資料3 これまでの主な意見(第1回~第7回)

獣医療を取り巻く状況

(職域全般)

 ○ 地方公共団体の獣医師が担当する主な業務は、公衆衛生分野、家畜衛生・畜産振興分野、自然保護・環境対策分野の3つに大別される。公衆衛生分野には食品衛生、生活衛生環境分野が含まれる。家畜衛生・畜産振興分野には、家畜防疫、家畜衛生、畜産技術、人獣共通感染症、獣医事、薬事行政が含まれる。自然保護・環境対策分野には、鳥獣保護、動物愛護等が含まれる。これらの3つの分野は密接に関連している。

 ○ 環境問題、動物介在活動、学校飼育動物を通した情操教育、野生動物対策、医学と協調したバイオメディカル分野の研究、海外技術協力、大学における教育研究等、獣医師が関わる分野は多岐にわたる。

 ○ 獣医師というのは多くのことを勉強しなければいけない。獣医師の活動範囲が増え、何でもできなければいけないという事になる。

 ○ 獣医師の職域には、獣医師でなければならない職域と、獣医師でもいい職域が混在しているが、近年、獣医師でもいい分野での対応が求められるようになっている。

 ○ どのようにして学び、何に自分はフォーカスしていけばよいのかという指針を与えることを重視した大学教育に変えていく必要がある。

 ○ 偏在が起こっている大きな責任が大学教育にあると思う。大学教育の中で各領域の魅力を感じモチベーションを高められるような教育をなされる必要がある。

 ○ 行政処分を受ける獣医師が近年増加している。

 ○ 公衆衛生で働く獣医師がいなくなりつつあるという現状や、大動物の診療の獣医師が実際に減っているという現実を踏まえた議論を早急にしていただきたい。

 ○ なぜ公衆衛生や大動物臨床に携わる獣医師が少ないのか、これは教育がほとんど行われていないことも一つの大きな原因である。例えば、夏期休業中に産業動物の臨床を学生に体験させたら、その中から産業動物臨床に従事したいという学生が出てきたという話がある。教育を改善することですべてが解決するとは思わないが、現状で教育が不足しているから学生が従事しない分野があれば、その分野については少なくとも改善するだろう。

(産業動物診療)

 ○ 最近ではアニマル・ウェルフェアの理念のもと、産業動物であってもきちっとした環境下で飼育しなければ食に供してはならない時代が近づいている。

 ○ 家畜保健衛生所における基礎的な検査についてはある程度大学で技術を習得してくるため、新採の獣医師であってもある程度活躍できる環境にある。

 ○ 新規採用される獣医師は、優秀な獣医師が多いが、コミュニケーション能力が少し足りない。

(公衆衛生)

 ○ BSEが発生した際に1ヶ月あまりで全国一斉検査ができるようになり、世界的に見ても素早い対応ができたことで日本の公衆衛生獣医師は優秀であることが証明できた。一方で、リーダー的な存在が育っておらず、保健所の所長になるような存在は昔の人々と比べて少なくなってきたという現状がある。

 ○ 各自治体では公衆衛生獣医師の補充が危機的な状況にある。

 ○ 脳の採材の技術を持って診断できる獣医者が少ない。

 ○ 食品の安全確保や人獣共通感染症の問題が出てきたが、人材が確保できない。

 ○ 大学の授業の中で実践的な内容を取り入れれば、公衆衛生に対しての理解も進み、興味も沸くのではないかと考える。

 ○ 欧米ではパブリックヘルスや食品衛生の専門分化が進んでいるが、日本にはそうした専門家の養成ルートが少なく、実際問題として獣医師がカバーしている。

(小動物診療)

 ○ 小動物、伴侶動物の分野では、一次診療と二次診療といわゆる高度医療がある一方、動物種による診療体制も進みつつある。最近では、循環器専門、脳神経関係専門、消化器、呼吸器と専門分化が進みつつある。

 ○ 獣医療について国家資格のパラメディカルが全くいないため、医師と違い、獣医師の負担が大きい。

(その他)

 ○ 研究所や製薬会社における薬の安全性の検査部門で多くの獣医師が活躍しているが、これは他の国ではあまり見られない特徴である。

 ○ 製薬会社に就職する獣医師も公務員同様半減している。

獣医師に求められる知識・技能、資質

(全ての職域で求められる知識・技能、資質)

  ○ 国際的通用性や獣医師の任務の遂行、使命感・倫理観に関するというような言葉が多々出てくるが、基本的に獣医師の役割として一体何を求めているのか。何を教えるかということよりも、獣医師に何を求めるべきかを整理し、それを教えることが重要。

