今後の医学部入学定員の在り方等に関する検討会(第8回) 議事録

1.日時

平成23年8月10日(水曜日)午後1時30分から午後4時まで

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. ヒアリング:生坂 政臣氏(千葉大学医学部附属病院総合診療部長)
  2. 自由討議
  3. その他

4.出席者

委員

安西 祐一郎、今井 浩三、片峰 茂、木場 弘子、栗原 敏、黒岩 義之、桑江 千鶴子、妙中 義之、竹中 登一、永井 和之、中川 俊男、中村 孝志、西村 周三、濵口 道成、平井 伸治、山本 修三(敬称略)

文部科学省

鈴木文部科学副大臣、磯田高等教育局長、奈良大臣官房付、村田医学教育課長、渡辺医学教育課企画官、玉上大学病院支援室長、小野医学教育課課長補佐

オブザーバー

(厚生労働省医政局)田原医事課長

5.議事録

 【安西座長】  ただいまから検討会、第8回になりますけれども、開催させていただきます。お忙しいところ、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 会議に入ります前に御報告でございますけれども、この会議は冒頭から公開とさせていただきます。御了承、お願い申し上げます。
 また、議事に先立ちまして、事務局の交代について、まず御報告をさせていただきます。このたび異動によりまして加藤重治審議官にかわりまして、奈良人司大臣官房付が就任されました。

【奈良官房付】  大臣官房付、奈良でございます。よろしくお願いいたします。

【安西座長】  それから、新木一弘医学教育課長にかわりまして、村田善則医学教育課長です。

【村田医学教育課長】  村田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【安西座長】  それから、植木誠視学官にかわりまして、渡辺真俊企画官が就任されております。

【渡辺企画官】  渡辺と申します。よろしくお願いいたします。

【安西座長】  どうぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、始めさせていただきますけれども、鈴木副大臣、今日は御多忙のところ、御出席いただいております。14時頃に失礼するということを伺っておりますので、まず初めに御挨拶をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【鈴木副大臣】  皆さん、御苦労さまです。今日は国会審議をやっておりまして途中で失礼いたします。私からこれまでの皆様方の大変な御尽力に対しまして、心からの御礼(おんれい)を申し上げたい。その思いが一つでございます。
 この医療問題、医療体制をどういうふうに維持し、また、東北地区におきましては大変な医療提供体制の崩壊、こういう事態を迎えているわけであります。そして、今なお東北を、全国の大学附属病院がなおリレーでもって支えていただいている。そのことに心から敬意を表したいと思います。これからもいろいろな災害医療、あるいは災害後医療の課題ということも、今回、明らかになりました。改めてこれまでの8か月間、ここまで様々な角度から改めて我が国の医療体制について検討がなされたというのは、かなり久しぶりではないかなと思っております。皆様方のおかげで、よい議論をしていただいたというふうに感謝をいたしております。
 この席でも何度か申し上げましたけれども、日本の医療体制を維持し、更に充実したものにしていく、ロバストなものにしていくということのためには、霞が関の中でのセクションを超えた協力、協働というのは当然でございますが、加えましていろいろなステークホルダーのコラボレーションをより深めていくことが必要でございますし、また、そのことについての国民各位の理解と協力ということなしにはできない。こういうふうに考えております。今、折しも社会保障と税の一体改革についての議論をしております。その一方で、財政問題というのは世界的に要警戒期に入ったと、こういう非常に我々、日々緊張しながらの行政を担っているわけでございますけれども、しかしながら、この社会保障体制、医療体制をきちっと支えていかなければいけない。
 そういうことの中ではいろいろな御議論はあろうかと思いますけれども、必要なそれについてのリソースというものをきちっと確保するということはしていかないといけない。その仕方については、いろいろな方法というのはあろうかと思います。そこをめぐるいろいろな議論はあろうかと思いますが、しかし、何らかの形できちっと国民の理解を得て、皆さんのおかげでつくり上げてきた保険体制も含めてですけれども、日本の世界一のクオリティーの医療を引き続き維持、充実をしていくということの重要性ということは、我々、声を大にして国民に訴えていきたいと思っております。
 しかしながら、これから更に超高齢化社会を迎える中で、大変な難問であることは事実であります。今回、皆様方に頂いた大変貴重な御議論をベースにまた引き続き皆様方と御一緒に、そういうこの医療問題についての国民的理解を深めるということをやり、そして必要なリソースをちゃんと確保していくということに我々も更に尽力をしてまいりたいと思っております。
 これまでの御議論に心から感謝を申し上げまして、引き続き日本の医療発展のために御尽力賜りますことをお願い申し上げまして、私からのとりあえずの御礼(おんれい)、ひとまずの御礼(おんれい)の御挨拶にかえさせていただきたいと思います。皆さん、本当にありがとうございました。

【安西座長】  ありがとうございました。副大臣から誠に御丁重な激励と言いましょうか、御挨拶を頂きまして、有り難いと思いますが、こちらでも頑張らなければいけませんので、皆様、よろしくお願い申し上げます。
 今日は、有識者の方のヒアリングを1件させていただくことにさせていただいておりまして、千葉大学医学部附属病院の総合診療部長の生坂政臣先生にいらしていただいております。よろしくお願い申し上げます。
 今日の進め方といたしましては、まずヒアリングをさせていただきまして、その質疑応答の後で、今日は栗原委員、黒岩委員、桑江委員、平井委員、山本委員、5人の委員の方から資料が提出されておりますので、短い時間で申し訳ありませんけれども、それぞれお話をいただければと思います。平井委員におかれましては、今日遅れて御出席とのことでありますので、後でさせていただきます。その皆様のいろいろお話しいただいた後で、質疑の後、事務局から資料を配付させていただいておりますので、事務局から説明をしてもらいまして、その後、自由討議とさせていただければと思います。だんだん論点整理の方向へ移ってきておりますので、皆様、更に忌憚(きたん)のない御意見をいただければと思います。
 それでは、事務局から資料の確認を手短にお願いします。

【渡辺企画官】  資料の確認をさせていただきます。資料1が生坂先生からの資料、資料2が栗原委員からの資料、資料3が黒岩委員からの資料、資料4が桑江委員からの資料、資料5が平井委員からの資料、資料6が山本委員からの資料でございまして、差し替え分が合わせてあろうかと思います。そして、資料7が事務局提出資料。以上でございます。不足分、落丁等ありましたらお申しつけください。

【安西座長】  よろしいでしょうか。それでは、議事に入らせていただきます。まず、先ほど申し上げました生坂先生の御発表をお願い申し上げます。お忙しいところ、よろしくお願い申し上げます。15分程度にしていただきまして、その後、質疑とさせていただきます。

【生坂政臣氏】  千葉大学総合診療部の生坂でございます。本日はこのような席で発言させていただく機会を頂戴し、誠にありがとうございます。目障りでしょうから着座で発表させていただきます。
 総合医という名前、これはいろいろな呼び方がありますが、一番短いものを選びました。ここに深い意味はございません。医師不足問題に対する総合医の有用性ですが、我々の施設では地域に行けば臓器専門医が必ずしもそろっていない。そういう中で1人2役、3役こなせる総合医が重要なのは皆様方お分かりのとおりだと思います。我々もいろいろなところに派遣しておりますが、総合医は1人2役、3役こなせるだけに医療のニーズが多いところでは忙殺され、燃え尽きる可能性がありますので、必ずチームで出すようにしています。チームで出せない場合は、例えば旭中央病院は日直と当直だけという時間限定で働いて帰ってくるというふうなケアをしないと燃え尽きます。そういう配慮をして、地域医療に貢献するということでございます。
 災害医療にも役に立ちます。私自身が1週間後に被災地入りしたのですけれども、それこそ着の身着のまま、総合医は病歴と身体診察だけでほとんど対処しますので何の準備も要らない。東北弁はちょっと勉強しましたけれども、病歴聴取は正直申し上げると、なかなか難しかったです。効率的な医療にも役に立ちます。ゲートキーパーという役割を担って、専門医療が必要な患者さんだけを病院に紹介する、こういう仕組みができると医療費の大きな節約になります。ただ、今、フリーアクセスを制限するというふうに動いている動きも見受けられますけれども、このゲートキーパーが患者さんに対して十分な満足度を与えられなければ、患者さんは到底、フリーアクセスの制限を納得しない。そういうふうに考えております。
 実際にどのような医療費節減効果があるかといいますと、ドクターショッパーと言われている複数の医療機関を受診した後にかかってこられる方がいらっしゃいます。我々の初診外来のうち21%がドクターショッパーと言われている方なのですが、実はドクターショッパーの多くは何らかの器質疾患を抱えておりまして、実際には終息し得るということですね。ですから、そのゲートキーパーがしっかりしていると、こういう無駄な医療費を節減し、患者さんも、何件も医者回りをしなくても済むという結果が出ております。外来診療能力の向上によって実際に医療費を削減できるというようなデータがいろいろ出ておりまして、例えば伝染性単核球症という病気があるのですが、日本では結構、急性肝炎ということで入院になります。ところが、アメリカではこれは外来で見ます。入院させると、アメリカの試算では1人当たり1万2,000ドルです。私のアメリカの研修時代の給料が2万4,000ドルですから、1人外来で見るだけで、その給料の半分を節約できてしまうという、それぐらい医療費削減効果があるのですが、我が国では入院費と外来費がアメリカの10分の1ぐらいですから、120万円ほどの差は出ないにしても、外来でやるとかなり医療費削減になる。紹介患者さんが半分ぐらいいらっしゃるんですけれども、実際に大学病院に入院させなければいけない外来患者さんは1,000人に1人くらいです。病床削減時代に備えて、あるいは医療費を効率的に使うという意味では、慢性期はもちろん、急性期の大半、重症期の一部分も外来で見る。こういう能力が将来求められていくのではないかと思います。
 次の問題ですが、総合医の在り方、これは分業か兼業か、これを国として選んでいく必要がございます。専門医と総合医、その内訳、これはOECDのデータなのですけれども、日本は残念ながらこの中にありません。日本は総合医がどのくらいいるかという内訳のデータは出せないOECDで多分、唯一の国なのですけれども、多くの国が大体1対1、あるいはOECDの平均で言うと総合医が0.9で、専門医が1.8、大体1対2になって、このあたりを目標に総合医を育成していくと、かなりバランスのいい診療、医療体制ができるのではないかと考えられています。
 では、日本のプライマリ・ケアはどういうふうに提供されているかといいますと、医学部を卒業した医者はほとんど臓器専門医になっていくわけですけれども、臓器専門医が医師の後年、開業してから突然プライマリ・ケアを提供する。患者さんから見ると、脂の乗った時期は専門医としてやりますので、十分な専門医療も受けられるし、その先生方が開業したら、今度はプライマリ・ケアを提供してくれるので、専門医療も総合医療も享受できるというメリットがあります。
 これが欧米になるとどうなるかというと、イギリスでは、医学部を卒業すると専門医になるか、General practitioner(GP)、総合医になるか、これは二者択一です。この間のあいまいさはありません。完全な分業体制ですので、医者の数は日本と余り変わりないとすると、医者の半分は総合医、残りの半分が専門医ですから、実は両方とも不足は起きます。なので、アクセスの制限をせざるを得ない。専門医を受診するのに例えば骨折の治療で半年待ち、あるいはがんの治療で半年待ちというのは有名ですけれども、GP、総合医にかかるのにもイギリスでは何年か前の国の目標は、5日以内にかかれるように総合医の先生たちは頑張りましょうという目標設定がされたぐらい、GPも足りない。この英国型のフリーアクセスの制限を日本国民が受け入れられるかどうかは疑問です。
 それで、イギリスもGPを増やすために、ブレア時代に給料を専門医と同じぐらいにして、当直なし、フレキシブルタイム勤務など、National Health Service(NHS)への緩和雇用条件を打ち出したところ、GPの数がかなり増えた。つまり、GP、総合医を育成するには何らかの国の政策がないと非常に厳しい。総合医確保に苦労しているのはアメリカも同じです。アメリカも卒業時に専門医になるか、総合医になるかを決める必要があるのですけれども、アメリカの場合はフランスと同じように専門医の門戸を非常に狭くしています。
 なので、成績順というのは言い過ぎかもしれませんけれども、優秀な学生が専門医になって、そうでない学生がプライマリ・ケアを提供する傾向があります。School of osteopathyといって、osteopathyという、日本語にしにくいのですけれども、多分、入学偏差値から言うと通常のメディカルスクールよりもちょっと落ちるようなところ、こういうところの卒業生。あるいは外国医学部卒業生が米国の総合医となり、あるいはNurse Practitioner、Physician Assistantと言われているような人たちがプライマリ・ケアの重要な一翼を担うという、こういう形で何とかプライマリ・ケア供給量を維持しているという状況がございます。
 この点、日本はうまい仕組みは持っているのですけれども、国民の質への期待といいますか、医療に対する見方が厳しくなっている中で、是非今後、臓器専門医の先生方が開業するときには短期研修、あるいは標榜(ひょうぼう)科ごとのモジュール制の国家試験、これは全領域の国家試験を受けると多くの方が落ちてしまいますので、例えば内科であれば内科の国家試験の問題をプールしてあるやつをそのまま受験してもらうわけですね。そうすれば新たな問題作成の手間を省ける。今の国家試験が余りにも専門性に偏り過ぎて実際に役に立たないという声があるのですけれども、国家試験をつくる先生方が専門医中心になりますので、なかなかそれがプライマリ・ケアに寄っていかない。この問題も、自らが開業するときにもう一度受けなければいけないとなれば、実施診療と余りにも乖離(かいり)しているのではないかという声が大きくなり、国家試験の改革にもつながるのではないかと個人的には考えています。何らかの規制を、規制といいますか、質的な医療を担保できるような、国民が納得できるような、そういう仕組みを是非つくっていただきたいと思います。
 そういう、専門医の先生方も総合医になっていただく。これを欧米のように専門医と総合医を卒業時から分断して、相乗りは一切禁止するというような仕組みは我が国ではちょっととりにくいのではないかと思うのです。
 ただ、指導医としての専従総合医の育成はやはり必要になってくると思います。総合診療部、ちょっと厳しい状況が今続いています。どうしてかというと、日本でもアメリカでも総合医は人気がないわけですね。この赤いところが全研修医数で、アメリカの卒業生は黄色いのですけれども、この差は何かというと外国の医学部卒業生がアメリカで一般内科医や家庭医、すなわち総合医としてリクルートされているという状況です。アメリカ国内だけでは全然足りないわけですね。これにNurse Practitionerなども加わっているのですが総合医はそれでも足りない。
 米国では毎年、7,000人、内科医がうまれるのですけれども、その後、臓器専門に進むのは大体4,000人、ですから、残りの3,000人が総合医として働くことになる。つまり、専門医になる門戸が非常に狭いわけですね。こういう仕組みでもって何とか総合医を確保する。世界各国が総合医を確保しようと策を練っているわけです。
 今日、ポインターがないのが残念なのですけれども、Doctor of osteopathyというのがプライマリ・ケアをどのぐらい担っているかというのを示した図なのですが、osteopathyというのは丸がついている真ん中のところ、上の方ですね。プライマリ・ケア領域に多くの卒業生を輩出しています。今、議論されているメディカルスクールのひとつの在り方に近いのでしょうか。私は別にそれに賛成というわけではございませんが、我が国での総合医として生きる不安というのはたくさんあります。これはアイデンティティがない、ロールモデルが少ない、キャリアパスが、結局、へき地に限定されるのか。専門医でも総合医になれてしまうのであれば先に1本柱を確立しておいた方がいいと考えるわけですね。こういった理由から、総合医を若者が選択してくれないという状況がございます。
 千葉大はどうしているか。我々のところは幸い比較的多くの若者が教室に入ってくれるわけですが、どういうふうにしているかというのを少しだけお示しします。ミッションは総合診療医、これはどこかで見たことがあるという方がいらっしゃる。これはドラッカーですね。最近、ドラッカーのマネジメントを読む機会があって、8年前に同じようなことをやっていたと思ったのでちょっと出してみたんですけれども、まず、顧客を誰かというふうに考えたわけですね。国と地域、基幹病院はこれでクリアできる。
 患者さんのニーズはマーケティングをやってみると、いろいろな話を聞いてほしいとかいろいろあるんですけれども、一番望んでいたのは診断なんですね。適切に診断してほしい。これは大学総合診療部だけではなくて診療所でも同じでした。きちんとした対応、傾聴とかのニーズもあるんですけれども、やっぱり正しく診断してもらわなければ話にならないというところがあるわけですね。
 開業医が困ったときにどうしたいか。総合診療部に紹介、コンサルトできる環境をつくってほしいというニーズでした。同様に、他科、他院からの総合診療部への期待は、診断不明例の診察です。それで、教室員がどういう診療に満足するかを見たのですけれども、その診療について診断に自信があったときは非常に高い満足度を示しているわけですね。たまたまその雰囲気が患者さんに伝わるのでしょうか、医者が診断に自信を持った診療は患者さんの満足度も有意に高くなるわけですね。
 実は、医者がよく話を聞いてくれたという診察は、患者さんの満足度が非常に高いんですけれども、医者の満足度はマイナスなんですね。ちょっと疲れてしまうという、こういう現実があります。診断をつけることによって患者から専門医、教室員までのすべての顧客の高い満足度が得られる。病院長、事務長は、我々、実際に稼ぎが悪いので満足していただくのはなかなか難しいわけですけれども。
 ベットが不足していると言われていますが、基幹病院でも不要な入院が非常に多いわけですね。私は内科学会のサマリのチェックをやっていますけれども、有名な教育病院が、例えば29歳、女性、子どもとともに肺炎。重症感なし。入院させてマイコプラズマ肺炎だった。それを代表的な入院症例として書くわけですね。17歳、男性、急性肝炎、咽頭痛、これなんかもこれだけで伝染性単核症で、両方とも外来観察で十分です。85歳、女性、四肢の痛み、貧血。これはもうリウマチ性多発筋痛症。入院させる必要はない。この患者さんは筋生検と骨髄生検まで受けていました。しかも、今年、全国の4人の研修医がこのリウマチ性多発筋痛症を代表的な入院例として挙げています。これは欧米では考えられません。34歳、女性、四肢の痛み、顔面、手足の皮疹、これは成人リンゴ病です。これをSLE疑いとして入院。ちょっと病棟を見ただけでこういうことがたくさんあるわけですね。これは外来研修をきちっとやってないせいではないかと、我々は外来に特に力を入れています。固有病床があるから稼働率を意識して入院させることになる。共通ベッドだけにして、敢(あ)えて固有病床を持たないという発想で、外来診断に強い千葉大総診を立ち上げました。折しも欧米では2回目の教育のパラダイムシフトの最中で、臨床研修は講堂からベッドサイドへ、そしてベッドサイドから、今、外来に移っています。
 申し訳ございません、15分しかなかったので駆け足でしたが、こういうことで総合医育成に頑張っております。どうも御清聴、ありがとうございました。

