医学教育カリキュラム検討会(第2回) 議事録

1.日時

平成21年2月13日(金曜日)10時~12時

2.場所

金融庁9階共用会議室-2

3.議題

  1. 地域や診療科に必要な医師を養成・確保するための方策(関係者からのヒアリング)
  2. その他

4.出席者

委員

荒川委員、石川委員、小川委員、北村委員、田中委員、辻本委員、寺尾委員、名川委員、奈良委員、平出委員、福田委員、吉田委員、吉村委員

5.議事録

○荒川座長 第2回を始めたいと思います。

 この前の第1回も皆さん方から十分ご発言いただきまして、この医学カリキュラムにつきましての問題点を議論してまいりましたが、きょうは地域あるいは診療科に必要な医師の養成・確保に関しまして、関係する方々からのヒアリングをして、先生方にこの会議の委員をお願いしております。

 最初に事務局から、きょうの委員の出欠状況並びに配付資料の確認をお願いします。

○事務局 大変お忙しい中をお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 本日の出欠状況につきましては、お手元の資料の座席表のとおりでございますので確認していただきたいと思います。なお、オブザーバーでございます厚労省の杉野医事課長につきましては所用のためご欠席され、かわりに石川課長補佐にご出席いただいていることを申し上げておきます。

 次に配付資料の確認をさせていただきます。本日の配付資料、議事次第に続きまして、資料1といたしまして医学教育カリキュラム検討会第1回の概要、資料2といたしまして、地域や診療科に必要な医師の養成・確保に関する基礎資料、それから資料3以降は、本日ご出席いただいております邉見先生ご提示の資料が資料3の枝番1と枝番2、それから、本日同じくご出席の髙橋先生からいただいていますのが資料4、それから木村先生からいただいておりますのが資料5、以上でございます。

 なお、会議の議事録につきましては近々に皆様方にご送付いたします。その後、皆様方のご確認をいただいた上で、こちらのほうでホームページ上に公開させていただきますのでよろしくお願いいたします。なお、その他の資料の過不足等がございましたらお教えいただきたと思います。

○荒川座長 それでは、きょうは地域医療の立場から医学教育に求められることをお伺いしたいということで、3人の方々に今日来ていただきまして、本日は大変にありがとうございます。

 まず私からご紹介したいと思います。お1人は自治体病院協議会会長、赤穂市民病院長の邉見先生が自治体の立場からお話しします。よろしくお願いいたします。

 続きまして佐久総合病院介護老人保健施設長、それから佐久総合病院医師臨床研修プログラム責任者であります髙橋先生からは、地域の病院の立場からお話があります。

 それから、島根県の医師確保対策室長の木村先生からは、地域の主幹病院の立場からお話しいただきます。

○木村発表者 木村でございます。よろしくお願いいたします。

○荒川座長 このようなテーマにつきまして、先生方からは10分ないし15分ぐらいをめどにして、テーマごとに質疑応答に入りたいと思います。ヒアリングに入りますが、その前に前回欠席された先生方もおられますので、この検討会の設置の趣旨等を改めて説明します。また今回事務局が作成しました資料2についても説明をお願いします。

○事務局 前回ご欠席の先生方もおられますので、資料2として前回の資料を出しております。また、本日はお三方の先生方に新たにお集まりいただいていますので、前もって会議の内容とともに、この会議の設置趣旨を簡単にご説明させていただきたいと思います。

 医学教育に関しましては、この基礎資料にも掲げてございますけれども、平成13年並びに平成18年と2回の大きな協力者会議の報告を経まして、臨床実習の強化ということをはじめとする医学教育の改革というものが進められております。また、自治医科大学の高久先生を座長とした、モデル・コア・カリキュラムの改訂に関する会議というものも立ち上がっている状況でございます。ただ、その後これまでの医師抑制基調が転換して、地域で診療科に必要な医師の多様性というのが大きな問題になるとともに、昨年以来、臨床研修制度を見直す中で、卒前教育というものの強化が求められております。

 こうした状況の中で臨床研修制度の見直しを今検討してございますけれども、その方向性を踏まえて、これに関連する医学教育のカリキュラムの見直しに着手するということを、昨年暮れにありました地域医療の基本評価に関する作業会議の場でも話し、厚労省の医事課長にもオブザーバーに入ってもらって、2月2日にこの会議の第1回を開いた次第でございます。

 この検討に当たりましては、これまでの先ほどの平成13年、平成18年度の改革提言の進捗状況、進んでいるもの、進んでいないものを見きわめながら、新たな定員増あるいは臨床研修の見直しという、この議論の過程で出てきたさまざまな方向性が示されている状況を踏まえまして、大きく3点、議論の項目を挙げました。それから、医師不足の診療科の医療を担う医師を育てるにはさらにどういったことをするべきか。それから、臨床研修の見直しという方向性を踏まえて、いかなる点で臨床実習の内容を強化すべきか。それから、こうした臨床実習を実効あるものにしていくためにどのような方策を講じていくべきか、こうした観点を中心に、より具体的で専門的な検討をしようというものでございます。

 この検討に当たっては、もちろんそのモデル・コア・カリキュラムの改訂などは、やはり高久先生の改訂のための検討会議で取り入れられる議論をしていかなきゃいけないもの、あるいは例えば各大学でそれぞれにお取り組みいただくべきものと、さまざまな時間軸もペースもあることは確かでございます。そうした中で、他方で臨床研修の見直しというのは、平成22年度から新しい見直しを踏まえた臨床研修をスタートさせようという計画もございます。

 そうした中で卒前教育においても、そのタイミングで何らかの改革というものに一歩踏み出していくことは、やはり必要であることは間違いございませんので、そうしたことをしていくためにも一定の方向性はやはり早急に示す必要があるということで、その時期、大体4月までというような形で、おおむねの、一定の方向性を示していきたいと申し上げた次第でございます。そういった形でこれから検討を進めていくわけでございます。先生方におきましては、今日は地域医療あるいは地域の診療科の連携となって、どういった医師を育てていくべきかという観点で、ご議論をちょうだいできればということでお集まりいただいた次第でございます、というのが設置の趣旨というところです。また、今日お示ししました基礎資料につきまして、簡単にご説明申し上げます。

 資料2でございます。まず、あけましてページ数の2ページというところで、現状を報告しておりますけれども、医学部の入り口、出口で、どのような地域との関係が提示されているかということでございます。まず入り口の部分で県内高校出身の医学部入学者の推移をこの5年間で見ますと、地域枠の拡大等の影響もございまして、5%強の拡大基調にはあります。ただ、3ページをおあけいただきますと、出口の部分での卒業者の地域定着、その都道府県に定着した人数のほうから見ますと、ここで5年間、臨床研修制度の導入等もありまして10%程度の変化、減少が見られているということがあります。

 他方、そうした中で各医学教育の各段階において、どういった取り組みがなされているかを以下で簡単にご説明申し上げますが、まずページ番号で5ページをおひらきいただきたいんですが、地域を指定したいわゆる地域枠の導入状況でございますけれども、近年の医師確保対策というものの流れの中で急速に拡大しておりまして、平成21年度においては昨年度の403名から約300名増の704名の予定ということになってございます。

 また、スライド6枚目、6ページ目でございますけれども、入試における取り組みでございます。まず一般入試としましては、かなりの大学、全部で79の大学のうち68で面接試験というのが導入されておりますが、その面接試験の対象者を見ますと、大半は全受験生を対象にしたものも多ございますけれども、推薦入学受験者に特化したところも見られるところでございまして、また、それぞれの推薦入試、一般入試前期、前期、後期、それぞれの段階で1人当たりの面接時間についての調査がございますけれども、推薦入試については30分程度までその時間を拡大しますと、大体半数ぐらいが30分以上やっているというところがございますけれども、一般入試になりますと大体半分以上は15分以内というような状況になってございます。

 それから、7ページのほう、これは医学部教育における取り組みでございますが、その右上のところにEarly Exposureの実施日数というものがございます。今で申しますと全大学で何らかの形のEarly Exposure、つまり学部教育の段階で臨床の現場を体験する、あるいは動機づけになるような試みをしているかということに関しては、どの学部でも、どの大学でも取り組んでいただいているわけですけれども、その取り組み日数はおおむね10日以上というところが大体半分ぐらいということでございます。ただ、その体験実習については、大体教員が同行しているということは余りございません。

 また、8ページに臨床実習における取り組みがございます。ここに関しましては地域医療との兼ね合いで申し上げれば、学外施設を使った臨床実習というものは、ほぼ全大学で取り組みが進められているところでございます。ただ、その実習期間ということに関しましては、左下にございますとおり各大学に若干の格差がございますし、その学生の評価ということに関しては、大学側というよりは実習先でこの評価をしているという状況がございます。

 こうした地域医療教育を行っている体制を9ページに示してございますけれども、かなりの部分で全大学とも臨床実習病院、学外の病院と実習内容についての協議はしておるわけではございますけれども、その協議の頻度というものには、かなり年度の初めに協議するというところにおきまして、頻繁には行われていない状況もございます。

 それから、臨床教授制については大体8割近くで増減が生まれているという状況、あるいは地域医療に特化した講座に関しては大体、また過去のデータがございますけれども、3割ぐらいで講座という形の診療科という形では導入ができるというものです。

 また、地域医療機関と連携した臨床教育の取り組み例を次ページのほうに掲げてございます。鹿児島大学におきましては、離島の僻地におきまして医師教育支援のプログラムを、福島県立大学ではホームステイを導入した海外での研修プログラムを導入しております。

 また、12ページに今回の医学部定員増に係る各大学の取り組みを示してございまして、今回の定員増が、地域を担う診療科の地域医療を担う医師の確保にとって実効あるものとなるよう、各大学とも取り組みを進めている、その代表例を幾つかお示ししたところでございます。

 以上でございます。

○荒川座長 ありがとうございました。それでは、これからヒアリングに入りたいと思います。最初に邉見先生からお願いいたします。

○邉見発表者 赤穂市民病院の邉見でございます。このような機会を与えていただきましてありがとうございます。よろしくお願いします。

 それでは、4年前に高久先生の医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議に出させていただきまして、同じようなことを言わせていただきました。参考資料の枝番2に出てあります。この題がこれでございましたので、同じ題にさせていただきました。この4年間で京都大学の臨床医学の実習、あるいは卒前・卒後教育はかなりよくなってまいりましたけれども、悪くなった面もございまして、この4年間余り変わっていないなというのが私の実感でございます。

 次のスライドをお願いします。どういうことでも書けと1番目の質問に書いてありましたので、当院では救急車は絶対断らないこと。救急車に乗っているのは自分の親か子であると思えということを私は職員にいつも申しておるんです。そして、断った人は院長室へ来て断った理由を言うということになっていますので、私に会いたくない人はみんな断らないということで、7年間断らなかったんですよ。最近、産婦人科の分娩制限、1人の医師がこれ以上やってはいけないという指導とか、当院医師の病気とか、1人過労死と思われるような方のこともありまして、「患者さんの希望も大事だけれども、スタッフの希望も大事」だという私の方針転換もありまして、このごろは拒否が時々あります。拒否しないということは地域の信頼、あるいは研修医が望むテーマです。救急医療というのは研修医募集の一番の目玉です。逆に大学病院ではなかなか真っさらな患者さんというのはいない。みんな紹介が多いということで手あかの付いていない患者を最初に診れる救急が充実したところへ研修医も来てくれる。こういうことをいろいろやっております。

