独立行政法人日本学生支援機構の在り方に関する有識者検討会 第1ワーキンググループ(第3回) 議事録

1.日時

平成24年7月31日(火曜日)14時~16時

2.場所

文部科学省 16F特別会議室(16階)

3.議題

  1. 「第1WG報告書」案について
  2. 自由討議
  3. その他

4.出席者

委員

池尾委員、小林委員、笹倉委員、松本委員、新野氏(大森委員代理)

文部科学省

辻学生・留学生課長補佐、保立学生・留学生課長補佐

オブザーバー

髙塩理事長代理(日本学生支援機構)、月岡理事(日本学生支援機構)、石矢奨学事業本部長(日本学生支援機構)、鮫島債権管理部長(日本学生支援機構)、藤江政策企画部長(日本学生支援機構)

5.議事録

【小林主査】  
  それでは,定刻前ですが,ワーキンググループを開催させていただきます。本当にお暑い中,どうもありがとうございます。
 今日で一応報告書の骨子が出ますので,それについて,是非いろいろな御意見をいただきたいと思います。
 配付資料については,机上にありますとおりですが,もし過不足等ございましたら,事務局まで,途中でも結構ですので,遠慮なくお知らせいただければと思います。
 それでは早速ですが,議論に入りたいと思います。
 事務局より,まず資料の説明を,順次お願いいたします。 

【保立課長補佐】  
  では,御説明させていただきます。
 まず,資料1が,前回の議論の概要,主なポイントをまとめたものでございます。
 ざっと御紹介させていただきますと,前回,6月20日は,ヒアリングを御三方から行いました。まず学校関係者,大学での実態ということでお伺いをしました。例えば,大学では,卒業後の返還も含めて,きちんと在学中に説明をして,卒業後の返還に関する指導を行っていただいていること。それから,適格認定を通じて判明した不登校等の状況を,大学における修学指導にも生かしているというようなことが,JASSOの奨学金に関してのポイントだったように思います。
 それから,金融機関の関係者,次の白丸ですけれども,よく比較される対象ともなりますので,日本政策金融公庫からヒアリングいたしましたけれども,奨学金と,日本政策金融公庫の教育ローンは大きく違いが三つありまして,まず貸与の対象者が,学生本人か保護者かというところが1点目。2点目として,審査があるかどうかという点,3点目として,資金ニーズと言っていますけれども,これは,一括の融資ということなのか,それとも月々の継続的な資金なのかという,資金ニーズの違いが大きくあるということ。それから,日本政策金融公庫は収支相償ということでやっていますので,デフォルトが増えるということは与信判断が適切になされていないのではないかというとらえ方をしているという点。それから,奨学金とよく比較されるということもありますけれども,そもそもこういった性格が異なるものを,教育ローンと同じところでやるということは疑問ではないかという,そのような話がありました。
 それから,三つ目の白丸で,これは小林先生ですので,少しこちらから御紹介するのも恐縮ですけれども,ざっと御紹介いたしますと,分厚い,かなり大部の資料をいただいた上で,ポイントを絞って御説明いただきましたけれども,そもそも教育の負担に関する考え方ということで,公費負担というのは福祉国家的な考え方で,北欧がそうですけれども,例えば授業料無償ですとか,生活費も奨学金給付またはローンで賄うと,公費負担はそういう考え方である一方で,日本やアメリカというのは,私費負担という考え方が強い。その中でも,アメリカのように本人が負担するという個人主義的なものと,それから日本のように家族主義的なものが強い国というのがあるということ。そして,全体のトレンドを見ると,公費負担が重くなってくるとなかなか支え切れなくなって,次第に本人負担のほうに移ってくるというのが大きなトレンドとしてあるということ。
 それから,奨学金は,人材の育成ということもありまして,社会全体で有為な人材の損失を防止するという意味で非常に重要な役割を果たしているので,授業料の減免や授業料の設定など,授業料とあわせて考えることが重要であるということ。それから,諸外国での奨学金や授業料等の設定の仕方ですけれども,そもそも学生によって異なる設定をしているという国も結構多いということを御紹介いただきまして,例えば,負担能力のある学生からはしっかり,フルに徴収して,また大学が望む学生には手厚く給付型を支援する,加えて,法律や医学やビジネススクールのような,将来の期待所得が大きいようなところからは,しっかり授業料を高く設定して,そのかわり奨学金の貸与,ローンで対応する,そういう費用設定というのが諸外国で見られるということ。
 また,一つ別のポイントで,アメリカの例ですけれども,そもそも,貸与の奨学金を民間で実施し,国が利子負担してはどうかというような議論もよくありますけれども,アメリカでは政府が保証した民間の金融機関ローンというのをかつてやっておりましたけれども,2010年にオバマ政権でこれは廃止して,政府の直接ローンというふうに方針転換したということも注目すべきことだということ。それから,ローンの回収スキームとして所得連動型というのが,オーストラリアやイギリスでありまして,卒業後の所得に応じて,所得の何%というような形で回収して,例えば一定年齢や一定期間経過後に免除という仕組みが見られると。そういう場合は所得から源泉徴収される場合が多いということなどを御紹介をいただきました。
 ヒアリングの後の自由討議ですけれども,項目ごとに,順序をばらばらにして並べています。
 まず,債権回収や債権管理の在り方ということでまとめています。JASSOの奨学金の回収ですけれども,これは,例えば個信への登録や外部委託,こういった回収のフローの部分で見ると,金融的な手法というのはかなり導入できているのではないかという御指摘。ただ,JASSOの奨学金の債権管理のところを見ると,長い間債権管理し続けているということは,結局,かなりそのコストもかかるということで,償却の条件を見直すという議論もあるのではないかという御指摘もいただきました。
 次の白丸で,調査・分析機能に関してです。民間の場合は貸与の際に審査を行って,そこで貸与先の属性をすべて把握するわけですけれども,直ちに返済が始まるので,延滞があった場合もすぐコンタクトをとれますけれども,奨学金の場合はそこにタイムラグがあるので,そうすると結局,学校から出て就職する段階で,その段階の学生の情報をどう把握できるかというのがポイントになってくるのではないかということ。それから,今のような短期的な話だけではなくて,長期的な統計や調査ということも非常に重要で,どのようにやっていくかということ,強化が必要ではないかという御指摘をいただきました。
 それから,適格認定に関してですけれども,適格認定を,もっと大学と連携していくべきではないかということ。それから適格認定も,例えば民間の奨学金などですと,そこでしっかり見て,例えば優秀な学生に免除をするなど,適格認定を積極的に活用している事例も見られますので,適格認定でインセンティブを与えるような,そんな奨学金制度にしてはどうかという御意見もいただきました。
 次に,奨学金制度に関する理解の促進ということですけれども,奨学金という,スカラシップということだと思いますけれども,そういう名前で言うものは,国際的には,基本的には給付のものが一般的だと,貸与のものは通常ローンと言うのではないかと。奨学金という名称には歴史的経緯もありますけれども,理解の促進という意味からは,その説明の仕方の工夫も必要ではないかという御意見をいただきました。
 それから,学校との連携の在り方に関してですけれども,アメリカでは,ローンの負担が問題となっていることもありますので,大学ではもうきっちり説明をしており,今,高校でもどれくらいやるかという段階の議論になっているということを御紹介いただきました。それから,学校の事務負担と機構側の事務負担の分担ということも論点になるのではないかという御議論をいただきました。
 最後に,新たなニーズや制度等への対応ということですけれども,給付というのが理想的なのでしょうけれどもという意見がありましたが,なかなか財政的な事情からそうもいかなくて,貸与型で対応しているという現状ですけれども,貸与であれば給付のかわりになるのかということもありますので,やみくもに貸与を増やせばということではないという意味で,既存の貸与の規模が本当に適正なのかという観点も持つことが必要ではないかという御意見をいただきました。
 それから,貸与を拡充させてくる中で,財源の問題もあり,なかなか無利子を増やせないということもあって,有利子を増やしてきた経緯がありますけれども,これが果たして妥当だったのかという御意見がありました。それから,奨学金の返還方法に関して,先ほど少し有識者のヒアリングの中で同趣旨の話を御紹介しましたけれども,借りた分だけ返すというローン,デット型というふうに御紹介いただきましたけれども,いわゆるローンだけではなくて,必ずしも借りた分だけではなく,例えば将来の所得ですとか,そういう負担可能性といいますか,共助の精神も含めたエクイティー型の要素もあってもいいのではないかという御意見もいただきました。
 それから,給付型をするのであれば,公平性の観点等から,しっかりと十分な受給基準をつくる必要があるのではないかということ。それから,将来,社会保障・税番号制度,マイナンバー法が導入された場合には,所得の把握がこれで可能になりますので,ここできっちり把握するということを考えていかなければならないのではないか,それで可能であれば,所得から源泉徴収するようなこともできればいいのではないかという,そういった御議論をいただきました。
 以上,簡単ではございますが,前回の御議論を御紹介させていただきました。

