獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(平成23年度~)(第8回) 議事要旨

1.日時

平成25年1月16日(水曜日)16時15分~18時15分

2.場所

文部科学省 5階 5F6会議室

3.議題

  1. 獣医学教育を巡る国際的な動向について
  2. 製薬企業における獣医師確保策について
  3. 教育状況の分析に関するワーキングチームの調査分析結果等について
  4. その他

4.議事要旨

議事の概要:
事務局から配布資料についての確認があった後、以下のとおり議事が進行した(○:委員・発表者、●:事務局)。

 

(議題1について)

※ OIE石橋氏から説明。
○ 前置きとして。OIEが獣医学教育を取り扱っていることに違和感がある方もいると思う。OIEでは、個々の疾病に一つずつ対応するのではなく、獣医サービスの底上げが必要と考え、2005年から各国の獣医サービスの評価の準備を始め、2007年から本格実施している。何か国もやっていると、獣医事法規、教育の不十分な箇所等、同じような問題が挙げられる。獣医サービスの底上げが必要であると感じている。
○ 各国で獣医事法規に違いがあるとのことであったが、法整備がされていない国もあるということか。
○ その通り。国によっては、法規に不備がある場合もあるので、資料中のような規定が設けられている。
○ OIEのモデル・コア・カリキュラム案には内科学・外科学に関する記載が出てこないが、これは記述範囲をOIEに特徴的な事項に限定し、個別の診療を対象として考えていないためという理解で良いか。
○ 内科学や外科学等は、「臨床診断技術」の中に全て入っている。免許取得のため、日本の獣医学教育において内科学・外科学等に高い比重が置かれていることは承知しているが、「国の獣医サービスの提供」という観点で考えると、OIEが言及すべきことではない、という考え方である。
○ 提言であって国際基準ではない、ということだが、加盟国が提言に対応していることをどうやって確認しているのか。
○ 確認する手段はない。
○ 日本としてこの国際基準を採用する・しないというのは、どの機関が決めるのか。国が決めるということで良いか。
○ある国の中の特定の機関が窓口ということではなく、それぞれの所掌の範囲で対応している。
○ 第1期の協力者会議では、国際認証についても議論しているが、日本の現行のコアカリキュラムはOIEの基準を満たしているのか。
○ OIEでは、リスク分析を非常に重要視している。日本でも行っているが、輸入におけるリスク分析の重点が足りないと認識している。
○ 現行のモデル・コア・カリキュラムは3~4年前に作成した。OIEの提言は今年の5月に出るが、モデル・コア・カリキュラム作成の際には、OIE提言の基本コンセプトを読み解いて取り入れたという経緯がある。基本的には満たしていると考えている。
○ OIEの国際基準はヨーロッパの生活を基準にして設定されていると思う。
○ 「新卒者が備えるべき資質能力」について、小動物診療に関する事項も対象となっているのか。
○ OIEの文書では野生動物について触れていることが多いが、「その国にとって重要な動物」に重きを置くようにと記載しているので、伴侶動物についても含まれている。

(議題2について)