 2.75から2.95次医療、私が着任のときには脳外科も心臓外科も何もありませんでしたので、今は口腔外科、形成外科等々も入れましてほとんどあります。ただ精神科の入院がないんです。移植とクリーンルームの病室がない。クリーンルーム、手術室はありますが、こういうことでプレホスピタルケア、ポストホスピタルケアも含めて在宅もやっております。在宅は髙橋先生が後で詳しく述べられると思います。

 それから対外活動、公立病院ですのでDMATとかボランティアとか海外医療、姫路の赤十字病院が近くで頑張っていますので、負けまいと思っております。それから、できるだけ地域の若い人たちを病院に来て頂いて、「医学、あるいは医療は楽しいものだよ、生きがいのあるものだよ」と、実際に感じる様な見学などやっています。できるだけFTA、外国から医療関係者を呼ばなくてもいいような人づくりに頑張っている。こういうふうな医師会等の協力等々で公開講座、また登録ボランティアが180名、犬が10頭ぐらい、いやし犬が来ております。あとハトが2羽、こういうのがボランティアで、押しかけボランティアは約100名おります。ボランティアに登録しますとツベルクリン反応、あるいは個人情報保護条例の講習会ということで時間をとりますので嫌だというので、勝手に来ていると。患者会活動も盛んです。

 次のスライド。私が新任医師には必ず方言のわかる医者になれと。“やぎろしい”ところを見せてすみませんと、これはきたならしいと、むさくるしいという意味、例えば、陰部を患った時におっしゃる方言です。とにかく地域密着型のライフスタイル、地域の運動会やお祭りは必ず参加して欲しい。それから、Everything & Something、私は心臓外科医ですと言って腹痛は診ないというのはだめだ。すべて診られて何か特徴がある医師でなくちゃだめだ。これは器用貧乏ということで、今の医学界では嫌われることかもわかりません。

 それから、院内外どこでも医師である。私は新幹線の中で「お医者様はいらっしゃいますか」と言われたら、必ず診にいっております。手当てができる。何もわからなくても手を持ってあげている、脈を診てあげているのが医者なんですということを言っている。

 医療は大学病院並み、人間関係は診療所で、これが逆になったら大変、診療所や大学には悪いんですけれども、逆にならないように。

 ストレスフルな社会、診療所はチャレンジングなメディスンもちょっとできないということですね。診療科間の垣根の低い連携ですね。これはそちらで、これはうちでと言わないで、放射線科のレントゲンのところへ行っても術後透視をするとか、そういう医者になれというところです。

 チーム医療、ほかの仲間をちゃんと大事にして、医療をやろうと、医者だけがすべてお山の大将の時代は終わっていることを言っております。

 それから、後輩を育ててほしい。地域への貢献ということが書いてあります。

 それから、医学教育の修了者に望むものは、余り大したことは望んでいません。診断はできなくても判断のできる人になってほしい。これは自分1人で診られる、だれか支援を呼ばなきゃいかんかどうか。他科の先生にコンサルトをしなくちゃいけない。帰してもいいか、今晩観察すべきか、そこだけでいいんじゃないかと思っております。

 患者さんの話をよく聞く人、それで卒後研修は、患者さんの話をよく聞いて、それをカルテに記載できて、プレゼンテーションができる、これだけで言えば、なかなかできる人が少ないんですね。それができればいいんじゃないかと。

 ちょっときついことを言うようですが、せめてナースよりも広く深い知識を持ってほしい。救急車が来たのに看護師さんのほうが動ける、どっちが先生かわからんような医師がいっぱい送り込まれてきます。だから私は、あの人が当直していたら寝られるかなというふうな日がよくあります。せめて院長として、そういう暗い夜は少なくしてほしいということです。

 それから、非常識でない人ですね。これは非常識な人はおります。総理のおっしゃるとおり。だから、非常識でない人を、やっぱり。これは卒前教師のところで振り分けしてほしい。リクルートして、あなたは医師に向きませんよとか、あるいはもっと人間が嫌いでも出来ると思われるような、基礎医学研究に進んでとか。やっぱり人間力。田舎の人はその先生にすべて任そうということがありますので、人生を任せられると思わせる人。うそでもいいですから、あくまでも思わせる人ということを書いてあります。

 卒前教育にはやっぱり今言いましたコミュニケーション能力、患者さんの心や、よくわかる話をしてあげる。辻本委員もおられますけれども、疑似患者とか模擬患者とか、そういう人を使って、できるだけやってほしい。先ほど言いました、コンピューターとか電子カルテばっかり見て全く患者さんをさわらないというのはちょっと不満。

 それからチーム医療、臨床工学技士とかMSWとか専門薬剤師、認定看護師、その分野では優れた人がいっぱい出ていますので、この人たちを利用しなさいと、自分だけではいけない。

 薬の名前、これは実話ですけれども、「PLください」と言って患者さんが来ているのにPLを知らない。それぐらいは一般常識として知っておってほしい。何となく、みのもんたに負けているという感じの医者がおるんです。薬も知らんようでは、それはちょっとまずい。

 Early Exposureは先ほど樋口さんのほうからありましたけれども、Early Exposureも大分進んできていますが、なぜこれを習うかと、私もこれがあったらもっと賢い医者になったんじゃないかと思うんですが、やっぱり解剖を知らなかったら手術はできない、薬理を知らなかったら内科はできないというのを初めに見せますとインセンティブが付く。たとえば看護教育でいいますと、看護大学の講義のときは寝ている人も、准看の人が正看の試験を受けるためには、皆一生懸命、現場からの質問をするという話があります。だから、実際に現場を先に行くほうがいいと思うんですね。

 それから、最小限の集中的な診断技術、採血とかそういうものができなくてはいけないということです。

 救急救命士以上のファーストエイドができないといけない。気管内挿管とか静脈路確保。

 次のスライドをお願いします。私は今度、研修医を増やしていただいたのは大賛成ですが、平成9年の医療審議会で一応報告済みですけれども、私は医師は足りないと、しかし国家としても麻酔科、放射線科、病理科の医師が足らない。これが日本の医療の底上げに必要だと。四国にある4つの大学のうち2つは、この科の専門大学にしててほしい。内科や外科は余るかもしれないですねというふうなことを申し上げましたけれども、今は内科も厳しい様ですが、絶対数増加だけでは、今までの格差やひずみを相似形で拡大するだけだと思うんです。私はこれではだめだ、そろそろ各論をしないと。本当に欲しい医師を病院が選べるのが理想だと思うんですね。我々はだれでもいいから穴埋めがほしい、診療科の廃止、休止だけはやめたいと、1日に京阪神を2回も往復するという生活が、私の院長時代22年間でしょっちゅうあるんです。ある意味で病院のほうが選べるというのがあっていいんではないかと思います。

 地方住民にも憲法25条の基本的生存権、隠岐の島でも子供が産める、こういうことがなければいけない。患者さんのことでなく、医師の基本的人権ということばかりを重視するのはいかがかなと。1人の医師の育成には国公立では1億円近くかかると聞いておりますので、余りにも個人最適のために全体最適が奪われるというのはいかがかと思います。

 基礎医学、社会医学なども重要でございます。

 次のスライドをお願いします。我々の自治体病院、オープンヘッドなどこういういろんなことで医師会の先生方と協力しています。しかし、かかりつけ医とは言いながら夜が来たら閉めてしまうような、名ばかりかかりつけ医という感じの医師もいます。

 次のスライドをお願いします。医学部を入学時からコース別に分けたらどうかというのが、私の昔からの言い分です。臨床医学は総合診療医コースと専門医コースに分ける。あるいは初めから行くのは工学部みたいに部品じゃないんだからというのであれば、最後の2年間は分けるとか、いろいろ仕方を。それから、卒後研修を1年前倒しで卒前に今の1年目をやれば、1年でできるかもわからないというのが私の考え。卒前研修は、卒前教育が変わらないと卒後研修だけ変えろというのはちょっと不公平かなという。基礎医学コース、社会医学コースと書いたけど、私は一番大事なのは、欧米並みに医療政策学講座を各大学に設置して、今日的問題や厚生労働省や都道府県などの医療行政、今日のこのような会議にもそのような人がいて、あるいは人員供給、厚生労働省にここの卒業生が入るというのが理想じゃないかと思っております。

 次のスライドをお願いします。診療科定数計画は入口論、この資料の枝番2にも書いていますが、工学部は入学時に工学部、官営富岡工場のときには繊維、八幡製鉄のときには冶金・鉱山学科、戦後の復興期は土木、建築学科というふうにありまして、石油学科といったら、高分子化学にした。それで公害が出たら環境工学、今はIT、バイオです。社会が要請する人を教育して、養成してきているわけです。だから、今は医学部麻酔学科、医学部小児学科はなぜないのかと不思議でおります。これは10年間、私はぶれていません。これは入口論。

 出口論は、国家試験前後あるいは卒後研修中に診療科をある程度マッチングして、全国規模で専門医はどれぐらい、各学会において用いてやってもいいんじゃないかと。もう、そういう時代に来ているんじゃないか。そうしないと医師を何ぼ増やしても、銀座の形成外科医でテレビに出る人ばっかり増えている。こういうことは全く意味がないことだと。中間論は、在学時に決める方法。

 次のスライド。地域偏在防止といいますとなかなか難しいんですが、地域枠も私は随分前、10年程前に言いましたが、そのときは奈良県立医大や和歌山県立医大の不祥事というか、知事の後援会とかあるいは選出議員の後援会に便宜が図られていたとか何かあり、うまく認めてくれませんでした。自治医大をナンバースクールにして東北に1つ、北陸に1つという案もいいんじゃないかと、なかなか難しいとは思うんですが。

 それから、これはかなり批判を浴びそうですが、男子医大の設置というのを、女子医大があるから男子医大もあってもいいんじゃないか。これはどういうことかといいますと、私は、女性医師がうちの病院に来る寸前になって、例えは悪いんですが、魚釣りで“たも”にあげる直前に「先生の町にはデパートはありますか」という電話を受けた。あるんです、デパート。Sデパートというのがありますが、そのデパートはスーパーに毛の生えたようなギフトショップみたいですね。うそを言っちゃいかんと思って、「デパートという名のスーパーに毛の生えたようなものですが」と言ったら、次の日から電話がかかりません。私はもう深追いしません。来ても多分すぐやめるだろうと思うのと、もう一つは、うちに娘がおったら同じことを言うだろうと思うからです。だから、やっぱり若い24歳、25歳の女の子であれば、伊勢丹とか三越で買い物したいというのをとめることはできません。男であったらまだ来てくれるのじゃないかという感じもしています。男子医大卒なら。

 計画配置をする。年限を決めマッチング的に決定する。例えば自治医大だったら9年間の義務がございます。ほかのところもある程度の期間、私は医師を志す人というのは、心優しいボランティアマインドの物すごいいい人ばっかりですから、恐らくそこでその科をやり、一生終わって、あるいは医師会長になったり、市長になったりする人もいっぱい出てくると思うんです。だから何にもこれが非常に冷たいとかいうことはないと思うんですが、それを言ったらブログに「おまえが行け」とかいっぱい書かれているそうです。そういう人も一部にはいるんだろうと思います。

