【資料2】「インターンシップの普及及び質的充実のための推進方策について」意見のとりまとめ(素案)

- 目次 -
1.はじめに

2.現状と課題
 (1)現状

 (2)課題

3.推進のための具体的方策
(1)大学等の取組の活性化等
  1)大学教育における位置付け
  2)大学等の取組の活性化
  3)インターンシップの単位化及び事前・事後教育等の重要性
  4)学生にとっての意義・学生への啓発
  5)企業等にとっての意義・企業による受入れの円滑化
  6)報酬等の取扱い

(2)中長期インターンシップの導入等による長期休業期間以外での実施促進

(3)海外におけるインターンシップ等
  1)海外インターンシップ
  2)外国人留学生のインターンシップ

(4)多様な形態のインターンシップや、インターンシップと同等の効果を発揮する多様な取組の推進

(5)国、地域において推進すべき取組
  1)インターンシップ受入れ拡大に向けた取組
   1.)大学等と産業界を調整する仕組みの構築
   2.)専門人材(コーディネーター等)の養成・確保
  2)企業が実施しやすい形のインターンシップの実施
  3)インターンシップ普及・推進のための取組
  4)インターンシップの実施状況の把握と推進に対する考え方

4.「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」の見直しの方向性

 

1.はじめに

(インターンシップ推進の経緯)

  •  インターンシップは、学生が自己の職業適性や将来設計について考える機会となり、主体的な職業選択や高い職業意識の育成が図られるとともに、大学における学修と社会での経験を結びつけることで、学生の大学における学修の深化や新たな学習意欲の喚起につながる有益な取り組みである。
  •  このため、平成9年に当時の文部省、通商産業省、労働省において、インターンシップのより一層の推進を図るため、インターンシップに関する共通した基本的認識や推進方策を取りまとめた「インターンシップの推進に当たっての基本的な考え方」を作成し、政府、大学、産業界においては、上記「基本的な考え方」に沿って、インターンシップの普及・推進を図ってきた。
  •  文部科学省(文部省)においては、この一環として、インターンシップの意義や実施上の手順等を示した資料(平成10~12年インターンシップ・ガイドブック、平成21年インターンシップ・リファレンス)を作成してきた。
  •  このような普及・推進の結果、この15年間でインターンシップを実施する大学、参加する学生の数とも増加しているが、その一方で後述のように様々な課題も指摘されている。


(大学改革の進展とインターンシップ)

  •  この間、大学改革を含む教育改革の進展に伴い、インターンシップの意義に対する教育上の位置づけにも大きな変化が生じている。
  •  平成23年1月には、中央教育審議会において、幼児期の教育から高等教育までを通したキャリア教育・職業教育の在り方について答申が行われた(「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」)。
      また、平成23年4月には、大学設置基準が改正され、すべての大学において,教育課程内外を通じて学生の社会的・職業的自立に関する指導等に取り組むこととし、そのための体制整備を行うこととされている。
  •  また、平成24年8月の中央教育審議会答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」では、学生の主体的な学習を促す質の高い学士課程教育を進めることを求めるとともに、そのための手段の一つとしてインターンシップが示されている。
  •  このようにキャリア教育・職業教育(専門教育)の重要性が高まり、大学改革が進展する中、各大学においては、そのためのインターンシップの意義・活用についての取組も進められてきている。

(今回の検討について)

  •  近年の社会状況を見ると、特に大学や産業の国際競争力強化の観点から、大学は次代を支える人材育成のために大きな役割を果たすことが期待されており、その中でインターンシップは学生が産業や社会についての実践的な知見を深める機会を提供するものと考えられる。
  •  このため、「日本再興戦略」(平成25年6月14日閣議決定)においては、我が国の将来を担う若者全てがその能力を存分に伸ばし、世界に勝てる若者を育てることの重要性に鑑み、インターンシップに参加する学生数の増加、キャリア教育から就職まで一貫して支援する体制の強化、インターンシップ活用の推進等が提言されている。
  •  インターンシップの普及・推進を図る上での様々な課題や、キャリア教育・職業教育(専門教育)や大学改革推進に向けた意義に加え、近年の社会状況をも踏まえた推進の必要性等も踏まえ、本協力者会議においては、現在のインターンシップの実施状況や課題を踏まえつつ、その推進のための具体的方策を示すとともに、作成後15年が経過した上記「インターンシップの推進に当たっての基本的な考え方」の改訂に当たっての基本的な考え方も取りまとめた。
  •  文部科学省においては、本取りまとめの内容に関し、経済産業省、厚生労働省等の関係省庁との連携を一層強化しつつ、インターンシップに参画する学生、大学、企業等の三者全てが恩恵を享受できるよう、その一層の推進に努められたい。


