学生への経済的支援の在り方に関する検討会(第1回) 議事録

1.日時

平成25年4月25日(木曜日)14時~16時

2.場所

文化庁特別会議室(文部科学省旧庁舎5階)
(千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 学生への経済的支援の在り方をめぐる課題・論点について 等

4.出席者

委員

相川委員、奥舎委員、小林委員、中村委員、濱田委員、松本委員

徳久理事長代理(日本学生支援機構)、月岡理事(日本学生支援機構)、石矢奨学事業本部長(日本学生支援機構)

文部科学省

松尾学生・留学生課長、渕村学生・留学生課長補佐、保立学生・留学生課長補佐

5.議事録

【松尾課長】  それでは,ちょうど時間になりましたので,会議を始めさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。
 それでは,ただいまから,学生への経済的支援の在り方に関する検討会ということで,第1回の検討会を開催させていただきたいと思います。
 各先生方におかれましては,御多忙中にもかかわらずお集まりいただきまして,ありがとうございます。今回,経済的支援を行うということで,実は下村大臣は着任以来,御自身があしなが育英会(旧・交通遺児育英会)の第1期生ということ,また,奨学金を借りて大学も出たということもあって,奨学金の在り方については,今以上に手厚い奨学金にならないかということで,いろいろ腐心をされております。そういうこともありまして,今回,学生への経済的支援の在り方に関する検討会を改めて考えるということで開催させていただきたいと思っている次第でございます。
 議事に先立ちまして,本日お集まりの委員の先生方を御紹介させていただきたいと思います。お手元にあります資料1に学生への経済的支援の在り方に関する検討会の開催についてという決定文書がございますが,その別紙を御覧いただければと思います。本日お集まりの方々を含めまして委員でございます。名簿順に御紹介をさせていただきたいと思っております。
 まず,一般社団法人全国高等学校PTA連合会の会長の相川順子様でございます。

【相川委員】  相川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。私は今,全国の会長ということですが,出身は青森でございますので,青森の県連の会長も併せてさせていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

【松尾課長】  順番が逆になってしまいますけれども,公立大学法人新見公立大学理事・事務局長でいらっしゃいます奥舎達典様でございます。

【奥舎委員】  奥舎です。よろしくお願いいたします。私どもの大学は,岡山県の西北部にありまして,非常にこぢんまりとしたシンプルな大学です。学生も一生懸命真面目にやっておりますので,うちの学生の約半数が奨学金の貸与を受けております。今後とも学生のために一生懸命頑張っていきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。

【松尾課長】  続きまして,国立大学法人東京大学大学総合教育研究センターの教授でいらっしゃいます小林雅之様でございます。

【小林委員】  小林でございます。私は,奨学金を実は3つ受けておりまして,日本学生支援機構,旧日本育英会に9年間にわたりお世話になりまして,それが理由というのではないのですけれど,奨学金の研究をいたしております。どうぞよろしくお願いします。

【松尾課長】  続きまして,学校法人中村学園副理事長兼専門学校静岡電子カレッジ及び静岡福祉医療専門学校校長でいらっしゃいます中村徹様でございます。

【中村委員】  こんにちは。遅くなりまして申し訳ございません。お手数をおかけしますが,まず,副理事長の「副」をとっていただけますでしょうか,3年前から理事長でございます。

【松尾課長】  失礼しました。

【中村委員】  あと,学校名が,専門学校静岡電子情報カレッジ,「情報」が入ります。小さい学校でございますけれども,それなりの校名も持っておりますので,訂正よろしくお願いいたします。

【松尾課長】  そちらも申し訳ございません。

【中村委員】  私の場合は,子供3人が育英会,日本学生支援機構でお世話になっていまして,本当にありがとうございます。私も高校の教員経験の後に,今,専門学校でお世話になっているというようなことでございまして,広く浅くはお任せいただければと思います。よろしくお願いします。

【松尾課長】  本当に申し訳ございませんでした。

【中村委員】  いいえ,とんでもございません。

【松尾課長】  続きまして,学校法人文化学園理事・副学長でいらっしゃいます濱田勝宏様でございます。

【濱田委員】  濱田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。私も奨学金のお世話になりまして,かつ免除職の制度がありました時代に,おかげさまで,おかげさまと言っていいかどうかわかりませんが,免除していただいて,そういった意味では大変助かった人間の一人でございます。日本私立大学協会の学生生活指導研究委員会の方で奨学金問題を扱っております関係で,この会に出るようにということだろうと思いますが,まだまだ勉強不足でございます。ひとつよろしくお願いいたします。

【松尾課長】  本日お集まりの最後の委員でございますが,公益財団法人電通育英会理事長でいらっしゃいます松本宏様でございます。

【松本委員】  電通育英会の松本でございます。よろしくお願いいたします。私どもは小さな民間の奨学金団体でございますが,たまたま本年,設立をいたしまして50年という年に当たりまして,このようなときに御下命を頂いて,やや緊張しているところでございます。今日は大変僣越でお目汚しなのですが,私どもが50周年記念につくりました私どもの機関誌「IKUEI NEWS」というのが,今,お手元に配られているかと思いますが,ここで全然意図したわけではないのですが,たまたま特集を「学生への経済支援を考える」ということで,今日の小林先生はじめ皆様の大変な御助力を頂いて,一応まとめる形で今日お出ししております。お目汚しで大変恐縮でございますけれども,何らかの御参考になればと思っておりますので,是非よろしくお願いいたします。

【松尾課長】  どうもありがとうございました。 また,本日は御欠席でございますが,学校法人慶應義塾大学商学部の教授でいらっしゃいます樋口美雄様,それから公益社団法人経済同友会副代表幹事・専務理事でいらっしゃいます前原金一様にも本検討会に御協力いただくこととしてございます。
 本日お集まりの方々は,皆さん,関係ある方のようでございますけれども,そのほかにもやはり民間の方々でありますとか,労働経済の方々でありますとか,そういった方にも議論に参加いただきながら議論を進めていきたいと思っております。
 また,本日は文部科学省の職員につきまして,この座席表をもって代えさせていただきますし,また,日本学生支援機構の関係者も陪席しておりますので,よろしくお願いいたします。
 それでは,議事に入りたいと思いますが,資料につきましては,お手元にあります議事次第を見ていただけますでしょうか。配付資料が資料1から資料5まで,検討会の開催から当面の日程まで5つ資料がございます。過不足があれば,事務局の方までお申しつけいただければと思っております。
 本日は,この資料に基づきまして,文部科学省から現在の奨学金の現状等々について説明をし,そしてまた,資料4に少し今の貸与から返還,それから更に手厚い奨学金制度というようなことで,論点も幾つか用意させていただいておりますので,それを説明させていただいた上で,先生方に自由に議論いただきたいと思っていますので,よろしくお願い申し上げます。本日は2時間を予定しております。
 また,議事の進行,それから議論の整理に当たりまして,取りまとめを行っていただきたいと思っております。事務局からは,僣越ではございますけれども,高等教育における経済的支援の専門分野に長く携わっておられます小林先生によろしければ主査をお願いしたいと思っておりますが,よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【松尾課長】  皆様方,御了承ということでございますので,小林先生に主査をお願いしたいと思います。
 以下の議事につきましては,先生に委ねたいと思っていますので,どうぞよろしくお願いいたします。

【小林主査】  それでは,この学生支援の問題に関する検討会議というのは,何回も私もやっておりますけれども,非常に難しい問題だということをつくづく実感しております。私は奨学金返還促進会議から関わっているわけですけれども,これで学生支援にかかわる検討会議というのは4回目でございます。なかなか一歩ずつ一歩ずつしか進まないというのが実感でございまして,中央教育審議会でも松尾課長のときに学生支援ワーキンググループというのでやらせていただきましたけれど,なかなか日本の場合には進まない。それはどうしてかということをいろいろ考えるわけですけれども,少しでも前に進めていきたいという,そういう思いでやっております。
 この2月にもアメリカのワシントンに行ってきまして,オバマ政権がどういうような改革をしているかということを,実際,向こうの連邦教育省の方とか,関係者の方に会っていろいろ聞いてきましたけれど,非常に大変な努力をされている。財政の崖の中でも奨学金は守るのだということで努力されているというような姿を見てまいりました。
 それから,各国の事情についてはまた後ほど時間があれば御説明させていただきますけれど,同じように努力されているということでありまして,この会議でもJASSOがもちろん中心になるわけですけれど,JASSOだけではなくて,広く学生支援を今後どう検討していったらいいかということを考えていきたいと思いますので,いろいろな方の御意見を広く頂きたいと思いますので,どうぞよろしくお願いします。

【松尾課長】  それでは,小林先生,以下,進行をお願いできますでしょうか。

【小林主査】  はい。それでは,議事に入ります。
 最初に,資料1の有識者検討会の開催について,資料2の検討内容の公開について,これは事務局の方から御説明をお願いいたします。

【保立課長補佐】  それでは,まず,お手元の資料1を御覧ください。検討会の開催についてでございます。
 ざっと申し上げますと,昨今の我が国の学生が置かれた経済的な状況や,諸外国の施策の動向を踏まえまして,学生への経済的支援の在り方について御検討を頂きたいということで開催させていただいております。
 検討事項としまして,ざっとした書き方になっておりますけれども,経済的支援の意義や,その在り方,また,平成24年度から導入した「所得連動返済型の無利子奨学金制度」を,後ほど資料で御説明いたしますけれども,それをより拡大していく,その具体的な運用はどのようなことが必要であるかということを検討いただきたいということでございます。
 別紙で構成員をつけております。中村先生のところは訂正をしておきます。
 以上が資料1でございます。
 資料2が,この会議の公開の方針についてでございます。これは事務局より案ということでお諮りするもので,先生方にお決めいただければと思っております。案としましては,まず1.議事につきましては原則公開としまして,ただし,会議の円滑な実施に影響が生じるものとして,この検討会で非公開とすることが適当であると認める案件を除きということにして原則公開ということでいかがかということでございます。
 また,2.の議事録につきましては,議事録の公開,ただし,先ほど申し上げました非公開となった議事を除くということでございます。
 また,内容に応じまして,議事録にかえて議事要旨にすることもできることとするということでございます。
 また,3.で資料でございますけれども,これも会議の円滑な実施に影響が生じるものとして,この会議で非公開とすることが適当と認める資料を除きまして公開ということでいかがでしょうかという御提案でございます。
 以上です。

