高大接続システム改革会議(第14回) 議事録

1.日時

平成28年3月25日(水曜日)13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省 東館3階 講堂
(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 「最終報告(案)」について
  2. その他

4.出席者

委員

(座長)安西祐一郎委員
(委員)荒瀬 克己,浦野 光人,岡本和夫,恩藏 直人,金子 元久,香山真一,河野真理子,小林 浩,佐藤東洋士,佐野 元彦,長崎 榮三,長塚 篤夫,南風原 朝和,羽入佐和子,日比谷潤子,宮本久也,山極壽一,山本廣基の各委員  

文部科学省

 (文部科学省)土屋事務次官,前川文部科学審議官,藤原官房長,関政策評価審議官, 小松初等中等教育局長,常盤高等教育局長,杉野私学部長,伯井初等中等教育局審議官,義本高等教育局審議官,松尾高等教育局審議官,河村国立教育政策研究所長,瀧本総務課長,増子会計課長,小林国際教育課長,今井初等中等教育局高校教育改革プロジェクトリーダー,新田高等教育局主任大学改革官,塩見大学振興課長,橋田大学入試室長 他

5.議事録

(1)「最終報告(案)」について
資料1,2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【安西座長】  時間でございますので,ただいまから第14回高大接続システム改革会議を開催させていただきます。
委員の皆様におかれましては,御多用の中お集まりいただきまして,誠にありがとうございます。
まず,事務局から配付資料について確認をお願いいたします。
【新田主任大学改革官】  失礼いたします。議事次第にございますとおり,本日配付資料1で最終報告(案)という資料,それから資料の2,高大接続システム改革のスケジュール(案)という資料,それから机上の方に,本日御欠席であります五十嵐先生から1枚,最終報告(案)についての感想ということで頂いておりますので,机上配付させていただいております。落丁等ございましたら,事務局の方に合図していただければと思います。
以上でございます。
【安西座長】  よろしいでしょうか。
本日は,前回,3月11日に審議をさせていただきました内容を踏まえまして,最終報告(案)について審議を行わせていただきます。最終報告(案)につきましては,この会議で今年度内を目途に取りまとめるということを予定しておりましたけれども,本日,委員の皆様には,これまでの審議経過を踏まえまして,最終的な御議論をいただいて,最終報告を取りまとめたいというふうに思いますので,よろしくお願いいたします。
それでは,議事に沿って進行を進めさせていただきます。
まず,事務局から資料の説明をお願いいたします。
【新田主任大学改革官】  失礼いたします。では,資料1を御覧いただければと思います。最終報告(案)ということで,前回,11日に御議論いただきました資料からの修正点を朱書きにした資料ということになってございます。
1枚おめくりいただきまして1ページを御覧いただきますと,目次の方は黒字になっておりますけれども,修正内容を溶け込み済みにしております。それで御覧いただければと思います。修正については,各ページの地の文で御確認いただければと思います。全体,1番で検討の背景と狙い,2番で高大接続システム改革会議の基本的な内容,それから3番で具体的方策ですが,1で高校教育,2で大学教育改革,3で大学入学者選抜改革,それぞれ(1)のところでそれぞれの基本的な考え方という構成に整理をしてございます。それから,めくっていただきまして目次の2ページでございますが,最後の4番で今後の検討体制等という構造でございます。
3ページでございます。1検討の背景と狙いということで,7ページまでが1になっております。ここのところは,前回,幾つか記述を付け加えることが必要だということにつきまして,記述を加えてございます。今後の社会が変動していくという一つ目の丸を受けまして,二つ目の丸のところで,将来的な今後の産業構造であるとか社会ということが予測できないと。そのような中で確実に言えるのは,そういった時代だからこそ,こういった資質・能力が重要になることだけが確実なことであるということで,次の丸に、こうした資質や能力というのは,知識・技能を受動的に習得する能力が重視されたこれまでの時代の教育では十分に育成することはできないので,抜本的な教育改革を進める必要があり,このような教育改革というのは,我が国の命運を左右すると言っても過言ではないという記述を付け加えてございます。
それから,めくっていただきまして,学力の3要素をしっかりと育成することが重要であるという中で,4行目,5行目ほどにありますけれども,こうしたことは,社会人や留学生も含めた多様な人々が集い,学ぶ場としての展開としても不可欠な課題であるという旨,記載してございます。
そして,次の丸からが現状ということですが,学習指導要領でも受けられていて二つ目の丸,これらを踏まえ,小中学校においてはという現状。それから,次の丸で高等学校についてはということで現状と課題。次のページに行っていただきまして,次の丸が大学教育においてはということですが,前回,大学教育改革の進展やそれを受けた現状等についても記載してはどうかという御意見と,それから最後から2行目のところにあります,入り口ではなく出口を充実させていくという視点にもっていく必要があるという御発言がありましたので,入れてございます。
それから,これらを受けて,高大接続改革の必要性ということのフェーズですけれども,一つ目の丸のところで,こうしたことから,高校教育と大学教育の改革の断行が焦眉の急である,また,入学者選抜は本来はその一部に過ぎないけれども,両者に大きな影響を与えるので,高校・大学入試を一体的にシステム改革として位置付ける必要があるという記述にしてございます。そして最後の行のところの丸ですけれども,資質や能力を育成する場である高校教育,あるいは大学というのは,我が国社会の基盤を形成するための公共財というべきものであること。また,世代を超えた経済格差の再生産を防止することにもなるということ。こうした学校教育の公共性に鑑みれば,関係者はもちろん,広く社会全体で知恵を出しながら早急にその実現を図る必要があるという記述を加えてございます。次のところからは,文言について調整および少し加えているということでございます。
8ページから11ページまでが大きな2の改革の基本的な内容ということでございます。ここで,8ページのアで高校教育,9ページのイで大学教育改革,それから,その下のウで大学入学者選抜改革,それぞれで骨子としてはどのようなことをするのかということが記述してありますので,分かりやすくヘディングを付けたということでございます。
ちょっと戻っていただきまして8ページ中ほど,基本的内容のところの最後のところに,こうしたことで以下の政策に取り組んでいく,その際ということで,加速する技術革新,又はそれらを生かした教育の革新等も見据える必要があるということについて記述を付け加えてございます。
また,9ページ下の注11を御覧いただければと思いますけれども,前回アクティブ・ラーニングということについて,これまでなかなか定義がないので分かりづらいという御意見もございましたので,アクティブ・ラーニングの視点からの学習・指導方法の改善ということにつきまして,少し注を充実させております。
それから中ほどでございますが,「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー),それから「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラム・ポリシー),「入学者受け入れ方針」(アドミッション・ポリシー)と書きまして,前回までは,この後,全部片仮名表記の方を優先しておりましたけれども,関係者以外の人からは片仮名表記ではちょっと分かりづらいというような御意見もございましたので,次ページ以降からは全て漢字表記,日本語表記の方を優先するという形で,これは全て溶け込ませておりますので,御容赦いただければと思います。
それから10ページ以降でございますけれども,10ページからは段階を踏まえた着実な実施,11ページの最後のところで,今後,こうした充実した取組が円滑に行われるよう十分な支援に取り組む必要があるという部分について加筆をしてございます。
めくっていただきまして,12ページから62ページまでが3の具体的方策についてという部分でございます。36ページまでが高等学校教育の改革でございますけれども,(1)高等学校教育改革の基本的な考え方ということで,先ほどもありましたとおり,ヘディングを付けて分かりやすくいたしております。
それから,13ページが(2)で教育課程の見直しでございますけれども,中央教育審議会で現在,議論をいただいていますので,その主な内容であるという旨,ヘディングで分かりやすくしてございます。
(3)学習・指導方法の改善と教員の指導力の向上という15ページでございますけれども,15ページから取組の前提から始まりまして16,17と,こちらも提言されている内容と中央教育審議会での議論内容ということを分けて整理をして記載してございます。
(4)多面的な評価の充実,ここからが21ページまでございますけれども,ここは基本的には語句の調整のみとなっておりますので,ぺらぺらとめくっていただければ結構かと思います。それで21ページからを御覧いただければと思います。
21ページからが(6)「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の導入,ここが21ページから36ページまでございます。導入の考え方のアから始まりまして次のページまでは語句の調整だけですが,24ページを御覧いただければと思います。
24ページのイからが「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の基本的事項ですけれども,丸の1目的,そして丸の2で対象者がございますが,赤くなっているところの2行目,前回,希望参加を基本としてということと,学校又は設置者の判断によりという記述が混在していて分かりづらいということがございましたので,整理をいたしました。また,一番最後から2行,次のページの1行目までですけれども,要は,配慮することが必要な,人と機会と場所等の記述が混在しておりまして分かりづらくなっておりましたので,整理をいたしました。それから,25ページでございますけれども,一番下,丸の5,多様な関係者との協働体制の構築ということで,問題作成等に対する高等学校教員の参画のほか,教育委員会関係者であるとか民間等,様々な関係者が連携協力して取り組むことができる体制を構築するということで付け加えてございます。これは前回,学校関係者も参加して巻き込んだものにすることに意義があるという御発言がございましたので,これまで図などでは書いてございましたけれども,記述としても明示したということでございます。
26ページからがウで,「高等学校基礎学力テスト(仮称)の基本的な仕組みということですが,丸の1,対象教科・科目,丸の2,問題の内容,次のページに行っていただきまして,難易度の設定の部分でございます。朱書きの部分がございますが,これは実は難易度設定についての記述でございますけれども,前回は対象者で難易度を記述するような記述で分かりづらいということがございましたので,難易度の設定という観点からの記述に書き改めております。これが27ページの難易度の設定の部分でございます。
ここから36ページの最後のところまでは,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」に関しましては記述の適正化を図るというような修正のみでございますので,3ずっと読み飛ばしていただければ結構かと思います。ですので,37ページまで飛んでいただければと思います。
37ページから約5ページ,41ページまで大学教育改革でございます。そのうちの(1)大学教育改革の基本的な考え方ということで,その一番下に,前回,これまで大学教育というのは入り口に注目していたけれども,これからは出口を重視していく必要があるという御発言がございましたので,書き加えてございます。