【安西座長】  どうも申し訳ありません。せっかくいらしていただきながら、時間の関係で。質問、御意見の時間をとりたかったものですから。今のヒアリングにつきまして御質問、御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。

【山本委員】  総合医に関して大変すっきりしたお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。二つ御質問したいと思いますけれども、一つは、総合医という今のカテゴリーの中で日本は開業医の先生がそれを担ってきました。それのいい点と悪い点、先生、お話をなさいましたけれども、これからもそれでいいのか。より適切な総合医を育成するためには先ほど少しお見せいただいた短期の研修とか、あるいは標榜(ひょうぼう)科のモジュールの試験とか、こういうものはやはり必要と思うんですけれども、その問題が一つ。
 それからもう一つは、先生、途中で若い医師の中から総合医を育てていくことが、これからは必要ではないかということをおっしゃいました。私も賛成ですが、その中で大学としてこれまで総合医、総合医と言われながら、実際に総合医の養成を始めた、幾つかの大学がありますが、ほとんどの大学はそれができていない。こういう問題に対して、これから大学としてどのように取り組むべきか、その2点を教えていただきたいと思います。

【生坂政臣氏】  最初の問題なのですけれども、これでいいかということなのですが、アメリカではプライマリ・ケア医が必要だということで市民運動が起こって、それからプライマリ・ケア専従医をつくろうと。専門医と総合医の相乗りというのは、以前は欧米全ての国がそうだったんです。
 それで、総合医のクオリティーを担保するために、専門医と総合医を分けたというような状況なのですけれども、ですから、日本はまだその時期に来ていないという考え方をすると、将来はやはり分断、総合医と専門医を分けるという流れになっていくのかもしれないのですが、日本はいまだにこういう状況です。ただ、WHOの健康指標で見ると日本のヘルス・インデックスは非常に強くて、専門医と総合医の兼業は私が知る限りではOECDでは日本しかやっていない仕組みではあり、世界の潮流からは取り残されているのですけれども、それが悪いとは一概に言えないという面がございます。
 ただ、申し上げたかったのは、アメリカで専従総合医が必要だと認識されて制度が始まって、実際に専従総合医である家庭医が普及するまでに30年かかっているんですね。日本ではもっとかかるかもしれません。ですので今から総合医、若手を育成しても、その数が増えて普及するまでに30年かかるとすると、現状の中でできることをまずやるべきではないか。それが私は開業前の認定試験ではないかと考えています。そのための短期研修は、我々、そのひな形のようなものをやっておりまして、診療所での診断というのは病歴・身体診察診断とほぼイコールだと考えていますので、開業医や勤務医が全国から登録医として千葉大に来て勉強していただいています。このような仕組みを全国で展開していただいて試験をやっていただければ完璧であると。
 大学で総合医の育成についてということなのですけれども、病診連携が進み、高度医療機関とプライマリ・ケアを見る診療所に患者を分けた場合は、大学でプライマリ・ケアを見る機会というのは本当に少なくなります。将来的に全ての大学病院で総合診療部を中心としたプライマリ・ケア教育が必要だと思うのですが、大学病院内だけでは難しくなると考えています。ですから、我々もサテライトなどの学外の施設をつくるとか、プライマリ・ケア教育、総合医教育を工夫しているところでございます。

【安西座長】  よろしいでしょうか。それでは、生坂先生には総合医の問題について大変すばらしい御意見を頂いたと思います。総合医の問題というのは、前回からいろいろ出ておりますけれども、今後も議論すべきことだと思います。よろしいでしょうか。

【木場委員】  先生、すみません。

【安西座長】  はい。

【木場委員】  この分野、不慣れなので素人的な質問になるかもしれませんが、一つまずお伺いしたいのが、今の総合医への流れというのが、若いときは専門を持ってやって、後年になって総合医になるということですが、大体、平均的にお幾つぐらいから総合医に移行してくるのかということと、先生のお考えではそれをもう少し前倒しにした方がいいのかということ。それから、最後に先ほど国家試験等々、移行期に関して提案されましたが、現状、総合医になられる方というのは、御自分の専門があって、移行した後の専門外のことは御自分独自の勉強で賄って成り立っているのでしょうかという、この3点をお願いします。

【生坂政臣氏】  平均の開業の年齢ですね。以前は結構、40、50歳以降に、あるいは定年後に開業というのが一般的だった状況だったのですけれども、最近はそれが少し前倒しになっている。もちろん勤務医の労働状況が厳しくなってきているとか、いろいろなことがあると思うんですけれども、あるいは早めに開業しないと借金を返し切れないとか、そういうこともあると思いますので、これはまちまちでございます。30代半ばで開業する方が結構いらっしゃるのではないかと思います。 
 勉強は、これは医師会とかも生涯学習、いろいろなマテリアルを各学会が提供しておりますので、それをやるといことで、でも、これは全く任意です。自助努力に任されているというのが現状です。ですから、もちろん優秀な開業医の先生というのは、いっぱいいらっしゃるのですが、それが外からよく分からないというのが現状でございます。

【木場委員】  ありがとうございます。すみません。

【安西座長】  ありがとうございました。
 では、短く。

【中村委員】  一つ、これまで京大にいたのですけれども、京大でも総合診療部があったのですが最近、総診はなくなって、初期診療部になったんです。非常に気になるのは、総合診療の医師が診断をした後に通常は治療の問題があるんです。大学や総合病院などでしたら総診の医師が専門的な治療が必要と判断されたら病院内で必要な科に回すという形ができるんですね。
 今、ここで問題になっているへき地の医師の少ない場所というのは、ある意味で言うと回せないということがあるところでの医師になるんです。例えば盲腸があったときに、盲腸と診断した人に、その人をどこかに送れない形のときにどうするかということなんです。その問題が、今の先生が言うような総合診療の先生の問題で、そこが解決できるかというのがすごく気になるところなんです。その辺のところが今のへき地の中で起こっていることと、今、先生が大学でなさっていたり、医者が病診連携で送れるところでやっている総診の問題と少し難しい問題が出てくるのではないかという印象があったんですけれども、いかがでしょうか。

【生坂政臣氏】  御指摘のとおりだと思います。それで、アメリカなどでは家庭医という、お産もとれるし、場合によってはアッペのオペまでできるような、そういう医師を育成しようということで動いています。そのような家庭医のニーズはありますし、先ほどお見せしたとおりなのですが、それには相当な教育の資源が必要になります。ただ、日本で本当にアッペを自分でしなければ転送先がない、1時間、2時間を争うような状況というのは、お産を含めて、それほどではないだろうと。離島、へき地、主に離島ですね。そういう患者さんを転送する手段もないような、そういう状況での診療形態をとる場合には、恐らく総合診療と言われている方の中でも、例えば自治医大でのへき地医療のための研修が必要だったりするとは思います。
 ただ、千葉県で申し上げますと、多くの患者が何らかの形で搬送できて、そのような医者を育てる必要性はそれほどではない。アメリカと違って日本は離島とか、よほどのところでなければお産もとれて、アッペの手術もできるという、そこまでの医者を育てる必要性はコストパフォーマンスを考えたとき、それほどでもないだろうと。それは自治医大、一つの機関で何とか賄えるのではないかというような、そういうふうな考え方を持っています。

【安西座長】  ありがとうございました。
 中川委員。

【中川委員】  先生のお話、本当に情熱に敬意を表したいと思います。最初の冒頭の先生のお話で、医療費の抑制に寄与するのだというふうに聞こえたのですが、まず、それがどうなのかという真意をお伺いしたいのが一つ。それから、先生のおっしゃる総合医の第一の目的、役目はゲートキーパーなのか、それとも診療科にとらわれず総合的に一定水準以上で診療ができる能力なのか、どちらかなのか。もっと踏み込んで言えば、是非、先生がお使いになる総合医の定義を明確にして、それでこれからもお話しいただければなと思います。