【小林主査】  ありがとうございました。
 今の資料1と2の御説明について,御意見あるいは御質問等ございませんでしょうか。
 特にこの会議の公開についてですが,原案のとおり,原則は公開と,特別な場合において非公開にすることもできるということでよろしいでしょうか。

(「はい」の声あり)

【小林主査】  ありがとうございました。
 では,そのようにさせていただきます。
 それでは,次に,事務局から,資料3,大学生等の経済的支援についての御説明をお願いいたします。

【保立課長補佐】  お手元のカラー刷りの資料3の大学生等の経済的支援についてという資料を御覧いただければと思います。施策の現状や学生の経済的な現状の説明の資料となります。
 大きく分けますと,まずは施策の紹介が最初にありまして,その次に関係するデータがございまして,最後に諸外国の状況というものが入った構成になっております。
 まず,施策についての御紹介,3ページから始まりますけれども,3ページが大学等の経済的支援の全体像を示しておりまして,縦の区分が奨学金ですとか給付型のもの,それから授業料減免といったもの,その方策に応じたものがマトリックスの縦の段になっております。横の区分が学部の段階でございまして,左から学部,大学院の修士課程,それから博士課程となっております。一応マトリックスの一覧性のあるものにしておりますけれども,字がちょっと小さいものにもなっておりまして,具体的な個々の内容は後ろに1つ1つ資料をつけておりますので,そちらで御紹介させていただきたいと思います。
 一旦次のページに行っていただきまして,4ページ目が,関係法令でございます。憲法で「能力に応じて,ひとしく教育を受ける権利を有する」というところから始まりまして,教育基本法でも保証されているということでございます。
 それから,一番下に国際人権規約でも高等教育の無償教育の漸進的な導入というところ,これまで我が国は留保しておりましたけれども,昨年,留保を撤回しておりますので,これにも取り組んでいかねばならないということでございます。
 それから次のページに参りまして,ここからは具体的な制度ごとの,先ほどのマトリックスになっていたものの1つ1つの御紹介でございますけれども,一番大きな奨学金についての御説明が何枚か続きます。
 まず,我が国の奨学金の,JASSO(日本学生支援機構)だけではなく奨学金事業の全体像でございます。一番左の大きな円グラフは,数で申しますと給付が多いのですけれども,その右の実際の貸与者数ですとか事業規模で見ますと貸与が多いという状況でございます。それから,一番右側ですけれども,その中で特にJASSOの奨学金がその大半を占めております。全体で見るとこういった状況にあるということでございます。
 次のページに参りまして,日本学生支援機構の奨学金事業の御説明を申し上げます。
 6ページですけれども,日本学生支援機構の奨学金事業は,無利子奨学金,それから有利子奨学金という貸与の事業でやっておりまして,右側の表がそれぞれ貸与の基準ですとか,返還方法の表になっております。無利子奨学金ですと,学力基準,それから家計基準。学力基準ですと,例えば大学の場合には高校の成績が3.5以上ですとか,これは私大で4人世帯の場合ですけれども,家計基準として955万円以下ということでやっております。
 また,有利子奨学金の場合の学力は,平均以上あるいは特定の分野において特に成績優秀ですとか,あるいは学習意欲のある学生ということ,それから家計の基準としまして,同じく私大の4人世帯ですと,メドとしましては1,200万円程度の家庭という家計基準でやっております。
 また,この無利子奨学金の中で平成24年度から「所得連動返済型の無利子奨学金制度」を導入しております。この御説明がこの中に少し入ってしまっておりますけれども,無利子奨学金の貸与基準の家計のところの一番下のポツに300万円以下とあります。最初に大学で貸与を受ける際の世帯の所得が300万円以下の場合には,この「所得連動返済型の無利子奨学金制度」の対象ということになりまして,この場合,返還方法の段ですけれども,下のポツを御覧ください。卒業後一定の収入,これは年収300万円ということで考えておりますけれども,この一定の収入を得るまでは返還期限を猶予するという制度を平成24年度から導入しているという状況でございます。
 次のページで規模の推移を御覧いただきたいのですけれども,全体として非常に大きく拡大しております。このうち棒グラフの下の方のブルーの部分が無利子奨学金,それから黄色い部分が有利子奨学金でございます,無利子奨学金の方はずっと横ばいでして,ただ,24年,25年のところでずっとそれまで横ばいだったものを少しずつ増やしているということでございます。この平成10年,11年のころから見ますと,有利子奨学金が著しく拡大しているという状況でございます。現在のところ,総数で144万人の生徒に貸与するということになります。
 それから次のページへ参りまして,8ページの奨学金の返還免除制度がどのようなものになるかということでございます。今,幾つか返還免除の制度がございますけれども,一番左から申しますと,死亡・心身障害による免除制度,これは昔からある制度で今もあります。なくなった制度も含めての御説明となりますけれども,このほかにかつてあった制度としまして,左側のその下に大学特別貸与奨学生制度というものがございまして,これは昭和58年に廃止されているものです。かつて特に優秀で,かつ経済的に著しく進学困難な学生に対しましては,一般の貸与に上乗せして特別貸与ということをやっておりまして,この一般貸与に相当する額を返還すれば残額は免除するという制度がございました。
 それから,真ん中の四角囲いで,先ほど,濱田先生もおっしゃっていましたが,教育・研究職免除制度というものが平成15年度のころまでございまして,これは教職あるいは研究職へついた場合には免除という制度でございます。これは平成10年度から学部段階,それから平成16年度から大学院段階が廃止されておりますが,これは特定の職のみを返還免除とすることへの不公平感からということでございます。
 それから,一番右に現在の制度としましては業績優秀者の免除制度がございます。これは大学院に限った制度でございますけれども,業績優秀,例えば顕著な成果ですとか,発見や発明等の業績を総合評価しまして,貸与修了者の10分の3を免除,そのうち上位3分の1が全額免除で,残りの3分の2が半額免除という制度でございます。これは平成16年に教職・研究職免除を廃止したときに代わってこの免除制度になっているということです。
 これが今,我が国の貸与の奨学金ではありますけれども,給付の要素のある制度として御紹介させていただきました。
 それから,奨学金の回収の状況についてもよく言われることですので,その次のページ,9ページにつけております。
 いろいろなデータが載っていて少し複雑ではございますけれども,ちょうど真ん中辺りに折れ線グラフのピンクの三角のところ,この返還を要する債権額に占める3か月以上の延滞債権の割合というところを御覧いただければと思います。平成16年,機構になって以来,ずっと順調に減り続けているという,そういった状況でございます。
 要返還債権額がずっと増加し続けているにもかかわらず,3か月以上の延滞債権額が減少しているということで,返還促進策が一定の功を奏しているのではないかということでございます。
 それから次のページに参りますけれども,返還の促進の関係で,延滞金のことについてちょっと御紹介をさせていただきます。約束の返還期日を過ぎて延滞になった場合ですけれども,現在,年365日当たり10%の割合で延滞金を賦課しております。近年,報道などでもこの延滞の場合のペナルティーが重いのではないかというような指摘もありまして,今どういう制度になっているかということで資料を入れさせていただきました。
 以上が現在の日本学生支援機構の奨学金制度の説明の部分でございます。
 続きまして,施策の御説明の中の奨学金以外の経済的支援の制度の御説明となります。11ページは,授業料減免の制度の御説明でございますが,国立大学,私立大学,それぞれございまして,国立大学ですと,予算で申しますと291億円で,免除対象が約5.4万人ということです。なかなか計算も難しいのですけれども,実績額を免除した人数で割って,1人当たりどれくらいかということを出してみると,約32万円ということに計算上なるのではないかという,そういったような規模でやっております。
 それから,私立大学の方は,右側の下の半分になります。予算で申しますと120億円,これは私学助成としてやっておりますので,授業料減免をやっているところに対して助成を2分の1補助するということでございます。
 免除の対象の人数としましては5.9万人,1人当たりの額を,これも無理やり計算をしますと32万円,これは一応大学が自己財源でやっている部分もありまして,その部分も含めたものということで32万円となっております。
 というのが国立大学や私立大学での授業料減免事業の大体の規模や仕組みでございます。
 それから次のページに参りまして,次のページから2ページ,大学院生への経済的支援の話の資料を入れさせていただいております。まずTA・RA,ティーチング・アシスタントですとか,リサーチ・アシスタントへの給与の形での支援ということでございます。TAやRAの支援は拡充している傾向にあるということでございます。ただ,博士課程の学生で生活費相当の受給,これは月15万円以上としますと,そういった受給を受けている人は10%程度というのが現状ですので,質の高い研究の担い手として支えていくには拡充が必要ではないかという資料でございます。
 それから次のページに参りまして,博士課程の学生につきましては,特別研究員事業もございますので御紹介させていただきます。
 これは優れた研究能力を有する若手研究者への支援ということで,日本学術振興会の特別研究員事業,研究奨励金が研究費とは別に,左下の表を御覧いただければ20万円から,特にレベルの高いものですと高い額も出る,という制度が博士課程の学生に対する支援でございます。
 以上が簡単ではございますけれども,現在の経済的支援策の御紹介でございまして,以下が関連データということで,学生への経済的支援の前提となる取り巻くデータの御説明をさせていただきます。
 まず15ページが,18歳人口ですとか,高等教育機関への進学率の推移ということでございます。
 18歳人口が白い棒グラフで,ピークに比べればずっと減ってきております。進学率が赤い折れ線グラフ,それから中ほどの青い折れ線グラフでございます。赤い折れ線グラフは,大学,短大,高専,専門学校まで入った進学率でございますが,80%まで来ております。また,中ほどの青い折れ線グラフの大学と短大だけの進学率で見ても56.2%というところまで来ているという状況でございます。
 それから次のページに参りまして,社会人の入学者がどのくらいいるかということでございます。経緯で見ますと1.6万人ぐらいいたのが,今,1.2万人ほどになっておりますけれども,このデータも社会人学生というデータをなかなかとるのが難しく,3色ございます,一番上のブルーの部分が通学生なのですけれども,このデータが大学の社会人特別枠で入学している人のみをとっているデータですので,恐らく社会人の学生はもっといるということなのですけれども,うまくデータがとれないのでこういう格好になっております。
 例えば,一番下の紫の部分は放送大学なのですけれども,これはずっと顕著に伸びているというような状況にあります。これは社会人の学びということにも一定のニーズがあるということと考えられます。
 今のは大学のデータでございまして,次のページ,17ページに参りますと,同じく専修学校での社会人受入れの状況でございます。一番太い紫の部分が専修学校の専門課程で6万2,000人という,結構ずっと伸びているという状況にあります。それから一番上のブルーの部分の附帯事業というのもかなり増加が顕著という状況にあるというのが社会人の受入れの状況です。
 それから,次のページ,18ページに参りますけれども,専門学校の入学者は特に様々なバックグラウンドの人がいますということのデータとして御紹介させていただきました。昼間部も夜間部もそれぞれにかなりバックグラウンドが多様であるということがわかるデータです。
 以上がバックグラウンドのことですけれども,次のページ,19ページからが教育費の負担に関するデータになります。
 大学卒業までにかかる教育費ということで,全て公立で行っても770万円,例えば小中のみ公立,あとは私立とすると約1,300万円,全て私立だと2,200万円とか,そういう積み上げができるという調査もございます。
 それから次の20ページに参りますと,大学の段階で奨学金を借りるとどうなるかということです。学部の4年間,私立で自宅外の学生が大学の4年間奨学金を借りると,それだけでも300万円,大学院まで行きますと約500万円,博士まで借りますと957万円というような数字になります。返還額がこのくらいに,社会に出るときにこのくらいの借金があるということは,心理的にも経済的にも負担が大きいのではないかということが推測されるということでございます。
 それから次のページに参りますけれども,21ページ,高等教育段階の教育費の家計負担の状況でございます。平均給与も減っている中で,特に左下,赤い一番太い四角でつないである折れ線グラフの一番下が年収ですけれども,ここがはっきりと大学では年収が少ない場合の進学率が低い方にあって,両親の年収が少ないほど4年生大学の進学率が低くなっているということでして,年収と進学率のところに一定の相関が見られるというデータが出ております。
 それから,右のデータですけれども,昨今の厳しい経済状況の下,学生生活費の調査をいたしますと,家庭からの給付が一番上の赤い星の折れ線ですけれども減っている。ただ,その分,アルバイト,真ん中のピンクのグラフを増やすのではなくて,奨学金の青い折れ線グラフを増やすことで補われているというようなことが見てとれる調査の結果でございます。
 それから次のページに参ります。学費や生活費の推移ということですが,緑の折れ線グラフが学費を消費者物価指数で補正したものなのでございます。学費はこの昭和59年を起点としますと,ずっと上がっている。一方,生活費の方は紫の折れ線ですけれども,これがずっと減っている。これは学費を補うために生活費を切り詰めている状況なのではないかというデータでございます。
 それから次のページへ参りまして,学生生活における収支の状況ということです。この2本の棒グラフがありますけれども,左側の支出が10年前の平成12年から減少傾向にあります。その分,アルバイトをしなければ,結局支出と収入が合わないというようなことを示す状況でございます。生活費を切り詰めてずっと減ってはいるけれども,それでもアルバイトをして補っているということがわかるデータです。
 それから次のページ,24ページですけれども,3つ調査を紹介させていただきます。
 まず一番上ですけれども,これは所得と進学率の相関なのですけれども,これを中学3年生のときの成績別に見てみたらどうかというデータです。ブルーの一番上にある折れ線グラフが中学の成績が上という比較的成績の良かった層ですけれども,成績の良かった層であっても,保護者の年収と進学率の間にこれだけ相関が出ている。これはここには載せておりませんが,数年前にあった同種の調査では,成績の上の人たちというのはここまで相関がなかったのですけれども,これが相関が出てきているという,特に低所得者層の進学率と高所得者層では1.5倍近い差が成績上位者でも出てきているというデータでございます。
 それから,右の方に文字で載せておりますけれども,教育費負担に関する考え方が所得階層別にどうかという話です。1つだけ御紹介しますと,一番下の「返済が必要な奨学金は,負担となるので,借りたくない」と答えた人がどれくらいいるかということです。これは高所得者層では余り借りないのだと思いますけれども,低所得者の人たちも,結局,半分以上の人が「強くそう思う」,あるいは「そう思う」と回答しているということです。
 それから,次の真ん中のデータの御紹介ですけれども,これは私立大学の教職員組合が毎年やっている調査でございます。関東圏の大学で調べたデータですけれども,入学時に奨学金を希望すると回答している学生が3分の2います。ただ,その希望している者のうち,実際に奨学金を申請したという学生が,更にまたその3分の2という,希望するけれども申請をしていないという層もかなりの程度いるということでございます。
 それから3つ目の「長崎県の」で始まるこの調査ですけれども,簡略に書いてしまっていますので少し御説明を補足しますと,この調査は九州大学の高等教育開発推進センターというところで行ったものです。これは長崎県内の公立高校32校を対象に,高校3年生の進路指導に携わる先生対象に行った調査で,8月時点で国内の主要大学,主要大学というのは,目安として旧帝大レベルというふうに調査票に書いておりましたけれども,そういった大学,旧帝大レベルの大学に先生から見て進学できそうな生徒のうち,主に家計の困窮によって進学そのものを断念した生徒がどのくらいいるかということを教師に対する聞き取りで調査したものです。
 大学進学そのものを断念した,あるいはするかもしれない生徒が3%存在し,ここには書きませんでしたけれども,大学進学そのものを断念しなくても,進学先を地元の大学などに変更した,あるいはするかもしれないという生徒が7.2%存在するという,そういったデータがございまして,これは地域性としても長崎県のみの話ということにはなるのですけれども,1つの興味深いデータだと思いまして紹介させていただきました。
 それから次のページに参りまして,大学生の経済的状況を推察するデータとしまして,授業料滞納の状況や退学者がどのくらいいるかということでございます。授業料を滞納している生徒は,ちょっと古い平成20年のデータですけれども1万4,000人,それから,中退者が5万人おりますけれども,そのうち経済的理由による中途退学者が15.6%いると。また,休学者も4万8,000人いるうち,経済的理由による休学が14.7%いるというデータでございます。
 それから次のページに参りまして,26ページ,27ページは,就職の内定率でございます。実際,奨学金を借りて卒業した後にどういう状況かということの参考にしております。
 更にその次,28ページに進んでいただきますと,中・高・大と卒業した後にどうなるかという話です。例えば大学を卒業した後,卒業者は毎年約85万人とありますけれども,そのうち正規雇用に行くのが45.1万人,非正規雇用が24.2万人いる。ニートも1.6万人とありますけれども,こういったような構造になっているという話でございます。
 更にその人たちの所得の状況がどうかということで,29ページを御覧ください。大学院を除いていますけれども,高等教育機関を卒業した人のその後の年収の推移ということで,特に御覧いただきたいのが,ちょっと濃い紺色の折れ線グラフです。これが所得300万円未満の人の割合のデータです。卒業当初,20から24歳とか,最初は300万円未満という方はたくさんいますけれども,それがだんだん減っていくわけです。それが30代になると大体落ち着くわけですけれども,その落ち着いているところが33%とか34%とかというところで定年のあたりまでずっと行くと。要は,大学を出て約3割の者が年収300万円を下回っているということでございます。これは専業主婦などを除いていて,有業者のみのデータでこうだということが総務省の就業構造基本調査からわかるということでございます。
 ここまでが学生の経済的状況をめぐるデータでございまして,最後に諸外国との比較という観点でデータをつくっております。31ページからでございます。
 高等教育の教育費にかかる財政支援の状況ということで,OECD平均が赤い線で横に0.5%というところで。OECDの,1.1%ですね,失礼しました。