 次のスライドお願いします。大学病院が大変ということを一言申し上げたいと思います。独法化で資金不足、人手不足、それに医師は大学の教員までしていますので、気の毒なぐらい働いています。DPCでもう診療ばっかりで、研究や教育の時間的余裕がなくなっています。若手医師の学位離れ、専門医志向で大学に戻りません。研究者もそうです。よかったのは7対1看護で勝ち組になったのと、寄附講座を大都会の病院は集めていますが、地方の医学部は大変です。研究教育は不可能。欧米の背中がどんどん遠のき、アジアの足音がひたひたと迫るという、もう横に並んでいるかもわからんですね。創薬などは韓国のほうが今は治験が多いみたいです。人員増で処遇改善をしないと、医学部学生の定員増をしたら、ますます忙しくなってお気の毒なことに。

 次のスライドをお願いします。外科も大変です。これはハイリスク・ローリターンの典型です。外国人の外科医で言いますと、クレージーと言います。あえて狂人的手術低報酬と書かせていただきました。外国と比べると、めちゃくちゃに安いんです。こういうことで、なかなか医師が来ない。5年前の研修制度の前は、年間1,200人の外科希望者がおりましたよ。今年は400人も割れると。外科学会は全体として非常な危機感を持ってこれに取り組んでおります。

 次のスライド。最後に我々の試みを。京都大学には外科交流センターというのをつくりまして、外科の治療手技の向上と優秀な外科医を育成するという、こういう目的を定款に掲げまして外科離れを防ぐと。外科離職者を減らす、志望者を増やす。女性外科医師部会をつくって女性にでも外科はできると。特に乳腺外科とか、そういうところにお願いしたい。それから治療「主義」、これは変換ミスです、「手技」ですね。治療手技の均てん化、市民公開講座、研究会、交流会などをいろんなことでしていますが、今、歯止めがかかるかどうかというところでございます。

 次のスライド。まとめとしましては、私の考えでは医療と教育は日本の2本柱、耕地に恵まれなくて地下資源が全くない国が、欧米列強とやってこられたのは、貧しくて食うものを食わずとも子供には食わせ、着るものを着ずとも子供に着せて、その子供たちに教育をする。いい人材を作る。「人こそ資源」が国是です。大学病院は医療と教育と、この両方の2本柱に両方とも関係する。私はこれが、日本のトップランナーの大学病院が今危機に瀕しているというのが、一番恐ろしいことであると思います。こういうことは市場原理になじまない。学校と病院は余り集約化はどうかと思います。ハンディキャップのある人は、遠くまで行けません。学童も遠くまで行けません。朝早い朝御飯を食べたら、通院、通学後で遅い昼御飯が食べられる距離になかったらいかんのではないかと思います。利用者も消費税の問題がございますけれども、ある程度負担しないとだめです。

 最後は舛添大臣もおっしゃっておりますように、医師と患者関係の再構築、協働の医療ができないと、日本の医療はちょっと再生不可能ではないかというふうに思っております。

 どうもありがとうございました。

○荒川座長 どうもありがとうございました。ちょっと、じゃ、今の先生のお話で。どうぞ。

○吉村委員 吉村です。地域の現状は、先生のおっしゃるとおりだと思います。先生のところは研修医の応募も大変に多いとのことですが、将来的に出来ればご自分の施設でスタッフとなる医師も育成したいとお考えでしょうか。あるいはどこか大学などと連携して確保することもお考えなのか、その辺はどうなんでしょうか。

○邉見発表者 新参者の研修病院でございます。剖検術のこととかなかなかクリアできなかったので、新しい研修制度で入ったのであります。そのとき田舎の病院ですので来てくれるかどうかわからないので、10人の定員に対して6人は管理型、あとは2人ずつ2つの大学のたすきがけということで考えてました。ただ、たすきがけのほうがうまく機能しないで、国家試験に落ちたり卒業試験に落ちたりしまして、管理型のほうだけは満タンで、初め計8人でした。できれば全部自分のところでやりたいんですけれども、もし定員割れなんかしたらいけませんので、安定的な保険的な感じで4人は大学とのたすきがけということでやっております。できれば全部やりたいんですけれども、なかなかそこまで。特に指導医が最近くたびれてきていますので、余り増やしてくれるなということで、ちょっと減らしぎみに。

○吉村委員 出来るだけ先生の施設で育てたいということでしょうか。ただ、全科の医師ということになると、やはりどこか大学とかと連携をしながら養成していかないと難しいのも事実だろうと思います。

○荒川座長 ある程度地域医療の人材とか、あるいは他の人材をなるだけ形をとか、例えは悪いんですが大学とかたすきがけということも話し合っておるわけなんですか。そこは具体的にどうなんですか。

○邉見発表者 私は二次医療圏ごとのマッチングが理想、都道府県ではまたそこの中で格差ができるという意味に。今のブロックも北東北が少ないとかいうことと同じように、また県内にも県庁所在地とかに偏ってしまうので、二次医療圏ごとにそこの医師、例えば何人この科が必要だろうということをある程度出していただいて、二次医療圏ごとに積み上げていくのがいいです。今まで上で決めていくのが日本の医療のまずかったところです。霞が関で決めることが全部というのでなく、下から、せっかく二次医療圏というのをつくったわけですから、二次医療圏で概算して、積算部分、下から、トップダウンでなくボトムアップで決めていくべきだと。そういうマッチングがいいんじゃないかと。ただ、強制力をどこまで持たせるかということは、その各学会あるいは関係のいろんな団体のご意見が必要かと思います。

○-- 大体自分と同じ考えで、参考になりました。ありがとうございました。

 ただ、今の話題の地域医療を支えるのは、先生もおっしゃいましたが、若い人が行くべきなのか、あるいはそれなりに経験を積んだ人が行くべきなのか、議論があるところだと思います。例えば諸外国で、自分が知っているのはインドネシアとかラオスなんかは、全公務員の人を、若い人を2年間ぐらい地域に出していますが、インセンティブ、やる気とかそれから使える医者かという、そうすると看護師ほども使えない医者が、やる気なく2年間おってしまう実態がある。そこの問題がある。それを踏まえた上で研修のマッチングを地域に配属するということには、ちょっと危ないかなという気は持っていたんですが、いかがでしょうか。

○邉見発表者 おっしゃるとおりで、総論は簡単なんですが、各論になると今度の卒後臨床研修もそうですけれども、各論になるとなかなか難しい問題がいっぱい出てくるだろうと思っております。それから、タイも先生がおっしゃるようなところで、タイは日本といろいろ似ているとよく言われますけれども、タイも卒後何年間かは行かなくてはいけない、1人でですけれども、それもちょっとうまくいっていないような感じがする。ただおるだけと、大学院的な感じの、そこでちょっと臨床の手ほどきを受けているだけみたいなんですね。やっぱりそうすると、どこかで基本的な手技というのをやるようなセンターみたいなものが、やはりどこなのか。そこがもう一度、大学なのかどうかというところも含めて考えるべきではと思います。

○荒川座長 それでは、後ほどまたそのときに話をしますので、ちょっと先にお聞きしましょうか。 どうもありがとうございました。

○邉見発表者 どうもありがとうございました。

○荒川座長 それでは、髙橋先生お願いいたします。

○髙橋発表者 佐久総合病院老人保健施設長を昨年の4月からやっておりますが、それまで副院長として地域医療の責任者と臨床研修教育の責任者をやっておりましたので、その延長上でプログラム責任者は今も続けております。本日はこういう機会を与えていただき、大変ありがとうございます。

 まず最初に資料の一番後ろのカラー刷りを見ていただきたいと思いますが、病院の概要ということですが、その一番後ろのほうを見ますと、長野県というのは人口220万でございますが、これはちょっと印刷がうまくいかなかったんですが、長野県は4つの地域、北部と中部と南部と、それから東部に分けますと、東信地区というのが私どもの病院が存在するところで、面積が神奈川県より大きいんですね。神奈川県より大きくて人口が約20分の1という、そういうところでございます。ですから、田舎ですね。今でこそ新幹線の駅ができたり、高速道路のインターチェンジができまして、非常に首都圏からのアクセスが便利になりましたけれども、中山間地域を含む農村地域です。

 もう一度資料の最初に戻ります。1ページ目に書いてありますのは病院ができた経緯でございます。私どもの病院は、よく農村医療のメッカなんていう大変心苦しいようなお褒めの言葉をいただきますが、その経緯にございますように、農村地区にできた病院でございます。当時の農業会というものが現在は農協になっておりますが、農協がつくっている病院でございます。皆さんご存じの若月俊一が、東京大学の大槻教授から「こういうところへ行ってみないか」と言われて赴任したのが、1945年でございます。時間がありませんのでそこはまた読んでいただいて、2ページ目に行っていただきます。

 2ページ目に健康管理活動と書いてございますが、これは私どもの病院の1つの特徴と言われる健康管理活動。これの出発点は出張診療から始まりました。潜在疾病の発見ということが非常に重要だろうということで、出張診療に出かけていったわけでございます。そのころから既に、5:3:2方式というような言い方を私どもはしていますが、入院業務、外来診療、それから予防活動とか健康管理活動への力の配分をこういうふうにやって、5:3:2方式ということでやってまいりました。

 老人保健法のもとになると言われていますのが、次の項目の八千穂村、現在は佐久穂町という町になっていますが、八千穂村の全村健康管理活動、1957年に国保医療費の50%窓口徴収問題というのが起きた段階で村長と病院との話し合いをして、全村健康管理活動をやろうではないかというのがそもそもの始まりです。出張診療をやった後にこの全村健康管理活動というのが出てきて、その全村健康管理が非常に成果があるということでもって、長野県全体の厚生連・健康管理センターへ発展していったわけでございます。

 それから、次の項目は病院祭あるいは文化活動ということで一定の地域活動なんですが、実はその病院祭というのは、恐らく多分日本で最初に初めて私どもの病院が始めたことだろうと思うんですが、町の祭りに合わせて(今でも祭りに合わせてやっておりますが)衛生展覧会ということをやっておりました。毎年病院の地元の、今は佐久市に合併になりましたが、臼田町という人口1万6,000人のところに大体、土日を合わせたら2万から3万ぐらいの見学者がおいでになるので、そこで医療・保健・福祉に関する事柄をわかりやすく説明したりしております。それは5月の第3土日にやりますんで、ちょうど研修医が入職直後の時期になりますが展示してある各コーナーの説明を担当させたり、いろんな催し物をさせたりします。最近ではエイズだとか、あるいは禁煙活動について、そういうテーマで研修医が寸劇を病院祭で演じたりしております。

 農村医学夏季大学講座というのは、これはやはり農村医学の研究成果を、第一線で働く保健婦や生活指導員、農協関係者等々に広く紹介するということでありますが、最近は農村問題に限らず高齢者福祉の問題、あるいは子供の教育の問題、昨年ですと「特定健診・特定保健指導をどう活かす」というようなテーマでやっておりました。

