薬学系人材養成の在り方に関する検討会(第6回) 議事録

1.日時

平成22年3月1日(月曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省東館5階5F7会議室

3.議題

  1. 日本学術会議薬学委員会からの報告(案)について
  2. 前回(第5回)会議の主な意見及び今後の進め方等について
  3. その他

4.出席者

委員

永井良三座長、市川副座長、井上副座長、生出委員、太田委員、北澤委員、北田委員、倉田委員、小林委員、高柳委員、竹中委員、永井博弌委員、橋田委員、平井委員、正木委員、望月正隆委員、望月眞弓委員

文部科学省

加藤大臣官房審議官(高等教育局担当)、新木医学教育課長、渡部医学教育課課長補佐、樋口医学教育課課長補佐、吉田薬学教育専門官ほか関係官

オブザーバー

厚生労働省 医薬食品局総務課 近藤課長補佐

5.議事録

【永井良三座長】
それでは、時間になりましたので、第6回の薬学系人材養成の在り方に関する検討会を始めさせていただきます。
 本日は、前回に引き続きまして、学部教育のあり方、改善方策などについて議論いただきたいということであります。
 また、本検討会で今後の議論を進める上で重要な日本学術会議、薬学委員会での審議状況について、後ほど、橋田委員からご説明をいただきます。
 その後、今後の審議の進め方等についてもご議論いただきたいと思います。
 初めに、この検討会のご担当でいらっしゃいます加藤審議官から一言ごあいさつをお願いしたいと思います。

【加藤審議官】
高等教育局審議官の加藤でございます。実は、前回の検討会、10月16日にございましたけれども、そのときは、大学間交流の関係で中国に出張しておりまして、欠席いたしまして、この検討会に出させていただくのは本日が初めてでございますので大変遅くなりましたけれども、一言ごあいさつ申し上げさせていただきたいと思います。
 先生方には、昨年2月からこの検討会にご参加いただきまして、昨年の3月には、新制度のもとでの薬学大学院教育のあり方について、この検討会の第1次報告として重要な取りまとめをいただいたわけでございまして、非常に短期間ではございましたけれども重要な取りまとめをいただけましたことを心から感謝申し上げる次第でございます。
 その報告書を踏まえまして、各大学から、新しい4年制の学部を基礎とする大学院の設置について、39の修士課程について設置手続が行われておりましてその状況は後ほどご報告させていただきたいと思っております。
 それで、より重要な問題といたしまして、前回10月の検討会でもいろいろご意見をちょうだいしたわけでございますけれども、近年、薬学部の入学定員が著しく増加しまして、薬剤師の供給過剰といったことが懸念されております。そういった中で現在の養成数が、社会的な要請を踏まえてほんとうに適正なものなのか、また、教育の質を保証するためにどんな策を講じていく必要があるのかといった問題提起をいただきまして、私どもも、これら極めて重要な課題であると認識しているところでございます。
そういったことで、この検討会では、今後の薬学系の大学教育、特に学部教育における質の保証のために、どんな点を具体的に改善していったらいいかどうか。また、適正な入学定員規模のあり方といったようなことにつきまして、これまでの薬学教育の改革の進捗状況、あるいは現状についての具体的なエビデンスに基づきまして、それの分析に基づいてしっかりした対策を、今後の改善・充実策をご議論いただくことが重要であるかと思っております。そういった観点から、後ほど、どのような調査を行ったらいいかということのご議論、本日、お願いしたいと思っております。
 こういった問題は、簡単に結論が出る問題とは思っておりませんけれども、我が国の将来の薬学教育の改善・充実のために、引き続き忌憚のないご意見をいただきたいと思いますし、また、薬学教育界が関係するステークホルダーとのインタラクションの中で、いかに自律性を発揮できるかというふうにも外からは見られる問題ではないかと思いますので、そのこともご留意していただきながら、今後ともご指導賜りたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

【永井良三座長】
どうもありがとうございました。
 では、最初に、事務局から、本日の委員の出欠状況、それから、配付資料の確認をお願いいたします。

【吉田薬学教育専門官】
 本日は、お忙しい中お集まりいただきましてまことにありがとうございます。
 初めに、委員の出席状況でございますけれども、本日、長野委員、村上委員のお二人がご欠席でございます。
 太田委員と橋田委員につきましては、後ほどご到着いただくかと思います。
 続きまして、本日の配付資料でございますけれども、初めに、座席表と会議次第がございます。
 資料1から順にご説明しますが、資料1、資料2につきましては、本日、最初の議題でございます橋田委員からのご説明資料でございます。
 資料2でございますけれども、これは前回の会議でもお示しいたしました本検討会における今後の検討課題という論点メモでございます。
 資料3につきましては、前回の会議での主な意見ということで、前回、委員の皆様方から出されたご意見を資料2の論点メモを踏まえまして、事務局である程度の項目ごとに整理させていただいたものでございます。
 また、資料4でございますけれども、今後、本検討会で議論を進めていく上で必要と思われる基礎データについて、これも項目を並べたものですが、資料としてご用意させていただいたところでございます。
 参考資料ということで2点ほど用意させていただいていますが、先ほど、加藤審議官からのごあいさつでもございましたけれども、参考資料1につきましては平成22年度に開設予定の大学院(修士課程)の一覧と、参考資料2のほうですけれども、薬学教育改革フォーラムというものをご用意させていただいております。
 資料については以上でございますが、書類の不備等ございましたら事務局までお知らせいただければと思います。以上でございます。

【永井良三座長】
ありがとうございました。
 最初の議事は、予定では、学術会議の薬学委員会で検討されております「日本の展望 薬学委員会からの報告」資料1に基づいて橋田先生からお話を伺う予定でしたが、まだお見えではありませんので、次の議事、前回、第5回会議の主な意見及び今後の進め方についてのほうを先にご議論いただきたいと思います。
 それでは、事務局から資料のご説明をお願いします。