【松尾課長】  OECDの方は1.1で。

【保立課長補佐】  1.1%ですね。

【松尾課長】  公財政支出は日本では0.5ということでOECD平均の半分というデータでございます。これはいつも使っているデータでございます。

【保立課長補佐】  それから次のページ,32ページ,これもOECDのよく出している表です。32ページも表の軸が入っていなくて申し訳なかったのですけれども,縦の軸,一番上が7,000のこの縦の軸が国立及び州立大学の授業料,単位はドルです。右の何%というのは,学生のうち奨学金などの受給割合,どれくらいの学生が奨学金等を受給しているかということでございます。
 ですので,授業料が低い場合と,それから奨学金でどれくらい手厚いかということですけれども,日本が比較的左上の方にいるということは,授業料は比較的高いけれども,奨学金が余り充実していないという。OECDからも,授業料が高く,学生支援が比較的整備されていない国の例として,「図表で見る教育」というOECDの出版物でも紹介されているというような状況でございます。
 それから次のページに参りまして,33ページ,先ほど,社会人の学びのニーズについてもちょっと御紹介したものの国際比較のようなことになります。左が非大学型の職業教育的な教育機関への社会人の入学割合,右が大学型の高等機関への社会人の入学割合で,いずれにしても日本が各国との比較から見ても非常に低いということがわかるデータです。
 最後の34ページ,35ページですけれども,諸外国の奨学金制度の簡単な比較のようなことでございます。データもたくさんございますのでポイントだけ申し上げますが,まず34ページの奨学金制度の比較で見ますと,日本を除く,アメリカ,イギリス,ドイツ,韓国,いずれも左から3つ目の枠で給付型というのがあるというところがわかるかと思います。例えばドイツですと,一部の州において授業料を徴収といって,授業料自体も余り高くないのですけれども,それでも給付型があるというようなことがわかります。
 それから,ざっと先に進みますと,35ページ,奨学金の返還方法についてです。これは日本が所得連動返済型という借りるときに収入が300万円以下の家庭であった場合には,返済時に自らの収入が300万円を超えなければ返済猶予するという制度ですけれども,諸外国ですと,もう少し実際に所得の何%という形での返還額が決まるような方法を導入している国が多いということがわかるかと思います。
 また,それが良いことか悪いことかというのはまた別に見ますと,アメリカですと,利率のところが利子補給があっても利子が3.4%,利子補給がないと6.8%とかという比較的高い利子を設定しているような,そうやって運営している制度もあるということがわかるかと思います。
 最初のこちらからの御説明は以上にさせていただきまして,また御質問の形でお受けできればと思います。

【小林主査】  ありがとうございました。
 詳細に説明いただきましたけれど,今の御説明について,御意見,御質問等ございませんでしょうか。
 私から1つだけ申し上げておきますけれども,最後の6.8%というのは非常に高い利率ですけれど,これはオバマ政権は3.4%にとどめるということでずっと努力してきたということがありますので,これからもそれを続けるということを申しているようです。
 それでは,また何かありましたら戻るということにいたしまして,次に進めさせていただきます。
 これから現状あるいは諸外国の在り方等も含めて,学生への支援の在り方について,御自由に議論いただきたいと思います。ただ,論点を若干整理したいと思いますので,資料4の論点の例の御説明を事務局でお願いいたします。