2.現状と課題                    

(1)現状

  •  文部科学省においては、平成9年より「インターンシップ実施状況調査」を全ての大学及び高等専門学校に対して実施し、大学等が単位認定を行っているインターンシップについて実施状況を把握してきたが、本協力者会議における検討に際し、項目をいくつか追加した上で、本年1~2月にかけて「大学等における平成23年度のインターンシップ実施状況について」調査を実施した。
  •  その結果、従来より把握している大学等が単位認定を行っているインターンシップについて見れば、インターンシップを実施している大学等の割合については、インターンシップを実施した大学等の割合については、平成10年度に23.7%、平成19年度(前回調査)に67.7%であったのに対して、平成23年度には、70.5%になっている。
      同様に、インターンシップを体験した学生の割合は、平成10年度に0.6%、平成19年度(前回調査)に1.8%であったのに対して、平成23年度には2.2%になっている。
  •  一方、今回、新たに、単位認定を行う授業科目以外のインターンシップであって、大学等が学生を派遣するにあたり組織として対応しているものについても調査の対象としたところ、65.1%の大学が実施し、25,428人の学生が参加しているとの結果が出ている。
  •  また、従来、インターンシップとしての取り扱いはしていないものの、特定の資格取得を目的として実施する教育実習、医療実習、看護実習等は、「基本的な考え方」におけるインターンシップの定義「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」に当てはまることから、その実施状況についても今回新たに把握したところ、85.9%の大学が実施し、273,838人の学生が参加しているとの結果が出ている。
  •  今回の調査では、あくまで大学等が把握しているインターンシップを対象としているため、大学等と無関係に企業等が実施するインターンシップのプログラムに学生が個人的に参加する場合の参加状況について把握していない。様々な民間調査は行われているものの、十分な実施状況の把握がされていないため、今後国において把握していくとともに、各大学においても可能な限り把握に努めていく必要がある。
  •  近年、大学等において増加しつつある海外インターンシップについても、今回新たに調査を行ったところ、20.5%の大学が実施(単位認定を行う授業として実施されたもののみ)し、参加学生数については2,023人となっている。
  •  なお、インターンシップの普及に伴い、近年、インターンシップについては、学期中に一定期間に亘って定期的に行われる中長期インターンシップや報酬を伴うインターンシップ、コーオプ教育の一環として行われるものなど多様な形態が存在する。さらに、サービス・ラーニング等のインターンシップに類似する活動も実施されるようになってきている。
  •  企業と大学が連携した取組として、インターンシップの普及・推進のための地域的な組織も形成されるとともに、企業として若手職員の研修の機会と捉えるなど、企業として取り組みやすいインターンシップとするための工夫もなされている。


(2)課題

  •  近年、インターンシップを実施する大学は着実に増加しており、多くの大学が学生をインターンシップに参加させることを希望しているが、参加を希望する学生の数に比較して受け入れる企業の数が少ない現状がある。
  •  他方、学生のインターンシップの希望先が大企業や有名企業に集中するとともに、中小企業を希望する学生が比較的少ない傾向が見られるように、インターンシップの受入れ先に関する学生と企業のミスマッチが生じている現状もある。
  •  インターンシップを受け入れる企業の拡大のためには、受入れ企業の新規開拓や企業に受け入れられやすいプログラムの構築を行う専門的な知見を有する人材が必要であるが、現状ではかかる人材が十分に存在しない。
  •  なお、現在インターンシップの実施時期として最も多いのは大学等の夏期休業期間中であるところ、平成27年度卒業・修了予定者からの就職活動時期の後ろ倒しに伴い、インターンシップが最も多く実施される時期と企業の採用活動開始時期が重複することから、企業のインターンシップの受入れが従来よりも困難となることも予想される。
  •  一方、大学側の問題点として、大学等によるインターンシップへの関与が不十分な場合が挙げられる。インターンシップの内容について大学等が主体的に関与せずに企業任せになっている状況も見受けられる。特に、学生が企業に直接申し込む場合については、大学等が状況を把握することが困難なこともあり、大学等の関与や教育的支援が十分になされていないのが現状である。
  •  インターンシップを単なる就職活動の手段として捉えて教育的理念を持たずに実施している場合も見受けられる。この場合、学生にとってインターンシップは単なる就業体験で終わることとなり、職場で体験した内容を自らの学修内容や専門性を高めていくことにつながらない。
  •  インターンシップと専門教育における学修との関連性が希薄になりがちであることも課題である。インターンシップやキャリア教育が大学内において就職担当部署等の一部の教職員の任務と捉えられ、専門教育を担当する教職員の関与が不十分である状況も見受けられる。かかる状態が大学内におけるインターンシップ推進の妨げの一因となっていると考えられる。