【吉田薬学教育専門官】
それでは、資料3の、前回第5回目の会議での主な意見について最初にご説明をさせていただきますが、資料2の「今後の検討課題について」という論点メモもあわせてごらんいただければと思います。
 前回の会議では、資料2に基づいて、先ほどもご説明させていただきましたけれども、皆様方にご議論・ご意見をちょうだいしたところでございます。皆様方からさまざまなご意見をいただいたものを提示したものが資料3ということですけれども、議事録のほう、事前に既にもうご確認いただいているところですが、前回の会議をもう一度確認していったとき、資料3の紹介を若干させていただきたいと思います。
 1つ目の大きな項目としては、「今後の議論の進め方について」ということでございますけれども、上から2つ目、3つ目の○のところにございますように、6年制と4年制をそれぞれ分けて議論を進めていったほうがわかりやすいのではないかというご意見をちょうだいしたところでございます。
したがいまして、資料2をごらんいただきますと、検討テーマの下に赤字で書かせていただいていますが、6年制と4年制を分けて、それぞれの教育のあり方と改善方策について議論を行うということで修正をさせていただいたというか、文言の追加をさせていただいたところでございます。
 また、資料3に戻っていただきまして、2つ目の大きな項目でございますけれども、「薬剤師の養成規模について」というところでございますが、これにつきましては、多くの意見をちょうだいいたしました。
 まず、1つ目の○ですけれども、個性とか特色を出そうとした場合、薬学教育というものを画一的に考えると、どんなふうに個性や特色が出せるのかというご意見もいただきましたし、また、2つ目の○から5つ目の○まででございますが、これについては薬剤師に対する社会からのニーズといったものがかなり変化をしているということ。そういったものに対応した教育もしくは規模というものを考えていく必要があるのではないかというようなご意見もちょうだいしたところでございます。
 また、1ページ目の一番下になりますけれども、現在の入学定員1万3千人というようなところでございますけれども、この学生の数からして、現状の教員あるいは施設といったところで、ほんとうに十分な教育ができるのかどうかというようなご意見もちょうだいしたところでございますし、また、1枚めくっていただいて、次のページになりますが、これも同じく養成規模の話ですけれども、一番最初の○では最終学歴から見た企業側の現状というもののご紹介もいただきましたし、また、2つ目の○、3つ目の○の部分では学部と大学院との関係ということについてもご意見をちょうだいしたところでございます。
 さらに、4つ目、5つ目の○では将来を見据えた就職につきまして、実際、今の入学定員というか、学生数に対して、ほんとうにそういったところが確保できるのかどうかといった懸念のご意見もちょうだいしたところでございます。
 それ以降につきましては、現状で留年している、あるいは退学していると思われる学生がかなり多くて、入学定員と比較すると1割以上も出ている状況だというご意見もございましたし、また、そのほかとしては、これは主に私立大学の話になるのかもしれませんけれども、入学定員について経営サイドの考えと教学側の考えというのは相当なギャップがあって、非常に難しい問題だといったご意見もちょうだいしたところでございます。
 続きまして下のほうになりますが、3点目の大きな項目としては、「教育の質の向上について」というところでございます。これも一番上の○のところでは、社会が期待するものと大学で実際に行われている教育内容というものが必ずしも一致していないのではないかというようなご意見もちょうだいいたしましたし、次のページになりますけれども、モデル・コアカリキュラムの見直しにつきまして、そろそろ検討を始める時期に来ているのではないかというようなご意見がございましたし、その一方で、まだ卒業生が出ていないという状況、まだ完成年度を迎えていないという状況の中で、検討を始めるということになっても、学生、あるいは社会が混乱しないような配慮も必要ではないかといったような慎重なご意見もちょうだいしたところでございます。
 その他の項目としては、「学生の質の向上について」といった点。これは、大学間で二極化が起きているというような話ですとか、入試をもっと厳格にすべきであるといったご意見等ございましたし、教育体制につきましては、非常に大変というか厳しい状況にあるというご意見もちょうだいしたというところでございます。
 少し長くなりましたが、これが資料2、資料3についての説明でございます。
 それと、資料4でございますが、今日は資料4について重点的にご議論いただきたいと考えているんですけれども、こちらにつきましては、本検討会で今後ご議論を行っていただく上で必要ではないかと思われるデータということで、項目を整理して用意させていただいたものでございます。
 内容といたしましては、上から順に、学部の入試選抜の状況や、薬学部における教育体制ということで、専任教員の状況、あるいは非常勤教員の状況というようなものを項目として挙げてございます。これらに対する具体的な人数ですとか、あるいは具体的な方法などについて調査を行っていく必要があるのではないかということで、このような項目を挙げさせていただいております。
 それから、3つ目の○では、学部の教育内容等についてということで、いろいろな目標などを設定しているかどうかということと、あと、具体的な中身も確認をしていく必要があるのではないかと思っていますし、また、裏面になりますけれども、学部教育のなかで中心と言われている実務実習、今年の5月からスタートしますけれども、これにつきましてもその状況ということについて調査をしていこうかと考えてございます。
 こういった項目について、各大学の状況を私どもでもまだ十分入手できてないところがありますので、こういった形で入手させていただいて、次回の会議では具体的な整理をしたものをお示しさせていただいて、資料2の論点、具体的な部分というものについてまたさまざまなご意見をちょうだいできればなと考えております。
 本日は、先ほど、座長からもありましたけれども、これらの資料に基づいて、さらに追加が必要なデータですとか項目についていろいろなご意見等をちょうだいできればということで、このような資料を用意させていただいたところでございます。
 資料については以上でございます。

【永井良三座長】
ありがとうございます。本日は、ただいまのご説明を伺いまして、今後の議論の進め方、それから議論に必要なデータをどうするか、各大学に調査を依頼するとして、追加が必要な項目等、ご意見を伺いたいと思います。
いかがでしょうか。どこからでも結構でございますので、時間は十分ございますので、ディスカッションいただければと思います。

【生出委員】
資料4で、いろんなデータを17年度からとっているということは、6年制薬学教育が始まる前の年という意味ですか。

【吉田薬学教育専門官】
はい。そのようなことを想定して、17年度以降ということでデータをいただこうかと思っています。

【永井良三座長】
いかがでしょうか。

【竹中委員】
基礎データを提出していただく先が、ほとんどが大学のようです。
薬学部卒業者数の進路状況については、病院とか薬局、製薬企業、行政などには各機関に質問を予定していないのですか。

【吉田薬学教育専門官】
基本的には、これも大学ですべて情報を持っていると理解をしていますので、大学でそれぞれの学年で、どこに進んだかというものをやっていただこうかなと思っております。

【竹中委員】
病院とか薬局ですと、薬剤師さんとしての仕事が明確ですが、企業などになりますと、いろんな職種で働いております。新薬学教育制度では、今後4年制で出てこられる方、修士で出てこられる方、その上に大学院に行かれたそのコースと、6年制の薬学部を出られて、それからまた大学院、5つのメニューがあります。
製薬企業10社とか15社ぐらいにアンケートを出していただいて、どういう部門に、例えば、製造だとか技術だとか研究職だとか分けていただいて、どんな人材を求めているかを調査していただきたい。
厚生労働省の近藤さんにお伺いします。行政、厚生労働省、それから地方の県庁、市役所などでは、5つのパターンの中でどういう方を採用したいのですか。薬剤師の資格がないと、行政に入れないのでしょうか。
今後も薬学卒業者が厚生労働省で、薬事行政を、あるいは文部科学省、経済産業省などで、いわゆるライフサイエンスの推進をすることが必要だと思うんです。

【近藤厚生労働省課長補佐】
今お話いただきましたことにつきまして、とりあえず現状ということで、ちょっとお話をさせていただきたいと思います。
 まず、国家公務員の行政職の採用でございますけれども、国家公務員になるためには国家公務員の試験に通ることが必要ですけれども、以前は薬学という試験区分がございましたけれども、今はもう少し大くくりの試験区分を持っておりまして、現在は、私ども厚生労働省ですと理工Ⅳという試験区分から主に採用しております。理工Ⅳの試験区分というのは、化学系の方、これ、理学部、工学部の区分なんですね。それから生物系の方、薬学、あるいは農学部の大学によっていろいろ名前があるかと思いますが、昔でいうと、よく農芸化学と言われた、そういった、まさに、竹中委員がおっしゃられたようなライフサイエンス系、プラス化学系のことを学んだ方たちが主に受ける試験区分の方から厚生労働省としては採用しています。
 現状は、必ずしも薬剤師の国家資格というものを必須とはしていないのが現状でございます。採用実績を見ましても、薬学部卒業でない者を採用している場合もありますが、実績から見ますと、これまでのところ、薬学部の修士課程を卒業している人が一番多いというのが現状かなと思います。
 それから、他省庁の採用でございますけれども、これはもしかすると文部科学省さんにお答えいただいたほうがいいかと思いますが、私が承知している範囲では、薬剤師の国家資格を求めている省庁は、行政職で採る場合、おそらくないかなとは思いますけれども、技術系の人の採用をどういうふうに採るかというのは、多分、各省ともいろんな考えがあるかと思いますというのが現状でございます。
 それから、都道府県の採用でございますが、これは詳しくは承知しておりませんが、都道府県によっては、病院の薬剤師の方と行政職の方とを一括で採用しているようなケースもあります。こういう場合はおそらく、薬剤師の免許を必須条件にしているのではないかと思いますけれども、それとは別に、行政職の人を採っているケースもあると思いますので、都道府県によってケース・バイ・ケースの部分があると思います。現状はこのようなことです。

【竹中委員】
ありがとうございました。

【高柳委員】
今、竹中先生、非常にいいことをご質問していただいたので、伺って非常にありがたいんですが、卒業した学生がどこに就職しているか。これは、先ほどありましたように、大学としておおよそ資料を持っていますが、いわゆる行政職のほう、例えば、宮城県の薬務課長とかいろんなところで会って話す機会がありまして、薬剤師の資格が必要なのかどうなのかと、聞くわけですけれども、なかなか明確な答えがないんですね。いらない場合もあるとか、ない場合もあるとか。その辺のところをもう少し、県の薬務課とか、そういう行政のほうで、もう少し明確に大学側に指針を出していただければなと思います。
学生に薬務関係のほうを勧めるときに、その辺のところがわからないと、なかなか勧めにくいというところがありますので、実際の薬務課長あたりに聞きますと、なかなか今のところはっきりしないというのが現実だろうと思います。

