資料3 日本私立大学団体連合会提出資料

 学生への経済的支援の在り方について(中間まとめ)」に関する意見

平成26年1月16日
日本私立大学団体連合会


 ○はじめに
    我が国のGDPに占める高等教育機関に対する公的支出の割合は、OECD加盟国の中で最も低くなっている。このため、我が国の将来を担う学生等が高等教育を受けるのに必要な諸経費については、自ずと家計負担に頼ってきたという現状がある。
    しかしながら、近年の長引く経済不況や雇用環境の変化等を理由に、家計所得は減少しており、経済的理由から高等教育への進学を断念せざるを得ない学生が年々増加している。
   意欲と能力のある学生等が安心して高等教育に修学できる環境を構築するためには、いまこそ国による学生に対する経済的支援の飛躍的な充実が強く求められている。
    このたびの「学生への経済的支援の在り方について(中間まとめ)」は、こうした近年の経済的・社会的状況を踏まえ、学生等への経済的支援について、現在の奨学金制度の課題と改善策がまとめられたものであり、その方向性について概ね賛意を表するものである。その上で、下記の点についてはさらなる慎重審議が必要と考える。
   なお、奨学金が必ずしも学費だけでなく、家計の一部として生活費など様々に使われている実態を鑑みるとき、奨学金制度設立の原点に照らし、その適切な在り方について改めて検討の必要性が高まっていることをこの機会に併せて指摘しておきたい。

 1. 給付型奨学金制度の創設について
    若者の教育に対する投資は、我が国の輝かしい将来を持続的に築くことの礎となる。また、政府による国際人権規約A規定の留保撤回が行われたこと等を踏まえ、高等教育への進学希望者があまねく高等教育を受けられる社会の早期実現に向けて、他の先進諸国と同様の給付型奨学金の新設が急務と考える。

 2. 貸与型の支援について
 (1)返還免除制度について
   現行の大学院生への経済的支援については、採用数の増加および貸与額の増額等のさらなる充実を期待する。
   また、返還免除制度については、中間まとめが提言するその対象を大学の学士課程に拡充する案に、大いに賛成するところであり、導入されることは、学修へのインセンティブを高めることにもつながる。

 (2)返還者の経済状況に応じた返還方法について
   平成24年度から導入された所得連動返還型の無利子奨学金制度については、大きな前進であるが、300万円を境に返還について大きな格差が生じることが指摘されている。所得の変動に応じた緩やかな設定にするよう検討すべきである。
   加えて、減額返還制度や返還期限猶予制度の柔軟な運用については、制限年数や賦課率のさらなる見直し等の検討が必要である。

 (3)無利子奨学金のさらなる拡充
   貸与奨学金は無利子奨学金が本来の形であり、有利子奨学金はその補完的な役割を果たすべきものである。この原則に立ち戻り、無利子奨学金を基本とする姿を目指すべきである。
   平成26年度の文部科学関係予算案では、無利子奨学金の貸与人数が増員され、奨学金事業の充実が図られているが、無利子奨学金のさらなる拡充を期待する。

 3. 授業料減免制度の改善について
   経済的に修学困難な学生等に対しては、授業料減免を引き続き拡充することを期待する。
   特に、現状における授業料減免は、私立大学等経常費補助もしくは国立大学法人運営費交付金において支援が行われているが、学生一人当たりの補助額については、国立大学が約54万円なのに対し、私立大学は約20万円となっており、大きな格差が生じている。国の将来を担う学生に国私の差を設けるべきではなく、その格差は是正されるべきである。

 4. その他の検討事項について
(1)延滞率の改善が進まない大学名の公表について
   日本学生支援機構の第2期中期計画に、「延滞率の改善が進まない学校名の公表を行うとともに、学校別内示数の算定における延滞率の比重を高める。」との記載がある。しかしながら、延滞率の改善が進まないことと、大学の責任との因果関係は不透明であり、延滞率の改善が進まない学校名の公表を行うことは、風評被害を招くに留まらず、私立大学の健全な経営に重大な影響を及ぼしかねない。よって、データの表示方法については、安易な格付けと受け取られないよう、一覧表示は避ける等の特段の配慮をお願いしたい。

 (2)税制優遇について
   各私立大学が独自に設ける奨学金制度は、その原資を寄付金としているものが少なくない。そのため、篤志家・卒業生・関係者からの寄付を促進することは、その奨学金の増額やより一層の経済的支援の拡充につながっていくものである。
ついては、より多くの私立大学が平成23年度より新設された税額控除制度を利活用できるよう、その障壁となっている学校法人に対する寄附に係るPST要件(寄附実績に関する要件)の撤廃を推進すべきである。

 (3)家計基準の厳格化について
    日本学生支援機構の第一種貸与奨学金の家計基準が厳格化されたことにより、ある試算によれば、これまで申請資格があった学生が、新基準のもとで申し込んだ場合、約10%の学生が資格を失う見込みであることが指摘されており、資格外となる学生等の向かう先は、有利子貸与奨学金しかなく、家計基準の厳格化については、慎重に対応する必要がある。

 (4)奨学金制度についての情報提供、金融面のリテラシー向上について
   高等学校における進路指導の教員および保護者が奨学金の申請手続き等を生徒に過剰にサポートしているため、奨学金の「貸与」を受けることに対する生徒・学生の自主性、自覚が薄れているように感じられる。奨学金制度について理解を深めてもらうため、早期から意識を高めるための情報提供や指導等が必要である。

 ○おわりに~私立大学における日本学生支援機構の奨学金業務の負担軽減について
   私立大学は国立大学に比べ、限られた人材と財政資源の中で、大学進学者のユニバーサル化に対応した教育改革と学生支援とに力を注いでいる。そうした現況の中で、奨学金に関する業務は、年々負担が増しており、大学が本来傾注すべき教育活動に支障をきたしかねない状況にある。
こうした懸念を払拭するためにも、大学に対する奨学金業務の負担軽減を図るとともに、例えば、私立学校振興助成法の「経常的経費の2分の1以内を補助することができる」とする条文、および「できるだけ速やかに50%とするよう努める」とする参議院文教委員会附帯決議を踏まえた、私立大学等経常費補助の補助率2分の1の速やかな実現が必要である。

以上

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