【生坂政臣氏】  医療費抑制に関して申し上げますと、これは日本では先生がおっしゃるように具体的な、つまり、総合医が増えたときにどうなるかという具体的なデータがないんですね。総合医の定義、先生がおっしゃるように誰をもって総合医と言うかということもありますので。ただ、欧米では家庭医が普及すると、その診療のアウトカムがよくなって、かつトータルな意味での医療費を抑制できるというふうなデータが出ておりますので、それで欧米諸国は無理して、専門医になりたいという若手を無理やり何とかジェネラル、総合医に回そうと国策としてやっているわけなのですが、日本ではそういうデータはございません。なので、あくまでもそうなるのではないかと。
 ただ、個人的な経験で言いますと、例えば我々総合診療部は、ほかの診療科に比べて実際に医療費はほとんどかけておりません。8割までは自己完結で治療までやって、残りの2割はもちろん専門の先生方にお世話になっているわけですけれども、こういう医療を展開していけば、何となく、恐らくは欧米と同じ、あるいはそれに近い医療費削減効果が期待できるのではないかと考えています。
 あと、先生がおっしゃるゲートキーパーと総合診療医の診断能力なのですが、これは切り離してできるものではないと思います。もしゲートキーパーに単純に極端に特化すると、受付の事務の方でも、ゲートキーパーにある意味なっているわけですね。頭が痛いと言えば、神経内科に振り分ける、脳外科に振り分ける。そういうゲートキーパーではなくて、これは専門医療が必要ないと、患者さんの専門医療が必要ないですかという疑問に対して、明確にこれは必要ないと答える、それが本当のゲートキーパーだと思うのですが、診断能力が必要です。ですから、それは切り離せないというふうに考えております。

【中川委員】  ありがとうございます。

【安西座長】  ありがとうございました。
 大変すばらしい質疑応答で、生坂先生に感謝を申し上げたいと思います。どうもこちらは止めてばかりいるように思われるかもしれませんけれども、そういうつもりではございませんので、御理解ください。今日は4時までということになっておりますが、論点整理の素案も出ますので、いろいろ御意見があるかと思いますし、あと5人の方々からの御意見があるということでありますので、生坂先生のヒアリングにつきましては、ここまでにさせていただければと思います。本当にありがとうございました。
 それでは、次に移らせていただきまして、5人の委員の方々、まず、栗原委員から資料を含めて御説明をお願いします。

【栗原委員】  資料の2-1、私が私立医科大学の立場を踏まえて私見を書いてみました。を全部御説明しますと大変膨大ですので、要点を申し上げたいと思います。 まず、日本には医科大学、医学部が80あります。そのうち私立医科大学は29校で、日本私立医科大学協会に加盟しております。現在、入学定員は9,008名ですが、そのうちの3,263名は私立医科大学生です。したがって、37%が私立医科大学の卒業生ということに今後なりますので、医療に対する私立医科大学の貢献はますます大きくなるものと考えています。添付しました資料を御覧いただきますと、入学定員の推移が分かります。
 先ほども開業は卒後何年頃からかという御質問がありましたが、協会で調べましたところ、卒業して10年で78%、20年で56%の医師が病院勤務医として勤務しています。意外と開業する率が、私たちが予想していたよりも低いということになります。それからもう一つ、私立医科大学は都市部にだけ附属病院、あるいは関連病院を開設していると考えられがちですが、全国に5,000以上の附属病院、関連病院を持っております。現在、1万7,000名以上の医師がそこで活躍しています。こういう事実を考えると、私立医科大学卒業者は地域の中核病院などで地域医療に貢献しているということがお分かりいただけるのではないかと思います。
 付加的なことですが、このたびの東日本大震災後、各大学から医療チームが派遣されました。大学の数は国立が多いので、派遣された医師の絶対数は国立大学の医師が多いですが、1大学当たりの派遣医師数は私立医科大学の方が多いということが分かります。このように、私立医科大学、イコール開業医育成ということではないと考えていただければと思います。これまでこの会議でも議論されてきましたが、地域医療者不足が大きな問題になりました。そこで、この地域医療者の不足を今後どのように解決するかということが大きな問題です。
 また、特定の診療科の医師不足も問題になりました。いずれも偏在が問題ですので、まず早急に、特に地域医療者の偏在を解消する施策が必要だと考えています。現在、医師が不足しているからといって入学定員を増員したり、あるいは医科大学を新設しても中堅医師として活躍できるまでには恐らく十数年以上かかる考えられます。したがって、数を増やしても即効性がありません。喫緊の問題の解決策としては間に合わないのではないかと考えています。また、医師数は毎年、現状でも3,700名から4,000名増加しております。定員増を図ったときに入学した学生は、これから卒業するので、今後は、毎年5,000名ほどの医師が増加することになります。この事実を踏まえて医療のシステムを今後考えていくことが肝要ではないかと思います。
 地域医療者不足の解決ですが、まず、それぞれの地域で医療連携システムを構築するために1県1医大構想の原点に立ち返ることが肝要と思います。それでも医師が不足するのであれば、医師数が多い都市部の医療機関と連携して医師を派遣する方法を考えることが必要ではないかと思います。私立医科大学協会加盟校の中にも協力したいという大学が数多くあるということを付け加えたいと思います。地域に若手の医師を送る際には、一定期間勤務したらまた再び大学附属病院などで更に研鑽(けんさん)できるようなシステム構築することが必要だと考えています。循環型の医師派遣システムは、若手医師の将来のキャリアパスの構築にも有用だと考えます。また、地域医療者には相応のインセンティブの付与も求められると思います。また、医学教育の中で医師の社会的責任というものを十分涵養(かんよう)するような教育カリキュラムも必要かと考えます。
 特定の診療科における医師の偏在が問題になっておりますが、一時期、少ないと言われた麻酔科医も最近は増加しています。希望者が少ない診療科にはインセンティブを付与して労働環境を改善することが必要ですし、また、医療訴訟に発展することが多いような診療科は、医療訴訟を未然に防ぐという方策を考えるということも必要ではないかと思います。
 もう一つ、医学部出身の基礎医学者の不足ということも本検討会で取り上げられました。学部教育の中で、研究を体験させるカリキュラムをつくるということが必要ですが、現在、各大学で取り組んでおります。研究を体験することによって、将来、研究者になりたいという動機づけになるのではないかと思います。それから、ある大学ではMD-Ph.Dコースというものを設けております。これも一案ではないかと思います。研究者育成のための医科大学を新設という御意見もありましたが、医科大学を卒業した研究者のメリットというのは、臨床を経験したということにあるのではないかと私自身は考えます。従いまして、研究者育成には是非医学教育を施すということが必要で、研究者の育成には現在ある大学院を大いに活用することが早道なのではないかと考えます。
 現在、政府の予算も含めて各大学の予算が削減されている中で、基礎医学研究者が就職しようと思っても職がないという現実があります。研究者を希望する者があれば職を設けて、雇用できるようなシステムをまずつくるということではないでしょうか。また、研究者には一定のインセンティブをつけるということなどが求められると思います。こういったことに対しては当然財源が必要で、そのためには診療報酬について十分検討する必要があるように思います。
 さて、医学生の数が増えたことによって学力低下の問題が各大学で起こりつつあります。当然、間口が広がれば質が落ちるということは一般論としても納得できることだと思います。
 この検討会でも話題になりました、国際的に活躍できる医師の育成ですが、参加型臨床実習の充実、それから、社会的責任を自覚させるカリキュラムが求められるものと思います。それと同時に今お話がありました地域医療者の育成にも大学が取り組むことが必要で、それには卒前教育の中に地域医療に関するカリキュラムを取り入れて、地域医療を体験させることが必要です。本院で実施することが難しいことはよく理解できます。しかし、私立医科大学は、いわゆる分院を持っておりますので、地域と密着している分院で地域医療者の教育が可能であるというように考えます。
 いずれにしましても、数を増やすと同時に質の保証をどうするかということが今後の問題であります。医師数の算定根拠ですが、現状の定員でも10年後には人口1,000人当たり2.6人の医師、20年後には3.0人の医師となる試算があります。もう一つは、高齢社会になり医療ニーズは高まってきて、医師の負担は2030年から2035年にピークを迎えるという推計があります。いずれにしても、将来、人口減少すれば医療ニーズも減ってきますので、そこを見据えて今後どうするかということを考えることが必要です。
 例えば2012年に入学した医学生が中堅医師として働く頃には医療ニーズが低下し始めるというようなことにも私たちは注目して、将来の予測をある程度しなくてはいけないと考えております。入学定員が削減されたり、あるいは医科大学の閉校などが必要となる事態が起こるかもしれません。医科大学の閉校は極めて難しいということを強調したいと思います。医師の業務権限については、コ・メディカルスタッフの利用を十分に考えていくということが必要だと考えます。
 さて、新設医科大学ですが、先ほどお話ししましたように、現在の医師の増加数を考えると、新設医科大学は必要ないのではないかと考えます。全国医学部長病院長会議も反対していますが、日本私立医科大学協会も全国医学部長病院長会議の一員として新設医科大学には反対したいと思います。と申しますのは、医師を幾らつくっても地方に卒業生を行かせる強制力がありません。現状では、医療資源が十分活用されにくいということになります。日本私立医科大学協会も現在120名の定員を目途として増員を図ってまいりました。しかし、更に増やしたいというような意見を持っている大学もありますので、それはそれぞれの大学の自主性に任せたいということであります。
 いずれにしましても、医師を養成するのには相当の財源が必要です。この公的補助金の減額、あるいは良質の教員の確保などを考えると波及する問題は極めて大きいと思いますので、慎重に対処すべきではないかと考えます。意見書を全部ご説明はできませんでしたが、要点を述べさせていただきました。
 以上であります。

【安西座長】  ありがとうございました。
 御質問、御意見あるかと思いますが、5人の方々のお話をいただいた後でと思いますので、御質問、御意見がある方はメモしておいていただけますでしょうか。そういうふうにさせていただきます。
 それでは、黒岩委員からお願いします。

【黒岩委員】  全国医学部長病院長会議からのグランドデザインについて、資料3をもとに御説明をさせていただきます。
 1ページを御覧いただきたいと思います。医師の偏在に伴う地域医療崩壊と医学教育、医師養成、医療のグローバル化にいかに対応すべきかというテーマです。医師養成の現状の検証と改革実現のためのグランドデザインになります。1ページにございますように卒業前の課題と卒業後の課題がそれぞれ四つ記されております。2ページにございますが、卒前、卒後にまたがる課題というものが五つございます。それぞれにつきまして簡単にポイントを御説明いたします。
 4ページをお開きください。まず、入学者選抜に関しましては、アドミッションポリシーの公表、入学生の質の確保、地域枠等に関する十分な検証が必要です。
 5ページを御覧いただきたいと思います。臨床実習前の教育に関しては、提言というところを御覧いただければと思いますが、講義、チュートリアルだけではなくて、臨床技能系実習、医療面接も含めた学生に対する効果的なカリキュラム設計が必要であります。また、学生支援システムの構築、共用試験と医学部独自の評価を組み合わせていくということが重要でございます。
 6ページを御覧ください。臨床実習教育に関する提言でございますが、診療参加型とするということ、地域基盤型医学教育を取り入れるということがポイントです。6ページの下の方でございますが、医師国家試験に関する改革では知識に関する問題はCBTで、技能に関する試験はOSCEでという、二つの柱でもって医師国家試験の改革を行っていくということが重要です。
 7ページの下のところですが、卒後の問題に入ってまいります。臨床研修制度の問題ですが、これは卒前、卒後の一貫した医師養成という考え方で、卒前医学教育と臨床研修制度とはつながったとものとした位置づけで行うことが重要です。
 8ページの真ん中の下の方でありますが、専門医に関して、早急なる日本専門医制度評価・認定機構機能の充実、先ほど来も議論に上がりました総合医の定義の早急な決定、社会人大学院制度の発展がございます。
 9ページの真ん中上の方、医学研究の低迷に関する対策でございますが、基礎医学研究者を目指す人材に関する支援、大学院専門教員の増員が重要です。9ページの下、生涯教育に関しては、生涯教育ニーズに関するプログラムの提供が大学の責務であるということでございます。
 10ページの上の方、総合診療教育体制の構築に関する提言ですが、大学においても総合診療部門を大学附属病院の中に重要な部門として位置づけるということが重要です。
 11ページの上のところ、医学教育の国際化ということでございますが、アメリカ医科大学協会と世界医学教育連盟から医学教育の基準が公表されております。しかし、我が国の医学部の教育内容をこの基準と照らし合わせる必要があります。機関認証を行う認証機関を充実させる必要があるということで、全国医学部長病院長会議が今後それに対して貢献していきたいという考えを持っております。プロフェッショナリズムに関しましては、11ページの真ん中の下の方でありますが、提言として明確なプロフェッショナリズム教育プログラム構築、女性医師養成のためのワーク・ライフ・バランス制度の構築が重要です。プロフェッショナリズム教育に関しては、医学教育振興財団の医学教育指導者フォーラムにおいても重要なテーマとして取り上げられました。
 12ページでございますが、教育環境の整備では、医学部定員増に見合う教育の質担保と教育設備の一層の充実が求められています。
 最後に13ページの真ん中辺り、医学部の新設に関することでございますが、既存の医学部では定員増を行っており、当面はこの定員を維持し、この8,900名の教育を充実させるということが非常に重要なことである医学部新設に関しては慎重な対応が望まれると考えます。
 以上が全国医学部長病院長会議の見解でございます。

