獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第6回) 議事要旨

1.日時

平成21年7月22日(水曜日) 16時~18時

2.場所

日本学術会議 6C-1会議室

3.出席者

委員

唐木座長、酒井代理、石黒委員、池田委員、伊藤委員、片本委員、小崎委員、長澤委員、西原委員、政岡委員、山崎光悦委員、山田委員、山根委員、吉川委員、松岡厚生労働省医薬安全局食品安全部監視安全課課長補佐(説明者)、

文部科学省

加藤高等教育局審議官、澤川専門教育課長、神田専門教育課課長補佐、伊藤専門教育課課長補佐

オブザーバー

今川環境省自然環境局総務課動物愛護管理室長補佐(説明者)、

4.議事要旨

議事

(○:委員 ●:事務局)

(1)事務局から、委員及び事務局の人事異動、配布資料について説明のあと、吉川委員より資料5に基づき教育内容に関する小委員会報告の報告が行われ、その内容について質疑が行われた。その後、事務局より資料7について説明が行われ、自由討論が行われた。主な発言は以下のとおり。

<吉川委員報告>

○ 協力者会議でシラバスを分析するための科目設定と、各科目の講義内容の項について、意見を頂き、それを踏まえて小委員会で再度科目と項目についての見直しを行った上で分析を進めてきた。

 分析データについては資料6-3に総括表という形で、教育内容と教育体制について、16大学における全ての科目の分析結果を一覧にしている。資料6-4以降は実際に行った分析の教育内容とその履修状況等をまとめたもの。資料6-4のブルーの項目については、ほぼどの大学でも実施されているもの。赤あるいは黄色がついている項目が不十分と考えられる科目という見方で見て頂きたい。

 また、分析する中で便宜上、規模タイプ1、規模タイプ2という比較的専任教員の多い大学と、やや少ない大学に区分し教育内容・教育体制について分析した結果もつけている。各規模タイプ別で比較出来る形で教員一人当たりの担当単位数と産業動物の患畜数と卒業生の就職率、また、全国公衆衛生獣医師協議会への公衆衛生獣医師の登録者数という形で、特に協力者会議で問題になった分野と小委員会での分析結果との関係が見られるように資料をつけた。

 小委員会は協力者会議の意向を受けて設置されて、各大学でどのような教育内容、教育体制で獣医学教育が行われているのかということを分析し、必要な改善方策についての検討をするということで、都合6回行った。食の安全、あるいは人獣共通感染症の統御、伴侶動物の高度医療等、近年問題になっている社会ニーズの拡大をどう考慮するか、また、今後来るグローバル化に伴う欧米水準の教育内容・教育研究体制への対応など、このような観点を考慮して作業を進めた。具体的な分析方法に関しては、斉一教育とアドバンストという2つの側面があるが基礎になる斉一教育として必要なコア・カリキュラムを考え、それについて現状についての分析を行った。

 作業方法としては、これまでに報告された標準カリキュラムを基本として、各大学のシラバスをもとに、教育内容、教育体制、それから教員1人当たりの単位数というものを対象に分析をした。教養科目や大学の特色として行っているアドバンスは今回、分析対象にはしていない。

〈分析結果について報告〉

○ 導入教育は、概論、法規、倫理があるが、法規に関してはある程度、教育がなされているが導入教育全体としては余り体系立った教育がなされていない。特に、規模タイプ1の組織に比べて、規模タイプ2の方は不十分さが目立つ。各論で見ると、概論では獣医師の職域や役割、関係する国際機関についての教育が余りなされていない。また、倫理に関しては、ペットの安楽死や、地球環境保護に関する獣医師の役割についての教育というのが不十分で、社会の情勢を踏まえた獣医学を学生に学ばせる動機づけとなる導入教育自身に問題があるという結論に至った。

 この改善方策としては、導入教育の意義を明確化する、あるいは教育内容を統括するコーディネートをできる教員が必要であるということである。

○ 基礎獣医学については、古典的な科目、例えば、解剖、生理、病理、薬理などについては、どの大学もおおむね講義形成では教育されている。一方、比較的新しい科目、例えば、動物行動学あるいは免疫学などは大学によって教育内容が不十分な大学があった。また、実習は講義科目に比較して内容が不十分であり、生化学、薬理、実験動物などが大学によっては不十分である。動物育種、行動、免疫については教育体制としては専門性を備えた教員が確保できていない大学があり、実習の充実を図ることが求められる。また、特に新しい科目に対応できる教員の確保や教育体制の充実というものも求められる。