【小林主査】
  ありがとうございました。
 まず,この資料について何かございますでしょうか,御意見,御質問。大体事務局の方で今までの論点をまとめていただいたと思いますので,もし漏れている点があれば御指摘いただければと思いますが,いかがでしょうか。
 そうしましたら,これについてはまた戻っていただいても結構ですので,続いて,もう一つの資料2のほうです。よろしくお願いいたします。 

【保立課長補佐】
  では,資料2が,先生方にお送りもさせていただいていますけれども,報告書の案文でございます。いただいた御意見を反映させたものにはなっておりますけれども,改めて御紹介させていただきたいと思います。
 全部続けて御紹介しますと,少し長くなりますので,大きな1,2,3ごとに一回切ってということでよろしいでしょうか。 

【小林主査】
 はい。お願いします。

【保立課長補佐】
 では,御覧いただいているかとは思いますけれども,大きな1ポツが,そもそも日本学生支援機構の奨学金事業について。その後の2ポツが課題と対応策についてで,3ポツが,最後に,組織の在り方についてですけれども,最初の1ポツのJASSOの奨学金事業についてというところ,3ページから御紹介させていただきます。
 ここは,もう本当に事実関係の記載が多いのですけれども,まず(1)奨学金事業の概要で,最初の括弧で趣旨・性質ということですけれども,奨学金事業というのは,憲法の保障する教育の機会均等の実現のために,確実に取り組むべき教育施策ということで,様々な教育的な配慮のもとで事業を実施しておりまして,ポツが四つありますけれども,例えば,所得の低い家庭を優先に,無収入の学生本人に無担保で,無利息または低利息で長期に貸与していると。貸与の判断に当たっては,学業成績や人物も見て判断していると。在学中の学生に対しては,大学と連携して教育的な指導を行っておりまして,返還に当たっても,返還を通じた自立心ですとか自己責任というような,そういった意識の涵養の観点から,しっかり指導も行いながらやっておるということでございます。
 次は,現在の奨学金事業の概要ですけれども,奨学金は,進学率の向上ですとか,また学費がどんどん上がっているということもあり,どんどん規模が増えていまして,平成24年度は,第一種,第二種合わせて8,496億円で,貸与人数134万人となっております。これに相まって,回収しなければならない額も増加しておりまして,1点,口頭で恐縮ですけれども,下から2行目の人数のところで訂正がございまして,回収額が4,738億円なのは合っているのですけれども,これに対応する要返還者が,312万人から301万人に修正をさせていただきます。前年度比は19.7万人増ではなくて,19.4万人増です。もとの数字には猶予中の人が入っていたりするため,修正となります。また,直したものを改めてお送りいたします。
 今の説明が概要でして,これまでこの奨学金に対してどのような議論とか指摘があったかということですけれども,財務省の理財局や外部からのいろいろ指摘を踏まえて,文科省においても平成22年9月に取りまとめていますけれども,外部有識者からの意見聴取による検討を行っております。また,これまで行政改革の議論の中でも,事業仕分け等でも,回収の強化,給付型奨学金の創設,経済状況への柔軟な対応。それから,減額返還制度,これは一定程度の分を,1回の返還額を半分にして,その分,返す期間を少し長くするということですけれども,そういう制度の導入ということを,指摘を受けて対応しているというところです。
 直近は,先生方御承知のとおり,本年1月の閣議決定で,JASSOについて機能を整理した上で,統合後の法人への統合,事務・事業の他の主体への一部移管等,その具体的な在り方について,この夏までに結論を得るとされていて,この検討会を開催しているということでございます。
 以上です。

【小林主査】
 今の1ですね,奨学金事業,これは大体経過的なものが非常に多いので,それほど御意見とかということではないかと思いますが,何かございましたらお願いしたいのですが。
 今,気がついたので恐縮なのですけれども,少し小さい部分なのですけれども,利息と利子と,両方使い分けられているのですけれども,これは,言葉,違うのでしょうか。私,すみません,金融機関の方にお伺いしたいのですが。例えば,現行の奨学金事業は「利息付,但し在学中は無利子」と書いてありますよね。利子と利息というのは,よくわからなくて。

【保立課長補佐】
 意識的に使い分けているわけではございませんので,修正します。

【小林主査】
 何か違うのですか,新野さん。私もよくわからない。もらえる方が利息で,払うほうが利子だというのが,昔はあったのではないかと思うのですけれども,今はあまり区別がないような気がするのですけれども。

【新野氏(大森委員代理)】
 そうですね。

【小林主査】
 ですから,どちらかに統一していただければいいのかなとは思うのですけれども。
 他にございませんでしょうか。
 では,また何かありましたら戻っていただいて結構ですので,次の2のところ,これがかなり長い部分ですので,よろしくお願いします。

