獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(平成23年度~)(第4回) 議事要旨

1.日時

平成24年9月11日(火曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省16F1会議室

3.議題

  1. 獣医師の計画的養成について
  2. 獣医学教育を巡る国際的動向(海外大学、第三者評価機関の取組を中心に)
  3. 「教育状況の分析に関するワーキングチーム」の設置について

4.出席者

委員

伊藤委員、石黒委員、尾崎委員、廉林委員、金子委員、酒井委員、佐藤委員、竹中委員、中山委員、政岡委員、三角委員、森川委員、山根委員、横尾委員、吉澤委員、北海道大学 橋本 善春 教授

文部科学省

山野大臣官房審議官、内藤専門教育課長、児玉専門教育課長補佐

5.議事要旨

議事の概要:
 伊藤委員長より、委員の交代について説明。また、参考資料1に基づき、第3回で事務局より提示した「獣医学教育改革の進捗状況と推進に向けた課題の整理」について、第3回での会議における各委員の意見等を踏まえ、平成24年8月3日付けでとりまとめた旨報告。その後以下のとおり議事が進行した(○:委員、●:事務局)。
 

(議題1について)
※ 事務局より、資料3に基づき説明。
○ 獣医師の職域の偏在は待遇の改善の問題であるとの指摘もあるが、本協力者会議においては、大学教育の中でどのようにこの課題に対応できるのかという議論から始めたい。
○ 大学での職業教育も必要だが、地方の公務員獣医師の人材確保のためには、公務員獣医師自身が学生に対し、自分の職場の魅力を宣伝することが非常に重要。
○ 今年の卒業生1,000人のうち、200人前後が公務員に就職していると思われる。かつてのピーク時の240~250人に近づきつつあり、公務員や産業動物系への就職を意識した大学側の教育成果が現れてきているのではないか。また、私学合計では小動物系への就職が初めて5割を切っており、学生の就職志向が変わりつつあるのではないか。
○ 学生の就職動向は変わってきており、小動物が減ってきている一方、公務員獣医師や勤務獣医師が増えてきている。
○ 日本獣医師会で寄せられる要望書のトップは処遇改善であるが、その一方で専門職として特化した仕事をしているわけでもないのに自分たちだけ処遇改善を求めると職場の雰囲気が悪くなってしまうから余り騒いでくれるなという意見も出てくる。夢を持って公務員獣医師になっても抑えつけられてしまうという雰囲気がなきにしもあらずなのではないか。獣医師は当然、獣医学という特化した知識・技術を持っているのだから、そうした雰囲気があるということ自体が問題であり、職場改善・職場の意識改革をやっていく必要がある。
○ 公務員獣医師は誰から抑えられているのか。
○ 他の誰かから抑えられているのではなく、自分たち自身がそういう意識を持っている。我々は、他の皆と変わらない仕事をしているんだと。だから、獣医師免許を持っている自分たちだけが優遇され、処遇改善が進んでいくということは、職場上余り雰囲気がよろしくないという雰囲気を、公務員獣医師自身が持っている。
○ 処遇改善の行き着くところは、立派な知識と技術をつけて卒業させてくれということであって、獣医学の改善・充実をしっかりやってくれないことには、処遇改善にはつながらないということではないか。
○ 公衆衛生や産業動物に就職した学生がその後どうなったかを考える必要がある。途中でやめる学生が結構いると思うので、なぜやめたか・なぜ魅力がなくなったかなど離職の原因が何なのかを調査していくべき。
○ 大学教育において、進路指導あるいは就職支援というのは不可欠な事項であり、職域・地域偏在の問題は、できれば、どこかにプラットホームを作り調整するようなことを大学の事務局がやることも必要ではないか。
○ 食の安全等の関係で産業動物に関係する獣医師の守備範囲が広くなったが、同じような業務を薬剤師の方が担当していたりなど、色々はっきりしていない面があって、その辺が今後どうなっていくのかというのを少し前提として整理しなければならないのではないか。
 それから、今後の採用計画に関して、畜産の動向がどうなっていくのか、NOSAIでも各地域の畜産動向と必要獣医師について調査したことがあるが、やはり現場として数字を出すことはできないとのこと。
○ 導入教育の中で、小動物しか頭にない学生たちに対して色々な職域から獣医学部卒業生を大学に呼び、その職域での様々な経験についてお話頂くのも有意義ではないか。