【望月正隆委員】
 私も竹中先生の提案に賛成です。非常によいことだと思うので、むしろ製薬協などの団体に文科省から問い合わせをしていただいて、ある程度どういう人材を求めているかというのを聞いていただくのはありがたいと思います。
 それから、卒業生の進路状況というのは、ご存じのように薬学教育協議会で毎年報告書を出しておりますが、そのときの卒業生でその後はどうなったかというのはわからないのです。その後どのような動きがあるか、そういうところも見えたらおもしろいですけれども、これは、調査は非常に難しいと思います。
 それから、今年度、平成21年度の卒業生についても薬学教育協議会は調査する予定です。この調査の中で、薬科学科を出た学生と旧薬学科、4年制を出た学生が今年は混ざって出ると思います。そのなかで、薬科学科の学生がどういうところに就職しているか、または、どういうところに進学しているかということも非常に興味深いことです。これから薬科学科の学生がどういうふうに育っていくかというのが、1つの、ここで最初の指標が出るかと思うので、ぜひ、そういうような見方からも調査していただきたい。薬学教育協議会と文科省の両方から同じ調査をしても、迷惑するのは大学だと思います。うまく調整していただきたいので、よろしくお願いします。

【小林委員】
基礎データの収集ということでしたら、私は6年制の学科の薬学科で置いている教育の内容で、長期課題研究というのが4年生から6年生までの3年間という形には一応なっているんですけれども、多分、国立大学とか私立大学によっては様子が違うのかもしれないですけれども、それぞれの大学において、どれぐらいの期間、どのような内容のものを長期課題研究と言ってやっているかとか、全員が同じメニューをこなしているのか。
昔ですと、例えば私学ですと、ある人は実験研究をするんですが、ある人は文献調査でセミナーのようなことをして、卒業論文、研究にかえるとかというようなことを私学の方はされていたと私はよく聞いたんですけれども、現状、今はどうなのかというところなんですが、その辺を詳しく把握して実際に6年制の学科の学生さんは、実務実習がありますから、結局どこかでその期間は大学にも来ないですし、高学年の授業科目がありますね、医療薬学系の。そういうものがたくさんあったときに、それぞれのもの、長期課題研究ができているのかどうかという、その辺のことは把握されて現状を知るというのが大事かなと思います。

【永井良三座長】
私からは、病院実習がどういう状況になっているか。特にだれが教えているかとか、何対何で、教員と学生の数がどういう比率になっているかとか、どんなカリキュラムを教えているのか、その辺のところを調べていただきたい。

【吉田薬学教育専門官】
今の病院実習のカリキュラムに関しては、モデル・コアカリキュラムがありますのでそれに沿って実施をしていただくということで答えをいただくんですけれども、人数のほうに関しては、それぞれ施設によって違いますのでそこはまた確認をしていきたいと思います。

【永井良三座長】
いかがでしょうか。

【北澤委員】
調査をされるということですが、結果はどのような形で公表されるんでしょうか。

【吉田薬学教育専門官】
個別の大学のデータに関しては、この場で机上に配付をさせていただいて、議論の中で使っていただこうかと思っております。
全体の部分に関しては、統計的な形で配付資料という形でここの場に配らせていただこうかなと考えています。

【生出委員】
配付資料は公開する…。

【吉田薬学教育専門官】
配付資料は公開するということですね。ただ、個別のデータは、大学によってやはりなかなか難しいものもありますので、机上に配付をさせていただいて、委員の方にはごらんいただいてご議論いただくという形をとりたいと考えてございます。
 それと、先ほど竹中委員から出ました製薬企業への何社か、幾つかのところでどういった人材を求めているかというところにつきましても、私どもからご相談させていただいて、どういったところに照会をかけさせていただいたらいいのかというあたりも含めてやらせていただきたいなと思います。
 以上でございます。

【望月眞弓委員】
先ほど、行政職のほうも調査をいただけるというようなことで、一部近藤課長補佐からご回答があったんですが、薬学系の人だけではなくて、例えば医学系の人とか看護系の方々について先ほどの試験区分ですとどういう区分になっていて、医学系、看護系の方の場合は、医師とか看護師の資格が必要な職種というのが行政職の中に存在しているのかどうかとかのあたりも、できればあわせて調査をしていただけるとありがたいと思います。

【永井良三座長】
 よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。
 あるいは、委員の先生方の大学で何かいい取り組みをなさっていて、ぜひという形で推薦したい、紹介したいということであれば、ご披露いただきたいと思いますが。

【倉田委員】
進路状況とあわせまして、これから発展するかもしれない分野というのもあると思うんですね。在宅医療のほうでも、こういう薬剤師だったら欲しいとか、そういう意見も聞くようなことを考えていただけませんでしょうか。

【永井良三座長】
そうしますと、どういう問いかけになりますでしょうか。在宅も含めたカリキュラムを考えているか。

【倉田委員】
 在宅の現場で、薬剤師さんがどういうふうな活躍をこれからしてほしいかというのは、在宅医療を担っていらっしゃる介護の方ですとか、それから、実際にやっている訪看ステーションの方ですとか、そういう方に聞いてみるのもいいのではないかと思うんです。
新しい分野にも、薬剤師さんというのはどんどん活躍してほしいと思っていますし、これからもっと在宅医療というのは発展していってもらわないと、団塊の世代の者たちは、どうしても病院だけではなく在宅のほうになりますから、そのときに薬剤師さんに役立ってもらうためには、どういうふうにしたら役立ってもらえるのか、ちょっと聞いていただけたらと思います。

【生出委員】
私が思いますには、在宅医療に関しては、実務実習の中で在宅医療をどのようにして学生に教えているかというような聞き方をしていくと、薬局がこういう患者さんのところにチームとして行っているのか、個別に行っているのかということが聞けるかと思って、実務実習の中で実態がわかるのではないかなと思います。

【井上副座長】
 今、盛んに「学士力」という言葉がはやっていると思うんですが、このアンケートをとるときに、現時点では、6年制の学生がどういう能力を獲得してどういうふうになっているかというのがまだあまり見えないんですね。現時点で企業にアンケートをとったときに、6年制の学生はこういうことができるから、じゃあ欲しいなとか、そういうことがまだ現実にはない。ですから、今、アンケートをとるのと、何年後かにとったときに、両者を比較して云々とか、そうでもしないことには、私は、今の時点では非常に架空の6年制だったらきっとこうなんだろうなとか、そういうデータにしかならないのかなと。
つまり、私としては、4年制の卒業生が獲得する能力というのに関しての議論も、非常に明確には煮詰まってない。6年制はどうなのか、あるいは修士はどうなのか、ドクターはどうなのかということに関しても、ちゃんとした議論ができてないという時点で、架空の状態でのアンケートにならざるを得ない。
それでも、全然参考にならないということを申し上げているわけじゃないんですけれども、そういうこともきちっと進めていかないといけないだろうとちょっと感じます。
だから、倉田委員がおっしゃっているようなところも結局、6年制の卒業生がそういうことを、先生がおっしゃったような意味での能力を非常に獲得しているというようなことがあれば、当然、そういう進路も開けてくるでしょうし、その辺のところを、我々大学人のほうも、6年制の卒業生というのはこういう能力を獲得させるんだということを明確に示していくということを進めていかないといけないんじゃないかなと感じました。

【生出委員】
表のページに戻るんですが、下の3つ目の○の「薬学部における教育内容等について」というところでぜひ聞いていただきたいのは、コアカリキュラム以外で何かユニークな教育を行っているかということをぜひ聞いていただければと思います。

