医学教育カリキュラム検討会(第1回) 議事録

1.日時

平成21年2月2日(月曜日)17時45分~19時45分

2.場所

文部科学省3階3F2特別会議室

3.議題

  1. 医学教育の現状等について
  2. 今後の進め方について
  3. その他

4.出席者

委員

荒川委員、飯沼委員、石川委員、今井委員、小川委員、北村委員、水田委員、田中委員、辻本委員、寺尾委員、名川委員、奈良委員、伴委員、福田委員、南委員、吉田委員、吉村委員

5.議事録

 ○事務局 高等教育局医学教育課長補佐の樋口でございます。後ほどの座長選出までの間、進行を務めさせていただきたいと思います。

 なお、冒頭にございますが、私どもの高等教育局長の德永の方からごあいさつ申し上げる予定でございましたが、ちょっと他の用務で遅れてございますので、到着し次第ということにさせていただきまして、まず初めに議事の方を、座長選出までの手続の方を進めさせていただきたいと思います。

 なお、本日、机上に配付しております資料の中で、まず冒頭にご出席の方々のご氏名等をご紹介いたしたいと思いますが、少し時間も押している関係もございますので、本日ご出席いただいている方々のご紹介につきましては、机上に置きます第1回の出席者名簿の資料をもって代えさせていただきたいと思います。

 続けざまで恐縮でございますが、早速座長の選出の手続に入りたいと思います。

 座長の選出に関しましては、どなたかご推薦を頂戴したいと思いますが、どなたかご発言はございますでしょうか。

 小川委員。

○小川委員 全国医学部長病院長会議の会長をやらせていただいております岩手医科大学学長の小川でございます。

 私はご推薦をさせていただきたいと思いますが、荒川委員にお願いできればなと思っております。荒川先生は新潟大学の学長、それから大学入試センターの理事長を歴任されまして、現在も国立大学法人協会の委員として、医学教育を初め、いろいろな分野で幅広く取り組まれておりますので、またこの間、去年の暮れにありました計画評価委員会の委員長も務めておられましたので、荒川委員にお願いできればなと思います。

○事務局 ほかにご意見のある方はございませんでしょうか。今の拍手をもって代えさせていただきますが、それでは荒川委員でご異議ございませんでしょうか。(拍手)

 それでは、座長については荒川委員にお願いをいたしまして、なお副座長につきまして、座長からご指名させていただきたいと思いますが、ご異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○事務局 それでは、これからの議事進行を荒川座長にお願いしたいと思います。

 荒川座長には座長席までお進みいただきたいと思います。

 では、荒川先生。

○荒川座長 荒川でございます。ご推薦を得まして、この大切な会議の座長ということで、皆さん方と一緒に医学教育を考えたいと思っております。

 先ほど上の方の階では文科省と厚生労働省による臨床研修制度のあり方等に関する検討会が行われたところでして、それに連動した医学教育の問題も同じくらい大変大きな問題だと思っております。先ほども、前の評価委員会の中でも大学教育の高い要請に応じた会議であるということが明確に書かれていますし、医師養成期間の卒後、卒前の研修といいますか、学習が非常に大事だと思います。恐らくそういうことを踏まえて、社会要請に対応できる、基本的臨床能力を身に付けた医師を育てるということで、この会が大変大きな役割を持っていると思います。皆さんと一緒に勉強しながら、そして忌憚のない意見を出し合いながら良い議論ができればと思っております。よろしくお願いします。

 なお、私、副座長の指名をということでございますので、私といたしましては福田先生をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。(拍手)

 それでは、福田先生、お願いいたします。

 それでは、福田先生にごあいさつをお願いいたします。

○福田副座長 福田でございます。荒川先生のおっしゃったとおり、まさに今の問題は、卒前の教育の方をどう充実させていったらいいかという厳しい問題ばかりです。よろしくお願いいたします。

○荒川座長 ありがとうございます。

 それでは、まず事務局からきょうの配付資料につきまして確認をお願いします。

○事務局 まず、お手元にお配りしております資料のご説明を申し上げます。

 まず、お手元に第1回会議次第、それから出席者名簿、続いて資料1といたしまして、この「医学教育カリキュラムの検討会について」という高等教育局長裁定の実施要綱と、「医学教育カリキュラム検討委員会委員名簿」の2枚を付してございます。続きまして資料2といたしまして、審議会等の整理合理化に関する基本的計画、それから資料3といたしまして、医学教育カリキュラム検討会の公開についての案、それから資料4といたしまして、この医学教育カリキュラムの見直しに関する論点メモ、それから資料5といたしまして、医学教育に関する基礎資料を付してございます。そして、資料6でございますが、当面のスケジュール1枚、さらに参考資料といたしまして、先ほどもご紹介がございました臨床研修制度のあり方等に関する検討会の資料を付してございます。

 以上でございます。

○荒川座長 ありがとうございます。よろしゅうございましょうか。

 それでは、続きまして、会議の公開につきまして事務局から説明願います。

○事務局 説明いたします。

 このいわゆる協力者会議の公開に関しましては、政府の方で審議会等の整理合理化に関する基本的計画というのがございます。資料2をお開けいただきたいと思いますが、この審議会の議事等に関しましては、基本的には速やかに公開し、非公開の場合はその理由を付すというのがこの審議会の公開に課せられております。そして、この協力者会議というのは、「懇談会等行政運営上の会合に関する指針」という、下に掲げてあるとおり、審議会等の公開に準ずるという取り扱いにしてございます。従いまして、この会議の公開取扱いをこの会議で決していただく必要がございます。そこで、資料3をご覧いただきますとおり、医学教育カリキュラム検討会の公開についてという案を示したところでございます。

 中身の概略を説明いたしますと、会議の公開については基本的に公開とする。ただ、座長の選出等人事案件、それから報告書の審議等の場合、その他座長が必要と認める場合を除いてはこれを公開するということ。それから会議の傍聴手続、それから会議資料の公開、それから議事要旨の公表、小委員会の公開等の手続を定めてございます。

 この検討会において、基本的には公開ということでございますけれども、この案のとおりでよいかどうかということをお決めいただきたく、資料を付した次第でございます。

○荒川座長 ただいま、上からいくと資料3でございますが、これは原則として公開して行うということで、その点非公開とする事項についていろいろ書いてございますが、この会議を公開して対応したいと思っておりますが、いかがでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○荒川座長 よろしいでしょうか。それでは、そのようにしたいと思います。

 それでは、これから議事に入りたいと思います。

 まず最初に、事務局から医学教育の現状ということにつきまして説明いただきます。お願いします。

○事務局 この会議の設置の趣旨でございますけれども、先ほど荒川座長もおっしゃいましたとおり、臨床研修制度の見直しに関する議論というものが今行われております。この見直しというものの方向性を踏まえた上で、基本的な診療能力というものを確実に習得させるような、そういった卒前での臨床実習を初めとする医学教育というものの強化が必要であるということが1点ございます。

 もう1つ、やはり最近医師養成数の増といったこともございますけれども、医師不足問題の解消のために、地域や診療科に必要な医師を確保するために、いかなる方策を医学教育上講じていくことが必要か、こうした点もございます。

 こうした大きな2点の課題を踏まえて、この検討会というものを設置させていただくに至った次第でございます。

 実は今回、資料4をご覧いただきたいと思いますけれども、今回、そういった趣旨のもとに設置された医学教育カリキュラム検討会に関しましては、大きな論点として4つの点を掲げてございます。

 1つ目は、臨床研修の見直しを踏まえた医学教育そのものの充実ということ。それから2番目は、医師として必要な臨床能力というものを確実に習得させるための方策。逆に言えば、医学教育の中身というものを確実に習得していただくための方策。3つ目は、先ほど申しましたように、医師不足対策といいましょうか、地域や診療科に必要な医師を養成していくための方策。そして4つ目は、その他といいましょうか、医学教育のカリキュラムの見直しの論点。この4つでございます。

 なお、先に見直しの方向性のことを申し上げますけれども、この検討会に関しましては、臨床研修制度の見直しとリンクしているところから、臨床研修の見直しが再来年度からなされることを考えますと、医学教育のカリキュラムに関しましても、22年度からの医学教育に対応ができるよう議論を進めていく必要があります。そうした観点から、4月を目途には一定の中間的な取りまとめをお願いしたいというような形で今考えてございまして、このような論点をご議論いただきたいと思っている次第でございます。

