獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(平成23年度~)(第5回) 議事要旨

1.日時

平成24年10月22日(月曜日)14時~16時

2.場所

文部科学省5階 5F7会議室

3.出席者

委員

伊藤委員、尾崎委員、金子委員、酒井委員、佐藤委員、竹中委員、中山委員、政岡委員、三角委員、森川委員、山根委員、横尾委員、吉澤委員

文部科学省

山野大臣官房審議官、内藤専門教育課長、児玉専門教育課長補佐

4.議事要旨

議事の概要:

事務局から配布資料についての確認があった後、以下のとおり議事が進行した(○:委員、●:事務局)。

 

(議題1について)
※ 資料1-1及び1-2について、事務局から説明。
○ 資料1-2の最後の文言について、国立の大学の一部で2・3年生の編入学定員を持っているところがある。そうした大学について、収容定員数は増えるかもしれないが、毎年出て行く学生数は変わらないので、申請さえあれば1年生から40名の学部学科が組める、という解釈でよいのか。
● 岐阜大学が実際に以前、1年から6年まで40名だったのを、途中から編入学定員を内数にするということで、上の左の形になり、その時点で、収容定員減になった、という経緯がある。その後、鳥取と共同教育課程を組むにあたり入学定員を右の形に戻すことになった際、形式的には収容定員が10名増える形になるが、これについては問題がないと整理するのが制度の趣旨等から正しいという結論に至り、設置審においても了解された。その際の取扱について告示に違反しているのではないかと懸念する声を一部お伺いしたことがあるので、改めてこの場を借りて文科省の考え方を説明させて頂くため、資料1-2を配布させていただいた。

 