【永井博弌委員】
それと、これ、質問項目なんですが、自己評価21に非常に重なっているところが多くて、答えを出される分にはわりといいと思うんですが、費用の点、学費とか実務実習の費用の点、これはおそらく自己評価には出てこないと思うんですけど、問題は、自己評価21のほうは6年制学科についての質問ですね。4年制学科の薬科学科のほうの教育体制についてもし質問を出すなら、大学院はどういうふうに扱ったらいいのかを少し考えていただけますでしょうか。
といいますのは、おそらく薬科学科の教育というのは、大学院の修士課程の教育まで一応視野に入れているところが多いと思うんですね。ですから、過去の、もちろん今4年制学科の人は大学院やってないわけですけど、過去の何年間を調べるのであれば6年制学科の教育はおそらく自己評価21と同じような形で出てくると思いますけど、薬科学科のほうの教育をどうするかというのは、ここでは出てこなくなるのではないか。基礎データとして、あまり出ないんじゃないかと思うんですが。

【吉田薬学教育専門官】
 この調査については、基本的に6年と4年と両方とろうかと思っています。
それと、4年制の上の大学院に関しては今お話がございましたが、先ほど、参考資料1でもございましたとおり、既に設置の手続が出されていますので、その中に教員組織がどうなっているかいうような書類をすべていただいてございますので、そこから見てお示しすることは可能だと思います。
ですから、改めてそこの部分をとるというのはちょっとどうかなと、そんな感じがしています。

【永井博弌委員】
 必要ない?

【吉田薬学教育専門官】
 はい。

【永井博弌委員】
 わかりました。

【小林委員】
先ほども、ちょっと私が言いましたが、長期課題研究と関連はすると思うんですけれども、今度は教員サイドのほうなんですが、今まで、助教、准教授、教授と選考していく場合に、もちろん私学もそうだったと思いますけど、もちろん教育的な貢献というのは大きいと思うんですが、それ以外に、やっぱり研究での実績というのはかなり評価のウエートを占めていたと思うんですね。
それが多分6年制の、私学は特に6年制学科がほとんどで、4年制学科がほとんどいない状況の教育が始まって4年たったんですけれども、今後に向けて、特に私学だと思うんですけれども、教員の昇進といいますか、助教で採用、准教授に上がる、それから教授に上がる、そういうところの選考において、何を……。
今までと同じように、教育だけじゃなくて、研究での評価というのはかなり大きなウエートを引き続き占めていくのか、現状、先生方がほんとうに研究できる体制がちゃんと確保できているのか。
教育にかなりウエートをとられていて、なかなか長期課題研究で非常にたくさんの学生さんを指導していかなくちゃいけない状況に陥ったときに、ほんとうに研究ができて、かつ評価の高い先生が教授になっていく、そういう形になっていくのか、その現状はなかなか難しい面が見えてきているんじゃないかな、私はそういうふうに思うんですけれども、その辺の意識を少し調査していただくのはいいかなと思うんですけれども。なかなか難しい調査かもしれませんけれども。

【望月正隆委員】
私どもの大学は、先日4年制の薬科学科の学生の卒論発表会を全員で行いまして、結構一所懸命実施した結果を出しています。今までの学部学生に比べて病院実習や薬局実習もないですし、国家試験の勉強も不要ですので当然、実験できなければだめだというプレッシャーのもとに仕事ができていると思います。問題となるのは、一緒に4月1日から卒論を開始した6年制の学生です。その学生は4年生になっても授業がたくさんありますし、4年次の後期はさらに事前学習が加わります。そういう学生がこれから5年生になり、半年間は病院実習、薬局実習に行って、半年は空いています。その時間で卒業研究をやらせます。さらに、6年次は一応、卒業研究の時間ですけど、そのほかにプラスアルファの学習ができるので、そのプラスアルファに何をするかが大切です。
そのとき、以前、文部科学省がワークショップをした5、6年次のカリキュラム。あれがやっぱり非常によく効いてくると思います。卒業研究をやらせながら、どういうカリキュラムでどういう人材を養成するか。どういうものをやるかというときに、竹中委員がさっきおっしゃったように、企業に行きたい学生は何を求められているか、それを知るというのは非常に大切だと思います。薬剤師になってから企業で働きたいという学生が結構おります。薬剤師取ってから、また企業で働きたいという学生も結構いるので、そういう学生にどういうことを学ばせるかということは大事だし、どういうカリキュラム体制を組むかということ。本来、カリキュラムはもう全部組まれていますけど、教員の心意気も大事です。
 それと同時に、さっきおっしゃったような、4年制と6年制の学生を一緒に教育しなければいけない先生方はそれなりの覚悟をして両方ともやらざるを得ない。病院実習先にも基礎の先生は訪問指導に行かなければいけない、薬局にも行かなければいけない。それから、事前学習担当の先生は相当の時間を使われますけれど、やっぱり臨床研究、あるいは医療研究とは何かというのを見せなければいけない。その指針というのは今のところ、何にもないまま進んでいます。大変な1年だと思いますが、教育と研究の基礎データとして何か出ることを私は非常に期待しています。以上です。

【望月眞弓委員】
 先ほど、教員の調査の内容についてお話があったんですが、実務家教員という方に関して、ここに書きあらわされているものを私がきちんと解釈できてないかもしれないんですが、実務家の方が大学のほうに教員として引き抜かれると、しばらくするともう実務から離れてしまって実務家でなくなっていってしまうというのが、実は今の薬学の多くの実務家教員と言われる人たちなのですが、その中で、大学によっては実務家が実務家であることを維持するための工夫をしていらっしゃる大学が幾つかあるように聞いておりますので、できましたら、どういう形で何人ぐらいをそういう形で、現場で実務をやりながら、教員として、みなし教員とはまた別に、そこを調査していただければと思います。

【竹中委員】
日本の医薬品企業は、少子高齢化でこれから医薬品の国内における消費というのはそんなに伸びないだろうということで、多くの会社がグローバルにビジネスを展開しています。
薬学を出られた多くの方が、グローバル化推進でご活躍していただいています。グローバル化ということに関して、教育の中で、どんな種がまかれるかなという点が非常に興味がございます。
 一方、6年制の薬剤師コースにおける教育というのは、先ほどお話があったように、教育内容がびっしり詰まっています。
教育で、6年制ではグローバル人材をどんなふうに育成するのですか。率直に言って、欲深な注文かもしれませんが、そこら辺が、グローバル人材輩出が、日本の教育の重要課題ではないかと思っています。グローバル人材教育についても今後ご検討いただけたらと思っております。

【市川副座長】
ちょっと違う観点かもしれないけれども、私、今、薬学の社会的な評価ということを考えた場合に、いわゆる18歳の方々が薬学に対してどういうふうに考えているかというのがこの後の人材養成について非常に大きく影響してくると思います。
私、一番言いたいのは、中高の授業で、薬学、あるいは薬、それを含めて医療でもいいのですが、一体どのぐらいの教育がなされていて、説明がなされているのか、を知りたいし、また、その必要性を非常に感じます。
確かに、ある企業の調査なんかを見ると、中高生徒の薬剤師の人気が第何位にありますと書いてあるわけですが、実際に生徒が抱いている薬剤師像というのと、我々、薬学で言っている薬剤師像、薬学研究者像、あるいは実際の現場の人たちが言っている薬剤師像と創薬研究者いうのは少しずれているのかもしれない。
その辺のギャップが、薬学が、過去わりと人気があるときに比べて、今、非常に低くなってきた事態に対処する際に、非常に大きな問題を成している。それがひいては、薬学教育の人材のところに影響を与えているかもしれない。
だから、その辺のデータをもしとれれば知りたいです。難しいかもしれないけれども、実際にちょっとでも薬の話、あるいは薬剤師の話、あるいは医療の話を聞いているのか聞いていないか、薬学関係者としては知りたいです。もし、非常に少ない知識だったら、我々薬学人が、むしろより積極的に入り込んでいって、生徒に、薬学、薬剤師、その他多様な薬学領域はこういうことをこうやっているのだということを宣伝して、生徒並びに父兄の方が“わかりにくい学部”の意識を持っていると思いますので、それを払拭する必要があります。