それから(2)三つの方針に基づく大学教育の実現のための方策ということでアでございますが,一つ目の丸のところで,2行目にそれらの間の密接な関係が重要だという記述がございましたので,その赤い部分はめくっていただきまして次のページに5行ほどございますが,いわゆる三つのポリシーの一貫性,それから関係性ということについての説明書きの記述を加筆してございます。また,中ほど,大学ポートレートに係る部分につきまして,大学ポートレートの積極的な活用とありましたけれども,また,それに合わせてポートレート自体の充実の必要性ということにつきましても加筆をしてございます。
それから,39ページのウでございますが,教学マネジメントの確立というところで,冒頭3行ほど赤い朱書きがございますけれども,教学マネジメントの確立という点で,先ほどの出口を意識してのPDCAサイクルの確立ということで加筆をしてございます。40ページ,41ページまでが大学教育改革ですけれども,語句を補っているということでございます。
42ページをおめくりいただければと思います。42ページから62ページまでが3の大学入学者選抜改革でございます。(1)の大学入学者選抜改革の基本的な考え方,それからページの下の方にあります(2)個別大学における入学者選抜改革,52ページに(3)として「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の導入という3段構成となっております。
(1)の基本的な考え方の最後のところでございますが,その際ということで,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」が導入される32年度,それから次期学習指導要領下が入学してくる36年度が大きなポイントであることを加筆してございます。これは前回の御議論でも,少しその改革についての工程を示せないかという御発言がありましたので,記載しております。
それから43ページからが三つのポリシーに基づいた学力の3要素を多面的・総合的に評価する入学者選抜の改善というところで,評価方法の例として次のようなものが挙げられるという記述の下に,今後ということで「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」が導入されということで,次のページの2行目までございますけれども,学力の3要素の評価,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」,それから個別選抜との関係性について整理したものの記述を加えたということでございます。それから44ページ,多様な背景を持つ受検者の選抜ということで,一つ目の丸,二つ目の丸とありまして,45ページ最初の4行,それから次の丸とございますけれども,前回の御発言でもありました次世代への視点ということと,それから国際化への視点という観点から,少し記述を加筆してございます。
それから次,46ページからが新たなルールづくりということで記載をしてございますけれども,46,47とありまして,48ページでございます。注の74というところでございますが,一般入試についての課題の改善の中で作問の改善というところで,中央教育審議会において,特に歴史系科目や生物などについての用語が膨大になっているということについての御議論を記述してございましたが,同様にといいますか,なおということで,実は同じようなことが日本学術会議でも提言されているという旨がございましたので,加筆をさせていただきました。
それから,以降49ページからがウで調査書,提出書類等の改善ということでございます。50ページの推薦書の見直しの下に,本人が記載する提出書類の多様化や内容の充実ということで,そのような情報を記載することによって,高校生本人がみずからの進路について主体的に考える機会が増えというところに赤で3行記述を加えてございますが,前回の御議論の中でも,また,教員自身からもそういう指導が必要だと,また期待されるという御発言がございましたので,これにつきまして記述を加えてございます。
それから51ページから,下ほどエで,個別選抜改革をするための支援ということでございます。
次の52ページからが,上,(3)「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の導入でございます。ここから62ページまで11ページございます。アの導入の考え方,それから,イの基本的事項ということで少しずつ記述を補ってございます。それから54ページ中ほどでウからが具体的な仕組みということで,ここから62ページまでございます。記述,説明を丁寧にということで,加筆を少しずつ加えております。54,55,それから56,57とございます。58,59ということで,最後少しずつ記述の方を丁寧にしています。58ページを御覧いただければと思いますけれども,一番下の3行のところで,記述式の採点方法・体制という中で,前回,採点業務とその補助ということと,新たな技術,それから人工知能(AI)というような言葉が少し分かりづらいという御議論もございましたので,記述の方を注と合わせまして少し整理をしてございます。というのが58ページの赤い部分,注の93と合わせましての加筆でございます。
それから,めくっていただきまして60,61ページでございますけれども,丸6,CBTの導入,丸の7,実施回数の在り方ということで61ページ,加筆又は削除がございますけれども,基本的に前回,複数回実施の考え方という記述の中で,特に四つ目の丸のところで,別日程とすることも含めて検討しているということの記述がここに出ることによって,そのことと複数回実施の議論ということとの関係性で,むしろ誤解が生じるというような御議論もございましたので,文章の適正化を図っているというのが61ページの修正でございます。
めくっていただきまして62ページまでが入学者選抜改革でございますけれども,63ページが4でございます。前回,全体としてペンディングとさせていただきました今後の検討体制等ということでございます。
まず,(1)高大接続システム改革の推進・検討の体制についてということで,一つ目の丸にありますとおり,高大接続改革自体については,今後,中央教育審議会で引き続き議論が行われる事項,答申等に基づいてもう実際に具体化が進められるもののほかに,特に下の(2)から(4)については,それぞれ体制を整えて具体的検討を進める必要があると。併せて,高大接続改革全体の進捗状況の把握とともに,総合的かつ着実に推進するための体制を,文部科学省において設けるという二つ目でございます。
(2)が,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の今後の検討ということでございますが,丸の1行目にありますとおり,本最終報告を踏まえて,幅広い関係者に対して意見交換等を行うことを通じて,さらに検討を進めていくこと。また,専門家の協力等も得まして,実証的・専門的な検討を行うこと。31年度からの試行実施に向けまして,29年度初頭には実施方針,30年度初頭を目途に実施大綱を策定・公表するということ。
それから(3)入学者選抜改革についてですが,アの個別大学入学者選抜につきましては,丸の1行目からにあります新たなルールの策定,あるいは調査書の様式の改善等といった入学者選抜実施要綱の見直しを中心とした事項につきましては,大学関係者,あるいは高校関係者からなる改善協議の場において検討を開始いたしまして,29年度初頭を目途に各大学に予告するとともに,32年度に実施される入学者選抜から適用するということでございます。これは49ページと51ページにも同じことが記載されておりますけれども,まとめて書いてございます。それから,イの「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」でございますけれども,丸の1行目の終わりからにあります本最終報告を踏まえまして,関係団体等の参画を得まして,技術開発の動向等も勘案しながら,実証的・専門的な検討を継続的に行う体制を整備して検討を行うこと。名称の在り方についてもその中で検討すると。32年度からの実施に向けて,29年度初頭に実施方針,31年度初頭を目途に実施大綱を策定・公表するということでございます。
最後,(4)でございますが,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」,それから「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の実施主体についてということでございます。頭の二つの丸は,答申における御提言内容ということでございます。一つ目の丸のところで,二つの新テストの実施主体について,大学入試センターを抜本的に改組した新たなセンターとすることが提言をされ,また,その新たなセンターではさらに個別大学の入学者選抜などの支援を行う等の機能も担うものとされているという,二つ目の丸でございます。
次の三つ目の丸のところで,「大学入学希望者学力評価テスト(案)」につきましては,入学者選抜として大学が共同実施する性格のテストであるという点については変更ないことから,新たなセンターにおいて実施することが適当であるということ。次の丸でございますが,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」につきましては,新たなセンターにおいて実施することとするというこれまでの経緯を踏まえまして,国において実施すべき基幹的な業務,それから安定的な運用体制の確保,民間事業者等との関係,学校設置者との関与の在り方等に留意をした上で,具体的な在り方について検討する必要があるとして,全体としまして,これらを踏まえて,今後,文部科学省において,実施主体としての適切な在り方を検討し,具体化をするというのが最後の丸でございます。
1枚おめくりいただきまして,ページはついてないのでございますが,別添資料2というものをお付けしてございます。高大接続システム改革のスケジュールということですが,これが資料2として別立てでお配りしているものでございます。これにつきましては,これまで,前回でもそれぞれで提言されている内容,また,今後進む改革について工程感を示してほしいという御意見,御発言等ございましたので,見やすいようにいたしました。記述している内容については実は新しいことではないのですが,その記述内容につきまして見やすく工程表の形でお示しをしたということでございます。1枚目が高等学校教育の改革ということで,教育課程の見直しのスケジュール,それから,学習指導方法改善,教員の指導力の向上,多面的な評価の充実,そして最後の段が「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の導入に係るスケジュールのチャート図でございます。2枚目が,大学教育改革につきまして,三つの方針に基づく大学教育の実現ということとともに,下が認証評価制度の改革の工程表ということ。次のページの3枚目が,入学者選抜改革につきまして,上段のところの「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の導入実施に至りますチャート図に対して,下の段の個別大学の入学者選抜改革,入学者選抜実施要綱の見直し等に係るフローにつきまして図示したということでございます。これは合わせて最後の別添資料2としてお付けするということでございます。
資料の方は以上でございます。
【安西座長】  ありがとうございました。
それでは,ただいま御説明いただいた事項等も含めまして,御意見,御質問を頂ければと思います。どなたでも結構ですので,よろしくお願いします。
浦野委員,お願いいたします。
【浦野委員】  御説明ありがとうございました。大変分かりやすくなってきたというふうに感じております。その中で,1点だけ少し引っ掛かるところがあったものですから,質問というか修正というか。
5ページの一番下の丸,「先行きの不透明な社会にこぎ出していく」から始まって6ページにつながっていって,「世代を超えた経済格差の再生産を防止することにもなる」と。ここまでは本当だと思っていて,このことを付け加えていただいて大変有り難いのですが,その後の3行が,このつながり方からいくと,高大接続システムが実現すれば再生産の防止になるというふうにつながっていると思いますけれども,この問題はもちろん,皆さん方御承知のとおり,経済的な問題も含めて様々な視点があるわけですね。ところが,今回のこの高大接続システムというのは,学習内容の在り方も含めて,テストという視点でいくと,要するに受験技術だけではないということをもうはっきりうたっていますので,そういう意味では一定の大きな役割はあるわけですね。