【保立課長補佐】
 2ポツが課題と対応策ということで,大きく(1)が課題で,(2)が対応策ということでまとめております。
 まず(1)の課題で,丸1から丸4まで事項に分けておりますけれども,丸1,奨学金事業の課題ということで,授業料の上昇ですとか,家計所得が伸び悩む中で非常にニーズが高まっておりまして,このような中で有利子の奨学金が,財源の問題もあって大きく拡充されていますけれども,無利子の奨学金もしっかり拡充することが必要だということ。それから,貸与型奨学金というのは,返還金がまた次に循環するというようなことにはなりますけれども,やはり借金ということで,卒業時に負う債務が,学生にとって非常に大きな負担となるということもありますので,給付型奨学金の実施を望む声が高いということが課題としてあるということです。
 それから,丸2番に,貸与段階の指導について,主に学校との連携のことですけれども,まず適格認定。これは教育施策としての本質を支える重要な要素でありまして,これは奨学金事業が社会の理解をきっちり得ていく上でも非常に重要であって,一層の充実が必要であるということ。それから次に,奨学金事業の理解の促進ですけれども,これは,大学では説明の機会も設けて対応しておりますけれども,高校の段階ではまだまだ少ないということが課題だということ。それから,前回の御議論でもいただきましたけれども,スカラシップという言葉が給付型を指すのが通例であって,説明の仕方も工夫の余地があるのではないかということ。
 次に,6ページの丸3番に行きまして,回収段階,回収についてですけれども,課題として,まず債権の回収の状況がどうかということですけれども,債権の回収については目標を立てて取り組んでいまして,総回収率は目標を上回った81.5%,新規返還開始者に関しては非常に高い96.7%というところまでやっているということで,これからの課題としては,返還能力の有無をしっかり見極めて,返還できる人にはしっかり返してもらいますし,諸事情あって返還困難な人には必要な指導を行うということが,課題になってくるかということだと思います。
 それから,同じ回収率というふうに申しましても,当年度分の回収率と延滞分の回収率では,当年度分は95.2%であるのに対して,延滞分では14.5%と,ここは大きく違ってきまして,単に総回収率のみでなくて,こういう延滞債権の状況,性質に応じた分析や回収促進策が必要であろうということです。
 回収促進の取組に関してですけれども,これまでもいろいろ指摘をいただいたものも踏まえまして,例えば早期の督促の集中実施,個信の活用,法的措置の強化,それから回収におけるサービサーの活用等でいろいろやっているということで,引き続き,例えば外部委託も,コスト面も含めて効果的にやっていくことが必要ではないかということ。それから,長期の債権の管理に関しては,長く管理することで機構にとっても負担も重くなりますし,返還者にとっても延滞の解消が難しくなるという場合もありますので,ここも課題であろうということでございます。
 それから,丸4としまして,奨学金事業の中核的機関としての機能ということですけれども,まず調査・分析機能ということで,奨学金の貸与事業に関する情報の中には,なかなか,延滞者の情報など把握困難なものもありますけれども,やはり事業運営に当たっては基本的な情報を十分に把握することが課題であろうということ。それから,関係機関との連携ということですけれども,大学というのは非常に,当然重要なステークホルダーとなってきますので,しっかり連携・協働の上,例えば各大学の情報を機構に集約するなどによって,中核的な機関としての機能を通じて経済的支援の充実を図ることが必要だろうということ。
 (2)の対応策です。丸1の今後の奨学金貸与事業の在り方ですけれども,まず,今後も引き続きニーズが高まっていくことが予想されますが,ポツで幾つか書いておりますけれども,例えば進学の際の予見性という観点からは,在学採用ではなく予約採用の割合を増やしていくことが必要ではないかということ。それから,給付型ということですけれども,これは非常に望む声が高いものではありますけれども,財政負担も大きいものですから,奨学金というのは将来の人材育成のための投資であるということも踏まえつつ,一方で,他の経済的支援との関係もよく考えながら,どういったものが必要かということを,社会全体で引き続き議論を進めることが必要ではないかということ。
 諸外国の奨学金制度では,前回の御議論でもいろいろいただきましたけれども,所得に連動した返済,負担も学生の状況によって違うという仕組みなど,共助の側面の強い施策も見られますので,機構においても,今年度から新たに「所得連動返還型無利子奨学金制度」を創設していますけれども,さらに今後の在り方についてもしっかり検討する必要がある。ただ,本格的にやるためには所得の捕捉ということが必要になるので,それも,後で出てきますけれども,マイナンバー法の動向も見ながらしっかり考えていく必要があるのではないかということです。
 それから丸2番で,貸与段階の指導,学校との連携ということです。適格認定についてですけれども,学校で教育的な観点からきちんと指導するということは,当然社会の理解を得る上で不可欠なので,きちんと充実させるということ。それから民間団体の奨学金においては,この適格認定を通じて貸与している学生の状況をしっかり把握し,評価して,学生にインセンティブを与えるようなものもございますので,そんな例も参考にということで,報告書にも記載をしております。
 それから,奨学金制度に関する理解の促進ですけれども,大学のみならず,高等学校段階においても,例えば進路指導の機会等を活用して,早い段階から理解を深めるように取り組むことが肝要であって,例えば,その際には教育委員会にも情報提供を積極的に進めるということも有効ではないかということです。
 丸3の回収の在り方ですけれども,まず,民間の手法の一層の活用ということで,少しこのあたりが,もし書き過ぎであれば御指摘いただきたいんですけれども,これまでの,例えば個信の活用やサービサーの委託というような状況を見ると,「民間の金融機関からみても遜色ない程度に,民間的な手法が取り入れられているものと評価される」と書かせていただいていますので,少し書き過ぎであれば御指摘いただきたいと思いますが,さらに専門的・効率的な実施ができる場合には,民間の視点も取り入れながら,不断の見直しを行うべきであるということ。
 それから,長期にわたる債権管理の在り方です。まず,延滞金に関してですけれども,これは返還金が次の世代の学生に貸す原資となるお金ですので,しっかり回収するために必要なものではありますが,ただ,長期延滞に陥った場合に,なかなか延滞から抜け出せなくなるというような状況もありますので,例えば,延滞状況にあっても返還を継続する意思があるような人に対しては,少し延滞金の課し方を柔軟にするような,そういう工夫もあってもいいのではないかということ。
 次に,債権の償却に関してですけれども,従前より,一定期間以上の長期延滞債権がなかなか回収コストに合わないというようなことも指摘がありますので,これまでも償却基準の見直しに取り組んでおりますけれども,事業が健全かつ安定的に運営されるように,かつ,返さなければ逃げ得というモラルハザードを起こさないように留意しつつ,限られた資金で効果的に業務を行えるように十分議論することが必要であるということ。
 それから,返還者の実態把握ということですけれども,きっちり返せる人から返してもらうということのためにも,きっちりと返還者の実態を把握することが何より重要であるということで,その際には,例えば機構は,金融機関や債権回収会社のノウハウを参考にするということもあるのではないかということ。それから,マイナンバー法の導入ということも一つの機会となりますので,この導入の状況も見据えつつ具体的な対応策を検討することが必要であって,マイナンバー法を導入するような際には,機構の業務管理システムも含めた業務の運営方法を抜本的に見直し,合理化・効率化を図ることが不可欠ではないかということ。
 最後に,奨学金事業の中核的機関としての機能についてということですけれども,調査・分析機能が重要であるということが,もう度々出ていますので,少し省略しますけれども,こういうものをしっかり戦略的にやっていくことが必要だということ。それから,大学等関係機関との連携ということも,今後,例えば先ほども,予見性の観点から在学採用ではなくて予約採用の割合を高めたらどうかという際には,例えば高等学校との連携ということも出てまいりますので,関係機関との連携の在り方,中核的機関としての在り方を検証していくことが必要だということを述べております。
 少し長くなりましたけれども,以上です。

