獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(平成23年度~)(第7回) 議事要旨

1.日時

平成24年12月14日(金曜日)13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省16F3会議室

3.議題

  1. 教育状況の分析に関するワーキングチームの調査分析結果について
  2. 今後の獣医師の計画的養成の在り方について
  3. その他

4.出席者

委員

石黒委員、伊藤委員、尾崎委員、廉林委員、金子委員、酒井委員、佐藤委員、中山委員、政岡委員、三角委員、森川委員、山根委員、横尾委員

文部科学省

内藤専門教育課長、児玉専門教育課長補佐

オブザーバー

池田農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長、滝本厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長

5.議事要旨

議事の概要:
事務局から配布資料についての確認があった後、以下のとおり議事が進行した(○:委員、●:事務局)。

 

 

(議題1について)
※ 資料1、2及び3について、事務局から説明。
○ 獣医学教育はライセンス教育なので、カリキュラムと進路に相関があるとの前提で分析した。
○ 中途採用・中途退職の数字が拾えなかったことは、反省すべき点。
○ 産業動物・公務員への就職は増え、小動物診療は減っているという、反比例の関係が見られる。
○ 企業への就職が多いのは、給与や安定など、待遇の問題と思われる。
○ 地域偏在は最も大きな問題だが、分析できなかった。
○ カリキュラム、就職支援体制と学生との就職の関係が見えてくればよかったが、はっきりしたものはわからなかったと感じている。
○ カリキュラムと進路の動向では特徴的な傾向がなかったとのことだが、アドバンスの科目をどう組むかで大きく変わる部分もあると思う。大学によって、モデルコアカリキュラムの強弱もある。
○ モデルコアカリキュラムを作って16大学が教育に臨んでいるのだから、ほとんど差が出てこない。アドバンスに注視することで、就職との関連はクリアになるのでは。
● 麻布大学は近年、就職関連のデータを伸ばしている。背景はあるのか。
○ 獣医師の仕事がどんなものかということを、初年次教育から見せている。高校までのイメージとのギャップを埋めることが大事。麻布大学では9割近くが小動物志望で入学してくるが、学年が進むと次第に減ってくる。企業・地方公共団体・NOSAIには、就職相談ブースを設けてもらっている。
○ 大学全体でブースをつくり、企業にきてもらっても、獣医の学生が訪れることは少ないように思える。
○ 麻布大学の場合は、小さな大学で、5学科ともベクトルが同じ。どんな学生がどの企業を訪れても、ある程度話を聞ける。
○ 公務員志望は確実に増えている。産業動物も増えている傾向にある。小動物志望が減って、産業動物・公務員に流れている。教員の指導にもよる影響も大きい。
○ 公務員について、求人は毎年多いのだが、もともと獣医師の充足率が悪かったのか、それとも、増やそうとする県の努力なのか。
○ これまでのヒアリングでは、欠員は多く、まだまだ足りない状況ということだった。平成24年4月~8月では全国で270件、9月以降でも180件の程度の求人。常に欠員を抱えた状態。
○ 地域偏在が問題。行きたくても行けない学生、来て欲しくても来てもらえない自治体がある。
○ 産業動物について、共済では、ここ数年は全国で80~90名でほぼ充足。ただし、地域偏在はある。
○ 過去に獣医師の採用が減り、獣医学以外の専門の方が公衆衛生・食品衛生を支えてきたという現実はあるが、現場としては獣医師がほしいという認識。
○ 県全体の職員定数削減との連動もある。全国で見て足りないということではないが、地域で偏在はある。
○ 平成18年~22年に、増えているが、これは誘導をしたから。獣医師会でも、獣医師の処遇改善を働きかけ、40県くらいが初任手当をつけてくれた。
○ 誘導の効果は一概にはわからないが、獣医師をほしいところが処遇改善をしたと考えれば、効果はあったと思われる。
○ 再雇用や非常勤を多く採用しているという声があるが。
○ 東京都の場合だと、募集するとかなりの人数が集まる。再任用も多いが、定数範囲内のため実質増ではない。欠員補充に利用するところもあるようだ。
○ 採用年齢の制限も影響がある。最低29歳のところ、40歳まで上げているところもある。
○ 県によって待遇が全く違う。人事には働きかけているが、そもそもの募集人数が少ない職種で、予算との兼ね合いもあり、難しいところ。
○ 中途採用は増えている。年4回実施するところもあり、採用に苦しんでいるところは工夫している。
○ 家畜衛生所はほぼ獣医師で回っている、畜産関連分野には人が少ないという話もある。獣医師のライセンスの分野にどれだけ人が足りないのか、それ以外の分野にどれだけ獣医師が必要か、という視点が必要。
(農水)H24の募集人員を足し合わせると400名で、うち120名が北海道。地域で差がある。
○ 教育現場からすると、問題は3点。10年先の採用計画がないと、進路指導ができない。次に処遇で、一人の獣医師育成に2,300~2,500万円かかることを踏まえると、大幅な改善が必要。もう一つは、採用条件。獣医師国家試験の合格者は、採用に必要な形式要件は満たしており、あとは適正の問題とするような考え方などが必要。