 少しこの論点について各論を申し上げさせていただきます。

 第1の臨床研修の見直しを踏まえた医学教育の改善・充実方策でございますけれども、実は議論がございましたけれども、臨床研修の見直しに伴いまして、プライマリ・ケア、例えば総合的な診療能力というものの育成を重視する臨床実習というものをやはり充実していかなければいけませんし、また、今回の臨床研修の見直しは、基本的な診療能力の育成ということをその理念としながらも、将来のキャリアに応じた研修のキャリアパスの構築を図っていくという観点で臨床研修のカリキュラムの見直しをしていくということもございます。その関係で、医学教育において卒業までに将来の進路をある程度明確にできるような内容というものもやはり必要になってくるわけでございます。

 また、2番目の医師として必要な臨床能力の確実な習得を確保する方策につきましては、幾つかの項目がございますけれども、1つに、卒業時までに必要な臨床能力の到達レベルを明確化していく必要があるということ。それから、その習得した臨床能力の評価をいかに行っていくかという視点。また、そうした習得を図って臨床実習を全学的、体系的に行っていくために、どのようなことを取り入れていくか。こうした論点が挙げられるのではないかと考えております。

 第3点目といたしまして、地域の必要な医師確保方策につきましては、地域の偏在、診療科の偏在に対応するために医学教育で何ができるかということ、そのために入学者選抜上の工夫というものはどのように考えるべきかということ。それから、これに関連して、学部教育だけではなくて、臨床研修、専門医研修、大学院という長いキャリアを一貫して捉えて、どういった取組みができるか。また、大学病院だけではなくて、地方自治体や医師会等の医療関係団体や地域医療機関との連携というものをいかに図っていけるのか。こうした論点が挙げられることになっています。

 また4点目といたしましては、今のところ、医学教育だけではなくて、将来の生命科学、医学・医療の動向ということを踏まえて、どのような点を医学教育上強化していくべきなのか。あるいは、学部教育で研究マインドの養成ということが言われるわけでございますけれども、こうした研究マインドを持った人材育成のために学部教育において可能な取組みがあるかどうか、このような論点が一つ挙げられるのではないかと考えております。

 なお、関連いたしまして、資料5に、かなり概略でございますけれども、医学教育に関する基礎資料というものを提示させていただいております。ここでは、これまで平成13年以降の医学教育に関する協力者会議の方の提言の内容、それに基づく医学教育改革の動向、あるいは、9ページ以降に昨今の医学部定員増の取組み、あるいはその枠組みに関する資料、それから15ページ以降で、近年のデータ的な医学教育に関する現状と具体的な数値等を示した各資料から整理をした医学教育改革の進捗状況といった資料をお配りしたところでございます。

 さらに、参考という形に置いてございますけれども、参考資料といたしまして、臨床研修制度のあり方等に関する検討会というものが今ございまして、文部科学省と厚生労働省の合同の事務局によって設置しております。この検討会は高久先生を座長といたしまして、これまで5回にわたり検討してまいりました。本日の会議において、まとめの骨子、たたき台というものをお示しして議論をさせていただいたところでございまして、その基本的な内容をこの別紙の下の欄に示されてございます。大きな流れといたしましては、この基本的な考え方に示されておりますとおり、「医師としての人格の涵養、あるいは基本的な診療能力の習得との理念の下、将来のキャリアへの円滑な接続という観点を加えて、今の臨床研修のプログラムを弾力化する。あるいは、卒前・卒後一貫して医師養成というものを目指して、臨床研修の質の向上を図っていく。それから、地域や診療科に必要な医師を確保する観点から、研修医の募集定員や研修病院の指定基準というものを見直していく。こうした大きな考え方の下にたたき台の資料を構成してございまして、幾つかこの会議に関係するものを申し上げますと、この見直しの方向性の一番上に、必修診療科は1年目における内科、救急にとどめ、各病院の判断で早い段階から将来のキャリアに応じたような研修を行うことができるようすること。それから、研修2年目には、地域の第一線の病院、診療所での研修を行う地域医療研修というものを必修としていくこと。

 それから、都道府県別の募集定員の見直し等でございますけれども、(3)といたしましては、医学教育に関する記載がございまして、大学における共用試験の合格水準の標準化、それから医学教育のカリキュラムの見直し、それから学生の医行為の取扱いや国家試験の内容の見直し等も提言内容に加えているところでございます。

 なお、本日の検討会においては、いかなる診療科を必修とすべきか、また、地域医療、ここで申します地域医療というのは研修でどういうことをすればいいのかということ、あるいは臨床研修の効果的目途というものをどんなふうに考えていくべきか等を中心として議論されました。

 

 以上、雑駁な説明になってしまって大変恐縮でございますけれども、説明させていただきました。

○荒川座長 どうもありがとうございました。

 ただいまのお話のように、資料4、5、それから参考資料というところが今日のたたき台の参考としての内容でございます。このように既に医学部の改善に関する調査研究協力者会議というものがございまして、あるいはただいま申し上げました研修制度に対する在り方検討会も設置されてございます。本日お集まりの方々には、そちらにもご出席なさっている方もおられますし、そういう様々な会議や検討会において出された意見を踏まえて医学部全体についてこれからの医学教育を考えていきたいと思っております。 今日は第1回でございますので、これは各委員の方々から、資料を踏まえて会議でもって検討する事項等があれば、今後それらについて議論をどう進めるかということで、まず自由なご意見を賜りたいと。本日お時間は大体19時半ごろまででありますけれども、長時間でございますが、できれば、私としてはお一方には必ずご発言いただきたいと思います。よろしくお願いします。

資料4の最初に、一番上ですが、総合的な診療能力、それから基本的な診療能力をいかに習得させるかということで、大事なことが最初から出てあります。それを踏まえてこれから進めることにしたいのですが、いかがでしょうか。ご意見のある方が誰か他にいなかったら、今日は第1回でありますので、ぜひ最初に皆さんの思うところをお聞かせ願います。いかがでしょうか。

 どうぞ、伴先生。

○伴委員 名古屋大学の総合診療科の伴と申します。この1月から医学教育学会の会長をしておりますので、全体の方向性に関してちょっとだけ短くコメントしたいと思います。

 資料4が論点メモということで、このディスカッションの基軸になる論点なのかなと思いますが、ちょっと1番のところで、少し言葉が……。「総合的な診療能力」というのと「基本的な診療能力」という言葉が出てきて、ちょっと荒川先生のコメントの中にプライマリ・ケアということが出てきたんですけれども、やはり私自身の私見か……、これは医学教育の統一見解というより私見ですけれども、医学部での教育というのは基本的診療能力の教育で、将来基礎医学に行く人も含めて、基本的な診療能力を身に付けさせるのが卒前教育だというふうに思います。ですから、最初から「総合的な診療能力」というと、ちょっと違うかなというニュアンスがあるように感じます。ですから、先ほどのまとめの骨子で、参考の臨床研修制度のあり方等に関する検討会のところで出てきたコンセプトの中で、今回、省の管轄の問題で出てきていないのかもしれないんだけれども、国家試験というのは、こっちの論点メモの方に出てきていないんですね。どこかに書いてあるかもしれないんですけれども。国家試験はかなり卒前教育、特に臨床実習に大きな影響を及ぼしていますので、特に臨床実習をどうするかというふうなところを討論する場合に、国家試験がどういうふうになるかというところを言わないと、多分話にならないというか、議論しなければならない問題だというふうに、ちょっと口火を切るつもりで……。

○荒川座長 先生の最初のお話は、まずは基本的診療能力を習得させるべきということで、意図するところは大体おわかりですね。国家試験のあり方によっては、特に5,6年次の医学教育はかなり在り方が変わるということもあり、大変重要な問題です。そういう一つの問題提起がございましたが、ほかにいかがでしょうか。