(議題2について)
※ 資料2について、横尾委員から説明。
○ 退職者の調査は非常に困難のため、全国的な資料はない。
○ 北海道のNOSAIでは、過去16年間の採用者380名のうち、離職者は121名で、離職者の平均在職期間は4.8年。離職者の多くは、他県のNOSAIに移るか、開業する。
○ ここ何年かでは採用者の4割が女性。昔は男性ばかりだったが、今では獣医師職員全体の13%が女性。
○ 学生として獣医学の男女比を考えると一時は女性の方が多く、6割方女性という時期もあった。現在は半分くらいに落ち着いてきている。
○ 4ページの図1の募集人数について、大きな変化が見られるが、それはその時期に需要が減ったのか。
○ 平成4年度に150人必要だったというのは累積の人数で、数年間採用できなかったので、その分を足して採用する必要があったため。人が足りなくなり一度に採用すると、なかなか退職者が出ず若い人ばかりの診療所になってしまう。特に昭和57・58年には建前上新卒獣医師が1人も出ないこととなったので、4年制最後の昭和55・56年卒のときに全体でかなり前倒して採用した。この世代が退職する際に、また、まとまった数の募集が出てくる。
○ 採用は新卒者に限定しているわけではなく、既卒の者もいる。女性について、昔は地元と働き先とを結びつけていなかったが、最近では地元あるいは地元の近くで就職先を考えることが多くなっている。
○ 女性が多く進出しているので、ジョブシェアリングなど女性が仕事を続けていく環境作りを考えていくのも肝心。一度離職されて戻られるという方も、ゼロではないが、女性の場合条件がなかなか難しい。
○ 大学などでは、60歳以上の再雇用者数が増えると、若手教員採用の抑制の原因になることがあるが、同じような影響はあるか。
○ 勤めたくて残るというよりは、人がいないのであと何年かやってくださいというケースの方が多い。
○ 人がいないというのはどういう状況なのか。4ページの図1を見ていると、募集人数と採用人数に一時期ほど乖離はない。退職後、人がいないという理由で頼まれている割合が多くなっている、というデータとの違いはどう読めばいいのか。
○ グラフはオールジャパンであり、地域ごとに見ると状況が違う。獣医師の採用が難しい地域も複数ある。
○ 毎年一定人数の採用が決まっていないと、送り出す方は非常に送り出しにくい。全体枠で毎年決まった人数の採用人数があれば、大学からも送り出しやすい。地域偏在でこの分野への転職を希望していても実際に進路として選べない学生がかなりいる。
○ 採用予定について、来年度と再来年度まで調査しているが、本年度については、2年後の採用予定についてどの県からも回答がなかった。
○ NOSAIの処遇改善については、基本的に国か県の公務員の給与体系に準拠しており、なかなか進んでいない。赤字経営の診療所は今もある。
○ 診療点数の考え方について、40年前と大きく変わっておらず、そういう面では一致団結して環境改善しないと、高等教育の改革をやっても受入側が旧態然とした組織であれば、若い者が夢を持って入っていけない。環境改善が進まないから田舎の産業動物獣医師は小動物にシフトする。これはNOSAIにではなく農林水産省に言わないといけない。
○ 診療点数はこちらの要望だけではなかなか動かない。点数は一部上がったものもあるが、全体の点数の考え方を変えていかないと、今のベースでどうしようかと考えても難しい。
○ 地域偏在について、個々のNOSAIレベルでどうしても人が足りないところと新卒者を出す大学の間の接点はどういう形になるのか。ここの共済から何人欲しいという情報は個々の大学には伝わるのか。
○ 説明会・ホームページ等色々な媒体を通じて情報発信しているので学生はよく知っている。大学でも就職担当教員がおり、どこが採用しているということを伝えている。また、1年生向けの獣医学概論などで産業動物の分野は紹介されている。
○ 夏の実習生受入れでも人気の県と、そうでない県の偏在があり、これが就職の時のバロメーターになっている。偏在をなくす作業をやらないとこの問題は解決しない。
○ 募集しても学生が来ない地域があるということは、学生にとっては売り手市場なのか。雇用の需給と供給のバランスはとれているのか。
○ 希望のところに行けなければ、次は地方公務員、最終的には小動物と段階的に卒業までには決まってくる。その時に希望が叶えられるかは別。
○ 実習先として希望が集中しているNOSAIは臨床現場が充実している。新卒者にとっては自分の職業を考えた場合にスキルアップができるので、そういうところに行きたい。47各都道府県のNOSAIに同一レベルの受入能力があるわけではない。
○ 今の若者はスキルアップできるところなら行く。若者は先輩から話聞いてよく知っている。
○ 産業動物の開業獣医師が何%位いるのかは、届出だけでは分からない。田舎で代々開業しているのはわずか一握り。ほとんどはNOSAIの退職者が開業届を出している。また、新卒で大動物の開業獣医師はほぼおらず、親が開業している場合限定だと思う。
○ 大動物の個人診療所に勤務獣医師として勤めるというケースが県に1人、2人ある。
○ 医学部で聞くのは女性の学生が増えてきて、本人も親も地元志向が強いということがある。入学者のバランスが最後の地域偏在に影響を与えているのではないか。16大学を全部合わせると、各県で最低10名はどこかの獣医系の大学に入学していることが推測できる。その方々が自分の県に帰っているかは疑問。
○ 平成21年頃に農林水産省の需給問題検討委員会で一括調査してもらったことがある。どこからどこの大学に入学した。卒業後はどこに就職したという調査をしてもらって。しかし全く優位性はなかった。
○ 今の学生は受験の時に受けられるところは全部受ける。私立を全部受ける人がいっぱいいるが、受かる方は全部受かって、落ちる方は全部落ちる。昔は学力にあったところを受けていたが、今はそれが通用しない。
○ 臨床実習について、現場に対しこの実習を必ずしてくださいと言われると難しい。コアカリキュラム導入により参加型の臨床実習で学生が家畜に触ることが公に認められるが、正式なルートがなく、現場には公式には伝わっていない。特に獣医系大学がある県の獣医師には情報交換するようお願いをしているが、農林水産省のNOSAI担当からも連絡がくると現場としても検討がしやすいのではないか。
○ この秋には全国8カ所で地区獣医師大会があり、その挨拶の中で必ず共同獣医学部と学科の説明、参加型実習の話をするが、ほとんど理解されておらず、情報が流れていないことがわかる。流す方法が今はない。獣医師会として責務があると思っている。
○ 大学人も積極的に会合があれば出て行って説明をすることが重要。
○ 基本的には、大学が責任を持って教育の環境を確保することが先ではないか。NOSAIも昔のように人的にも余裕がないので、大学がコアカリキュラムとしてやる以上は、大学側が責任を持って教育体制を明確に組む必要がある。

※ 資料3及び資料4について事務局より説明があった後、議事は終了した。

(以上)

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