したがって,例えばですけれども,「防止することにもなる」の後は,再度,公共性というのは抜いて,「高大接続システム改革は,このような困難な課題にも少なからず役割が果たせるよう,国として明確な方策を」というふうな形で,この改革がこのことに非常に大きな役割を持っているのだけれども,それだけではないというニュアンスを漂わせていただいた方がよろしいかと思ったものですから。
以上です。
【安西座長】  ありがとうございました。今,浦野委員のおっしゃったように読めるとも思いますので,私も修文できればというふうに思います。ありがとうございます。
金子委員,お願いいたします。
【金子委員】  今のところ,確かにこのままだとちょっと通りにくい,分かりにくいのかもしれません。ただ,心としては,基本的にはこれはむしろ「高等学校基礎学力テスト(仮称)」でもって一定の必要な学力を確認するということが,経済格差の拡大を予防するという意味を持つということは,多分込められたのではないかと思うので,そのことが分かりやすいような表現にするということが必要だと思います。
【安西座長】  おっしゃるとおりだと思います。
香山委員,お願いいたします。
【香山委員】  そのことに関連して,3ページの上から丸三つ目の4行目ですが,「次代を担う若い世代はもちろん,社会人を含め,これからの時代を主体性と協働性を持って生きる力を身に付けたいと感じる全ての人が」とありますが,その力は感じなくても付けないといけないところだと思います。なので,例えば「これからの時代を生きる全ての人が」という感じで,書いていただけたらと思います。
【安西座長】  ありがとうございました。
山極委員,お願いいたします。
【山極委員】  ありがとうございます。44ページ,ここに「『主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度』の評価をより重視すべきである」という文言があるのですが,この「態度」,これは同じような文言が45ページから47ページ,48ページ,さらには52ページに出てくるんですね。態度を評価できるかということなんです。態度というのは外形的なものですから,やはり能力を評価することだと思います。この中に恐らく,言うなれば思考力・表現力・判断力というようなことも含まれていると思うので,何かやはりちょっと違う文言にしていただいた方がいいのではないかなと思うのですが,どうでしょうか。
【安西座長】  事務局からお願いできますか。
【橋田大学入試室長】  その点でございますけれども,こちらの「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」なんですが,3ページ目の下の方にございますように,今回,学力の3要素を構成する柱の一つということで,非常に重要な要素として捉えております。この高校時代に培われたこの要素を,個別選抜の部分でも多面的・総合的に評価していただくという観点で,より個別選抜ではその面も重視してというところでございますけれども,実際,この学力の3要素に関連して,どういった内容のものを求めるかというのは,三つの方針に基づく入学者選抜の受け入れ方針に基づいて,各大学の方で適切に評価していただくというふうに考えております。
【山極委員】  それは分かるのですけど,態度を評価できますか。
【安西座長】  私の方で申し上げて,今の態度を直接評価できるかということは非常に本質的な問題だというふうに私も思います。ただ,一方で,個別の大学におかれましては,入学者選抜において,やはり「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」,これを今,外的とおっしゃいましたけれども,内的にも持っているかどうかということを見ていただきたいという意味だというふうに思いますので,能力の評価ということとは多少違った意味付けになると思います。
このフォームはどういうふうに書くかということは,こちらで検討させていただければとは思いますけど,大事なところなので,ほかの方も御意見を頂ければというふうに思います。
南風原委員,お願いいたします。
【南風原委員】  ありがとうございます。最後の回だということですので,少し振り返りと,今後に向けての意見を申し上げたいと思うんですけれども。
この1年間で,少しずつ現実的な方向に変化はしてきていると思うのですけれども,それでも主にテストに関しては,現実との乖離は,いまだ非常に大きいというふうに感じています。その点を確認した上で要望を1点申し上げたいと思いますが,確認は3点に絞ってお伝えしたいと思います。
まず一つ目は,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の方ですけれども,そこでの乖離というのは,うたい上げていることと現実の技術水準との乖離です。うたい上げていることというのは,複数回の実施,複数レベルを用意,同一レベルで複数のテストを作成,それでもってすべてを1本の共通尺度に位置付ける,かつ意欲を喚起できるものにするということなんですけれども,まず1本の共通尺度にというのが,現段階では技術的な裏付けがない話ではないかというふうに思います。
二つ目は,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」についてですけれども,ここでは記述式を入れるということによって,様々な期待というか想定されるメリットというのが挙げられています。57ページにまとめられていると思うんですけれども,丸3,記述式問題の導入ということで,1行目の後半から,「今後重要となる複数の情報を統合し構造化して新しい考えをまとめる思考・判断の能力や,その過程を表現する能力をよりよく評価するためには,記述式問題を導入することが有効である」と。それから,その次の丸ではそういった「記述式を導入することにより,高等学校教育においても,習得・活用・探求の学習過程における言語活動等の充実が促され,生徒の能動的な学習をより重視した授業への改善が進むことが期待できる」というふうに,期待,想定されるメリットというのが書かれているわけですが,ここでの乖離というのは,そういう期待,ないしは想定されるメリットと現実に行おうとしていることとの乖離です。
現実に行おうとしていることというのは,単文の記述式である,それから条件付きの記述式である,そして,採点はその条件に適合しているかどうかをチェックするというものであると。悪い言葉で言えば,ちょっと中途半端な記述式ということになるかと思います。国立大学の二次試験などでやっているような本格的なものであれば,先ほどのメリットの最初のもの,思考・判断能力とか表現というものは測れるかもしれませんけれども,そういったものと,今,実際に行おうとしている条件が合っていれば正解とするという,短い記述式でこういったことが実現できるかというと,これはかなり離れてることだと思うんですよね。
それから,もう一つの想定されるメリットである言語活動とか探求活動へのよい影響というもの,これも非常に,あるいはもっと疑わしいと思います。これについては,国立大学の本格的な記述式の試験でさえ,そういった探求活動を促す力があるかどうかという疑問も持てるぐらいですので,より簡単なもので,どこまでそういったことが可能なのか,うたい上げている期待,ないしはメリットと現実に行おうとしていることとの乖離があるかなと思います。
三つ目は,個別大学の試験についてですが,これは今,山極先生が言われたことと同じです。これは何の乖離かというと,目標そのものが現実離れしていると思います。今言われたように,44ページ,個別の選抜においては「『主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度』の評価をより重視すべきである」と。まず,これをよく考えて見たんですけれども,やっぱり非常に難しい作業であるということですね。全ての大学がこれをより重視していくという未来像が非常に,何かとても現実味を持ってこない,想像できないんですね。そういった具体的に何をするか分からないものを,全ての大学がより重視すべきだというふうにここに書いてしまうのは,やはり問題ではないかと思います。
それで,この最終報告の中で期待できることとして,今後,実行に向かって実証的・専門的な検討を重ねていくということが数か所に書かれていますので,そこに私は期待したいと思います。ともかくやるんだということでもって,その上で検討するのではなくて,今申し上げたような乖離が十分に埋まって,大丈夫だとなったらやるんだというところを確認して進めていただきたいと。一つの大学だけであれば実験的に新しいことをやるということもあるかもしれませんけれども,全国の大学の選抜に関わる非常に重要なことですので,慎重に進めていただきたいというのが今後に向けての要望です。
長くなりまして,すみません。
【安西座長】  ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
佐藤委員,お願いいたします。
【佐藤委員】  様々な御意見の中,ここまでまとめてこられたことに,まずは敬意を表したいと思います。その上で,大学,特に私学の立場から見たときに,今,日本の私学が負担している教育の割合は,学部では8割になっていまです。そういう意味でこういう改革は,私学も共有しているのだという思いを持って報告書を受け止められるようなものに,わずかでもできないかと思います。
例えば,37ページに大学教育改革とあります。そこの,2番目の丸の最後に大学教育に課せられた使命であるとありますが,この部分に,「国公・私立を問わず」とか,全部で取り組まなければならないというようなことを,入れていただけないかと全体を見て思います。多分,このまとめが出た後,それぞれの大学で,コピーをとったりしますが,非常に一過性のものになってしまうということが往々にしてあるので,やはりこれは自分たちの問題ですということがその中で受け止められるような形に少しでもしてもらえると有り難いと思います。
【安西座長】  ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
香山委員,お願いいたします。
【香山委員】  「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の位置付けについて,目次の部分が気になっておりますので質問したいと思います。
「高等学校基礎学力テスト(仮称)」がローマ数字の3の1の(6)という形で位置付けられていますが,これも多面的な評価の一部ではないかと考えられますので,4番の次にあって,この多面的な評価の中には,目標に準拠した評価とそれから個人内評価があると思います。この目標に準拠した評価の一部として,こういうペーパーで測るテストがあり,あるいはパフォーマンス評価等で測るものがあると思います。先ほど議論になった態度もパフォーマンス評価で測るという観点で考えた場合は,ある程度測れるのかなという気もしているんですけれども,それはともかく,そういうふうに位置付けてみた方が構造的かなと感じているのですが,ページ数との関係でこうなっているのであれば,それもそうなのかなと思いつつ,この位置にあると何か大学入試の方にシフトしやすいような感じもしまして,まずは,本丸は高等学校教育の改革であるということであれば,位置付けを上にしていただくというのがいいのではないかと思います。それが1点です。
それから2点目は,これは設置者がチェックをして,学校もチェックをして,施設策が上向いているかどうかと,PDCAを回していくために使われるツールであるという位置付けだろうと思うんですが,このPDCAは非常に分かりやすいですし,是非実行していきたいと思うのですが,片や大学教育の改革において,では,同じようなPDCAがどんなふうに回るんだろうというところが,この最終まとめの中で私には少し見えづらいという感じもしまして,そのあたりについても教えていただけたらと。
以上2点,よろしくお願いします。
【安西座長】  事務局からお願いいたします。
【今井高等教育改革プロジェクトチームリーダー】  失礼いたします。最初の御質問の件でございますけれども,申し訳ございません。まず,香山委員の御指摘の考え方で,私ども全く同じだと思っております。構造上は,教育課程の見直し,それから指導方法の改善,そして多面的な評価の中に「高等学校基礎学力テス(仮称)」トが位置付けられというのは,もう全くそのとおりで我々も考えておったのですが,実は,この文章を作成する中で,この4番の中の「高等学校基礎学力テスト(仮称)」が占める分量が余りにも多うございましたので,恐縮でございますが,(6)として取り出して,最後にまとめて書いたというのが編集上のイメージでした。ただ,概念的にはそれを入れているということです。