【安西座長】  ありがとうございました。
 御質問、御意見あるかと思いますが、後ほどにしていただければと思います。それでは、桑江委員にお願いします。

【桑江委員】  よろしくお願いいたします。パワーポイントを使って説明させていただきます。女性医師問題に関しましては、今までの先生方も取り上げていただきまして、大変ありがとうございました。私も自分がずっと医師をやってきている中で考えたことを短くまとめてお伝えしたいと思います。
 まず、解決はできると思いますけれども、それはあくまでも女性が生涯を通じて人生の主役であり続けるという、そういう機構を社会全体としてつくる。そういうことが必要だと思います。問題点の提起と解決への提案、今日は一応、五つ用意しましたけれども、時間がないと思いますので、では、次、お願いいたします。これは産婦人科における医師の年齢構成なのですが、左側が若い方右側がお年を召している方で、赤い部分が女性医師です。女性医師は、下のグラフを御覧いただくと分かるのですが、もう20代、30代は半分以上です。これは少し古いデータなので、今は40歳以下の半分、50%が産婦人科では女性です。
 次、お願いします。それで、分娩を取り扱っている医師の実情ということで、学会で調査をいたしました。これは非常にいい調査と言われているのですが、次、ちょうど卒後11年目になりますと分娩を取り扱っている医者は半分以下、45%に減ってしまいます。下は男性で、上が女性なのですが、男性は8割方ずっと変わりませんが、女性はおおむね66%なのですが、それがやっぱり卒後11年目で一番極端に減ってしまいます。次、これは5年ごとにしますとだんだん減ってきまして、やはり10年目、魔の35歳というのがここで定着いたしまして、だんだん半分になってしまう。
 次、お願いします。それで、子どもさんがいるかどうかということなのですが、上が全女性医師の取り扱っている分娩なのですが、その2番目のグラフが子どもさんがいない場合です。これはほとんど男性と一緒です。ところが、下のグラフで1人いらっしゃる方、2人いる方、3人、1人いても3人いても同じことで半分以下になってしまう。つまり、子どもがいるか、いないかということで分娩を取り扱えるかどうかが決まってきます。
 次、お願いします。実際問題、産休とか育休をとれているかということを調査いたしました。そうしますと、産休は6割ぐらいとれているのですけれども、育休はとれているという実績は4割ぐらいしかない。つまり、とれていない方がここで辞めているということになります。
 次、お願いします。これで院内保育所がどのくらい整備できているかということなのですが、これは2009年ぐらいにやりましたので、このときは半分ぐらいだったのですが、今、大学病院の方はほとんどつくっていただいているので大変有り難いと思います。
 次、お願いいたします。それで、時間外保育をやっているところは、このグラフ、上がどのぐらい復帰していますかということなのですが、時間外保育をやっていますと7割以上は復帰できますが、やっていないところはやはりグッと20%ぐらい下がって、5割ぐらいしか復帰できません。
 次、お願いします。病児保育をやっているところは、あると8割くらいが復帰できるということが分かっております。つまり、時間外保育と病児保育は非常に大事だということですね。これは19年度なので少し古いのですが、新しく専門医になった人にアンケートをとりました。そうしましたところ、あの赤いグラフは、今、パートをやっていますということです。一番下の黄色い矢印は大学病院にいる方なんですね。ですから、専門医をとるまではほとんどが下の二つ、大学病院、あるいは基幹病院でなさっているわけですね。じゃあ、5年後はどこでやっていますかということを問い合わせましたところ、次、お願いします。ほとんどがパートになってしまう。青が女性で白が男性なのですが、そうすると女性の場合は大学病院からおおむねパートの方に移動する。自分でもそう思っている。今から5年経(た)ったらこうなるだろうということが分かっております。
 次、お願いします。それで、これはジェンダー・エンパワーメント・メジャー指数という国連開発計画で出しているものなのですけれども、これは日本は2009年の段階で57位でした。それで、これは1995年から始まったのですが、こちらの始まったときは27位とまだ上だったのですが、年を追うごとに下がっていきまして、ついに今57位になってしまって、見ていただくと、キルギスよりも下ということになります。これは国会議員の比率、あるいは管理職、専門技術職比率、男女の所得比率などをもとに計算しております。
 次、お願いします。そんなはずはあるまいとおっしゃると思うのですが、これは人間開発指数、ほかの指数で見ますと、こちらの方はもう少し生活レベルが、あるいは教育がということが指数の中には入ってきます。このあたりは日本は10位、2005年から比べましても大体10位前後を行きつ戻りつしているということになりますので、やはり生活レベルを入れればこのくらいということになりますが、じゃあ、生活等のことを抜くとどうなるか。ジェンダーだけだとどうなるか。
 次、お願いします。これはジェンダー格差指数といいまして、これはジェンダーだけをやりますと、何と101位になってしまいますね。大抵の発展途上国よりも下です。それで、特に国会議員などの比率を指標とする政治分野では110位、所得格差などの経済分野では108位、教育分野ですら文部科学省の方には申し訳ないのですが84位。ただ、初等中等教育までの平等度は1位です。結局、中学校までは同じなのですが、その後、高等教育以降になりますと途端に98位になってしまいますので、足すと84位になってしまう。つまり、女性には高等教育を受ける機会が非常に限られている。そんなことないと思われるかもしれないのですが、これが事実です。
 次、お願いします。それで、どうして変わらないのか。私はこれはずっと考えてまいりました。それで、日本としては憲法は男女平等と言っていますし、ある意味、公務員、先生とかにおきましては、かなりその制度も確立していますし、法律的には雇用均等法、まあ、罰則はないとはいえ、85年につくり、共同参画基本法もつくられ、かなり措置はされているのですが、現実は変わっていない。それで、結局、変えられるところに女性がいないんですよ。国会議員にもいませんし、地方議会においては、これは今、県議会ゼロは福井県だけですが、数年前までは三、四県ありました。特に市町村議会、生活に密着するところは四つに一つはゼロです。あと企業において取締役も非常に少ないです。1.3%とかですね。こういった法律があっても罰則がない。クオーター制で増やしましょうという話も通りそうもない。一方では、専業主婦の方の権利も守られている。それはいいことだと思うのですけれども、逆に働き続けるときには壁が高いということがあります。
 次、お願いします。それで、やはり私はつくづく思うのは、1971年、スウェーデンでは夫婦所得合算方式、つまり、世帯から個人別の納税方式に変えました。これは結局、女性を1人の人間として独立して扱うということにしたわけですね。ここから劇的にスウェーデンは変わっております。スウェーデンは国策でやっております。ですから、いろいろお考えはあるでしょう。あるでしょうけれども、やはり夫に付属している、あるいは従属しているからこそ、世帯単位、あるいはサラリーマンの夫を持っていれば年金等も払わなくてもいい第3号というのがあるわけですけれども、結局、それはある意味で足を引っ張られてしまったのが個人、個人だよと。
 つまり、世帯単位ではなくて一人一人、女性も個人で独立した存在だよというふうに税制を変えることで意識も変わった。これと子どもは親が育てて、親が教育して老後の面倒を見てもらうんだよということから、子どもは社会が育てるというものというふうに大きく意識を改革したわけですね。結果として社会資本整備が進んだので、この二つの意識改革はセットです。不可分です。ですから、片方だけやると子ども手当てはばらまきだということになりますが、女性が独立していかなければいけないということをしたときに、じゃあ、誰が子どもを育てるという議論は当然あって、この二つの意識改革をやっていただかない限り、日本の女性は、特に働く女性は変えられないんです。ここは私は一点突破全面展開だと思っています。
 次、お願いします。今後、女性医師特有の問題があるのかということなのですが、医師の問題と女性の問題はあっても特有の問題はないと思います。それで、結局、妊娠・出産に関わるところは法律がありますので、結局、女性医師が働けない問題というのは男性医師も働けません。それは長時間労働、医療裁判の問題等もありますので、特有の問題ではなくて、医師の労働問題と女性医師の問題があるだけです。
 ただ、現実、そうも言っていられないので、やっぱり女性の医師を今後活用していただきたいと思いますし、それには恐らく今後、超高齢化社会になってくるときに、在宅で最期を迎えたい方もいらっしゃるでしょう。そういうときには女性の細やかなコミュニケーション能力ですとか、共感能力ですとか、お家の近くで往診をされる、自分の自由な時間が使えるというところも使えるでしょうし、あるいは交代制勤務をきっちりやれば、8時間やったら帰る。今の看護師の方たちと似たようなことが可能かなと思いますので、是非女性医師を活用していただきたいと思います。
 次、お願いします。というわけで、日本の女性の力は、最近、なでしこジャパンが証明してくださいました。あんな劣悪な状況で世界一を勝ち取ったわけですから、それはもうチームワーク、あるいは頭、いろいろなものが、努力も含めてすばらしいと思いますし、女性を使っていただいて、是非日本も今の閉塞的状況から脱して明るい未来をつくっていただきたいと思いまして、これで終わりにします。

【安西座長】  ありがとうございました。
 これも質問、御意見あるかと思いますが、なでしこを出されるとなかなか皆さん、顔が明るくなるのでいいなと思います。ありがとうございました。
 それでは、山本委員にお願いします。

【山本委員】  山本でございます。できるだけ時間の中で説明させていただきたいと思います。私が日本病院会の会長として最後に取り組んだのが地域医療の崩壊から再生をどうするかというテーマでございました。その前提として地域医療をどう見える化していこうかということを考えまして、それが現在の日本病院会の会長の堺会長に、今日ここに一緒に来ておりますけれども、この仕事を続けていただいているわけです。というふうなことで、地域医療の需給のバランスを図る仕組みをつくるために地域医療をどう見える化してゆこうかという話でございますので、よろしくお願いいたします。
 これは医療需給を可視化する要素ということで、後で見ていただければよろしいかと思います。可視化する要素として、まず、いろいろな商圏、自動車で言いますと30分商圏、1時間商圏といったようなもの、電車の商圏とか、同心円商圏、行政区界の商圏、こういうふうなものを設定いたしました。この一つ一つの商圏にはデータとしては人口構成、年齢別、性別、所帯数、高齢世帯、病院・診療所の数と分布、それから、収入階級別の所帯数とか、コンビニがどこにあるとか、そういうものを一つ一つの商圏が全部持っております。そして、8,700の病院があって、その一つの病院の例えば10キロ商圏で言うと、その中にどういう病院があって、どういう診療所があって、どういう環境にあるかということを全部データベース化して一緒に持って動くという形で処理をしております。
 2番目の病院個別の患者分布、これにつきましては個々の病院の基本情報が全部入れてあります。診療科とか、機能とか、施設基準とかは入力済みですが、レセプトのデータはこれから入れるのでまだ入っていません。それから、4番目の医療の需要データベースでございますが、これも人口構成で、年齢別、性別、疾患別の患者数、それから、疾患別の疾病発生率等々のデータを全て入れております。これはデータベースは厚労省のデータと、それから、大学の場合は大学の概況報告、文科省のデータその他を使っております。それから、5番目の医療供給のデータベース、これは病床数とか、病院の医師数とか、モダリティ、CT、MRIがどこにあるかというふうなことを全て含めて、それをGIS-Calculationで処理しようというものでございます。
 こうした形での地域医療の見える化について、サンプルをお見せしますと、こんなサンプルが出てまいります。外科(外来)、内科(外来)とか、それから、疾患別にどういうふうに分布されるかとか、それから、脳梗塞等々、推計患者数、自分の病院では脳梗塞の患者の吸引力はどのくらいかといったようなことも出てまいります。それから、MRIのプロットについては、ここに書いてございますように、いろいろなレベルのMRIがありますが、それが全国のどこでどういうふうにあるかといったようなことが全て見られるようにいたしました。それから、CTのプロット、これも全部分かるように入れたわけでございます。それから、がん拠点病院がどうなっているか、あるいは救命救急センターがどうなっているか、こういったようなことをデータベース化して入れています。
 こういうものを使って、今回、大学病院の見える化の試みということで一部やってみました。例えばこれは総人口、いろいろ色がついている濃さが人口の多いところ、少ないところで、ポチが大学病院のあるところでございます。それから、これは病院数と大学病院の分布、大学病院以外の病院がどういうふうに分布しているかといったようなことを示しております。さらには病院数、これは都道府県単位と二次医療圏単位と市区町村単位でデータを全部持っておりますので、病院数、市区町村単位で言いますと、ここに数が入っていますが、これが病院数でございます。この2002年と2008年を見ますと、例えば盛岡のところが大きく上がっておりますが、これは市町村合併によってこういうふうになったということまで分かるようになっております。
 それから、これが病床数の見える化でございます。それから、外来患者数はこんなふうに、こういうのが患者さんが多いということでございますけれども、市区町村のデータをお見せしております。医師数でございますが、市区町村の医師数、これは例として今、東北を出していますが、北海道から沖縄まで全部この数字が今見えるようになっております。ここで見ますと、こんなふうな数字が出てまいります。更にベッド100床に対して医師が何人いるかといったようなことも見られるようになっております。それから、医育機関と医育機関以外に分けまして、医育機関以外の病院の勤務、医師というもの、これで面白いのは、この盛岡のところを見てみますと、401という数字がございますが、医育機関以外の盛岡の病院数があって、そこに勤めている医師が401人、それに対して大学が一つありますが、これが411人、大学一つで盛岡市のほかの医師よりもずっと多いというふうなところが目で見えるようになる。こういうことでございます。これは脳神経外科の数でございますけれども、大学にたくさんいて周辺にはいませんが、実際に脳神経外科の患者さんの分布は非常に広い。バランスが悪いです。こういうふうなことが分かります。
 そして、大学がどういうふうにできてきたのだろうかということでございますけれども、1970年に47大学あったのが、現在は、防衛医大を入れて80ですけれども、関東だけでこの間に12増えたということですね。だけど、東北とか北海道では余り増えていない。さらには先ほど話が出ましたけれども、大学の分院が関東だけで33も増えたということが見えてきます。これを医師の適正配置、地域医療という視点からどう考えるのでしょうかという問題がございます。
 北海道、東北地域、それから、中部地区、大阪地区、四国、九州といったようなものが出てきます。関東はこんなふうになりますけれども、分院がこんな形で、要するにここに人口がたくさんいるところに集中して大学病院も分院もあるということがよく目に見えます。どういうふうに増えてきたかというのをお見せしますと、年代を追ってこんなふうに増えてきます。それを見てみますと、分院も本院も含めてこの2002年から2006年で増えたのは40病院が本院で、40病院が51.3%ですけれども、増えています。減ったのは15%、あとは、3分の1はほとんど変わらない。要するにこの間の2004年で臨床研修が始まりましたが、大学病院の医師の数は、臨床研修と関係なく増えたり減ったりしているということがこれを見ていくと分かります。最高に増えたところは、本院で208人増えたところがございますし、大きく減ったのはちょっと危険ですけれども、マイナス173人も減ったというところがございます。
 これを動画で見ていただきます。これは一つ一つの丸が大学病院の病床の大きさで丸の大きさが違いますけれども、これが年度によって上へ上がったり下がったりする。医師の数が増えたり、患者さんが減ったりということが動画として見られるようになっています。こうしたものを見ますと、80大学の病院の医師が増えたり減ったりというのは、決して臨床研修のことだけではなくて、それぞれの大学の立場、経営戦略その他があっていろいろなことで起こっていることが見えてきます。その中で非常に厳しく医師の数が減ってきている病院もありますし、それから、増えてきている病院もある。大学それぞれによって大きな変化がある。そういうことが目に見えるようになるということでございます。
 以上でございます。どうも時間超過で失礼いたしました。

