獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(平成23年度~)(第2回) 議事要旨

1.日時

平成24年4月23日(月曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省13階第1会議室

3.議題

  1. 口蹄疫等家畜伝染病に対応した獣医師育成環境整備事業の進捗状況と今後の課題(感染症等対策分野、産業動物診療分野における実習システムの構築)
  2. 附属家畜病院(動物診療センター)の現状と課題、今後の在り方

4.出席者

委員

吉川座長、石黒委員、梅澤委員、尾崎委員、廉林委員、中山委員、政岡委員、三角委員、森川委員、山根委員、横尾委員、吉澤委員

文部科学省

奈良大臣官房審議官、内藤専門教育課長

オブザーバー

池田農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長、滝本厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長

5.議事要旨

議事の概要:
吉川座長より本日の議題について説明ののち、事務局より平成23年度からの予算事業について概要説明。その後、予算事業の進捗状況、病院の現状と課題について報告及び意見交換。概要は以下のとおり(○:委員)。

 

(議題1について)
※資料2について、杉浦東京大学教授から以下のとおり報告:
事業については順調に進捗。既に軌道に乗りつつあり、プログラムのHPも充実しているところ。高度外部協力機関の専門分野に合わせた高度・実践的な実習プログラムを実現できている。実習プログラムの前の事前講義により、実習の効果を高めるとともに、プログラムを実習に特化させることが可能となっており、また、全国の大学で共有できる教材を蓄積できているところ。
今後の課題としては、各プログラムの学生数の拡大、受け入れ先の拡大、関係省庁のニーズに応じたプログラムとなるような共同作業も重要、といった点。また、今後の展望として、各大学で手薄な講義、教材の共有、教員派遣の仲介等の業務までできるようにしたい。

○順調に進んでいると評価。一方でいくつか確認したい。実習に行った学生の成果はどう取り扱っているのか、単位を出していないのか。
○大学によって出すところもあり、対応が異なる。
○単位については、大学側の問題だろう。旅費、宿泊費等が厳しくて断念する学生もいるのが課題。
○画期的な取組だと思うので、体制として定着させていきたい。単位等は、大学側の問題であるので、16大学の中で取扱いを議論したいと思う。学生の負担は、難しい問題。当該事業について、厚労省関係の機関にも使えないのか。
○予算が終わった後の戦略も考えておく必要がある。
○文科省、農水省、厚労省が連携して、包括的な予算が組めないか。
○2週間の実習は、学生にとって負担が大きくないか。例えば、2週間のものは、1週間のプログラムにして、その代わり受入人数を倍にして、裾野を広くできないのか。
○課題について事務局で整理をして、また後日の会議で配付して欲しい。

 

※資料3について、北川岐阜大学教授から以下のとおり報告:
(1.進捗状況について)これまでに実施してきたのは、1.各大学へのアンケート調査、2.モデルコアカリキュラムに対応した基盤実習のプログラム提案、3.学外における参加型臨床実習への参加システムの構築(NOSAIとの連携)4.馬学等のe-learningコンテンツ作成、5.全国フォーラムの開催、など。
(2.参加型実習の実施について)臨床実習については、体験・見学型の導入実習(1~3年次に実施)、ウシ等の保定、採決等の基本的な取扱いについて学ぶ学内基盤実習(3~4年次、共用試験前)、診療に参加する参加型実習(5~6年次)、往診等に随行して行うアドバンス実習(5~6年次)に分かれる。
モデルコアカリキュラムの対象となる学生は1,000名以上で、これだけの人数に対して参加型実習をどうやるのか、また産業動物に関しては近くにフィールドの無い大学にとっては外部機関の協力や実習の実施が難しいことなどが大きな課題。

 

