次の14ページは,イギリスに関する先ほどのお話とは違うCASEと呼ばれる制度の例です。CASEとIndustrial CASEの2系統があります。その下はヨーロッパ全体で行っておりますEID(European Industrial Doctorate)というシステムで,これらフランスもイギリスもEU全体においても,形式としては先ほど申しましたデンマークと非常に似通っていて,同じような成果が上がっています。
15ページに移っていただくと,それらを表としてまとめました。実はこの表も,前回の大西先生の発表の中にあったかと思いますので省略させていただきますが,一部だけ追加させていただきますと,一番下の欄外にありますように,アメリカでは実はこういうシステムは見当たりませんでした。これは私どもが解釈するに,アメリカではTA又はRAとしてほぼ全ての学生が雇用されており,いわゆる経済的な支援というのはある程度保証されています。したがってIndustrial Ph.D.というシステムは不要であり,先ほどのお話のように,コープ教育のようないわゆる就業体験がメインとなる教育を進めているようです。
次の16ページは,スーパー連携大学院という私たちのシステムの概要を説明しておりますが,本日はこの私たちのシステムの説明が主ではなく,それを包含するようなIPSCAIという制度の提言ですので,省略させていただきます。
次の17ページで,提案しておりますIPSCAI,「Industrial Ph.D.システム」と従来の博士人材育成システム,今議論になっております卓越大学院,それらのベースになっておりますリーディング大学院等との関係を述べさせていただきたいと思います。
まず申し上げたいのは,ここで提案する「Industrial Ph.D.制度」というのは,卓越大学院等々への対極軸として位置づけて提案しようと思っているものではございません。そうではなくて,この「Industrial Ph.D.制度」というものがもしできれば,これは卓越大学院も含めた多様な博士育成機能の一つと位置づけられるのではないか。言ってみれば補完機能になり得るだろうと思っています。ただ,一つ考え方として違うところは,卓越大学院等の従来の政策的取組は,選定された特定の大学院に適用され,それに参画する企業も特定の企業に限定されるという嫌いがあるのではないかと思います。ここで提案します「Industrial Ph.D.システム」というのは,全ての大学や学生や企業を対象として,もちろんそれを審査して採択,非採択を決めた上で動かすというものであります。ですから,言ってみれば地方活性化のためとなる人材育成や地方企業の生産性の強化という視点のより近くに立っていると主張したいと思います。
最後の18ページに要望を書かせていただきました。今,私どもは「Industrial Ph.D.制度」,先ほどお話ししましたような形の制度を国として設立することを提案いたしましたが,その提案の前段として,まずはこういった制度に関して産学官で検討する会議を是非設置していただきたい。その検討会には,言うまでもなく産業界も大学関係者も行政の方々もお入りいただいて,具体的な制度設計を行っていただくことを要望させていただきたいと思います。
最後のページでは,今日お話ししましたことに関するいろいろな資料をウエブサイトで載せて用意しておりますので,御参考までにお示しします。どうもありがとうございました。