【安西座長】  ありがとうございました。
 それぞれ山本委員も含めて大変貴重な御意見を頂いたと思いますが、今まで4人の委員の方々からお話しいただいたことについて、何かご質問、御意見、特にありますでしょうか。これから自由討議にさせていただきますので、その中でも構いませんが、よろしいですか。
 それでは、後で平井委員が遅れてこられますので、来られたら御意見を頂くことにいたします。自由討議に移らせていただきまして、先ほどの生坂先生のヒアリングのお話もそうでありますけれども、今の委員の先生方のご発表も含めまして御自由に御意見をいただければと思います。それにつきましては、論点整理の素案というのが出ておりますので、それを事務局から説明していただいて、そこで自由討議にさせていただきます。

【渡辺企画官】  そうしましたら、事務局から資料7について御説明をさせていただきます。論点整理の素案ということで前回の検討会以降、このように項目を整理して文章化をしてみたものでございます。初めに目次のところで見ていただきたいと思いますけれども、「はじめに」というところと項目が1番から8番まで、そして下になりますけれども、本論点整理以降、引き続き議論が必要ではないかという事項として3点ほど挙げているというような構成にしてございます。
 論点整理の素案、次のページ、1ページに行っていただきたいと思いますけれども、「はじめに」というふうに小さい字で書いてあるところでございますけれども、これについては、この論点整理の素案の位置づけというか、概要的なものにつきまして記載をしているところです。背景ですとか、医学部入学定員の背景ですとか、この検討会の検討経緯、そして規制改革会議で出されています事項、そして本検討会において議論されてきた事項、そしてまた今後の議論の持ち方のイメージというようなことで記載しております。
 中身に移らせていただきたいと思いますけれども、2ページ以降のご説明をさせていただきます。1番目の項目が医師の配置やキャリアパス等についてということでございます。下線を引いてございますのは、頂いた御意見を踏まえまして事務局で肉付けをしていった箇所というようなことで御理解、御認識いただければと思ってございます。初めにキャリアパス等についてということで、地域偏在や診療科偏在についてということで、前段の方で現状を書いていってございます。
 対応については、地域枠を持って進めてきたけれども、このようなことの活用を積極的に図っていくことにより対応していくことが必要ではないかというような書き方にしております。2番目が医師のキャリアパスについてということでございまして、これも前段で現状的なところを書いていってございます。まとめ的な記載といたしまして3ページになりますけれども、医師のキャリアパスを考慮した弾力ある人事システムを構築していく必要があるのではないかというようなまとめ的な記載にしてございます。
 この項の3番目が医師派遣システムの再構築ということについてでございますけれども、前段の方で現状を書かせていただいてございまして、まとめの部分になりますと、下から三つ目のポツになりますけれども、大学病院の医師派遣システムの再構築に当たっては透明性を高める観点から講座単位ではなくて、大学として医師派遣を行う体制の構築が必要である、ですとか、地域医療支援センターの運営に当たって、大学病院がしっかりと関与していくことにより運営をしていくべきではないか、というようなまとめ方の案とさせていただいてございます。
 2番目が医師の勤務・診療に関する環境整備というものでございまして、医師の勤務の環境の現状を幾つか書いております。対応案的なところで言いますと、医師以外の医療人をできるだけ現場に増やして医師の負担を軽減するというような方向があるのではないか、いいのではないかというようなことでしたり、今、先生からも御発表いただきましたけれども、女性医師の離職を避けるという観点から復職支援プログラムの実施ですとか、院内保育所の整備等をしっかり図っていくことが必要であるというような案としてございます。
 3番目が地域枠の活用等による地域医療の充実についてというものでございますけれども、これも前段の方で現状を書いております。実数といたしまして、平成22年度現在で、67大学で入学定員の1,171名の地域枠が設けられているというような現状を書いていってございます。5ページの方に移っていきたいと思いますけれども、結論的な記載ということで言いますと、このような地域枠の取組を引き続き検証しながら伸ばしていくという方向性ではないかということであったり、最後のところは地域の医療機関等と連携協力していくということは、地域枠の学生のみならず、全ての医学生に対して基本的な資質として教育されていくべきことであるといった記載としてございます。
 4番目が基礎研究、イノベーションを担う医師の養成、充実についてというものでございまして、ここでも2ポツ目にありますように先ほども若干触れられてございましたけれども、現状、基礎教育に進める者の現状ということで書いていってございます。基礎の研究医が活躍することの重要性ということが中段の方で書かれてございまして、対応の方向性といたしましては、下の方になりますけれども、研究を志向する医師が研究費やポストの面で不安を感じている点について、それをしっかりと支援していくような方向が必要ではないかですとか、最後になりますけれども、臨床研修に進む間に研究を志向するモチベーションを低下させてしまわないような方策が必要ではないかというような記載としてございます。
 次、6ページ目でございますけれども、国際貢献等グローバルな視点で活躍する医師養成の充実についてというところで、現状認識といたしまして日本国におきましては教育面、研究面、医療面で貢献がされているというような記載に続きまして、対応案と方向性の案ということで言いますと、日本の医学教育を国際水準から見て遜色のないものとしていくことが必要であり、また、WFME――世界医学教育連盟のスタンダードに基づくプログラム評価を受ける場合の環境整備を促進していくという方向を持っていくべきではないかというような書き方をしてございます。
 7ページ以降になりますけれども、6番、7番、8番の項目については、今後さらなる議論が必要と思われる点ということで書いてございまして、副大臣からもより多くの論点出し、意見出し、漏れている視点はないか御議論してもらっていただければということで言われております。総合医の養成の必要性につきましては、そこにありますように総合医の必要性が書いてございまして、また、総合医の養成のための教育についてということで7ページの後段の方で幾つか書いてあるところでございます。
 駆け足で申し訳ございませんけれども、先に進みます。8ページ、医学教育の改革についてということで言いますと、六つほどの丸で記載をしてきてございますけれども、カリキュラムの改革の必要性についてということで言いますと、これまで策定してきた医学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂の柱に沿って、しっかりと充実させていくことが必要であるというようなこと、そしてまた各大学の特色ある教育ということで言いますと、今までの先生方の御意見を記載させていただいてございますけれども、大学ごとの設立の理念や特色を踏まえて、特色ある教育をしていってもいいのではないかというような記載にしてございます。
 3番目が一般教養の在り方ということでございますけれども、例えば、最後の方で記載してございます6年間を通じて医師として必要な教養を学ぶことができるようにする等、上記の大学カリキュラムの充実、工夫が進むことを期待したいというような書き方にしてございます。
 4番目が診療参加型臨床実習の充実ということで書いてございますけれども、その充実をしていくという方向感につきましては皆さんの御認識であると認識して書いてございまして、更に先生方から出された意見の幾つかを紹介しているところでございます。
 続きまして10ページになりますが、5番目、地域病院等と連携した教育の充実ということで言いますと、地域の病院等々しっかりと充実していくというようなことが非常に重要なことということに基づきまして、各種の連携方策というようなことを幾つか記載しているところでございます。
 6番目が大学入学から卒後までを見通した教育の充実ということで記載してございますけれども、例えば紹介いたしますと2ポツ目なのですけれども、志ある医学生の確保のためには各大学や自治体が行っている奨学金や授業料減免のように、能力と志のある若者が経済的理由のみで医学部への進学を断念することのない道を開くことも重要であるというような記載も入れ込ませていただいてございます。
 大きな項目の8番目が今後の医師養成体制の充実についてということでございまして、1、大学における指導体制の充実の必要性ということで、先生方から出された意見といたしまして、定員増に見合うだけの教員増が行われていないのではないかという意見も書かせていただいてございます。
 具体的な充実の方法ということで2番のところで幾つか例示的に書かせていただいてございますけれども、数の問題だけではなくて、効率のよい効果的な教育を行う工夫が必要であるという意見ですとか、その次になりますけれども、上級生から下級生、研修医から学生への指導など様々な形での学習ができる仕組みを生かすということも必要ですとか、臨床医のキャリアパスが見えるようにする、また、大学が若い医師に将来の青写真をしっかりと見せるようにすることが必要といった御意見も出させていただいているところでございます。
 以上が項目の8番でございまして、最後に12ページ、13ページ、14ページでございますけれども、以下の論点については本論点整理以降も引き続き議論が必要ではないかということで、医師数の推計について、今後の入学定員増について、新設による対応についてということで3点挙げさせていただいてございます。医師数の推計については、そこにあるとおりですけれども、現時点では医師の需要が供給を上回っていることや将来的に医師の供給が需要を上回る時期が来ることについては、おおむね意見が一致しているというようなことで書かせていただいてございまして、最後のところでございますけれども、そこで今後の入学定員の在り方については、以上の推計の特性も踏まえつつ、議論を進める必要がある、今後、引き続き検討していく事項ではないかということで挙げさせていただいてございます。
 入学定員増についてということでは、3行目のところですけれども、既存の医学部入学定員の増員による対応と大学医学部の新設による対応が論理的には二つあるのではないかというようなことに基づきまして、これまでに出された意見を幾つか述べていってございます。医師不足対策として入学定員増で対応することとした場合のメリットとして、将来、医師供給に超過が生じた場合に定員減に転ずるなど需給状況を踏まえた柔軟な対応が可能ではないかと考えられるというようなメリット的なことも記載をしていってございます。また、その次のスペースで書いてございますのは、経費の説明といいますか、費用の問題についても十分に議論を膨らませていくべきではないかという御意見を書いてございます。
 3番目が新設による対応についてということでございまして、現下の医師不足への対応として、前述の入学定員の増員による対応のほかに大学医学部の新設による対応も考えられるということで、これまでに出された幾つかの意見をここでも書いてございまして、最初の二つが賛成的な意見で、14ページに入りますけれども、三つ目、四つ目、五つ目の丸がどちらかと言えば反対的な意見を記載してございます。また、下線で書いてあるところでございますけれども、医学部を新設することとした場合、医学部の地域偏在の解消につながるとともに、総合医など新しい医療ニーズに特化した医師養成が可能になるなどの利点があるとの指摘があるというようなことで、医学部を新設することとした場合の利点ということについても記載をしてございます。
 最後になりますけれども、いずれにせよ、現下の医師不足対策として、現存の定員増による対応と医学部新設による対応とのいずれがふさわしいかについては、現時点では結論を出すには至らず、今後、国民的議論を深める必要があるというようなことで記載をしているところでございます。積極的な御議論をいただければと思ってございます。

【安西座長】  ありがとうございました。
 それでは、今から16時ぐらいまで自由討議とさせていただきます。今、説明がありました論点整理の素案もいろいろ御意見があるかと思いますし、先ほどからのいろいろな先生方のお話についても結構でございますが、どうぞ御自由に御発言ください。
 中川委員、どうぞ。

【中川委員】  まず、議論を始める前に、この論点整理の位置づけを説明いただきたいと思います。例えば本文中の下線部分は何を意味するのか。それから、最初のページ、1枚目の「以下は、特にさらなる議論が必要と思われる項目」、最後は「引き続き議論が必要」、一体誰がこういうふうに決めたのか。なぜこの時点に論点整理がこのように素案として出てきたのか。誰がいいんでしょう、村田課長ですか。答えてください。

【安西座長】  どうぞ。

【村田医学教育課長】  この資料は冒頭申し上げましたとおり、今までのご議論を踏まえて、座長からの御指示も踏まえながら事務局で作成させていただいた資料でございます。作成をして御提示申し上げた趣旨としては、先ほど冒頭、副大臣のお話もございました、現在まで8回を数えて、8か月程度、大変長い期間、先生方に積極的な御議論を頂いてきたわけでございまして、少しこの時点で今までの御議論を整理させていただいて、何が検討会の中である程度方向性が一致しているのか、何が逆にまだ議論が足りていない部分があるのか、あるいは何が対立しているのか、そのあたりを少し全体の見取図といいましょうか、全体を眺めていただく論点整理をつくって、更に御議論を深めていただければいいのではないかということで、座長とも御相談の上、出させていただいたものでございます。
 それで、整理の仕方はそういう意味で体系的にというよりも、むしろ今までの御議論を振り返って、ある程度方向性が一致しているのではないかなということと、それから、逆にまだこれから御議論いただく必要があるのかなと、そういうことで整理をさせていただきました。それで、基本的には御覧いただきますとおり、今まで委員の先生方からの御発言をできるだけ網羅的な形でピックアップをさせていただいたということでございますけれども、一部全体の整理の中で少し頂いた御意見に事務局として肉付けをしてまとまりをつけたという部分がございます。そこの部分は委員の先生方の御発言と区別するためにアンダーラインを引かせていただいたと、そういう形で資料を提出させていただいたものでございます。

【安西座長】  どうぞ。

【中川委員】  事務局として少し肉付けをした割には下線部分が多過ぎます。課長、前任者からの申し送りでこう肉付けしたんですか。

【村田医学教育課長】  それは私個人というより、まさにこの御議論いただいたことを大切にしながら、先ほど申し上げたような観点で整理をさせていただいたものでございます。