【小林主査】
 ありがとうございました。
 かなり長い部分ですけれども,2の課題と対応策ということで,これはセットになっているところがありますので,これについて,御意見,御質問いただければと思います。金融機関に関連する部分もありますし,大学に関連する部分もありますし,育英団体に関する部分もありますので,それぞれのお立場から御意見いただければと思いますけれども,いかがでしょうか。
 先ほど,7ページから8ページのところで,特に民間金融機関と遜色がないというような形で書かれていることについて御意見いただきたいということであったのですが,このあたりはどうでしょうか。

【池尾委員】
 機構自身の自己評価としてはどうですか。遜色ないと。

【髙塩理事長代理】
 いや,民間金融機関相当程度だと思います。

【小林主査】
 やれることはやっているということですか。

【髙塩理事長代理】
 はい。

【池尾委員】
 一つ,よろしいですか。

【小林主査】
 どうぞ。

【池尾委員】
 今回のワーキングの射程からするとこれでいいと思うので,少し余談というか,感想になってしまいますけれども,聞きながらいろいろ考えていて,奨学金事業の課題というのは,もっと奥深いなというか,少し長い目で見ると実はなかなか大変な問題があるなという気がしていまして,奨学金に関して審査をしないで貸しているというふうに言われてきていますけれども,大前提として,高校もありますけれども,大学に進学している人間に貸しているという,母集団を非常に限っているわけですよね。
 従来というか,もう10年以上前,一昔前よりももっと前の話になるかもしれないけれども,大学進学率がある程度限られていて,しかも大学を卒業するとほぼ正規の職につけるというふうな,そういう社会システムのときに大学に入学した者に貸すというのと,現在のように大学進学率が5割を超すようなところまで高まってきていて,しかも大学を卒業したからといって,自動的にというか,ほぼ完全に接続するような形で正規の職につけるわけでもないというふうな状況になったときでは,やはりかなり違ってくるという感じがあって,それがデフォルトの可能性だとか,そういうふうなところに,長い目で見るとかなり響いてくるような気がするので,本当に事業としての在り方に関して,基本的な骨格を現状のままでずっと続けていくことがどこまで妥当なのかというのは,ここで,調査・研究,中核機関としての機能というところで触れられている話の中に,やはりそういうことも含めて長期的な在り方を検討していくことが非常に重要で,そういう機能を持ってもらうことが必要です。
 機構だけが考えることではなくて,給付型とあわせて社会で考えるべきだという記述がありましたが,まさに社会で考えるべき課題だというふうに思いますけれども,昔の大学の大学生になって,それで4年制の大学とかを卒業すれば,繰り返しですけれども,正規の職についてという社会モデルと違ってきているということを踏まえたときの奨学金事業の新しい在り方というのはどうなのかというのが,本当は検討の課題としてあるのではないかということです。

【小林主査】
 それは非常に重要な御指摘で,まさしくそのとおりだと思います。奨学金事業自体も大きくなっていますから,三つの要因なのですね。進学率が上がって,異なる学生層が出てきている,奨学生が多くなっている,しかも就職率が悪いと,そういう三つの要因が重なっていますので,これがすぐにどうこうできるという問題ではないかもしれませんけれども,長期的な検討の課題であることは間違いないと思います。
 是非,その辺は,どこに書き込むかというのはありますけれども,長期的な課題として入れていただけますか。

【保立課長補佐】
 わかりました。

【小林主査】
 他にいかがでしょうか。
 笹倉先生,この前御欠席だったので,是非御意見いただきたいのですが。

【笹倉委員】
 これは報告書(案)の最後のところとも関わりがあるのかもしれませんけれども,一つだけ指摘をさせていただければ,民間にした場合に,民間では,先ほど一部のところで指摘がありましたけれども,奨学生に対して漏れ落ちが生じる可能性がある。というのは,民間の場合であるならば,いわゆる債権回収可能性という視点からしか物事を見ない。そうすると,本来の奨学金事業というものが,人材の育成と教育の機会均等という目的を持っているにもかかわらず,奨学金貸付けの一つの視点として所得があるかどうか。本人の所得はないわけですけれども,家族に返済能力があるかどうか。そちらの方を視点にして貸付けるということになると,すべてを民間ということでいった場合には,そこのところに漏れ落ちといいますか,拾えない候補者,例えば家族に返済能力がないために奨学金の貸与を受けられない学生というのが出てくる可能性があります。
 その部分を機構が現在はきっちり拾っておられるのではないかというように思うので,極端な言い方をすると,全てを民間に移行して単なるローンということにしていけば,国は何もしてくれなかったというような発言が出てくる可能性というのもなきにしもあらずというところかなと思います。
 あと一つ,教育的な配慮といいますか,大学では優秀な学生というものの判断をしているわけですね。誰が奨学生となるのか,誰が優秀な学生なのかという,その判断,一つは成績,それとあと一つは,親御さんから出てくる所得,そういったことに関しても情報が入ってくるわけですけれども,そういったものの守秘義務といいますか,これを大学と日本学生支援機構とともに守っているという,この部分をどういうふうに担保するのかというのが少しばかり議論になるかなというふうに思います。
 これは報告書(案)の最後のところと関わるので,先に,私の方から言うかどうしようか,迷ったところなのですが。

【小林主査】
 ありがとうございました。またそれは次のところでも議論させていただければと思います。
 それから,今のところに関連してなのですけれども,今さらなのですけれども,やはり憲法と教育基本法に書かれていることなので,それは報告書には書いておいてもよろしいのではないでしょうか。やはり国及び地方公共団体はそれをやらなければいけないということになっているわけですから。

【保立課長補佐】
 一応,3ページ目の,タイトルも入れると上から7行目のところに。

【小林主査】
 ええ,重要な施策であると書いてあるのですけれども,ですからこれだけだと少しわかりにくいので,国と地方公共団体はやらなければいけないという条文があるわけですから,もう具体的に条文を書いてしまってよいと思います。

【保立課長補佐】
 了解いたしました。

【小林主査】
 他にいかがでしょうか。
 非常に難しい事業であるということなのです,今まで出てきている議論は。前回でしたか,数字はしっかり覚えていませんけれども,国の教育ローンでも全員に貸しているわけではなくて,八十何%ぐらいだったとか,数字が出ていたような気がしますけれども,審査してはねられているわけです。奨学金の場合はそういうことができないので,むしろ逆にリスクの高い人に貸しているという,それで回収しなければいけないという事業になっているわけですから,非常に難しいということなのです。だから,そこのところをどのように合理的な制度設計をしていくかということだろうと思うのですけれども。
 どうぞ。