【永井良三座長】
 私も同感で、実践、開発、倫理など、いわゆる広い意味での社会性ですね。薬学から見た社会性というのはどういうことなのかという教育が必要だと思います。地域の問題もあります。特に倫理の問題は重要です。
 ご意見はこれからもいただくことにしまして、とりあえずは事務局でこの辺のところをまとめてください。

【吉田薬学教育専門官】
 はい。おそらくこのデータ、今、項目しか並べてございませんので、これをとるに当たって、各大学の使い方がまたばらばらになったり、そうすると困ると思うんですね。
ですから、そのあたりもきちっと定義を明確にさせていただいて、事務局で整理をして、実際に大学に調査をかける前に委員の皆様方にもごらんいただいて、それでご意見をいただくという流れで実施をしていきたいなと思っています。

【永井良三座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、今度は橋田先生から日本学術会議の薬学委員会で審議が行われています「日本の展望 薬学委員会からの報告」ということで、その内容について25分ぐらいでご説明いただきます。

【橋田委員】
 橋田でございます。
今日は大事なお役目をいただきながら、遅刻して参りました。ほんとうに申しわけございません。
 この検討会で行われておりますいろいろご議論と平行して、日本学術会議ではそれぞれ関連する問題に対しまして、教育、あるいは人材育成のあり方という視点から議論をしてきまして、そこで一昨年にまとめました「医療系薬学の学術と大学院教育のあり方について」という報告、あるいは「専門薬剤師の必要性と今後の発展-医療の質の向上を支えるために-」という提言を、本検討会でそれぞれ議論のたたき台として紹介させていただきました。
 今般、日本学術会議では、「日本の展望―学術からの提言」という、これは非常に大きなタイトルでございますけれども、日本の学術のあり方、それから社会とのかかわり合いについて、現状分析と将来ビジョンについて議論を行っております。その一環といたしまして、各領域でもそれぞれの分野、例えば、薬学の学術、社会とのかかわり方の問題、教育の問題、あるいは人材育成の問題、それぞれを現状と将来という形で議論を行い、その内容を報告の形でまとめる作業を行いました。
 この作業ががほぼ終わりまして、実際には来月早々に開催されます日本学術会議の総会で承認をされて、正式に公表されるということになります。この報告を作成する過程では、関連学協会等々には、その都度この資料と申しますか、原稿案を送付させていただきまして、ご意見をいただいていたところでございますので、作業のプロセスは全てオープンになっておりますし、今日、もうほぼ最終の形になったということで本会議でもご説明をさせていただきたいと思っております。
 説明はお手元にございます資料1-1、これが原案、学術会議から近々出てまいります「日本の展望 薬学委員会からの報告」の原稿、まだ未定稿でございますが、報告案でございます。
 それから、手元の資料1-2でございますが、これは私が、少しこの中から要点を抜粋させていただきまして、いわばキーワードに相当するものを集めたというものでございます。この両資料を比較していただきながら進めたいと思います。
1-2の資料にございますように、この提言「日本の展望―学術からの提言」というのは、全体としては3層の構造になっておりまして、学術会議全体が一番上に立ちその下に、第一部人文社会系、第二部生命科学系、第三部理工学系と並んで全体の提言とそれぞれの部ごとの提言を出す。
 さらに、例えば薬学委員会が属する生命科学の部会では約10の委員会がその下にございまして、それぞれが報告を出す、そういう構造になっております。そういう意味では、トップダウンといいますか、学術の全体を見る立場から個々の領域を考える、あるいは、逆に個々の領域から組み上げていって学術全体を考える、両方の方向性を持った作業を進めていると言えるものでございます。
 それから、同時にこれは委員会のレベルで、委員会というのは、薬学委員会、臨床医学委員会、基礎医学委員会、歯学委員会等々あるわけでございますけれども、それぞれ査読といった形でお互いに情報を共有しておりますので、そういう意味では、個々の委員会の中で作成されたものではございますけれども、ある程度、ほかの領域も含めて。例えば、医療全般の中でも、基本的にはご了解をいただいた内容になっているということだと考えております。
 それでは、1-1の資料でございますけれども、全体はこの下に打ったページ番号で申しますと、2ページが作成に当たった委員名でございます。それから、3ページ、4ページに要旨がございます。6ページに以下の本文の目次がございまして、本文の目次の内容は、大きく最初に序文があり、あと、「薬学の中期的な展望と課題」、「グローバル化・情報化への対応」、「社会のニーズへの対応」、「これからの人材育成」の大きな4つの項目について本文はまとめられております。
これは、生命科学のすべての領域、委員会分野に共通した項目立てでございまして、医学も歯学も農学もすべて同じ項目立てで議論していると、そういう構造になります。
 報告の最後には、これで申しますと25ページからでございますけれども、用語の説明、参考文献、いろんな審議の経過等々がまとめられていまして、一番最後、28ページ、29ページに記者発表用の要旨がついております。総会で本報告がすべて承認されますと、もちろん本文は出てまいりますが、併せてこういう内容の要旨の元に記者発表も行われる、そういう予定になっています。
 それでは、内容の説明に入らせていただきます。
 7ページが本文のスタートでございまして、最初に薬学の中期的な展望と課題」ということが書いてございます。資料のほうもあわせて見ていただけましたら結構かと思いますが、資料では1ページ目の下側半分、本文のほうで申しますと、これは全体の総論に位置づけられますが、少し文言を読ませていただきます。
「薬学は、人体に働きその機能の調節などを介して疾病の治癒、健康の増進をもたらす医薬品の創製、生産、適正な使用を目標とする総合科学である」。中のほうでございますが、薬学には、革新的な医薬品の創出を目指す創薬科学、臨床薬学・医療薬学というものがある。また、薬学は薬剤師という職能を介して医療の一端を担っていると整理し、さらに今、大学院教育を含めた薬学教育の再構築が薬学の非常に大きな課題であると整理しました。以下、薬学の中期的な展望と課題ということで、内容を、(1)(2)(3)と、創薬科学、2つ目は臨床薬学・医療薬学、3つ目が生命科学を基盤とする薬学研究というふうに、大きくサイエンスとしての薬学を3つの観点からまとめさせていただきました。
 創薬科学のほうは、まとめのほうで申し上げますと、「医薬の創製を担う創薬科学は、応用生命科学の最先端にあり、関連する研究領域の融合的発展、研究体制の整備、創薬研究者の育成が大きな課題となっている」と記し、その後、箇条書きになっておりますが、多くの新しい研究領域が薬学の、特に創薬という観点でこれから広がりを持たなきゃいけない状況だと位置づけております。
 2番目の臨床薬学・医療薬学でございますが、「臨床薬学・医療薬学の究極の目的は薬物治療の最適化にある。また、医薬品製剤の開発、生産の基盤となる学問領域の発展は優れた医薬品の開発を通じて医療の発展に大きく貢献する」ということで、今後発展が期待される学術分野・科学技術としましては、例えば、個別化医療ですとかバイオイメージングのようないろんな方法論ですとか、それから、医薬品の適正使用の視点を環境にまで敷衍する人体・自然環境における医薬品のトレーサビリティーに関する技術ですとか、こういう内容を書き、また、医療・医療薬科学における将来の課題としては、ゲノム科学から、あるいは医用工学といったことを書いております。
 生命科学を基盤とする薬学研究につきましては、生命科学の応用領域の中で、薬学は特に先端研究と実用化研究が接近した領域であるということを述べまして、この領域では、臓器移植をはじめ、膠原病、アルツハイマー、いろんな領域の治療の進展が期待できると書いております。
 以上を踏まえまして、薬学の研究体制全体を見たときの課題は、医学、工学との融合的研究体制の構築が重要である。研究の基盤となるバイオリソースやデータベース、特に医薬品を含めた化学物質の安全性評価研究の加速とその促進のための毒性データベース構築の必要性が高いということを提言させていただきまして、研究開発体制の整備の観点からは、早期探索的臨床試験の促進ですとか、FDAのCritical Path Initiativeとの関連、あるいは、広い意味ではヘルシンキ宣言等々の問題にも触れて問題提起をさせていただきました。