3.推進のための具体的方策              
 上記のような現状と課題を踏まえ、今後、インターンシップの質的向上を図りつつ、大学教育の一環として、インターンシップに参加する学生の数を増やしていくため、大学、企業において様々な取組を推進し、大学や地域がこれを支援していく必要がある。以下(1)~(4)において、主に大学及び企業において求められる取組、(5)において国が地域、大学、産業界と協力して推進すべき方策を記した。

(1)大学等の取組の活性化等

  1)大学教育における位置付け

  •  上述の通り、キャリア教育・職業教育の充実、大学教育の質的転換を図る中で、インターンシップの取組の充実が求められており、各大学においては、それぞれのキャリア教育、専門教育の強化や、学部教育の改革の観点からのインターンシップの意義、位置づけについて明確にする必要がある。
  •  この際、インターンシップについては、一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てるキャリア教育としての側面が強い形態と、キャリア教育を前提としつつも、専攻分野の知識・技能を深化するための、より専門教育としての側面を強めた形態があることに留意する必要がある。
  •  前者の場合であっても、インターンシップを専門教育から切り離されたものとして考えるのではなく、専門教育と関連づけて実施することが必要である。かかる観点から、インターンシップを大学のキャリア教育担当者のみに任せるのではなく、専門教育に携わる教職員も主体的に取り組むことが求められる。
  •  後者についても、キャリア教育としての意義を前提とした上で、PBLなどと同様にインターンシップを専門教育の一環として明確に位置づけた上で、専門教育における学生の学修を深め、学生の主体的な学修を促すためのプログラムとして推進すべきである。
  •  このように、上記の2形態は互いに重なりうるため、例えば、同じ学科においても、低学年のうちは前者的なものをカリキュラムに組み込み、高学年に進むにつれて後者的な内容を組み込んでいくことも考えられる。
  •  なお、インターンシップは、産学連携教育の一環として行われるものであり、教育という観点からは大学が主体者となるべきものである。このため、大学以外の者が実施するインターンシップも含め、今後、大学が積極的に関与していくことが望まれる。
    さらに、インターンシップにおける教育的側面を充実することも大学の責務と考えられ、大学の側から企業等に対し、教育効果の高いインターンシップ・プログラム設計や運営方法を積極的に提案していく必要がある。


  2)大学等の取組の活性化

  •  大学の教職員に対し、インターンシップの重要性の理解を進めるためには、平成23年の大学設置基準改正等を踏まえたキャリア教育の重要性についての学内の共有化を図りつつ、インターンシップがキャリア教育としての意義とともに学生が専門教育の学修を深めるための主体的な学修を促すプログラムである点を明確にする必要がある。こうした観点から、特に、人文・社会科学系学部を中心に、学部間での取組の差も埋めていく必要がある。
  •  インターンシップは、学内のインターンシップを担当する教職員だけで完結するものではなく、学部や研究科の教職員も含めた大学の教職員全体として取り組むことが必要である。また、大学の学部・研究科等の組織の枠を越えた連携・協力体制を整備することが重要であり、学長等のリーダーシップが期待される。
  •  インターンシップの充実に際しては産業界との連携協力は不可欠であり、このためにも外部人材の活用は有効である。しかしながら、インターンシップ・プログラムを設計するに当たり、外部人材のみに依存するのは適当ではない。インターンシップに関する専門的知見や経験を有するとともに、キャリア教育・専門教育としての位置づけを明確にできる教職員を養成・確保しつつ、FD・SDを通じ、その知識・経験を共有し、教職員全体の意識改革を進めていくことが肝要である。
  •  この際、大学教職員が企業等で就業経験を積むこともインターンシップへの理解を深める上で有益と考えられる。