 ○ 地方公共団体の職員である獣医師には、職域ごとに異なる知識・技能が必要とされ、それぞれについてプロフェッショナルであることが求められる。また、公務員としての基本的な資質を兼ね備えていることが大前提となる。

 ○ 獣医師は現場での問題解決能力が求められるため、バックグラウンドとなる十分な知識・技術を持っていなくてはならない。

 ○ 応用力というのは真理眼をつくるということであり、多くの情報から自分が必要なものを選ぶ能力が必要。

 ○ 新しい学術動向を着実にとらえて教育の中に盛り込んでいくことが必要。

 ○ 海外の規制も含め、政治や法律に関する知識が必要。

 ○ 医学、歯学、畜産学、工学といった関連分野との連携も必要。

(産業動物診療獣医師について)

 ○ 生産構造の変化に伴う生産性向上に向けた技術開発、家畜・畜産物の輸出入の増大、グロバール化に伴う防疫体制の強化への対応が求められる。

 ○ 病性鑑定の実施については迅速な初動体制と的確な対応が求められるため、経験や判断力・専門的な技術が求められる。

 ○ 畜産・家畜衛生に関する産業動物診療獣医師には、草地学、飼養学、遺伝学、経営学的な知識が求められる。

 ○ 獣医師単独での業務だけでなく、あらゆる分野と連携し、専門的な知識を活用していくことが求められる。

 ○ 厳しい環境下で仕事に携わるため、強靱な精神力が求められる。

(公衆衛生獣医師について)

 ○ 行政では監視、指導、苦情処理、検査等の様々な業務に知識・技術を活かしていかなければならないため、大学で学んだ知識・技術を応用する力が必要。

 ○ と畜検査では解剖病理、組織検査、精密検査、微生物学的・理化学的組織病理検査といった検査に関する知識と技術が必要。

 ○ 食中毒をはじめとする食品衛生や感染症に関する知識が必要。

 ○ ウィルス感染なのか食中毒なのか判断するため疫学的な知識が必要。

 ○ 捕獲収容した動物の応急措置、飼養管理、健康管理という臨床関係の知識が必要。

 ○ 動物の習性をよく知っていないといけないので、動物行動学の知識が必要である。

 ○ 毒性学については極めて重要視している分野である一方、環境衛生については実際の行政分野では手を引きつつある。ただし、食物を介してくるダイオキシンなどについては、毒性学や食品衛生学で対応する。

(小動物診療獣医師について)

 ○ 強靱な精神力に加えて、飼い主の気持ちが理解でき、メンタル的なケアのできる資質が求められる。

 ○ 飼い主とコミュニケーションがとれることが必要であるとともに、優しさや思いやり、責任感、忍耐力が求められる。

教育内容

(総論)

 ○ 100%必要な情報を学部教育の間に伝達することは不可能である。

 ○ 大学教育では、各職域で獣医師を再教育しなくてもよい程度の基礎的な知識・技能を身に付ける必要がある。

 ○ 卒業と同時に実務ができるような大学教育が必要。

 ○ 獣医師は職域が非常に広く、様々な対応能力や解決能力を涵養していかなければならないことから、ある程度の幅広い分野にわたる教育も重要である。

 ○ 獣医師は様々な職域があり、獣医師国家試験で問うもの以上に幅広い分野で活躍しているため、大学教育ではそれに応える内容の教育を行うべき。

 ○ 学生による授業評価や卒業生への定期的なアンケート調査、諸外国の獣医学部との積極的交流などから得た情報を還元して改革につなげることが必要。

 ○ 獣医学教育において何か求められているかということについては、大学関係者の中で議論されてきた成果として標準的なカリキュラムが作成されている。

 ○ 各科目の中で何をどこまで教えるべきか、ミニマム・リクワイアメントをどこに設定するかということが問題。

 ○ 国公私立大学のそれぞれのミッションや特性の違いを明確にした上で、ミニマム・リクワイアメントとともにミッションに応じた教育の部分も考えなければ、全ての大学が同じスタイルを目指すことになり、全体として社会のニーズに応え切れないのではないか。

 ○ 職域ごとに何が求められているのかを担当教員がしっかりと見据えて、最新の情報を盛り込んだ教育をしなければならない。

 ○ 人獣共通感染症や食の安全が叫ばれる中、これらについて十分な獣医学教育が行われているか疑問。

 ○ 獣医学教育が6年制になったときのキャッチフレーズは、臨床教育と公衆衛生教育を充実させることであったが、この20年間で状況は悪くなっているということをいわざるを得ない。

