資料1 学生等への経済的支援の制度それぞれの在り方について

学生等への経済的支援の制度それぞれの在り方について

1.背景
 ○ 現在の学生等への経済的支援は、日本学生支援機構が行っている貸与型奨学金(給付的支援としては、その返還免除がある)、民間の奨学団体を中心に行われている給付型奨学金、各学校によって行われている授業料減免、大学院の学生等に対するTA・RA等、複数のメニューによって行われている。
 
 ○ このように複数のメニューによって成り立っている学生支援であるが、それぞれの制度は、どのような理念の下でどのような役割をもって、行われるべきか。

2.論点

  ・ そもそも、学生支援の制度は、今後、シンプルな形でなされるべきか、あるいは、これまでのように複数の手法により行われるべきか。
  ・ 各個別の学生支援メニューは、どのような観点でなされるべきか。
  ・ 給付的支援の充実は、どのような順に(どのターゲットから、どのようなスパンで)行っていくべきか。

3.各学生等への経済的支援制度に関しての整理

1.貸与型奨学金についての各種の返還免除制度
  業績優秀者返還免除制度
  【概要】
   大学院で専攻する学問分野での顕著な成果や発見・発明等の業績を総合評価することにより、我が国のあらゆる分野で活躍し、発展に貢献する中核的人材を育成する。

  【メリット・デメリット】
   <メリット>
   ・ 学修に係るインセンティブの付与という見地からは、教育的な効果は高い。
   <デメリット>
   ・ 逆に、貸与時に免除が受けられるという保証がないことから、予見可能性に欠ける。特に、借金を背負うことを回避する傾向にある低所得者層が恩恵を受けられない可能性がある。

  【固有の論点】
   ・ 博士課程への進学のインセンティブ付与のため、博士課程進学者については、修士課程修了時段階で、一旦、判定の機会を付与すべきか。
   ・ 現在認められている大学院生のみでなく、学部段階や他の学種まで、制度の適用範囲を広げるのか。
    →この場合、学校側において、選考のための基準や体制をどのようにして整えるべきか。

  【実績】
      平成23年度貸与修了者に係る平成24年度免除実績 9,048人(125億円)

 参考:過去に実施されていた奨学金の返還を免除する制度
 1)教育・研究職返還免除制度
  【概要】
   社会的要請の強い教職や研究職に一定期間以上従事した場合に、奨学金の返還を全部又は一部免除することにより、優秀な人材を確保する。

  【廃止の理由】
   ・ 平成16年度には、特定の職のみを優遇することの不公平感、人材の誘導効果の減少を理由に廃止され、幅広い分野で業績を修めた者を対象とする、現行の業績優秀者免除制度に改正されている(大学・高専で奨学金の貸与を受けた者に係る教育職免除については平成10年度から廃止)。

  【実績】
    平成24年度 8,654人(177億円)
参考:平成9年度  10,940人(137億円)
平成15年度 3,257人(59億円)

 2)特別貸与返還免除制度
  【概要】
   特に優秀な素質・能力を持ちながら、経済的に著しく進学困難な者に対し奨学金を貸与。(貸与額は、それまでの額(=「一般貸与」)より大幅に増(創設時は2.5倍))。「一般貸与」に相当する額を返還すれば、残額は返還免除。

  【廃止の理由】
   「一般貸与」と「特別貸与」の差が僅かとなり、「一般貸与」を「特別貸与」に吸収する形で、全体の貸与額の増額を図ったことに伴い、「特別貸与」と「一般貸与」を一本化する形で昭和59年から廃止。同時に、高等教育の普及状況等に対応して、育英奨学事業の量的拡充を図ることとし、新たに有利子奨学金事業を創設。

  【実績】      
昭和58年度新規貸与者のうち特別貸与奨学生 66,604人(新規貸与者126,059人の53%)

 2.授業料減免制度
  【概要】
   経済的理由等により、授業料等の納付が困難である者などを対象に修学継続を容易にし、教育を受ける機会を確保する。

  【メリット・デメリット】
   <メリット>
   ・ 修学段階において減免を受けられることから、予見可能性が高い。
   ・ 奨学的観点のウェイトが高く、奨学金の返還免除に比して、経済的に困難な者への支援に効果的。
   <デメリット>
   ・ 逆に、事前に減免を受けられることに伴い、奨学金の返還免除に比して、学業へのインセンティブの付与という側面が弱くなる。

  【固有の論点】
   ・ 授業料減免の財源は学校種によって異なることから、これを差異のない形で支援すべきか、そもそも設置形態が異なることを踏まえ各々異なる形で支援すべきか。
    (国立大学:運営費交付金において支援、私立大学:私立大学経常費補助金により、1/2の補助、公立大学:地方財政措置を通じて支援、専修学校:財政的支援無し)

  【実績】国立・私立大学の授業料減免等の充実 H26年度予算:375億円(24億円増)

 

 23年度予算

 24年度予算

 25年度予算

 26年度予算

 国立

 約4.2万人(225億円)

 約4.8万人(254億円)

 約5.2万人(281億円)

 約5.4万人(294億円)

 私立

 約3.3万人(49億円)

 約3.5万人(58億円)

 約3.7万人(70億円)

 約3.9万人(81億円)

 公立

 約0.9万人(31億円)

 約1.0万人(32億円)

 実績値は集計中

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※国立・私立大学の人数については予算額に基づく推計値であり、公立大学分については実績値。
※いずれも東日本大震災により被災した学生を対象とした授業料減免等を除く。

 3.給付型奨学金
  【概要】
   返還不要の奨学金を修学時に給付する。

  【メリット・デメリット】
   <メリット>
   ・ 修学段階において給付を受けられることから、事後的な返還免除に比して、予見可能性が高い。
   ・ 借金を背負うことを回避する傾向にある、低所得者層への支援として有効。
   ・ 設置者・学校種を問わず、共通した給付的支援の導入が可能。
   <デメリット>
   ・ 現行の貸与型奨学金と比して、財政的な負担が非常に大きくなる。
   ・ 事前に給付を受けられることに伴い、奨学金の返還免除に比して、学業へのインセンティブの付与という側面が弱くなる。

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高等教育局学生・留学生課