【中川委員】  例えば7ページの総合医の必要性、随分いろいろなことが書いてありますけれども、こういう議論が委員から出ましたか。ヒアリングの中でもこれだけの1ページを割くような議論、意見が出ましたか。

【村田医学教育課長】  そういう意味では、繰り返しになりますけれども、委員の御意見と区別する意味でアンダーラインを引かせていただいた。ただ、その分量が多いという御議論はあるかもしれません。そこは本日、御議論いただければと思っております。

【中川委員】  私が何を言いたいかというと、こういう検討会に事務局として論点整理というものを出すと、これはいつまでも残って議論の方向性を制限するんですよ。事務局が議論をリードするのではなくて、議論は座長がリードするんですよ。課長、申し訳ないが、端々に座長と相談しながら、相談しながらって、そういうフレーズはやめてもらいたい。事務局として責任を持ってもらいたい。いいですか。

【村田医学教育課長】  座長、よろしいですか。

【安西座長】  どうぞ。

【村田医学教育課長】  そういう意味では、私ども独断でということではなくて、繰り返しますけれども、まさに安西座長とも御相談しながら、御指示を踏まえて作成したものでございます。

【安西座長】  私の方からもお答えをしておきたいと思います。まず、7ページの一番上のところに、特にさらなる議論が必要と思われる項目とありまして、それから、12ページの一番上のところに引き続き議論が必要だと考えられると、こういうことに一応分けてございます。大体、こういうことかなということで事務局にはこういうふうにしていただいておりますけれども、そうではないよということがあれば是非頂きたい。私自身は、この委員会の総意をもって、それで進めていきたいと考えておりますが、一方で、ある程度こういうたたき台というんでしょうか、それは出していただかないといけないので、そういうことでやらせていただいておりますので、先ほどから申し上げておりますように、どうぞ忌憚(きたん)のない御意見をいただければと思います。
 それから、下線が引いてあるというのは、むしろこういうときに事務局が何となく刷り込ませることがよくあるので、むしろ逆に下線を引いてもらったということでございます。この種の委員会でそういうことが起こりがちなので、むしろそれを控えるようにしてもらっております。したがって、もし下線の部分が多過ぎるという、今の中川委員のような御意見もあるかと思いますので、それは私自身は委員の皆様の御意見の分布に沿って、それで進めていきたいと思いますので、今の御意見も大変貴重だと思いますので、どうぞそういうことも含めてここで御指摘いただければと思います。そんなことは言っていなかったじゃないか、こういうことがあれば、むしろ是非御指摘いただきたいと思います。
 どうぞ。

【今井委員】  内容に少し入らせていただきますが、今日のお話も私伺いまして、主に今の素案というんですか、論点整理の中では12ページ、13ページというところに関係するところで意見を述べさせていただきたいと思うのですが、一つは今日いろいろな団体の先生方からの御発表も頂いて、女医さんの問題も桑江先生から、なでしこジャパンも入れて教えていただきましたけれども、医師数の部分で議論に上らなかったといいましょうか、メンションされなかったこととして、私どもが今まで述べてきたのでやや時間がないせいもあって抜けたのかもしれないのですが、医療ニーズとしては増える、ちょうど12ページの真ん中辺ぐらいに二つ目の丸、人口は減少するけれども、65歳以上の人口は非常に増加してくるわけでありまして、これは非常に考慮すべきであるというのは私も申しましたし、それから、多くの方が認識されているとおりでございます。
 これによって医療ニーズというのは若い方もあるわけですが、65歳以上に特に多いので、そこの部分というのは大きいというお話を前にもさせていただきましたが、そこは多分、20%か30%、病気によっては35%ぐらい増えるわけであります。一方、医師数はどうかと言いますと、それがここに書いていないのですが、確かに少しずつ入学定員を増やしていただいて、つまり、医師数は10数%ぐらい増えるのですけれども、総体として見ると、だんだん医師も患者さんと同じように高齢化するわけでありまして、医師の方も、つまり、患者を診る側(がわ)も高齢化していくということを考慮に入れるべきであるということを私、この間、申し上げました。ですから、実際には60歳以下ぐらいの医師、非常にアクティブに患者さんを見られる医師の数はそんなに増えないんですね、この方式でいくと。そこのギャップというものを非常に感じますので、そこが一つどこかに書いておいていただきたいと思いますね。
 もう一つは、東西格差といいましょうか、場所によって、特に歴史的にも西側は比較的医学部が多いのですが、東側、埼玉とか、茨城とか千葉も含めて、東北地方はもちろんですが、北海道、そういったところは明らかに医学部の数も少ない。それによって、先ほど少し地図でお見せいただきましたように、西側に比べるとまばらな形になっている。これが現状だと思うんですね。特にこういうふうな震災が起きたりしますと、それが非常に顕著に出まして、特に東北地方では大変な状況になっているということがございまして、そういうようなことを将来にわたって考えていくのでしたら、やはり東側の医師を増やすような方策というのも今後必要なのではないかと思います。
 それからもう一つ、すみません、これで最後なのですが、これもメンションされていないと思うのですけれども、医師の労働時間が非常に長いわけです。今、多分、若い人だと70時間とか80時間という非常に過重労働、この中でそれを前提にしてこのいろいろなことがそのままいったとすればということで考えられているのですが、これを是正しなければいけない。これを是正するということは、すなわち医師数を増やさなければ、これはなかなか是正できないわけで、そういう観点も是非取り入れていただきたいと思います。それから、女性医師もそこで増えてきますので、先ほどの桑江委員の詳しいお話もありましたけれども、女性医師に十分働いていただける環境をつくるのが非常に重要なのですが、間違いなく女性医師も次々に増えてまいりますので、そこのことも今後考慮に入れる必要があると考えます。
 以上でございます。

【安西座長】  ありがとうございました。
 どうぞ、西村委員。

【西村委員】  恐れ入ります。意見というか、質問をさせていただきたい。桑江委員と生坂先生に少し伺いたい。別の質問なのですが、発想は全く同じでございます。先ほど桑江委員の話で分娩実施率の男女の違いが年齢とともに変化するという点です。これはどういう要因か、もう少し細かく分かったら教えていただきたいある年齢を超えられた方が、後ろの方で育休とか産休が取得しやすくなるのでしょうか。
 それから、同時に、そもそもある年齢を超えた方の実施率がむしろ男性は下がらない方が不思議なのです。ある年齢を超えれば余り実施されない方がいいのかというようなことも含めてうかがいたい。何でこういう質問をするかというと、桑江先生の御意見、私は全く賛成でございまして、私は社会保障・人口問題研究所におりますから、是非ともこれから日本の社会は女性の力が発揮される社会になるためにということを懸命に考えておりますので、そういう趣旨の税制の話とか全く賛成でございます。しかし、ここのあたりはこれからどういうふうな形で進んでいくのがいいか。一つは恐らくリスクの問題がございますね。もっと細かく言うと、分娩するかもしれないという予想をある女性が、間もなく産むかもしれないと予想したときに、そういうことをどういうふうに考えて待機しておられるのがいいかというようなことと、女性医師のワーク・ライフ・バランスはどういうふうな関係であったらいいかというのは、もう少しヒントを教えていただくと有り難いと思います。
 私は何でこういうことを申しているかというと、日本社会全体が今、経済的にもよくないのは、キャリアチェンジをこれからもう少し余裕を持ってできる社会をどうやってつくるかということで、社会保障としては若年者の積極的労働市場政策といって、キャリアチェンジをもう少し余裕を持ってできる社会をどうやってつくるかという発想で、今、質問を申しております。
 もう一つは、生坂先生に質問させていただきたいのは、これは中川先生の御意見も伺いたいのですが、ある時期まで専門医でおられた方が、総合医として仕事をされたいと思ったときによく聞く話は、一定期間、御本人は研修は必要だと思われる。もしその間、専門医として超多忙な時期を抱えながら、総合医としての研修をやるというのはなかなか難しい。例えば2年間なら2年間、所得の保障があってそういうことができるような仕組みができるかというと、私は明日から専門医をやめますと言わないと、そういうことはできない。そうすると、そこの転換の何かいい知恵というか、いいアイディア、もちろんそれは当たり前で人によって違うわけで、非常に適応力のある方は短期間、そうでない方は長期間というのは当然ですが、仕組みとして、もう少し、例えば専門医が総合医に転換されるための何かいい知恵とか、アイディアというのはないんでしょうかというのが質問です。

【安西座長】   桑江委員、どうぞ。

【桑江委員】  お産というのは予測できないところへ持ってきて、計画的にやるのも難しい作業なんですね。そうすると、ほぼ救急医療と同じとお考えいただければいいのですが、24時間、365日分娩はありますし、飛び込んでくる、急変する、重症になることが予測できない、そういった世界です。そうすると結局、それを今まで歴史的に中川先生がいらっしゃる医師会の先生方、先輩は、お産が好きだから産婦人科になられて、お1人でずっと開業されて、もう本当にどこにもいらっしゃらなくて、そこでお産をとっていらっしゃる方というのは今でも大変多いんですよ。そういう方たちが日本のお産を支えてきています。今現在は、大体、日本でお産が106~7万とかあるのですが、大体半分は開業の先生方がとっていらっしゃるんですね。地方はそちらの方がむしろ多い。どちらかというと都会の方が病院で分娩することが多いんですね。
 そうすると、そういう場面、自分がいなければお産ができない。そこで、じゃあ、産休、とれますかということですね。実際問題、産婦人科学会が調べました統計によりますと、県立大野病院のことがあったので初めて、お1人でどのくらいやっているかということを調べたわけですね。県立大野病院は基幹病院です。基幹病院ということは、ハイリスク分娩を送ってくる場所、にもかかわらず、そこは常勤医はお1人しかいらっしゃらなかった。実は3人以下で分娩を扱っているところが全体の、正確には忘れましたが7割近く、六十何%が3人以下でやっていたところです。いわゆる周産期センター等々、医者が6人、7人、8人、9人いなければいけない場所というのは本当に少なかったということが初めて分かった。
 結局、今まで開業医の先生方がお1人でお産が好きだという、その1点だけで女性の体を守り、赤ちゃんを守ってきたわけですね。ところが、その伝統にのっとった場合には、そこが女性の場合には自分は赤ちゃんを産めないんですよ。ということがあって、結局、先ほど幾つか目のスライドに示しましたように、お子さんがいない方、結婚してもお子さんがいない方、あるいは結婚されていない未婚の方、もともと産婦人科の女医さんは未婚率が高いので非常にがっかりしているのですが、そういう方は男性とまず同じく分娩を扱っていらっしゃる。皆やっぱり好きで産婦人科になっていらっしゃるんですね。

【西村委員】  私は大体状況は分かっていますので、どうしたらいいのでしょうか。ワーク・ライフ・バランスをもう捨てるしかないだろうというのではないでしょう。

【桑江委員】  まず、集中と選択をするというところと、やはり複数でやらなければいけないだろうということです。複数でやった場合には交代できるということですね。ですから、今までの方々は頑張り過ぎたというのが、私たちの感想もありまして、今、一つお産で、例えば母体死亡があったら、産婦人科の医者としてやっていけない状況になってしまっているんですね。医療訴訟が起きますので。ですので、もう複数、あるいは交代制ができるぐらいの固まった――そうすると多少アクセスは悪くなるんです。先ほどの総合医の先生がおっしゃったのはそのとおりなのですが、多少アクセスは犠牲にしてもやはり安全と、医者が働き続ける環境を重視するために、私たち産婦人科の医者としては、若干アクセスは犠牲にして、あるいはハイリスクになったらすぐ受けられるようなところに複数いれば、そこにはいらっしゃれるので。
私としては、人数が多いところを少なくつくればいいと思います。

【西村委員】  はい。分かりました。

【安西座長】  ありがとうございました。
 どうぞ、中川委員。

【中川委員】  専門医が総合医になるのは大変だという趣旨ですよね。生坂先生の資料の1を少し御覧いただきたいのですが、2枚目ですけれども、1ページの裏側、大変納得できることをお書きになっていて、下から12行目ぐらいで、「つまり、日本では専門医が総合医化し、一人二役をこなして安価なフリーアクセスを堅持し、世界トップクラスの健康指標を獲得してきたことになる」とお書きになっている。全くそのとおりだと思うんです。これはいい意味で日本の医療システム、医学教育、それから、いわゆる医局制度、これがいいように機能してきた一面だと思います。今までの医師はそうでした。
 前回は日本医師会の提案を説明させていただきましたが、5年生、6年生で参加型臨床実習をプライマリ・ケアを中心にやって、臨床研修1年目で、いわゆるプライマリ・ケア能力を獲得する。2年目は専門に特化した形でプライマリ・ケアを勉強するのだと。そして引き続き専門科に行ってもプライマリ・ケア能力というのは、皆さんそれぞれ磨いていくべきだ、今までどおり磨いていくべきだと思うし、開業するときになって新たに研修する必要は、ある程度はあるかもしれませんけれども、そんなに大変でなくてもいけるだろうという能力のある医者をこれから育てていくべきだというのが我々の提案です。

【安西座長】  ありがとうございます。
 生坂先生、どうぞ。

【生坂政臣氏】  どのくらいやれば――例えばアメリカでは3年です。きちんとした卒前教育を受けて、その後3年でプライマリ・ケアの基本ができて、そこから成長して生涯教育で固めていくということで、3年目でギリギリというところですね。カナダでは2年と、そういうふうになっています。日本では従来はナンバー内科で、わりとジェネラルな教育ができて、それから開業という、そういう先生方が大半を占めていますので、私はペーパーテストでブラッシュアップしていただければ、それで十分だと思います。特別な研修は必要ないと思います。
 ただ、今、初期臨床研修が2年から1年に事実上、短縮されました。今後、卒前にきちっとした診療参加型の研修がプライマリ・ケア設定でできなければ、その後、完全に臓器専門研修に分かれてしまいますので、実は以前のようにはジェネラリストが育っていかないのではないかという懸念しております。ですから、今後の教育がどう変わるかということになると思うのですが、私個人の意見としては、まずはペーパーテストに合格して、きちっとブラッシュアップしてもらえれば、それなりの総合診療を提供していただけるのではないかと期待しております。ただ、現状では、そのペーパーテストすらない状態ですので、その制度設計が先決です。