ということで,実は,このPDCAは「高等学校基礎学力テスト(仮称)」も含めてでございますので,一度,事務的には(5)を「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の後ろに持っていったのですが,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」がやっぱりかなり制度設計をしっかりしなければいけなかったので,ちょっと並びを見ていたときに少しずれがあるのかなということで,恐縮でございます。事務局の提案としては,今回のような形でお出しさせていただいたということでございますが,何か工夫ができるかどうかは検討させていただきたいと思います。
【安西座長】  よろしいですか。ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
恩藏委員,お願いいたします。
【恩藏委員】  先ほど,私学のことが出ましたので,私も少しだけ補足をしたいと思います。
今回,高等学校のレベルの違いについては繰り返し議論して,それに対する配慮,あるいは取組に関する記述というのは非常に充実していると思います。,実は大学も,今日の状況を見ますとレベル面で非常にばらけています。特に選抜性の高い大学もあれば,多分今回の議論の出発点になっている,ほとんど選抜のないような状況で学生が入ってくるような大学もあったりする。そういった中で,例えば,今回の「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」が導入された場合,大変多い私学の中でも,一部の私学にとっては利用しにくいかもしれないという印象を持っています。要するに,この「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」では十分な選抜ができない,あるいは適切な評価もできないかもしれない,そんな気がしています。
高等学校基礎学力テスト(仮称)については,たしか大分前に議論して,数年間,まとめの中にも盛り込まれていましたけれども,入試には使わないことになっています。今回のまとめについて,私は,これはこれでよくできていると思います。是非,今後の課題としてか,あるいは引き続き,大学も実は非常にレベルがばらけていて,そこに対する教育をどうするかについても検討して欲しい。恐らく,三つのポリシーの中で各大学が取り組めばいいことだとは思いますけれども,それだけで本当に十分かどうかということです。三つのポリシーを明確化して,各大学がそれに対して意識を高めようということが明確にされているので,その点は私は評価したいと思います。しかし,果たしてそこだけで今後十分なのか。選抜のところと各大学のこれからの取組,その点については,何らかの形で引き続き御検討いただけたらと思っています。
以上です。
【安西座長】  ありがとうございました。大学のいろいろな意味での多様性については,2014年12月に出ました中央教育審議会答申にはかなり書いてあったと記憶しております。それが,ここでは入っていないので,その答申の文面も参照しながら,これからいろいろ検討していただければというふうに思います。ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。
小林委員,お願いいたします。
【小林委員】  1年間,いろいろ議論を重ねてきまして,このようにまとめていただきましてどうもありがとうございます。その中で3点,ちょっと確認というか意見をさせていただければというふうに思います。
1点目が,59ページにあります英語多技能を評価する問題というふうに書いてありまして,この中に話す,書く,聞く,読むことの四技能を重視するというふうに書いてあるのですが,この「重視する」のままでいいのか。例えば,重視しているけれども二技能でいいのかどうかとか,三技能の何か検定試験もあるそうなんですけれども,ここら辺というのは,何か表現として四技能の導入を推進するというふうにするのか,それとも「重視する」のままでいいのかというのは,ちょっと御確認いただきたいなというふうに思っております。これから,将来に向けて使える英語力というところをどう定義して,それをどのように入学者選抜等に活用していくかというところに関係すると思いますので,ここら辺のところの記述がちょっと一つ気になりました。
それから二つ目ですが,これはちょっと細かくなるんですけれども,答申というか最終報告書が64ページありまして,さらに資料がついているという,ある意味戦後初めての大きな改革だというふうに私は思っておりまして,それをやはり現場でどのように高校・大学・社会に浸透させていくかという,非常に大きな課題だというふうに思っております。その中で,今回,別添資料2で工程表を付けていただいたのは非常によいと思うのですが,いろんなところに説明というかお話をするときに,例えば31年から「高等学校基礎学力テスト(仮称)」,34年に学習指導要領が入って,35年に今度は「高等学校基礎学力テスト
(仮称)」の本格実施があって,32年に「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」があって,それから36年に新学習指導要領に適した「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」が入ってくるという,順番がかなり入り組んで入っておりますので,この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」や「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の導入と,新学習指導要領の関係性が分かるような図にしていただけると,特に現場の方では分かりやすいんじゃないかなと。どこが試行でどこが本核で,学習指導要領の新しいところとどこが絡むんだというような質問をよく受けるものですから。そこら辺のところを別添資料ではありますが,一つ分かりやすくしていただけるといいかなというのが,これからの現場への浸透で重要かというふうに思っております。
三つ目が,去年の8月に出ました教育課程部会の論点整理の中には,2030年の社会と子供たちの未来というふうな表現で始まっている論点整理があります。この最終報告も,多分その大きな流れで作られているというふうに思っております。ただ,いろいろお話をしていきますと,何か入試改革がメーンのように捉えられているところもありまして,先ほど申し上げた31年とか32年とか36年が終わりではなくて,その後に向けて引き続きこの改革は続けていくというようなところを考えますと,例えば11ページのところの段階を踏まえた着実な実施の最後のところにいろいろ年度が入っておりますが,それにとどまらず,未来の子供たちのために改革を続けていくというような文章を入れてもいいのかなというふうなことを考えた次第でございます。
以上でございます。
【安西座長】  ありがとうございました。この四技能のところは,文科省はどうでしょうか。
【橋田大学入試室長】  「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の関係でも,この四技能の評価は推進していくという前提ではございますけど,その上で,実際の実施方法との兼ね合いで,どういった体制でやっていくかというところを含めて検討していく必要があるというところで,こういう整理をさせていただいております。
【安西座長】  「重視する」でいいということでよろしいでしょうか。【小林委員】  これから検討していくということですか。
【橋田大学入試室長】  そこのところは,当然,四技能の評価は推進していくというところですので,書きぶりはどういうふうな形にするかは,まさにこの場で御議論いただいてお決めいただければと思います。
【小林委員】  はい。別のこの英語の会議の方でも今日,午前中にありましたけれども,これを四技能にするのか,それとも二技能でもオーケーなのかというような議論が出ていたというふうにお聞きしましたので,ちょっと確認のためにお聞きしたという次第でございます。
【橋田大学入試室長】  いずれにしても,こちらの方も修正する形で対応させていただければと思います。
【小林委員】  はい。分かりました。
【安西座長】  小松局長,お願いいたします。
【小松初等中等教育局長】  そのあたりの表現については,御意見を踏まえて検討するということでよろしいかと思いますが,今,御確認の午前中の会議は私も出ておりましたので,その点だけ補足させていただきます。
四技能間のバランスのとれた英語教育というのをしっかり進めていこうということについては,様々な表現があっても一致していると思います。それから,きょう,その中で事例の発表などもあったんですけれども,その個別の事例の中には,かなり厳格に四技能というものを介して,例えば入学試験でそういったものを取り入れる場合に,しっかりしたものであっても三技能のものは一定の評価をしないで,あくまでも四技能でやろうというような例も紹介されておりました。そういう意味では,四技能のバランスのとれた英語教育をしていくということを,ここにもその会議の名前が引用されておりますので,基本的にはそれに沿った形というか,すり合わせた形で表現されるのがよいと思います。
ただ,そのときちょっと思いましたのは,私どもは初等中等教育の立場でございますが,入学試験でそれをどのように考えていくかということについては,それを非常にそういうふうに厳密にやるか,あるいはある程度ウエートなどが違ってもいいかというようなことについては,それぞれ各大学で考えていかなきゃいけないというような前提も御発言の中から感じられたところでございます。
したがいまして,その辺の表現ぶりをこの関連の会議の表現ぶりとも併せて考えるのが円滑かと思います。しかし,いずれの表現をとったといたしましても,この四技能のバランスのとれた英語の力を付けていく,英語というか外国語といってもいいのかもしれませんが,その教育の力を付けていくという点は共通ということで,しっかり位置付けられるようになると非常に全体としてバランスがとれるかなというふうに考えます。
補足でございます。
【小林委員】  ありがとうございます。
【安西座長】  ありがとうございました。
それでは河野委員,それから宮本委員,山極委員,お願いいたします。
【河野委員】  ありがとうございます。まずは1年間,いろいろな意見が出た中,大変御尽力いただきありがとうございました。本日は最後なので,感想という形と,細かい点ですが,一つ確認をさせていただきたいと思います。
まず,感想として,特に3ページの背景のところに社会の実情というか課題をきちんと盛り込んでいただきまして,ありがとうございました。その中で、社会の課題,教育,そして入試に関わることという流れが全体の頭の部分にありますので,非常に分かりやすく,ありがとうございます。先ほどからも意見が出ていたのですが,ただ,それがどのぐらいうまく反映されていくのかというところは今後の課題になっていくのかと思います。問題等の問題です。
もう一つの感想としては,先ほど,6ページのところで経済格差の部分を書いていただきまして,ありがとうございました。ここについては,これからよりよく生きるために勉強していくというか,勉強することがよりよく生きることにつながるというところが,見えてくる部分だと思うのです。もっともっと具体的に言うと,正規と非正規の問題とか。ただ,その待遇の差も、これからどうなるかをちょうど検討されている最中ではありますが。どちらにしても生涯賃金の問題など関係してくる深い問題があると思います。ですので,もう少し働く力につながるみたいな雰囲気がどこかにあるとよろしいかという感想は持っていたんですけど,非常に入れづらいのはよく分かりましたので,働くことのできる力を身に付けるということの大切さもちょっとどこかでニュアンスが出ればと思いました。
最後に,本当に細かなことで恐縮なんですが,最後になって三つのポリシーについて,今回は中に入れ込む形で片仮名はなくすという形だったのですけれども,それをもし浸透させようとすると,括弧で全てに入れ込んでいて,読むときに意識させるという手もよくあるんですけど,今回は取ってしまうのでしょうか。それは確認だけお願いします。
【新田主任大学改革官】  よろしゅうございますか。