 

(議題2について)
※ 北海道大学橋本教授より、資料4に基づき説明。
○ 獣医学系大学における大学教員や科目数、学生数の適正規模は、その国の人口にもよる。1つの大学でも結構だし、あるいは幾つかの大学で共同してやるのも結構だと思うが、日本の場合、学生数については1,000名からもう少しあってもいいのではないか。
  偏在の問題は学生数にも依拠している部分がある。もう少し学生が多ければもっと選択の幅が増えて、臨床にも行きたい、産業動物にも行きたい、公衆衛生にも行きたい、福祉もやりたいという学生が増えるということがある。
○ 海外の獣医科大学では女子学生が非常に多いが、教員の男女比はどうか。
○ 個人的な印象では、大体半々ぐらいが女性。女性の教授は沢山おり、ヨーロッパでは獣医師は女性の職業という印象。
○ 獣医学教育の中での国際化について、英語圏以外の国ではどのような言語や教科書を使っているのか。
○ 教育は、母国語で行うのが基準であり、教科書も全てその国の言語の教科書を使っているようだが、大学院は別で、経営上の理由から外国人留学生を呼びたいため、ほとんど英語でやっている。
○ 遠い将来かもしれないが、海外から認証制度で獣医師が入ってくるようになった場合、獣医師会では受け入れていくのか。
○ 獣医師会としては議論はしていないが、大学教員の中には、ぜひとも欧米の教員を臨床に呼びたいという強い意見があることは承知している。ただ、外国人の教員が臨床を行う場合、日本語の国家試験を受けてもらわなければならない。また、教員同士であればある程度英語は通じるが、患者さんとの接点においては英語では問題があるのではということで、色々クリアしなければならないハードルがある。将来、獣医師会としても議論しなければならない点であると痛感している。
○ 獣医学を学んでいる学生の1つの夢の中に、国際社会の中で働けるということがあると思うが、我々が出ていくことだけを許し、外国から入ってくるのを断るというのは問題であって、今解決しておかないと、教育側が対応できないのではないか。
○ 獣医学教育の認証組織の事務局はどこにあるのか、何を目的にしているのか。
 それから、獣医学免許の国際化について、平成8年から全国大学獣医学関係代表者協議会でも議論になったが止まっている。
○ 全米獣医師会の本部はイリノイ州に事務局があったと思う。ヨーロッパのほうは、ウィーンに事務局がある。獣医学免許の国際化はなかなか壁が高く、進めるのは相当の力仕事だろう。時間と労力を投資しないといけないし、対応できる人材の育成、特に若手の育成が必要。また、海外との人事交流が、今後もますます必要。
○ コア・カリキュラムとアドバンスト教育のバランスについては、アメリカとヨーロッパでは、大分違う部分がある。アメリカの場合、コア・カリキュラムは、問題解決型を中心にするようなナレッジを与えていくという形。ヨーロッパでは2000年に獣医学教育カリキュラムを全部統一した。現在では5,050時間が平均だが、その中で、伝統的なカリキュラムを全部とりやめ、その時間を、新たなアドバンスト教育、例えば、CT・MRI・臨床解剖学等、将来臨床家になった場合に役立つ教育に変更して、マンツーマンで教えている。これは、やはり教員数が多いというマスメリットが生きているように思う。
  また、日本でも色々な専門医制度があるが、ヨーロッパでは、教員養成プロセスが大学院教育の中にあり、臨床ばかりではなく将来教員になることを目的とした学生向けの基礎の分野があり、そこで、教授が指導して話し方・まとめ方・標本のつくり方を手取り足取り教え、後継者育成を図っている。
○ 要するに、コア・カリキュラムではなくアドバンストのところをかなり強く主体に置く必要があるのか。