【安西座長】  ありがとうございました。
 平井委員がお見えになっておられまして、資料も出されておりますので、御意見をいただければと思います。

【平井委員】  ありがとうございます。安西座長を始め、皆様におかれましては、これまで地域医療を担う人材の確保につきまして大変な議論を重ねてこられたわけでございまして、感謝を申し上げたいと思います。特にこれから中間報告をまとめられると思いますけれども、地方の方では医師不足が大変に目立っている状況がございまして、本委員会にかける地方側の期待も高いものがございます。是非とも実り多い議論をして結論を出していただきたいと思います。
 今日は、生坂先生が総合医のお話をされましたけれども、お伺いしますと生坂先生も鳥取大学の関係でいらっしゃいまして、鳥取から千葉の方へと流出をされたわけでございますけれども、機会があればまたふるさとに、お越しいただければと思います。
 私どもマクロの問題とミクロの問題がございまして、マクロの問題としてのトータルの医師数のこと、それから、ミクロのそれぞれの地域のことが大切だと考えております。資料の5番目に地域医療を担う人材の確保・養成についての意見という資料を提出させていただきました。まず、後ろのページをめくっていただきますと、これは厚生労働省の御調査によるものでございますけれども、平均してみますと全国で1.14倍、必要医師数が現員を上回っています。これについてはいろいろな解釈があろうかと思いますが、かつて長谷川先生の試算もございましたように、なかなかこの辺の数の判定が難しいことは重々承知しておりますが、私どもではこういうように地方側、どこの都道府県に行っても足りないということをよく言われます。東京都も数字としてやはり1を上回っていることになっておりますし、一番倍率が高いところ、医師が不足しているところは岩手県で、今、震災で苦しんでおられますけれども、1.40倍というのが昨年のデータであるということでございます。
 これも診療科目によっていろいろと違いがございまして、桑江委員も先ほど切実なお話をされていましたけれども、産科でありますとか、それから、救急科でありますとか、そうした科目において、すごく足りなくなっているというのが下側の図であります。したがいまして、トータルでの医師の問題と、それから、ミクロでそれぞれの地域、あるいはそれぞれの診療ができる体制を整えるということを是非念頭に置いて解決をしていただきたいというのが、私どもこのたび全国知事会、各知事に照会をしました結果出てまいりました。
 お戻りいただきまして意見の1番目でございますけれども、この調査のとおり医師不足の状況がございます。特にへき地医療を担う医師、産科、救急科などの不足がございます。また、少数の医師で、先ほどお話にもございますように非常に過酷な対応を求められるような病院勤務医の状況もございまして、それが更に地方だとか、中山間地から人が離れていく、そういう負のスパイラルというのが見られるわけでございます。医師の絶対数が不足していますので、知事会として皆さんの御意見を総合しますと、医学部の入学定員を是非増やしていただき、着実に医師を増やしていただきたいというのが現場の考え方でございます。
 それから、ただ足りないということではなくて、いろいろな工夫ができるだろうという、この委員会で課せられた議論につきまして若干申し上げますと、2番でございますが、(1)として医師、看護師、コ・メディメカルなどの再整理などで対応していく、業務の負担感を軽減していくとか、先ほど来のお話にありますようなワーク・ライフ・バランスを保つような、女性医師への配慮などをやっていく必要があるということでございます。これも各県でそれぞれにやっておりまして、本県もそうであります。滋賀県も最近は産科が不足しているということで、助産師の活用を大胆に進め始めました。いろいろなことを現場でもやってはおりますけれども、国全体として是非アプローチをお願い申し上げたいということです。
 それから、(2)として医師不足が深刻な診療分野での業務軽減対策として、産科での助産師活用、あるいは救急医療への地域の協力、認定看護師の養成など促進していただきたい。更に宿直勤務後の一定の休養などの持続可能な勤務の在り方、これも現場の医師や看護師からよく出てくる話でございまして、我々としても地方側の意見として取りまとめをさせていただきました。
 また、3番でございますけれども、人口の高齢化に対応するために保健、医療、介護など制度横断的な保健師等との連携、あるいは住民参加による健康維持、増進、あるいはプライマリ・ケアの能力を持ったお医者さんの養成などが必要だと。そのような問題意識を私どもの方で持っているところでございます。これからまだ議論は続くと思いますが、やはり医師の絶対数、特に当面、医学部の定員の問題意識を地方側は持っていることを申し上げたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

【安西座長】  ありがとうございました。
 それでは、討議を続けさせていただきます。どうぞ。

【栗原委員】  平井委員からも鳥取は大変困っているのだというデータを出していただき、なるほどと思いました。しかし、地域で見ますと米子には結構医師がおります。山間部に行くといない。例えば知事、あるいは行政として、このような状況をどのようにして解決しようとお考えになっているのでしょうか。もし具体的な案があったらお聞かせいただきたいと思います。
 これは今までも問題になってきましたが、医師の地域偏在の問題をどのように解消するかということをそれぞれの県でまず工夫をしていただく。それでも解消できなければ、今、都市部にいる医師が、医師が少ない所に行って応援に行くというシステムを構築したらいいのではないかと思うのです。
 先ほど今井委員から御意見がありましたが、現在、入学定員はかつてよりも17%増えています。更にこれからまた増えます。単純計算で医療ニーズが20%増えていくと言われましたが、医師の数もこれから20%近く増えます。年とった方ばかりではなくて、これから出てくる医師は若い方ですから、十分戦力になり得ると思うので、そこら辺も考えていくべきではないかと思います。

【安西座長】  どうぞ。

【平井委員】  ただいまの栗原委員のお話でございますけれども、実は地域でいろいろなお医者さんがいます。口はばったいことも若干申し上げれば、鳥取の場合、あるいはよその県もそうでありますけれども、結構、医師の高齢化が進んでいます。それで、実際にはカウントとしては医師としてカウントされていますけれども、じゃあ、どれだけ地域で実戦力として期待できるかというものとの乖離(かいり)はそれぞれの地域にあります。また、高齢化が進んでおりますので、確かに鳥取県西部全体をとらえてみれば、医師の数、それなりにいるということになっても、山の中から交通手段もないのに、自動車も運転できないような高齢者がどうやったらいいのか。そういうようなことで非常に難しい課題がありまして、単純にその数字だけでは割り切れないものがあると思います。
 特に診療科目などによって、我々の近県の島根県でありますと隠岐島のような離島もあるわけでありますが、じゃあ、離島にいる方々が救急関係だとかということで果たして充足しているかというと、なかなか難しいという状況がございます。したがいまして、今、都道府県では随分普及をしてきましたのは、ドクターヘリのように患者を運ぶというようなやり方をやるとか、それから、お医者さん、私どももそうなのですが、ドクターバンクをつくりまして、できる限り周辺部へお医者さんを送り込んでいく、そういうことをやったりしています。ただ、それでも正直な話、実情を申し上げると町長の仕事の半分はお医者さん探しになっているというようなところが目立つのは正直事実なんですね。
 その意味で、その辺の解消を、今、先生がおっしゃったようにいろいろな事態とあわせて、あと我々の地方の実感としては、お医者さんの数、もう少し絶対数、先ほどの平均でも足りていないという感覚はございますので、増やしてほしいという意見が強いということです。

【栗原委員】  また、今設けられている地域枠で入学した学生がこれから出てくると思いますので、そういう効果も今後それぞれの都道府県では出てくるのではないでしょうか。そういうことも含めて検証するには時間を要します。医学教育は時間がかかりますので効果が出るまでにはタイムラグがあると思います。この点も十分に考慮した上で入学定員問題や医科大学新設について慎重に考えることが必要ではないかというのが私の意見です。

【安西座長】  中川委員、どうぞ。

【中川委員】  ありがとうございます。今、平井委員の御発言で少し気になったのですけれども、中間報告を取りまとめるって決まったんですか。

【安西座長】  論点整理を取りまとめというか、論点整理はつくらせていただくということになります。

【中川委員】  そういうことですか。ありがとうございます。
 それと、話は戻っていいですか。論点整理の13ページなんですけれども、そこで事務局の説明では3.の新設による対応のところで、上の丸二つが賛成であるというふうに、もちろん賛成と書いてあるんですけれども、そういうふうにおっしゃったんですけれども、この発言一つ一つが論点整理にこういうふうに書かれるのかなと、ちょっと違和感があるんですよ。
 例えば「既存の医学部の入学定員を増やしているが、教員も増えておらず周りの施設もないという状況。この対応を現場に強いるのは限界があり、医学部を新設すべき」というのが、なかなか趣旨が分からないといいますか、今、全国医学部長病院長会議でもそうですけれども、医学教育、本当に抜本的な改革を全国の医学部で、栗原さん、やられていますよね。私、それは非常に高く評価しているんですけれども、今の既存の医学部では限界があるから新しくつくるべきだということの論旨がつながらないのではないかというのが一つあります。
 それから、次の丸の「東西に偏在しているため、医学部を東日本に新設すべき」、これも足りないところには医学部をつくればいいのだという、そういう短絡的な発想ではないかと私は思うのですが、この2点は、こういうふうに論点整理にされると、しっかりした主張というふうに残ってしまうので少し懸念をしております。

【安西座長】  そうですね。私も多少、今まで出た個別の御意見と、それとまとめたものが混在しているような感じはしますので、そのあたりは整理させていただければと思います。ただ、どうしても抜けてくるところと入ってくるところが出てきてしまうので、そういうところは御指摘いただければ大変有り難いと思いますので。
 山本委員、それから、今井委員。

【山本委員】  栗原先生と平井先生のお話に関係するのですけれども、この論点整理の3ページの医師派遣システムの再構築という、この場は文科省ですから議論はどうしても大学中心になることはよく理解しておりますけれども、地域医療の再構築とか、再編かつそれを維持していこうというふうな仕組みは、医師の派遣だけではできない話だろうと思っています。
 そういう意味では、今ある地域の医療需要に対してどういう医療資源を再配分していくのか、こういう仕組みをつくることが非常に重要ではないかと思っております。そうした中で例えばここに大学の医師派遣システムの再構築に当たっていろいろ透明性うんぬんと書いてございますけれども、これは大学がそういう形で医師を派遣してくれるということであればいいかもしれませんが、大学の都合で派遣できませんというと、地域医療そのものが大学の派遣機能の有無によって左右されてしまう。そのような地域医療であってはならないと考えています。
 ですから、飽くまで基本的な仕組みというものがあって、その中で例えば、この地域だったら遠隔医療の推進でできるではないか、こういう患者についてはヘリで対応するとか、ここは医者が動けばいいじゃないかとか、そういうふうないろいろな地域での知恵が必要になると思っております。そういうことを踏まえてきちんとした医師を配置できる仕組みの中で、やはりここは大学が手を出さないとだめだよというところが本来の大学の派遣機能ではないかなと、思っておりますので、そんな視点でまとめていただければ有り難いなと思います。

【安西座長】  ありがとうございました。
 今井委員、それから、栗原委員。

【今井委員】  今の平井委員のお話に非常に賛同するものでありまして、私も北海道の医科大学の学長を経験しておりますが、北海道も非常に広大な地域でありまして、医師派遣には大変苦労してまいりました。いまだになかなかうまくいかないという現状がございます。これはいろいろドクターヘリとか、いろいろな仕組みを使いまして、それから、ある程度拠点化するとか、それから、そこに支援をするとか、北海道もいろいろな形で考えてはくださるのですが、いかんせん十分にはいかないということがございまして、そういったことをもう10年も20年も実は繰り返しているわけで、そういう手段はほぼ全国、多分、東北もそうでしょうし、いろいろなところで行われているわけですね。にもかかわらず、医師不足であるというところからこの検討会がスタートしているというのが私の認識でして、ですから、もちろん工夫するのはこれからも非常に重要ではありますが、なかなかそれだけではうまくいかないということがあって出ている議論だと理解しております。
 医師数の話も、先ほど栗原先生からの御指摘もありましたけれども、正確に言えば、そういう数字が、医学部の定員が何%増えるというのは事実であります。それから、医師数もある程度それに当然のこと、将来的には増えるわけでありますが、高齢の医師もどんどん増えますので、実質的にそこで働ける医師は、そう皆さんが考えているほど、数字から割り出すほど多くはないのですよということが1点。それから、労働時間のことを全く考えないでいると、やはりいろいろなところでまた問題が出る。例えば救急医療にしても、産婦人科にしても、小児科にしても、当直もして、翌日、診療をしているというのが実態なわけですから、そういうことも解決していかないと日本の医療はよくならないという観点から私は申し上げているつもりでございます。

【安西座長】  どうぞ。

【栗原委員】  山本委員が御指摘のように、大学が全て地域医療を解決できるとは思っていません。今ある医療資源、医療財源、これをいかに有効に使うかという仕組みをつくっていく。それに大学には、何と言っても人材がいるわけですから、大学も協力したいとういう主旨の発言であります。
 今井委員からも御発言がありましたが、確かに医師は高齢化しておりますも、私も65歳なんですけれども、我々のときには団塊の世代で人口はたくさんありますけれども、医師になれる比率というのが非常に低かったのです。およそ18歳人口、七百数十人に1人ぐらい。今は間口が広がったので百数十人に1人ぐらいが医師になれる時代になったのです。ですから、そこら辺のところも少し考えていただいて、我々65歳がもうすぐ高齢になりますから、医療ニーズは確かに高まります。しかし、それが過ぎると極端に人口の減少ということがありますので、そこら辺でまた大きな変革点が出てくるのではないかというのが私の指摘した点ですので、そこはよく御理解いただければと思います。
 以上です。