 どうぞお願いします、今井さん。

○今井委員 私は札幌医大の今井と申しますが、北海道にいるということもありまして、いろいろなもちろん問題を包括的にということになるんでしょうけれども、今現在、非常に問題になっていることとしては、これはもう北海道だけではなくて、地域医療というものが非常に崩壊しておりまして、皆さんご存じのとおりですけれども、そういうところが恐らく、東京都内はどうか知りませんが、それ以外のところは全部非常に辛い状況にあって、地域医療の崩壊というのが町の崩壊と申しますか、地方の崩壊にもつながっていくという現実問題がございます。ですから、地域医療を立て直すような卒前、卒後教育を検討する必要があるのではないかと、目的はそれを果たすことではないとは思いますが、しかしそれに深く関わる問題でもありますので、そこに連動するような卒後研修でなければいけないし、また卒前の医学教育カリキュラムも見直さなければいけないと思いますので、そこには私の知る限り、そういった地域医療のことも卒前教育で取り上げるべきだというふうな何かワーキンググループか何かがあって、そういったことも、それは非常に重要であるということを考えております。

○荒川座長 各大学で、地域医療に関する講座はかなり増えているようですが。

○今井委員 各大学の設置状況の全体像は十分存じ上げませんが、どういう卒前教育にしていかなければいけないかが問題だと思います。アーリー・エクスポージャーという考え方と近いのですが、それをもっと系統的に全体としてやはり入れていく必要があるんじゃないかというふうに思います。そうしますと、初期治療と申しますか、救急医療に関わる部分もそこには少し入ってくるというふうに認識していますので、そういった形で実習を行っていくというようなことも非常に重要なのかなというふうに思います。

○荒川座長 昨年の教育プログラムの前の、あるいは定員増の前と比べて、今回の定員増は殆どの大学が行っており、そういう意味では地域医療の必要性という認識が高いことは言えるのではないかと思います。

 他にいかがでしょうか。

 どうぞ、小川先生。

○小川委員 岩手医科大の小川でございます。全国医学部長病院長会議会長の方もさせていただいております。

 先ほどまで臨床研修制度のあり方に関する検討会の委員として参加させていただいたわけでございますが、臨床研修制度のあり方に関する検討会につきましても、ビジョン会議から派生をして、一番最初に検討会で厚生労働大臣と文部科学大臣がいらっしゃって、医療崩壊の一つの原因となったのが臨床研修制度であるという考えがあって、そういうことも含めて検討いただきたいというような論点で始まったわけです。

 どうも臨床研修をすると、一生技術が担保されるような幻想があるんじゃないかと思うのですね。ところが、ここにいらっしゃる先生方、お医者さんからすれば、卒業して10年たちますと、そのときに習った医学の常識が非常識になっている。例えば、昔は胃潰瘍になったら、おなかを切って胃を全摘する、というようなことは当たり前だったわけですが、今はそんなことをすれば傷害罪で訴えられる時代になっています。それだけ医学の常識そのものが、5年、10年経ちますと、今の医学・医療の進歩の中で変わっていくわけです。そうしますと、幾らいい教育をしても、あるいは最新の技術を教えても、最新の知識を教えても、それは5年か10年ぐらいしかもたないわけで、そういう意味で、例えば臨床研修制度がいかに立派な制度として確立して、そしてものすごい立派な教育をしたとして、2年間の教育で、一生その知識と技能でやっていけるかといったら、決してやっていけないわけで、そういう意味ではあくまでも生涯学習の一つであるということでありますし、卒前の医学教育とそれから卒後の臨床研修と、そしてさらに続く後期研修、そして専門医、そして学位、そして生涯職業とする医師というところには連続性があって、生涯教育の中で位置づけられなければならないと思っています。

 ちょっと資料の5の1ページ目をご覧いただきますと、1ページの左の下に現在の大体のシステムがあるんですが、実は、これは平成13年からしか載っていませんけれども、平成3年に医学教育大綱の見直しが行われまして、それまで2年間の医学進学課程と4年間の医学専門課程に分かれていた医学教育が6年一貫教育になった。ですから平成3年から今の医学教育そのものが大きく変わってきたのであります。医学教育の充実と評価システムの確立という中で、今の医学生というのは大体4年生が終わった段階で、この真ん中にあります臨床実習開始前の共用試験というのがあります。共用試験は、これはただではございませんで、約3万円ぐらいの試験料がかかるわけですが、何のインセンティブも実際にはないんですね。2万8,000円、9,000円……。それで、実はその臨床実習開始前の共用試験のときの到達目標と、それから先ほど伴先生から指摘がありました、その後臨床実習があって、国家試験があるわけですけれども、国家試験の到達目標と臨床研修の到達目標が3つとも全く同じなんです。ですから、同じ到達目標を3回やらされているというのが今の医学生のかわいそうなところです。ですから、臨床実習開始前の共用試験で、知識の部分に関しての到達目標は、国家試験の到達目標と同じです。せっかく5年生になって、今度は臨床実習になった。そうすると、国からクラークシップの臨床実習をやりましょうと掛け声はいいんですけれども、どんどん今、後退をしていっている。さらに大学6年生までいって卒業したときに国家試験がある。国家試験ごとに4年生までの共用試験で終わっていた知識の問題がまた問われることになるので、6年生の半分は、あるいはある大学によってはほとんど全部4年生までの復習に費やされている。6年一貫教育の6年教育が実質5年教育になっているという現状があります。

 ですから、もちろん卒業到達目標とそれから卒業時の国家試験のあり方の見直しというのは、絶対これは必須でありましょうし、もう一つ問題なのは、医学教育のモデル・コア・カリキュラムというのがここにございますが、モデル・コア・カリキュラム、コアなはずなんだけれども、今現在行われている医学教育のモデル・コア・カリキュラムというのはすべてなんです。ですから、何でもかんでも全部ですから、結局コアになっていない。ですから、もちろんこのコア・カリキュラムの基本的な見直しからやっていただかなければならないでしょうし、共用試験の位置づけと卒前の臨床実習の位置づけをきっちりとやってもらわないとだめだということだと思いますし、これが、まず一つは、ですからモデル・コア・カリキュラム、それから共用試験のあり方、そして3番目に共用試験の中で、何で今、臨床実習の中で国からクラークシップの臨床実習をやりましょうという掛け声があるんだけれども、なぜそれができないのか。ですから、臨床実習のあり方、これが3点目。

 それから、4点目に国家試験のあり方。それから、その後に卒業後の研修制度のあり方がつながっていかなければなりませんし、さらに継続性を持った生涯教育の充実ということからすれば、これが全部連携して専門医制度あるいは長期研修あるいは学位、そういうものと連動しなければならないと思いますので、この委員会でやらなければならないという事項はかなりたくさんございますし、それも今ラディカルにやらなければ日本の医学教育は絶対よくならない、そして医療崩壊は止まらないということだと思いますので、ですから、私はこの委員会の持っている意味というのは極めて重要であって、これをちゃんと臨床研修制度との関係の中で、きちっとした卒前医学教育の確立をしないとまずいんじゃないかなと思います。

 ですから、過去のいろいろな委員会あるいは調査協力者会議の報告だとか、いろいろなものが出ておりますけれども、こういうことにもうとらわれないで、医療崩壊の現状のそういう中からもっとラディカルに根幹から見直しをしていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

○荒川座長 どうもありがとうございました。

 全体的なお話をいただいたと思います。

 どうぞ、北村先生。

○北村委員 東京大学の北村でございます。医学教育国際協力研究センターというところに属しております。また、共用試験機構では主にOSCEを担当させていただいております。

 東京大学を代表というわけではなくて、すべて個人の気持ちですが、1つは資料4を見ますと、カリキュラムの見直しということが縷々書かれていますが、80医科大学が日本においてすべて同じカリキュラムでやる必要は必ずしもなくて、非常にコアな部分、医者として大事なところは必ず必要ではありますが、80医科大学それぞれに地域に根ざした大学があれば、それはそれでいいし、また国際的な観点から世界を目標として闘う大学もあっていいわけで、いろいろなタイプの教育が必要だと思います。

 そういう観点から、ここで我々が今から決めようとすること、これは非常に大事なことは間違いないことで、今、小川先生がおっしゃったとおりでございます。それを踏まえた上で、それはすべての大学が踏まなければいけないコアな部分であり、決して大学の特色を出すことを妨げるものではないということを最初に確認していただければと思います。