今の,先ほどの9ページのところの漢字表記と片仮名のところですけれども,一番最初に出てくるそれぞれの何々方針,何々方針のところには,括弧でアドミッション・ポリシーなど,それぞれポリシーというのを書いた上で,それぞれ以下のところでそれについて言及するときには丸々方針という漢字の方を優先させたということでございます。現に,その大学関係者等でディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシーというふうに使っている部分もありますので,全部消してしまうとそっちまでなくなってしまいますので,一番最初のところにはそれがありますということなので,関係性を示すために載せました。ただ,この報告につきましては,大学関係者のみならず,高校関係者やその他の方々も読まれますので,この報告書としては漢字表記の方を優先させていただいたということでございます。
【河野委員】  漢字表記の後に,括弧でずっと付けるという形はとらないですよね。
【新田主任大学改革官】  はい。そうしますと,恐らく,もともとその片仮名表示だけにしても実はそれなりの長さがあって,逆にビジュアル的に読みにくいと思いましてこのような形にしております。
【河野委員】  そうですね,分かりました。ありがとうございました。
以上です。
【安西座長】  ありがとうございました。
申し訳ありません。荒瀬委員が先ほどから札を立てておられるのをすぐそこで見逃しておりまして,申し訳ありませんが荒瀬委員からお願いいたします。
【荒瀬委員】  申し訳ありません,ありがとうございます。3点申し上げたいことがあります。
一つは,先ほど香山委員がおっしゃった「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の位置付けといいますか,ほかとの関係ということで考えてみますと,この文章の多面的な評価の充実という17ページからスタートする中で,19ページの部分なのですが,19ページの上の,丸2とあって多様な学習活動の評価の在り方というところで,三つ目の丸のところには民間検定等ということが出てきていますし,四つ目の丸のところでは,専門高校校長会で実施する検定試験を含めというような具体的な文言がこうしてできています。ところが,こういったところに「高等学校基礎学力テスト(仮称)」が出てきていないというところに関わりの薄さというんでしょうか,つながりの分かりにくさというのがあるのではないかと思います。
実は多面的な評価のワーキンググループの中でも,これは私の不徳のいたすところですが,どうもテストの方はテストのワーキングで御検討になっていらっしゃるということもありましたので,ついつい,当然,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」は話題にはなりますけれども,そこのところが十分に強調できなかったという,御報告の中でもできなかったということがありますので,こういったところに盛り込んでいただければ,全体として分かりやすくなるのではないかなと思いました。まずこれが1点です。
2点目は,山極先生のおっしゃいました44ページ以降たびたび出てくるという主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度という,これは前ページから続きで,いわゆる学力の3要素ということでこうして出てくるわけですので,ある種,セットのものみたいな感じで使われてしまっているということが言えるのではないかと思います。
これは実は,そもそもの学校教育法30条の学力の3要素ということを考えましたときにも,基礎的・基本的な知識とか,あるいは技能とか,活用力といったようなことは割合初等中等教育においても分かりやすいものとしてあるわけですけれども,じゃ,どうすれば学習意欲を育てられるのか,あるいは学習意欲がどの程度あるのかというのをどう判定するのかというのは,これは大変大きな問題といいますか課題,テーマであろうかと思います。
ですから,こういった表現というのは当然出てくるのだろうと思うんですけれども,では,主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度というのをどのように測っていけばいいのかというのは永遠に解決しづらいこととしてあるということについては,むしろ高等学校に対するアピールとしても必要ではないかということを思います。
でなければ,大学の方でこれを評価するのは大変難しいということですけれども,大学の方で評価されるとなれば,高等学校の方でどう付けておくのか,どのように見える形にするのかというのがさらに難しい話になってきますので,そこらあたりのことに触れていただくのか,あるいは何らかの形で今後検討していくのかということをお考えいただければなと思います。
三つ目は,11ページに関することです。私は以前,大変,不穏当といいますか,この会議がなかなか明るくないというふうなことを申し上げたことがありまして,その理由は,問題がよく分からないということと,それからまた,こんな大きなことをするのに,お金はどうなっているんでしょうかということで,これはたしか今井さんがお答えくださったと思いますが,しかるべき方法でしかるべき対処をいたしますというふうなお答えで,ますます明るくならなかったというように思うんですが,11ページに付け加えていただいたこととして,「国は,高大接続システム改革を通じ」というこの4行の文章ですね,これはとてもよろしいかと思います。是非国としてどのようにしていくのかというのを十分考えていただくということが必要だろうと。その中で,もちろんこれは義務教育で行われている全国学力・学習状況調査とは異なりますので,取り扱いも当初考えていたことから少ししっかりと見た上でやっていこうということになりましたので,その点はよいかと思うんですけれども,でも,スタートするのはスタートするわけですから,ここで得られた情報を国としてしっかりと把握していただいた上で,それを各都道府県とか政令市とかに返していただくといいますか,十分に分析もしていただきながら返していただく。その際,気を付けなければいけないのが,全国学力・学習状況調査と同じような形で,どの県が何位であるかとか,どの学校がよいか悪いかとか,そういう話になってしまうとこれは困るわけですけれども,その点,十分注意していただきながら,是非把握していただいた上で,それを各都道府県に返していただいて,それぞれの高校教育改革につながるような促し方というのをお願いしたいと思っています。
さっき,11ページにこうして書いていただいて,大変よろしいことだと申しましたけれども,まだまだ弱い気がいたしておりまして,もっとしっかりと予算取ってきてやるぞということが明らかになるぐらいの書きぶりはちょっと思い付きませんが,国が果たすべき役割とか取組についての記述を是非補強していただければなということを思います。
以上です。
【安西座長】  ありがとうございました。
それでは,宮本委員,お願いいたします。
【宮本委員】  ありがとうございます。1年間の議論で出た方向性や課題をよくまとめていただけたと思います。
問題は,やっぱりこれを具体的にどう実際に形にしていくのか,進めていくのかということだと思います。そういう点で,今日のこの最終のまとめでは63ページのところに,改革の実現に向けた今後の検討体制等という,これからどうしていくのかということがここで初めて明らかになったわけです。そこのところについてちょっと確認をしたいと思います。
まず,(1)のところで,全体の推進・検討等の体制を作るというふうに書かれていて,これを見ますと,こういう全体を推進していく,見ていく機関を新たにお作りになられるというふうに読めるんですけれども,それでいいのかどうかということが一つ。
それから,二つのテスト等については,それぞれに対して検討する,検討するというふうに書いてありますので,これについては,それぞれの課題について具体的に検討する,そういうふうな場面も,機関といいますか,そういうものを,それぞれの課題に対して設置をしていくという。資料2のところを見ますと,例えば「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の導入のところでは,実施方針の策定に向けた検討という中で様々なことが書かれてありますし,3枚目のところの「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の導入についても同じように書いてありますけれども,これはそれぞれの課題について,それぞれ別の検討の機会を設けていくという。
また,個別大学における入学者選抜改革についても,これも協議と書いてありますけれども,新たに協議をする機関を設けるというふうな形で理解をしていいのかということです。
かなり今回はいろいろな方向性が出た一方で,先ほど南風原委員もおっしゃいましたように,具体化に向けてはかなりたくさんの課題も当然出てきているわけで,これらをやはりそれぞれのところで当然検討していくということも大事でしょうけれども,改革全体としてしっかりと見ていくという,そういうふうな場も必要だと考えるんですが,そのあたりの今後の進め方についてお聞かせ願いたいと思います。
【安西座長】  これは文部科学省の方でお願いできればと思います。
【新田主任大学改革官】  ありがとうございます。まず,(1)の全体の推進体制についてという,特に二つ目の丸のところにつきましては,今回は有識者会議であるシステム改革会議の方から設けるべきであるという御提言を頂いて,それを今後,文部科学省の方でどのように受け止めるのかということで検討していきたいと思います。
ただ,これは,似た機能の部分については,文部科学省の中に実は既にある部分もありますので,そことの整理も含めて今後受け止めさせていただくということでございます。
それから,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」,個別入学者選抜,それから「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の検討体制についてということで,それぞれ別々に書いているということでございます。それぞれの枠組みで検討していくと。中でも特に個別選抜改革については,入試要項の見直しということになりますので,入試要項については従来から改善協議の場で議論しておりますので,そちらということになりますのと,あと「高等学校基礎学力テスト(仮称)」,それから「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」については,今後さらに専門的な議論をしていく枠組みも必要ですということについて,今回御提言いただきましたので,それを踏まえて私どもとして受け止めさせていただくということでございます。
なお,これらを連絡調整するといいますか,検討の進捗状況を把握する必要があるということから,先ほどの(1)のまとめる機能が省内には必要ですねということが御提言されているものと認識しております。
【宮本委員】  ありがとうございます。
【安西座長】  私の理解でも,この高大接続システム改革,4月から文部科学省においてきっちり推進していただくと。その全体をまとめる部分が(1)に書いてありまして,一方で(2)と(3),63ページから64ページに掛けてですけれども,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」,個別大学における入学者選抜,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」,それから実施主体,これらについてそれぞれ省内で検討の場を設けて鋭意検討していただくと,こういうふうに理解をしておりますけれども,そういう考え方だということでよろしいでしょうか。
ありがとうございます。それでは山極委員,お願いいたします。
【山極委員】  今の質問とほとんど重複してしまいますけれども,私もそれはすごく気になっていまして,今回,最終まとめで「高等学校基礎学力テスト(仮称)」と「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の位置付けははっきりしたと思うんです。ただ,たくさん積み残した課題があるということと,この二つはやはり随分相互に関連を持って進めるべきものであって,独立になかなか,技術的な問題はそれぞれ独立に審議していいと思うんですけれども,実施検討に際しては,かなりいろいろ緊密な連絡を取らなくてはいけないと思うんですね。ですから,個別に全く独立してこれからやっていって,ただその二つの調整をするというだけでなくて,やはりこれまで出てきた積み残しの問題についてきちんと検討するという会議をこれからも持っていただきたいなと,これは私の希望です。
