資料4-1_高等専門学校の充実に関する調査研究協力者会議におけるこれまでの議論の概要

高等専門学校の充実に関する調査研究協力者会議におけるこれまでの議論の概要(第1回~第4回)

1.今後の高専教育の在り方と充実方策

 1.日本の高等教育体系における高専の位置付けと今後,高専教育が担うべき人材育成の在り方
 (1)高専教育の現状とこれまで育成してきた人材
   ・高専教育の一番の特徴は「中学校卒業後という早期からの専門教育」という点。この仕組みは世界にも例を見ないものであり,維持しなければならない。
   ・高専生は専門性が高い一方で経験,視野,多様性等が不足しているとの評価がある。
 (2)高専の位置付けと人材育成の在り方
   ・各高等教育機関の人材育成に対する役割分担を明確化しつつ,他の機関とは異なる存在意義や機能を明らかにする必要がある。
   ・「教育の質が高い」というブランドを大事にして,高専の独自性を打ち出し,国内や海外で貢献する方策を検討する必要がある。
   ・大学との違いが重要な論点となっているが,現在,卒業生の4割が進学しているという実態が高専制度創設時と違ってきていることを踏まえて充実方策を検討する必要がある。その際,特に,高専卒業生を受け入れることをミッションとして設立された技術科学大学との関係についても検討する必要がある。
 (3)高専が担うべき人材育成に必要となる修業年限
     <現状の本科5年(+専攻科2年)の意義を認める意見>
   ・学生は,高専入学時には,必ずしも編入学や専攻科進学を考えているわけではなく,修業年限が5年なので入学している。入学後,5年で就職したり,より高度な学問を求めて大学に編入学したり,専攻科に進学したり,と入学後も様々な進路の選択肢があることが現在の高専の良さである。
   ・学生が5年間の密度の濃い教育課程の中で専門性をしっかりと身に付けることができるのが高専教育の強みであり,これは続けていくのがいい。
     <7年一貫教育にするべきとの意見>
   ・5年間の教育課程では時間的にも制約があるため,7年一貫としながらその学びに多様性を組み込んだ体系的な教育課程とすべき。
   ・現在の5年の修業年限中,PBL等の多様の学びを取り入れているが,高専のカリキュラムは既に飽和状態である。仮に7年の課程にするのならば7年一貫のものとしてカリキュラムを見直す必要がある。
     <その他>
・15歳で高専に入学した後,自分は理系に向いていないと気づいた学生が他の大学等へ進路変更することができる,という点は維持すべき。
   ・本科卒業後に専攻科に進学したり大学に編入学する者を多いと捉えるか少ないと捉えるかが重要なポイントとなる。

 2.優秀な学生の確保のための方策
 (1)入学者の現状と学生の確保のための方策
   ・高専の情報を中学生や保護者に伝えきれていない。中学校での進路指導の際に熱心な生徒が高専を志望し,それを受けて教員が情報を集めている状況を改善する必要がある。
   ・高専入学生は親兄弟も高専出身という場合が多い。実態を本当に知っている人が高専に入学するという状態である。
 (2)学生の確保のために必要な方策
   ・高専入学後の進路が多様に広がっていることを,中学生の段階で知ってもらうことが必要。
   ・高専教育が実際に機能していることをわかりやすく見せるため,資格取得を目的としたカリキュラムがどれだけ揃っているか,という点を示していくことが必要。
   ・高専生の資格取得の実績やコンテストの受賞の状況,卒業生がどれだけ活躍しているか,という点をPRすることが必要。

 3.専攻科の充実に向けた方策(定員の在り方を含む)
 (1)専攻科卒業者の評価
   ・大学院の面接の際,専攻科卒業者は,学部から進学してくる学生とは全然違っており,自立していると思う。
   ・7年間同じ高専で専攻科に行くことは,同じ環境に閉じこもることであり,マイナスに働かざるを得ないと考える。
 (2)専攻科の充実方策
   ・本科5年+専攻科2年の中でどのような人材を育成することを目的としていたのか,という点をまず再確認することが必要。その上で,5年+2年の教育課程において,インターンシップを行ったりビジネスを学ぶなどして専門以外の幅広い知識を身につけさせ経験値を上げることとするのか,専門分野の知識・技術をより深めて理系分野を徹底的に学ばせることとするのか,を,企業とも意見交換しつつ,考える必要がある。
   ・専攻科への進学を志望している学生が多いのであれば定員を増やすべきである。

 4.教育を支える経営基盤の確保に向けた方策
  ・教育の質(特に実験・実習の水準)を維持するため,教員数や教員の能力を維持する方策を考えるべき。
  ・大学など他の高等教育機関との連携や地域との連携も進めるべき。特に,地域産業界から実務家教員を迎えれば人件費も抑えられるのではないか。