【保立課長補佐】  資料4を御説明させていただきます。
 こちらで思いつく例ということですけれども,1.の学生の経済的現状の分析についてでございます。まずは前提となる現状分析をどう見るかという,上の2つの星が学生の所得層ですとか,現在,在学している学生の状況ということでございます。大学の進学率,また現在の経済状況も踏まえてこういったことがどうかといったこと。それから,次の3つ目,4つ目の返還状況。これは卒業後に学生の置かれた状況,これも現在の経済状況も踏まえてどうであるかということ。それから最後,社会人学生の状況分析,日本は非常に少ないということでしたけれども,どういうニーズがあって,何がネックになってなかなか学びの方に来られないのかですとか,社会人学生の状況ということがまず現状の分析ということでございます。
 それから2.に経済的支援の在り方ということですけれども,例えば学生への経済的支援の意義をどのように考えるか。例えば,進路の選択に与える影響がどうか,それから,そもそも高等教育の費用負担の在り方として,国として何に対してどこまで行うのが適切かということ。それから,社会人学生の支援の在り方,現役の高校から上がった学生への支援のみではなく,社会人の学生へはどのような形が適切かということです。
 それから3.で,今までが総論のような話でして,その後,3.4.5.が,それぞれのテーマごとの話,各論になります。まず現行の貸与型支援についての論点でございますけれども,無利子奨学金と有利子奨学金がございます。御覧いただいたとおり,特にこの平成11年以降,有利子奨学金を中心に拡大をしてきているわけです。こういったバランスの在り方ですとか,本来,無利子奨学金ということなのではないかとか,それから,例えば平成24年度の所得連動返済型というのは無利子奨学金のみに導入しているわけですけれども,こういったことも含めて無利子奨学金と有利子奨学金の制度をどう設計していくかということ。それから次の適切な貸与規模,回収との関係も含めてということですけれども,大学が非常にマスがユニバーサルなものになっていきまして,貸与規模も拡大していきますと,回収との関係ということも出てきますし,そもそもどこまで貸与するのが適切かということも出てくるかと思います。
 それから,次の回収方策でございますけれども,返せる人と返せない人をきちんと峻別して,真に返せない人への手当てと,返せる人からはしっかり返してもらうという方策をどう制度設計していくかということ。それから,延滞金,先ほど御紹介しました10%ということの負担感ですとか,また,率だけでなく,延滞金の賦し方というのはどういう形が適切なのかという論点があるかと思います。
 それから次に,持続的な制度設計ということですけれども,先ほどの貸与規模の話もありますし,また,それだけ貸与規模が増えているということになりますと,それを支える,例えば手数料といったようなことが必要なのかどうかですとか,どう持続的な制度にしていくかという観点を持った制度設計が必要だということでございます。
 それから次の4.ですけれども,返還者の経済状況に応じた返還方法,これは現在,平成24年度から「所得連動返済型の無利子奨学金制度」を導入しておりますけれども,これをもっと本格的に奨学金全体に導入しようとした場合の課題としてどういったことが生じるか。
 例えば,こういうことを導入するためには所得をきちんと把握できなければならないわけですけれども,これはマイナンバー法の施行を前提にということになるかとは思います。所得データをきちんと電子的に使えなければならないのではないかとか,それから,所得連動,今は単に300万円を超えるまでは猶予しているというだけですけれども,これは諸外国の例を見ましても,一定期間,例えば20年とか25年間経過しましたら,その時点で債務を免除しているという制度が多くございますので,一体どういう制度設計を我が国ですることが適切かというような論点がいろいろ出てくるかと思います。
 それから,ほかにも経済的状況を事由とした免除ですとか,ほかの方法としてどういうことが考えられるかということです。
 それから次のページ,更に手厚い経済的支援として,例えば給付的な支援がどうあるべきかということ。その給付的な支援と申しましても,例えば観点としまして,例の1から4ですけれども,経済的な要件を考慮した「奨学」的な支援なのか,それとも成績やインセンティブのようなことを特に重視した「育英」的な支援なのか。
 それから,どういう人に給付するかというのを事前に判断するか,事後に判断するか,具体的にはあらかじめ給付をしてしまう,あるいは授業料を免除してしまうという事前の形がいいのか,それとも一定の成績をとった場合には返済免除ですとか,事後の形がいいのか。
 それから,実施体制の問題,これは例えば成績要件の判断基準をとってみましても,現在は高校の成績などで見ているわけでございますけれども,給付のような形になってまいりますと,公平性という観点から,そのままでいいのかと。公平性の観点から,例えば一斉試験のようなことが可能なのか,成績要件は誰がどう判断するのかということかと思いますけれども,そういったような実施体制をどうするのかという話。それから,その他の給付的な支援との関係をどう整理して制度設計するのかというような論点が出てくるかと思います。
 その他,経済的な支援を検討するに当たって考慮すべき事項としまして,大学院生の経済的支援の在り方,民間奨学金との関係,それから,奨学金のような形のみでは必ずしもなく,例えば米国ですと税制というような形もございますので,そういったこととどう制度設計をするか。
 最後に,奨学金にしましても,借りる人に十分に情報提供ができているのか,金融リテラシーといったような教育をしっかり充実することが必要ではないかというようなことが論点になるかと思います。
 以上でございます。

【小林主査】  ありがとうございました。
 あと1時間ほどありますので,今日は初回ということもありますので,様々な論点があるわけでありますけれど,自由に御意見を一人一人の委員の方から頂戴したいと思います。

【松尾課長】  1点だけ補足をさせていただきたいと思います。

【小林主査】  どうぞ。

【松尾課長】  今,詳細に説明させていただきましたけれども,今回,経済的支援の在り方について議論いただく目的でございます。全体,奨学金の在り方について,それから経済的支援,給付的な要素も含めて議論いただくということで,ほかの制度との関係など,恐らく長期間かけて議論せねばならないようなところはあると思います。ただ,短期的に改善したいとか,短期的にやりたい部分については,コンセントレートにやっていただいて,できるだけ26年度の予算につなげたいと思ってございます。
 したがいまして,この資料5にありますように,当面の検討会日程ということで,本日,第1回でございますが,3回か4回やって26年度につなげていくものと,やはりもうちょっと長期間かけて議論すべきものと,少し分けて議論いただければ有り難いと思います。今,保立の方から資料4で説明させていただきました論点,これは論理的な理論的な構築と,それから具体的な貸与の在り方と,返還の方法と,それから更にということで,論点がちょっと多くなってございます。これを全て網羅するとやはり膨大になりますので,先生方にも,少し長期間時間をかけて行うべきところと,ここは最初にやった方がいいんじゃないかというところを踏まえた上で議論いただけると,我々としても26年度に反映できる部分と,少し時間をかけてやる部分と,頭の整理をしながら議論いただけると有り難いなと思っている次第でございます。

【小林主査】  今,松尾課長の方からありましたように,例えば,経済支援の在り方,これは非常に原理的な問題でありまして,高等教育の費用の負担の在り方をどうするかというのは非常に大きな問題です。これが定まらないと学生支援の在り方もなかなか決まらないというところもあるのですが,そうは言っても,すぐできることと,これからやらなければいけないことと両方あるので,両方見ていただいて,これはわりと導入できるかなというようなことについて,今日は特にその辺のことも含めて御意見を頂ければと思いますけれど,いかがでしょうか。
 私の方から見ますと,先ほど言いました延滞金の在り方というのは,これは延滞金をどうするかという原理的なことを言うと非常に大きな問題になってしまいますけれども,例えば10%が適切かどうかとか,その辺については比較的議論がしやすいのかなというような気がいたします。例えばこの延滞金についてはいかがでしょうか。そもそも10%というのはなぜ決まっているかということを少しJASSO側から御説明いただければ有り難いのですが。いかがでしょうか。

【松尾課長】  では,ちょっと私の方から。
 正確な説明になるかどうかわかりませんけれども,恐らくJASSOにおける延滞金の在り方については,省令で定めてございます。それで,延滞した翌日から年利10%ということになっていますけれども,これは国税,国の税金の延滞でありますとか,他の制度との比較でやってございまして,国税につきましては,今,14%くらいになってございます。それから,ほかの制度でもやはり10%くらいになっているのですけれども,ほかの制度はいろいろな書き方がありまして,例えば,延滞して2か月間は少し低い半分の7%でやって,3か月を超えると14%に上げるとか,そういった書き方をしているケースもありますし,ほかのところは14%で行くというケースもございます。JASSOについては,それよりも低めということで10%で設定しているというのが恐らく現状だと思います。
 ただ一方で,国税につきましては,今,国税の法律の改正がありまして,26年からだと思いますけれども,これは現行利息水準で,恐らくアッパーが9.3%,そして最初の2か月間は3%で行ってということで,ちょっと低めに今度は設定されるような法律改正が行われますので,国会でもやはりほかの制度も言われていまして,それはやはりもっと下げるべきではないかという議論がありますので,そこはそれを見据えた形で少し改正をすることになるのではないかと思います。
 したがって,延滞金については2つの論点がありまして,10%というのがいいのかどうか,それから,かけ方が一律でいいのかどうか,これが多分延滞金についての論点としてあるのだと思います。

【小林主査】  今,延滞金については2つの論点があるということだったのですが,いかがでしょうか。
 どうぞ。

【松本委員】  借りたお金を返すというのは,これはもう当たり前な社会常識でありまして,このことについて,じゃあなぜ返せないのかという背景の分析が当然大事なことなのだと思いますけれども,それにしても一遍に10%というのは,私の感覚だけかもしれませんけれども,今の御時世を考えますと,やはりかなり強烈だなと。今,松尾課長も例を御紹介されていましたけれども,やはり返すということも奨学金に関しては一定の教育効果みたいなものと考えてもいいんじゃないかなと,ほかの借金とは違うということで,できるのであれば,ここまでは猶予するけれども,ここから先はこうなるよみたいな段階的な傾斜的なものにしていくとか,そういうちょっと余裕が欲しいなというのが私の意見ですけれども。

【小林主査】  ありがとうございました。

【月岡理事】  ちょっとすみません。

【小林主査】  はい,どうぞ。

【月岡理事】  資料の10ページのところで,まず,10%つくのですけれども,基本的には割賦ごとにつきますので,1万円に対して10%ですけれども,一月分ですから12分の1になるということですから,1万円に対して100円ぐらい延滞金がつきます,翌月も同じように100円ついて,また翌月延滞していると,新たに延滞となった分についてまたつくという,そういうふうな形で,ここのこういった数字の形になっていく。それから……。