(議題2について)
※資料4について、辻本全国大学動物診療施設運営協議会会長から以下のとおり報告:
日本の獣医教育病院は、国際水準から見て大きく立ち遅れている。建物、設備、人材、人材養成システム等、ハード・ソフトのそれぞれについて、すぐにでも充実を図らなければならない。
予算の面について、病院の予算が不十分で、経営が困難。病院収入に比して十分な額の予算が配分されない。新しいシステム・機械等の導入も難しい状態。
また、国際的に見ると、専門診療科の数が極めて不十分。教員、サポートスタッフを含め人数が少なく、診療をこなすのも非常に厳しい状況。臨床ローテーションを組むことがとてもできない。診療施設・フィールド等、必要な施設も非常に狭く、十分な数の専門診療科は持てない。
欧米では、大規模な施設と予算・人員により、十分な数の診療科を擁して、専門的な診療を提供している。アジアにおいても、病院の規模を充実するなど、臨床ローテーションを確立して、1年間の参加型実習を実施している。
獣医系大学において、時代に即応した教育及び研究を行うためには、最新の獣医療を提供できる獣医教育病院を運営することが必須。そのためには、専門診療科を10以上持つ必要があり、それを担う人材を育てる専門医養成システム、1年間の臨床ローテーションが不可欠。

 

(議題1・2について、意見交換)
○モデルコアカリキュラムを実施するうえで、1.基盤実習、参加型実習、アドバンスという3つの実習を産業動物、伴侶動物、あるいは公衆衛生のそれぞれの領域においてどういうふうに位置づけて整理していくか、2.参加型実習の全てを大学が実施するのが難しいという点を考え、大学と外部協力機関の協力と住み分け、3.実習の実際の主体を担う大学の動物病院・臨床部門の充実とハード・ソフトの改善といった点が課題。
○共同教育課程については、ある部分では非常に有益ながら、臨床そのものになると、メリットはあまり取れない。やはり、各校それぞれの病院の充実、周辺との協力体制の構築ということでやらざるを得ない。
一つの考えとしては、多くの海外の大学のように、学生の教育の一部を完全にレジデントの仕事として、そのパフォーマンスを評価するというような形だと思う。
○たとえば臨床実習センターのような共同利用施設を設置して、そこがいくつかプログラムを用意する形はどうか。センターはプログラムの提供に特化し、宿泊施設をきちんと備え、学生が1週間、2週間なり次々にやってくることになる。各大学はそこのプログラムを利用しつつ、自分たちの病院でも実習教育はやっていく。そのような施設を1か所か2か所準備すれば、それぞれの大学の先生方の負担も減るのではないか。
○臨床に関していえば、そこはフィールドでなければならない。
○日本で四、五か所ないと、産業動物関係は難しいのではないか。学生数を考えると、300人、400人をまとめて面倒を見るというのは、相当厳しい。
ただし、臨床ローテーションを組んだ場合はそれで対応できるが、基盤的な実習については、学生がいつも移動しないと実習ができないという状態になり、時間の配分が問題。基盤実習では夏休みに集中してできなくなる。ある程度自分のところでできるようにしながら、臨床の参加型実習については依頼する、そのような形にしないといけない。
○小動物については、一番大きいのは救急だと思う。日本の大学はどこもやっていない。救急だとすれば、地元の獣医師会は非常に受け入れやすい。地域の獣医に協力をお願いできると、たくさんの症例が来てくれる。学生を夜間も含めて教育することは、一つの戦略。
○エマージェンシー、シェルター、地域医療、この3つをプライマリが担うというところ、アメリカの場合は、大体どこの大学もその3つを持っており、すごい人数で対応ができる。そういう形をとらないとプライマリはやりにくいのだと思う。このあたりは、獣医師会との共同作業になってくるのだと思う。
○レジデントの利用、レジデントを使いまたそれを生かすためのハードの問題、それから大動物に関しては全国医療センターというような構想もあり得るし、伴侶動物に関しては救急とか地域医療を利用した外との協力というのもまた考えられるという意見をいただいた。
モデル・コア・カリキュラムに対応していく中で、特に弱いと言われた実習、実学教育、特に臨床との関連の部分の問題点がかなりはっきりし、それに対する幾つかの案も出されたので、今日の議論はこのあたりで終わりたいと思う。
(以上)

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