 その上に、この会の名前ですが、資料6ですと、医学教育モデル・コア・カリキュラム検討会とされています。それに会議次第ですと、この会の名前が医学教育カリキュラム検討会とされているんですが、気持ちとしては、この会そのものが医学教育モデル・コア・カリキュラム検討会であって、コアを検討しているんだということをあらかじめ押さえていただきたいなと思います。これが1点です。

 2点目は、資料4の1の黒ぽつの3つ目です。これは教育理念と関わることかもしれませんが、臨床研修との重複なく基本的な診療能力を云々と言われていますが、医学教育というような実践的な学問においては、重複ということは非常に重要なことだと考えております。例えば、学生時代に糖尿病を見たから研修医に糖尿病を見なくていいと、そういう考えでやると、本当に重要な視点というのは身につかないものだと考えています。身につく知識、すなわち単なる知識でなく、実践できる知識というのは重ねてやることによってできるものと信じていますので、この「重複なく」というのはぜひ削除してほしいと思います。重要なことは重複を当然すべきことなので、そういう観点から今後の議論を進めていただきたい。

 それから、小川先生がいみじくもおっしゃったように、学生時代に教えること、あるいは臨床研修、必修課目で教えることは、5年、10年で変わることを教えるのではなくて、5年、10年変わらないことというのはあると思いますが、そういうことを中心に教えることであるという認識、それが基本的な臨床能力だと私は考えています。5年、10年で変わるようなことは、後でいつでもというか、どんどん生涯を通して勉強していかなきゃいけない、まさに生涯教育の範疇ですが、学生時代、すなわち必修科の研修のときには5年、10年変わらないものをぜひ、それが何かということをここで議論し、教えてほしいということにしたらどうだろうというふうに考えています。

 それから、国家試験に関して、ここでやるべきことというのは、また議論があるかもしれませんが、国家試験に関しては私の認識もまさにそうで、教育の中で国家試験が臨床実技試験をやったら  の方が多いということでは全く同感です。それをよく知る上で、この2番の丸ぽつ2つ目なんかでOSCEという言葉が出てきます。国家試験でやるかどうかはまた別としても、臨床能力というものを何らかの形で卒業時に各大学が行うなど、いろいろな方略があると思いますが、そういうところにシフトしていくことが重要だろうと思いますので、ここもぜひディスカッションしていただけないかと思います。

 以上です。

○荒川座長 ありがとうございました。

 多分先生がおっしゃったことは、小川先生とそう変わらなくて、やはり医学教育でやるべき使命は医師をつくることだと共通していますので、多分その点では委員の方々も意見の相違はないと僕も理解しています。この会議の名前、これはまた考えて誤解ないようにしたいと思います。ありがとうございました。

 他にいかがでしょうか。

 どうぞ、吉田先生。

○吉田委員 九州大学の吉田と申します。

 資料の中では、先ほどの資料5の平成13年のモデル・コア・カリキュラムの作成と平行して、診療参加型臨床実習への移行のためのガイドラインを取りまとめました。当時は診療参加型臨床実習をどのように大学に導入するかということについて、先行している大学が何にぶつかっているのかということを中心に、法的な側面から整備すべきことも含めて議論して、ガイドラインにまとめたのでございますが、その後どうなっているのか、現状について私が言いたいことは2点あります。1つは、医学教育の現場がどうなっているかということなんですが、当時、モデル・コア・カリキュラムができて、共用試験ができて、診療参加型臨床実習ができて、卒後研修が必修化されてというような大きなことがこの10年の間に起こっていって、その間、あともう1つは大学院重点化、大学院大学ができたということがございまして、特に医学部の中の教員の特に臨床系の先生方がかなりすり切れているという状況です。大学院ができて、医学部の中に修士課程ができて、その修士課程の医師に対する臨床教育ですとか、そういうことも全部臨床系の先生方が担ってきていて、もうこれ以上何を変えろというのかというのが現場の正直な意見です。私はその後ずっと大学で医学教育を学内でどう運営するかという仕事に携わっているんですけれども、一番やはり即座に解決しないといけないのは、現場の先生方の負担を減らすということだと思っています。

 もう一方で、学生の方ですけれども、共用試験OSCEが全国でされるようになったり、あるいは卒後研修のマッチング制度ができたりして、学生の意欲がものすごく今高まっていると感じています。これはもう10年で随分変わりました。彼らも患者さんのところに行ってお話をきちんと聞くようになっていますし、自分は患者とお話しする能力がまだまだ足りないと感じる学生もたくさん出てくるようになってきて、その面は非常によかったと思います。ただ、一つは、でもやはり制度に踊らされているという感じがします。

 先ほども私どもは臨床研修の会議を傍聴していたのですが、その中である先生がおっしゃられたのは、結局のところ、リスクの少ないところ、インカムがたくさん出るところを選ぶという話があって、実は九大で臨床研修じゃなくて、実習なんですけれども、実習を診療参加型にして、それを選択制にしたときに非常に大きな問題があったのは、結局診療科の中でもものすごく意欲的に学生を鍛えてくれる、勉強できる診療科と、学生にはやはり危険があるので、やらせられないので、見学が中心になる。でも、見学が中心になると結局サボれるんですね、学生たちが。要するに易きに流れるというか、非常に勉強できるところと楽なところを選ぶ。それは当時の九大が学会で発表したときも、筑波大の先生もおっしゃっていましたけれども、学生が選択をするとどうしてもそういう勉強できる方向と楽な方向に流れるというのは2つの大学で共通の見解だったのです。それでいいのかというところが一つあります。最低限やはり彼らの身につけなければいけないのは何かということが考えていかないといけないかなと思っています。

 それと、先ほどお話が出ました、重複しているというお話なんですけれども、恐らく、例えばモデル・コア・カリキュラムの中の共用試験に関する項目を彼らが習得して、共用試験を受けて臨床実習に出たら、臨床実習で得た知識をどう使うのかということを考える。次は医師国家試験に出題基準がありますけれども、あの試験をクリアすれば学生が、じゃ医師免許を取って研修医になったらその知識をどう使うのかということがある。それは恐らく研修医になると、医師免許を持って医師として患者にお話をしないといけないですし、そういうことが、恐らく使い方が随分違うので、特に知識の面でいえば重複している部分はたくさんあると思いますけれども、もう少し得た知識を何に使うのかということまでは踏み込んで書かれるといいのかもしれないと思いました。

○荒川座長 その重複という意味の話を好意的にとれば、無駄なく、うまく進めるようにしてほしいということですね。中身が重複とかはあり得ると。これはさっきお話もございましたね。わかりました。

 他にいかがでしょうか。

 じゃ水田先生、お願いします。

○水田委員 九州大学の水田です。

 私は18年度の医学教育の改善・充実に関する協力者会議にも出していただきましたけれども、このときもいろいろディスカッションして、これ以上ないというぐらいのものが出たはずなんですけれども、しかしまたこれが出てくるということは、全然進んでいないんだなという気がして、ちょっとえっという気もしないでもございませんし、ただ、私はいろいろな教育をしていって、だけど卒業した途端に何もかもできるように医者は絶対できないですよね。だって、自分のことを考えたら、何一つできなかったじゃないですか。それで、また何回も何回も研修しながら積み重ねていって、いろいろな先輩から教えてもらいながらやって、私は医者というのはそういうものだと思うんです。

 ところが、一番残念なのは、今そういうお医者さんに対する教育というのが、皆さん各論に対しては、救急だ、何だかんだと言われるんですよね。精神的な教育といいましょうか、倫理に関する教育というのがなされていないんじゃないか。といいますのは、以前、協力者会議の中でアンケートをとったことがあるんですね。女性医師の働き方という内容で、卒後、5年、10年、15年、20年、25年までの全国の女性医師のアンケートをとったんです。かなりの方が離職されている。離職が一番多いんです。その原因としては、60%ぐらいがやはり子育ての間は離職するんですね。それから50歳代を過ぎますと、今度は介護というのが60%を占めるようになってきます。ところが、約10%の方が、その理由として働く必要がないからと書かれたんですね。私はそれはやはり、その本人もそうですけれども、そのパートナーの方も、結婚していて、おまえは働かなくていいから家にいろと言われたかどうか、そうなんだと思うんですけれども、そういう気分で医者になってほしくない。お医者さんになった以上は、やはり医師としての教育を受けた使命というものをきちんと守っていただきたいなと思います。医師の使命というのが何かということを、今、そういう教育がなされていないんじゃないかなと思いますし、総論的なこととしては、やはりそれをきちんとすべきではないかなと思います。各論としてはいろいろあるでしょうけれども、何もかもはちょっと無理だなという気がします。