【松本委員】  ですから,返す努力みたいなものを入れたいなと,一生懸命やはり借りて,自分は勉強できたのだと,でも,いろいろな事情で返せないというようなところをやはりこう何かちょっとサポートしてあげるような,それが10がいいのか,7がいいのか,5から始めるのがいいのかわかりませんけれども,私の主張はそういう意味です。

【月岡理事】  ちょっと説明だけなのですけれども,延滞が始まりまして,ここに一月目から延滞金がつくとありますけれども,実は一月目のここには延滞金はつけておりません。それが1点です。
 それからもう1点は,延滞になった後でも,猶予の手続をとっていただきますと,さかのぼって猶予を承認しますので,その段階で延滞金は消えます。奨学生の方が返還できる力があるかどうか,返還しようとしているかどうかは,実のところ,御相談があって初めてわかるという仕組みでございますので,その段階で御相談があって,経済的に困難であるということで申請していただければ,承認をして,さかのぼって延滞金は消えるといったような仕組みをとっております。

【小林主査】  この延滞金という考え方もなかなか複雑な仕組みで,普通の人にはちょっとわかりにくいところもあるのですけれど,その辺も含めて在り方をどうしたらいいかということもあるかと思いますが,いかがでしょうか。
 私が聞いているところだと,延滞金が当然最初に返還に充当されていくわけですよね。ですから,なかなか元金が減らないというようなことがあって,それともう1つの問題は,延滞金がかさんだ場合,延滞金が全部,まず延滞金を返還しないと猶予とか様々な返還の軽減の施策が受けられないというようなことを聞いているのですけれども,それはそれで正しいのでしょうか。

【月岡理事】  まず延滞者から申請があったときに,さかのぼって承認することができます。例えば数か月延滞しておりましたと,それで書類を整えて申請していただければ,その段階で数か月間はさかのぼって承認できますので,そこで猶予は大丈夫になります。
 ただ,先生御指摘のように,延滞が長くなってしまって,昔のことについて証する書類が出せませんといったときには,まず出せるところまでのところを支払って解消した上で書類があるところを猶予するとか,そういったことは可能だというふうに対応しております。
 それから,延滞金の充当の順番は,基本的には先生御指摘のように,延滞金に充当して,利子があれば利子に充当して,そして元金に充当するという,そういう順番でしておりますので,なかなか元金が減らないという,そういったこともひょっとしたらあるかもしれません。今,松尾課長からのお話のように,国税の方でも検討するというお話でございますので,我々もそういった状況を見ながら,率の問題等々については,そこは検討しなければいけないというふうに思っております。

【小林主査】  国税が9.3%になると,10%というのはそれより高いということになりますので,それはどう考えても高過ぎるというのは真っ当な判断だろうと思いますので,これは下げるということについては特に御異論がないのではないかと思いますが,いかがでしょうか。

【濱田委員】  そうですね。

【小林主査】  その辺は,どのあたりが適正かということは,1つの論点としてもう少し検討していただくということで。
 それから,先ほど,松本先生が言われたように,段階的にやるということも1つの考え方としてあるかなと思いますので,それも含めて検討していただければと思うんですけれど。

【中村委員】  よろしいでしょうか。

【小林主査】  はい,どうぞ。

【中村委員】  すみません,これ,ただ単に延滞したから10%という金利的な問題というよりも,今のこのデータの中には,大学等卒業後,30歳から50歳の中で,3割の割合の中で年収が300万円以下だという方がいらっしゃるという中において,是非返済できる金額という面における譲歩を頂ければ有り難いなと。決して金利が高い安いではない,その人が置かれている環境じゃないかと思うんです。それが一番人を育てるというところに,本来の趣旨になってくると思いますけれども,いかがでしょうか。

【石矢奨学事業本部長】  それにつきましては,平成22年度から減額返還制度というのを今導入しておりまして,月々平均1万4,000円ほどをお返しいただいているのですけれども,その金額が高いということであれば,その半分をお返しいただくという,その間,最大5年延びます。5年分を10年で払うという形になりますので,そういった制度も導入しております。

【松尾課長】  今,中村先生が言われたように,やはり返済するときの経済状況で返済するというのが多分望ましいのだと思います。そういう意味で,保立の方からも説明しましたけれども,「所得連動返済型の無利子奨学金制度」という制度を導入したのはそれが理由だったんです。マイナンバー法が制度設計されて,早ければ29年くらいから運用されるのですけれども,そうすると,本人の所得が確認できますので,その所得に応じて返済額を決めていくというのができるようになります。ただ問題は,有利子奨学金はいろいろ難しくて,それはなぜかというと,有利子の場合は財源が財政融資資金という市場からお金を借りてやっています。市場から融資されたお金を毀損できない以上,返還をきちんとやらなければいけないので,そこの部分がちょっと難しくて,そこをどう制度設計するかというのが課題になっているのですけれども,とにかく大きな流れとしては,返還するときの経済状況に応じて返還額を決めるという方向に,この所得連動型を生かすという方向であることは多分間違いないので,その方向で検討はしているところです。

【中村委員】  お金の原資がどこにあるかというのは。

【松尾課長】  関係ないです。

【中村委員】  問題ではないんですね。

【松尾課長】  もちろん。

【中村委員】  国民としては,みんな一緒なんですよ。

【松尾課長】  そうなんです。

【中村委員】  グロスで。

【松尾課長】  そうなんです。だから,そこは少し僕たちも制度設計をしていかないと駄目で,それで子供たちが不利益を被るというのは本末転倒になってしまうので,そこは検討したいと思います。

【中村委員】  本当は全部が無利子なら有り難いですけれどもね。全部をそこの中に拡大していただけると,そういう問題がなくなっていくのではないかと思うのですけれどもね。

【松尾課長】  そうなんですよね。

【奥舎委員】  よろしいですか。

【小林主査】  はい,どうぞ。

【奥舎委員】  私どもの大学の学生の中には,高校のときに予約して奨学金を借りるのですけれども,はっきり言うと,延滞金とか利子がつくということさえ知らない学生がいるわけです。もちろん親もそうなんですね。ですから,高校で予約するときに,しっかりと広報していただきたいと。これはもう今回の10%でも何でもそうですけれども,少し広報が弱いのではないかと感じております。

【中村委員】  いいですか。

【小林主査】  はい,どうぞ。

【中村委員】  難しいですね。自分が高校の教員をやっているときにその説明をしたのですけれども,延滞金10%と高校生に言っても,まずピンとこない。親もまだ若くて,将来的にそうなるかもしれないけれども,今,家庭困窮だからということで手が出てしまうというのが実情だと思いますので。

【奥舎委員】  その悪循環が重なっていくわけですね。ですから,就職していっても,奨学金を何で返さなければいけないかというような学生がいるわけです。ですから,もっと広報と訴えるPR,これはもう絶対やっていただきたいとお願いしたいと思います。

【小林主査】  最後の論点のところにありました情報提供と金融リテラシーというのは,先生が今おっしゃった問題ですが,これは各国ともかなり努力されていることです。日本では,余りそういう点では確かになかなかできてこなかった。
 例えば,JASSOに今,奨学金のシミュレーターというのがありまして,シミュレーションできて,どのくらい借りるとどのくらい返済しなければいけないかとか,そういうことがわかるようになっているのですけれど,今,先生がおっしゃったようなことをするためには,それを例えば高校生とか保護者の方が使わないと意味がないわけです。

【奥舎委員】  そうです。

【小林主査】  それは1つの例えば高校段階でそういった金融リテラシーの教育を行うとか,そういうことも考えられると思います。
 どうぞ。

【相川委員】  今,高校の段階で,実際,自分が幾ら借りたら幾ら返すという,そういう返済プランというのはなかなか作りにくいというのが,担当の先生方,それはそれぞれの家庭の経済状況を聞き出すのに,なかなか聞きにくいという状況もあるという声も実際あるので,その辺はいろいろな広報をしながら,やはり子供たち自身も自分が借りたものは返すということは大事なことなので,そういう部分でいろいろな広報は必要なのかなということが1点と,私,今回この学生への経済的支援ということで,まず高校を卒業した子供たちが大学へ進学するに当たってということでの奨学金という位置づけで議論が進められていくのだなというふうに思っていましたけれども,高校に上がる段階で,高校生活を送るに当たっても,各県での奨学金を借りて高校生活をしている生徒がいるということ,そして,高校を卒業する段階で,就職した場合は年収,ある程度猶予期間があって,1年後にやって9年間でという形で返すのですけれども,高校のときに奨学金を頂いて,更に大学へ進学する,そうすると,ここでまた借金を持って大学奨学金を日本学生支援機構にお借りしたりということが実際あるのだということを踏まえて考えていかないと,そうすると,子供たち,ダブルで借金を背負うという状況があるということを,ここを何とかしなければいけないのかなと思っているので,これはさっき短期的に議論するところと,長期的に議論するところと,というようなお話もありましたので,まず高校生が高校生活を送る3年間で,それぞれの県の支出の範囲内で貸付けしている制度の奨学金を借りている子供たちがいるということもまず念頭に置いていただければ有り難いなと思っていますので,その辺も踏まえてよろしくお願いしたいと思います。

【小林主査】  ありがとうございました。
 高校のことについては,今は都道府県に移管していますから,JASSOは直接データは持っていないと思いますけれども,文科省から出していただけますか。

【松尾課長】  確認してみます。

【小林主査】  よろしくお願いします。

【松尾課長】  はい。

【小林主査】  それから,先ほども説明あったのですけれども,今,大学院しか返還の免除がない。高校とか大学については一切ないので,それが例えば高校,大学と借りるとかなりの金額になってしまうという,それも大きな問題だと思います。これがすぐできる話なのか,もう少し検討しなければいけない問題なのかというのはあると思いますけれども,一応問題としてはかなり大きな問題としてあるかと思います。
 ほかにいかがでしょうか。

【濱田委員】  関連してよろしいですか。

【小林主査】  はい,どうぞ。

【濱田委員】  やはり大学院,特にドクターコース修了者が何らかの職に就くということのある種困難性というのは社会的な問題としてもあると思います。それと返還の問題というのはどうしてもくっついてきて,もちろんいろいろな配慮がなされていることは知りつつも,ドクター取得者の個人レベルで見ますと,非常に厳しい例を私個人も見てきまして,その辺を短期的にできる問題なのかどうかは別といたしまして,検討する余地があるのではないかなという感じがいたします。