○ 応用分野についても、基礎と同様に古典的な科目、例えば、微生物、寄生虫、家禽疾病、魚病などは概ね教育されているが、基礎系同様やはり新しい科目、あるいは高度化した科目、例えば野生動物、環境衛生、獣医疫学などはやはり教育内容が不十分な大学がある。

また、公衆衛生に関しては範囲が広いにもかかわらず、教員数が非常に少ない。微生物や感染症の専門教員が担当しているということが多く、特に環境衛生学、獣医疫学の教育内容の不十分さが目立つ。

 毒性学、人獣共通感染症学、食品衛生学、環境衛生学、獣医疫学、これについては各分野の専門教員を備えなければいけない。それから、特に寄生虫の実習以外の実習、例えば、環境衛生学の実習、動物衛生学実習、毒性学、それから獣医公衆衛生学実習、食品衛生学実習などは不十分であり、公衆衛生と特に社会的要求が高い分野の教育内容について問題がある。公衆衛生関連の必修科目については教育内容の改善、あるいは実務に関する教育の充実が必要である。

  各論ではあるが、公衆衛生関連の実習では、実際の現場の見学も必要だが、ト畜場とか食品加工場についていては衛生管理上の問題が厳しくなり、なかなか実施ができないという現状がある。関係機関と連携してその実施方法あるいは実施条件について検討することが必要。

 最後に、毒性、あるいは野生動物学、魚病学などの分野は専門性を持った教員が確保できていない大学が多く、特に規模タイプ2ではそれが顕著であり社会ニーズの高い分野の教員の確保、教育内容の充実が必要である。

○ 臨床分野について、臨床獣医学の講義は他の分野に比べて教育内容が不十分な点が多い。例えば、内科学総論、外科学総論、臨床繁殖学といった古典的な科目については概ね教育されているが、臨床薬理、動物行動治療、それから臨床栄養学、産業動物臨床学、臨床病理学等、基礎分野で学んだ理論を実践につなげる科目というところが、教育内容が多くの大学で不十分であった。

 産業動物の臨床学では、群管理の教育ができている大学とできていない大学に大きく分かれてしまっており、多くの大学では対象動物として牛以外の家畜が使われていないという問題が見受けられた。眼科学、歯科・口腔外科学、臨床腫瘍学といった高度技能の習得を目的とする科目は、規模タイプ1の大学ではおおむね教育されているが、規模タイプ2では教育内容が不十分である。それから、放射線学実習ついては、評価の低い大学がほとんどで、獣医療法施行規制改正に伴い、今後必要となる核になることがほとんど教育されていない。

 これらの改善方策としては、理論を実践につなげる教育の充実が必要であり、また、実習では可能な限り複数種の患畜に触れる機会を設けることが必要である。規模タイプ2の大学は疾病の多様化・高度化に対応した科目の教育内容を充実させるため、専任教員の充実が必要である。それから、実習科目の教育内容の充実ということで、実際に実習を担う専任教員、主として助教や講師の充実が必要である。

○  分野間等についても比較を行ったが、講義科目では基礎分野は充実しているが、応用分野、臨床分野は教育内容が不十分な科目が散見され、導入分野は不十分な科目が多い。実習科目は全分野を通して講義科目よりも教育内容が不十分であり、特に応用分野でその傾向が顕著である。

 また、教育体制については、導入教育を除いてはおおむね専門性をもった教員が担当しているが、規模タイプ2の大学は専任教員1人当たりの担当単位数が多い。

 改善方策としては、基礎分野で学んだ理論を実践につなげる臨床科目の充実が必要であり、また、応用分野における実習科目等、実務教育の充実が必要である。

 その他の項目としては専門家のいない授業科目を複数人で担当している科目というのがあるが、この場合教育内容に偏りがあって、全体的なバランスに欠けるというケースが多く、一方で、外部からの非常勤講師でも専門家による授業内容というものは、履修項目のバランスが良く教育体系が精査されているケースが多い。

 応用分野において、国内の毒性学、疫学、環境衛生学などの研究者の絶対数が不足しているという問題がある。臨床の一部では教員、主として准教授が不足している。特に、実習に関しては専任教員であっても専門分野の違いによって、専門分野を重点的に教育する一方、専門外の分野では実習項目の教育がなされていないといった大学もあり、教育内容に偏りがある。