2.地域・産業界との連携

 1.地域・産業界に貢献する人材育成のための方策
 (1)現在の地域・産業界との関係
   ・現在,高専は,共同研究や受託研究,技術相談など,地域の企業と密接に連携している。
   ・地方の中小企業には高専生のインターンシップを多く受け入れたいと思っているが,受け入れても結局県外に就職してしまう,という矛盾がある。
   ・例えば情報通信の分野では,都市部に最先端技術が集まっており,エンジニアも集まっているため,卒業生はどうしても都市部に就職してしまう。
 (2)地域・産業界に貢献する人材の育成方策
   ・全国に広く設置されている高専を各県の地方創生に活用する方策を検討する必要がある。
 (3)高校から高専への編入学の促進方策
   ・高校からの編入学者を受け入れることも必要だが,特に理数系の学力について不足する場合もあり,入学前の夏休みから補講を実施するなど,個別にケアすることが必要。

 2.高専教育の評価の向上に向けた方策
 (1)高専卒業者から見た評価
   ・高専生は即戦力である等の評価を受けている一方で,企業に就職してからの評価が大学卒と高専卒で違うように思う。具体的には昇格試験を受けられる時期などに差がある。そのためか,専攻科や大学に進学してから就職しようと考える高専生が多いと思う。
 (2)企業から見た高専生の評価
   ・高専生は自分で考えて実践できるなど自立している者が多く,企業からの評価は高い。ものづくりを続ける人もいるが,マネジメントも含めて昇進している人も多い。
   ・企業は高専生に対して実践力を期待しているが,高専生は入社後の伸びしろ,企業に貢献する力を兼ね備えているのも事実。専門分野にとどまらずに活躍することができる場を用意することも考えられる。
 (3)高専生の評価,社会的認知の向上のための方策
・プロコン,ロボコン等の課外活動の活動状況をもっとPRすればよい。
   ・各高専が地域の中学校やコミュニティ,地場企業に対してもっと積極的にPRすべき。例えば高専卒業後5年経ったところでフォローアップを行い,どれだけの資格を取ったか,などを調査してみてはどうか。高専卒業者と高専を出て大学を卒業した者とを分けて,企業の評価を聞くことも一案。
   ・企業は20歳で入社してきた高専卒業生を育てることができる。企業の中で専門性以外の多様性を獲得する人材もいるため,そういった人を育成することのできる部署に配置するということなども考えるべき。


3.国際化への対応

 1.高専の技術者教育のグローバル化のための方策
  ・7年間の一貫教育の中で外国での長期インターンシップなどの環境を与えることでモチベーションが上がり,更に伸びるのではないか。
  ・今後国際的に活躍するエンジニアになるためには,5年の教育課程の中でも英語は必須である。中国語の強化を目指す形もあってよい。

 2.留学生交流の更なる促進のための方策
  ・大学生と同様,卒業が遅れることもあって,高専生は留学に行きたがらない。留学のきっかけとなるように学寮などで留学生と一緒に過ごせる場を活用することも考えられる。
  ・大学院以上では留学生に英語で学ぶことのできる環境を提供することが一般的となりつつある。一方で,高専では,高専生の英語力の問題もあり,留学生に対しても日本語での授業を行っている。英語による教育の実施に向けた取組や,高専生を英語でコミュニケーションのとれる人材に育成することが課題である。

 3.高専制度の海外展開のための方策
 (1)高専による海外支援の現状について
   ・高専の良い点は,早い段階からの技術者教育,実践的な教育,少人数で基礎から実践までの丁寧な教育,であり,即戦力になる人材を20歳で得たいというニーズに対応できること。高専が支援を行った学校は,支援終了後,それぞれの国で指導的・モデル的役割を果たす機関として自立して運営されている。
   ・支援対象機関の目的,支援対象機関の当該国における所管官庁・学校制度・必要とする人材のレベルなど,支援案件の実態は多様である。
   ・日本の高専教員が現地で活動していたり,日本で学位を取得した現地の教員も多いため,支援対象の学校は大変親日的になっている。支援を行った高専との間で連携協定を締結したり教員とのつながりが維持されることで,支援終了後も関係が続いている。
   ・海外展開に従事する教員のいる高専の学生は,先進国と開発途上国を知ることで多様な世界を知ることも期待できる。他方で,近年は教員が多忙になっていて,国際協力に向ける余力が減っているといわれている。
 (2)高専制度の海外展開のための方策について
   ・高専の海外展開により,共通基盤をつくり,工業的・文化的な強い絆や日本文化への理解などが生まれ,将来的に貿易にもつながっていくことを目的として,現在のように点として動くのではなく,全体的な大きな枠組みの中で国際化戦略を立てることが重要。その際,開発途上国とだけ連携するのか,他の国をどのように考えるのか,も要検討。
   ・開発途上国のニーズに応じて,高専の良さを活かしながら,どのような機関に対してどのような協力を行うのかを検討することが必要。他方,単に要望に応じるのではなく,全体像の中で,何を輸出するのか,どのようにサポートするのか,JICAと高専がそれぞれどのような役割を果たしていくのか,を検討することが重要。
   ・教育制度が異なっているため,教育の在り方については対象国との間で十分に協議しながら進めることが必要。資格社会である途上国ではエンジニアの資格が重要であり,中卒者対象の5年教育という枠組みに拘泥せずに柔軟に対応すべき。
   ・国際協力をすることによる日本の学生への教育効果についても視野に入れるべきである。

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