資料4 薬学準備教育ガイドライン(例示)(案)

薬学準備教育ガイドライン(例示) (案)

(1)人と文化
GIO 人文科学、社会科学および自然科学などを広く学び、物事を多角的にみる能力を養う。

下記の到達目標のうち複数のものをバランスよく達成する。

1. 人の価値観の多様性が、文化・習慣の違いから生まれることを、実例をあげて説明できる。
2. 言語、歴史、宗教などを学ぶことによって、外国と日本の文化について比較できる。
3. 文化・芸術に幅広く興味を持ち、その価値について討議する。(態度)
4. 文化活動、芸術活動を通して、自らの社会生活を豊かにする。(態度)
5. 日本社会の成り立ちについて、政治、経済、法律、歴史、社会学などの観点から説明できる。
6. 日本の国際社会における位置づけを、政治、経済、地理、歴史などの観点から説明できる。
7. 宇宙・自然現象に幅広く興味を持ち、人との関わりについて説明できる。
8. 地球環境保護活動を通して、地球環境を守る重要性を自らの言葉で表現する。(態度)

※到達目標達成のための学問領域の例示
宗教、倫理、哲学、文学、外国語、芸術、文化人類学、社会学、政治、法律、経済、地理、歴史、
科学史、宇宙、環境

(2)人の行動と心理
GIO 人の行動と心理に関する基本的な知識と考え方を修得する。

【1.人の行動とその成り立ち】
1. 行動と知覚、学習、記憶、認知、言語、思考、性格との関係について概説できる。
2. 行動と人の内的要因、社会・文化的環境との関係について概説できる。
3. 本能行動と学習行動について説明できる。
4. レスポンデント条件づけとオペラント条件づけについて説明できる。
5. 社会的学習(モデリング、観察学習、模倣学習)について概説できる。
6. 健康行動の理論(健康信念モデル、変化のステージモデルなど)について概説できる。

【2.動機づけ】
1. 生理的動機、内発的動機、および社会的動機について概説できる。
2. 欲求とフラストレーション・葛藤との関連について概説できる。
3. 適応(防衛)機制について概説できる。

【3.ストレス】
1. 主なストレス学説について概説できる。
2. 人生や日常生活におけるストレッサーについて例示できる。
3.  ストレスコーピングについて概説できる。

【4.生涯発達】
1. こころの発達の原理について概説できる。
2. ライフサイクルの各段階におけるこころの発達の特徴および発達課題について概説できる。
3. こころの発達にかかわる遺伝的要因と環境的要因について概説できる。

【5.パーソナリティー】
1. 性格の類型について概説できる。
2. 知能の発達と経年変化について概説できる。
3. 役割理論について概説できる。
4. ジェンダーの形成について概説できる。

【6.人間関係】
1. 人間関係における欲求と行動の関係について概説できる。
2. 主な対人行動(援助、攻撃等)について概説できる。
3. 集団の中の人間関係(競争と協同、同調、服従と抵抗、リーダーシップ)について概説できる。
4. 人間関係と健康心理との関係について概説できる。

(3)薬学の基礎としての英語
GIO 薬学分野で必要とされる英語に関する基本的事項を修得する。

【1.読む】
1. 科学、医療に関連する英語の代表的な用語を列挙し、その内容を説明できる。
2. 科学、医療に関して英語で書かれた文章を読んで、内容を説明できる。

【2.書く】
1. 自己紹介文、手紙文などを英語で書くことができる。(知識・技能)
2. 自然科学各分野における基本的単位、数値、現象の英語表現を列記できる。
3. 科学、医療に関連する英語の代表的な用語、英語表現を列記できる。
4. 科学、医療に関連する簡単な文章を英語で書くことができる。(知識・技能)

【3.聞く・話す】
1. 英語の基礎的音声を聞き分けることができる。(技能)
2. 英語の会話を聞いて内容を理解して要約できる。(技能)
3. 英語による簡単なコミュニケーションができる。(技能・態度)
4. 科学、医療に関連する代表的な用語を英語で発音できる。(技能)

(4)薬学の基礎としての物理
GIO 薬学を学ぶ上で必要な物理学の基礎力を身につけるために、物質および物体間の相互作用などに関する基本的事項を修得する。

【1. 基本概念】
1. 物理量の基本単位の定義を説明できる。
2. SI単位系について説明できる。
3. 基本単位を組み合わせた組立単位を説明できる。
4. 物理量にはスカラー量とベクトル量があることを説明できる。

【2. 運動の法則】
1. 運動の法則について理解し、力、質量、加速度、仕事などの相互関係を説明できる。
2. 直線運動、円運動、単振動などの運動を数式を用いて説明できる。
3. 慣性モーメントについて説明できる。

【3.エネルギー】
  1. エネルギーと仕事の関係ついて説明できる。
  2. エネルギーの種々の形態(熱エネルギー、化学エネルギー、電気エネルギーなど)の相互変換について、例を挙げて説明できる。