【内山田座長】  ありがとうございました。
では,続きまして北野代表理事から。

【北野代表理事(産学協働イノベーション人材育成協議会)】  産学協働イノベーション人材育成協議会の代表理事をしております北野でございます。資料に従って御説明をさせていただきます。
中長期研究インターンシップを促進しようという目的の協議会でございます。背景につきましては,1ページ目に書かせていただきましたように,産業界の方からはイノベーション創出のための理工系人材をしっかり育成していただいてほしいという要請があります。一方で大学側としましては,修士・博士修了者がアカデミアにとどまらず,社会の様々な場で活躍できるような状況をつくりたいということでございます。しかしながら,既にいろいろ御指摘があるように,なかなかそこのマッチングというか思いがうまく合いませんで,そのことが少しとまっているわけですが,それを打開したいということでございます。
1ページ目の真ん中に書いてありますように,特に博士課程の学生が企業の現場に出て中長期研究インターンシップをやることは,いろいろな意味でマッチングの促進,あるいは意識改革につながるという発想がございまして,是非促進していきたいということでございます。ただ,課題がたくさんございます。中長期研究インターンシップは,従来大学と企業がそれぞれ個対個でやってきた個別の取組であった。それから,大学としてもなかなか組織的に対応ができていない。あるいは大学教員が自分の学生は研究室にいてほしいということで,なかなか外へ出したがらない,そういうことがございます。それから企業の側でも,博士課程の学生が来たときに何をしてもらったらいいかということがなかなか定まりにくいということがございました。
そういった状況を受けまして,複数大学,複数企業から成る産学連携のコンソーシアムを平成26年1月に設置いたしました。12大学8企業がその当時参画しております。これは経産省の補助金,中長期研究人材交流システム構築事業,平成25,26,27,3か年の補助を受けてやっているものでございます。
次のページを見ていただきますと,理念を書かせていただいております。企業が中長期研究インターンシップの場を提供し,大学は学生を募って派遣する。特にマッチングということが大事でございますので,まずはウエブで双方,つまり学生の情報,企業側の情報をオンラインで登録する。それだけでは前に進みませんので,各大学にコーディネーターを配置いたしまして,ウエブのデータに基づいて個別のマッチングをする。それから,協議会自体はそれを横から見ておりましてPDCAを回して,どのようにすればいいかということを検討し,よりよいシステムをつくろうということでございます。
下に「人の交流 知の交流」と書かせていただきました。学生を派遣することによって人の交流ができる,学生のも持っている知が企業に行く,あるいは企業からいろいろなことを教えていただくという意味で,「人の交流 知の交流」の出発点になるということを期待しているわけでございます。あくまでもこのインターンシップというのは,就職ということでありませんで,博士課程の学生の教育を産学が協力してやっていく。特に,学生の方は自分の研究にとらわれないスキルの習得,あるいは視野の拡大を目的としている。それからキャリアパスについても,必ずしもアカデミアでなくても自分は才能を発揮できる可能性があるということを気付いてもらう。それから企業側でも,博士人材に対する理解をその実例を通じて見てもらうことで,実質的な出会いの機会というものを提供できたらということでございます。
次のページは,組織の形を挙げさせていただいております。協議会は理事が産学両方から出て,この運営に携わっているわけでございます。会費を頂いておりまして,大学,企業ともにそれぞれ年会費を出し,この組織を支える。補助金を頂いておりますけれども,マッチングファンドでありますし,来年度から自立する必要がありまして,この会費で運営されているということでございます。
それから,中長期インターンシップの定義ですけれども,短期ですと実質的な交流ができないということで,2か月という目安を設定しております。
次のページは参画大学,企業のリスト,ロゴを挙げさせていただいております。当初12大学8企業ということでしたけれども,現在は11大学23企業,参加予定も含めて数が増えてございます。更に現在,入会を検討していただいている企業様もたくさんございます。今後この会員数を増やしていくというのも我々の重要な課題となってございます。
5ページ目,先ほどコーディネーターというお話をしました。コーディネーターが学生と企業側を取り持つ働きをし,各参加大学に配置をいたしまして,学生が適切なインターンシップを行える状況をつくり出しております。学生側の情報としては,自分がどういう研究をしているのかを提供し,企業側は,インターンシップのテーマ,前提とされる知識やスキルの要求を出すということです。この場合,学生の研究内容と企業の研究がぴったり合っているということを必ずしも要請しているわけではございません。少し他流試合的なこともありだということで,先ほど言いましたように学生の視野を広げるということも重要ですし,企業側にしても,少しエクスペリメンタルなことを,これを通じてやるということも可能ですので,少し幅をもってマッチングをやるというようなことを進めております。
6ページ目は,現在配置しておりますコーディネーターのリストを挙げております。各大学を見ていただきますと,大学によっては学生支援部門が担当している場合,それから産学連携部門が担当している場合と,これは新しい事業ですのでなかなかぴったりしたところがないので,中間状態にあるということが見ていただけると思います。これは企業側でも同様でございまして,人事,R&Dの部門,このあたりが混在的に関与していただいているという状況でございます。
それから,マッチングということで個別にやるのではなくて,交流会という形で大学を回りまして,大学に複数の企業が訪問して,インターンシップの概要を説明するという機会を頻繁に設けております。写真を幾つか,7ページ,8ページ,阪大,東北大学で行われた交流会の風景を出しておりますけれども,これ以外にもたくさん実施をしております。
9ページ目を見ていただきますと,マッチングの件数の推移を描いてございます。まだ非常に多いという状況ではありませんが,急速に伸びている登録の学生数,マッチングが実際に成功した累計数をプロットしております。平成26年にこの事業を開始しておりますけれども,平成26年半ばあたりからかなり伸びてきている。今後このマッチング数をどんどん増やしまして,グッドプラクティスを積み重ねていきたいと思っております。
10ページ目は実際のマッチングの例,インターンシップに派遣した例を挙げさせていただいております。九州大学とA社の例でございます。少し面白い例ということでここを取り上げさせていただいております。学生さんは数学専攻で,代数をやっている非常に基礎的な数学の研究者でございますが,これがA社という電子楽器等の会社のインターンシップに行きました。A社の抱えている問題,音楽のテンポを音から抽出すると,そういったテーマを出されて,この数学をやっている学生がそれに取り組んだという事例でございます。裏に,少し双方の事後的な感想,学生側,企業側からのコメントを書いています。学生さんはかなりアカデミア志向が強かったのですけれども,数学を企業で生かす,そういうことができるということに気付いた。それから企業側としては,基礎学問を使うと今まで少しとまっていたことがブレークする可能性があると,そういったことに気付いたということの非常によい事例ではないかなというふうに思ってございます。
そのほか12ページ目,これは東北大学と三菱電機の例,その次は大阪大学と東レの例,それぞれ内容,事後の評価等を書かせていただいております。また指導教員の方も,一般的には学生は2か月研究室を抜けるということに対しては,最初は否定的なのでありますけれども,実際に学生が帰ってきますと,少し人が変わっている,非常にアクティブになっているということで,よい評価を得ていることが多い。それから,先ほどの九州大学の例ですと,スカイプを使ってやっているので,あまり企業に行く時間を多くとらずに,期間は2か月ですけれども,研究室をあける時間をそれほどとらずにインターンシップが実現できている。そういったことも可能なわけでございます。
14ページ目は,補助金がなくなった後のことをいろいろ考えております。特に参加企業の数を増やすということが非常に大事でございます。特に学生においては,選択肢を増やす,つまりにはより多くの業種,企業にインターンシップに行けるというチャンスを確保するという意味で,参加企業の数を増やすということを現在取り組んでございます。
その一環としまして,リーフレットをつけさせていただいておりますが、12月5日にシンポジウムを開催いたします。周りの関心のある方々に,新しい中長期研究インターンシップというのはどういうものかということを是非この機会に知っていただきまして,より参加をしていただきたいと思っております。現在,大学の方でも博士課程を充実させ,よりプログラム化して,従来のように研究だけをしているというのではなくて,いろいろなことを博士として取り組んでほしいと考えています。例えばリーディング大学院などはそういった試みなのですけれども,インターンシップというのはリーディング大学院でも非常に重要なコンポーネントになっております。そういった意味で,そのインフラとしての役割を担えるのではないかと思っております。
また,今回は比較的理工系ということに集中してやっておりますけれども,場合によっては,文理の壁を超えたようなインターンシップという可能性もございます。それから国際化という意味で,入る方,出る方両方あると思いますけれども,国際化という展開の可能性もあるのではないかと思っております。
何よりも高校生が大学を選ぶ,あるいは大学生が企業を選ぶというときに,外形で選んでしまうということが現在の風潮であるわけでございますけれども,中身を見て自分の適性を考えていくと,よいブレークの仕方になっているのではないかなという感想を持っています。
以上でございます。