【小林主査】  先ほども資料にありましたけれども,高校から借りて大学でまた借りたら,すごい額になります。

【濱田委員】  1,000万円になってしまいます。

【小林主査】  1,000万円ですからね,それは考えなければいけない問題だろうと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 非常に論点はいろいろありますけれど,延滞金以外にわりと短期的にできるというようなことですと,先ほどのリテラシーのことというのは,すぐにはできないかもしれないのですけれども,比較的わかりやすい話だとは思います。中学,高校段階でということですので,ちょっとほかの初中局との関係とかも出てくるのかもしれませんけれども,それはこの委員会としては是非そういうことを要望していきたいということだろうと思います。
 それから,当然,大学とか専門学校についても同じように,やはり学生に対して情報提供していくということを強化していくということも必要だろうというように思います。

【保立課長補佐】  リテラシーに関しまして,高校にどういうものを送っているのかということもあるかと思いますので,参考としてお机の上に置かせていただきました。

【松尾課長】  すみません,ちょっとお伺いしたいのですけれども,リテラシーと言ったときに,どういうふうにしてお子さんであるとか,それから親御さんに発信していくのが一番効果的なのでしょうか。例えば,相川先生のところで,親御さんですとか,あるいは高校生の学生に奨学金とは何であるかですとか,あるいは返すものだよというのを教える一番効果的な方法というか,地道にやっていくのが一番なのですけれども,どういった方法が良いのでしょうか。

【相川委員】  各学校,奨学金の担当の窓口の先生がいらっしゃると思うんですね。そこへつなぐというのは,基本は担任の先生だと思います。

【松尾課長】  担任の先生。

【相川委員】  だと思います。担任の先生が自分のクラスの子供が進学したい,でも,経済的にちょっとどうかなというときは,こういう方法もある,こういう方法もあるよということ,担任の先生がそこをわかっているかどうか。担任の先生が,自分はちょっとわからないから,奨学金の担当の先生の方に,進路の先生の方にというような流れを出すか。ただ,やはり子供が一番接して気軽に相談できるというのが担任の先生だと思うので,担任の先生がそういう制度を理解しているかどうかという。

【松尾課長】  親御さんはどうですか。

【相川委員】  保護者の場合は,子供が大学へ行きたいという希望がある。でも,自分のところの経済事情だとなかなか厳しいねといったときに,やはり窓口は担任に,どういう方法があるでしょうねという相談をすると思います。ですから,そこを先生方が,担任の先生と言ったら,どの方が担任になるかわからないわけですから,いわゆる先生方がこの制度をまず理解しているかどうかというところが基本になると思うのですけれども。
 例えば,進路ガイダンスなんかを学校単位でやりますよね。そのときにこういう制度もありますよという,保護者向けの進路ガイダンスのときに,こういう制度がありますので,活用する,質問などありましたら,窓口はこの先生ですとか,担任の先生へというふうにして説明をする学校もあると思います。特に進学校の場合は。結局,普通高校でも半分進学,半分就職というような高校と,ほとんど進学する高校,やはりいろいろ分かれますので,そうすると,きちんと進路ガイダンスみたいな形で時間をとる学校と,就職に主を置いたいわゆるガイダンスをする学校,いろいろあるものですから。そういうときにこういうものが直接渡る形であれば,保護者としては,こういう制度もあるのね。そうでなかったら,本当に早いところ,一般の金融機関の教育ローンみたいなものを借りなければいけないですとか。自分の経済的な,希望しても親の所得で合致しないですとか,そういう説明を聞いて初めてわかるところがあるわけですよね。
 自分の息子にも,大学へ行くときは自分で借りなさいと言って,自分で学校へ行ってと言ったら,「いや,お母さん,収入で借りられるところと借りられないところがあって」と言われて,私も,ああ,そうなんだと思ったことがあるので,ですから,保護者向けはそういうガイダンスだと思いますし,やはり基本的には担任の先生が窓口ではないかなというふうに思います。

【小林主査】  資料に出させていただいた保護者の調査で,これは高校を卒業してからの方ですけれども,JASSOの認知度というのがやはりかなりまだ改善の余地があるんですね。3割の方は「知らない」,「よく知らない」ということなので,これが多分,高校,中学になったらもっとずっと高いと思います。ですから,もう少しこういう方法があるということは言っていかなければならないし,それから,アメリカ,高校や大学の先生の研修をやります。それによって,まずおっしゃるように,全部の先生が知るというのは非常に大変なので,まず進路指導の先生に知ってもらってということで広めていくというようなことをやっているようなのですけれど,そういうことは例えば文科省として考えていただいてもいいのかなとは思います。

【月岡理事】  私たちがやっていることを少し説明させてもらってよろしいでしょうか。

【小林主査】  はい,どうぞ。

【月岡理事】  1つは,学校現場へのアプローチということで,県の教育委員会には進路指導担当の指導主事という方がおられますけれども,文科省が主催していますこの進路指導担当の指導主事会議に出席いたしまして,こういった取り組みをしておりますといったことについての説明をさせていただいております。
 それから,昨年度は,全国の校長会にチラシを入れてほしいということをお願いいたしまして,校長会の理事会で配っております。
 それから,相川先生のところの全国高等学校PTA連合会の会合でもチラシを配らせてほしいといったことでお願いをしております。
 それから,『月刊高校教育』という雑誌がございまして,それに奨学金関係の情報提供ということで,毎号2ページ,昨年4月号から連載をさせていただいております。
 それ以外にも教育委員会の方から,例えば研修会をするからということでお呼びがあれば,それに出かけていきまして説明をしているといったケースもございます。

【小林主査】  今,最初に言われた進路指導の主事会議というのは,どのレベルなのですか。進路指導の主事というのも相当数がいると思うのですけれども。

【月岡理事】  都道府県教育委員会の進路指導担当の指導主事です。

【小林主査】  ですよね。各学校の進路指導主事ではなくて,県レベルのということですね。

【月岡理事】  はい,そこから各県に帰られた後に。

【小林主査】  次に行くということですね。

【月岡理事】  各都道府県では高校の進路指導主事を集める会議があって,伝達講習というようなものがあるのではないかと思います。

【小林主査】  いろいろやられているということはわかりましたけれども,本当の現場の方までまだ下りていないという感じがするんですよね。間接的に県のレベルという感じでしたので,その辺もやれることがないかなというのを少し考えた方がいいのではないかという気がしますけれど。
 ほかにいかがでしょうか。もういろいろな御意見が出ておりますので,ほかの論点としても結構です。
 はい,どうぞ。

【奥舎委員】  私,ちょっと変な意見を言ってもいいでしょうか。

【小林主査】  はい,どうぞ。

【奥舎委員】  法律上,無理かもわかりませんが,この奨学金を借りたお金を,例えば税額控除とか,保険料控除みたいに税金の対策ということは全くできないのでしょうか。そういう方法は無理でしょうか。

【小林主査】  かつてそういうことを検討されたということは聞いております。ただ,詳しい経緯は私は知らないのですけれど,先生がおっしゃるのは,返還した分については税額控除を受けられるということですよね。

【奥舎委員】  税額控除でも,例えば普通の控除額でも,税金の控除でもいいのですけれども。税額控除はすごい額ですから無理でしょうけれども。
 そうすると,そういう恩典とか利点があれば,返還金というんですか,そういうものがやはりする気になっていくのかなという感じはしますけれども。

【石矢奨学事業本部長】  税額控除の対象にならないかということで検討されたことはございます。実際それが日の目を見ることはありませんでしたが。

【小林主査】  ただ,そのときどうして実現しなかったのですか。答えにくければいいですけれども。

【松尾課長】  いつごろですか。

【徳久理事長代理】  前政権時代に,様々な案を考えた中の1つとして,奨学金の充実という,滞納を減らすという方策の1つとしてです。

【奥舎委員】  やはりあるのですね。

【徳久理事長代理】  ワン・オブ・ゼムとしてあったと。ただ,やはり実現可能性という点や,財政当局との関係で実現しなかったと承知しています。

【奥舎委員】  ただ,税金なんか,例えば2割課税だったら,20万円だと税額にすれば2万円の控除ですね。そうしたら,税額控除がなかったら,2割としても20万円だとしたら4万円の税金が少なくなるだけですからね。それよりは,元の返した額で機構が回ったり,予算的に運用した方が実質的に身が入るんじゃないですかね。短絡な税のことだけ考えるのではなしに。

【徳久理事長代理】  恐らく今,私の承知している範囲で,税額控除の対象になっているのは,例えば教育の分野だと,寄附金控除ですね。

【小林主査】  ええ,そうですね。

【徳久理事長代理】  国立大学法人や,私立大学の学校法人に寄附した場合には税額控除になる。
 それはどういう思想かというと,ふるさと納税も多分同じ考え方だと思うのです。税金の払い方として,自分が税として納めることと,その税として納める分を寄附金という形で大学に納めることが,イコールの関係だと。つまり,自分の意思で税金を国に納めて広い公共事業等にお金を使ってくださいということか,それとも自分は公共事業よりも教育の方にお金を使ってほしいので,国立大学法人や学校法人に寄附をしますということかであり,これらは税としてイコールなので,税額控除することができるのだと思います。ところが,恐らく奨学金の場合は,税務当局や財政当局からすると,本人にメリットがある,自分が借りていたお金を返すだけじゃないかという意味でイコール性がないという判断になるのではないか。つまり,自分の可処分所得を寄附にするのではなく,あくまでも自分が返す分でなぜまた自分の税金が引かれるのか,そこが歩調が合わない,そのような議論ではないかと推測いたします。

【小林主査】  ただ,わざわざ返済と言わずに返還と言っているのは,次の奨学金に使うという意味です。

【徳久理事長代理】  次に回す,という考え方もあるんですね。そこは先生のおっしゃるとおり,少し発想を変えないといけないのかなと思います。そういう本来の発想で行けば,それでも半分正しいのかもしれませんけれども,そこまでまだ抜け切っていないということかもしれません。

【小林主査】  これはせっかく奥舎先生に言っていただいたので,少し検討していただきたい。

【奥舎委員】  私,変な考えかもわかりませんけれども。

【小林主査】  かつてもそういうことはあったということなので,少し,どういう問題点があるかとか検討していきたいと思いますが。

【松尾課長】  返済,返還に限らず,ここにありますように,税制についてはいろいろ海外でも税制とかあるようですので,そこは課題としては挙げさせていただいて。
 あとそれから,ここの5番目あたりの手厚い経済的支援で何かできないかなと。