【4.波動】
  1. 光、音、電磁波などが波であることを理解し、波の性質を表す物理量について説明できる。

【5.レーザー】
1. レーザーの性質を概説し、代表的な応用例を列挙できる。

【6.電荷と電流】
1. 電荷と電流、電圧、電力、オームの法則などを説明できる。
2. 抵抗とコンデンサーを含んだ回路の特性を説明できる。

【7.電場と磁場】
1. 電場と磁場の相互関係を説明できる。
2. 電場、磁場の中における荷電粒子の運動を説明できる。

【8.量子化学入門】
  1. 原子のボーアモデルと電子雲モデルの違いについて概説できる。
  2. 光の粒子性と波動性について概説できる。
  3. 電子の粒子性と波動性について概説できる。

(5)薬学の基礎としての化学
GIO 薬学を学ぶ上で必要な化学の基礎力を身につけるために、原子の構造から分子の成り立ちなどに関する基本的事項を修得する。

【1.物質の基本概念】
1. 原子、分子、イオンの基本的構造について説明できる。
2. 原子量、分子量を説明できる。
3. 原子の電子配置について説明できる。
4. 周期表に基づいて原子の諸性質(イオン化エネルギー、電気陰性度など)を説明できる。
5. 同素体、同位体について、例を挙げて説明できる。

【2.化学結合と分子】
1. イオン結合、共有結合、配位結合、金属結合の成り立ちと違いについて説明できる。
2. 分子の極性について概説できる。
3. 共有結合性の化合物とイオン結合性の化合物の性質(融点、沸点など)の違いを説明できる。
4. 代表的な結晶構造について説明できる。
5. 代表的な化合物の名称と構造を列挙できる。

【3.化学反応を定量的に捉える】
1. 溶液の濃度計算と調製ができる。(技能)
2. 質量保存の法則について説明できる。
3. 代表的な化学変化を化学量論的に捉え、その量的関係を計算できる。(技能)
4. 酸と塩基の基本的な性質および強弱の指標を説明できる。
5. 酸化と還元について電子の授受を含めて説明できる。

【4.化学反応の基本操作】
1. 化合物の秤量、溶解、抽出、乾燥、ろ過、濃縮を実施できる。(技能)

(6)薬学の基礎としての生物
GIO 薬学を学ぶ上で必要な生物学の基礎力を身につけるために、細胞、組織、器官、個体、集団レベルでの生命現象と、誕生から死への過程に関する基本的事項を修得する。

【1. 生体の基本的な構造と機能】
1. 多細胞生物である高等動物の成り立ちを、生体高分子、細胞、組織、器官、個体に関係づけて概説できる。
2. 動物、植物、微生物の細胞について、それらの構造の違いを説明できる。
3. 細胞内器官の構造と働きについて概説できる。
4. 細胞膜の構造と性質について概説できる。
5. ウイルスとファージについて概説できる。

【2. 生体の調節機構】
1. 生体の持つホメオスタシス(恒常性)について概説できる。
2. 生体の情報伝達系、防御機構(神経系、内分泌系、免疫系)について概説できる。

【3.エネルギー】
1. 運動エネルギー、ポテンシャルエネルギー、熱エネルギー、化学エネルギーなどの相互変化について例をあげて説明できる。

【4.代謝】
1. 代謝(異化、同化)について説明できる。
2. 独立栄養生物と従属栄養生物について説明できる。
3. 嫌気呼吸および酸素呼吸について概説できる。
4. 光合成について概説できる。

【5.細胞分裂・遺伝・進化】
1. 細胞の増殖、死について概説できる。
2. 遺伝とDNAについて概説できる。
3. 遺伝の基本法則(メンデルの法則など)を説明できる。
4. 遺伝子の組換え、連鎖を説明し、組換え価を求めることができる。
5. 染色体地図について説明できる。
6. 減数分裂について概説できる。
7. 性染色体による性の決定と伴性遺伝を説明できる。
8. 進化の基本的な考え方を説明できる。

【6.発生・分化】
1. 卵割について説明できる。
2. 個体と器官が形成される発生過程を概説できる。
3. 外胚葉、中胚葉、内胚葉から分化する組織を特定できる。
4. 細胞の分化の機構について概説できる。
5. 多細胞生物における、細胞の多様性と幹細胞の性質について概説できる。

【7.誕生・成長・老化】
1. 生殖の過程(性周期、妊娠、出産など)を概説できる。
2. ヒトの成長、老化に関する基本的現象を説明できる。
3. 老化に関する学説を概説できる。

【8.生態系】
1. 個体群の変動と環境変化との関係について例示できる。
2. 生態系の構成について概説できる。

【9.総合演習】
1. 植物組織の切片を作製し、顕微鏡で観察しながら構造を説明できる。(技能)
2. 動物の組織標本を顕微鏡で観察し、構造を説明できる。(技能)
3. 倫理に配慮して実験動物を取扱う。(技能・態度)
4. 実験動物を解剖し、臓器の配置および形態を観察する。(技能)