(議題2について)
※ 資料4及び机上配布資料について、事務局から説明。
○ 平成19年にまとめられたものだが、例えば女子学生の割合が大きく増えて1対1になっているなど、前提とされる状況の変化については、検証が必要。
(農水)家畜防疫員は、臨時雇用も含めると一定数確保している。
○ 定員の問題は、非常に大きなテーマ。世の中にどれだけの獣医師を送り出すのか、ということ。協力者会議では、獣医学教育の改善について議論してきたが、どれだけの数を育てるのかということは、非常に慎重に議論しなければならない。出口の管理だけでなく、入学定員の管理をすることにもなる。
● 事実上、定員抑制を行っており、現在も出口と入口の管理をしている。農水省の報告書は、需給予測に関わるいろいろな要因があるなかで、ある程度条件を固定したうえでの予測。現状は検証しようがない。また、各県の整備計画についても、共通のフォーマットで策定しているものではなく、単純に数字を足しあげるなどして利用できるものではない。限られた情報のなかで、出口管理が可能なのか、できる限りの議論をいただきたい。定員の増減は教育の内容にもかかわるもので、厳密な議論が必要と考えている。
○ 獣医師需給に関する検討の中で、新たなものを付け加えるべきか、また、付け加えられるものはあるか。
○ 不確定要素が多い。10年後の状況、獣医師の守備範囲、現在の状況から推定する。20年前に産業動物の獣医師が不足して苦労した。
○ 各都道府県の養成計画が41県出てきたことは今までにないこと。
(農水)基本方針の各項目については、都道府県が実情で定めている。10年後にどのくらい必要なのか採用目標を記載している。
○ 動物看護士について。以前は民間の研修施設が、それぞれ私的な試験により個別に認定証を出していたが、一昨年に日本動物看護職協会を、昨年は統一認定機構を立ち上げ、統一の認定試験を今年試行、来年に第1回を行う。国家資格、公的な資格になれば、これまでのように小動物診療だけでなく、産業動物、野生動物、実験動物にも、職域が広がっていくのではと考える。
○ 動物看護士の数が増加について、獣医師のこれまでの職域については、医療の現場と一緒で、うまくいくものと思う。ただし、給与等の処遇は問題。
○ 獣医師の需給動向には大きな影響がある。例えば、中動物の医療について、獣医師を増やしてくれという話は多いが、看護師が獣医師の指導の下に注射等の対応ができるようになれば、やたらと獣医師を増やす必要はない。
○ チーム医療に向かう、という認識。一方で、17条との関連が懸念されるが、職域の設定が必要。法律等に抵触しない範囲でどこまでできて、抵触する部分は変えなければならない、という話にもなる。
○ 議論の前提として、ある程度の結論を見ないとこの会議で先の議論ができないのか、それともひとまず置いておくのか。現場は「もっといればいい」と言うだろうが、予算等の制約は多い。企業・小動物については、世の中の動向でもっと変わりうるもの。
○ 今の段階では、獣医師の需給の増加要因と減少要因を押さえておく、ということではないか。
● 正確な予測、統計について、この場での限界は出てくる。ただ、ある程度定員抑制を行っている現行制度のなかで、今ある材料でどこまで議論ができるのか、ということ。トレンドをつかめると思われるものについては、議論していくことができればと考えている。
○ ある程度将来予測を立てないと、特に実習主体のアドバンス教育などは、検証のしようがない。
○ 抑制定員を外そうとしている動きに対して説明をするためにも、きちんと議論しなければならない。避けては通れない問題。
○ 教育の質の保証は絶対に譲れない。この会議の目的は、獣医学教育が国際基準に到達するための議論。そこに集約する必要がある。
● 報告書の中では、変動要因とされていないものもある。例えば、研究者の数はほぼ固定とされている。大学の現状と動向はどうか。
○ 研究者については、「後継者を育てる」ことが一つ。次に、ライフサイエンス分野の研究者で、製薬がその大半、食品が一部、あとはバイオなど。
最近の動向としては、確実に減少傾向。大学院を出た研究者がどのくらい必要とされているかは、難しい問題。大学の定員や、今後のライフサイエンス分野の盛り上がりにも大きく影響されるところ。
○ 小動物臨床が今後どう変わっていくのかが大きな問題。最近ははっきり減少傾向にあり、産業動物等のほかの分野に比べれば、需給は読みやすい。
● この協力者会議の前半のでも小動物臨床の重要性を取り扱ったところ。しかし、後半は、教育改善ではなく実体の話にシフトしている。本日冒頭にも出たとおり、モデルコアカリキュラムが進路にどう影響しているかは、数年経たないないとわからない。この会議の議論では、切り離す部分も必要。
○ アドバンス教育が学生の進路を大きく左右するのは、考えられるところ。就職動向に大きな影響を与える部分で、早急にまとめていかなければならない。
(以上)

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高等教育局専門教育課