【新野氏(大森委員代理)】
 先ほどのところに戻って恐縮ですけれども,少し書き過ぎではないかというところのお話です。機構さんの方からも相応のというお話がありますけれども,確かに導入いただいている手法等は,民間金融機関から見ても遜色のないということでは言えるかと思うのですけれども,これまでも説明の中でありましたとおり,実際には機構さんの陣容とか体力とか予算とかで,やれる,限界というのもあろうかと思います。形式的に見ると,やるべきことはできているのでしょうけれども,やはりどうしても限られた人員の中でやっているという制約もありますので,それを見て遜色のない程度というのは,少し書き過ぎかなという感じはしないでもありません。人員なども減り続けてきているというお話も前回ありました。実態面を見れば,そういった手法をやりながら,工夫はされているとは思うのですけれども,先ほど機構さんの方からお話ありましたように,相応のというようなお話の方がしっくりいくのかなという気がいたします。
 それから,論点として,こちらもこれまでお話ししなかったので,大変僭越ではあるのですけれども,前回の第2回のワーキングのヒアリングの中で,学校関係者のヒアリングの中ですが,結構学校独自でもいろいろ奨学金制度等を拡充されたり,工夫されているというのがありました。
 日本学生支援機構の方で取り扱っている奨学金と,学校の方で独自でやられているものとの関係というのでしょうか,非常に学校独自にいろいろ色を出されている部分と,機構の奨学金との,そういう意味では相互に補完するような関係も議論としてはあるのかなというのも個人的には感じたのですけれども,その辺はいかがでしょうか。学校の方も非常に限られた予算の中で運営はされているのだと思うのですけれども,学校独自に,おそらく学生さんの,将来活躍していただきたい領域とかに,また若干強弱をつけられてやられているという色彩も多分おありなのではないかと思います。先ほどお話がありましたように,教育の機会均等という観点と人材の育成という観点です。
 機会均等という観点でいいますと,割とこういう一律の制度みたいなものがしっくりいくのかもしれませんけれども,人材育成といいますと,それぞれやはり育成する領域の特色というのは出てもいいのかなという気はしたのですけれども,この辺は,学校独自制度との関係みたいなところはいかがでしょうか。

【小林主査】
 笹倉先生,いかがでしょうか。

【笹倉委員】
 少し私もその関係もしておりますので,今御指摘のところでいきますと,大学の方でいけば貸与がほとんどで,大手の大学で,この前も指摘させていただいたと思いますけれども,だんだん給付,給費の方に移りかけているという現状がございます。
 それから,それぞれの大学で,やはり入試政策であるとか,学生を育成するための,学内で非常に活躍した学生であるとか,そういった学生に対する奨学金,奨励金といいますか,そういったものを給付といいますか,返済不要という形で与えるのが,ごく最近非常に増えてきております。特に入試政策とのかかわりで,優秀な学生をできるだけ早く確保したいということで,返済不要である給費の学生を,各学部何名というような形で給付するというようなことをやっている場合も,最近,資料の上でとみに目立ってきております。
 それから,資格試験等々の合格者等,スポーツ関係の方,そういったものが学内での活躍ということで増えております。

【小林主査】
 かつては,第二種奨学金が十分でなかった,もちろん第一種も申請者に対して十分ではなかったけれども,第二種も十分ではなかったので,全く同じような貸与制度を持っている大学が結構あったのですね。第一種なり第二種と全く同じ仕組みで,大学がただ同じ仕組みでやっているということもあったのですけれども,現在ではそういった貸与型の奨学金というのはあまり意味がなくなってきていて,笹倉先生言われたように,大学独自でやっているというふうに変わってきていると思います。
 新野さんが言われたように,JASSOの方は国の施策ですから,ベースというか,ミニマム的な要素で,割と等しくやっている。大学の方は,大学で独自色をやっておられるということで,それは役割分担をむしろしていくということだろうと思います。その辺を少し書いていただければと思います。
 それから,同じことは民間の奨学金団体についても言えますので,松本先生のほうから,是非御意見をいただきたいんですけれども。

【松本委員】
 報告書を一応全部読ませていただきましたけれども,今回のワーキンググループの一つの論点でありました給付型についての方向付けがもう少し出ないかなと感じました。共通認識としても,給付型というのは必要だろうというところまでは来ているのではないかと思いますので,是非今回の報告書の中でそれを盛り込んでいただきたいなと思います。
 それは一つには,今回初めて私も参加させていただきましたけれども,日本の奨学金制度という中で,教育の機会を与えることについては現行制度はかなり充実しており,ある意味で,もう十分過ぎるぐらいなのではないかと思います。そうするともう一つ,先ほど先生の御指摘のとおり,人材育成とかそういった面が,裾野が広くなり過ぎたために,そちらのポイントが少し薄くなっているのかなと感じています。この面を象徴するような制度が,今回給付型という形で位置づけられると,よろしいのではないかと思います。納得のいく支給基準を明確につくれれば,これは非常に人材育成という観点で重要な,また,今の若者にやる気を起こさせるような制度にもなっていくのではないかと思いますので,そういう形で,もし給付型が位置づけられればありがたいなというふうには思っております。

【小林主査】
 ありがとうございました。
 関連して,返還免除についてはどうでしょうか。人材の育成という観点からしますと,かつては教員について返還免除制度というのがあったわけで,それから研究者についても,私もそうですけれども,それのおかげで助かって研究者になれたわけです。そういった観点から各国を見てみますと,多くの国で返還免除制度がある。やはり返還の免除というのも一つの実質的には給付型になりますので,これは特に,特定の人材に対しての給付型という色彩もありますので,それも検討されてもいいような気がするのですが。

【保立課長補佐】
 では,返還免除についても触れるような形に。

【小林主査】
 ええ。

【保立課長補佐】
 ただ,給付型について,少しこちらも案文で悩ましかったのが,給付型について必要性の御意見も,御議論もいただいた一方で,やはりそれにはすごく財政負担も大きく伴うので,そういう国民的な議論ができているのかという御議論も同時にいただいたものですから,どこまで強く書くべきかというのもありまして,少し今,中途半端にも見えるかもしれません。

【小林主査】
 それは,特に給付型の場合ですと,完全にもうこれは税金を使うということになりますので,それについては十分な議論が必要だというのは,そのとおりだと思います。ただ,両方やはり併記しないといけないと思うのですね。給付型も必要だと,だけれども,今の国の財政状況を考えると非常に,十分な議論をしないで,国民が納得しないような形では導入できないということだろうと思います。

【保立課長補佐】
 では,そこを丁寧に書くように。わかりました。

【池尾委員】
 国民負担を求める議論をすればいいんですよ,本当に給付型が必要なので,国民負担をお願いしますという議論をすべきだということだと思うのですね。
 それと,少し変わっていいですか。