それから,実施主体としては,この二つのテストを新たなセンターで実施するということなんですが,それについても,やはり今までの実施主体ということも併せて検討する,これは実施をどういうふうに持っていくか,複数回の実施だとかいろいろな検討課題も残っていますから,お金の問題もありますし,それから作問,採点,どういうところから人材を持ってくるかということもございますので,是非ともまとまった形でのワーキンググループなり検討会議というのを是非御考慮いただきたいなと思っております。これは私の希望でございます。
【安西座長】  ありがとうございました。4月からのこの改革の推進はやはり非常に大事で,私自身もそういう意味で関心を持っているところでございます。ありがとうございます。
長塚委員,それから金子委員お願いいたします。
【長塚委員】  先ほど,学力の3要素目の態度を評価するのが難しいというお話で,これは本当に,この問題は今後の課題だろうとも思っております。43ページ,44ページあたりに,多面的・総合的に評価する入学者選抜への改善という中で,学力3要素をそういうふうに評価するということなんですが,43ページにあるようなもろもろのことで意欲・態度なども評価できるのかどうか,そうしてほしいというこれからの新たな入試制度についてはそう思うわけですが,一方で,高校の方では,多面的な評価はどういうふうに書かれているかというと,17,18ページあたりにその辺が書いてあります。これが本当にうまくつながらないと高大接続というのが形式上はつながっていかないことになっていくわけで,従来のテストだけで決まるということになってしまうのだろうと思うんですね。
学力3要素の,一つ目の知識・技能と二つ目の思考力・判断力・表現力までは随分確定していた文言でしたが,3番目の意欲・態度については例えば中学校の指導要録とかには関心・意欲・態度というふうに書かれてあって,そこで観点別,教科別に関心・意欲・態度を評価しているんです。しかしこれはエビデンスを求められるものですから,現場サイドでは非常に難しくて,いろいろなケースがあるんですが,生徒が手を挙げた回数で関心があるとか意欲があるというふうにしてしまう,それでもって,それが5,4,3,2,1の評定にまでつながっていくなんていう実態も実はないことはない。ところが、ここで高校もそういう観点別評価をすべきであると。この3要素目が大事だからということになっているわけです。まだ確定はしていないわけですが,非常に難しいなと感じています。そういうふうに文言が書いてありますから,そういう方向で議論がされるんだろうと思いますが,この間の議論で主体的・多様的・協働的に学ぶ態度というふうにかなり明確に実は関心・意欲・態度が言い換えられてきております。これは,これからの必要な学力ということの中での意欲・態度というのはどういうものか,より性格がはっきりしてきたということで,私はこれを評価しているところですが,主体性・多様性・協働性のあるような意欲・態度というものをどういうふうに評価するのか,これはやはり教科だけではなくて,ここにも書いてあるような様々な諸活動や総合的な学習等々で全体として評価していく,あるいは探求活動をどういうふうにやったかという実績でもって評価していくことが考えられます。やはりメンタルな面を評価するのは難しいのですが,手を挙げた回数ではなくて,様々なこれから求められていく実際の活動を通してそれを評価するような方向に是非持っていくべきではないかなというふうに期待もしております。
最後にもう1点だけ。多様な者を入学させるという大学側の思惑というんでしょうか狙いが,もし仮に3要素全てを多面的に評価すると言いながら,三つの要素全てですぐれた順番に入れるなんていう話になると,これは今までよりもハードルが上がって,多様な学生を受け入れることに実はならないんだろうと思うんです。ところが,一部ではそういう誤解もあって,これまでは一般入試だったら面接もなかったし,調査書も余り見られなかったけれども,今度はいろいろ見るから,全人的に全ての面ですぐれていなくてはだめだと思われている。そうなっていくと,多様な生徒を受け入れるという大学の本来の狙いが損なわれてしまうのではないか,そんな危惧を少し持っております。
国際ランキングで上位にあるアメリカの大学では,アドミッション・ポリシーをはっきりさせているとはいえ,どういう学生を入れるかについては,実は理念は出されていても,具体的には余り公表されていない,誰が入るかは実はよく分からない,入ってから,あの子がどうして入ったんだろうということがよくあるというのがアメリカの高校などの感想なんですよね。つまり,私も私学の者でございますので,ちょっと言いにくいんですが,ある一つの高校から10名も何十名もトップの大学に入っているなんていうことをあえて排除するのが多様な人材を求めるアドミッション・ポリシーの,その大学の考え方でありまして,それは私大だからできるんだろうとも思います。アメリカのトップ大学はほぼ私大でございますから,私大の自由度の中でそれができるのかもしれませんが,簡単に日本の国立大学に置き換えることは難しいかもしれませんが,アドミッション・ポリシーを明らかにするという場合に,具体的な基準を明示しない枠もあるということを明らかにするとか,そのぐらいの自由度がないと,全てを明らかにするということは,実は公平性とともに多様性を求められていることからすると,かえって苦しくなるというような危惧を若干持っております。
以上でございます。
【安西座長】  ありがとうございました。
金子委員,それから日比谷委員,羽入委員にお願いいたします。
【金子委員】  今回の議論を振り返ってみますと,私は大変よい議論だったのではないかと思いますが,ただ,今回の入試接続改革が必要となったいろいろな要素を考えてみると,確かに一つは,3要素を含めて学力観を拡大するということが非常に重要だということが一つの大きな論点だったのではないかと思います。今回の報告も,一番最初の背景の部分は,かなりそういったことに強調点を置いているわけです。
ただ,そのために,かなりそういったことから直に出てくるのは,例えば記述式であったり複数回実施ということに議論が移っていって,それは技術的にできるかできないかという問題がまだかなり詰められていないというか,さらに検討しなければいけないというような状態にあると。このために,社会の受け止め方としては,接続改革ができるのかできないか自体を,必ずしも納得されていないところがあるのではないかなと思います。
ただ,私はやっぱり接続改革は非常に重要で,それはもう一つの論理として,教科の具体的な知識・技能を確認するというところが接続としては非常に重要な問題で,それのところが今回の会議では余り十分議論されてこなかったと思うんですけれども,多分,これから次の段階では,具体的な新しいテストをデザインするときには,教科,科目の在り方,そういったものを十分に議論していく必要がある。
やはり私は今の接続の一番おかしいのは,高校教育と大学との間が非常に偏った,点とかほとんどつながっていないところがあるんです。それをきちんと面としてつながっていくということが必要なので,そのためには,高校生がやはり,本当に少数の科目しか入ったときから勉強しないということではなくて,ある程度幅広い範囲でもって基本的な,しかし余り細かいことにこだわらず,やはり基本的な考え方を身に付けていくというような,そういった接続の仕方を考える必要があると思います。次の課題はそういうところに私は十分あって,次の検討される方は是非そういったことに留意してやっていただきたいと思います。
考えてみると,今のセンター試験というのは1990年にできたわけでありまして,既に二十数年たっているわけです。できたときの大学進学率は24%です,今は52%です。18歳人口は3分の2になっています。物すごく大きな変化があって,その間,入試の基本的な枠組みがほとんど変わっていない,やっぱりそれは今変わるべき時期にあるというのは非常に重要な点で,できるところとできないところがある,それはそれとして,やはりできるところはきちっとやっていくということが必要で,それは次の議論に期待したいと思います。
以上です。
【安西座長】  ありがとうございました。高等学校教育と大学教育の,教育の接続について余り議論されてこなかったということは私もそういうふうに思ってきたところでございます。私の個人的な見解は,高等学校教育のこれからの在り方,また,大学教育のこれからの在り方を,やはり方向をきちんと確定していった上で接続を考えていかないといけないと。だから今までは高等学校教育,大学教育それぞれのこれからの在り方を議論してきたのではないかというふうには捉えているところでございます。どうもありがとうございました。
それでは,日比谷委員にお願いいたします。
【日比谷委員】  ありがとうございます。私は先ほどの荒瀬委員の御意見のフォローアップという感じでございますが,御指摘くださいましたとおり,11ページの最後のところに,国は十分な支援に取り組む必要があるということで,大変に心強く読んだのでございますが,もうちょっと具体的に,後ろの方に行きまして51ページですか,エのところで,個別大学における入学者選抜改革を推進するためにも,効果的な財政支援を通じてとしっかり書いていただいているんですが,具体的にまだおっしゃれないと思うんですけれども,どのぐらいのことをお考えなのかということを,私どもを励ますために是非言っていただきたいということと,特にこれに関連して,45ページの上から4行目ぐらいですけれども,入学者選抜を世界に通用するものに改善するという,この高い志は大変に私は重要だと思っていますので,これを実現するためには,よほど御支援いただかないとなかなか難しいところもあると思うんですが,現時点でのお考えを伺えれば幸いです。
【橋田大学入試室長】  先ほどの財政支援の点でございますけれども,皆様のお手元の基礎資料集のところでございますが,丸5の高大接続に関する参考資料の155ページに,今回,政府予算案でございますけれども,高大接続改革の部分で50億円ほど計上させていただいております。その中で大学教育改革の支援,入学者選抜改革の支援,また高等学校教育改革の支援ございますけれども,その一番下の方にもございますように,各大学の入学者選抜の取組を支援するということで国立大学であれば運営費交付金20億円,私学助成であれば総合事業の中で10億円ということで今計上させていただいているところでございます。
【安西座長】  これからのこの改革において,特に高等学校の教育現場,また,大学の教育現場において必要となる予算等々は,かなりいろいろあるというふうに考えられますので,その点については,この改革の狭い意味でのスタートアップ予算だけではないと思います。学習指導要領も変わっていきますし,いろいろな形でもって教育の在り方が変わっていくことを現場で受け止めていただくには,やはりその受け止めていただくだけのそういう支援は必要ではないかというふうに私も思っております。よろしくお願いいたします。
それでは,羽入委員,お願いいたします。
【羽入委員】  ありがとうございます。先ほど山極委員が御指摘になった問題が,いまだに私はちょっと気になっております。,態度が評価できるかということですけれども,長塚委員もおっしゃいましたが,「態度」を新たに加えたことが,もしかしたら誤解を生じているのかなと思います。企画特別部会で,学力の3要素をどう構造化するかをずっと議論してまいりましたが,この3要素が,このままですと,43ページには「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」で二つの基礎的な学力が測られ,次に個別試験で態度が評価できるというように,3要素が切り離されてしまった状況が生じていることが問題なのではないかと思います。恐らくこれまでの指導要領に関連する議論では,この三つが一体となっていくことが重要だと期待されてきたのではないかと思います。
そこで暫定的な提案ですけれども,例えば43ページの下ですが,「知識・技能,思考力・判断力・表現力について十分な評価が行われること」を通して,あるいはそれを前提にして,「各大学の入学者選抜においては」こういった態度を育成する,養成することを期待するというようにいわば最終目的にしていること,またそれは段階的になされるものではなくて,三つの要素が一体化することによって初めて獲得されるものであるということを,少し反映する表現にしていただければと思います。