【内山田座長】  ありがとうございました。
それでは,猪股室長,お願いします。

【猪股大学改革推進室長】  文部科学省大学振興課で大学院政策を担当しております室長の猪股と申します。
先ほど伊藤会長初め3人の先生方から貴重な御提言,また実践の数々をお話しいただきました。文部科学省においても,中央教育審議会において先月,大学院政策について審議まとめを頂いております。また,博士のキャリアパス支援につきましても,古くは平成18年ごろから文部科学省としても様々な支援策を打ってきております。本日は,お時間を頂きまして中教審の審議状況,そして文部科学省の取組について,資料7の一連の資料に基づいて簡潔に御紹介をさせていただければと思っております。
それでは,資料7-1を御覧いただきたいと思います。これは中央教育審議会大学分科会で先月,大学院教育の改革の方策をまとめていただいたものの概要でございます。背景につきましては,伊藤先生からも御説明がありましたので,ちょっと飛ばさせていただきます。
ここでは,先生方の御意見やまた円卓会議においての御発言に関連する提言について御紹介させていただきます。「7つの基本的方向性と『卓越大学院』の形成」というのを提言いただきました。まず①では,体系的・組織的な大学院教育の推進と学生の質の保証ということが第1の基本方針としてうたわれております。研究室の指導教員の研究活動に依存しがちな博士課程教育については,研究科や専攻の枠を超えた幅広いコースワークから研究指導につながるような教育課程の編成を促進すべきであるという御提言を頂いております。
また,産業界御出身の委員からは,採用するに当たってはしっかりと学生の質の保証をしてほしいというお声もありましたので,厳格な成績評価と修了認定ということも提言を頂いているところでございます。
また,2点目の基本方針として,産学官民の連携と社会人の学び直しの促進がうたわれました。教育課程の開発・実施の段階から企業と協働していくこと。また,大学教員と企業研究者との人事交流を推進していくこと。それに当たっては,特に知財ルールをあらかじめ設定をすることが重要であるという御提言も頂いております。また,大学院生の産学協働研究への参画。また,過去の大学院重点化で最もふえたのは工学系の修士と言われておりますが,修士号をもった社会人の博士号取得を促進していくべきであるという御提言も頂いております。
4番目の方を御覧いただきたいと思います。大学院の修了者のキャリアパスの確保と進路の可視化を推進すべきであるという提言でございます。特にキャリアパスの多様化のためには,個々の研究室の努力のみに依存するのではなく,全学的な支援体制を産業界との理解のもとで促進していくべきであるということや,また修了者の活躍の状況をきちんと大学側も把握して,それを学生や企業にも「見える化」していく,それを認証評価制度の中にも取り入れていくべきであるという御提言も頂きました。
一方,ちょっと飛びまして6番目の提言になります。企業の需要と大学院の定員の分野のミスマッチということもこの中教審でも議論がなされておりまして,規模の確保と機能別分化の推進の中で,特に社会的な需要を踏まえた学生定員を見直すべきであるという御提言を頂いております。
また7点目は,先ほど伊藤先生からもお話がありましたように,我が国の博士課程学生の置かれている状況は非常に経済的に厳しい状況があるということは,中教審でも話題になりました。政府の定めております科学技術基本計画では,約2割の博士課程学生が生活費相当程度の支給型の経済的支援を受けるべきであるという目標値が掲げられております。しかし,残念ながら現在は1割にとどまっておりますので,国の支援のほか,また企業や国立研究開発法人からのリサーチ・アシスタントとしての雇用経費という御支援を含めて,より学生への支援を拡充していくべきであるという御提言を頂きました。
また,この中教審では,中ほどにあります卓越大学院というものを形成し,それを国としても重点的に支援をしていくべきであるという御提言を頂いております。期待される領域例としては4つありますが,特に新産業の創出に資するような領域も期待されるといわれております。卓越大学院については詳細な仕組みの検討を,本年度中を目途に行うため,今後文部科学省の方で産学官から成る検討会を設置したいと考えております。
こういった形で大学院教育改革について中教審から御提言を頂きましたので,私どもとしても来年度以降の新しい大学院教育振興施策要綱をつくってまいりたいと考えております。
少し資料を飛ばさせていただきまして,資料7-5を御覧ください。今回,博士人材のキャリアパスの関係が論点となっておりましたので,資料7-5では,博士人材の多様なキャリアパスの確保に向けたこれまでの文科省の取組を御紹介させていただきたいと思います。
1ページ目,2ページ目は第1回目の円卓会議において当課より御説明申し上げた博士課程教育リーディングプログラムの御紹介でございます。従来のアカデミアの研究者養成を主目的とした博士課程教育から大きく転換をするような取組を,今33大学62のプログラムにおいて鋭意進めていただいているところでございます。
更に3ページ目をごらんください。3ページ目は,文部科学省の科学技術・学術政策局の方で進めている支援策として,博士号を取得した者がその先のキャリアパスが見えないという課題を踏まえて,長期のインターンシップ,これは3か月以上でございますが,そういったインターンシップを行うことや大学の中にキャリア支援システムを構築することに対する支援事業でございます。
4ページ目に,その支援拠点が平成20年度から全国38大学でセンターがつくられております。
具体的な事例として,名古屋大学の取組例を5ページ目,6ページ目で御紹介をさせていただきました。個人面談からセミナー,そして長期インターンシップ,そして企業との交流会など様々な取組をしていただいているところであります。分野としては,就職が比較的厳しい状況に置かれておりますバイオ,農学,物理学といったような学生が多いと聞いております。
このような取組を行った成果として,6ページ目右下の方の就業率の推移を御覧いただければと思いますが,就職率がこの6年,7年の取組の成果として約20%アップしたという成果が出ております。
また,この事業は5年間の補助事業でしたけれども,7ページ目,8ページ目に御紹介しておりますコンソーシアムの形で引き続いて御支援をしているという次第でございます。
最後に,9ページ目を御覧ください。これは来年度概算要求で新規の施策として要求しているものでございます。卓越研究員制度の創設ということで,15億円ほど概算要求をしております。これは若手の准教授や助教が自立して安定的に研究を行うことができるような環境を実現していくための支援事業として計画しているものでございまして,民間企業でもポストを用意していただければ,スタートアップの研究費や研究環境整備費を一定期間御支援するというプランでございます。文部科学省としても何十社かの企業の方に御説明に伺っているところでございますけれども,是非ともこういった事業にも関心をもっていただければ幸いでございます。
以上駆け足でございましたけれども,文部科学省側でも問題意識をもって取り組んでおりますので,今後の審議の御参考にしていただければ幸いでございます。以上でございます。

【内山田座長】  ありがとうございました。皆さん,本当にありがとうございました。
それでは,これまでのプレゼンテーションに基づきまして,ほかの方々も含めまして御意見を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
どうぞ。

【藤嶋委員】  私から提出しました一番最後についています資料をまず見ていただきたいと思います。私は,毎年,どのぐらいの理工系の学生が社会に出ているかを知るべきではないかと思い調べたものがこの参考資料です。学部と修士と博士,理学系と工学系に分けまして,これを昨年度の卒業修了者ということでまとめてみました。そこに示す数字は卒業修了者数ですから,学部生では大体その数×4が実際に在学しているということになります。男女別にも調べてみました。
まず学部ですが,理学系の卒業者が約1万8,000名,工学系の卒業者が約8万6,000名です。在学生はこの数×4ですので,かなりの学生が理学,工学の勉強をしていて,理学と工学の割合が1対5ぐらいであるということがわかります。更にこの中を国立,公立,私立の区分で分けて示してあります。次に修士にいきまして,在学は2年間ですので,在学生数はそこに示す数字×2になります。理学系の修了者が約6,300人,工学系の修了者は約3万1,000人ということで,理学と工学の割合が学部と同様1対5ぐらいであるということがわかります。これらの人数が,毎年,主に企業に行って活躍していることになります。では,博士に行くとどうなるかということですが,理学系ですと約1,200名が修了し,工学系では約3,500名が修了していて,理学と工学の割合が1対3ぐらいになります。在学期間が3年間ですから在学者数はこの数字×3になります。
博士を修了した方々に是非社会で活躍していただきたいというが我々の願いです。実際にどのくらいの人数が毎年,理工系から排出されているのかということを,皆で知ることが大事と思い,この資料をまとめてみました。以上です。