【小林主査】
 どうぞ。

【池尾委員】
 大学独自とか民間でやる場合も,やはり財源の問題というのが当然制約になるわけで,補完的にやるといっても,先立つものがなければやれないというのがあって,そうしたときに,やはりアメリカみたいにドネーションというか,文化だけではなくて,税制上の支援もあって,非常に寄附というのが一つの,公的なチャネルとは別の支援のチャネルとして大きく確立している社会と,残念ながら日本の場合は,やはり寄附などのチャネルは非常に弱くて,だからその分,国のチャネルというか,公的なチャネルに,全面的というか,大部分そちらでやらなければいけないというふうになっている。そういうのが,今申し上げたように国民負担を求めていくというときに,本当に公的なチャネルだけを膨らませていくという方向性でいいのか。税制上の支援も含めて,もっとドネーションとかを募って,各大学とか民間機関が独自の試みができるような形で,総合的に充実させていくというのが社会的な方向性として考えられるのではないかとか,そういう議論を,それこそ幅広くしないといけないということではないかと思いますけれども。

【小林主査】
 ありがとうございました。それも非常に重要な指摘ですので,是非書き込んでいただきたいと思います。
 他に,御意見等ございますでしょうか。
 もしありましたら,また戻っていただいても結構ですので,それでは次の3のところを,説明お願いいたします。

【保立課長補佐】
 9ページの3ポツ,機構の奨学金事業に係る組織の在り方についてで,(1)で奨学金事業の実施体制と機構の役割ということです。
 まず前提として,少ししつこいのですけれども,憲法や教育基本法の保証する教育の機会均等ということで,確実に取り組まねばならない施策ですので,こういう趣旨・目的を踏まえた体制で行われる必要があるという前提のもとに,行革の指摘の中でも,民間の主体に移管できないかということがよく言われるのですけれども,教育費のための金銭の貸付けという観点から,回収率の向上のためにということで,民間の主体で行って,例えば国が利子補給とかいうようなこともよく指摘はされます。ただ,以下の,幾つか箇条書きで書いておりますけれども,まず民間の――ここもまた書き過ぎであれば,御指摘いただきたいのですけれども,民間の教育ローンでは,主に貸付け時の審査という与信判断が非常に重要で,そこでリスク管理している部分が非常に大きくて,機構の奨学金事業のように,無担保で,審査なく,収入のない学生本人に貸しているという事業においては,あまりノウハウをそもそも生かせないのではないかということや,それから,教育的指導,例えば適格認定や,返還段階でも返還期限猶予や減額返還というようなことも,民間の貸付け事業では見られない特徴であるということ。
 それから,機構は独法ですので,財政融資資金の活用によって,低コストの安定的な資金調達が可能であって,これによって学生の負担も,利子の負担も非常に低く抑えられているということ。それから諸外国の例を見ましても,例えば,先ほど前回の議論ということでも御紹介しましたけれども,民間の教育ローンに政府が利子補給ということも米国でかつてやっていましたが,やはりそのコストの高さから廃止されたということもあって,他の国を見ても,やはり奨学金事業は,国や公的機関で実施しているということ。それから民間金融機関では,結局,無担保,無審査といったようなリスクを伴うような事業をするには,相当な利子を課すことが必要になって,その分を利子補給ということになりますと,かなりの補助金が必要とされて,結局あまり効率的ということには,さほどならないのではないかということ。
 こういうことを踏まえると,やはり教育政策としての趣旨や機能をしっかり果たすためには,民間の手法も,例えば債権管理や回収というようなところでしっかり取り入れつつも,実施主体としては機構が実施すべきであるいう結論にしております。
 それから,奨学金事業を安定的に持続可能なものにするための組織の在り方ということですけれども,まず奨学金の需要が非常にずっと高まっておりまして,ただ,そんな中で事務体制というものがなかなか,運営費交付金というのもどんどん削減されていくというようなことで,事務体制はあまり膨らまないという構造にありますので,学生に一定の負担を求めることも検討してはどうかという御指摘もありました。これは,おそらく御議論の中では,手数料などの言葉で御議論いただいているかと思いますけれども,ただその際には,そもそも奨学金というのが,例えば無利子であることや,有利子であっても低利子でやっていると思いますけれども,こういうふうに,学生が修学を断念しないように経済的支援ということでやっているという制度の趣旨を損なうものとならないように,よく検討をする必要があるのではないかということ。
 それから,大学との連携・協働で,しっかり安定性・継続性を高めていくことが重要であるということ。それから,事業の推進に当たっては,税金から多額の資金を使っているということもありますので,例えば回収の状況等も含めて,適切な情報公開,わかりやすい説明に努めて,透明性の確保にしっかり取り組むべきであるということ。それから,さらにしっかり事業の検証と改善をシステムとして充実させることが有効であって,例えばということですけれども,第三者機関の設置で,例えば債権回収の監視委員会というようなことでどうでしょうかということで,括弧して書かせていただいていますけれども,こういうような第三者による機関を設置するということも可能であるのではないかということ。
 それから,次の括弧ですけれども,中核的機関としての機能をしっかり整備していくためにも,政府としても必要な措置を講ずるとともに,機構においても,例えば関係機関の連携強化,めりはりのある資源配分ということで,業務の不断の見直しを行うことが必要であるということです。
 それから,そもそも奨学金事業の実施主体を別なところでやってもいいのではないかというような議論も,民間だけではなく,そういう議論も行革の中ではあります。JASSOにおいては,奨学金の他に,留学生と学生生活支援の3事業をやっておりますけれども,まずその3事業を一体的にしなくてはならないのではないかということが最初の段落ですけれども,それは,例えば奨学金事業部では,海外留学の奨学金もありますけれども,これは留学生事業部との連携というのが当然必要になってくるということ。それから,学生生活事業も,結局そこで直面する困難というのは,経済面に起因するものも非常に多ございますので,やはり奨学金貸与事業とよく連携した事業実施というのが重要であるということから,3事業を切り離して奨学金事業だけどうということではなく,一緒にやることが必要ではないかということです。
 それから,まとめということも含めてですけれども,統合後の法人。これは,そもそもこの検討会の出発点となった本年1月の閣議決定で,統合後の法人というのは,入試センターと学位授与機構と財経センターですけれども,これを統合して,そこにさらにこの日本学生支援機構も移管してはどうかという議論,移管することも含めて検討するようにということでしたけれども,まず,この3法人を統合した法人というものの検討が今進められているところですので,この法人の体制が明らかになった段階で,その内容も踏まえて可否を検討することが必要であるということ。それから,特に奨学金事業の場合に留意すべきことは,奨学金事業実施に当たりまして,例えば,現在4,000を超える大学等との間でしっかり連携体制を築いてやっておりますけれども,そういった関係がどうなるのかということや,さらに今後,例えば予約採用を増やせば,高校との連携ということも必要になってくること。それから,機構が今,多額の債権を扱っていますけれども,そういったものの扱いですとか,そういった面にもよく配慮した上で議論をすることが必要であろうということでございます。
 以上です。

【小林主査】
 ありがとうございました。
 3のところ,組織の在り方,ガバナンスの問題ですけれども,これについていかがでしょうか。ここにおいても民間金融機関との相違というようなことがかなり書き込まれているということでしたけれども,先ほどの,笹倉先生が言われた守秘義務の話ですね。これはガバナンスの問題ですので,ここに何らかの形で反映させていただければと思うのですけれども。