  3)インターンシップの単位化及び事前・事後教育等の重要性

  •  インターンシップを大学の単位に組み込むことは、大学教育、特に専門教育とのつながりがより明確になることや、事前・事後教育の体系化及び充実が図られる等、インターンシップの教育的効果を高め、学生が大学における教育内容をより深く理解できるというメリットがあり、望ましいと考えられる。
  •  ただし、当該単位を学位の構成要件とするに当たっては、個々に十分な検討が必要である。また、単位化を進めんがため、かえって不必要な教育内容を生じさせることのないような工夫が必要である。
  •  単位化の有無を問わず、事前教育においては、インターンシップに参加する目的を明確化するとともに、専門教育との関連性を意識させることが重要である。また、事後教育においては、大学における自己の学修とのつながりを意識させることが必要である。さらに、インターンシップ期間中の現場での指導も含め、一連のプロセスとしての教育プログラムとして開発していく必要がある。
  •  なお、大学を経由しないでインターンシップに参加する学生に対しても、事前・事後教育の機会を提供する等のサポート体制の構築を行うことにより、インターンシップ参加の促進が図られるとともに、その教育的効果を高められるという点で有益である。
  •  今後、学部と大学院別、文系と理系の分野別、短期と中長期の期間別、実施対象地域別(国内及び海外)などを考慮した具体的なプログラムを策定し、質的向上に注力することが必要である。


  4)学生にとっての意義・学生への啓発

  •  学生にとっては自らが学んだ内容と社会との関連性を認識し、今後の学習への意識を高める機会となる。また、就業意欲を高めるとともに、進路を考える重要な機会となる。
  •  このため、学生へのより一層の普及を図るべく、各大学は、これまでの参加実例も含め、積極的にインターンシップの情報を学生に提供するなどにより、学生のモチベーションを高める必要がある。


  5)企業等にとっての意義・企業による受入れの円滑化

  •  インターンシップの普及・推進のためには、企業等における受入れを拡大することが重要な鍵となる。特に、平成27年度卒業・修了予定者からの就職・採用活動開始時期の変更に際して、中小企業の魅力発信等、円滑な実施に向けた取組を行うことが求められていることから、企業の魅力発信としてのインターンシップの更なる活用の推進が求められている。
  •  このため、後述のように、企業にとってより受け入れやすいようなインターンシップの支援体制の整備や、大学からの書類等の可能な範囲での共通化を図ることにより、企業等における受け入れの円滑化を図る必要がある。
  •  企業にとっては、インターンシップの受け入れは、CSRや社会貢献としての意義とともに、産学共同による実践的な人材の育成、大学教育への産業界のニーズの反映、企業の実態についての理解を促す意義が認められるものである。
    このような観点から、例えば、学生による企業研究を組み込んだインターンシップ、インターンシップ生の指導を通じた若手職員の研修、インターンシップを通じて自社のような業態または業種についての理解を深めさせることなど、企業等にとってのインターンシップの受け入れ促進を図るような取組の充実を図る必要がある。

  6)報酬等の取扱い

  •  インターンシップの普及拡大を図っていくためには、報酬を得た上でインターンシップを行うことの有効性にも留意が必要である。特に、長期のインターンシップの場合には、報酬を得ることにより学生の参加を促す効果が考えられる。また、実際に有給とすることで、学生の責任感が高まる効果も考えられる。
  •  一方、インターンシップの名を借りて学生を低賃金の労働力として扱うような事例も見受けられる。このような場合は大学への相談を呼びかけ、問題がある場合は大学として適切な助言を行うことが必要である。また、インターンシップは教育的意義を有するものでなければならず、学生にとって報酬を得ることが主目的とならないよう留意する必要がある。


(2)中長期インターンシップの導入等による長期休業期間以外での実施促進
 現在のインターンシップは夏期休業中に1週間~2週間程度集中的に実施するものが最も多いが、就職活動時期の後ろ倒しに伴う夏期休業期間中における就職活動の活発化も踏まえれば、今後、インターンシップ実施の拡充を図っていくためには、夏期休業期間以外におけるインターンシップの実施の検討が必要となる。
   このため、春期休業期間中等における実施の拡充を図るとともに、学期期間中の実施についても考える必要がある。