 次は、「グローバル化・情報化への対応」ということでございます。本文のほうで申しますと、13ページの上から8行目ぐらいのところからでございます。グローバル化・情報化というものを考えましたときに、「薬学のグローバル化に向けた提言」ということで、「医薬品は人類共通の財産であり、医薬品の開発と供給に関する薬事行政・レギュレーションの調和、高齢化社会を迎えた先進国における医療システムの確立、医薬品資源の偏在の解消や開発途上国に対する良質な医療の提供システムの構築など、国際化と関連する多くの課題を抱える。医薬品の開発においては、優れた医薬品を患者に早く提供するために、世界各地域の医薬品承認審査の基準の合理化・標準化が進められている。こうした国際的な規制やその調和、協調に常に関わるグローバルな環境は」、薬学の1つの特徴となるものである」ということで、例えば、薬学領域におけます国際的な科学、サイエンスと医療、職能の団体である国際薬学連合(FIP)、それから、世界に今5つの医療職種、医師、歯科医師、看護師、フィジカルセラピーの専門家、薬剤師が世界医療人会議という形で活動しておりますが、その活動、あるいはWHOの活動を少し本文の中には紹介させていただいております。
 「教育・研究面のグローバル化」に関しましては、「グローバル化の推進のためには、人材の国際交流、研究者、研究機関の国際連携、国際共同研究の推進が不可欠である。さらに、学部、大学院教育の両者における英語教育の充実を図ることが求められる」としております。
 次に3番目、「医薬品開発体制のグローバル化」につきましては、日米欧医薬品規制調和国際会議、いわゆるICHといったものをベースにして、薬学は非常にグローバル化に向かい、特に医薬品の開発に関しては、こういう体制で動いている。最後に、情報化は、一般論かもしれませんけれども、安心、安全を保障する新しい健康社会秩序の形成に、情報技術の発展と情報化社会の成熟というものが非常に貢献するということでございまして、これをグローバル化、情報化への対応としました。
 次、4項目目の「社会のニーズへの対応」でございまして、これは本文で申しますと15ページの一番下のところでございます。これは、(1)から(7)までの箇条書きで内容を書いてございます。
 (1)「薬学と社会ニーズ」では、「医薬品が人間の生命と健康の保全に直接関わることから、薬学は社会に対して大きな責任を持つ。長期的に持続可能で質の高い医療提供体制を維持するために、薬学が果たすべき役割は大きい」。
(2)「医療と薬事制度」。薬剤師が「専門職として、国民および他の専門職からも尊敬を受け、職能が確立されるように、教育やキャリアパス制度の確立、研究教育施設と教員の人員充実、さらに国際性に富む人材養成に向けた体制整備が強く求められる」。
 (3)「医療と薬剤師職能」。医療機関においては、医師やコメディカルと協力して、薬剤師がチーム医療を実施できる体制を整備する。それから、薬学的観点からの提言を介した薬物治療の安全性担保、患者に対する薬物療法の最適化の推進がその結果として可能になる。同様の視点は、在宅医療におけるチーム医療のあり方を考える場合にも重要。
 (4)「地域医療と薬剤師」。在宅医療を実践するためにということで、連携が非常に大事だと。これは、基幹病院と地域病院とか、そういった関係を少し細かく、実際には書かせていただいています。それから、専門薬剤師制度の充実が非常に重要だ。
 (5)「少子・高齢化社会における医療と薬学」。小児及び高齢者の薬物治療というのが非常に重要な問題でございまして、医薬品の適正使用を推進するために、薬学はこういった問題に対して積極的に取り組まないといけない。
 生命倫理の問題では、倫理性は当然でありますが、特に、橋渡し研究(Translational Research)等々で薬学研究者が医療に非常に近いところで活動しております。もちろん職能としての薬剤師の方は当然でございますけれども、そういったことも含めて、倫理面が非常に大事だということをここでは書かせていただきます。
 次へ移らせていただきます。5番目の項目の「これからの人材育成」。本文で申しますと19ページからでございます。これは、まとめのほうでは最初のページ、大きくは薬学教育、大学院教育、研究者の育成、生涯教育と分けて書いておりますので、その1つずつの要約を最初に、資料1-2で説明させていただきます。
 「これからの人材育成」。まず、薬学教育でございますが、「薬学教育改革によって、薬学では、創薬科学研究者など多様な人材養成を目的とする4年制学部教育と、高度な職能を持つ薬剤師の育成を目指した6年制学部教育が併置され、薬学の学術・教育の充実、高度化への取り組みが進んでいる。優れた創薬研究者や薬剤師を社会に供給することは薬学の重要な責務である。将来における適正な薬剤師の数についても十分な検討が望まれる」。これにつきましては、ちょっと補足いたしますと、前回のこの会議でも議論になっていたかと思いますし、全体で、ほかの職能、医師等々との議論の中でも、やはり職能に関して、将来にわたる適正数というものをきっちり予測して教育体制をつくるということが非常に大事だということを他の領域からもご指摘いただき、これを意見といたしました。
 ただ、これにつきましては逆に私のほうからは、医師、歯科医師等々と違いまして、薬剤師の場合は、薬剤師として医療現場で働くだけではなく、例えば、企業とか多方面で活躍する薬剤師の方がおられますので、そういった意味も含めた検討が必要だろうという議論はしております。いずれにしましても、この問題につきましては他の職能からも、この議論の重要性を指摘するご意見をいただいております。
 大学院教育。「薬学大学院教育の再構築においては、学部教育から大学院教育に至る一貫した教育体制の構築と体系的な教育内容の整備が必要である。体制整備の視点からは、新しい制度への移行に伴う教員数や質の確保が極めて重要であり、教育改革の推進は教育体制の整備と不可分であることを強く認識する必要がある」。 (3)「研究者の育成」。「研究者育成に関しては、基礎薬科学領域の研究者と共に臨床薬学・医療薬学研究を担う研究者の育成も重要であり、育成体制とキャリアパスの整備が欠かせない。今後、我が国においては6年制薬学学部教育に加えさらに4年制大学院で研究経験を積んだpharmacist-scientistsとも呼ぶべき研究者が、米国における薬事行政や医薬品産業において活躍する医学教育を受けた研究者、medical-scientistsという言葉かと思いますけれども、その役割を担うことが期待される。」
 生涯教育につきましては、「高度化した医療、また変化の激しい社会・産業構造のもとで、学部教育、大学院教育と一体化した継続的な生涯教育のシステムを構築して、質の高い薬剤師の育成を進めなければならない」ということでございます。
あと、大学院教育のところ、研究者の育成、生涯教育につきまして、もう少し中身を、繰り返しになりますけれども、紹介させていただきたいと思います。
 大学院教育でございますが、「6年制学部に基礎を置く大学院における養成人材像を考えると、病院・薬局で働く薬剤師の養成に加え、医薬品の研究・開発・情報提供等に従事する研究者や技術者、医薬品承認審査、公衆衛生などの行政従事者、薬学教育に携わる教員等、多様な人材が養成されることになる」。再度書いてございますけれども、「医学部・医系大学院において臨床に従事しながら研究ができる医師(physician-scientists)」、これはもう少し狭い意味で言っておりますが、「と同様、薬剤師の養成においても、職能教育にとどまらず、臨床に従事しながら研究ができる、あるいは臨床の経験を生かして他の研究領域で活躍する薬剤師を輩出できるよう、実務に密接した研究能力を習得させる教育を行う必要がある」。