それで,その手掛かりになるのは4ページの注のところにございますけれども,先ほど長塚委員が御指摘になったように,この態度というのは,主体性・多様性・協働性ということです。それを養うことが目的なので,評価することが目的というふうにはここでは書かれていないと思います。その場合,評価するとすればどういう手立てがあるかということで指導要録のことをおっしゃいましたが,今,それぞれの科目ごとのワーキンググループで指導要録そのものの記載の仕方についても議論しています。手を何回挙げたかということではないんだとか,では,どう評価すべきかというようなことも議論されています。それも参考に,そういった三つの要素は一体化する,あるいは協働的に判断するべき,ということを前提にして,ここの記述を工夫していただければと思います。
【安西座長】  ありがとうございました。先ほどから主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度というのが評価できるのかとか,今の一体的なということにつきまして,ほかにはいかがでしょうか。
【常盤高等教育局長】  座長,よろしければ。
【安西座長】  常盤局長,お願いいたします。
【常盤高等教育局長】  今まで御議論あったとおりですので,ここの部分の表現については,初等中等教育段階でいろいろ議論の積み重ねがあると思いますので,それを踏まえて,より適切なものになるように見直したいというふうに思います。
【安西座長】  私もフォローさせていただきますけれども,今,中央教育審議会の羽入先生の部会の方でも,やはり高等学校の学習の評価の問題をかなり議論しておられますので,そこともタイアップしながら,このことについては検討を続けるということが必要ではないかと思います。態度そのものを評価するという言葉は,私も違和感がございますけれども。
【小林委員】  そのことに関連しまして,資料集の方の丸5の14,15ページのところに,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」と「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の難易度と活用イメージというのが付いておりますが,ここで見ると,先ほど羽入先生がおっしゃったような一体にはなっていなくて,分かれて表示されているというふうになって見えています。これは多分添付資料なので,これをどう作っていくかというところもあると思いますが,非常に分かりやすく書かれている分だけ,きっちりと分かれているようにも見えますので,これの表現の仕方もちょっと工夫が必要じゃないかなというふうには思いました。
【安西座長】  ありがとうございました。
では長崎委員,香山委員,岡本委員,山本委員の順にお願いしたいと思います。
それでは,長崎委員,お願いいたします。
【長崎委員】  ,ありがとうございます。今後へ向けてということで,感想を幾つか述べさせていただこうと思います。
一つ目は,大学入試の記述式の導入と高校での教科指導の関係というものです。記述式というのは,ここでずっと議論されてきましたけれども,非常に画期的な試みであると思います。ただ,そのような記述式による大学入試というのは,本来は高校の各教科の指導が,生徒同士の協働とか対話に基づいているということが前提になっていると思います。こういう入試を導入すれば授業が変わるだろうではなくて,授業がまずそうなっていって入試が変わっていく,そんな意味で考えていけたらと思っています。思考の外化ということで,協働や対話に基づく授業ができるようになるということを先に考えていく,そんなことをまず考えました。
二つ目は,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」のシステムの柔軟性です。「高等学校基礎学力テスト(仮称)」というのは,,指導や学習の改善を目的としています。そうだとすると,学校や生徒の全国的なランク付けにならないようにしたいと思っております。
学力調査の歴史を振り返ってみますと,必ずといっていいほどどなたかがランク付けを公表いたします。,ランク付けをする,又はランク付けを提起する人間がいるという前提で,本来の趣旨に沿った柔軟で,しかもしっかりとしたシステムというものを考えていくということを是非お願いしたいと思います。
三つ目は,高大接続に関する今後の作業についてのオープンさというものでございます。今後,この最終案の具体を詰めていくということが報告書の最後にいろいろ書かれております。その際にいろいろな人の知恵を生かしていくということで,作業の過程をできるだけオープンにしていただきたいと思っております。オープンで多様な議論がよりよい改善を生み出すという信念の下で,作業とか議論とか記録の作成を進めていっていただきたいと思っています。
四つ目は,この報告書の中に余り出てこないことなんですが,高校生の学習の目的意識や意欲の喚起というものでございます。学習の目的意識とか意欲というのは,学習の継続にとって必要不可欠だと思います。もしかすると,そういうことの接続を考えることが、高校と大学の本来の接続ではないかとんて思っております。そこで高校の先生方が教科の指導において,探究心や,好奇心,それから教科を学ぶ楽しさというものを目標にして指導の工夫ができるような環境を作るということを今後の課題としてやっていっていただきたいと思っています。
これからまだ大変だと思いますけれども,この改革の精神を継続していっていただけたらと思います。どうもありがとうございます。
【安西座長】  ありがとうございました。
香山委員にお願いいたします。
【香山委員】  先ほどの態度の評価の部分にちょっと返ってしまうんですけれども,43ページに具体的な評価方法としては,例えば次のようなものが考えられるという形で挙がっているわけですけれども,評価方法として考えられるものもあれば,それは評価の対象ではないかという表現もあると思うんです。よって,このあたりのところも,どんな能力を測る,どんな評価方法なのかといったようなところで,もう少し説明をしていただけると具体的なイメージが立ち上がるのかなというふうには感じているんですが,個別大学入学者選抜については,高校の立場で見てみますと,こうした非常に手間暇の掛かるパフォーマンス評価であるとか,ポートフォリオ評価であるとかというものについて,アドミッションオフィスが充実していない日本の各大学の今の現状で,多くのパーセンテージの定員の入試にはなかなか現実,難しいのではないかなというふうに危惧しています。国立大学協会が3割という目標を挙げられましたけれども,大学によっては多く5割ぐらいとられたりとか,7割までいかれたりというのがあるとは思うんですが,まだまだそのあたりがどうなるのだろうというのが,高等学校の目から見ますと不安に思っております。
そういう点で,主体性とか協働性とか多様性とかというものを大学入試において,どういう評価対象でどういう能力を測ってというあたりを,もう少し明確にしていただけたらというのが1点です。
それからもう一方で,まだまだこれからペーパーがやはり主流になっていくのではないか,当分主流になっていくのではないかと思うんですけれども,本日お示しいただいたロードマップを見ながら,個別大学の入学者選抜のペーパーの部分が,いつどんなふうに変わるんだろうというのがちょっと見えづらいかなと。今年の入試,時間をそんなに掛けていないので,ばらばらとしか見ていないんですけれども,思考力・判断力・表現力をしっかり問われているなといったような問題は,必ずしも多くないのが現状です。そういう現状の中で,これから各大学で本当に時間のない中で,どんなふうにして思考力・判断力・表現力等をしっかりと問われていくようになるのかなというところも実は心配しておりまして,橋田室長が指摘された155ページの大学入学者選抜に関わる予算の中には,面接や書類審査等,教科・科目によらない評価手法の開発には3億円掛けているんですけれども,教科・科目における思考力・判断力・表現力等の研究にはお金が掛かっていないのではないかと思われますので,そのあたりも展望をお聞きしたいなと思っております。
【橋田大学入試室長】  先ほどの香山委員の御指摘の大学入学者選抜改革推進委託事業,この真ん中の3億円の部分でございますけれども,この部分につきましては,いわゆる思考力等をより重視したようなものということで,人文社会,理数分野,情報分野というところの評価手法の観点から申しますと,教科・科目に関わるような出題内容の改善を含めて,この調査研究は進めていきたいと考えております。
【安西座長】  ありがとうございました。
岡本委員,お願いいたします。
【岡本委員】  2点申し上げたかったんですが,1点目は,今の学力の3要素の話の中で,十分議論が行われたと思うんですが,山極委員が指摘されたとおり,43ページから44ページに掛けての記述というのは中間まとめにはなかったので私も違和感があって,でも,学力の3要素は羽入先生がおっしゃったみたいに,学力の3要素って別に切り離して評価できるものではないので,私は個人的には,いっそのことこの表現は取ってしまったらどうかという提案をしようと思ったんですが,局長の方から,文言は精査して考えますということだったので,それ以上は申しません。そういう意見があったと。
もう1点は全然違う話なんですが,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」というものの名称なんですけれども,これは何回か前の会議でテストじゃないよね,診断だよねといって,ここではみんな診断と言っていたような気もするんですが,これは別に,ここの会議で決定するということではないのかもしれないんですけれども,やはり適切な名前を考えて,ひょっとすると座長がいい提案をするのかどうかよく分かりませんが,是非それも考えていただければと思っております。その2点でした。すいません。
【安西座長】  テストの名称についてはおっしゃるとおりで,今後検討するということは,最終報告(案)の中にも入っていますか。
【今井高校教育改革プロジェクトチームリーダー】  失礼いたします。名称につきましては,最終報告(案)の36ページにございますように,まず,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」につきましては,その名称について,このシステム改革会議でも御議論いただいたものを踏まえて,高等学校段階で共通して習得することが期待される学力の定着度の診断,検査,検定等をベースに,目的・性質に応じて考えていきたいということで方向性を頂いた上で,基本的には29年度初頭で予定されております実施方針の中で決定させていただけたらということで,引き続きこの方向で検討させていただけたらと考えているところでございます。
【安西座長】  ありがとうございました。
それでは,山本委員にお願いいたします。
【山本委員】  それでは,失礼します。最後の今後の検討体制のところで2点ございます。
一つは,64ページの下から三つ目の丸のところで実施主体というような話が出てきます。ここにもきちんと書いていただいていますように,現在の大学入試センター試験は,大学が共同して実施する試験と,これは大学入試センター法にも書いてございます。大学入試センターは何をしているかというと,その共通している部分で1か所でやった方がいい実務を担当しているということで,大学入試センターが実施主体となってやっている試験ではないということを,委員の皆さんに改めて申し上げておきます。
それに関連して,では,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の方はどうなのかという話ですが,今,診断という言葉もございましたけれども,これは国,あるいは設置者か高等学校,このテストの性格をこういうふうに整理されてきてよかったと思うんですが,そういうふうな感じで実施主体というのは考えることになるんじゃないかなというふうに私は思っております。そういう意味では,この最後のまとめが非常にうまく書いてあって,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」については,現センターにおけるこれまでの云々というようなことが書いてございますけれども,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の方については抜本的に改組した云々かんぬんということが,当初は出ておりましたけれども,ここでは書かれていないんだろうなと理解しております。