【今井委員】  2035年までは医療ニーズは増え続けるんですね。それはこの間、データで出したとおりで、つまり、2035年というのは今から24年後ですから、そこまでは医療ニーズは増え続けるので、そのギャップをどうするのかということを議論しているわけですね。さらに、2050年までその状態は変わらないのです。

【栗原委員】  もちろんそうですが、ただ、入学定員を増員したり、これから医科大学をつくっても、卒業した人たちが一人前になって働くまでには十数年かかるわけですね。

【今井委員】  もちろん。

【栗原委員】  今、喫緊の問題に対しては、今定員を増やしてもすぐには効果がないだろうと言っているのです。それまで十数年間を何とか乗り切る仕組みを今皆で先に考えた方がいいのではないでしょうかということです。

【安西座長】  ありがとうございました。

 今日、御発言のない方はいかがでしょうか。あと、私も多少のことは言わせていただきたいと思っておりますので。

【濵口委員】  よろしいですか。

【安西座長】  どうぞ。

【濵口委員】  先ほどもこのまとめのところで少し出たのですけれども、地域枠とか増やしても限界があるから新設しなければいけないというのは、これは現場を預かっている者としては非常に不愉快な表現なんですね。地域枠、1,200人も増やしていて、実際にはその1,200人に見合った教員の手当ても施設もやられていないんです。それもできないような状況で新設するということは、一つの大学で400億とかかけなければいけないことを決めるわけですね。そんな予算の余裕があったら、この1,200名をちゃんと育てていただきたいというのが現場の実感ですね。
 今、地域枠で少なくとも奨学金を出さない初期の人たちでもちゃんと地域に定着しているわけですが、奨学金を出して地域で定着させようとしても最長期間は9年なんですね。これを教育課程をもっと充足させて、彼らにやりがいを感じさせるような、しっかりとした使命感を与えるような教育体制をもっと投資をしていただければ、9年間で1,200人が働くのが、これが10年、20年と延びてくるわけですから、まず、今まで私の視点は、改革してきたことを最低限完全に生かすような形にしていただかないと、それを抜きにして新設だ何だと言っていても、これは本末転倒ではないかなと先ほどから感じておりました。以上であります。

【安西座長】  ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。

【黒岩委員】  7ページで総合医養成の必要性に関してですが、もう少し広い意味合いのタイトルにして、「総合医療を担う若い医師の養成」とするのがよいかと思います。総合医養成という言葉では、狭い表現です。専門分化は避けられない我々の医学の発展の道であったわけであります。「総合的な医療」は専門医病棟や、大学病院の病棟においてもそれぞれの専門診療科で全身を管理するという「総合医療」がなされているわけでございます。この「総合医療」は生坂先生が強調された、病歴を重視した診断をベースとすべきだと思います。それぞれの専門診療科においても、生坂先生が示した重要な内容を若い医師に教えていく必要があるわけでございます。生坂先生も鳥取大学の神経内科の御出身だと思うのですが、神経内科は問診を大事にする病歴診断が柱です。我々が、「総合医療」を担う若い医師を育てていくのには、十種競技ができる総合医療、総合医を育てるということも重要ですが、専門医集団の中においても「総合医療」が重視されていかなければいけないのです。そういう観点からこの6番のタイトルは、もう少し広く俯瞰(ふかん)できるようなタイトルにした方が、より具体的かつ実行的な対策を立てていくことができると思います。

【安西座長】  ありがとうございます。
 桑江委員、お願いします。

【桑江委員】  中川先生、いらっしゃらなくなったのであれなのですが、論点整理に関しましては、私もこれを送っていただいて読んだときに、まだ一応、素案と書いてあるので、今後、変えていうことを前提に出していらっしゃるのだろうなとは思うのですけれども、いろいろここで議論したことがそのまま入っている。プラス、アンダーラインの部分って、普通、アンダーラインというと、ここはすごく重要ということなので、私はここはすごく重要なことなのかなと思って読んでいたので、もしこれが事務局の方で膨らませた部分だとおっしゃるのであれば、それはあらかじめ最初の方に書いておいていただかないと、これは重要だと言っているけれども、こんなこと、誰か言ったかなという、非常にこの整理が残念ながら、ちょっと実感とは違うなということが一つあります。
 あと、医学部新設なのですけれども、私はこの委員会の委員のお話があったときに、ここである程度方向性を決めますということをおっしゃっていたので、そういう大事な会議ならばと思って一生懸命、必死になって出てきて、皆さんもお忙しいところ、ヒアリング等、大事な点などについてお話しいただいていたと思うんですけれども、そして最後に腰砕けになりそうになったのが、「今後、国民的議論を深める必要がある」というふうな、こういうことをここで書かれるのであれば、それでしたら今この会議をやっている最中に広く国民に意見を聞いて、今までもいろいろなことがあったと思うのですけれども、例えば医療事故等々、あれもオフィシャルな意見を皆さんに募っていた。
 そのいろいろな意見でもってある程度方向性が決まったということはもちろんあると思うので、今、これはもし本当に必要だということがどなたか言ったかというと、私はちょっと記憶がないですが、まあ、そういった議論がもし本当に必要だと思われるのであれば、早速、それは広く意見を聴取していただきたいなと思います。この検討会である程度の方向性を決めるということが、この検討会の役目だろうと思って、皆さん責任感を持って発言されていると思うので、これに関しては変えていただきたいです。

【安西座長】  ありがとうございました。
 いろいろ貴重な御意見を頂いてまいりまして、私も一度言わせていただければと思いますので、申し上げます。多少、プロボカティブな言い方になるかと思いますけれども、まず、医学教育、これについては私は大学医学部関係の先生方、この中に大変多くいらっしゃいますけれども、もっとしっかりしていただきたいなと。それぞれかなり、ほかの学部に比べればというのでしょうか、ほかの分野に比べれば相当の対応をして教育をやっておられるかと思いますが、やはり学生の出席率とか、あるいは国試対応、予備校化といいましょうか、ここにおられる先生方の大学ではなく、全国一般の医学部で言いますと、もっともっと医学教育の充実というのは大事なことではないかなと個人的には思っております。そういうところの充実はもちろん、財政的なこともさっき濵口先生が言われましたように大事なことだと思いますので、それも含めてでございますけれども、是非充実させていかなければいけないのではないかと思います。私学関係ももちろんそうでございます。
 その上で、プロボカティブと申し上げましたのは、医師の数自体は充足しているのだと、今、医学部の定員は増えていますので、これからも増えていくのだと、そういうふうにおっしゃるのであれば、今の本当の緊急の偏在の状況をどういうふうに改善するのかということについて具体案を出していかないといけないと思うんですね。それについては、これまで何人かの委員の方々からかなり具体的な案も出ておりまして、そういうことについてはもっと詰めて、それで特に地域の医療を過疎地、へき地をどうするかということまで含めた仕組みを提案していくというのでしょうか、そういうぐらいでないとなかなか。総論的な偏在はこういうふうにすれば解決できるとおっしゃいますけれども、今まで解決されていないんですね。当たり前にこういう状況はあるにもかかわらず、解決されていないということは行政も関わらなければいけないと思います。そういうことも含めて、ある程度やっぱり具体的なことを言っていかないと、いつまでたっても、特に大学の方に多い、私もそうですけれども、大学人というのは何となく総論ではこういうふうにするとは言うんですけれども、具体的には世の中はほとんど変わらないということが多いので、そのことはやはり私も含めて、かなり厳しく考えていかないと世間の期待には応えられないのではないかと思います。
 その一方で、医学部の新設等々、とにかく医師を増やさないといけないのだというふうにおっしゃる方におかれましては、増え過ぎてしまうのではないかということに対する疑問に答えていただく必要があると思うんですね。今とにかく増やせば何とかなるという考え方だとなかなか将来、禍根を残すというふうに思います。
 両側に立って申し上げているように見えるかもしれませんけれども、やはりどうも問題点は出てくるのですけれども、具体的な方策になりますとなかなか、ここまで皆様にお時間を使っていただいて、大変貴重な御意見を頂きながら、プロボカティブだと申し上げましたのは、もっとやはり具体的に国民に対してこうだということが言えるような、そういう論点にしていく必要があるのではないかということでございます。
 何度か先ほどもありましたけれども、実際には若い医師等々、若くなくても、医師の先生方にどこの地域に行けということは命令できないわけですよね。それでいながら過疎地には行ってもらいたいわけで、ここの点を解決できる方策というのを何とかいろいろな医療の機関のネットワークとか、それを大学がサポートするとか、いろいろな形でもってつくっていかなければいけないわけですね。その具体的な姿が、何人かの先生方がおっしゃってくださってはいるんですけれども、まだまだ本当にできるか。行政の支援も必要だし、そういうことをきちっと考えていかないといけないのではないかということであります。
 一方で、新設うんぬんにつきましては、先ほど申し上げましたように新設してから、その後、本当に何年頃にどうなっていくのかということについての具体的な話が余りないのではないかなという気が、これは個人的な主観で申し訳ありませんけれども、そういうふうに思うので。両側ともやはりもっと具体的な考え方を出して。
 最後に国民的議論というふうになっておりますのは、私はこの医学、医療の世界というのがどうしても閉じた専門家の中で議論がされる。これは当然で、専門家がやっぱり考えて決めていくべきだと思うんです。ただし、国民の皆さんも勉強してもらいたいんですね。ただただ足りないから増やすとか、ただただもう余っているから要らないんだとか、そういうことではなくて、もう少しきめ細かく勉強しながら、学びながら、皆でもって解決していくのだという、そういう方向は、特に医療の問題につきましては持っていってほしいなというのは、これも個人的になるかもしれませんけれども、そういうこともございまして、当然、具体案を考えていくのはここでありますけれども、それを国民に問うということはやってもいいのではないかなと思っているということでございます。余り生の何かワーッというところでもって国民に聞くということは、これはこの検討会の存在の問題になるかと思いますので、そういうことではございませんけれども、ある時点でもって国民に、こういうことで考えてきているんだけれども、どうかということは問うて然(しか)るべきではないかと思っているということであります。
 少し長くなりましたけれども、一応、申し上げさせていただきます。これは再々でございますが、私自身に対する言葉も含めてということでございますので、是非御理解くださいますようにお願い申し上げます。
 それでは、時間でございますが、特に、今私が申し上げたことについてでも結構でございますが、何かございますでしょうか。どうぞ。

【生坂政臣氏】  地域への強制派遣という視点から地域医療再生なのですが、実際、被災地入りした医者は非常に多くて、短期であれば可能性はあると思うんですね。ですから、本当にニーズを行政なりが明確にして、ここに派遣してほしいと。それは大学病院を含めた公的病院にある程度強制してもいいのではないかと思うんですね。短期だったら、補償、代診などの外部要因さえクリアできれば行けるのではないかと思います。ただ、そのときに内部要因、すなわち広範囲の診療に対応できないと困りますから、それは栗原先生もおっしゃったように各大学でジェネラルな教育に留意していただくと。可能ではないかなと個人的には考えています。

【安西座長】  私が申し上げたのは仕組みといいましょうか、法律的なことでございますので、そういう意味での本当に法的なところを突っ込んでいったときに可能かどうかということで申し上げております。ある意味でボランティア的な意味で何か月かということは、それはあり得るのではないかと思いますが、ただ、地域の、へき地の医療の過疎医療といいましょうか、医療過疎の問題を本当に解決するには法的なところまで行かないといけないのではないかと思っているということでございます。今のボランティアのことを否定しているわけでは決してありませんので。
 すみません、これでもう4時ぐらいになってしまったのですけれども、どうぞ。

【木場委員】  では、一、二分で。ありがとうございます。短く終わらせたいと思います。やはり国民的議論について。私もこの会議に8か月ほど参加していますが、パブコメとして投げかけられても非常に専門的分野の話なので、判断するのが難しいと思っております。ですので、座長がおっしゃったようにもう少し具体的に投げかけていただかないと選ぶことができないので、今後の議論ではもう少し具体的なものを頂きたいと思っています。
 ただ、今日も心に引っかかったのは、栗原先生もおっしゃっていましたが、地方に行かせる強制力がないというのが非常に大きな課題で幾ら人を増やしても、偏在地に行っていただくシステムをもっとしっかりと確立することが必要だと感じました。また、キャリアパスを持たせるというようなことは書いてあるのですが、それは誰が誰に対して人事権を持っていて、地方に行った後はこういう形になると約束するよという道筋がクリアにならないと、なかなかモチベーションというのは上がらないと思うので、ここもはっきりしていただいた方がいいという気がいたしました。すみません、最後に短く、失礼しました。

【安西座長】  時間を切ってしまって申し訳ありません。国民が選ぶとおっしゃいましたけれども、国民が投票して何か決めるということでは全くありませんので、それは御理解ください。

【木場委員】  もちろんでございます。だから、投げかけたときに具体性がないと、それをいいとも悪いとも判断できないので。

【安西座長】  ほかによろしいでしょうか。それでは、時間が過ぎてしまって申し訳ございません。この素案につきましては、今日頂いた御意見を踏まえて、また、言い足りないということが多々おありになると思いますので、事務局の方へメール等々でも構いませんので、御意見は是非お寄せいただければと思います。次回に論点整理の案を出させていただくということにさせていただければと思います。
 それでは、事務局に。次の日程については現在、調整中だということです。それでは、今日も貴重な御意見を頂きまして、ありがとうございました。ヒアリングにつきましても大変ありがとうございました。それでは、ここまでにさせていただきます。どうもありがとうございました。

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