 次でございます。「4年制の学部に基礎を置く大学院においては、薬学が関わる広範な基礎科学に重点が置かれ、医薬品創製に関わる研究領域としての薬科学の学修・研究を通じて、創薬科学、生命科学の諸領域の発展に寄与する研究者の育成が推進される」。その下は内容を書いておりますけれども、「薬学の広範な基礎科学の統合・体系化、大学院の教育・研究環境の整備などの課題に取り組むことにより、大学院教育の再構築が進められ、深い専門性と共に広範な分野で横断的・総合的能力を有する優れた創薬科学研究者を輩出する教育・研究が行われることが期待される」というのが、いわゆる4年制学部に基盤を置く大学院の目標として掲げているものでございます。
 次に参らせていただきます。大学院教育のさらにその先でございますけれども、「将来に向けた人材育成という観点からは、衛生薬学領域で活躍する人材の育成も重要な課題として挙げられる。今後、社会の安心・安全という視点から、地域に根をおろした科学者として、薬剤師が医薬品のみならず、食物、栄養補助食品、あるいは環境における安全問題に対して大きな役割を果たすことが期待され」。こういったものに対応した教育体制というものも大事であるというわけでございます。
 最後、繰り返しでございますが、「新しい制度への移行に伴う教員数や質の確保が極めて重要であり」ということでございまして、また、同時に学生に対しては、「十分な大学院進学率を確保するためには、教育内容の充実を図ると共に、奨学金交付等による資金援助、修了後のキャリアパスの整備など、早急に対応しなければならない問題が残されている」というわけでございます。
 次、(3)の「研究者の養成」のところを少し具体的にお話をさせていただきます。
 研究者というのは、創薬科学者はもちろんでございますが、医薬品の開発及びその適正使用を担う臨床薬学・医療薬学の研究者。これは例えば6年制の学部の上に立つ4年制大学院を出た研究者ということかと思いますが、こちらも重要で、全体として医薬工連携などを基盤とした新しい教育システムを構築する。これは、例えば、「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略」等々にも対応する方針だというわけでございます。
 また、臨床薬学、医療薬学における教育改革の視点ということで、少し繰り返しになることが書いてございます。これは、やはり薬学委員会の中でも議論になったことでございまして、きっちり述べておかないといけないということで入っております。
3点目でございますが、「一方、近年薬学の学部教育の重心が、より高い職能を有する薬剤師養成を目的とする6年制の臨床薬学教育に移ったために、逆に基礎薬学の教育・研究が急速に衰退する可能性が危惧されている。創薬科学、基礎薬学の分野の人材育成や研究成果を通じた社会貢献が不十分にならないように、歴史と実績のある本分野についても維持・発展させる必要がある」ということでございます。
 最後に、生涯教育のところ、(4)でございますけれども、これは23ページの文章でございます。
 特に6年制薬学教育において、生涯教育が重要だということでございますが、新しい教育においては、実務実習を病院薬剤部、開局薬局という大学の外部に委託することにより、実務関連の教育が行われる。これは、新しい教育制度の特徴の1つでありますが、薬剤師の教育への参画は薬剤師自身の生涯研修の推進という観点からも大事なことでありますし、医療現場から大学へのフィードバックの促進が期待されるなど、多くの利点があるということでございまして、医療現場での他職種との連携、スキル・ミックスを図ることは、薬剤師の職域及びニーズの拡大にもつながるとまとめております。
 また、これは、今日は申しませんでしたけれども、ほかのところで、やはり医師の職能の一部、必要なものは他職種へ移すということも考えないといけないというようなことが臨床医学でも書かれておりますし、我々のほうも書いておりますので、健康科学もそうでございますけれども、医療全体のシステムの見直しということも議論にはなっております。
 最後でございます。認定薬剤師制度、専門薬剤師制度、これは、特に医師のほうでは非常に進んでいるわけでございますが、まだそれでも問題も抱えておられるということかと思います。薬剤師に対する各種の研修と認定制度の整備、発展、普及を図ることが、生涯教育の推進、ひいては薬剤師の資質及び専門性の向上につながるということ。 それから、中身では、専門薬剤師の制度と、大学院のあり方、これは当然、一体にはなりませんけれども、ある種の連携を考えるということは、当然、選択肢として挙がってくることかと思いますので、そういうことにも少し記述を入れさせていただきました。
 全体として、薬学全体を俯瞰した性格の文書でございますので、一般論がつながっているという面は多いかと思いますが、薬学に対する1つの大きな全体像の整理ということで、いろんな関連医療職種とか、あるいは、いろんなサイエンス他研究者と情報を共有しながら、作成された文書ですので、そういう意味では、本報告は、ある程度客観性を持った内容になっているかと思っております。
 以上でございます。

【永井良三座長】
 ありがとうございました。それでは、ただいまのご説明に、何かコメント、ご発言、ご質問、よろしくお願いいたします。
 この文書は、もうほとんどまとまったということですか。

【橋田委員】
 はい、査読もほぼ終わりましたので、来月早々に開催されます総会で承認されれば表出されることになります。ですから、これがほぼ最終案でございます。

【永井良三座長】
 私の印象で1つ。概して、どの領域もそうですが、開発というのはもちろん大事なんですが、医療では既に開発されたものがほんとうに効いているのかという再評価が十分でありません。医学でEBMがそういう領域で、地味な仕事ですが極めて大きなインパクトをもたらします。そういう薬物治療の最適化として、臨床疫学や薬剤疫学などがEBMに貢献します。それがグローバル化や情報化にも関係するということを、もう少し強調されたらという気がします。次の機会でもよいと思いますが。

【橋田委員】
一般的な意味での疫学ですとかそういうことは触れているのですけれども、確かにそういう視点で、もう一度薬物治療を、むしろ薬学の専門性できっちり見直すとか再評価に貢献するということについては、確かにもう一歩踏み込んだほうが良かったかもしれません。

【永井良三座長】
臨床試験に薬剤師さんが入る、あるいは、薬剤師さんの立場から、疫学をどう考えるか。
これは、単に技術的なことだけではなくて、社会のほうもこの薬は何%有効ですと言っても困るわけですね。患者が結構困るわけです。それをきちんと説明できる人がいまだにあまりいない。そういう多少哲学的なものも入ってくると思います。
 何かご意見ございますでしょうか。
 今後、この資料はどういう形で使われるのでしょうか。

【橋田委員】
 一般的には、学術会議から先ほど申しましたように、大きな学術全体の立場からの社会への提言が出て、その下の3部会からの提言が続き、委員会の文書は報告として、以上全部が表出という形で出てまいります。
そこれは薬学委員会の報告でございますけれども、学術会議全体としてそういう性格の文書ですので、関連の行政各方面等々に、お届けさせていただいて、それを行政施策に反映していただくような形になります。その意味で、まさに、この検討会がその場かと思っております。

【正木委員】
 感想等でもよろしいでしょうか。

【永井良三座長】
 はい。

【正木委員】
 ほんとうに薬学に関する研究等が、基礎科学から応用科学まで幅広いというのがよくわかりましたし、薬剤師あるいは薬学教育を受けた方々の将来に発展していく方向性というのがすごく報告書に出ていて、とても夢がある報告書だなという感想を持ちました。
 それで、この報告書が書かれている内容に関して、今度は実現していく方向が必要だと思うんですが、それに対して協力機関、大学だけではなく、いろんな形のところがこれを実現化していくために、教育体制なり、あるいは知恵を絞っていく必要があるのかなと思うんですが、それはどういう場所等を想定していらっしゃるんでしょうか。

【橋田委員】
 永井先生にも、今、言っていただいたことですが、制度的にこれがすぐに例えばこういう場に反映されて、行政の方針になるとかということではないと思います。
ただ、申しましたようにこの検討会がその場のひとつでございますけれども、例えば、教育を考える部分でございましたら文部科学省の場で、それから、医療全体の話でございましたら厚生労働省へ本報告が出てまいりますので、それが社会の問題意識。行政の問題意識とも非常につながるところで、各種作業における、意見とりまとめのたたき台としては十分ご活用いただけると思っております。
 あと、学会に関しましては、これは関連学協会から意見をいただいてつくったものでございますので、学会のミッションと申しますか、活動の目標として、本報告が大きな方針をつくることになると思います。
 それから、今、言っていただきましたけれども、一番個別のところへ話をおろしていきますと、例えば大学ではこういう薬学の全体像、枠組みの中で、それぞれの大学のミッションとか特徴、個性を考え各大学のバックグラウンドに応じた充実した教育をしていただく。そういう形で反映されていくものだとは思っております。