 これらの改善方策としては、不足している分野では、研究者の計画的な育成が必要である。また、大学内、大学間あるいは関係機関との連携・協力を促進し、専任、兼任にかかわらず専門性を有する教員を確保するということが必要である。

 さらに、共通的な教育内容(コア・カリキュラム)の整備、共通テキストの作成等で教育内容の平準化が必要であり、実習のあり方や実施方法について検討する必要がある。

○ 大学間の比較も行った。各大学を規模タイプ1、規模タイプ2と便宜上区分しているが、それと学生と教員比というインデックスで分析をした。

 資料6-5と資料6-6を見ていただければ細かいデータが入っているが、基本的に傾向としては規模タイプ1の大学のほうが兼任教員に依存する単位数が少なく、すべての分野において教育内容・教育体制が充実している。一方、基礎分野の講義、応用分野の講義、それから臨床分野の実習は両者の差が比較的小さい。それに対して、導入教育、臨床分野の講義、応用分野の実習については両者でその差が大きい。それから、全大学を通して教育内容が不十分である分野ほど、両者の差が大きい。

  これらの改善方策としては、大学内及び関係大学の他分野の教員の活用が必要であり、特に規模タイプ2の大学においては専任教員の充実が必要である。

  学生教員比に関しては、資料6-7にグラフがあるが、全体としては三極化していて、一教員当たり5~8人という大学が11大学、10人が1大学、17~19人というのが4大学、学生教員比の高い大学は、特に実習科目において複数回に分けて実施するということになるので、教員にとって負担になっており、十分な教育、特に実習を行うのに適正な学生教員比を検討する必要がある。

 分析の最後になるが、キーになった産業動物あるいは公衆衛生との関連因子ということで、産業動物の患畜数の多い大学と少ない大学という格好で分析したものがあるが、産業動物患畜数がゼロから十数頭という非常に少ない大学がある。学生が産業動物に接触する機会を確保するということが必要。産業動物の患畜数の多い大学というのは、大学の立地環境等もあるが、卒業生の産業動物診療分野への就業割合が高く、相関があるといえる。

 産業動物の患畜数の少ない大学は、産業動物の患畜数の多い大学、あるいは近隣都道府県の農業団体等と連携することによって、学生が産業動物に触れる機会を確保するということが必要である。

○ 分析を終えて、最後に今後の教育改善に向けてということで6点指摘している。

 1点目は、今回の分析に用いた科目及び履修内容はすべての獣医系大学において共通的に最低限実施する必要があると考えられる教育内容であり、本報告で指摘する課題が該当する大学は改善の方向性を参考に改善に取り組み、かつ、大学の取り組みを促進するような国の支援策というものが必要であるということ。

 2点目は導入教育、臨床分野の講義、応用分野の実習については規模タイプ1と規模タイプ2で差が大きく、教育内容と教育体制の充実度は規模タイプとの相関が見られる。しかし、規模タイプ1の大学でも、すべての分野で充実しているというレベルにはまだ達してはいない。

 3点目は、教育内容、教育研究体制を充実するためには、学内の関係学科、関係他大学、学外の関係機関との連携協力を促進し、専門性を有する教員を確保するということが必要である。さらに、質保証の観点から、本小委員会の検討を踏まえ、大学・関係学協会が中心となって共通的な教育内容を整理し、獣医学分野の質保証のあり方の具体的検討を行うことが必要である。

 一方、各大学に関しては将来的な分野別第三者評価の実施を見据え、授業内容をより具体的に記載したシラバスを作成すること。学生・第三者に対して積極的にそれを公開して、教育状況の透明性を高める必要がある。

 最後に、各大学は獣医師や獣医学教育に対する社会ニーズの高まりに対応していくためには、共通的な教育内容に加えて専門分野、職域別に特化した専修教育を大学の特色に応じて行う、アドバンスを付加して即戦力として社会の期待に応えられる獣医師を輩出することが期待される。

<小委員会報告後 質疑>

○ 専任教員の数で大学が2つのグループに分けられているが、全体的に見ると両者の間で明らかに差があるように見えるが例えば専任教員数が少ないにもかかわらず非常に充実したカリキュラムと体制が整っているなど、規模タイプ2でも長けているところもあるように思う。

○ 小委員会の分析自体は全部個別の大学名入りで行った。資料6-3は点数の高い順に並べてあるが、全体としては規模に比例しているが、規模タイプ2の大学であっても、努力をして、高いポイントに入る大学も散見された。必ずしも規模が小さいがために全部劣っているというわけではない。