○ 基礎はきちんとしないといけないが、アドバンストにおいていかにきちんと手当てをするかが重要で、これは教員・予算・学外組織との連携の問題にも関わる。カリフォルニア大学デービスは非常に大きいため9コースぐらいあるが、もっと小さな大学だと6コースだとか、アドバンストが少ないところもある。日本には日本の獣医学教育があってしかるべきだが、アドバンスト教育をどのようにこれから加味していくかは日本の獣医学教育の質を高めるためにとても重要。
○ OIEを含め海外の認証評価をクリアしなかった大学は、どうなるのか。
○ 認証は、拘束力のない紳士協定のため、ずっと不合格でも、獣医師養成教育をやめなさいということにはならず、国際通用性はありませんよというぐらいのこと。ただし、ヨーロッパの場合国が地続きで、色々な商品・食料が国境を越えて毎日流通しているため、あなたがやった検査は認められませんという場合に、国がどのようなデメリットを受けるかという問題に広がってくる。
○ 獣医師の国際流動化について、日本では留学生が予備試験を受けて国家試験を受ける程度だと思うが、流動化して更に受け入れるとなると、採用計画を確立する必要がある。現在5,000人が獣医師のライセンスを使ってない状況下で、外国人獣医師も含めた将来の採用計画を考える必要がある。
○ ライセンスの国際化について、一番の問題は、やはり語学で、語学がきちんとできないと、向こうの国家試験を受けなさいと受け入れ先からは言ってもらえない。
○ PBLは、大変いい教育方法だが、やれる大学は限られてくる。実際にしているのはデービスと、コーネルぐらいではないか。やっぱりPBLは、つくる獣医師の目的が違うんだろうと思う、研究者養成という眼目も入っているのだと思う。ヨーロッパにはあまりない。
○ 日本でも、1時間の講義には1時間の予習と1時間の復習がセットということを、最近の大学では厳しく言うようになってきたが、ヨーロッパでは、勉強しない学生がついていけないのは明白で、口頭試問で3分話していたらわかるが、そういう学生も含めて、ほとんどが例えば標本館に入り浸って勉強している。勉強しないと、試験にパスできない。良い大学では第1回目の試験で1・2割、落ちていく。それでいいというコミュニティの合意があるからそれができるのであって、日本で我々が例えば10人落としたらどうなるかというのはある。教育・国是というものが違うのだと思う。
○ 多くの世界の獣医学教育では、プラクティカルな獣医師の養成に主眼があるようだが、サイエンティスト、Ph.D.はどのくらい養成しようと考えているのか。
○ 国によって違うが、アメリカの獣医師育成はどちらかというと臨床獣医師の育成で、一方、ヨーロッパは、もう少し、アメリカより大学院に行く学生が多いという印象。それでも、日本のほうがむしろ多いのではないかという印象がある。
○ 製薬企業では、獣医学出身者が相当いろんな面で活躍しており、やはり獣医学をバックグラウンドにしたサイエンティストというのはぜひ欲しい人材。医薬品産業が研究所を持てている国というのは日本とアメリカ・イギリス・スイス・ドイツぐらいで、あとはほとんど製薬会社がグローバリゼーションで統括されてしまっているので、そういうところの獣医さんは、もう製薬会社に就職がない。逆に言えば、日本はまだ製薬会社が生き延びているので、そういう点では、人材として製薬会社からのニーズはある。
○ 日本国内での色々な課題について難しさを感じているところだが、一歩海外へ出てみると、日本は実は巨大な国であって、影響力も非常に大きい。これは、医学分野、製薬の分野でも、彼らの力が極めて大きいのと同じ。日本の獣医師に係る問題について、早い段階できちんと我々自身で解決し、そして彼らに伍する教育制度をつくることが必要。余り目立たないかもしれないが、獣医師は国家リスクというものを非常に前面でとどめている職業であり、これなくしては国が進むことができない部分がある。

 

(議題3について)
※ 事務局より、資料5に基づき説明。教育状況の分析に関するワーキングチームの設置について了承された。 

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