 もう一つ、私どもは変な病院でございまして、いろんな文化活動やスポーツに力を入れていて、いろんなサークルがございます。その基本にあったのが演劇をやっている劇団部です。昨年NHKの衛星テレビで「響け!みんなの吹奏楽」という番組がございまして、1時間番組に吹奏楽団が出演しておりましたが、そういうふうに音楽をやっているとか、あるいは野球とか卓球とかバレー、こういうものの日常的な活動をしています。軟式野球もかつては全国優勝したこともありますね。

 次のページ、3枚目の臨床医の養成というところ、そこが一番今日申し上げたいところなんですが、私どもはインターン制度の時期にもインターン生を受け入れており、大体100名ぐらいインターン生を受け入れておりました。1968年の当時の厚生省による医師卒後研修制度ができたときに指定病院になりまして、80年のローテイト方式、85年の総合診療方式、こういうものを次々と受け入れてまいりました。2004年の現在の臨床研修必修化に伴う研修内容、これは実は私どもの病院は、この制度で必修になっておりますところの内科、外科、救急、麻酔、それから精神科、小児科、産婦人科、地域医療、全部2年間でどの研修医も必修にするということをやっておりましたので、2004年の新制度になっても、特に病院の中では大きな問題はございませんでした。

 佐久方式と言ってもいいものの第2番目は、小海診療所での1カ月研修、今は小海分院ができましたので分院と小海診療所と合わせて1カ月。それから、健康管理部が行う健診活動、これを2年生には月1回行ってもらう。救命救急センターのICUでの2カ月研修、この中には1泊で消防署の研修もやります。消防署の救急車同乗、こういうものもやっております。それから、もちろん指導医のもとでの救急外来。

 そういうことをやっていて最近は、次のページにまいりますけれども、地域保健・地域医療ということについては小海分院、小海診療所で研修するほかに地域ケア科研修というのがございます。地域医療部のもとに地域ケア科というのがございまして、在宅診療をやっております。病院の本院のほうで350名ぐらいの登録がございます。小海診療所のほうに150人、合わせて500人、それから精神科とか神経内科の特定疾患、こういう方を合わせると、やっぱり600人近い方の訪問診療をやっております。特に地域ケア科については全部医師が兼任なんですけれども、必ずそこに2週間は研修医をお手伝いさせて、それから、もちろん希望があれば近隣の町立病院とか市立病院、それから開業医さんのところの研修もさせております。

 もう一つ特筆すべきことは、1999年から始めた総合外来研修というのを、どこをローテーションしていても必ず週に1日は2年間参加する。これもいろいろ試みたんですが、現在は午前中は診療に参加させて、午後から指導医のもとでカンファレンスを行う、そういうやり方をしております。大体そんなところでしょうか。あとはまたゆっくりと資料に目を通していただければよろしいと思います。

 一番最後、もう一度、南佐久地域の医療ネットワークというところをご覧いただきますと、これは昔の臼田町以南に配置しているいろいろな病院等でございます。北相木村診療所、南相木村診療所、南牧村診療所、川上診療所、この4カ所には常勤の医師を出向させております。常勤の医師出向で、これは先ほど邉見先生のお話にありましたけれども、ある程度年配の人がいいのか、若い人がいいのかという議論もございましたけれども、これは一概に言えないですから、例えば3年目の方でも、あるいは5年目の方でも、10年選手でも十分いけると考えます。私どもは臨床医の養成をあえてやってきておるのは、田舎ですから大学からの派遣がほとんどいなかったわけですね。そういう背景がありまして、自前で医者を養成しなきゃいけないというのがございます。そういう意味ではずっとそれが続いてきているわけですが、今大体200名ほどの常勤の医師がおりますうち、特定の大学の出身者というのは、大学からの派遣というのは40名ぐらいです。だから特定の大学の出身者が学閥を形成することもございません。

 私どもは、初期研修について大事なことは医学の知識、医療の知識を身につけること、あるいは技能を習得することはもちろん当然でしょう。それはずっと一生涯やらなきゃいけない。しかし一番大事なことは、やっぱり態度・習慣をきちんと身につけてもらうことだと思っています。

これはやっぱり初期研修の間に態度・習慣を身につけないと、10年、20年たってからそれを改めようと思ってもなかなか難しいんで、そういう意味では最近の大学教育の中で出てくる若いお医者さんも、患者さんに対する態度というのは非常によくなって、ある意味では中年以降の医者のほうが患者さんに対して横柄な態度をとるというところもあるんですが、やっぱりせっかく卒前教育で身につけたものを、初期研修の段階でも、もう一回きちっと鉄は熱いうちに鍛えていく必要があるだろうと思います。そういう意味では今回いろんな経過の中で初期研修を見直して、必修が実質ダメになるんじゃないかという話を聞いて、非常に残念な思いを私どもはしております。

 そんなところでございます。

○荒川座長 どうもありがとうございました。

○-- 公開教室が作られて、全国教育研修が行われるようになって本格的に実習が行われて、最初に卒業した卒業生は研修医になりますね。大学の中で教育していると         学生は非常に伸びているという感じはあるのかないのかということを。

○髙橋発表者 率直に申し上げますと、ちょっと変わったかなという、かつて佐久病院に集まってくる医者というのは、実際はそのまま初志貫徹できるかどうかは別にして地域医療をやりたいという、地元でやりたいという、そういうモチベーションで来る方が多くて、割合歩どまり率はよかったんですが、この二、三年を見ますと、研修病院のブランド化みたいな形で、ここで2年間だけやってどこかに出ていこうみたいな、そういう感じというのは確かにあります。ただ、臨床能力については、1年前の卒業生と5年前の卒業生との学年の違いによる差というのは感じないですけれども。

○-- 特に伸びたという感じですか。

○髙橋発表者 1年目と比べて2年目が。

○-- 三、四年前の研修医に比べて今年入ってきた研修医は、何か伸びているなという。

○髙橋発表者 いや、そうでもないと思います。内容的に私どもは、必修化の以前から、やっている研修内容がほとんど変わっていないんですよね。それから、もちろんもう一つは有名な屋根瓦方式で、指導医という人だけが教えるんじゃなくて、上級医、指導者が全員で指導するというのをやっていますが、余り変わったという印象はないですね。

○荒川座長 どうぞ。

○邉見発表者 今のご質問ですが、今初めて聞きました。今年の研修医は優秀です。私は世話役の個人の成果と思っていたんです。ソノ君が世話役をしていろいろなことを積極的にやっているので、その人のキャラクターに引っ張られているのかと思っていた。今日先生のおっしゃった、今年出てきた人はそういう教育が変わったというのは知らなかったものですから、わからなかったですけれども、ひょっとしたらその成果かもわかりません。ちょっとわかりませんけれども、ほかの人たちにも聞いてみないとわかりませんけれども、うちの病院に限って言えば、今年の人はいいです。

○荒川座長 どうぞ。

○小川委員 岩手医大の小川ですけれども、今の話なんですが、ちょうど平成3年に大学も6年間教育になって、今まで医学教育大綱というのがあって、教養部が2年と医学教養課程が2年と専門課程が2年に分かれて、平成2年までで、その後ですから6年間教育になって、それは1個1個の大学でちゃんとやりなさいということで始まったんですけれども、各大学でカリキュラムを変更しますと最低6年かかるんです。ほとんどの大学では8年から10年ぐらいかかって、やっと6年一貫教育にかわったと。そうすると平成13年に大体そのプログラムが完成する。そのころに臨床研修制度が入ってきて、かなり医学部教育が、その現場も物すごく変わったという雰囲気があるんだろうと思います。

 それから、もう一つ髙橋先生にお伺いしたいんですが、佐久病院が農村医療そして地方医療の核になって、非常に頑張ってきていただいたことは非常によくわかったんです。東北地方のことを考えますと、戦後まもなくのころは東北地方のすべて、ほとんどのすべての病院は農協病院です。全部農協。それは戦後になって結局、農協がもたなくなって厚生連としてその病院を持って、いまだに続いているのがあったと。それから各市町村、市とか町村に根を下ろしたというのが青森県と、それから宮城県で、岩手県はどこの地方自治体も貧しかったものですからそれもできなくて、県が全部入ったというのが岩手です。福島県は、日赤病院にほとんど移行したのが福島なんです。ですからそういう中で、いろいろなかつて農村医療をやっていた農協病院がそういう形で変わってきたわけですけれども、先生は農村医療をやって地方医療をやってきておられるわけで、そもそも地域や診療科に必要な医師を養成する医学部教育はどうあるべきかと。

○髙橋発表者 その問題は、自治医大学ができるときに議論になったし、かつての東京都知事の美濃部さんが、農村医科大学を創ってあげるから東京に出てきてやらないかと若月先生に言われたときに語られた問題だと思います。

 農村に特化した医療を、大学として医学部としてやれるのかどうかというのはちょっと私は、はっきり言ってわかりません。わからないんですが、一応農協の全国大会では農村医科大学校をつくりたいというところまでは行ったんで、頓挫したままになっていますから、将来的にはそういうことも1つの方法かなというふうには思っております。

 ただ、医学部で医師を養成するというのは今まで議論がございますけれども、何かある部分に特化した医師を養成するというのは、非常に難しいかなという感じはございます。例えば今の地域枠についても、地域枠をつくったら本当にそこで頑張る人ができるのかどうかということも、実は私個人としては疑問を持っていますし、ましてその医師確保対策として経済的に優遇するというのが今、あちこちでなされていますね。これは待遇がよくなるのはありがたいんですけれども、金銭で来ていただく方は、またどこかから金銭で引っ張られたら移ってしまうんじゃないかというような意味で、非常にそういうやり方で果たして今の危機を突破するのはどうなんだろうかと考えます。ですから、まとめますと、農村医科大学構想についてはできるだけ追求してみたいと思いますが、ちょっと長いスパンで考えないとできないだろうと。それは、もちろん国際保健医療等の絡みでやらなきゃいけないことと思っております。

○小川委員 ちょっともう一点だけ、邉見先生が先ほど自治医大をもっとつくればいいんじゃないかというご意見があったんですけれども、実は自治医大だと、実際に地域医療をする医師を養成するという意味でできたわけですけれども、これが全然機能していないということだけはちょっと聞いておかなければいけないなと。50%以上、要するに10年たってもその地域に自治医科大学出身者が残っている県は、新潟県と岩手県しかありません。あとほとんどの県は、結局数人の方を県費で自治医大に入れて県費で養成をするんだけれども、年限が終わった途端にどこかに行ってしまう。ほとんど何%のレベルですから、それは多分データがあると思いますので。

○-- おっしゃるとおりです。私もこの間、自治医大からの本というか、医療問題の動きみたいなのを見せていただきました。最近特に地域医療振興協会というのは、余り言うと申しわけないんですけれども、地域医療振興協会が都市型の病院に人を動かすという形になっておりますので、ちょっと本末転倒かなという感じが私もしております。

○荒川座長 2学期が始まった2月というのは定着率90%を超えています。これは卒業したときから大学も県も一緒になって皆やると、サービスしないと、2学期履修したら           出るんでしょうと。私は今、2月というのは必要な卒業生でかなりの部分、医学・医療を支えていると感謝しているんです。私も長年、自治医大の顧問をやっておりますが、そういう意味ではそれをどうしていこうか。それから、地域枠がふえましたので、それを同じようなモチベーションをどうしてやろうかと思って、実はうまくやろうと地域枠の学生と一緒になって僕たちがそっちを会ってやっているということになっている。やれば90ぐらいいくのだけれども。