(7)薬学の基礎としての数学・統計学
GIO 薬学を学ぶ上で基礎となる数学・統計学に関する基本的知識を修得し、それらを薬学領域で応用するための基本的技能を身につける。

【1.数値の扱い】
1. 大きな数や小さな数をSI接頭語、べき、および対数を使い、的確に表すことができる。(知識・技能)
2. 有効数字の概念を説明し、有効数字を含む値の計算ができる。(知識・技能)

【2.種々の関数】
  1. 指数関数および対数関数を、式およびグラフを用いて説明できる。(知識・技能)
  2. 三角関数を、式およびグラフを用いて説明できる。(知識・技能)

【3.微分と積分】
  1. 極限の基本概念を概説できる。
  2. 導関数の基本概念を理解し、代表的な関数の微分ができる。(知識・技能)
  3. 原始関数の基本概念を理解し、代表的な関数の不定積分および定積分ができる。(知識・技能)
  4. 微分方程式の成り立ちを理解し、基本的な微分方程式(変数分離型)の一般解と特殊解を求めることができる。(知識・技能)
  5. 偏微分について概説できる。

【4.確率】
 1. 場合の数、順列、組合せの基本概念を理解し、それを用いた計算ができる。(知識・技能)
 2. 二項分布および正規分布について概説できる。
 3. 確率の定義と性質を理解し、計算ができる。(知識・技能)

【5.統計の基礎】
1. 測定尺度(間隔、比率尺度、順序尺度、名義尺度)について説明できる。
 2. 大量のデータに対して、適切な尺度を選び、表やグラフを用いて的確に表すことができる。(技能)
3. 平均値、分散、標準誤差、標準偏差などの基本的な統計量について説明し、求めることができる。(知識・技能)
4. データの相間と、それに基づく基本的な回帰分析(直線〔線形〕回帰)ができる。(知識・技能)
  5. 母集団と標本の関係について説明できる。
  6. 検定の意義について説明できる。

(8)情報リテラシー
GIO 情報伝達技術(ICT)の発展に合わせた効果的なコンピューターの利用法とセキュリティーの知識を身につけ、必要な情報を活用する能力を修得する。

【1.基本操作】
1. コンピューターを構成する基本的装置の機能と接続方法を説明できる。
2. スマートフォン、タブレット端末などのモバイル機器を安全かつ有効に利用できる。(知識・技能)
3. 電子データの特徴を知り、適切に取り扱うことができる。(技能)
4. インターネットの仕組みを概説できる。
5. 無線LANを使用するための注意点について概説できる。
6. マナーを守り、電子メールの送信、受信、転送などができる。(技能・態度)
7. インターネットに接続し、Webサイトを閲覧できる。(技能)
8. 検索サイト、ポータルサイトの特徴に応じて、必要な情報を収集できる。(技能)

【2.ソフトウェアの利用】
1. ソフトウェア使用上のルール、マナーを守る。(態度)
2. ワープロソフト、表計算ソフト、プレゼンテーションソフトを用いることができる。(技能)
3. グラフィックソフト、化学構造式描画ソフトを用いることができる。(技能)
4. 画像ファイルの形式とその特徴に応じて、データを適切に取り扱うことができる。(技能)
5. データベースの特徴と活用について概説できる。 

【3.セキュリティーと情報倫理】
1. ネットワークセキュリティーについて概説できる。
2. アカウントとパスワードを適切に管理できる。(技能・態度)
3. データやメディアを適切に管理できる。(態度)
4. 著作権、肖像権、引用と転載の違いについて説明できる。
5. ネットワークにおける個人情報の取り扱いに配慮する。(態度)
6. ソーシャルネットワークサービス(SNS)の種類と特徴、留意すべき点について説明できる。
7. 情報倫理、セキュリティーに関する情報を収集することができる。(技能)
8. コンピューターウイルスの侵入経路に応じて、適切な予防策を講じることができる。(技能・態度)

(9)プレゼンテーション
GIO 情報をまとめ、他者へわかりやすく伝達するための基本的事項を修得する。

【1.プレゼンテーションの基本】
1. プレゼンテーションを行うために必要な要素を列挙できる。
2. 目的に応じて適切なプレゼンテーションを構成できる。(技能)
3. 目的、場所、相手に応じた、わかりやすい資料を作成できる。(技能)

【2.文書によるプレゼンテーション】
1. 定められた書式、正しい文法に則って文書を作成できる。(知識・技能)
2. 目的(レポート、論文、説明文書など)に応じて適切な文書を作成できる。(知識・技能)

【3.口頭・ポスターによるプレゼンテーション】
1. 口頭発表とポスター発表の違いと特徴について説明できる。
2. 課題に関して意見をまとめ、決められた時間内で発表できる。(技能)
3. 効果的なプレゼンテーションを行う工夫をする。(技能・態度)
4. 質問に対して的確な応答ができる。(技能)
5. 他者のプレゼンテーションに対して、優れた点および改良点を指摘できる。(知識・態度)

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高等教育局医学教育課