【竹中委員】
少なくとも文部科学大臣と厚生労働大臣には、学術会議の薬学委員会から直接ご説明されたらいかがなものでしょうか。

【橋田委員】
 学協会等々といろいろ相談をしながら作業を進めましたが、あと、いろいろな関連機関とも、機会があればご相談させていただいています。まさに、製薬協はその代表だと思いますので、次のステップでは、ぜひ産業界と教育といった関係の中で、本報告が橋渡し役になり、いい方向につながればと思っております。

【竹中委員】
 産業界も期待しておりますので、製薬協では、総会などがありますので、そういうところでご説明いただければ。

【望月眞弓委員】
 資料1-2のほうで、3ページ目になるでしょうか。「これからの人材育成」、5番の項目のところなんですが、(2)の「大学院教育」のところなんですけれども、学部教育から大学院教育に至る一貫した教育体制の構築と体系的な教育内容の整備、すごく大事なことだと思うんですね。
それで、最近、そろそろ大学院のことを考えましょうということで議論をするんですが、薬学が養成する創薬研究者というのはどうあるべきかというところに、この一貫した教育のあり方、体制というのが重要なんだろうと思っておりまして、pharmacist-scientistsと言われる人は6年制の上に立つ4年制の博士課程を修了する人かなというふうに、これを読ませていただいて思ったんですが、薬科学科の上に立つ修士、それから博士の前期・後期課程、そこは学部教育から大学院教育に至る一貫した教育体制というので一くくりにできない他学部の方とかも入ってくる可能性もある大学院になろうかと思うんですが、そのあたりは何かご議論があったんでしょうか。

【橋田委員】
 本報告は、比較的一般論で書いてございますので、各論と申しますか実際の教育現場でいろんなケースがあるということについては、それ以上掘り下げた議論をしておりませんが、今、先生がおっしゃいましたように、確かに、例えば医薬連携、薬工連携等々、他学部と教育、研究の両面で融合している仕組みがたくさんございますので、そういった中で一貫性、体系性とをどういうふうに調和させるかというのが非常に大事な問題だとは思います。
 ただ、一貫・体系化と申しますけれども、これは一回生に入ったときから、全部枠を決めてやらないといけないという意味ではないかと思いますので、むしろ、ある種の柔軟性を十分担保して、当然大学院の特に上の学年では、他学部・他学研究科のようにいろんな領域との融合的なもの、我々も今、私学の理工学部と融合した教育のシステムを検討していますが、そういったものも広く対応できるように考えることは大事だと思います。ただ、全体として見たときに、個別にあるいは輪切り的な発想でシステムを組むんじゃなくて、やはり思想としての一貫性を大事にすべきだというのが、一応、全体の趣旨でございます。

【永井良三座長】
 厚労省のほうでは、今後レギュラトリーサイエンスをもっと強化しようという話があります。これは薬事制度という中に入ってくると思いますが、レギュラトリーサイエンスをどう位置づけるかについて議論されましたでしょうか。

【橋田委員】
 言葉では養成人材像のところとかで、そういう方向の必要性には触れています。具体的には、例の革新的医薬品。医療機器創出のための5か年戦略に触れて、薬事制度、レギュラトリーサイエンスに関する議論が重要だと。
それから、ICHに関して触れまして、特に製薬産業はグローバルな領域だと強調しておりまして、その接点がレギュラトリーサイエンスですので、そういう形での重要性を議論しております。しかし、今先生がおっしゃいましたのはもう一歩踏み込んで、ほんとうに薬学が従来の枠を超えて、そういう新しい領域に対してもっと積極的に責任を持つ、あるいは発言をすべきだというお話かと思いますけれども、そこがどこまで議論できているかは、少し自信がありません。

【永井良三座長】
 よろしいでしょうか。
 そういたしましたら、また何かご意見ありましたら、橋田先生にお寄せいただくということにさせていただきます。
 予定の審議は以上ですが、文部科学省から報告事項ということでご説明をお願いいたします。

【吉田薬学教育専門官】
 それでは、次に、参考資料1と参考資料2ということで説明をさせていただきたいと思います。
 参考資料1につきましては、先ほど申し上げましたとおり、平成22年度開設予定の大学院(修士課程)の一覧というものを用意させていただきました。これは、昨年、前回の会議でも中間的な報告ということでさせていただきましたけれども、すべての大学院が出そろいましたので、もう一度改めてご報告させていただきます。
 先ほど、審議官からもご説明いただきましたように、39の大学から、この4月設置をしたいという手続がなされております。前回35の大学でしたので、10月からさらに4大学増えまして、こういう形になったというところをご報告させていただきたいと思います。
 トータルの定員数でございますけれども、これ全体を足すと1,195という数になります。すみません、これ、合計を入れてないんですが、ただ、前回の会議のときにも、一番上の例えば北海道大学というようなところは生命科学専攻ということで、薬学だけではなくほかの分野も入っていますので、トータルでは薬学の学生の定員というのは若干変わってくるのかなというところもあわせてご紹介させていただきます。というのが、参考資料1でございます。
 次に、参考資料2でございます。薬学教育改革フォーラムということで、資料を用意させていただいたところでございます。
 これにつきましては、上から3番目のテーマのところをごらんいただきますと、「将来に向けて薬学教育改革を進める上での新たな視点」ということをテーマといたしまして、将来、薬学教育出身者が活躍できる場の拡大というものを図るという点から、参考になるための情報提供という趣旨で、こういった企画を私どもでさせていただいたということで、今月の19日にこういったものを開催させていただくというところでございます。
 対象といたしましては、大学での教学あるいは就職ですとか実習を担当する関係の方々にご参加いただいて、内容的には既にさまざまな職種でご活躍いただいております薬学教育出身者の方からの講演というものを中心に行わせていただこうと。これまで、あまりこういった機会がございませんでしたので、初めての試みということでございます。
 少し事務的な話になってきますが、先週末に、各大学にはこういったものを開催させていただくということで開催通知を送らせていただいたところでございますけれども、こうした取り組みについては、今後もいろんな場で必要に応じて実施をさせていただくということも必要だと思いますし、また、本検討会では前回の会議でもいろいろご意見等をちょうだいいたしましたけれども、薬学教育そのものの人材養成の規模、あるいは就職先、進学先といった、そういったところについても、そのあり方についてもご議論いただいてございますので、こういった形で委員の方々にも情報提供させていただくという趣旨で、本日は参考資料ということで配付をさせていただいたという次第でございます。
 参考資料については以上でございます。

【永井良三座長】
 ありがとうございます。
 何か、ご質問ございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。もし、ご意見ございませんでしたら、予定の時間になりましたので、事務局からの連絡事項をお願いしたいと思います。

【吉田薬学教育専門官】
 それでは、今日、基礎データをとるということで、いろいろ先生方にもご議論いただいてご意見をたくさんちょうだいいたしましたので、それらを踏まえて、また調査票等を整理させていただきたいと思います。
 また、次回の開催日程でございますけれども、その調査を行った後、取りまとめをさせていただいた上で、申しわけないんですけれども、具体的な日程はまた調整をさせていただきたいと思います。
 それと、次回の議事では、今のデータをごらんいただきながら机上にもご用意させていただきますので、今日お配りした資料2の論点メモの各項目について、個別にまたご議論、ご審議をいただきたいと考えてございます。
 事務局からは以上でございます。

【永井良三座長】
 ありがとうございます。
 それでは、今日の検討会、これで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

 

お問合せ先

高等教育局医学教育課

電話番号:03-5253-4111(代表)(内線3326)
ファクシミリ番号:03-6734-3390
メールアドレス:igaku@mext.go.jp