※ 日本製薬工業協会中村氏、一般財団法人日本生物科学研究所布谷氏から説明。
○ 製薬企業において、獣医師が多く携わる業務は何か。
○ 一番多く携わる業務は安全性評価で、その次は創薬研究、また臨床開発にも関わる。
○ 毒性試験に携わる従業員のうち、獣医師が占める割合はどの程度か。
○ 毒性試験には畜産・薬学からの出身者も多く、獣医師の占める割合は全体で1割程度という印象。
○ 1961年の国民皆保険導入以降、日本での創薬が盛んになった当時は、毒性試験への対応のため、獣医師の採用が多かった。また、1980年代には、臨床開発に従事する獣医師が増えた。当時は、薬の臨床開発に携わろうとする医師が少なかったので、獣医師と薬剤師で支えていた。病理、組織、機能等全体が見られる獣医師の役割があったが、最近は様々に採用方法が変わった。
○ 製薬企業のビジネスモデルも変わり、試験の外注が増えたため、獣医師はCRO(受託臨床試験機関)での勤務にシフトしている。
○ 医療機器開発には大動物が必要で、獣医師を欲しいという声も聞く。
○ 獣医師が創薬にもっと行ってくれればいいと思うが、大学教育における獣医毒性学の歴史が浅いこともある。大阪府立大学、麻布大学、北里大学、北海道大学の4大学にしか講座がない。獣医毒性学が大事だと言われている一方で、大学での授業が少ないことは問題。
○ 大学に獣医毒性学の講座があれば、自然に医薬品開発を学ぶことができる。そうすれば、医薬品開発に目を向ける学生も出てくるのでは。
○ 製薬企業で獣医師を確保するために優遇制度は必要か。
○ 現在、獣医師・薬剤師に限らず、資格に対する優遇制度は設けていない。医師の給与は高く設定されているが、これは人材不足を補うためであって資格に対する優遇ではなく、日本の製薬企業だけがやっていること。今後、海外展開が進んでくると、資格ではなく職歴に支払う時代になると思われる。資格の有無は関係ない。
○ 海外では、毒性病理学専門家の資格を持つ人は優遇されている。
○ CROについては中国が発展しており、国外からも獣医師を多く雇用している。
○ 企業もシーズを絞っているので、生殖発生毒性試験やがん原生試験等の開発後期に実施される毒性試験の実施が少なくなっており、CROも疲弊している。
○ 病理学者であれはどの企業にも、海外でも、渡り歩いていける。FDA(米国食品医薬品局)は安全性を重視しており、病理学者の中でも、あらゆる面から毒性を見ることのできる人材が特別扱いされている。
○ 獣医師に限ったことではないが、コミュニケーション能力についても重要。国際会議に出た際に、英語でコミュニケーションがとれる日本人が少ないことを感じる。
○ 男女比では、女性の割合が確実に増えている。病理担当者は半数が女性。
○ 研究開発において、獣医系大学と企業との連携や共同研究はあるのか。
○ 大企業でなければ、基礎研究には限界があるので、大学の関連部門と仕事をしている。
○ 薬学ではなく、病理学、微生物学等について連携が必要だが、数は減っている。少なくとも人材の交流は必要である。
○ 毒性病理については、製薬・食品企業等との共同研究が多い。ただし、大規模なものは少なく、パイロットスタディ等がほとんど。食品企業では、動物実験をできないため、大学で引き受ける。
○ 臨床では、再生医療等での共同研究もある。
○ 大学側のシーズが企業に伝わっていない。
○ 大企業においても有望なシーズは少なく、文部科学省の橋渡し研究事業等では企業との提携が模索され、非常に活発化している。厚生労働省が指定している東京大学・北海道大学・九州大学等の臨床研究中核病院でも早い段階での企業との連携が重要との認識を持っている。獣医関係の大学では、そのような連携が希薄なように思える。
○ 企業は学部・学科を選ぶわけではなく、企業と大学のテーマが一致したときに共同研究になる。オープンイノベーションにおける産学連携の重要性は、誰もが認識するところ。その中で、獣医学は規模が小さいので、連携先となる機会もどうしても少なくなる。
○ 社会人入学で学位を取る場合、毒性病理学でなく病理学を希望するケースがある。おそらく、毒性病理学のコースがまだ足りないのだろう。

(議題3について)

※ 資料3について、事務局から説明した後、ワーキングチーム委員である酒井委員、三角委員から補足説明。
○ 公務員獣医師・産業動物獣医師の確保については、教員数や立地条件等が影響しており、調査前の予想とほぼ一致。
○ 特に臨床科目について、科目の年次配当のバラツキは驚いた。今後の共用試験導入に大きく影響する。
○ 動物病院について、伴侶動物の症例数はかなり細かくデータを取っているが、大動物は数え方が大学によって異なっており、今後の要改善点。
○ 大学院進学者について、大学院に進学した学生が企業に就職する率は非常に高い。ライフサイエンス分野の企業では、ドクターを取った人たちの中でもより高度な人材を求めているところなので、大学側は留意していただきたい。
○ ライフサイエンスを志す学部生は、獣医学系の大学院にライフサイエンス系の研究室が無いと、他の分野に行ってしまうおそれがある。
○ 今後の共用試験にも影響するため、科目の年次配当の表について、事務局で科目名を加筆してほしい。
○ アドバンス教育は、各大学で努力している部分。中身について、ICTコンテンツも含め、他大学にも積極的に紹介していけるような、共同利用センターのようなものがあればと思う。
○ インターンシップについて、東京大学と岐阜大学が基幹校となって実施している事業については、当初計画よりうまくいっているが、補助金は来年で終了する。継続方策について検討しなければならない。
○ 教育スタッフの不足については重要な問題。日本の場合はここに依存しなければならない。
● 臨床教育の充実方策については、既にとりまとめている。学外の協力者や学内の教職員をいかに臨床教育に参画させるか、具体的な方策を考えていかなければならない。
● 獣医師需要について色々な増・減要因の一つとして大学の定員超過があるのではとの声もある。獣医関係学部・学科ではほぼ定員超過しているが、定員の適正化については文部科学省からの助成制度に仕組があり、強化をしてきた。

(以上)

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