それからもう1点は,本日,スケジュールを別添資料2として本紙には付いてございますが,これを見まして,改めてもう本当に時間がないんだなというふうに受け止めています。実際にこれまでテストの実務を担当してきたことから考えますと,29年度に実施方針の策定・公表をして,30年度にはプレテストの実施と大綱の策定・公表をすると書いてございますがプレテストをやるためには,そのための問題をこしらえないといけない。そうすると,その問題を作成するための作問方針というものをこしらえないといけない。これは前回,27年度センター試験,学習指導要領が変わったときの問題の作問方針というのは、その3年前から1年間ぐらい掛けて作っているわけです。それから2年間かかって作問するということですが,このスケジュールでいくと1年余りぐらいしか余裕がないというようなことでございます。
ということで,何が言いたいかといいますと,先ほど,この後の検討体制について,やはりさらに引き続きでもないんですけれども,検討する場を設けてというふうな御意見もあったかというふうに思います。聞き間違いでしたら失礼なんですが,そういうふうなことだと,とてもそれをやっている時間はないんじゃないかなと思います。ですから,ここに書かれておりますように,文部科学省内において,それぞれの部分について非常に精力的に,機動的に専門家の方々を招集されて,具体のことについて直ちに取り掛かっていただかないと,この29年度に公表,30年度,31年度プレテストというようなことにはならないなというふうに考えております。
是非,この全体の進捗状況をチェックしていく必要はあると思うんですけれども,これはこれで63ページの冒頭に書いてございますように,文部科学省内において何らかの場ということではなくて,それなりの体制を設けていただくか,あるいは中央教育審議会のようなところで少し報告のようなことをやっていただくというような体制でないと,改めてこういった場を設けていると,これはとても間に合わないなという気がしております。
このことについては,このシステム会議の2回目ぐらいに発言をさせていただいたんですけれども,会議全体に対して大変失礼な言い方なのかもしれませんが,中央教育審議会の,これは安西先生が座長をされた高大接続部会のところでされた議論と同じようなことが最初の頃はずっとあったということで,中央教育審議会答申に書かれていた専門家を集めて具体については考えるというようなことまで行かなかったということが少しあろうかと思います。そういう意味も含めて,直ちに具体のことについて省内で必要な専門家を集めて動いていただきたいなというふうに,そうでないとこの32年度,本格実施するのはとても無理だなという気がしてございます。
【安西座長】  ありがとうございました。
金子委員,それから佐野委員にお願いいたします。
【金子委員】  先ほどから問題になっている意欲の件ですけれども,確かに意欲というものを何か一つ,単一の意欲の指数みたいなものがあって,意欲指数でもって全員,受検者の分布が全部分かっていて,その上の何%から採るというようなことでやるのであれば,多分それは無理だろうと思うんですが,ただ,意欲というのは他方で非常に多面的なものだと考えて,どこかのところで非常にとんがった人がいれば,それを加点的に考慮するというのは現実的にはあり得るのではないか。
そういう意味で,実はこの前の委員会では公正性の問題をかなり議論して,公正性をどう,今までは非常に厳密な妥当性のあるテストが公正性の基準であるという考え方から,その基準を非常に拡大したことが必要な場合にどのように考えるかという議論を一時かなりやったことがあるんですが,今回,その問題が少し後退してしまっていて,報告書にそこらがないので,少し議論が出てきてしまうだろうと思うんですが,次の段階で是非そういった議論もきちんと入れていただければよろしいのではないかと思います。
【安西座長】  ありがとうございました。例えば医学部の入学試験,個別大学において面接試験をやるとしたときに,それは一体何を見ているのかと。態度をそのまま評価しているわけではもちろんないわけで,例えば医師になるための知識・技能,あるいは思考力・判断力云々をベースにした,ある意味でのコミュニケーション能力ですとか,そういうことを見るために面接をやっていると。では,何を見ているのかというと,やはり私は潜在的な能力を見ているのだと,コミュニケーションのための能力を見ているのだというふうに見てはおります。
ただ,これはいろいろな見解がおありになると思いますので,先ほどから出ております43ページから44ページ等々,何か所か出てまいりますけれども,そこの文章については気を付けて検討させていただき,場合によっては文章を修文させていただければと思います。
それでは,佐野委員,お願いいたします。
【佐野委員】  ありがとうございます。1年間にわたりまして,この議論に場に加わらせていただいたことを心から感謝申し上げたいと思います。今日御欠席の五十嵐委員の机上配付のペーパーを拝見しながら,そしてまた,この最終報告の占めるページ数を見ておりますと,大学入試改革が21ページ,高校教育改革が25ページということで,ボトルネックはここにあったんだなという思いをまた改めて感じたところであります。まさしく出口である,社会への入り口の選抜,高校を卒業して,あるいは大学を卒業して,それから社会の中でその後も継続して評価されるのは,主体性・多様性・協働性であり,思考力・判断力・表現力ということが重視されてきているにもかかわらず,ここの二つがボトルネックだったんだなと。そのネックを少しでも改善するような様々な試みですとか考え方がこういうふうに明確に示されるというのは,高校生の親としても大変将来に期待が持てるというふうに考えているところであります。
しかしながら,今回,この最終報告が出ますと,具体の実施検討に移る前にこれは広がってしまいますので,そういう意味で先ほど御指摘があった「高等学校基礎学力テスト(仮称)」という名称のままで出てもいいのかというところは大変不安に思うところであります。名称は変えるということで検討するとは言いながら,今回これで一つ出てしまいますので,そしてまた,こだわるようですけれども,前回申し上げたような多面的・総合的という部分,先ほど長塚委員からもありましたが,学力の3要素,あるいは課外活動等における全人的な評価というものを,全てにおいて秀でた者でなければならないというような,総合的というのは誤解を生む部分がございます。実際に私自身もいろいろ高校生の保護者,あるいは高校の先生方とお話をしていると,この総合的というのは,全てにおいてすぐれたというふうなところになるんですかという質問も受けるところでありまして,そういう意味では,この報告書が出たときの具体実施が次に出てくるまでの,いろいろな受け手側の誤解を極力避けるような打ち出し方を是非お願いしたいと思うところであります。
最後,感想になりますが,私はこの一連の議論に参加させていただいて,かつ,この報告書を見ていると,やはりキーワード,言葉で言うと,教育という言葉から学ぶ人の側から見た,学び習うという学習から,今度は学び修めるという学修というものが中心になってきて,それをどういうふうに支援していくか,あるいはインキュベートしていくかというのが,いわゆる教育システムというところに変わっていくんだろうと感じるところです。
そういう意味では,学び修める場というのは,学校の中だけではなくて,家庭であったり社会であったり広く広がっていきますので,そういう部分で私どもPTAも家庭や地域と結ぶ一つの活動をしている団体として,これからより一層,しっかりと頑張っていかなきゃいかんなということを強く思ったところでありますし,そういうことをしていきますというお約束をして,1年間の御礼に代えたいと思います。大変ありがとうございました。
【安西座長】  どうもありがとうございました。よろしければ,そろそろにさせていただければと思います。ちょうど時間がやってまいりました。
大変貴重な御意見を頂きましてまことにありがとうございました。本日頂いた御意見につきましては,できましたらこちらで修文をさせていただきまして,全体としては座長に一任ということにさせていただければと思いますけれども,よろしゅうございますか。
(「異議なし」の声あり)
【安西座長】  ありがとうございました。そのようにさせていただきます。
私もこの件といいましょうか,教育改革については長い間,関わってきたつもりでございます。大きな時代の節目にあって,日本の教育が変わっていくということが,ここで議論されているように変わっていくということが,やはり未来に生きる子供たちのためではないかと。技術的な課題は多々ございます。それは皆様おっしゃるとおりでございます。それはやはり解決をしていかなければいけない,また,迅速に解決していかなければいけないということだと思いますので,これは文部科学省におかれましても,是非そのことを改めて念頭に置いていただいて,これからの時代のために御尽力いただければというふうに思います。
それでは,先生方皆様,ありがとうございました。最後になりますけれども,土屋事務次官に御挨拶をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【土屋事務次官】  事務次官の土屋でございます。
この高大接続システム改革会議,本日が最終回ということで,安西座長をはじめ,委員の各先生方にこれまでの御審議に対しまして,文部科学省を代表して御礼を申し上げたいと思います。
委員の皆様方には,昨年3月5日の第1回会議以来,本日で14回ということでございますが,また本日も大変貴重な御意見を賜りましてありがとうございます。委員の皆様方には,改めてお忙しいところ,この会議の審議に御参画いただきましてありがとうございます。また,本日御欠席の委員の方々も含め,これまでの御尽力に深く感謝申し上げさせていただきたいと思います。
高大接続改革につきましては,平成25年10月の教育再生実行会議第四次提言,さらにその後の平成26年12月の中央教育審議会答申を踏まえ,高大接続改革実行プランを平成27年1月に作成いたしました。これに基づき,昨年2月にこの高大接続システム改革会議を設置させていただいたところです。
また,この本会議のほかに,その下に新テストワーキンググループも立ち上げていただき,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の具体的な制度設計を御検討いただきました。また,昨年9月には中間まとめも御公表いただいたところでございます。その後,多面的な評価検討ワーキンググループも立ち上げていただき,多様な学習活動や学習成果を適切に評価するための具体的な方策について御審議いただくとともに,関係団体ヒアリングを行うなど議論を深めていただき,これまでの13回の会議を開催し,本日最終回というところに進めていただきました。
高大接続システム改革会議につきましては,高等学校教育,大学教育,大学入学者選抜を通じて学力の3要素をしっかりと育成・評価し,変化の激しいこれからの時代をたくましく生きていける人間を育てていくという極めて重要な改革であるというふうに文部科学省として認識してございます。先ほど座長からもお話がありましたが,文部科学省といたしましては,この会議でおまとめいただきました報告を基に,今後さらに高大接続改革を推進して,次代を担う子供たちにとって,よりよき改革となるよう,さらに尽力してまいる所存でございます。
改めまして,本日までの御審議,誠にありがとうございました。
【安西座長】  土屋次官,どうもありがとうございました。
それでは,今後の予定等につきまして,事務局から説明をお願いします。
【新田主任大学改革官】  本日はどうもありがとうございました。今後,本日頂きました御意見を入れました最終報告につきまして,座長に御確認,御了承いただきました上で皆様にお送りし,併せて同時に公表させていただく予定でございますので,どうぞよろしくお願いいたします。
【安西座長】  それでは,本日の議事はここで終了させていただきます。これまで1年間にわたりまして,本当に真摯に活発に御意見を賜りまして,誠にありがとうございました。改めて深く感謝を申し上げます。文部科学省にも感謝を申し上げます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――


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