 それから、国家試験でもいつも思うんですけれども、あんなに難しくしなきゃいけないのかなという気がしないでもございません。といいますのは、国家試験の目的とは、落とすのが目的ではなくて、最低限知っておくべき医師の能力を試す試験ですから、私は同じ問題が毎年出たってちっとも悪いことはないと思うんですね。それを絶対知っておくことは必要です。

 そこのところは少し国家試験を見直して、今は非常に難しくて、教授の先生たちでさえ迷う問題も出ているような気がしないわけでもありませんので、私は思うんですけれども、5年、10年たったら使えないような問題を出したってしようがないんじゃないかなと思います。もう少し、言いたいことは医学教育の中で大事なんです。総論的な「医師たる者どうあるべきか」という、医師としての倫理的なことをやはり教育の中に忘れないで入れてほしいなと思います。

 以上です。

○荒川座長 先生のお話に倫理のことがよく出ますが、よく議論では教養教育もかなり言われますね。今の先生のイメージとしては、現在の医学教育の中にそういうことをやはり        入れろという意味でしょうか、イメージは。

○水田委員 そうです。私はそれは大事だと思うんですね。ですから、教養教育がどうだったかというのは別として、医師たる者の教養教育、基本的な教育はすべきではないかなと思いますね。6年間の中にやはりそういう面はきちんと入れていただきたいと思います。

○荒川座長 わかりました。

 じゃどうぞ、田中先生。

○田中委員 東京医科歯科大学の田中でございます。

 ちょっと私は全然違う観点から意見を述べさせていただきたいと思います。この委員会の対象となる学生というのは一体誰かということなんですけれども、と申しますのは、臨床研修の見直しは平成22年度を前提にということから、今の5年生の学生がこれに該当していると。そうしますと、臨床実習の前半は終わっているのが大半だと思うんですよ。だから、その人たちが卒業した後受ける臨床研修が変わる。だから、卒前の教育も変えなきゃいけない。恐らく間に合わないわけです。

 それから、もしコア・カリキュラムを改訂するということになりますと、これは1年生から対象ですから、卒業するのは6年後です。ですから、一体どこを対象にこの議論が行われているかということを考えないといけないと思います。本当のところを言えば、1年生からモデル・コア・カリキュラムを見直すのが理想なんですけれども、それは6年後なので、今は医療崩壊と言われていて、到底間に合わない。ですから、5,6年生に対してどうするか。それから、もっと低学年から、初期教育からどうするか。少し分けて議論する、あるいは議論した結果を分けてどういうふうに現場に落としていくかということも議論いただければと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○荒川座長 今、22年から始まる対応ということになると、我々がどこを対応したかが非常に議論になる。これもこれから議論していかなきゃならないということです。わかりました。

 他にいかがでしょうか。

 どうぞ。

○奈良委員 東京医科歯科大学の奈良と申します。

 私もまた別の観点から申し上げたいと思います。医学教育カリキュラムを見直すことは非常に重要な議題ですが、医学部関係者だけでなく、広い視点から見直すことが大切だと思います。というのも、医学・医療は社会と非常に密接に関わっており、例えば臨床実習を充実させる際には医行為をどう進めるかという問題が必ず生じます。この場合、医学部関係者だけで議論するのではなく、患者さんなり、国民の協力が得られないと決して進みません。さまざまな立場の意見をも踏まえながら見直すことが重要だと思います。

 また、医師としての倫理を教育することが課題になっています。しかし、倫理というのは医学部に入学してから教育するのでは不十分で、むしろ医学部に入学する前の、小学校、中学校、高等教育の時点から十分な教育が必要ではないかと考えます。そして、倫理性が高く、医師になるべきモチベーションが高い学生を入学させる制度にするべきだと思います。現在の入学試験制度は、どちらかというと、偏差値が重視されています。医師としては偏差値が高いことも必要ではありますが、前提として、医師になるのにふさわしい人間性を備えていることがより重要ではないでしょうか。そうした学生を見極めるような入学制度を導入することをこれから考えていかなければならないと考えます。これも医学部だけでなしえることではないのですが、今後、優れた医師を養成し、医療を充実させるためには、入学制度の見直しも議論していかなければいけないと思います。

 それから、この委員会だけでは当然解決できない大きな課題として、地域医療の問題があります。この課題は、ただ単に医療だけでなく、地域の経済や社会の問題も絡んでまいります。地域が活性化しなければ、医療も進められないと思います。地域振興の課題まで踏み込むことはできませんが、そういったことまでも念頭に置きながら議論しないと、地域医療の問題を解決することは難しいと思うのです。

 このように、医学教育を改善するには、多角度からの議論が必要になると考えております。

○荒川座長 大変大きな問題が出ています。これはちょっと、これをどう扱っていくのか、大変議論の難しいところであります。

 どうぞ、辻本先生。

○辻本委員 ただいま奈良委員から患者の協力が必要というお言葉をいただいて、勇気をいただき発言いたします。    

 幾つも申し上げたいんですけれども、1つは先ほどから出ています倫理教育の欠如の問題。それは教養が復活することだけでできることとはとても思えない。だから、本当に今おっしゃったようなモチベーションの高い人を入学させてほしい、その辺を真剣に考えていただきたいなというふうに思います。

 そして、2つ目としては、患者・市民の立場から見ておりますと、学生時代、少なくとも卒前に自分の具体的な将来像が描けていない学生さんがいらっしゃること。やはり6年間の学びの中で、自分がモデルとするような教員、医師との出会いとか、あるいは自分で目指すべき人を見つける、そういう人を探すというようなことが、昔の学生さんにはあったと私は聞いておりますが、今の学生さんたちはやはり国試の問題にも絡むのかもしれませんけれども、国試対策がすべてとなり、将来像ということが非常に希薄になっているのではないでしょうか。

 それから、出ておりますが、国家試験の問題。実質6年生の1年間が国家試験の予備校化になったりしますね。医学教育ということが試験対策ということになってしまってはいけないと、これもやはり国民感情としてはぜひとも見直していただきたいと思います。

 さらには、80大学の教育格差、教育の質の格差はあって当然なのかもしれませんけれども、そのことをもっと広く国民の理解を求めるようにしていただきたい。例えばうちの大学は地域に貢献する医師養成教育を行っているんだと。そのためには地域の人あるいは患者さんにこういう協力をしてほしいんだということをもっとわかりやすくメッセージをしていただくことも必要ではないのかなというふうに思います。

 さらに、2点申し上げたいのは、今後問題になってくる共用試験後の医行為を伴う臨床実習と卒前教育の中に患者の協力を求めるということ。

 共用試験が普及することで、インフォームド・コンセントの大切さとか、患者を「診てやっているんだ」という上から目線ということが許される時代ではないということは、学生さんたちにも理解ができてきていると思うんですね。しかし、実際には例えば研修医が現場に出た反省などを聞くと、学校で学んできたものと現場の患者さんの実際のイメージということがこんなにもずれていたということに驚きを隠せないという感想や、こんな基本的なことを臨床研修2年のところでしていていいのかという話に、税金を払う国民として非常に憤りすら感ずることがあります。そのためには、そうしたことを大学病院で教員の方だけで十分にできるというふうには思えないだけに、地域の人たちの卒前教育の協力ということをもっともっと具体的に求めていくということが必要だと思います。そうした協力を求めることこそが共用試験に合格した後の医行為を伴う臨床実習への患者の協力にもつながる話だと思います。先ほど法的な整備が必要だというご意見がございましたけれども、法的な整備だけで私はいいとは思いません。やはり今日まだまだ医療不信を抱いている患者さん、地域の人々に理解と協力を求める努力をするなかで十分な説明が必要だということ。教育現場が想像していらっしゃる以上に、10倍も20倍もエネルギーの必要なことだということをこの場でご認識いただきたいと思います。