【保立課長補佐】
 はい。

【池尾委員】
 ちょっとよろしいですか。

【小林主査】
 どうぞ。

【池尾委員】
 結論自体は,私も異論はないのですけれども,だから奨学ローンというのか,学生ローン的なものについては,アウトソーシングするよりも直貸ししたほうが,トータルな意味でのコストというかパフォーマンスはよくなるのではないかという,結論自体に異議はないのですけれども,本当言うと,経済学者としてはロジックについては少し異論があります。
 アウトソーシングできるか,できないかというのは,目的自体はすごく,例えば極めて公共性の高い目的を追求する場合であっても,やることが単純で,こういうことをやりなさいというのを明確に指摘して,それをしっかりやっているかどうかを検証できる場合は,アウトソーシング可能なのですよね。アウトソーシングするのが難しいのは,やることの内容を正確に定義して,しかもそれをしっかりやっているかどうかをチェックするというようなことが非常に難しいような業務の場合は,アウトソーシングが難しい。それは,だからここで言う,例えば教育的配慮をしなさいというように,契約に書くことはできるわけだけれども,本当に教育的配慮しているかどうかをチェックするというのは現実的には難しいので,そういうものについては直接実施する必要があるという話だと思うのです。
 そこから言うと,守秘義務は逆に課せるのですよね,それは民間主体だって守秘義務に違反した場合は,極めて大きなペナルティーがかかるような契約を書けばいいので,だから情報を漏らしたか,漏らしていないかというのは,確認が比較的できる事項ですから。大枠では異論はないのですけれども,だから教育的に配慮するというふうなことの内容上,直接やった方がいいということだと思います。
 それからあともう一つ,アメリカの例,たしかにオバマ政権になって廃止したということですけれども,廃止した後の今の制度が,では最善の制度なのかという話はあって,過去いろいろいきさつがあると思うのですね。アメリカはもういろいろ制度を見直していて,いろいろやってみて,うまくいかなくて,また入れかえてみて,またそれもうまくいかなくてというふうな試行錯誤をやってきている。たしか昔はサリーメイというGSEがやっていましたよね。あれを完全に民営化した後,何かやっていて,またこうというふうなことで,少し試行錯誤をやはりアメリカもしている感じなので,つまみ食い的にここだけ証拠として持ってくるのはどうかなというのは少し思いましたけれども。

【小林主査】
 その点に関しては長い間論争がありまして,どちらが効率的で,今のあれで言いますと教育的にいいのかと,あるいは経済的にコストはどちらがいいのかというのは,民間金融機関に対して政府保証する方がいいのか,それとも政府が直接やった方がいいのかと,実は長い論争があります。
 今,たまたま,というと語弊がありますが,今の民主党政権は,政府直接ローンを支持している。だからこれが共和党政権になれば,またどうなるかわからないという性格は,確かに持っています。

【池尾委員】
 繰り返しですが,私も直貸しの方がいいと思っています。結論としては,さっき言ったように。教育的な配慮とか,民間金融機関に命ずることはできるのですけれども,命じたとしても,本当に教育的に配慮しているかどうかというのはチェックすることができないから,契約としてはあまり意味を持たないので,そういう事情を考えると,奨学ローンは直接,政府ないし政府の関連機関がやるというのが,総合的な効果としてはそちらの方が望ましいというふうに思っていますけれども,ただ,それを根拠づけるときに,つまみ食い的にいいところだけとってくるのは,少しどうかなという話。

【小林主査】
 アメリカは,今少し簡単に御説明したとおりなのですけれども,韓国も実は似た経緯がありまして,韓国は住宅金融公社が学資ローンを2006年に始めたのですけれども,これがやはり,住宅ローンと教育ローンでは全然性格が違うので,結局うまくいかないで,これもまた政権交代とも関係しているのですけれども,その両方の理由で,現在では政府の機関が直接実施となっているのです。
 ですから,確かにおっしゃるように,これだけ書いてあると,少しつまみ食い的に感じるかもしれませんけれども,実際にはかなり,やはり直貸しの方に移っているというのは事実だろうと思います。

【保立課長補佐】
 では,ここは今,これが大きな理由のようになってしまっているのですけれども,これを,本文よりは,注みたいな形にして,例えば米国ではそういう例があるとかいうくらいにするのか,それとも落とすか。どういたしましょう。

【池尾委員】
 それか,もっといろいろ書くかです。

【小林主査】
 うん,もっといろいろ。

【保立課長補佐】
 では,ちょっと小林先生に助けていただいて,他の例も教えていただいて。

【小林主査】
 後は,僕が知っている範囲で政府保証,民間ローンというのをやっているのは中国です。ただ中国の金融機関というのは,半分政府機関のようなものですから,性格が違うということがあります。
 他にいかがでしょうか。
 どうぞ。

【新野氏(大森委員代理)】
 書きぶりの問題なのかもしれませんけれども,民間主体への移管のところの,ポツの三つ目「独立行政法人である機構においては」ということで,どちらかというと,これは,先生が今お話しされた話とも関連するのかもしれませんけれども,低コストで安定的な資金調達が可能である点ですが,なぜそういうことをやらないといけないのかということをむしろしっかり書いた方がいいのかと思うのです。まさに教育の機会均等を実現するためには,こういう低コストで安定的な資金調達を行った上で,制度として継続できるような形で運営していくことが重要だということが多分ポイントであると思います。
 そういう意味では,国が直貸しをするというのが,一番効率の観点でもいいということだと思います。民間金融機関は,先ほど池尾先生がおっしゃったように,利子補給などをしていただいても,やはりビジネスジャッジの世界の中で,どうしても判断が分かれてしまうところがあります。やるところ,やらないところというのはやはり分かれてしまいます。そこは,学生の教育の機会均等とか人材育成という観点で,国がやっていく業務と,民間のビジネスとで,やはり一番性格が異にするところであります。このポツの三つ目の書き方ですと,その辺の趣旨がうまく伝わらないような気がしますので,少し補足していただいたほうがいいのかなというふうに思います。

【小林主査】
 ただ単に低コストであるというだけではないということですね。

【新野氏(大森委員代理)】
 そうですね。

【小林主査】
 その辺が重要だということですね。ありがとうございました。
 やはりもともとの,最初に1月に見直しの案が出たときに効率化という話が入っていましたので,あるいは民間的手法を活用するということが入っていましたので,その辺にかなり力を入れてしまっているのですけれども,もともとの趣旨から言うと,やはり大もとに帰るということですよね。

【笹倉委員】
 書き方だけの話だろうと思うのですけれども,これは完全移行というような意味合いですか。完全移行というか。

【保立課長補佐】
 民間に。

【笹倉委員】
 民間に完全移行。

【保立課長補佐】
 そうですね,ここの3ポツのところでは,それができるかという議論です。

【笹倉委員】
 そういう意味ですね。そのときに,私,少し先ほど申し上げたのですけれども,完全移行にすると,先ほどのように漏れが生ずる可能性があるということですね。目標を達成するための部分で,一部分,やはり奨学金を受けることができない学生が生ずる可能性があるというのは,これは大きなデメリットだろうというふうに思うのですけれども。