 ○ 獣医学教育は4年制から6年制教育になったが、間延びしただけのように感じる。

 ○ 獣医学教育が6年制になったときに専門教育をきちんと教育できる教員が確保できなかったことが原因で、延長した時間を卒業論文で費すようになってしまった。これでは、年限を延ばしても教育の中身は決して充実をしない。

 ○ 問題解決能力や対応能力等を涵養していくためには主体的な取り組みができる研究も必要となるので、卒業研究は必要である。

 ○ 小委員会でまとめた教育内容は必要最小限と考えて、加えてコース制を設ける等して半年なり1年間つけ加えることも必要であると考える。

 ○ 一方では、資格試験のための最低限の知識レベルがあるが、加えて各大学が特色を出した教育をするための部分があるはず。学問は常に発展しているため、事細かく標準カリキュラムを作ってしまうと、かつてアメリカの工学教育と同じ過ちを犯すことになってしまう。

 ○ 詳細な教育内容を定めるよりも、どこかで到達目標を設定して、それに向けていろいろな観点から教育するほうがわかりやすいのではないか。大変な作業にはなると思うが、医学教育のモデル・コア・カリキュラムのように到達目標を設定し、「ある事柄についてきちんと説明できるようなところまで教える」とした方が、単位の実質化にも絡んでくる。

  ○ 導入教育は、概論、法規、倫理があるが、法規に関してはある程度、教育がなされているが導入教育全体としては余り体系立った教育がなされていない。概論では獣医師の職域や役割、関係する国際機関についての教育が余りなされていない。また、倫理に関しては、ペットの安楽死や、地球環境保護に関する獣医師の役割についての教育というのが不十分で、社会の情勢を踏まえた獣医学を学生に学ばせる動機づけとなる導入教育自身に問題がある。この改善方策としては、導入教育の意義を明確化する、あるいは教育内容を統括するコーディネートをできる教員が必要であるということである。

 ○ 基礎獣医学について、古典的な科目、例えば、解剖、生理、病理、薬理などについては、どの大学もおおむね講義形成では教育されている。一方、比較的新しい科目、例えば、動物行動学あるいは免疫学などは大学によって教育内容が不十分な大学があった。

 ○ 応用分野について、基礎と同様に古典的な科目、例えば、微生物、寄生虫、家禽疾病、魚病などは概ね教育されているが、基礎系同様やはり新しい科目、あるいは高度化した科目、例えば野生動物、環境衛生、獣医疫学などはやはり教育内容が不十分な大学がある。

 ○ 臨床獣医学の講義は他の分野に比べて教育内容が不十分な点が多い。例えば、内科学総論、外科学総論、臨床繁殖学といった古典的な科目については概ね教育されているが、臨床薬理、動物行動治療、それから臨床栄養学、産業動物臨床学、臨床病理学等、基礎分野で学んだ理論を実践につなげる科目というところが、教育内容が多くの大学で不十分であった。 

 ○ 講義科目では基礎分野は充実しているが、応用分野、臨床分野は教育内容が不十分な科目が散見され、導入分野は不十分な科目が多い。

 ○ 導入教育、臨床分野の講義、応用分野の実習については「専任教授数が比較的多い大学」と「専任教授数がやや少ない大学」の間で差が大きく、教育内容と教育体制の充実度は規模タイプとの相関が見られる。しかし、規模タイプ1の大学でも、すべての分野で充実しているというレベルにはまだ達してはいない。

(臨床教育)

 ○ 大学教育では平準化した基本的な技術の習得や、完備された施設における高度医療技術の習得といったものが求められる。

 ○ 小動物臨床教育は、まず大学教育があり、次に卒業後教育がある。大学における実務教育が十分でないため大部分が卒後教育に偏っており、平準化した知識・技能が身に付かない。

 ○ 卒業後の実務教育について、一部の人は大学に残って研究生や研修生として教育を受けるが、大学の教員は非常に多忙なため、研修生や研究生をマンツーマンで教えることは不可能である。

 ○ 獣医学教育は農学教育の一部から医学教育の一部になりつつあることを認識しながら議論するべきである。卒業後の臨床実習の充実を考えれば、医学部のように義務化する等の整理が必要。

 ○ 欧米では最終学年にポリクリニック実習を中心とする臨床実習の履修が中心であるのに対して、日本では卒業論文作成に時間がとられていて、臨床実習が不十分である。

 ○ 日本の臨床教育には海外の臨床実習と比べて、コースの選択肢や臨床科の多様性が乏しい。

 ○ 臨床教育においては学生に生と死を体験させることが重要である。

 ○ 獣医師法上、学生の診療行為の範囲については、大学の実習で用いられる動物は実験動物であるという考え方をとっており、実験動物については免許がなくても取り扱えることになっている。