【内山田座長】  ありがとうございます。
どうぞ。

【横倉委員】  今日は博士に焦点を当てて議論するわけですが、日本版の「Industrial Ph.D.」について教えていただきたい。修士課程を強化充実させればできるのではないかと感じますが,いかがでしょうか。

【福田副会長(スーパー連携大学院コンソーシアム)】  御指摘の点はおっしゃられる通りかもしれませんが,私どもの考え方は,まず博士の学位を持っていてイノベーティブな産業志向,ノンアカデミア志向の人材をもっともっと育成すべきというのがまず前提としてあります。そしてその育成プロセスでは,ヨーロッパで行われているような博士課程での産学共同研究だけを要素とするのではなく,それの背景となるマインド,いわゆるベンチャーマインド等々も含めた,MOTも含めた,そういうマインドを修得させてこそ本当のイノベーティブな人材だということ,その教育を修士から始めるということで修士・博士一貫の教育プログラムとしています。
もちろん修士で,博士進学を諦めて就職する学生もいるでしょうが,それなりの資質は育成できると思っております。ただ,ここでのメインターゲットはイノベーティブな博士人材ということでお話しさせていただきました。

【内山田座長】  はい。

【藤嶋委員】  皆さん新聞の報道で既に御存じかもしれませんが,私たち東京理科大学では,博士の修了者を増やしていくことが一番大事だと思っています。現在,私たちの大学では,博士課程の在籍者がそれほど多くなく,280名程度ですが,これを500名くらいに増加させたいと思っています。このために,来年4月からは博士課程の学生に対して,審査を行った上で,審査に合格した学生全員について授業料を無償化することを決めました。正式に理事会等でも決めまして,授業料を奨学金の形で戻すことになろうかと思います。もちろんさらに,TAやRAとして雇用し,給料を支給することも考えていますが,なかなか全員とはいきませんで,一部しか行えないかもしれませんが,博士の学生を経済的に少しでもサポートしたいなと思っております。

【内山田座長】  博士を増やすのはいいと思うのですけれども,一度この政策はやったことがあって,随分ドクター人材を人数的にふやしたら,結局行き場がなくなってしまったという問題になったと思うのですよね。ですから,増やすことを目指すときは,この中でよく出ているマッチングというのがあらかじめ担保されてないと,安易に増やすとまた非常に困るということになるのではないかなと思います。
今,量の問題と,端的にいうと就職の問題があるわけなのですけれども,今現実には,実は本当に我々もよく大学から相談を受けているのですが,ポスドクの方の就職難ということで,企業はなかなかそういう人たちをうまく活用できてないというお話,これは現実にあります。一生懸命大学といろいろなことをやるのですけれども,それでもなかなか進展していかないと。それで,それはなぜかなと思ったら,企業というよりも,この人たちに行ってもらう職場がなかなか受け付けないのですね。さっきのインターンなどもやっているのですが,それでもなかなかうまくいかなくて,自分で実感したことしか御報告できないのですけれども,うまくいっている例というのが,社内を見ていても幾つかございまして,一つはやはり産学連携なのです。産学連携をやるテーマというのは,当たり前ですけれども,自分たちでは解決できないから産学連携をやっているので,そうすると研究室のポスドクの方とか修士の方がそのプロジェクトに参加してきて,特にドクターなどになると,あの人を欲しいと。今度産学連携を終わって自分たちでそのテーマを実行していくためには,やはりあの人が欲しいということで,ある意味一本釣りのような格好で来ているケース,まずこれは成功します。
もう一つは,これとよく似てはいるのですが,だんだん業務が我々の中でも非常に高度な専門性を要求するようになってきまして,例えばトヨタ自動車で言いますと,バッテリーの開発とか新材料の開発,燃料電池の開発,物ではないのですけれどもCAEの世界,コンピューターシミュレーションですとモデル化の技術とか,従来我々の中の人間が少しずつ勉強してやっていくのではとても時間が足りないということで,ある専門性の固まりのところができてきまして,そういうところと採用を上手にひもづけすると割と来ていただけるし,そういう人材をもともと欲しいということで職場も人事部に要望を出すものですから,こういうのはうまくいっています。
ちょっとびっくりしたのは,さっきのCAEの世界なのですけれども,実は子会社にエンジニアリング専門の会社があるのですけれども,そこは部署が何をやると決めたらそればっかりやっているという部署になっていて,そこにはCAEのグループにドクターが30人弱いるのです。うちには,本体にはCAEにはドクターが数人しかいない。なぜかというと,そこはドクターの方からみても,そこの部署に入れば,ずっと自分がやっていた研究をそのままやれる。だけどトヨタ自動車に入ると,入ってから何をやるかわからないという,これは大きな会社はみんなそうなのですけれども,そういう意味で我々も今,ひもつき採用,要するに来ていただければここの部署に配属しますよというのは,ロボットとかさっき言ったバッテリーとかハイブリットとか,そういう幾つかのものはそうやってきています。そういうところは高度人材が採れますけど,従来部署はなかなか,それよりも少し時代の若い人を採用して,自分たちで育てて自分たちの仕事の専門性をつけてもらう。要するに,大学よりも企業の方の専門性が高くなってしまっている。例えば構造設計,ボディーをやるとかエンジンをやるとかですね。そういうのを打破するためにも,やはり産学連携をもっと上手にやる,大規模な産学連携をやらないといけないのではないかと最近思っています。
最近,希望が見えているのは,内閣府のSIPで進められているエンジンの開発プロジェクト。さっきコンソーシアムというお話がありましたが,自動車会社9社がエンジンの研究組合をつくって,ナショナルプロジェクトに応募して,そこに大学が23校応募しているのですね。多分ほとんどのエンジンの先生が来ていますので,当然実際に仕事が始まれば,そこのドクターの方とか修士の方もみんな参加してくるわけなので,そういうところからも採用につながっていくのではないかなと思っていますので,1個やればいいというわけではないのですけれども,一つのキーは,産学連携をどうやって大規模に,これは企業側も努力しないといけないのですけれども,大学側も努力してやっていくかということではないかと思っています。
ほかに。どうぞ。