  •  実施期間が1ヶ月を超えるような中長期のインターンシップについては、企業に継続的に派遣される形式と、期間中に定期的に企業を訪問する形式とが考えられるが、特に、後者の形式のものについては長期休業期間以外のインターンシップ実施を促進する意義も認められる。
  •  さらに、後者のプログラムについては、企業等のみで実習を行う方法だけでなく、米国で実施されているコーオプ教育プログラム(たとえば数ヶ月間~数年次にわたり大学での授業と企業での実践フィールドワークを繰り返すサンドイッチ型教育プログラム)のように、大学での講義と企業等での実習を繰り返す方法も考えられ、専門教育との関連づけにより一層効果を発揮するものと考えられる。
  •  学生が働く目的を考え自己成長を促す長期の有給インターンシップを産学の連携により推進することも考えられる。また、有給とすることで学生の責任感が高まる効果も考えられる(報酬についての留意点は上述の通り)。


(3)海外におけるインターンシップ等   
 
  1) 海外インターンシップ

  •  グローバル人材育成の観点から、海外インターンシップのプログラムの開発・普及を推進する必要がある。その際、海外連携大学における語学研修の実施や、日系企業等現地法人との連携によるプログラムが有効である。なお、海外インターンシップについては、リスク管理、学生へのフォローなど、国内インターンシップ以上に手厚い対応が必要である。
  •  日本人学生が海外留学中に行う海外インターンシップを推進することも必要である。


  2) 外国人留学生のインターンシップ 

  •  優秀な外国人留学生を確保するため、日本企業/日系企業による外国人留学生を対象としたインターンシップの実施を促進する必要がある。


(4)多様な形態のインターンシップや、インターンシップと同等の効果を発揮する多様な取組の推進
 キャリア教育・専門教育としての意義を踏まえつつ、インターンシップを推進して行くに当たっては、多様な形態のインターンシップをその目的に合わせて柔軟に取り入れていくことが重要である。また、従来、インターンシップの範疇と捉えられていなかった活動についても、インターンシップと同等の効果を発揮すると認められる取組については、これを積極的に評価していくことが必要である。


(多様な形態のインターンシップの例)

  •  大学院レベルの技術系のインターンシップに関しては、産学連携の共同研究との関連付けも有効と考えられる。
  •  上記の中長期インターンシップ、コーオプ教育のほか、インターンシップとPBLを組み合わせた取組なども考えられる。
  •  学生に受け入れ企業等に関する研究を行わせるインターンシップや、若手社員が学生を指導することにより企業等の若年者研修としての意義を持たせるインターンシップも有効である。(再掲)

(特定の資格取得を目的として実施する実習)

  •  今回のインターンシップ実施調査で把握したように、多くの学生が特定の資格取得を目的として実施する教育実習、医療実習、看護実習に参加している実態がある。
    これらの資格取得を伴う課程においては、実習以外のインターンシップ参加は教育課程の実施上難しい場合が多い一方、これらの実習は、インターンシップの定義「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」に当てはまることから、インターンシップと同等の効果を発揮するものとして積極的に評価しうるものと考えるべきである。

(サービス・ラーニング)

  •  サービス・ラーニングは、教育活動の一環として、一定の期間、地域のニーズ等を踏まえた社会奉仕活動を体験することによって、それまで知識として学んできたことを実際のサービス体験に活かし、また実際のサービス体験から自分の学問的取組や進路について新たな視野を得る教育プログラムであり、インターンシップと同様に意義のある取組と考えられる。

(企業現場での活動を伴わない活動)

  •  企業外の施設や企業内会議室等で行われるPBLやサービス・ラーニングなどであっても、複数の多様な企業等関係者とのコミュニケーションを一定程度経験し、活動内容が企業等活動という文脈に即したものである場合、インターンシップと同等の就業体験と捉えることも考えられる。
  •  地域の企業等が連携し、研修施設等において、一定のテーマに基づき企業の現状を踏まえたセミナー等を合同で実施することも考えられる。

(採用活動中・採用内定後の「インターンシップ」)
 採用、就職に直結する「インターンシップ」については、以下のように、就職活動上の適正な時期に、学生の学事日程等に配慮した期間・内容で実施する必要がある。