○荒川座長 どうもありがとうございました。

 今、貴重なご意見がありましたので。

 じゃ、先生、お願いします。寺尾先生。

○寺尾委員 医学教育が6年間、臨床実習を考えると実質5年間であるわけですが、一方ではいい面もあるわけです。例えば6年生の最初の半年ぐらいを自由にどこか外国に行って留学してくるとかというようなことを進めている。そういう人たちはやはり将来、基礎医学に進みがちですし、基礎医学というのがやはり極めて重要で、すべてプラクティカルなことだけやっていくということもいかがなものかという気もいたします。

 しかし一方では、今の研修制度というのは、医師の免許を持って、そして責任を持って臨床の場に臨んでいるわけで、ぜひ将来、臨床現場で、多様な医療の現場を見るというのが必要だと思うんですけれども、そういう臨床研修制度の内容を制限することによって、そういう責任を持って見る現場がだんだん狭くなって、限られたものしか見ない。そして、後、将来そういう場を見ることがなくなってくる。学生の取り組みの間ももちろん回りますけれども、自分が参加意識を持ってやるということに現実味がない。だから、要はどうしたら参加意識を持って、責任を持って学生中に多様な医療現場に参加させることができるかということを考えてみる必要があるのではないか。そういう意味では、先ほどの倫理教育だとか、医行為に関する法の改正だとかという部分も考慮の中に入るのかもしれませんが、いかにして責任を持って患者さんと接触させて、そしてなおかつ多様な現場を見ることの方法を考えることが私は必要じゃないかと。

 一方では、やはり半年間ぐらい自由にさせても、それはあまり効果がない気がしておりまして、モチベーションのある子はその期間を利用して見聞を広めるということをやっているのは事実で、そういうのを無視して実地教育だけやるというのもどうかなと。大学というのはそういうものじゃないか、自分で学ぶということも必要じゃないかという気がいたします。

○荒川座長 どうもありがとうございました。

 どうぞ。

○石川委員 医学教育カリキュラムの見直しということは、基本的にはよい医師をつくる、これからの我が国の医療を担う方々を育てるということだと思います。そのためには臨床実習の充実というのは非常に重要なことであります。卒後1年目、2年目の研修は、その後10年、20年にかなり影響することもあります。そうしますと、2年間の臨床研修でやることは極めて重要なので、臨床研修の到達目標と医学教育モデル・コア・カリキュラムの中に重複があれば、卒前に前倒し可能か否かを含めて、臨床研修を充実させる検討が必要と思います。学生のときの臨床実習と医師免許を取った後の臨床研修は責任の持ち方は全く違うと思います。どの診療科に行っても、もしくは基礎に行かれても、医師を育成するカリキュラムに必要な共通のベースがあると思います。臨床実習では、指導医もしくは学生が安心して実習ができるような、そういう環境づくりが重要だと思います。

○荒川座長 ありがとうございました。

 飯沼先生。

○飯沼委員 日本医師会の飯沼でございますが、二、三、思っていることを申し上げます。

 先ほどから出ています学生の医行為に対する社会の理解といいますか、それが非常に大事なことだと思っております。日本は、私、つぶさには存じ上げませんけれども、欧米に比べて無免許の人が患者さんに触るということに対して、患者さんが非常に抵抗を感ずるというようなお話も伺いますので、学校の先生からも説明していただいて、お役所もそうですし、ジャーナリストの方々にも大いに書いていただきまして、協力いただいて、早目に医行為に対するご理解をいただくということが一つの前提になるんじゃないかと思っています。

 それから、次は話が飛びますけれども、今度は学生の定員が大分増えて、医師不足には多分いいことではありましょうけれども、それに対する設備はまだ何とかなるかもしれませんけれども、教官が本当に大丈夫なのかというのを僕は心配しているんです。大学の先生方にはやはりかなりの自由度を差し上げて研究をしてもらわなきゃいけないわけでありますので、余裕のある人員配置をしていただきたいと。それなりの予算は十分おつけ願いたいというふうに思います。

 それから、これは叱られるかもしれませんけれども、最近学生に聞きますと、内科診断学が教科としてないというお話も承ります。そんなことが本当にあっていいのかというのが我々古い連中はそう思うわけでありまして、内科診断学の講義がないような大学で教育を受けた子たちは本当にかわいそうだなというふうに思います。そういうことがあるのか、ないのか、はっきり私は存じ上げませんけれども、そういうことをおっしゃる人もおるので、そこら辺のところをはっきりしないと、臨床研修制度を学生のときからカリキュラムを変えて一貫教育をというお話はわかりますけれども、大学が臓器別の縦割りになって、教官も診断学の講義をできるような人がいなくなったらと思っちゃうと、こんなことでは大変だというふうに逆に思いますので、ひとつ本当にそうかどうかということもお教え願いたいし、そうであればそれはどんどん改善をしていただきたいと思います。

 それからもう一つ、余分なことかもしれませんけれども、80ぐらい医師養成の学校があるわけでありますけれども、さっき北村先生がおっしゃったように、大学によって、学部によって、それなりの特色を持つべきだと私はかねがね思いまして、それがあることが進歩の一助ではないかというふうに思っています。

 以上です。

○荒川座長 今のお話で、人の問題は先ほどたしか吉田先生がおっしゃったような趣旨、これは私からも…。伴先生、何かご意見ありますか。

○伴委員 それはもう非常に重要な点だと思います。これから学生の人数を増やしてどういうふうに教育するかというのは、クオリティーを保とうと思えばやはり人的な資源というふうなものを確保しないとできないと思うんですけれども、ただ、人数を増やせばそれでいいのかというと、そうではないと思うんですね。それで、やはり今の大学では研究、教育、診療あるいはもう少し管理的な立場ですと社会的貢献という柱があると思うんですけれども、教育の柱が余りにも細過ぎて評価されないというふうなことがあって、やはり教育というものが非常に重要であって、自分たちの後輩を育てるというふうな態度、あるいは教育するためにはある程度いろいろな方法論というのがあります。そういうふうなことに関心を示さない教員を増やしても、ほとんど意味がないと思いますので、やはりカルチャーとしてそういうような施設、教育    というのがもっと育っていって、そうすると教員と学習者との関係というのは、臨床医と患者さんとの関係とほとんど同じですので、そこがうまく育っていないと患者さんとの関係もうまくいかないと思います。

○荒川座長 内科診断学の講座がなくなっているというのは、それは多分誤解だと思います。いわゆる昔でいう内科診断学、今は臨床入門実習コースというふうに位置づけて、知識のみではなく、患者さんとの接し方あるいは診察の仕方、外科領域での処置対応の仕方というようなことをかなりきちっとしておりますので、内科診断学というのは概念としては余りにも狭過ぎるということで言葉は消滅していっている。だから、昔の理学的所見、理学心理検査というのも消滅しています。問診という言葉もほとんど……、問診は医療面接の一部であるとして残っていますけれども、問診ということで教えるということはもうなくなっています。

それでは、吉村先生。

○吉村委員 地域医療振興協会の吉村ですけれども、医学教育というのは、医学教育のための教育じゃないわけで、結局、質の高い臨床医とか、あるいは研究者をいかにつくるかという基本的なところを議論すべきだと思います。そのために現在、参加型実習をやろうとか、いろいろな試みがなされていると思うんですけれども、先ほどからお話がありますように、やはり共用試験をしっかり資格試験として位置づけることと、それから社会のコンセンサスを得ることが必要です。余りにも患者さんも権利ばかり主張される方が多いですが、やはり権利があるためにはそれなりの義務があるわけで、自由を得るためには責任もあるわけですから、これは患者さんもそうでしょうし、やはり医学生も余りにも何か自由で好きなことをやらせるということではなくて、それなりのしっかりとした義務とか、責任を持たせるような、先ほどありましたけれども、医師としての教育が必要だと思います。