【中村委員】  まずこの貸与のところなのですけれども,実際,高校の教員で育英会の窓口をやっていたときに,予約制度はまだなかったのですが,やはり進路選択の段階で進学できる環境があるのかを把握しなければならない,金銭的工面をしなければならないといったときに,入学金と1年前期分の学費が学生支援機構で貸与可能か否かで進路選択にかかる負担が大分違います。まず入学前後にかかる費用が準備できることによって,夜間部に通学し,昼間働いて生活費,学費を準備できるという選択肢ができ,また,予約によって昼間部にも進学できるという選択肢が広がります。現状では,そこのところを民間の金融機関に頼ってしまうとか,若しくは日本政策金融金庫にお願いするようになり,途中から日本学生支援機構で借り換える。確かにそれはいい手段かなと思うのですが,高校生が進路選択でそこまで考えなくても済むように,事前に入学金とか,必要とされる前期の学費とかが間に合うような時期に貸与を受けることが確約できるシステムにしていただくと有り難いです。
 あわせまして,専門学校の国における支援は資料の3ページ,ここの部分しかないのですか。大学・短大の部分の支援制度は厚く,上の方が重くて,専修学校の支援制度は薄く,下の方は押し潰されているように浅くなっていますけれども,これしかないということなんですよね。

【松尾課長】  すみません,マッピングの仕方だと思うのですけれども。

【中村委員】  本学の事例ですが,この経済不況の中で,非常に母子家庭が増えている。3・11の被災地の高校生や学生が進学・進級に当たり,おかげさまで平成26年度の卒業まで授業料減免という措置を講じていただきまして大変有り難かったです。ただ,被災者に対しては支援がありましても,生活保護世帯等への支援がない。これは全国で見た場合も,被災地の方はいいなという家庭が実際に存在するのです。年収が100万円を切っている母子家庭の中に,生活保護を受けられていないという家庭もある。こういうところに視点を当てていただければ有り難いと思います。
 あわせまして,私ども専門学校というのは,大学と違いまして非常に規模が小さい。100人とか200人の学校規模で,生活困窮の学生に対しまして支援の手を差し伸べるには,運営上非常に苦しい。ゆえに,その手段も本当に限られ,前期・後期の2分割,月ごとの分納,学校独自の奨学金支給・学費部分免除制度,遠隔地通学者の通学定期補助等の小さな支援しかできません。生活費補助までは程遠い。その結果として,経済的理由で志半ばにしての中途退学者が多いです。このあたりもあわせて,その環境におかれた学生たちに対して,温かい手を差し伸べていただきたいと思います。
 また,アルバイトという手段もあります。私も学生時代,アルバイトで育てていただいたというところがあります。人を育てる中の1つの社会システムとして有り難い,お金の有り難さもわかるし,社会を理解するすごくいい手段だと思います。ただ,専門学校生は全てではないのですが,8時半から始まって5時ごろまで,土曜日まで授業をやっているという分野もあります。こういう子たちに,さあ,お金ないんだから,家計を助けるためにアルバイトをやったらどうかという指導はできかねます
 こういうことも含んで,専修学校生に対する経済的支援の枠組みをもっと広げていただきたいと思います。

【松尾課長】  ちょっと欄を広げます。字が大きくなれば。

【中村委員】  字だけではなくて,制度の中で膨らませていただくことを御協議いただけると有り難いと思います。

【松尾課長】  担当ともよく相談させていただきます。

【小林主査】  この資料の21ページで,先ほど,進路のところが出ていましたけれども,これは前回2006年に行ったときもそうだったのですけれども,去年行った調査で,やはり専門学校は,先ほど,保立さんの方から大学のことはありましたけれども,見ていただくと,紫の線ですけれども,専門学校・各種学校は,やはり所得の低い層が多いんですよね。それだけ大変だろうと思います。おっしゃるとおり。もちろん2年あるいは3年ですから何とかできると,そういう層の方の進学先受皿になっていることは確かです。JASSOがやっている基礎調査というのがあるのですけれども,それを見てもやはり所得が低くて大変だというのはわかりますので,おっしゃるとおりにこれはもう少し考えなければいけない問題だろうと思います。

【中村委員】  よろしくお願いします。
 すみません,次いででもう1点いいですか。

【小林主査】  どうぞ。

【中村委員】  申し訳ないです。社会人の問題なのですけれども,これも資料の中にございますように,これは17ページと,あとは大学との比較で16ページと比較していただきますと,12万人という社会人の方が実際に専門学校で履修しています。専門学校は多様な人材を受け入れておりまして,入学者の60~70%は高校新卒者が占めていますが,専門特化された技能を身に着け,資格を取得し,就職を求め,社会人,大学等他の教育機関新卒・中途退学者等でかかる学費等については家計若しくは自らの蓄えで入学していただいている方がいる一方で,離職者で再就職を目指して厚労省からの就職支援として学費等への補助が出ている方も同じ講義を受講し,卒業しています。国から手を差し伸べられている学生もいますし,自らの蓄えや自らの生活時間を割いてアルバイト等で学費を稼ぎながらという学生もいるのです。このような不公平差を解消できるように,補助を受けられていない学生に対する支援をお願いしたいと思います。

【小林主査】  社会人については,専修学校もそうなのですけれど,全体,ほかの学校種でも,今の支援で十分かというと,なかなか一般の普通の学生に比べると,それほど手厚くないのではないかということが言われています。社会人学生を増やすというのは1つの目標ですけれども,それをもう少し何か支援の在り方がないのかというのもここで論点として出させていただいたのですけれども,重要なことだろうと思います。
 それから,先ほど先生が言われた入学時のことですけれども,これも私もよく聞きます。日本の場合は入学金というのが非常に高いので,初年時の学費がとにかく高いのです。これだけ高い国というのはほかにないので,それをどうやって工面するかというのはやはり非常に大きな問題になってしまっていることなので,これはJASSOの制度上,どの程度のことができるかというのはまたあるかと思いますけれども,やはり今のままだと進学を阻害する要因になっているということは事実だろうと思います。

【月岡理事】  小林先生も御承知のとおり,労働金庫のつなぎ融資の仕組みがあります。入学時特別増額の範囲の中で事前に労働金庫からその分だけ融資をしてもらって,初回の入学時特別増額の振り込みを労働金庫の口座に振り込むことにして,そこで一括して返済するというものです。それを使ってもらえると,入学時前の資金需要を一部ではありますけれども対応することができるような現状に今なっております。

【小林主査】  初年度に納付金が大体,国立大学,公立大学でいうと80万円以上で,私学は100万円を超えていますので,そうすると,50万円というのはちょっとまだ一部でしかないと思うのですけれども。

【月岡理事】  前期分だけ。つまり,前期分だけということですね。

【小林主査】  はい。その半分,ですから,それももう少し拡充できないかということだろうと思いますね。

【中村委員】  もう1つよろしいですか。

【小林主査】  どうぞ。

【中村委員】  育英会・日本学生支援機構で自分の子供が貸与を受けていたものですから,申請に当たり1つ嫌なところというのがありまして,親として「収入証明」を出すのにすごく抵抗があるんですね。だから,先ほどもちょっとお話しさせていただいた借換えもそうなのですけれども,なるべく収入証明を出したくない。何か収入が少ないということが子供に対して申し訳ないという気持ちになってしまう。これは親の立場からすると,多分同じような抵抗があると思うのですけれども,それを子供に持っていかせて,担任の先生に提出してというところが非常に親としては歯がゆいのですけれど。代用できる手段はないでしょうか。

【松尾課長】  マイナンバー制度が運用されることになると,いろいろな収入証明にしても,所得証明に関する負荷は恐らく大分軽減されるのではないかなと思います。そうすると,学校や本人を通さないで確認することができるようになるのだと思います。

【中村委員】  実際マイナンバーはいつごろ振られるのですか。

【松尾課長】  マイナンバー法は審議中ですが,運用は平成28年頃だと思います。

【中村委員】  わかりました。28年ですか。

【松尾課長】  ただ,それがどう運用されて,どう活用できるかというのは,これから制度設計していかないといけないと思うのですけれども。

【相川委員】  いいですか。

【小林主査】  どうぞ。

【相川委員】  多分,高校生の授業料の無償化というところでの所得というのが生計の方から出ていると思うんですけれども,ですから,それがやはり親の所得をもらうというのは,先生がおっしゃったように,親の所得,片方は所得証明,ある程度の700万円というような数字が出ていますけれども,そっちは700万円,この奨学金に関しては,いわゆる少ない方の金額の所得証明を出すというようなことの保護者側の抵抗みたいなものはあるんだろうなというふうには思っているんですけれども。
 あと,5番の手厚い経済的支援のところで,経済的な要件を考慮した奨学なのか,成績を重視した育英なのかという,ここのところはとても議論していいところかなというところなんです。だから,広く,それこそ学びたいという子供たちをサポートしていくということであれば,奨学という意味合いになるだろうなという感じもしますし,じゃあ,ある意味,限られたいわゆる原資をどう活用していくか,優秀な子供に対して伸ばしていくために育英という形で行くことが望ましいのかというところがあるんですが,私たちとしては,やはり広く学びたいという子供たちがいるとすれば,奨学というようなスタンスで考えていただければ有り難いのかなという気はしておりますが。

【小林主査】  これは非常に重要な問題で,まさしく原理に関わる問題ですけれど,ただ,もちろん財源との関わりがありまして,例えば収入が全くないという方がどれぐらいいらっしゃるかということです。それに対してどの程度の財源をつけられると1人当たり幾らというのが決まりますので,その辺との兼ね合いをどういうふうに考えていくかという問題です。例えば,経済基準だけでやってもそういう問題が起きますが,そういう何らかの成績の要件をつけるかどうかという,そういう問題もあります。
 それから,同じような問題ですけれども,非常に広く浅く,例えば,1人当たり月額5,000円ぐらいでするのか,それとも月額5万円やるのかでは全然意味合いが違います。これは,財源が決まっているとすると,5,000円を10人の人にやるのか,5万円を1人にするのかというのは,まさしく政策的な選択ですので,それも併せて議論していただければと思いますけれど。
 実際問題として,経済的要件というのは比較的わかりやすいと思いますけれども,成績をもし重視するとなると,何を基準に使うかというのがなかなか悩ましいところです。高校の評定,調査書の評定平均値みたいなものを使うのか,それともセンター入試みたいな試験の成績をとるのかとか,いろいろな考え方があると思いますけれども,そのあたりもいかがでしょうか。今の原理的な問題も含めて,育英か奨学かという一番根本的な問題なのですけれども。
 どうぞ,松本さん。