【松﨑代理】  内山田委員の今の御発言に続ける形で,企業側として発言いたします。これまでの会合で経済同友会のコマツの野路会長からも御発言があったと思いますけれども,経済同友会で議論しているのも,やはり産学連携をもっと深めるべき,広げるべきだというもの。そこが伊藤先生の今日の,スパイラルをどう走らせるかというところの一つのキーになるかなと私も思っております。そうすることによってお互いを知ることにもなるし,企業で活躍するにはどういうことが求められるのだということを大学にいてもなかなか気づかないと思いますけれども,それを気づく機会にもなるかなということが一つ。
もう一つは,企業の経営者が,これまでと時代が変わっている。今,内山田さんのお話にもありましたけれども,企業が競争していくには高度な技術がないと,これまでの各企業が持っていた技術分野とは違ったところで高度なものがないと,グローバルな競争で戦っていけないという認識をもたないといけない。
そうしたときに,海外の企業はドクター修了の学生さん,社員をいっぱい集めているわけですよね。これもこれまでの中で御発言があったと思いますけれども,人材競争ですから,そういう中で日本企業は戦っていかないといけない。だから,企業側として従来以上に積極的に博士レベルの専門性というか研究能力を持った,そのかわり企業で活躍するには幅というものも必要ですけれども,そういう人材を積極的に採用するのだというようにマインドを変えていかないとならないと思っております。
私も,ここへ来る前にいろいろ社内でヒアリングしているのですけれども,どうも食わず嫌いといいますか,想像してしまって避けているなというところがあるので,そこのところを打破していくと流れは変わるのかなと,このように思っております。

【内山田座長】  どうぞ。

【上野委員】  今の御発言に関連してちょっと,常々考えていることなのですけど,きょうの座長の御発言あるいは伊藤先生,福田先生の御発言で,産学協働ということが非常に大事だということ,できればそれについての財政的支援ということが大事だということも,私は全く同感です。しかし,もう一つ,従来大学が育ててきた博士,私自身の経験からいうと,本当に企業で主体的にリーダーシップをとって活躍できる素材ではないかというのは,私が育ててきた感じでいうと,相当意欲的で相当チャレンジャブルで,いろいろな意味で試行錯誤するという人たちだったと思うのですね。
したがって,どのような資質を具体的に求めておられるのか。大学院教育で具体的に今まで欠けていて,こういう教育を,是非こういう素養において育ててほしいという具体的な要望を大学としては是非頂きたいなというのがきょうの感想で,特に今の松﨑先生の御発言にそういうふうに思いました。よろしくお願いいたします。

【小畑委員】  今までの議論とちょっと視点が変わるのですが,これは猪股さんにお聞きしたいと思います。卓越大学院の説明をしていただきました。ここでの特徴というか取組で,今日,いろいろ博士課程の人材育成に関しての新しいチャレンジ的なことが紹介されました。この卓越大学院の中にも,パーフェクトにとはもちろんいいませんけど,一部でも同じような方向性を向いた取組があると思います。卓越大学院での新しい取組については今後も変更,あるいは更にバージョンアップする余地があるのかどうなのかということと,猪股さんの視点からみて,きょうのプレゼンの中で指摘されたものがどのくらい組み込まれているのか,その辺の御判断をお聞きしたいなと思います。よろしくお願いします。

【猪股大学改革推進室長  御質問ありがとうございます。概要のこの図はちょっとわかりづらいのですけれども,実は卓越大学院の方へ基本的方向性についての提言①から⑦までが矢印のようなものが向いているかと思います。卓越大学院は,この提言されたことを実現する舞台としてその設計を考えたいと思っております。
また,本日,産学共同研究の場に学生を参画させることがかなりのキーポイントだというお話がいろいろな方々から出ましたけれども,この卓越大学院構想の中で,この概要には載っておりません,本文の方になってしまうのですが,産学相互の信頼関係に基づいて学生が一人前の研究者として産学共同研究に参加し,そして学位を得るというプログラムにしていくべきであるという御提言を頂いております。詳細につきましては,実は先ほど申し上げましたように,今後産学官から成る検討会で設計してまいりますので,2つ目の御質問についてはこれからの検討ということになってまいります。本日の先生方のプレゼンテーションも大いに参考にさせていただきたいと思っております。ありがとうございます。

【内山田座長】  どうぞ,福田先生。

【福田副会長(スーパー連携大学院コンソーシアム)】  委員の先生方のお話の中で,博士人材というのが,現在のままでは,専門性は高くあって,その分野ではイノベーションを引き起こすかもしれないけれども,例えば企業内で別の部署に移ったときなどに,同等に活躍できるかについては問題が残るという御指摘があったかと思います。私は正確なところは把握できていないかもしれませんが,そういう問題はあり得ると思います。そして、それはこれまでも各所で指摘されているように,産業界と大学側との間で博士人材育成に対する価値基準がかい離したままであるからだろうと思います。
それで,私たちが進めておりますスーパー連携大学院では,修士・博士一貫のカリキュラムを産学官が協働してつくり上げるというシステムを取り入れているのです。まだ完全ではないかもしれません,フィードバックをかけながら改善に努めております。
産業界に寄与する高度人材という場合,どういう資質が必要で,どういう能力が必要で,どういうマインドが必要かということをカリキュラムの中に産業界からの意見も入れながら組み込んでいくというのが,先ほどプレゼンでも申しましたが,欧米,特にヨーロッパ等のシステムとは大きく異なっています。ヨーロッパでは産学連携というのを共同研究だけで捉えているシステムですが,日本では,修士段階の教育にも産学が協働するシステムを組み込むべきではないかということを,つけ加えておきたいと思います。