● 資料6-5と6-6が規模別に整理したもの。資料6-5が教育内容分析、そして資料6-6が教育体制分析であり、それぞれ左端が16大学全体を平均したもの、それに対して真ん中が比較的規模の大きい大学、そして右端が比較的規模の小さい大学ということで、規模の大きい大学で平均したものと、規模の小さい大学で平均したものをそれぞれ比較すると、規模の比較的大きい大学のほうが教育内容及び教育体制ともに整っているということ言える。

 ただ、個々の大学ということになると、例えば「獣医学概論」のところに関してAの評価を受けた大学もあるという形になるため、規模が小さくても分野及び科目によっては教育内容がより充実しているという評価を受けたところがある。 

○ 小委員報告は、議論のあった比較的大きな規模の大学あるいは小さい大学間の比較というよりも、結果として小委員会がこれでもって何を我々に提示したのかというのが、大事だと思う小委員会で言いたいことは、すべての分野において不十分である、つまり、質あるいは量とも不十分であるという結果が、この小委員会の調査から浮き彫りになったという理解でいいか。

○ 小委員会としては、獣医学教育全体の中で従来指摘されていた部分、その部分が本当に不十分であるのか、すなわち、スケールメリットの問題も含めて教育内容、教育体制というものが規模に影響されるのかなど従来から感覚的に言われていたことを実際に分析したとき、どういう結果になるのかということを明らかにすることが主な責務なので、そういう観点からで分析してまとめている。

○ 「公衆衛生学関連の実習」の部分について、「公衆衛生関連の実習で重要な実際の現場」、ここを「保健所・食肉衛生検査場」、「動物愛護センターなどでの実務教育については、将来その方面に進もうとする学生に対して現状では極めて不十分である」という形に修文の検討をお願いしたい。理由についてはと畜場や保健所の業務を通じての食品工場の見学について、過去の例からすると、目的や知識が十分でないまま実習を行うといった事例もあるため、施設側としてもいい印象を持っていないがために、管理上あるいは衛生上の問題があるという理由で丁重にお断りするケースが多いものと考えられる。一方で、最近、多くの自治体では食肉衛生検査所や保健所でのインターンシップや実習などは非常に協力している。

 公衆衛生の実務を学ぶ為には単に見るだけの見学ではなく、最低2週間程度の実務を経験すべきであり、これについては各自治体の協力を得ることは困難な問題ではないのではないか。1施設には1名程度、自治体数は全国で保健所のある市が136あるということで、関東地域に固まらないようにすべきことを考慮すれば実際に可能と考える。

 また、将来、公衆衛生に進まない学生についても、これを導入教育や講義ということになると思うが、現場で働く外部の講師、公衆衛生行政で働く外部講師が講義する方が、単なる見学よりは施設側に対する負担も軽い。アドバンストで、公衆衛生獣医師を目指している学生については、実務教育を行い、そのまま社会で活躍できるようにということでインターンシップなど2週間や1カ月というのはいいとしても、このコア・カリキュラムでは、それを選択する以前の学生であるため、斉一教育の中で教えておかなければ、あるいは現場を見ておかなければいけないため、単なる物見遊山で行くということではなく、将来、公衆衛生に進む学生のすそ野を広げるという意味も含めて斉一教育の中で、現場の専門の行政の人に来てもらい講義をしてもらうということは、重要な点と思う。現状では課題もあるもののどう整合性をもって調和を図って実施していくかということを含めて問題提起しておきたいと思った。

○ コア・カリキュラムについて、今の話ともつながることだが例えば公衆衛生に進む学生のことを考えた際に、コアがちょっと大き過ぎるのではないかという感じを受けた。アドバンスの方に移行させたほうがいいようなカリキュラムもあるのではないか。例えば今の点も含めてだがこのコア・カリキュラムが、各分野それぞれで大きくなっていくということは、学生達にとって負担が非常に大きくなると思う。

○ 前回、第5回協力者会議にかけて、この点に関するご意見も頂いた格好で小委員会で再度議論した。ここに残しているものは基本的に将来的に斉一教育として必要であろうという科目を各専門分野の先生方に精査してもらって残した。今後、コア・カリキュラムを具体的に作成していく際の具体論については、もう少し現実と照らし合わせて検討したいと思っている。公衆衛生については人が足りないと言われているが、アドバンスに進んだ人だけ実習するとなるとすそ野が広がらないのではないか。