【小林主査】
 民間に任せた場合に,全ての必要な人に奨学金が渡らない可能性があるということですよね。それは確かに大きな論点だろうと思います。
 他にいかがでしょうか。
 すみません,僕は少し最後のところがわからなかったのですけれども,「4,000を超える大学等との間で築かれている連携体制」とあるんですけれども,この4,000という意味が少しわからなくて。

【月岡理事】
 専門学校を入れて,大学院を別に数えております。

【小林主査】
 なるほど,そういうことですか。少しそこのところ誤解を与える,「4,000を超える大学」と読んでしまうと,非常に誤解を生じやすいので。

【保立課長補佐】
 そこは内容を,注か何かをつけて,明確にしておきます。

【小林主査】
 そうしてください。

【池尾委員】
 最後の(2)のところが,正直言ってちょっと唐突感があって,これまでの経緯があってしまっているので,仕方がないと言えば仕方がないのですけれども,1月20日の閣議決定で大学入試センターと日本学生支援機構と大学評価・学位授与機構を統合することになっているわけですよね,

【保立課長補佐】
 日本学生支援機構は,まだ統合することにはなっておりませんで,残りの三つ,大学入試センターと大学評価・学位授与機構と国立大学財務・経営センターは,もう,その三つの統合までは決まっていまして,そこに機構が。

【池尾委員】
 統合するかどうかを検討して,夏までに結論を得るということ。

【保立課長補佐】
 はい。

【池尾委員】
 そういう意味ですか。
 ただ,それにしても,もうある程度の,今後の枠組みの大枠が与えられてしまっているので,その中で何を議論するのかということで,自由に議論できることがあまり残っていないということなのかもしれないですけれども,この3事業を一緒にしなければいけないとか,こういうことだけぽんと書かれても,統合後の在り方の全体像が全然見えないので,ここで全体像は議論もしていないわけですけれども,既に決まって与えられていることだとしても,大体の全体像が見えた中で,留意点としてこの2点ぐらいが指摘されているのだと,理解しやすいのですけれども,実施主体の在り方という見出しで,この二つだけが書かれているというのは,少しどういう文脈で,どういうふうに理解すればいいのかというのが。

【小林主査】
 それは,おっしゃることはよくわかります。もう閣議決定を受けているので,こういう書き方になっているのです。閣議決定で,もうこういう形でしますということになっていますので。
 ただ,報告書として書くときに,やはりそこをもう一回説明してあげないと,文脈が,確かにおっしゃるようにわからないので,これだけで独立して読むというふうに考えていただいて,少し説明をきちんと入れていただきたいと思います。

【保立課長補佐】
 わかりました。

【小林主査】
 それとの関係で言うと,これはこちらのワーキンググループで,つまり奨学事業としてはこういう形だということです。もう一つあるわけですから。

【保立課長補佐】
 はい。

【小林主査】
 他にいかがでしょうか。
 機構の側からは,御意見とか御質問はございませんでしょうか。

【髙塩理事長代理】
 非常によく御検討いただいたと思います。
 最後のこの部分は,第2ワーキンググループの留学生支援事業と学生生活支援事業にも同様の記述がありますので,最終的に,親委員会でまとめる際は,それぞれについて書くのではなくて,おそらく一箇所にまとめて書かれるだろうと推測しております。

【小林主査】
 ですから,こちらの奨学事業に関するワーキンググループとしては,こういう結論だということですよね。

【髙塩理事長代理】
 はい。

【小林主査】
 他にいかがでしょうか。
 保立さん,もう実質的には今回が最後ですね。

【保立課長補佐】
 はい。

【小林主査】
 ですから,これでよろしいということになれば,もうこれで報告書を書いて,それをまたメール等で見ていただくということにはなるかと思いますが,実質的に最後ですので,もし何かございましたら。
 10ページの,一番最後のところに,理事長直轄の第三者機関を設置することも考えられるとあるのですけれども,これは,機構側としてはこれでよろしいのでしょうか。よろしいのでしょうかというのも変ですけれども,こういう考え方は,一つの例ですが。 

【髙塩理事長代理】
 現在設置されている返還促進等検証委員会を更に強化するような形で考えております。

【小林主査】
 もっと。

【髙塩理事長代理】
 メンバーについては外部有識者等をもう少し増やすなど,返還回収という一番重要な課題について常時監視する体制を強化するという趣旨だと受け止めております。

【小林主査】
 わかりました。債権回収監視委員会というのが,すごくきつい言い方だなと,僕はそういう感じがしたのですけれども。返還促進ぐらいであれば。

【髙塩理事長代理】
 返還促進に変えて。

【小林主査】
 その方が無難なのですけれども。

【保立課長補佐】
 この名前にこだわりませんけれども,こういう,少しきつい言い方にしているのは,行革の議論の中で,金融監査を入れるとか,入れないとか,何かそういう議論があったことを少し意識して,強目の名前にしておりますけれども,名前は,返還促進というような意味ですので,そこはこだわりません。

【小林主査】
 このオレンジの冊子「独立行政法人日本学生支援機構の奨学金事業運営の在り方に関する有識者による検証意見まとめ」でも監査は強化すると,特に内部監査を強化するという話が大分出てきていますので,その辺も少し,両方をうまく,というのもなかなか難しいかもしれませんけれども,工夫していただければと思います。

【保立課長補佐】
 わかりました。

【小林主査】
 他にいかがでしょうか。
 もし御議論が今すぐございませんでしたら,またメール等で御意見をお知らせいただくということで,今日のところはこれで,ほぼ議論出尽くしたような気もいたしますので,少し時間早いのですけれども,あとは私の方で,事務局と相談して,修正を御一任いただくということでよろしいでしょうか。
(「はい」の声あり)

【小林主査】
 ありがとうございました。
 では,またそういう形で,御意見を是非お伺いできればと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
 では,今後のスケジュールについて,少し御説明,事務局からお願いいたします。

【保立課長補佐】
 資料3を御覧いただければと思います。
 このワーキングは今回で最後となりますけれども,この後,親会議の方に,今回のそれぞれのワーキングの結論を踏まえた議論を進めることになりまして,8月21日と9月12日の2回の親会議を開いて,そこで報告書を取りまとめるということになりますので,取りまとまりましたら,委員の先生方にも御報告させていただきますけれども,そのような道行きとなっております。

【小林主査】
 ありがとうございました。
 特に,もう書き方とか文言まで,細かいところに入っておりますので,是非,御専門の立場から,修正等ありましたら事務局の方にお寄せいただければ幸いです。
 それでは,少し時間早いのですけれども,これで日本学生支援機構の在り方に関する有識者検討会の第1ワーキンググループを終了させていただきます。
 今回が最後になりますが,委員の皆様,それから参加者の皆様,どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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