 それから、やはり教員の負担というのはこれから相当増えると思います。今でも大変教員は疲弊しておりますけれども、これを本当にマンツーマンのチュートリアルとなると、当然学外の方々にお願いするとか、あるいは客員教員の制度を拡充するとか、何らかの工夫が要ると思いますけれども、それなりの教員の負担は増えてくるんじゃないかと思います。

 いずれにしても、共用試験を資格試験としてしっかりと位置付けをして、実習を参加診療型にしようということが基本だと思います。というのは、既に一昨年でしたかね、高久先生の方でかなり詳しい方向性が出ておりますので、今回はそういうのをいかに踏まえて具体的な案を出していくかというのも検討すべきではないかと思っております。

○荒川座長 それは福田先生。

○福田委員 それは前から議論になっているところでありまして、当初は何のためにそういう試験をやるのかと思った方もいらっしゃると思います。やはり飯沼先生、伴先生がおっしゃったように、臨床的な問題、しかも思考力を要するような問題がたくさん出てきました。ようやく正式実施が4回終わりまして、結局OSCEとCBTの結果を全部見てみると、各大学で合格ラインにバラツキがあります。問題はここにあると思います。私どもは共用試験は大体8割はできるという前提で問題を作っています。ところが、55%ぐらいを合格ラインにしている大学もあるようです。かといえば、80%ぐらいが合格ラインである大学もある。ですから、社会的な支持を得るためには、やはりそれなりのレベルの確保が必要と思われます。先ほど田中先生、水田先生からもご指摘があったとおり、前回の協力者会議でもほとんど同じ議論がなされました。要約すると、やはり臨床実習をいかに患者さんの協力を得ながら有効にしていくかにあります。医師としての基本的なマナーをいかに身に付けるかが問題となります。きちっと患者さんと向き合える、信頼してもらえる、そうした医師を養成することが重要となってきます。

○吉村委員 一つだけ言い忘れたんですが、北村先生もおっしゃっているんですけれども、学生はそんなに侵襲的なことをやる必要はないわけですよね。むしろチームの一員として、実際に患者さんに接していろいろ推論していくというのが私は大事じゃないかと思っています。

○福田委員 まさにそこなんですよね。侵襲的行為をすれば医者かというと、そうではないんです。きちんと患者さんに向き合えるか、信頼してもらえるかという、それを研修するところが一番大事なんですね。実際医学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂に当たって、医師として備えるべき基本的資質というのを冒頭に書かせていただいております。

○荒川座長 今のお話の中で、患者さんの教育に対する理解を得ることについて何か一言ございませんか。いかにしたら患者さんの協力を得られるかが問題点であると思いますけれども。

○辻本委員 本当に協力を求めていただくためには十分に説明していただいて、納得してもらうという、そういう働きかけだと思います。臨床研修の研修医にすら、患者さんは不安を抱くんです。まだお医者さんになりたての若い先生だったんですよ……という不安や不満が相談にたくさん届くんです。そのときに私たちは、いや、必ず指導医という体制があって、そういう方が存在するんだという説明をすると、「ああ、そうなんですか」という小さな納得は得られるんです。つまり、研修病院ですら、患者さんに理解してもらえるような情報提供ができていないというのが現実です。そして、そのことを踏まえていけば、今後の取り組みで、医行為じゃないまでも、患者さんのより近くで実習する学生たちを受け入れられるということは、やはり教員の方がしっかり患者の了解をとってほしいと思います。ところが、いまも大学病院に過度な期待を抱く患者さんももちろんいますけれども、少し冷静さを取り戻した一部の患者さんがおっしゃるのは、大学病院は脂の乗った先生たちというのは、本当にお気の毒なくらい忙しいですねということです。そんな状況の中で、いい臨床実習指導ができるのか、という疑問につながってしまいます。もし患者が納得し、安心して協力できるためには、指導体制、教育体制ということが以前にましてこれだけしっかりしてきたんだよということ、それを見せていただくことが一番の近道ではないのかなと、そんなふうに感じます。

○荒川座長 今井委員、どうぞ。

○今井委員 せっかく辻本さんからいいお話を伺いましたので、私もそれをちょっと、今の議論で、やはり本当にそういう医師はたくさんいるんですけれども、先ほどどなたかがおっしゃいましたけれども、みんな忙しくてなかなかできないという実態がありますよね。特に大学病院の場合は医師がどんどん地域医療に出ていますので、土曜も日曜も働いているような状況で、それでもちろん教育が大切なのはみんな知っているんですが、さらに改革したって、これを今度例えば学長の立場でこれをやってくださいと言うと、もう先生いい加減にしてくださいと。その内容とは別にですね。そのぐらいいじめられているという実態もありますので、やはりこれはそこを変えるということと、それから教員の処遇をしっかりするということはセットになっていないとワークしない。それからもう一つは、その教員の評価ですね。その教育をしている教員を評価できるという、そこも裏付けがないとやはり長続きしないと申しますか、そういうのをとても日ごろ感じているものですから、ちょっと発言させていただきました。

○荒川座長 今回、神戸大学は中期目標期間が終わりそうになって、教育研究評価をやっておりますが、その中ではかなり教育面では重視していて、殊に国でもそういう評価をしていこう、教育を評価していく姿勢がありますので、各大学はぜひやってほしいとおっしゃっていますね。

 南さんはご意見ございませんか。

○南委員 読売新聞の南でございます。

 私もこの調査研究協力者会議というところに出席させていただいて、随分いろいろな話がそこでありましたので、今回の会議はにわかにはどういうことが焦点になるのか、余りよくわからなかったのですが、結局現状として、今医療も医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議をやっていた当時と比べても、改善した部分もたくさんあるでしょうけれども、依然としてまだ社会では大問題であるという現実があるわけで、それに対して医学教育の部分から対応できることを議題にしていくんであろうと理解しましたけれども、正直のところ、私も医学・医療のことを新聞にてテーマにしておりますと、たとえは悪いんですが、本当にひっくり返ったおもちゃ箱のようにものすごくいろいろなことが混乱しまして、何か一つのことが問題なので、そこをこうしたらどうなのかなと思うと、そこをよくしようとすると、別のところにもっとマイナスのことが出てしまったりとか、非常にやはり医療が抱えている問題が複雑なんですね。それがよく考えてみますと、ここ20年、30年、医療が高度先進化するのと同時に、ものすごく医療が担わなければいけないことが……。昔は病気の人やけがをした人だけが対象だったのが、現在ではQOLといって、元気な人も全部含めて医療の対象ということになるということもありますし、それから、例えば先ほど来出ておりますけれども、昔に比べたら1人の患者さん当たりに対応する時間というものが全く違うというふうに臨床の先生方は言われます。例えば乳がんの手術の前に、昔だったら前10分、後10分だったのが、今は1時間が2度とか、3度とか、そういうふうになっているわけですから、これは本当に構造自体がものすごく時代とともに変わって、それに対して制度の方がやはりついていっていないということが明らかなのであろうと思います。

 それに加えてなんですが、私は新聞というところにいるので、この30年ぐらいで国民が医療というものに対して持った関心とか、期待とかというものがものすごく大きくなって、それに加えて、情報ということですよね。情報が、昔は今のようにはなかったわけですけれども、今は医療現場からも発信されますし、それから、2000年ですか、情報革命と言われるネットというものが普及してからの情報というものは、とても……、情報をどうするかといって、一つの共通基盤で議論ができないぐらいものすごい量の情報を我々は得るようになったということで、現実にも、ご存じの方も多いと思うんですけれども、ネット上で医療者や患者がどういう議論をしているかというのは、もう空恐ろしいような現状があるわけです。

 そういう中で、本当に医療を担う人々をどういうふうに育てていくのかということをせっかくこういう会議をするわけですから、私の希望としては、ぜひとも論点を整理したいということでありますけれども、これだけ全部尽くすといっても本当に大変なことですので、この会議では何を共通認識としてするのかというところをやはり最初にある程度共通認識を共通に持っていく必要があるのではないかということ。そうしませんと、本当に何を議論しても、結局限りなくいろいろなお話が出てきてしまって、本当に収拾がつかなくなりはしないかというのがちょっと懸念でございます。