  •  就職活動時期に、採用活動の一環として企業が実施する「インターンシップ」は、企業がより深く学生を見ることができ、学生が企業の内情を理解した上での志望が可能となると考えられる。
  •  企業から就職内定後、研修課題を与えられる場合が想定され、そのような研修課題と大学教育を整合的に再編成する取組として、就職内定後の「インターンシップ」も考えられる。

(アルバイト等の就業体験)

  •  学生に報酬等を支給するアルバイト等の就業体験については、学生自らの専攻と関連し、大学等における教育課程として位置付けた事前・事後教育等を実施することにより、大学が実施するインターンシップと同等に捉えることも考えられる。さらに、アルバイトと大学における学習をプログラムの中で統合する「日本版デュアル・システム」(学生の立場と研修を受ける労働者の立場の二重性)が考えられる。


(多様な取組の導入の推進)

  •  専門教育と関係した実践現場での学習として、インターンシップ、サービス・ラーニングなどの体験活動を、「職業統合的学習(Work Integrated Learning:WIL )」という包括的な概念として捉えることも考えられる。
  •  上記に挙げた様々な取組については、従来、十分な取組事例がないものについては、留意事項に関する検討を進めつつ、その積極的な導入に向けた調査・研究を進めていく必要がある。
  •  なお、上記の活動例以外にも、海外留学やその他の体験的活動などについても、大学外での「地域・職場の現場での学習」に相当するものであれば、キャリア教育・職業教育の一環として位置付け、インターンシップと同等の取組と位置付けることも考えられるが、それぞれ固有の状況があることから、今回の検討の対象には加えていない。


(5)国、地域において推進すべき取組
 これまで述べてきた方策を踏まえつつ、国においては、地域、大学、産業界と協力し、以下のような取組を推進することが必要である。
 
  1) インターンシップ受入れ拡大に向けた取組

   1.)大学等と産業界を調整する仕組みの構築

  •  地域におけるインターンシップに関する状況を把握しつつ、インターンシップに関する大学等のニーズと地域産業界とのニーズのマッチングを行うなど、大学と産業界を調整するための仕組みを構築する必要がある。
  •  この仕組みにより、地域内の受入企業等の開拓が推進されるとともに、地域内の学生のインターンシップの申し込みを取りまとめて企業側に提示することが可能となる。その際、受入企業等のデータベース化や、学生の申込みや企業等の受入可否決定通知をWEB上でシステム化することも考えられる。
  •  一方、学生の多くが、自らの適性・志向等が明確でないまま就職活動時期を迎え、結果として未就職の者が高水準で推移している状況を踏まえ、上記仕組みを活用し、学生に対して、キャリア教育から就職まで一貫して支援する体制を強化する必要がある。


   2.)専門人材(コーディネーター等)の養成・確保

  •  大学、学生及び企業等の間に立ち、インターンシップの受け入れ先を開拓したり、企業側ニーズを把握し、質の高いインターンシップとなるようなプロジェクト設計を行ったり、学生に対しメンター的に指示したり、学生の主体性を伸ばすコーディネーターの役割が重要である。
  •  コーディネーターとなり得る人材としては、大学教職員、商工会議所等の経営指導員、地方金融機関のスタッフ、各地のインターンシップ推進協議会のスタッフ、インターンシップに関係する企業やNPOのスタッフ等が考えられる。
  •  コーディネーターに対する研修の機会や、コーディネーター同士が定期的に全国各地の好事例を学び高め合う場の提供により資質の向上を図る必要がある。また、コーディネーターの職責の確立や学内の位置付けについても検討すべき。さらに、専門的な知識・能力を備えたコーディネ-ターがインターンシップに関する専門人材として社会的に認知される仕組みを検討する必要がある。
  •  なお、インターンシップと専門教育との関連を深める等、インターンシップの質を充実させる観点から、大学の教職員こそが専門人材となる必要があり、大学ごとにインターンシップに関する専門的知見や経験を有する教職員を養成・確保を図り、FD・SDを推進していく取組を推進していくことが重要である。