【松本委員】  今回,先ほどの論点整理のお話のときに,給付型奨学金について,検討対象になったことを喜んでいます。ただし,この問題につきましては,多分松尾課長の言うとおり,かなりロングタームのテーマにもなるでしょうから,この二,三回でなかなか結論というふうにいきませんが,是非給付型奨学金というのを,限定的な制度としてでも結構ですから,今の日本の中で,非常に若者の国際力ですとか,リーダーシップとか,そういうものがよその国に比べて劣ってきているとも言われていますし,人材育成というのは,これからの日本を多分支えていく大きなテーマだろうと思います。今の奨学金制度は,二種にしましてもかなりベーシックな部分は手厚いものができ上がっているので,その上に育英といいますか,そういった人材育成の観点の給付型奨学金というものを是非この国で立ち上げていただきたいなというのが私の念願でございますので,二,三回で結論の出る話ではないのは重々わかっておりますが,是非皆様のディスカッションをしていただきたいなと思っています。

【小林主査】  すみませんが,松本先生のところは,どういう奨学金を出してもらえるのか,ちょっと紹介していただけますか。

【松本委員】  給付型の。

【小林主査】  給付型ですか。

【松本委員】  高校予約の。それで指定校制度を設けた。

【小林主査】  高校を指定して,そこから推薦などをしてもらうという。

【松本委員】  ええ,大変僣越なのですが,100校指定させていただいて,そこから推薦という形で,ですから,成績の方は高校の先生にお任せしております。

【小林主査】  なるほど。

【松本委員】  そこから推薦していただいた方で,最終的に50名を決めていく,そういうやり方でございます。

【小林主査】  高校からの推薦を頂くというのは,確かに1つのやり方ではありますね。

【松本委員】  はい,そうですね。あと,センター試験,あれだけの労力をかけておやりになっているので,今の制度ですぐこれに利用はできない面があるのはわかっておりますけれども,何か工夫できないかなという気はしますけれども。

【小林主査】  給付型奨学金が必要だということは,いろいろな方が言っておられますので,御異論があれば言っていただきたいのですけれども,多分給付型が要らないという方はいらっしゃらないと思います。ただ,具体的に設計するとなると,非常にいろいろな問題が出てきて,これは公平性の観点というか,借りるわけではなくて渡し切りになりますので,やはり皆さん国民が全部納得するような形をとらないと非常にまずいことになると思いますので,その制度設計は確かにちょっと時間を要すると思いますが,導入に向けて検討したいということではよろしいでしょうか。

【濱田委員】  そうですね。

【小林主査】  ありがとうございました。

【中村委員】  もう1点よろしいでしょうか。

【小林主査】  はい,どうぞ。

【中村委員】  先ほどもちょっと触れましたように,被災者のところには授業料減免という措置を講じていただいたのですが,先ほどの生活保護世帯に対する授業料減免のような制度はいかがでしょうかというところも併せて是非御検討いただければと。
 結局,中退につながってくる可能性が大きいということと,中退してしまうと,結局フリーター,ニートになってしまうというところが大きなマイナスですね。そのところを是非その前の段階で押さえていただける手段として御検討いただければと思います。

【奥舎委員】  いいですか。

【小林主査】  どうぞ。

【奥舎委員】  先生言われたとおりなのですけれども,母子世帯にしても,生活保護にしても,いわゆる社会的な貧困の問題は,文科省の教育のこの部分だけピックアップすると,ちょっと大変なことになると思うんです。社会保障施策的なもので,やはり厚生労働省との連携とか,そういうものを全部含めて考えていかないと非常に難しいのではないかと思うのですけれども,ちょっと感じます。

【中村委員】  はい。この辺は社会人の受講生についても同じ位置づけがございますけれども。

【奥舎委員】  最近では母子世帯なんかすごく増えているわけですよね。それで,現実には児童扶養手当でも削減されていっていますし,児童手当でもわずかな額にしか微増になっていない。いわゆる教育の貧困というのがそこにしわ寄せが行っていると。おまけに震災なんかがあったりすると。そこの本当に真面目にしっかり頑張っている学生をどう助けるかという,この施策と奨学金をどうタイアップするかは,やはり非常に難しいのかなと思って,ちょっと感じました。

【中村委員】  はい。

【小林主査】  それもおっしゃるとおりだと思いますけれども,学生は学校だけで生活しているわけではないので,全体の話だと,そのことを言っていると思いますけれども,また財源も限られているわけで,それをどう割り振るかという,それは文科省だけの問題ではないというのはおっしゃるとおりだと思いますけれど,ただ,そうすると,それを次にどうするかというのはかなりまた大きな問題で検討する必要があります。

【奥舎委員】  大きな問題になると思います。

【小林主査】  検討課題だと思いますね。
 もうそろそろ時間が限られてきたのですけれども,あと論点として上がっていないところ,まだ御意見を頂いていないところはないでしょうか。大体済んだかとは思うのですけれども,所得連動型については,なかなかこれ,仕組みがわかりにくいので,また次回あたりに少し説明していただいて,現行の方式に対して,それから先にどういうことがあり得るのかと,どのような方法があり得るのかということは,少し次回に議論していただければと思います。
 それから,給付型についてもいろいろ考慮すべき点というのを今日かなり頂いたので,その辺も検討結果を出していただければと思いますが,ほかにございませんでしょうか。大体,論点は出たかと思いますけれど。
 私がちょっと気になっているのは,所得連動型にしても,新しい制度ですから実際の返還は何年か先です。そうすると,現在の返還に困っているような人たちについて,延滞金を減らすのは今1つですけれど,それ以外に何か手当てはないのかというのが非常に気になるのですけれどもね。何かそういう在り方というのはないのかなということですけれども。
 例えば,すごく極端なことを,今日,皆さん,「変な意見」と言われていますので私の方からも1つ申し上げると,延滞金というのはもともとはペナルティーという性格ですよね。きちんと返していないものに対しての措置です。

【奥舎委員】  制裁ですね。

【小林主査】  はい,それで抑止効果を持たせるという,返還を促進するということですけれども,延滞金がずっとたまっていくと,もうとてもこれは返せないだろうというのがあるのです。例えば,元金より延滞金の方が大きいとかというようになってしまうと。そうすると,例えば延滞金というのは,ある程度,限度額というか,そういうものも考えてもいいのではないか。例えば,もう延滞金が何百万円となっている人については,それ以上増やしてもほとんどが意味ないというようなことも考えられるのではないかとか,その辺も検討していければと思うのですけれども。でないと,負の連鎖といいますか,いつまでたっても返せないという,先ほども申しましたけれども,延滞金を返すだけで精いっぱいでおしまいになってしまう,子供の教育費は負担できない,ひいては進学できないというようなことも起きていますので,その辺を考えていければなという,1つの考え方ですけれども。

【中村委員】  ちょっとよろしいですか。

【小林主査】  どうぞ。

【中村委員】  経済状況に応じた返済金額というものを,それぞれ返済をする身になって決めていただくことはできませんか。人を育てるという意味で,返済金額1,000円でも2,000円でもいいと思うんです。とりあえず返しなさいと,そういう姿勢を示しましょうということが教育じゃないかと思いますけれども。返さなくていいということは教育的ではないと思いますね。

【小林主査】  今申し上げたことなのですけれども,所得連動型は本来そういう意味です。ですから,一定所得以下は猶予ですというようになって,それ以上については所得額に応じて返済額が決まるという仕組みですから,これはなかなか理解するのが難しいので,先ほど言いましたように,今日は時間がありませんので,次回少し各国の例もどういうやり方をしているかということを説明したいと思いますので,その上で日本に合った制度というのはどういうものがあり得るかというようなことを考えていっていただければと思うんですが。
 よろしいでしょうか。

【濱田委員】  すみません,1つよろしいですか。

【小林主査】  はい,どうぞ。

【濱田委員】  育英という意味で,私はその恩を受けたから言うわけではないのですが,免除制度というものを全く新しい形で何らかの形で判定して制度をもっと広げるという考え方,かつてのように研究職とか教育職と限定された職業に就けばというのは,やはり職業による不平等を来すとか,いろいろな議論が当然あるわけで,そうでない大学なり,大学院なりで,ある種の達成度をもって社会に貢献できるであろう能力を養成した人たちを何らかの尺度で判定するような考え方というのは,あってもいいのではないかというふうに思います。そして,免除制度があることによって,奨学金に対するある種の認識も高まる,当然返さなければいけないのだけれども,かなり努力すれば,またそういった形で恩典もあるのだというような考え方というのは,時代に通るか通らないかはちょっと判断がつきかねますけれども,私は考えてもいいのではないかと思います。

【小林主査】  返還免除についても,先ほど御説明あったように,今,大学院生しかありませんので,その辺のことも考えていきたいと思います。ありがとうございました。
 いろいろ御意見を頂きましたので,これからこの辺をもう少し整理して,2回,3回と議論を詰めていきたいと思いますけれど,もし今日,次回までに何かございましたら,事務局の方にメールででも御意見を頂ければと思います。ありがとうございました。
 それでは,今後の検討スケジュールについて,事務局からよろしくお願いいたします。

【保立課長補佐】  一番下に資料5という1枚の紙がございます。今後の日程についてでございます。
 次回,5月15日の水曜日の16時から18時まで,同じここの場所で予定しております。その次に,6月17日の月曜日の10時から12時まで,この庁舎の2階で予定しております。恐らくこのころに一定の論点の整理を,中間的なまとめをしていただければというふうに思います。すぐできることなどを特に中心に頂きますので,次回までに,本日の議論の結果を踏まえて整理したものを事務局の方で準備させていただきたいと思います。

【松尾課長】  あと,これは座長とも御相談なのですけれども,場合によっては誰か人に来ていただいて少しヒアリングとか,そういうものもよろしいでしょうか。

【小林主査】  そうですね。

【松尾課長】  運営については,また座長ともよく相談して。

【小林主査】  いろいろな問題が非常に多岐にわたっていますので,広くいろいろな意見とかデータを集めるということも必要だと思いますので,その辺はまた御相談させてください。
 よろしいでしょうか。
 では,本日はどうもありがとうございました。これで第1回の検討会を終わります。


―― 了 ――

お問合せ先

高等教育局学生・留学生課