○荒川座長 恐らく  に出ていたものが、これは皆さん方頑張っていただいて、これで   世界情勢が根底から変わっていくときに、この中でさらにこれを有効に生かしたらどうかということがありました。今日の論点も多分こうしてお話を聞いた中で論点をまず整理していこうと。そのために、ご意見を様々な視点から出していただいたと理解していただきたい。今日のお話は当初の論点を整理していくということが大事だと思っていますので。

○南委員 一つだけ最後に、私どもが読売新聞として医療提言とかを作らせていただいたんですが、そのとき私はやはり一番強く感じたことだけ一つだけ最後に申し上げますと、やはり水田先生が言われたこととも共通するかもしれないんですけれども、やはり今申し上げたような状況の中で、6年という期間で何が教えられるか、学べるかということを考えたときに、やはりもう限界があるんですね。それでやはり最終的に社会が何を求めているかというと、やはり医療、医師が……、医療は公の財産であって、国民も医療費を大切に使わなければいけない。それから医療側もやはり公の財であるから、そこでその職務を担っている人は公の存在であるという認識を持ってもらう。それで配置だとか、いろいろなことについてやはり考えていただきたいという。その公というのが一つのキーワードではないかというような気がします。

○荒川座長 それは恐らくずっと言われたことで、今も多分変わっていませんし、公の医師というか、あるいは裏を返せば多少の自己犠牲があるわけです。そういうことを含めて、医師が公の存在であると皆さん考えていると思います。それを具体的にどうしてほしいかという論点は確かに大事だと思っています。

 恐らく全員の方からご発言をいただきましたけれども、まだ若干予定の時間もございますので、この際、もうちょっとお話ししたい方がいらっしゃいましたら、いかがでしょうか。

 はい、どうぞ。

○辻本委員 医師が公の存在であるという話で、俗に1人のお医者さんを育てるのに、医学部の教育に税金が1億円かかっているんだよなんていう話が漏れ伝わってきます。電話相談に届く患者さんの感情的な訴えで、納得できないという話の中に「辞めさせたい」とおっしゃることがあります。胸にたまっているお話をじっくり聞いた後に、少しずつこちらからもお話をしていきます。ドクターが公の存在である、公共の資産であるというようなお話の中で、例えば1億円税金をかけて育てた人をあなた1人の感情でそんなふうに潰してしまっていいんですかと柔らかく語りかけると、「えっ、そうなんですか」とびっくりなさる。実は国民はそんなことも知りません。もっとそういったことを両方が共有できるような、患者がそれを知っているということは医学生さんや臨床に出た人も、その事実を背負って患者さんと向き合っていけるようになると思います。当たり前のことを当たり前で終わらせないで、もう一度原点のところの、そんなことまでというような情報をどんどん国民に発信していただきたいと思います。そういう公の存在、社会資源だということが明らかになれば、ネット医師みたいな、とても信じられないような、あんな発言をするモラルの低下ということは国民が許さないと思います。社会資源であるということをもっと前面に押し出して、国民の理解を得なければならないと思います。

○荒川座長 他にいかがでしょうか。

 はい、どうぞ。

○福田委員 昨年、文部科学省の医学・歯学教育指導者のワークショップで臨床実習に関するアンケートをやっていただいたのですが、そのアンケートを見直して、臨床実習をどうやって実施しているのか、どこに問題点があるのか、調査をしました。既に公表してあるところですが、参加型臨床実習に対してよく理解がされていないで、きちっとやっているところがおよそ45%程度です。しかし、参加型にすればするほど教員の負担は非常に大きくなる。

 それからもう一つ大事なことは、指導医をどう増やすかということです。やはりOSCEでも、この学生は臨床をきちんとできるのかという点は指導医がきちんと見なければならない。一律に判断して出すことは難しいと思います。診療参加型を導入したところでは教員の負担が大きくなっています。

 さらに、卒後時のいわゆるadvanced OSCEですが、これをやっているのもちょうど同じような割合で、大体半分くらいの大学です。指導教員が足りなくてとてもできないという声も上がっています。これはやはり大学全体として考えなければいけない問題です。大学病院での診療実績を積んで利益を上げ、さらに研究で業績を上げることも要求され、さらに教員負担も加わります。これらの中で、教育に対しては何の評価もされていないところが多いと思います。要するに教育を重視するように転換していく必要があると痛切に思います。

○荒川座長 それは直せる可能性は当然あって、方策もあるんですか。

○福田委員 それを直さない限り、逆に臨床実習のことはきちんと改善しない。臨床研修施設側のアンケートを解析してみると、大学の教育、特に臨床技能教育に期待していないように見えます。せいぜい生理的な検査ぐらいしか期待していない。卒前のことについては、大学の先生方を中心に、どこに問題があるのかということをきちんと分析していくことが重要と思います。

○荒川座長 他にいかがですか。

 今日は皆さんから自由なご発言がありまして、もちろん発言の骨子は資料を踏まえてのはずですが、医学教育を良くしていきたいという皆さんの思いは同じでありまして、そのために私たちは何をするかということは非常に大事なことでして、全部やっていくわけにはいきませんから、問題点は何かということを整理しまして、そこに向かって効果的なものを一体となって作っていって、平成18年のコアカリから一歩踏み出すことが非常に大事だと思いますので、それについての議論は次回からの整理にいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 そういう中で、やはりすぐできるもの、そうじゃないもの、あるいはもっと長期的な視点で取り組まなければならないものもあり、またそういうことについてもご発言を願いたいと思っていますが、よろしいでしょうか。

 それでは、事務局から何かございますか。

○事務局 どうも長時間ありがとうございました。

 局長が設置の趣旨等をご説明する予定でございましたが、所用等のため参加できず、大変失礼いたしました。

 本日は医師としてのモラル教育、モチベーションの持ち方、さらに卒前教育の臨床実習のあり方などにつきまして、幅広くご意見をいただきました。特にその中でも、教員間の問題や国民、患者さんの理解と協力をどう得るかなど、これから深めていくべき論点が揃ったような感じがいたします。

 この検討会は、ご存じのとおり平成18年にモデル・コア・カリキュラムが策定されましたが、医学教育のあり方の残された課題、さまざま抱えている中で、現在、厚生労働省と文部科学省で卒後臨床研修のあり方の見直しをしまして、その中から卒前教育をもっと臨床実習を参加型に、実践的なものに変えていくべきではないかというような意見で設置をするものでございます。これから、大変時間的には恐縮なんですが、3月もしくは4月ぐらいまでに大枠についておまとめいただければありがたいなと思っておりますので、それを踏まえて、さらに具体的なモデルというか、カリキュラムの見直しなどにご意見を反映するために、そのための大きな方向について、大変忙しくて恐縮なんですが、今申し上げましたようなスケジュールでご検討いただければというふうに思って、この資料にも書かせていただいております当面のスケジュールというのは、こんな状況で急がせるようで恐縮なんですが、このとおりであります。

 今まで、既にこれまでいろいろな会議でご議論をいただいている部分については、これをできるだけその方向性を重複しないような形で踏まえていかなければいけないという、それによってまた議論を構築できるというふうに思っておりますが、そのような状況で年度末のお忙しいところですが、先生方に委員をお願いした次第でございます。これからあと期間は短いですが、卒前実習を含めたカリキュラム、教育のあり方について、忌憚のないご意見をいただければと思っております。今後何回かで大きな流れを決め、方向性を定めたいと思っておりますので、よろしくお願いします。今日は本当にありがとうございました。

○荒川座長 じゃ樋口さん。

○事務局 連絡事項でございます。

 次回の会議に関しましてでございますけれども、資料6、すみません、タイトルがモデル・コア・カリキュラム検討会となっているのですが、カリキュラムには多様なものがあってしかるべきだということのメッセージを含んでカリキュラム検討会という名称にしております。

次回の会議につきましては、この資料にございますとおり、2月13日の午前中に開催させていただきます。どういった地域医療、診療科で問題を抱えているのか、医師不足問題に対してどういったことが求められているのかというようなことを中心として議論をいただきたい、必要であれば関係者にお越しいただいてヒアリングを実施しながら議論していただきたいと思っております。なお、場所についてはまた追ってご連絡申し上げます。

 ということで、本日は本当に遅い時間になりましたが、本当にありがとうございました。

○荒川座長 これで終わります。どうもありがとうございました。

 

 

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