  2) 企業が実施しやすい形のインターンシップの実施

  •  企業におけるインターンシップ受け入れの推進を図る上でも、上述の通り、例えば、学生による企業研究を組み込んだインターンシップ、インターンシップ生の指導を通じた若手職員の研修、インターンシップを通じて自社のような業態または業種についての理解を深めさせることなど、企業等にとってのインターンシップの受け入れ促進を図るような取組の充実を図る必要があり、こうしたインターンシップの普及・推進を図っていく必要がある。
  •  また、学生のインターンシップの成果の評価について、企業にとって各大学等によって異なる対応が必要な現状を改め、インターンシップを受け入れやすくするため、大学からの学生の評価書類等の共通化が必要である。
  •  インターンシップの教育効果を評価する手法を開発することが有益と考えられる。


  3) インターンシップ普及・推進のための取組

  •  これまでの述べた取組に加え、国においては、インターンシップの質的向上を図るための取組の支援、多様なインターンシップ等の取組の検証・推進、優良なインターンシップ・プログラムを評価する仕組みの構築なども推進することが求められる。
  •  さらに、これまで作成してきたインターンシップ・リファレンスの作成や、全国のインターンシップ関係者の意見交換の機会の提供なども進める必要がある。


  4) インターンシップの実施状況の把握と推進に対する考え方

  •  上述の通り、今回の調査では、学生が大学を経由せずに参加するインターンシップについて把握することができなかったが、今後の施策推進に当たって、学生や企業等への抽出調査等を通じて把握に努める必要がある。
  •  今回の調査においては、特定の資格取得を目的として実施する教育実習、医療実習、看護実習に参加している実態も把握した。
    上述の通り、これらの資格取得を伴う課程においては、実習以外のインターンシップ参加は教育課程の実施上難しい場合が多い一方、これらの実習は、インターンシップの定義「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」に当てはまることから、インターンシップと同等の効果を発揮するものとして積極的に評価しうるものと考えられる。このため、インターンシップ実施学生数の増加等の施策の積極的な対象範囲からは、外すこととしたい。
  •  もちろん、これらの分野においてもインターンシップへの参加を望む学生は現におり、実施実績もあることから、その状況に応じた適切な対応が必要であることは言うまでもない。

4.「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」の見直しの方向性

 平成9年9月に当時の文部省、通商産業省、労働省の3省において作成し、15年を経過した「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」(いわゆる「三省合意」)についても、インターンシップに関する現在の課題等を踏まえつつ、改訂されることが臨まれる。その際、3.における推進方策に関する提言等を踏まえつつ、以下の観点を含めることを提言する。

(1)大学の積極的な関与
 インターンシップについては、いかなる形態のものであっても、大学教育の一環として位置づけられうるものであることから、大学が積極的に関与すること。

(2)キャリア教育・職業教育(専門教育)としての意義
 大学におけるキャリア教育・職業教育(専門教育)を一層推進する観点からのインターンシップの意義を記載すること。

(3)能動的学修を促す学修プログラムとしての意義
 大学改革を推進する観点から、能動的な学修を促す学修プログラムとして提供されるインターンシップの意義を記載すること。

(4)インターンシップの教育効果を高めるための方策
 インターンシップの教育効果を高めるため、事前・事後教育等の充実や、単位化の推進等が有益であること。

(5)新たな形態のインターンシップ
 中長期インターンシップや、コーオプ教育プログラムや、有給インターンシップなど、新たな形態のインターンシップが有益であること。

(6)インターンシップに係る専門人材の育成・確保
 インターンシップのプロジェクト設計や、大学側と企業側のニーズのマッチング等を行う専門人材(コーディネーター等)の育成・確保が必要であること。

(7)大学からの評価要素等の共通化による企業対応の簡素化
 学生のインターンシップの成果の評価について、企業にとって各大学等によって異なる対応が必要な現状を改めるため、大学からの学生の評価書類における要素等の共通化を図ること。

(8)企業等の受入の促進
 平成27年度卒業・修了予定者からの就職・採用活動開始時期変更に際して、中小企業の魅力発信等、円滑な実施に向けた取組を行うことが求められていることから、企業の魅力発信としてのインターンシップの更なる活用の推進を図るべきこと。
 このため、企業等が学生を積極的かつ継続的に受け入れるインセンティブとなりうる取組(例えば、インターンシップを通じて学生に対し自社のような業態又は業種についての理解を深め、就業を促進することが可能となる点や、受入れ企業における若手職員の育成効果、学生による企業研究によるインターンシップの推進等)について記載すること。

お問合せ先

高等教育局専門教育課教育振興係