○吉村委員 地域医療振興協会の顧問をしておりますので一言。都市型の病院を運営するのは本末転倒とのご意見でしたが、都市部に基幹病院をつくって、そこから各地域の病院やへき地に医師を派遣おります。マグネットホスピタルの役割ですね。それから各地域の離島の診療所にも派遣といいますか、いわゆる交代で診療支援をしております。ちょっと一言だけ。

○荒川座長 どうぞ。

○-- 髙橋先生にお伺いします。

 佐久病院で研修する研修医は、かなり地域医療に貢献しようというモチベーションが高い人たちが選択すると思うんですが、こういう人たちの最近の診療科の選択として、それについてはかつてと今とどのように変わるかとか、全体の動向をあらわしているのか、お伺いします。

○髙橋発表者 例えば今ですと定員15名の研修で、大体面接では、みんな将来的に地域医療をやりたいと言って入ってくるんですが、2年経つ間に大分変わってきまして、やっぱり専門領域のほうに行く人のほうが多いですね。ただ、そうはいってもさっき申し上げたように、訪問診療をやったりとか、あるいは分院という100床規模の病院、これは日赤が5年前に医者が確保できないということで閉院したところの後医療を引き受けているわけですね。それから、そういうところで働く医師、本当は先ほど申し上げたように診療所に派遣する医師もございますから、こういう人は一定の専門は持っていても、やはり全体としての地域医療を担うという役目をしてくれています。ですから、純粋地域医療という、一般的に言われる地域医療というのは少ないかもしれません。ただ、私どもの病院のある診療科のように、かなり先端的な技術をやっているところの医者でも要請があれば日常的に診療所の初診をやってくれていますね。

○-- 専門領域の選択という点ではいかがでしょうか。例えば外科とか、小児科とか、産科だとか。

○髙橋発表者 かつて佐久病院でも外科医が非常に優勢だったんですけれども、最近はやっぱり数年に1人ぐらいしか外科に行かないですね。

○-- それは各病院の先生、指導者には影響なく、関係なくやっぱり選択しない。どういうふうにお考えなんでしょうか。

○髙橋発表者 難しいな。

○荒川座長 先ほど邉見先生のほうも大変だと言っていましたので。また後ほどお話があると思いますので、ひとまず木村さんのお話もあるんです。

○木村発表者 座ってしゃべらせていただきますが、少し島根県の地域医療の現状と医師確保対策ということで進めさせていただきます。

 私が何者かが分かりにくいんで自己紹介をちょっとしようかと思っていましたが、だんだん自己紹介しづらくなりましたが、自治医科大学の出身でございまして、自治医大の4期生の同期生でございます。昭和56年に卒業いたしまして今二十七、八年たちまして、いわゆる初期の自治医大の卒業生でございます。

 若干、島根県の話をする前にいろいろ自身のあれで、義務年限というのは、これは2分の3倍ですので9年間というふうに、これは研修期間も決めております。大体、初期臨床研修、今はマッチングはしませんけれども2年、そして1年間が、各県が独自にほぼ1年から3年ぐらいの後期研修が、間での研修を持っていますので、地域医療機関での勤務というのが四、五年から、後期研修のないところもありますので7年ぐらいと。小川先生がおっしゃるように全国的にも、この研修の義務年限後、まず2年限ぐらいですけれども、これは大ざっぱに2,500万円ぐらい我々から行っておりまして、返す段になると3,000万円以上いただきます。恐らく余り数字を言っちゃいけないんだと思いますが、3%ぐらいが返還することになります。そして義務年限後の定着率というのは、恐らく2つあると思うんです。1つはその県に定着しているかどうか。これが一般に言われるのが10年たってその県に定着、義務年限後の定着率というのは全国で大体70%ぐらいと言われています。でも、おっしゃるように、岩手、新潟というのは多い。県立病院が多いというのは何かあるのかなということも考えていますが、やはりその県の頑張りだと思います。ですので大体70%で、島根県の場合は大体10ポイント低くて60%ぐらいになります。

 ただ、もう一つは、県に残ったということが、どれだけ地域医療に貢献しているかということとはまたちょっと別問題でございますので、そういう観点で、地域医療機関に残っているかどうかとかいうことは、ちょっと私はデータを持っておりませんので今日はしゃべれませんが、それともう一つ今話題となっている、なかなか島根県に入らなくて申しわけないですが、今話題になっております、じゃ、地域医療をサク総合ケンサのほうですが、少し昔と変わってきた。我々自治の卒業生も、いわゆる初期の人間と今と変わってきた大きいことは、今日のこの文科省さんのところにあるよりも、実は大きな問題というのは専門性にあるんだと思っております。私どもが若い医者、そして義務年限が明けるような医者と、「どうやったら島根県に残ってくれるんだ」というような話をしますけれども、結局、今の専門医というのが大きな病院にいないと、そしてその認定施設、少なくとも関連施設にいないととれないので、そうするとやっぱりその地域で我々は義務が終わっても、例えば隠岐の島にいたりとか、私も何年か隠岐にいたわけですが、そういったことができづらくなってしまうんですね。だから義務が明けて、例えば自治の卒業生で義務が明けて、今義務が明ける人間に私もずっと個別に話しながら、何がしたいのか、どこの病院でスタートさせてあげようかみたいな、僕はあの病院間にも入っているんですね。結局、義務が明けても地域にいなくなるのが当然のような形、これから何らかのだけじゃなくて専門医をとっていくんだというふうな、義務の最後ぐらいから、そこに入っていくんですね。

 もう一つ、今度は外科が少なくなったという話がありますね。私が卒業した二十数年前というのは、私は内科系総合医でございますが、印象としましては内科であれば消化器・循環器が物すごく希望が多かったです。ところが、今自治の卒業生に何がしたいかと言いますと、糖尿病・内分泌あたりなんですね。どう違うかと言いますと、やはり循環器・消化器というのは技術屋さん、外科に近いんですよ。今で言いますと、消化器は内視鏡治療といいます。そして循環器になるとカテーテル治療といいますので、これは夜間の呼び出しが多い。そして、訴訟のリスクが高い。まるで産科のような話に近いんですね。なので、今若い医者が望むことというのは、割あい技術系よりも、糖尿病の先生がもしおられたら申しわけないんですけれども、昨日だか一昨日だかも島根大学の糖尿病関係の教授と話していましたけれども、来年は3年目の4月から6人入るというんですね。ちょっとかつてはなかったことで、ありがたいことなんですけれどもね。そういうふうに恐らく医者の志向というのが、言葉は悪いですけれども、マイナー系でありますとか、そういったどちらかというと技術よりも、技術でないほうに、専門医というのが傾いているようなことがあるんじゃないかと、ここまでの話を少し自治医大の卒業生として、そして若い医者とたくさん会っている中で感想を少し述べさせてもらって、それじゃ、申しわけない、資料1のところをお願いできますでしょうか。

 資料1、いきなり島根県の地図を出しておりますが、邉見先生に多くの部分で心配いただいていますけれども、中国地方、本州の一番端っこから2つ目の県、ここから西側になると山口県があって九州にまいります。非常に細長い県でございまして、これは面積は実は余り大きくなくて全国16位なんです。お隣の長野県さんのほぼ半分の面積ですが、左側のところに時間距離を書いていますが、一番東の安来市、これは安来節、ドジョウすくいの安来市からずっと益田市まで、ここの間は大体190キロ、そして津和野まで行きますと230キロございます。下には等尺の地図、たしか面積は東京都の3倍あるんだそうです。単に地図だけ出しますと3倍かということになるわけですが、これは山間地がほぼ80%ですので平地が少ない。県庁は松江にございまして、これ自体がかなり東に偏位しておりますが、松江市に大きな病院はありますし、出雲市に島根大学附属病院、そして県立中央病院がございます。松江市の「市」のところが横に細長い。これが宍道湖ですね。それから右側のところの何か変な形になって、口をあけたような格好になっているんですが、これは中海で、東側の地図に書いてありませんが、弓ケ浜というののつけ根が米子市になる。先端が境港市でございますので、実は安来の隣が米子、米子はご存じのように鳥取大学の医学部がございます。そして出雲が島根大学の医学部、ここの間が大体80キロぐらいあって、この間にかなり人が住んでいますので、人口73万人の6割方がこの松江医療圏という松江、東出雲、安来、それと斐川、出雲この2つの医療圏に面積4分の1、人口6割、医師7割が住んでおる。病院も結構、大学病院もございます。57病院と書いておりますが、18年度から病院の実態調査というのをやっていまして大体、島根県全部でイチスウということになりますので2,000人弱でございます。57病院の勤務医師が800弱でございますので、ちょっと1枚あけていただいて、右の下のところに圏域別の医師数となっております。そこにいわゆるサンキュウですね。偶数年、14、16、18に分かれております。医師数のトータルが、18年のところで1,939で4年間で増減89となっておりますので、大体年間に二十数名、島根県も医師がふえています。

○-- 全県では何人ですか。

○木村発表者 人口は73万人です。これは鳥取県に次いで日本で2番目になりますが、57病院で大ざっぱに800人いて、1年間で10名弱減少している。それから、島根県の医師数は年間大ざっぱに20名強ふえていて、病院の医師数は大体10名弱減っている計算になるんです。大ざっぱに800人にして57病院ですから、平均するとかなり小さい病院が多いということになるかもしれません。

 それじゃ、1枚おめくりにください。よく医師数を使うときに人口当たり10万人当たりの医師数を使いますが、あえて医師数密度というものを使ってみました。人口10万人当たりの医師数というのは、島根県は全国9位でございまして、これは全国平均よりも多いことになっておりまして、人口の少ないと思われる地域を見ていただきましたけれども、人口の少ないところにも医学部が1つありますんで、どうしても人口の少ない県の10万人当たりの医師数というのは多く出てきます。この地図ですが、先ほどから申しますように出雲圏、松江圏というところで100キロメートル当たりの医師数は多くなっておりまして、その他の2次医療圏域5圏域ではかなり少ないんですね。東京都が医師密度というのは一番多いわけですが、それと対比するのに、さっきのような。

 そして、右の下のところにもう一度目を移していただきまして、先ほど年々医師はふえておると申しましたけれども、今度は圏域別で見てみますと、邉見先生もおっしゃるように、やはり県庁所在地、医学部附属病院のあるところはふえておりますが、実際の医師数自体も雲南、雲南と申しますのは松江の南ですね。出雲の南のほうになるので。それから西に行って大田、浜田、益田、そして左上、この隠岐は、実際は松江圏の北のほうに50キロから80キロのところに、この隠岐群島4島がございます。それから、やはり年々県内のいわゆる格差が大きくなっています。