【横倉委員】  長期インターンシップの定着に関して,北野先生のお話の1ページ目,企業側も博士人材を活用し切れていないと書かれていらっしゃいますが,私の経験では,そんなに多くを採っているわけでもないですが,十分に活用しているという認識です。座長のお話にもつながりますが,冠講座をある大学と12年も続けております。大学の冠講座の教授には,我々が出した費用で運営できるよう就任いただいております。その配下の研究者と一体で共同研究を実施します。両者を行き来しながら,長年研究に取り組む中で,会社でも博士人材が育ち,大変うまくいっています。何度も出ていますように,産学連携がとにかくキーであり,今回の課題を推進する上で最も大事なところかと思います。
アメリカの学士と修士とドクターの給与の表は大変よい情報です。私も少し前の経験で,アメリカのテクニシャンが4万ドルで,エンジニアというのが修士レベルなのですけど,6万ドルぐらいでした。今日見て,なるほど同じような感じだなと思いまして,今も同じであることを認識できました。日本の企業については,以前,野路委員から,学卒と院卒の給与を同じにしたことがあるとのお話がありました。学卒と院卒の能力にあまり差はないという議論の中で出た話です。私は過去,アメリカでそういうのを目にしたことがあったものですから,かねがねと言いますか,もっと給与体系を大幅に,アメリカ並みに変えるべきだと思います。修士だと大学を出てから2年か2年プラスアルファ程度のところの初任給でやるのではなくて,まるきり変える必要があります。変えるには,例えば博士だったらどういう人材が必要なのか,先程来の博士に求める資質とか能力を考えてみるべきではないかと,今日聞いていた情報提供の中で感じたところでございます。

【内山田座長】  どうぞ。

【富田代理】  産学協働が非常に大切だというのは,私,企業出身ですから本当にそう思っているのですけど,内山田委員がおっしゃったように,企業は実際に現場にドクターを放り込んでみると,なかなか現場が使い切れないという現実も起きている。これは修士を卒業した人が3年経つと,企業の職種にもよりますけど,大体において大きな一つのプロジェクトを一つこなしている,経験をしている。その中で必要となる技術は,中で実は一生懸命勉強している。そういう意味で,3年間ドクターで勉強された方と何が違うかというと,恐らく勉強している仕方とか視点が定まっているというか,定められているということです。これまではこれでよかったのですが、これからは定められているというところに実は問題があって,そうではない知見がこれからは企業がどんどん必要になってくるので,産学連携は大事だと思っているわけですが、使いやすさから言えばこの点は大きいと思います。さらに、大きなプロジェクトとか,何かとにかくプロジェクト的なものを動かすというのは,大学の研究室でやれる規模から考えるとやはり限界があると思っています。ですから,そういうことを経験するということが,この3年間にできることが修士卒の社員としての経験として大きいと思います。企業によって違うと思いますけど,大体ドクター出た方の初任給と修士3年後の給与が,さっき言ったようにほぼ同額レンジでスタートするのですけど,スタート時点では,恐らくドクターで来た人よりも企業は使いやすいし,企業のカルチャーまでもっているという,こういう問題もあって,今なかなか企業が使いづらいといったのはそこにあるのかなと思っています。
ただ,今おっしゃったように,これからどんどん企業も一社主義でやることができなくなっていますし,企業の中にない知見というのを持って入って来られる方が必要になってきています。この場合,先ほど言われた,どういう給与体系で進めていくかということを考えていかないと,これから人材の流動性とかを推進していく上で問題は大きいと考えています。これからの人材の価値で給料は決まってきて,今のままでは下手をすると海外にどんどん優秀な博士の人間がとられていくこともこれからは起きると思うので,企業としては,今の人材の流動性とか給与体系の考え方とか人事制度に踏み込んでこういう議論を広げていかないと,実はうまくいかないなという反省が企業の中ではあります。
そういう意味で,今日の議論は大学の方がこういうふうに変わりたい,こうしたいということを言われることが多かったのですけど,企業も恐らく今ちょうど転換点に来ているので,企業の中でこういう議論をきっちりして,人材の流動性をどうやって進めてイノベーションを起こしていくのか。大学,博士,ポスドクをどう使っていくかということを真面目に議論する必要があると思っています。恐らく自分たちが今固めてしまった制度に制度的問題がいっぱいあるということに気がつくはずなので,そこら辺もやっていかないといけないと思います。それを解決するのに一番よい方法は,是非こういう幾つかやられている連携の成功例を露出していくことかと思います。これに乗り遅れると企業は負けるという感覚を多くの企業が持ち始めれば,こういう産学連携がどんどん進むのではないかなという気もしていますので,そういう宣伝も含めて是非進めていくことが重要かなと思います。

【内山田座長】  一般解かどうかわかりませんけど,うちなどでいっても,今のお話と大体同じで,ドクターをもっているからといって給料を上げるということはやっていません。基本的には,まず学齢が一緒だったら,年が一緒だったらまずベースは同じと。逆に言いますと,実務経験は少ないのですけれども,ドクターの方は給料が実務経験の割にはものすごく高いと言える。そこから先は能力評価になってしまうわけで,従来は,どちらかというと経験に基づくスキルの方が非常に能力として大きな分野を示していましたから,やはりドクターの方みたいに実務経験が少ないという人は,相対的になかなか上がっていかれないというか,職場もそういう人よりは長くやっている人を要求したのですが,だんだん今の話で専門性が要求されていくと,今度は同じ年齢でもドクターの方の専門性がはるかに高ければ,そこが評価されて,当然そういう中で専門職になっていくかマネジャー職になっていくかという分かれ道もどこかにあるわけですけれども,ドクターをもっていてマネジメントを志向される方は,まず専門性を生かして自分の評価を社内で上げて,その中でマネジメント能力も負けないように磨いていくというようなことだと今は思っています。
この間も本当にびっくりしたのですけれども,バッテリーの報告を聞いていたら,僕が思っていたよりもロジカルにすごく高い専門性があって,理路整然としていて,成果も出ていて,こんなにいい成果が出ているのだったらドクターをとればいいではないかと,どこかの先生に指導してもらって,と言ったら,もう彼はドクターですと。だから,そういうふうになっている,だんだんなってくる。自然と評価されると思うのですよね。
どうぞ。