○ コア・カリキュラム作成にあたってはこの秋に、OIEで獣医学教育の基準について検討する会が開催されるがそこで国際基準としてどんなものが取り入れられるのかも勘案する必要がある。当然予測されるのは、ヨーロッパの基準、あるいはアメリカの基準、その辺のところはそう大きくは違わないのでその辺がコアになるとは思うが、その結果を見て多少修正をする必要があるかもしれない。

○ 小委員会としてこれから出てきた結果と各大学の特性について検討されたのか、また、資料5の7ページの「公衆衛生獣医師の就業者数の減少」というところで、急減の原因は不明であるとしているが、このような、大学教育だけではなく、受け皿のほうの問題もあるのではないか。最後は、6ページの「産業動物の患畜数の多い大学と少ない大学」というところだが、一番下に就業割合は一定の相関関係が見られるというふうに断言されているが、1つの傾向ではあるけれども、それだけではないのではないか。

 大学によっては、家畜共済の指定施設になっている大学もあればそうではない大学もある。また、学外でそのような実習を行っている大学もあれば、していない大学もある。資料6-7を見ると就業率とそれぞれの患畜数のデータがあるが、これは病院に入ってきたカルテから患畜は頭数から作成しているため、産業動物の実習は必ずしもこれだけではないのではないかというふうに思う。

○  1点目については、今回は検討していない。2点目については、その議論も出た大学の教育体制や受け皿としての問題点も議論には挙がった。今回は教育面から分析したので、教育以外の要因については余り明確に書いていないが、そのような教育以外の要因もあると思う。

 最後の産業動物の件に関しては小委員会でも議論をしたが、そんなに明瞭な相関ではないのではないかかという議論もあった。この分野は、1つは産業動物の患畜数がゼロから十数頭という、非常に極端に少ない大学があるという指摘をしなければいけない。それから、頭数だけでなくて実際には北海道とか九州のような立地条件とか、大学の置かれた状況で、単純に産業動物の患畜数というものとの相関でいいのかという議論もあった。

〈資料7に基づいて事務局より説明後、自由討論〉

○ 導入教育について「コーディネートできる教員が必要」と書かれているが、導入教育だけにはコーディネート役が特に必要というふうに指摘された理由は何か。また、充実しなければいけないとしている項目を連携などの方向で充実させるといった方向性でいいのか。

 最後は、モデル・コア・カリキュラムというのは、やはりこの委員会で、OIEの国際会議を待ってかもしれないが協力者会議で提案するということでよろしいのか。

 

○ 導入教育についてコーディネートという書き方をしたのは、ほかの専門科目と違って、内容が非常に多岐に渡るので1人の教員が専門的にこれをカバーするというのは実際かなり難しい。将来この分野を専門的にカバーできる教員が育てばいいが、現実的に考えると、ある程度広くカバーし、実際に必要なところはそれぞれの専門の行政なり、あるいは専門機関と連携をしてオリエンテーションするという方向にならざるを得ないのではないかという意味合いが強かったため、あえてほかの科目のような専門教員という形にしないで、コーディネートをして全体を統括できる能力を持った教員が必要ではないかということで、このように記載した。

また、改善方策に関しては、小委員会としては分析結果から出てきた改善方策なので、その作業は小委員会の役目ではないだろうというふうに考えて、改善点という形で止めた。OIEを待つかどうかは座長の方に一任する。

○ 単位数と科目名のところについて、各大学評価について、シラバス等で分析したという話だったが、基本となる表に挙がっていたコマ数と各大学の単位数が少なければ評価が落ちるのか。

○ 単位数の少ないものはどうしても項目数が少ないということで評価の落ちるものもあるが講義の名前だけではなく全体を見て評価をしたので、違う科目の内容で、シラバス的にはその科目に合致するというものがあれば、それは読みかえる格好で対応していたので、必ずしも2単位が1単位になるので、半分しかカバーできてないということにはなってない。

○ 社会のニーズと国際通用性のあるものを確保する、そしてその観点から、我が国における 獣医学教育はどうあるべきなのかというところで、結果として小委員会は資料6-3を出しており、獣医学教育における必要とされる教育内容というのは、これがコアになると思う。