 それで少しこの病院にどういったことが起こっておるかということを書いていますが、やはり松江以外のところで雲南あたりでは、雲南病院という300床の病院がございますが、これはかつて内科医が十数名いたのが現在3名しかおりません。精神科病棟も一時休止しておりますし、大田というのは出雲から四、五十分のところですが、大田以西は医師がなかなか向こう側に向かって、西に向かって走ってくれません。ここも分娩取り扱い制限ですとか、内科系では消化器・循環器の医師は、ほぼいません。それから益田医療圏のところでは、津和野、これは先ほどの厚生連の病院、全国で初めて厚生連がつぶれちゃいまして、今この津和野町が買い取って、今、公設医院として4月から移行しようといたしております。それから、ご心配の隠岐に関してですが、分娩取り扱いは何とか自治医の卒業生を1人育てまして、今、産婦人科医、いわゆる助産師さんによる分娩で100のうちの40ぐらいを取り上げてもらっていまして、産科医が1人自治医大の卒業生がおります。精神科も危うかったんですけれども、何とか県立病院からの派遣で動いておるような状況でございます。ですので、やはり松江・出雲から離れれば離れるほど南、西、そして隠岐の北なので、私はあちこち代診をしながら走り回っているところでございます。

 こういった状況におきまして、国の制度運用のことは大きくあるわけではありますが、県といたしましても手をこまねいているわけにもいかず、医師確保ということで平成14年ごろからいろいろな施策を打ってまいっております。ちょうど真ん中に3本柱、私が室長でございます医師確保対策室というのを中心に、医師を「呼ぶ、育てる、助ける」ということで事業を展開しております。

 一つ一つ細かいことは説明いたしませんが、「呼ぶ」というところでは積極的な医師面談、島根県にゆかりの多い医師を中心に、島根大学附属病院、島根大学の卒業生の県外にいらっしゃる方ですとか、それから医師会の指定枠のそういったところもアンケートをとったりしまして、少しでも島根県に残っていたいというような人がおられれば、どんどん県外に出ていって面談をいたしております。

 その結果、左の下のところですが、18年が8名、医師確保実績ですね、19年が11名、20年が8名、こういった方は大体、病院勤務医として島根県に6年間、赴任していただきますので、大体何とか10名弱、1年間に他県から島根県にゆかりのある人を中心に戻ってもらっていますけれども、それでも結果的には病院勤務医が10名弱減っておるというふうなことがございます。出張面談訪問はそれよりも多いというのは、多い中から結果的にこれだけの人に来てもらっているということですね。

 「助ける」という制度では代診、私自身も研修病院の中に総合診療科というのを、自治医の卒業生を中心にやっていまして、そこが中心になって代診をやっていますが、私自身もそういった代診に行っております。

 それから下の「育てる」という、きょうはここがポイントだと思っておりますけれども、研修医のマッチングもいっとき悪いんで、少し数字が悪うございましたので、県と大学とが一緒になって研修医をよこしていただけるような事業もやっております。これは学生・研修医さんへの働きかけ、それから魅力ある研修病院づくりということで、いろいろな事業を行っております。

 こういったところで、全国的な医師不足の中で県外からの招聘というのは、各県は困っていらっしゃいまして、余り島根県が、うちが困っているからといってそういうことはできないと思っていますので、できるだけ島根県にゆかりのある方を連れ戻すというような施策で、これも先ほどから話しましたように、この10年弱で、やはり今後大事なことはこの赤字で書いておりますように、地域医療に従事する意欲のある医師を育てると、これが遠回りのように見えて一番の近道かなというふうに考えております。特に島根大学との連携を進めていっております。地域枠推薦入学というのは平成18年から入学者が出ていますが、これは全国でも余りないんだと思うんですけれども、地域枠というのは一県一区ではございませんで、先ほどから申しますと松江・出雲以外のところで育った方が対象となり、右の吹き出しのところ、過疎地域出身者に限定、そして出身市町村の面接がありますが、地域医療機関、福祉施設での実習が3要件となっております。

 これで結果的に18年度から6、10、10で、先ほどから出ておりますように、この人たちに奨学金を投じて、結局4、7、9、6名中4名、10名中7名、20年の10名中9名の方に奨学金をお貸ししておりますので、大体奨学金を貸した率が77%ぐらい。これは髙橋先生もおっしゃいましたように、お金を貸したからといってなかなか来られない。750万ぐらいの奨学金でございますので、結果的に返そうと思えば少し高利であっても1,300万程度ですので、今後そういうこともまた返還するとか奪い合いなんていうのが、恐ろしいことが起こるんじゃないかなというのも私は危惧いたしておりますが。それから2番、地域枠学士入学というのは、これは全県一区でございます。島根大学は学士3年次編入で10名集まっていまして、そのうち3名を島根県枠としていただきました。結果的には4名、3名。この奨学金に関しては、これ用につくっているわけじゃないんですけれども、19年の4分の4、奨学金、20年は3分の0になってございます。

 あくまでも今まで見ましても、お金だけこうこうすればあとは何とかなるというふうには全く考えておりませんで、やはり県としましてはそういった人、地域医療実習、それから大学自体が、4のところですけれども、地域医療教育学講座というようなものをつくりまして、地域医療機関と連携した学生実習、Early Exposureですが、5年生で3週間の地域医療実習、大学みたいなものも。そういった地域医療機関を40ぐらい登録してあるんですけれども、年に何回かそうしたところとの連絡会を持ちながら、単にやっているだけではなく、そういった共通認識を持って島根県内で医師を育てていこう、そういった学生さんを育てていこうというのが、島根大学に参加していただき、我々も協力しながらそういったものを県がやっておりまして、最後まとめになりますけれども、やはりそういった卒前教育がかなり重要だと思いますし、その後の卒後教育をしていきながら島根県の魅力、そして地域医療の大事さを早い時期からわかってもらいながら、魅力ということが1つ私は大事だと思うんです。本当に力を出してもらえるのは専門医等をとってからです。やはり10年目を超えてからのほうが本来の力だと思いますが、恐らく10年目までのところに全くこういったところに行ったことがない人が、いきなり10年たって専門医をとったから、じゃ、ということにはなかなかないと思うんです。両方なのかなというようなのが、先程の議論なので、私が思ったとおりでございます。

 少し長くなりました。申しわけない。

○荒川座長 ありがとうございました。それでは、木村先生に。じゃ、お二人。

○-- お役所の、たしか、この資料でめくったところで、出口で島根県は急に定着率が下がっていますし、いろんなことにしても、何かこういうように。これは何か理由があるんですか。

○木村発表者 恐らく今のは3ページというやつですね。

○-- そうです。

○木村発表者 これは14年度医学部卒業者というのが島根県は割あいいい、45から50になっているんですね。これは内情は、そのもう少し前はそんなに高くないんですね。14、15あたりは、これからマッチングの谷間ということで、随分学生さんも心配したり、大学のほうも、医学部のほうもこれから世の中はどうなっていくかわからないから、とにかく残ったほうがいいよと、そういったことで、たまたまこの数字がかなりそれまでの平均値なんかよりずっと14、15が上がっているところでございます。19年というのは、これは卒業生さんですので、    の一番悪いときなんですね。島根県は、前後がおおよそ変わっていないと思っているんです。たまたま一番その14年あたりは、みんなが心配して、どうしていいかわからないな、じゃ、島根大学にとりあえず残っておこうというようなデータがよく出ている。そしてこのマッチングも、少し島根大学さんが取りかかりが遅かったもので、このあたりはちょっと悪くて、また今、少し上がっていますので、実はそういったデータは間違ってはおりませんので、失礼な言い方ですけれども、なのでこのあたりにはこの卒業生は少ないと思います、困って。

○-- 実は、ちょっと情報が間違っていたら後で書き直しますので、島根医科大学は入試が非常に特徴的だと聞いています。たしか理科系の科目がなくても入学できるように聞いているんですが、そうすると全国から、医者にはなりたいけれども理科系が苦手という人が集まりやすいと聞いています。

○木村発表者 なるほど。

○-- だから、そういう特徴的な入試をするために、かえって全国から来て全国に散っているということがあるのかなと思っていると。

○木村発表者 おっしゃるように島根大学の医学部の入学制限、これが学士が10ありましても85のうち一番悪いときは1けたまで島根県出身者が落ちている。今、地域枠をつくったり、学費は関係ないですけれども、推薦入学の中で少し島根県の人たちの評価は、何か大学の中で考えたりして少し上がっているんですけれども、その裏には、やっぱりもしかしたら各県は近いところがあるかもしれませんけれども、ゆとり教育のような影響を受けまして高校生の学力がかなり下がっております。島根県には、いわゆる進学私立の高校はございませんので、そうすると県立高校は頑張っていらっしゃいますけれども、高校に入ったころにはかなりかつてのレベルより落ちていると、教育をしても医学部は、東大、京大の医学部以外のところでもかなり落ちています。もしかしたら苦肉の策としてそうやっているけれども、かなりそれが悪い方向に作用している。

○-- ちょっとよろしいですか。本質的な話になるんですが、各県の大学はジレンマにあると思うんですね。その県の医療を支える使命がありますが、逆に大学としての評価はその県の医療を支えたことではなくて、例えば論文の数であるとか、研究をどれだけやったかとか、科研費をどれだけとったかとか、そういうことで評価されるので、そういう高校の学力の高い人が欲しいと、あえて県の人をとっても文科省なり外からの大学評価につながらない。そのジレンマの中で、いろんな入試を工夫しますよね。そうすると地域医療にはマイナスの影響がある大学運営になっているのではないかという気がするんです。

○木村発表者 わかります。恐らくそういうところがずっとあったのが、今まさに島根県の地域医療はかなり危ない部分がありますので、大学も今、気持ちをかなり切りかえて方向性が変わっていると思います。例えば、私は実は前職は県立中央病院の総合診療科部長でして、島根大学の学生さんはすべて全員私のところで実習していまして、この子はなかなかいい、できるなと思ったのは大抵学士さんなんですね。どうなるかといったら、当時の学士さんというのは10名のうち、たまにいい年1人残るぐらいで、みんなそれぞれ散っちゃったんです。だから恐らく大学さんとしては、優秀な人を集めて今先生がおっしゃるようなことを考えていたけれども、結果的にそうそうは残らない。島根県のほうからは、大学はどういう考え方でやっているかと随分聞きましたので、この辺で少し方向性が今変わってきて、地元の医療を守るということも、かなり大きいものに大学の医学部の中では考えてもらっていると考えています。

○-- 木村先生、ありがとうございました。きょうは地域医療の観点から、どのような医師を育てるかということだったんですけれども、ちょっと私が今聞きたいのは、島根県では具体的にどのような医師を、医師といってもさっきおっしゃったような専門医が診られるかといったら、先ほど邉見先生のお話でも一様に、診断はできなくても判断はできるという話がありました。その病院では最初からもうやっておられるのか。先生のところなんかは。

○木村発表者 今2つ、地域偏在と診療科偏在がありますけれども、正直なところ診療科偏在に関しては、県レベルではなかなか難しいなと思っていまして、邉見先生のきょうの案なんかは非常にいいなと。これはちょっと置かせてもらいまして、地域偏在のレベルの話ですけれども、これに関しましては、やっぱり今、先ほど最初に私が話しましたように、今の専門性をまたこれも県レベルでどうこうということは簡単には言えませんので、やはりサブスペシャリティーとして持っていただきながら、地域で総合的なマインドを持った医師を育てるということなのかなと思っております。