【秋山委員】  今日のプレゼンテーション,議論を一通り聞きながら,今お話があったように,アメリカだとドクターで卒業された方の方が最終的には給料か高くなる問題ですとか,それに対して,藤嶋先生にデータをお示しいただきましたけれども,日本では,最も実学に近いエンジニアリングを修士まで勉強してきた人たちが博士には進まないということ。この違いをどのように理解したらいいのだろうかと考えたときに,私は,基本的にこれは市場価値,マーケットバリューの問題だと捉えるべきではないかと思います。
日本では、博士課程に行くことが自分の市場価値を高めるとは思えないというのが今の現状なのではないか。この市場価値の部分をどのように考えて高めていったらいいかというところで,前回も申し上げましたけれども,力を入れてトライするべきだと思うのが共同研究だと思います。なぜ共同研究が重要だと私が考えるかというのは,ただ単にマッチングするということではなくて,企業と一緒に仕事をするということは,必ず一定の時間軸で一定の成果を求めるということがなければ成り立たないわけなのですね。少なくとも私は,企業として共同研究をやるのであれば,一定の時間軸で成果を出す,つまり責任を果たしてもらうということを大学の研究室に求めます。
例えばアメリカの大学の研究者の先生方は,そういうプロジェクトを自分で営業してとってくるのですね。それはある意味,大学の研究室の先生が企業に対して結果をコミットする,ちゃんとやりますよ,結果を出しますよというような形で,ある意味仕事をとってきて,何らかの形で成果を出しているからこそそれが継続して,あるいは金額を増やしていくこともできるということだと思います。そこの部分を日本の大学の先生にも変わっていただきたいと思います。必ずしも全員になっていただきたいと思わないのです。市場性の高い研究を目指される研究室があって,そこには共同研究がたくさん生まれてくるということもあっていいし,もっとアカデミック一本やりでいかれる先生ももちろんいらしていいと思います。それがいい意味での多様性ということではないかなと思います。市場価値を大学側もどのように考えていかれるかということはとても重要だと思います。
一方で,今日,どちらかというとドクターをとられた方が使いづらいといったような話がたくさん出るので,あえて少し肩をもつようなお話をさせていただきますと,日本の企業の現場の感覚は,まだまだ予定調和的な年功序列のカルチャーが色濃く残っているところが多いと思います。そうしますと,自分より例えば2年生,3年生よりも年齢がいっている,年齢がいって年上の新人で,なおかつ自分が知らないようなことをいろいろ知っている,そういう新人が入ってくるということは,ある意味予定調和をざわつかせるような感覚が現場にあるのではないかと思います。企業側が変わらなければならないというのはそういう部分だと思いますし,今日いろいろ御発言いただいた中で,やはり専門性に対する認識が変わってきたというところがまさにそういう部分ではないかと思います。
以上です。

【北野代表理事(産学協働イノベーション人材育成協議会)】  先ほど企業側が博士人材を活用し切れてない,あるいは学生がうまく適応できていないという御意見を頂きました。これは押しなべての話で,先ほどから出ておりますように,ある企業だったりある部署であったりはずっとドクターの学生を採り続けていただいていて,本当にそこで活躍しており,ドクターなしでは回らないというところがたくさんあることも事実です。ただ,その状態はある種定常状態になっていて,我々これから量的・質的な拡大をやるためには,それを更に増やしていくというところ,伊藤先生がいわれているポジティブフィードバックでもう少し輪を大きくしていく,そういう努力を今後していく必要があると思っています。
給与の件も,そういうしっかり博士を採っていただいているところに聞くと,年が進むと結果的に彼らはたくさん給料をもらっているのだということは必ずおっしゃいます。だから,それはいいのですけど,学生にとってみると,頑張って博士に進学しても,採用時に評価されてない,後になって評価されるのだという,ある種の約束が空手形にならないかと心配になるわけです。やはり,何らかのインセンティブをつけてやることも必要かなと思います。
学生側から見ると,修士で就職するときと博士まで行ったとき,給与面もあるし,あとは多様性というか特定のところにしか行けないということで,やはり自分の進路が狭まったというような印象をもつわけで,そういう状況を是非打開したい。より多くの企業へ採っていただけるという状況を大学としてはつくりたいと思っています。
共同研究という路線もコアな部分としては大事だと思うのですけれども,多様性という意味では,先ほどいいましたようなインターンシップで少しテスト,試用をしていただいて,こんなところにもドクターは使えるではないかという状況を少し幅広くつくっていただく幅の部分。それから共同研究は峰の部分をつくる,そういう両面作戦で是非伊藤先生のフィードバックループが小さくならない,むしろ輪が大きくなるように,何とか努力,御協力をいただければというふうに思っております。

【内山田座長】  本当におっしゃるとおりだと思うのですよね。今何か一つやれば全部解決するという状況にはなってないぐらい,これはクローズアップされている課題なので,よかれと思うことをいろいろ組み合わせながら今から変えていくということを,我々はやらないといけないと思うのです。
今までの繰り返しになるかもしれませんけど,幾つか大きな理由があったのは,企業,特に日本でこれまでボリュームが大きかった製造業が,正直言いましてまだまだドクターを必要としてなかったというのが大きいと思うのですね。そういう中でも必要としていた日立とか東芝みたいなところは,日立などはものすごくドクターが多いわけですね。これはやはり必要としていたからだと思うのです。繰り返しになりますけれども,今はだんだん一般的な製造業も,次のステップに行こうとするとブレークスルーが必要で,そのためには高度な専門人材が要ると。そういうことを知っていただくにも,産学連携をやらないとそういうことに双方が気付かない。産学連携というのは,どんどん進めることによって,アカデミア側にも産業界ニーズがこういうところにあるのだと,こういう領域にあるのだということが現実問題としてわかっていただけるのではないか。それをマッチングとか見せ合うとかそういうことばかりやっていても,何か議論しているだけで,実際に動かした方が,ちょっと時間はかかりますけれども,確実かなという気はしています。ただ,さっきのインターンシップとかいろいろな仕組みは,同時並行的にやる必要は今十分あると思います。

