委員 岡本 比呂志(学校法人中央情報学園理事長)
第9回有識者会議
平成27年2月4日
平成26年10月15日第2回有識者会議で『専修学校の質的整備と新たな高等教育機関』(41頁)を提出し発表いたしましたが、その後の会議での経緯を踏まえて、以下標題に関する考えを述べることにいたします。
―社会・経済の変化や技術革新等に伴う人材需要にいかに応えていくか
―学術研究を基にした大学の教育だけで産業界の人材需要に十分応えられるか
―特にデジタルイノベーションで、今後10年から20年で人間が行う仕事の約半分が機械に奪われるという予測も(英オックスフォード大学、米デューク大学等)
―大学と対等に肩を並べることのできる高等職業教育機関が必要ではないか
―現在の「単線型」高等教育で果たして良いのか
―「学術体系」と「職業教育体系」を同等に評価できる社会に
―学習成果(learning outcomes)をもとにした学位・資格諸制度の整備と国際通用性、質保証への対応
―日本における職業教育の量的質的発展
特に専修学校の質的整備、「専門士」「高度専門士」、「自己点検・自己評価とその公表」の義務化、文部科学大臣認定「職業実践専門課程」の実施(「学校関係者評価」、財務始め学校基本情報の公開等を含む)など
―産業及び職業をめぐる環境変化に伴う人材需要に対応し、職業に関わる専門知識・技能の教授及び実践的な学修を通して、社会及び産業界が求める実践的な職業人を育成する
―法律上、公的な学校として位置づける
―公的支援の対象とする
―職業教育を選択する学生を国が支援できる
―職業教育に対する国民の偏見をなくし、その重要性を広く啓発する
―国内及び国際通用性を担保する
―企業等と連携した実践的な職業教育を行う
―職業に関するあらゆる分野を対象とする
―但し、医師・歯科医師・弁護士など、通常の学部教育(4年制)を超えた学修が必要とされる専門領域は除く
―因みに「職業実践専門課程」が実際教育を行っている専門領域を参照
*認定学校数:470校、認定学科数:1365学科(平成26年8月29日現在)
*認定分野:国家資格者の養成施設を含む工業、医療、商業実務など多様な学科が認定
医療(288学科、21.1%)、工業(286学科、21.0%)、商業実務(204学科、14.9%)、文化・教養(170学科、12.5%)、衛生(100学科、7.3%)、服飾・家政(94学科、6.9%)、教育・社会福祉(72学科、5.3%)、農業(4学科、0.3%)、その他(147学科、10.8%) 計1365学科、100%
―産業界による教育課程編成への参画等により、産学連携による人材育成を推進する
―専門分野に関する教養教育あるいは職業人・社会人として汎用的に必要とされる素養に関する教育について、一定の範囲内で実施することを検討する
―2年~3年(短期高等教育)
―4年(高等教育)
―わかりやすく誰もがイメージしやすい学校名称が望ましい
―「専門大学」、「職業大学」などの名称は新たな高等教育機関としてイメージしやすい
―「○○カレッジ」などの名称は、「専門学校」でも「大学」でもなく説明が難しい
―学位(職業学位)の授与は国内及び国際通用性を担保する上で重要である
―「専門学士」などの学位(職業学位)が望ましい
―「専門士」、「高度専門士」など専門学校の卒業生に出される称号については、社会からの一定の評価があり、これに加えてまた新たな称号を出すことは屋上屋を重ねることになり兼ねない。
―全体的に、「弾力的な設置基準」と「教育の質の確保」との両立を図る必要がある
―実務家教員の定義、必要とされる人数等の検討
実務家教員の定義及び評価に関しては、単に会社のどの部署にどういう役職で何年ほど在籍していたのかといった外形的な基準だけではなく、どのような職種とポジションでどのような責任と役割をもって業務を行い、その結果どのような社内・社外からの評価を得てきたのか、またそうした業務を通じて、どのようなキャリアを形成しどのようなレベルのスキルや資格を身に着けるようになったのか、などの定性的かつ定量的な評価が必要ではないか。
―下限が必要となるかどうか
例えば、総定員200人以上、あるいは300人以上など
この場合、地方創生の観点から、都市と地方の人口格差等に一定の配慮が必要か
―校舎面積の基準は総定員学生数の学習環境が保証できるものとする
―校地面積の基準は必要とされる校舎が設置できるものとする
学生の通学上や社会人の学び直しにおける交通の利便性、あるいは企業との連携や実習・インターンシップなどへの協力を円滑にするうえでも、学校は交通の便の良い立地がより望ましい。
一方で、交通の便の良い都市部での立地は土地の値段が高く、広い敷地を確保することは困難なこともあり、そうした条件を十分に考慮する必要がある。
―新たな高等教育機関は、新たな発想に基づく新しい設置基準を検討すべきである。
―教育の質を制度上担保し、社会的な評価を得られるようにする
―産業界が参画して分野別に教育の質を保証する仕組み、第三者評価が必要
―現在、平成26年度文部科学省委託事業である、「職業実践専門課程を通じた専修学校の質保証・向上の推進」事業において、次の8事業が先進的取組として採択され実施されている。
(1) ファッション分野における職業実践専門課程の質保証の評価を推進する事業
(2) 情報・IT系職業実践専門課程における教員研修と第三者評価基準の構築
(3) ゲーム・CG分野職業実践型教育推進プロジェクト
(4) 職業実践専門課程の美容分野における質保証・向上を推進するための学校評価制度の開発と構築
(5) 介護福祉士に特化した第三者評価システムの構築
(6) 理学・作業療法の職業実践専門課程の認定要件・第三者評価等に係る先進的取組の推進
(7) 自動車整備専門学校における職業実践専門課程の第三者評価
(8) 職業実践専門課程における教育活動の質保証・向上を図るため、より効果的、先進的な取組みとしての柔道整復師養成分野に係る第三者評価システムの構築
―文部科学大臣
―国、地方公共団体、学校法人
―専門学校からの移行・設立
但し、専修学校が全て職業実践専門課程になるわけでも、なれるわけでもない(平成27年度学校数・学科数ともに25%程度か)のと同様に、職業実践専門課程の専門学校が全て新たな高等教育機関になるわけでも、なれるわけでもない。
職業実践専門課程を有する専門学校の中で、新たなハードルをクリアできる学校数がどれほど見込めるのかは、今後制度設計に係る重要な論点である。一方で、新たな高等教育機関が社会的に認知され評価されるためにはある程度の学校数も必要である。
―短大・大学からの移行・設立
新たな高等教育機関は、専門学校のために作られる制度ではない。短大や大学からの移行も可能となる制度設計とすべきである。
―新規設立
―学生は大学と対等な新たな高等教育機関を自らの意思で選択することによって、自らの将来の職業に誇りを持って学ぶことができる。
―社会人の学び直しもより円滑となり、産業界と連携した実践的な職業教育が本格的に進むことにより、日本は生涯学習社会の形成へ向けて大きく前進することになる。
以上
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