○-- それは、卒前から卒後に一貫してということですか。

○木村発表者 そうですね、はい。だから、やっぱり何らかの、あなたは何の専門医なのというときに答えられないと、彼らは苦しいようでございますので、そうすると自分は糖尿病、内分泌に関してはかなりのことを知っているよと、ただ広く診られるよというふうな、そういう医師なのかなと。本来は逆を、我々は逆に育ってきていますので逆がいいのかなという気を持っていますけれども、ただ、それを求めてもなかなか難しいと思いますね。

○-- 日本の医療のいいところは、人口が多かろうが少なかろうが、ドクターやナースや自治体の方が努力されて、大体基本的な医療をどこでも受けられるということがありまして、本当にたくさんの意見があるかと思いますが、患者さん、家族も恐らく3年目のドクターがおられるよりも、きちんとした専門ドクターがおられたほうがありがたいと思われるというのもあるかもしれませんし、もしくは地域医療で一番必要なのは、それを放っておいたらどうなるのか、命に別条があるかどうかというのは、患者、家族に恐らく一番わからないことですね。先生がおっしゃったような、診断できると判断できるというのは。そうすると、卒前・卒後でやって、研修が2年終わって3年目のドクターがすぐ地域に行くというのはかなり本人も、やはり患者さんや家族にとっても厳しいものがあるような気もしますから、そういうことも考えるとどのぐらいの年代の人が、どのような能力を持っているかとか、協力体制をどうお考えなのですか。

○木村発表者 実は今日は余り奨学金の話をするつもりじゃなかったんですけれども、我々の750万の奨学金というのは、卒後18年の間に6年間というような仕組みにしています。この裏には、やはり最初に自治を卒業すると、逆に最初に好きなことをやられて、一人前の医師となってからその地域で働いていただきたいというのが原則でございまして、逆に10年過ぎたところで地域に行ってもらうのが私は一番いいと思います。

○-- じゃ、患者さん側の方から見るとですね。

○木村発表者 そうですね、はい。ただし10年まで全く島根県にもいなかった、そして地域医療は聞いたこともないよみたいな、聞いたことがないというのはちょっと言い過ぎですけれども、それではなかなかもたないんで、やはり忘れないように、初期臨床研修のときも当然、1カ月のあれもありますし、間、間では行っていただきながら、少し長期的には。すると10年選手が行かれるのが一番いいのかなとは思っております。自治の卒業生は全く逆ですね。

○-- 先生はたまたま自治医大学の出なので、島根県は地域医療学講座ができて、今は随分増えていますね。

○木村発表者 はい。

○-- しかし、その増えている医学部教育の中の新設講座を本当に有効にこれから活用してどうするかということで、先生の自治医科大学は地域医学講座がございますね。先生の母校と比べて、これからの今の現状と比べて、先生は地域医学講座というのをどういうふうにしようとしているか。

○木村発表者 やはり私も実は県立中央、700床の総合診療科をやっていましたので、いわゆる市中病院、基幹病院の中での総合医療、地域医療というのはあると思うんですけれども、大学の中においてはかなり難しいと思います。ベースはやはり地域に置きながらです。

○-- 大学ではフィールドを、地域医療科とか。

○木村発表者 はい。地域にフィールドを置きながらやっていかないと、大学の中だけではなかなか難しいので、そういうふうに私は期待し、立ち上がったばっかりですので、私もいろいろ協力していますけれども、あくまでも教員のほうが実習先に出向きながら、そこでのまた学校教育とか、島根大学自体が診療所を持っています。待っているんじゃなくて、診療所とも連携をしていますので、そういったところなのかなと思っています。まだ今動きだしたばっかりで、そこまで行っていないと思います。

○-- 島根大学は、要するに9割ぐらいの人がかつては島根県の人じゃなかったわけですね。

○木村発表者 そうですね。

○-- 今の人たちは、一生懸命先生が説得して、毎年15人から8人程度戻すということを努力されてこられたのですけれども、大体何年目の人を戻すんですか。

○木村発表者 やっぱり10年以上ですね。余り若い人は。少なくとも10年以上たっていて、これは私の印象で申し訳ないですけれども、40代前半ぐらいの方と、もう一つは退職が近い60前後。

○-- 私は地域の偏在を若い世代だけに帳じりを合わせることを求めるなら、非常に無理があると思います。やっぱり全世代で考えるべきことだと思うんです。そうすると一番人が動く時期というのは、勤務医が定年間近のところだと思うんですね。今まではその人たちは採用するというようなことをやっていたわけですけれども、大体、都会の開業医は飽和していまして、ある程度母校に帰るとか、母校の周辺の施設に戻るというような受け皿があれば、かなり動くんじゃないかなと思うんですね。

○木村発表者 そのとおりだと思います。やはりそのあたりの情報というのが、今かなり優良の会社もできてはおりますけれども、まだまだほかの業界から比べたらおくれていて、なかなか情報を、かつて結果的には医局制度がかなり強いものがあり、そして医局から離れて生活するというのが不安だった時代が長く続いて、それが今解放という言葉は変かもしれませんが、解き放たれてはいますが、まだまだそういうことでは情報というのが遅れているんだろうと思います。

 だからかなりの県が、私のところが少し医師に困っているので進んだことをやっていますので、たくさん来られますけれども、基本的に全部お話しして、同じことをやられて構いませんと言っていて、皆さんインターネットのホームページを見ますと似たようなことをやっていらっしゃいますけれども、まだまだそのあたりのところが遅れていて、それはどちらにとっても余りよくないと思います。

○荒川座長 時間はまだありますんで、今日のこのお話が地域や診療科に必要な医師の養成ということで、今何人かのお話に出ましたが、今度は全体で結構ですのでどうぞ。      

○-- 今日聞きたいのは、木村先生が地域医療実習あるいは研修ということで地域にでますね。今、年間10人ずつ勤務で。一般的にはではね。邉見先生を前にして私が思うのは、邉見先生にお世話になっているのであれなんですが、臨床教育をお願いする企画書をつくるのに、例えば臨床教育は受けないということもある。どうやって学生を指導したらいいですか。

○木村発表者 確かにおっしゃりとおりでして、当初はかなり反発やらがありましたけれども、それがやっぱり気持ちのいろいろなところがよくなる方向に向かうということがだんだん皆さんわかってくださってきていますので、協力的にはなってくれてますね。明らかに学生のアンケートをとってみますと、いい病院と余りよろしくなかった順ににこうなっていますので、こっちの病院に関しては、大学やら私が特にまた状況を聞いたりしながら、少し応援したりしながら、みんなで上がろうよというふうな努力はしておりますけれども、そういった反発は、当初は強かったですね。

○-- 何か応援する手立てとか、何かいいのがあればいいんじゃないかなとは思う。

○木村発表者 代診の制度等は持っておりますので、私自身も先ほど話しました、明日も実は雲南というところに教育に行くんですけれども、いろんな形でそういったところ、県立病院なんかからの支援をやられています。何とか持ちこたえてもらいながら、学生、研修医の教育も負担にならない程度、負担にならないというのはないんですけれどもね。

○-- ありがとうございました。

○-- 木村先生、地域に10人ぐらいお帰りになる予定が。

○木村発表者 ええ。

○-- その先生方を例えば再研修するとかいったような、その指導者がおられるんですか。

○木村発表者 その制度も実は持っていまして、県立病院の中に県の枠を持っていまして、常勤医として県でお雇いし、そして県立病院で研修してから行ってもらうと。言ってみれば県費で研修していただいて、恐らく地域医療振興協会なんかも同じようなことを。そういう制度もある意味では持たせてもらっていますので、実際そういう研修という言葉は変なんですが、研鑽ですね、10年目の医師が、今まではずっと循環器をやってきたんだけれども、地域に来るに当たって、じゃ、総合診療科や救急を見ながら1年ほどいるという制度は持っております。

○-- 地域医療振興協会ですか、6カ月コースと1年と持っていて、ちゃんとあの。

○木村発表者 はい。我々で見て、一応2年まではそういったふうなことを。

○-- 今日のお話なんかは地域や診療科に来る医師の養成ということが出ていますけれども、今お話を聞きながらやっていますが、卒前教育・卒後教育も連関していますが、そういうのを含めて全般的にそれぞれの先生のお話をどうぞ。

○-- 今日、邉見先生、髙橋先生、現場の様子を紹介していただきましたことが、きょうの検討会の課題だと思います。木村先生のほうから卒前のことで。髙橋先生、邉見先生のところで共用試験と卒然研修について、学生をどうやったか。そういうところとの関わりはいかがなのもか。

○邉見発表者 5年生のときにはマッチングをしに、どこを受けるかというのでその方は一番多いわけですね。1日だけ来られる方もおりますけど、できれば田舎ですので交通の便も悪いですから、泊っていただいて24時間の医師の生活を見てほしいということで、宿舎もございますので、夜の急診とかお産とか全部見ていただいて、当直見学もやって、できるだけ地域医療というのがどんなものかというのを見てもらっております。それとともに、いろんな科を全部、どこに行ったというんじゃなしに病院に行ったということで、私は消化器内科を見たいんですがと言う方、外科手術などを含めて全部見ていただく。全部の地域医療とか地方の病院がどんなのかということと、大学病院では診療科の壁が高いとか、そういうのが我々の所では気楽に助け合うというをつくっていまして、そういうのが今我々の特徴じゃないかということでという。

○-- 時間的にはどのくらいで。

○邉見発表者 大体は月曜日の朝来られる方が一番多くて、金曜日の夜帰られる人がいます。

○髙橋発表者 学生の見学実習を実施しておりまして、春に3、4週間と夏5週間は、1週間単位で医学生実習をやっております。ただ、受け入れ人数は全体で25名、各診療科に振り分けますんで、それは制限がございます。ただ春休み、夏休み以外も見学のご希望があれば、学生さん、あるいはよその病院で研修中の研修医に関しても、条件をつけないで無条件で受け入れております。

 それからもう一つは、大学がクリニカルクラークシップということを始められましたので、クリニカルクラークシップについてもご希望があれば受け入れます。年間で大体まだ10名までですが、長い方だと1カ月半ぐらいでして、その後マッチングに応募していただいて、そのまま今働いてもらっている人もおります。クリニカルクラークシップに関しましては、大学と違いまして医行為については制限をしておりますけれども、制限はしているけれども、非常に私どもが卒前教育にかかわる中では、非常に効果があるんじゃないかというふうに思っております。それは大体、学生さんのご希望があって、大学と折衝をされて、私あてに手紙をよこして受け入れるという旨を最初に医学部長さんにお伝えして、それで決まっているようです。

○-- 大学の先生たちに、そういうふうに言うと。

○髙橋発表者 鹿児島大学、九州大学、東京慈恵会医科大学、山梨大学、北海道大学等々全国から来られます。

○-- 木村先生のところでは、もう少し具体的に学生はどういうふうにやって、学生を地域へ出されますよね。

○木村発表者 1つは大学自体が3週間、島根大学医学部生に対してやっているのが1つと、それから県と大学で一緒にやっているのは、きょうは余り奨学金の話はしませんでしたが、実は65名、今奨学生がおりまして、既に4名卒業し、2名が地域に行きますけれども、そういった人たちと自治医の卒業生たちと、以前の学生を主に対象としまして、これは各新規に2泊3日程度で、松江、出雲以外のところで保健所中心にやっておりますけれども、これも会議をしながら共通認識を持って、ある一定のうちのやり方というのを決めながらやっております。