【伊藤会長(八大学工学系連合会)】  私,こういう提言を携えてあちこちの企業様ともお話ししておりまして驚きがあるのは,企業様の方もかなり変わってきておられて,ある会社では,マスターだ,ドクターだということは気にしない,場合によっては日本人とか留学生とかを気にしないと,とにかく能力のある者を採るのだと。枠を外してみると,理工系で採る場合に,20%ぐらいはドクターをもった人がやってきたというふうなこともおっしゃっています。実際そういう会社の研究所,開発部門ですと,やはり15~20%ぐらいはドクターをもっているのだと,当たり前だというような感じでおっしゃる。大変私としては驚きでございまして,私どもで用意した資料をちょっと引っ込めさせていただくようなこともあったような次第です。
どうしても話を画一的に議論すると危ないということがありまして,理工系と一口にいいますけれども,藤嶋先生のデータにもございますように,工学と理学ではかなり状況が違っておりまして,工学なら就職で苦労しているポスドクというのはそんなには多くないと思うのです。もちろん統計的な話ですけれども,それなりに30歳ぐらいまでに職を得て活躍しているというケースが多いのではないかと思いますので,その辺ちょっと注意は必要かなと思います。
それから,企業の方に聞きますとドクターに対する評価,確かに一部にはばらつきが多いという批判もありますけれども,総じていいますと,それなりに訓練を受けていて,それなりの活躍をしてくれているというポジティブな意見の方が多かったように思います。1つ,私,非常に気になったことですけれども,ある会社の方が,今ドクターをもっている研究者には外国人もおれば日本人もおりますと。ただ,その両者を比べたときに,日本人の方がどちらかというと子供っぽい,外国人のドクターの方が大人びてみえると。実情はどうか知りませんが,その違いは,やはり経験値の差ではないかというふうにおっしゃいました。つまり,ドクターを出るまでにいろいろな研究室を経験しているとか,インターンシップを経験しているとか,海外派遣を経験しているとか,いろいろな経験値をもって上がってくるので大人びて感じますということをおっしゃる。これは私,今の大学の教育で少し反省すべきところがあろうかというふうに思っております。
それから産学共同研究,私は非常に大事だと思っておりまして,これまであるテーマに関して1対1で共同研究をやっていたというレベルではなくて,異次元の産学連携というのを是非お願いしたいなと思っています。それは,採用も場合によってはありきで,インターンシップも,共同研究の中でインターンシップをすると非常にうまくいく。あるいは奨学制度,そういうものも共同研究の中でやればかなりうまくいくのではないか。その辺が一つの解決の糸口になるのではないかなというふうに私どもは期待しています。ヒアリングを受ける立場で申し上げて恐縮なのですけど,そんなふうな印象をお伝えさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【内山田座長】  どうぞ。

【藤嶋委員】  今の伊藤先生の工学と理学の違いという点については,いろいろと私もよく考えていることであります。博士課程の学生がそれほど多くない時代は,博士へ進学後,皆ほとんどがアカデミアの大学に残るということになっていました。それが,博士の在籍者数がどんどん増えてきましたし,更に最近では,全国的にも,特にアカデミアの助教のポストがすごく限られてきています。しかも,ほとんどの助教は任期制ということになってきています。ポスドクもかなり厳しい状況です。アカデミアにずっといようとすると,すごい競争になります。
このような厳しい状況にありますので,アカデミアへの道だけでなく,企業に行って活躍する人材を増やした方がいいと思います。これには,やはり企業に博士修了後の人材の待遇をよくしていただかなければいけないと思います。特に理学系を出た人材への配慮をお願いしたいです。先ほどの伊藤先生のお話のように,工学系で機械系でしたら引っ張りだこの状態ですが,バイオ系や純粋な基礎系は就職先が非常に少なくなっている状況にありますので。大学間競争の中で,特にこれから私学はかなり厳しくなってくると思います。アカデミアのポストの数も増えることはなかなか期待できない状況です。やはりどうしても企業で待遇をよくして博士課程修了者を採用していただくことが一番大事なことではないかなと思っています。

【内山田座長】  どうぞ。

【松﨑代理】  博士課程を出た人材の処遇という点ですけれども,伊藤先生の今日のスライド11,アメリカの場合には博士人材が年を追うごとに収入が増えていく図について,この図の見方は,博士課程を出た人を特に優遇しているというわけではないのですよね。つまり,スタート時点でもちろん差はついているけれども,その後,年を追うごとに差がつくと。これは何を意味しているかというと,アメリカは成果主義ですから,実力世界ですから,博士を出た人の方が学部卒や修士卒の人よりも結果を出すということをあらわしているのですよね。それは企業の中でより重要な仕事につける,結果を出すことによってより有能な仕事につける。そこでまた結果を出すと。そのスパイラルでこうなっていると。
今,当社では,将来を左右する重要なプロジェクトがあるのですが,そのリーダーはイギリス人のPh.D.です。私が一番できる人に任せろといったらば,イギリス人のPh.D.がリーダーをやっているのですよね。その人材が今,日本の技術屋,アメリカの技術屋,欧州の技術屋,ビジネスサイドの人間ともコミュニケーションをとってプロジェクトを進めておると。私がいろいろ質問しても,それに対する回答というのは,そこまで考えているかというぐらい深さがあるのですよね。そういう結果だと思います。

【伊藤会長(八大学工学系連合会)】  今のお言葉なのですが,これも私が申したわけではなくて,企業の方から指摘されたのですが,ドクターを出たから修士を出たからといって給与に差をつける,企業はなかなかそこまではいかないと。そうではなくて,今の表でもそうなのですが,修了後15年ぐらいたって初めて差がつき出す。ドクター出の方が給料がよくなるというのは,その方が専門力でとがっているとか,あるいはマネジメント能力にすぐれているとか,そういう素質をもっておられる方がやはり(博士に)多いのだということで,そこで差がつくのではないかと。おっしゃるとおりだと思います。
ですから先ほど申しましたが,非常にロングスパンで考えないと(教育効果は)なかなか表に出てこないのです。我々大学人ができることというのは,そういう遺伝子を組み込むことかなという気がしています。教育課程の中で,やれインターンシップだ,やれ何だといったところで,そんなにすぐに成果が上がるものではないのですが,少なくともそういう遺伝子になるようなものを教育課程の中に組み込んでいくことが大事で,それは10年,20年後に花開くという形だと思います。

【内山田座長】  この話もまた今日も尽きませんけれども,そろそろ時間も来ますので,今日の皆さんの御意見を,博士人材の育成,活用というところにつきまして出た意見をまた宮本さんのところで上手にまとめていただいて,次回はまた次のテーマに移りたいと思います。
それでは,さっき言いましたように,事務局の方でたたき台をまたつくっていただくということになりますので,それに対して皆さんで意見を出すということで,だんだん収束というか,我々からの提言になれるようにもっていきたいと思います。こういう進め方で,今日みたいな進め方で,我々,あるテーマで有識者の方に問題提起していただいて,みんなでディスカッションしてそれをまとめて,また次にそれに対してやっていくというやり方で進めていきたいと思いますが,そういうやり方でよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
では,次の日程について,宮本室長から案内を頂きたいと思います。

【宮本大学連携推進室長】  次回の日程につきましては,12月18日の10時から12時,場所は決まりましたら御連絡をさせていただければと思います。また,今座長からもありましたが,行動計画等の案を我々事務局で考えて、委員の皆様と議論させていただきたいと思っております。また並行いたしまして,委員の皆様からもこういったことをやったらいいのではないか等の御意見やアイデアございましたら,御連絡を頂きたいと思っています。御提出方法等につきましては、事務的より別途御連絡させていただきます。

【内山田座長】  それでは,本当に長時間にわたって熱心な御議論を頂きまして,ありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。

――了――

 

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-- 登録:平成27年12月 --