 しかし、これは全部で132単位あるが、これを履修すると卒業要件とされている取得単位数は182単位なので、残りは50単位しかない。小委員会が言っているアドバンスにこの50単位の中に入れることができるかどうかというのは非常に難しいのではと思う。50単位の中に教養あるいは基礎科目が入っていない上、現在、日本学術会議を中心とした分野別のコア・カリキュラムというのが進んでおり、恐らく生物系を学ぶ分野の者については最低限これだけのことは知っておかなければいけないというのが今後出てくることを考えると50単位の中にそれも入れなければいけないとなってくる。つまり、182単位という制限の中で小委員会のいうアドバンス科目をいれるのが非常に難しくなる。また、資料6-3を見ていくと、ピンクの部分が多いのでこのピンクの部分をどう充実させるのかというのが、次の課題になってくるであろう。同時に、文部科学省の方から参考資料として出された共同教育課程について、これは異論がある。

 3ページの最後で、複数の大学が優位な教育資源を結集して連携を進めることが求められると書いているが連携といってもいろんな連携の仕方がある。連携ではなくて、合併もしなければいけないのだろうとは考えている。

 

○ 臨床実習、特に獣医療行為に係る実習について、以前の議論の中では、医学教育を参考にして1種、2種、3種の実習の中で、これが関連法令と連携をして対応しようということになると思うが、そういうふうな基本的姿勢でいいのか。

○ 法との関係で明確に最終的な結果が出ているわけではないが、学生にどんな条件のもとでどの程度の診療行為を行って頂けるか、それは運用でも可能なものがあるというふうに考えているので、今後検討していきたいと思っている。

○ 卒論を含めてアドバンスの部分に関しては、小委員会では議論をしていないので、最低限、共通的にここまではやる必要があるものに対しての現状分析を行ったのみである。卒論を課すか、あるいは別の形で読みかえるかという議論は、アドバンスと一緒で行っていない。もし、そこまで含めて全教育についてどうするというのであれば、協力者会議で議論して頂きたい。

○ 連合大学院の開設について気をつけなければいけないのは、あくまでもこれは地域の活性化であり、それが今の獣医学教育の改善・充実の方策として本当に適用できるのか、慎重に対応しないといけない。

○ モデル・コア・カリキュラムについてだが、実既に小委員会のメンバーを中心に作業がスタートしている。基本的にはこの協力者会議でのご意見や、OIEの基準とかを勘案しながら、2年間かけて作っていく。問題はコア・カリキュラムができたあと、それをどのように活用するかということになると思う。要は、どのようにして獣医会全体でオーソライズされるのか、うまく活用されるか、ということ。例えばそれを評価とかに活用するとか、もちろんカリキュラムの策定とかにも活用していただければということができればいいが医学部では、このコア・カリキュラムというのが臨床実習をやることができる資格のための採用試験に使われている。なので、医学部で臨床実習をやろうとすると、どうしてもコア・カリキュラムに準拠した勉強をしなければならなくなるため、医学部ではコア・カリキュラムが活用されるという状況ができている。一方獣医系で、先ほど臨床実習をこれからどうするかという話に対しては、同様に共用テストのようなことをやっていくことが可能かどうか、もう少しご意見を伺いたい。

○ 臨床教育を6年の中でどう取り組むかということについては、現状本当に5年生、6年生が動物病院でいわゆる患畜に触れない状況の規則がある。そのため、医学部のほうは逆に4年生から5年生に上がるときに、共用試験を行い、それに合格した者は5年、6年でベッドサイド教育や病院で診療をやることができるという制度ができている。その制度を獣医学教育の中、本当に取り入れるのかどうか、あるいは取り入れるべきではないかと思っている。

○ さっきの連携という言葉だが、連合大学院のときは、協議会で何度も議論をしたが、そのままの体制を残してポツでつなぐという連携システムをとっておりそれは大学院だったからそれなりに矛盾を持っていたとしても維持できた。今回の学部教育の充実という点からは、もし短期的には足りない部分を互いに補うという方法があるとしても、長期的にはやっぱり、スケールメリットを生かしたスクラップ・ビルドがないと対応できないのではないかと思う。 連携という言葉をもし使うならきちんと定義をして使わなければならない。一人一人違う意味合いで使っていて後でふたを開けてみたらみんな勝手に自分で解釈をしていたということになる可能性はある。

 

○ 連携を行うならば、学生に負担を与えない方法を考えなければいけない。

(3) 事務局より次回の日程について説明があり、閉会となった。

お問合せ先

高等教育局専門教育課企画係

(高等教育局専門教育課企画係)