○-- きょうはいろいろな意見が出ておりますけども。

○木村発表者 やっぱりなかなかそういった感覚は、昔ながらのはあるわけですけれども、実は我々のところで3枚目のペーパーでしたか、研修医を集める事業の中で、資料3のところに研修医を集める事業というようなので、「育てる」のところの研修医等定着特別対策事業というようなので、こういったところで実は県が主催して指導医講習会等もやっていまして、なのでどんどんそういう形で出ていただきながら、つらい中でもやはり今後その、かつ我々なんかはどちらかというと27年ぐらい前に医者になった人間は見て盗めみたいなですね。今じゃそうはいきませんので、やっぱり研修医さんの接し方、指導の仕方というのも本当、そういったふうなこともやっておりますので、だんだんと広くなってはまいった。

○荒川座長 今のお話で、Early Exposureは皆さんお願いする立場ですね。

○木村発表者 はい。

○荒川座長 そのときに大学側というのは全く知らぬ顔で、かつ出かけて帰るというか、そこはどうなんですか。

○木村発表者 今はもう、かつては出雲に集まっていただいてなんていうことをやっていましたが、今は逆に出前的にこの圏域へ我々と一緒になって行って、大学と県とが一緒に行って、そこの指導医の先生たちに集まってもらって反省会をしたり。

○荒川座長 あるいは学生をここへ、実際やっているところを見に行くと。

○木村発表者 見させます、はい。

○-- これは、このモデルコアカリキュラムの改訂の最後を結局どうやってやっていくかという、Early Exposureでやっているのがかなり。もう一つは全然別の観点、公衆衛生が公衆衛生の実施を含めて、もう一点は本当の臨床実習プラン。従来これを入れて整理しなきゃいけないんじゃないかという議論をしておりました。

○-- そうそう。

○-- それで、臨床実習の占める役割というのは、非常にその地域の医師を増やすことに貢献するかどうかわかりませんけれども、少なくとも教育の専門家に聞いてみますと、かなり大きいと思います。特に外見上のカリキュラムの見直しというのだと思いますけれども、今、邉見先生のお話、あるいは髙橋先生のお話や木村先生のお話を聞きますと、いいんですね。地域でありながら邉見先生の病院には非常に優秀な医師も来るし、それから救急医師も断られるということは、やっぱり教育というのはかなり重要で、それからそこを使ったとき、あるいは教育を責任持って、その情熱がどれぐらいあるかによって、惹かれてくる学生も大分違うんじゃないかと思いますね。そういう意味からすると、カリキュラムをどうするというのも1つ重要ですけど、教育を与えるほうの責任者の心の持ち方ですね。それも重要じゃないかなと思います。

○-- そうですね。そういう意味では一番最初に言いましたように、研修は難しいかもしれませんけど、それはもっと不適切な言葉で言いますと学者専門となるんですね。今地域の発展について来てくれというような話ばっかり先行していますけれども、そうじゃなくていいんだと自分のほうから思えば、来てくださいということを言う機会がなくなるわけですね。それぐらいその学生を惹きつける教育者が出てこないと難しいというふうに感じました。

○-- 今の議論は非常に大事だと思うんですね。学生が地域に行きたいと思う仕組みをどうするか。今回、実に700名近く定員がふえて、大学では7つの医科大学が増えたんですが、これが各大学に20人程度行って、そこで地域枠ができたと。そうすると、残り100人なり80人は地域ではやらなくていいのかみたいな気持ちになるし、地域枠の人は何か貧乏くじというか、うちは貧乏だから地域枠に行ったんだというような感覚になるんじゃないかと。だから心のことからいうと、この制度よりも第2自治医大、第3自治医大、第4自治医大と、100人が100人地域医療に行く、そしてお互いに地域医療で頑張ろうみたいなのをつくったほうが、地域に行く人にはいいのではないかという考えがあるんですが、僕もそっちのほうがよかったんですが。

○-- それに関しては、大事な問題でございます。

○木村発表者  --委員、どうぞ。

○-- 島根大学はまさにそのとおりで、発表していなくても、だれが地域枠かというのは結局わかっちゃうわけで、そうすると地域枠の学生とそうじゃない学生というのがいるわけですが、ただ島根県の場合は、やはりいわゆる新設大学、昭和50年に開学していますので、やっぱりその歴史自体がその地域の医師を増やしていることがありますね。一方でやっぱり論文も書かなきゃいけないとか、そういった部分もあって、私は今の病院長とよく話すんですけれども、そこのところでちょっと中途半端な部分はあるんですが、やっぱりその地域のマインドみたいなことは、専門医になるにおいても、学者になっても必要である。これはぜひ必要だと思っていますので、だから島根大学医学部自体は地域医療教育を特に力を入れている大学だというのがいいんじゃないかということはいつも話しています。その中からそれは実際に地域で働く人、そして主に大学の病院で働く人、大学の教師もあってもいいわけですけれども、邉見先生がおっしゃるように、私は心臓血管外科だからおなかの痛いのはもう隣に行ってということにならないように教育していただきたいと思っていますし、自治医科大学は少し批判もされておるわけですが、私は第2、第3の自治医科大学よりも、その大学の特色ある、やっぱりその置かれた状況によって医学部さんも均一ではないと思っていますので、そこの大学、大学で考えていただいたらいいんじゃないかなというふうに、これは議論ですけど。

○荒川座長 私のところも各大学がそれを一緒に考えて、一緒になってやってどうしようかということで、かなりまじめに議論しようと思ってやっていると思いますので、僕はですけど。

   ほかにございませんか。どうぞ。

○吉田 九州大学の吉田といいます。

 私は2点言いたいことがあるんですけれども、1つは医学部に入学してくる学生で、その親戚筋あるいは親が医療関係者という場合は、自分の将来がどうなるのかというのをある程度思い描きながら医学部の6年間を過ごしていまして、確かにいいんですけれども、私立大学はそういう子弟が多いですよね。けれど、国立大学だと、ほとんど周りに医療関係者がいなくて、自分が将来何になるのかというのがさっぱりわからないまま、基礎医学から臨床医学まで勉強してきて、どうなるんでしょうかと相談しに来る学生がいて、そういう学生にある程度キャリアパスというのを示さないといけないんですが、大学にいる人は大学の医師のキャリアパス、特に専門医で地域のほうに行くというのもありますけれども、大学の中で論文を書いていくというのももちろん勧めているんですが、ここで1つちょっと、どうしても示すことができないなと思っているのは、地域医療の現場に本当に一番近くにいらっしゃる地域で開業されている小さなクリニックの先生方のことをどうやって学生に伝えていけばいいのか。そういう実習を最近始めたところは結構、大学としてはあると思うんですが、そこのところがなかなかうまく全国的に広まりを見せていないのではないかと思うのですがいかがでしょうか。

 例えば、共用試験は今のように全大学が導入していますけれども、どうしても「試験だから勉強する」という受験以来の習性を持込がちなのが気になります。その地域で頑張っている開業医の先生方の医療に学生が直に触れることで、自分がもしそうなったとしたらどんな能力が必要なのかというのがわかれば、例えばやっぱり自分は解剖を勉強しないと医師として診断や説明ができないとか、ご家族でかかりつけの医院に来ていらっしゃるので、家族性の病気や感染症の知識が重要だとか、そういう本当に学ぶ意味を実感できるのではないかと思います。もう1つはですから、やはり地域医療のことも併せて考えると、どうしても医師会の先生方にもこういった場に出ていただけないかなと1つは思っています。医師会の先生方に積極的に学生を受け入れていただけるということには、ならないんでしょうか。

○荒川座長 地域医療の先生は、また新たにお話ししましょう。そろそろ12時を過ぎまして時間なんですが、まだ残っているという人はぜひ。どうですか。

○-- 今のに追加をして、結局、国立大学が独立法人化して、大学附属病院で働く医者が労働基準法違反だったということがはっきりしたんだけれども、いまだに5年たっても何も改善していない。それで夜中まで働いている、研究もやって働いている大学病院の教員も、それから文学部の教員も同じ給料ですから、医者として認められていないわけですよ。ですからそこに、今、吉田先生がおっしゃった、私立大学を卒業するような方々はまだ親父さんやなんかの仕事を継ぐのですが、国立大学に入ってきて、そして奨学金やなんかいっぱい入っているような学生やなんかが卒業しますと、何でこんなに給料が安いの、だったら大学にとてもいないよと言って、ほかの高いところに行っちゃうわけですね。

 これは学士の給料も全く同じで、学士入学制度をやっているところは、ほとんどで、それが学士入学でせっかく工学部とかいろんな大学を出てきた人が、その知識を医学の分野で発揮をしてもらいたいという意図から学士入学制度をやったんだけれども、実際には大学4年間終わっちゃったわけだし、そこでお金も、もう自分の教育費に使っていると。それにさらに4年間また、プラス4年間、医学部に行って、だったら早く民間も取り戻さないといけないというんで、いいところに行っちゃうわけですね。ですから、そういう構造的なところからやっぱり基本的に考えていかないと、この問題は解決しないと思いますし、あと、もう一点だけちょっと。

 この委員会で論点にするべきことなのかどうなのかちょっとわからないんですが、先ほど木村先生のほうから、奨学金を貸与している方々が、返せるから将来どうなるかわからないよというお話があったんですけれども、実はとんでもない恐ろしいことが起こっていまして、この全国的な医師不足の中で、あるけしからん私立大学病院が、地方に行って自治医大の学生だとかそういう諸君に個人的にコンタクトをして、そして国の奨学金を借りたやつは3,000万円返してあげるからうちの病院に来なさいと言って、引っ張ってくる。こういうけしからんことが実際に行われているですから、そういう意味では地域枠の入学、奨学金に関連する入学生を本当に将来それが定着するかどうか、地域定着につながるかどうかというと大問題なんでね。こういう入学者選抜の問題まで、多少は踏み込まなければいけないのかなという気がしています。

○荒川座長 それとまた、前の会議に出ましたが、その会議で緊急にあげる課題とか予定かなんかが、そのほかいろいろあるとすれば、それはまたそのときに判断したいと思いますが、今、実はさっき邉見さんが言ったように、こういうものが提示されている中で、いかに大学はこれをやっているのか、やったらどうするか、あるいは臨床研修が変わると、どう変えるというようなことが、順番に来たと思いますので、そこのところは。

 それで、そろそろ終わりたいと思いますが、何かもう一つきょうは発言したいという方がいましたら、恐らく全ての方が発言されたと思いますが、どなたかございませんか。また今回は吉田さんの予定があると思いまして、いっぱいあるので難しいと思いますが、きょうはこれで終わりたいと思います。

○事務局 次回の会議でございますが、2月27日、金曜日、16時45分から文科省の建物の5階会議室で行う予定でございます。議事につきましては診療科の立場、地域医療等の立場から医師をどう養成、確保していくか、課題と方策について関係者からのヒアリングを行って議論をいただきたいというふうに思っております。

 本日はどうもありがとうございました。

 

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