 ○ 学生であっても獣医師あるいは教官の監督の下、範囲を設ければ医行為を行えると思う。ただし、その際には畜主との関係で、事故が起こったときにどうするのか整理しておかなくてはならない。

 ○ 法との関係で明確に最終的な結論が出ているわけではないが、学生にどんな条件のもとでどの程度の診療行為を行って頂けるか、それは運用でも可能なものがあるというふうに考えているので、今後検討していきたいと思っている。

 ○ 実習では可能な限り複数種の患畜に触れる機会を設けることが必要である。

 ○ 産業動物の臨床学では、群管理の教育ができている大学とできていない大学に大きく分かれてしまっており、多くの大学では対象動物として牛以外の家畜が使われていないという問題が見受けられた。

 ○ 実習科目は全分野を通して講義科目よりも教育内容が不十分であり、特に応用分野でその傾向が顕著である。

 ○ 基礎分野で学んだ理論を実践につなげる臨床科目の充実が必要であり、また、応用分野における実習科目等、実務教育の充実が必要である。

 ○ 基礎獣医学のうち、実習は講義科目に比較して内容が不十分であり、生化学、薬理、実験動物などが大学によっては不十分である。

 ○ 応用分野のうち、寄生虫の実習以外の実習、例えば、環境衛生学の実習、動物衛生学実習、毒性学、それから獣医公衆衛生学実習、食品衛生学実習などは不十分であり、公衆衛生と特に社会的要求が高い分野の教育内容について問題がある。

 ○ 臨床獣医学の講義は他の分野に比べて教育内容が不十分な点が多い。例えば、内科学総論、外科学総論、臨床繁殖学といった古典的な科目については概ね教育されているが、臨床薬理、動物行動治療、それから臨床栄養学、産業動物臨床学、臨床病理学等、基礎分野で学んだ理論を実践につなげる科目というところが、教育内容が多くの大学で不十分であった。

 ○ 眼科学、歯科・口腔外科学、臨床腫瘍学といった高度技能の習得を目的とする科目は、専任教員数が比較的多い大学ではおおむね教育されているが、専任教員数がやや少ない大学では教育内容が不十分である。

 ○ 放射線学実習ついては、評価の低い大学がほとんどで、獣医療法施行規制改正に伴い、今後必要となる核になることがほとんど教育されていない。

(公衆衛生教育)

 ○ 大学の公衆衛生の実習では自治体で行っているような理化学試験ができていない。大学の実習と地方自治体の検査のレベルに大きなギャップがある。

 ○ 公衆衛生関係では地方自治体の機関のほうが大学よりも進んだ研究を行っている。

  ○ 学生が公衆衛生に興味を持つような大学教育の改善が重要である。

 ○ 大学における解剖学の教育内容のほとんどがイヌの解剖であるが、と畜検査で扱うのはブタ、反芻獣、ウマであり、現状とは乖離している。

 ○ 応用分野のうち、寄生虫の実習以外の実習、例えば、環境衛生学の実習、動物衛生学実習、毒性学、それから獣医公衆衛生学実習、食品衛生学実習などは不十分であり、公衆衛生と特に社会的要求が高い分野の教育内容について問題がある。

 ○ 公衆衛生関連の必修科目については教育内容の改善、あるいは実務に関する教育の充実が必要である。

 ○ 公衆衛生関連の実習では、実際の現場の見学も必要だが、ト畜場とか食品加工場についていては衛生管理上の問題が厳しくなり、なかなか実施ができないという現状がある。関係機関と連携してその実施方法あるいは実施条件について検討することが必要。

○ 公衆衛生では、ヒトに対してどれぐらいの被害があるかという観点がそれがそれぞれの科目の中に入っているということが重要。野生動物の疾病についても多くの科目に散らばっているが、それがヒトにどのように関与してくるのかという観点が、まさに公衆衛生の観点。よって公衆衛生の科目は総論が一つあればよいと思う。将来的には全ての科目において何らかの形でヒトとどのような関わりがあるかという観点に立って教えていただけることを期待したい。

(動物愛護・倫理)

 ○ 飼い主への対応や動物虐待などついて、獣医師に対する再教育が必要。

 ○ 獣医師の社会的な責任や倫理観が教育の中でどれだけ伝達されているか不安を感じる。

 ○ 獣医師としての社会的責務や獣医倫理を学校教育の場でしっかりと身に付けさせるべき。

教育方法

 ○ 各職域で必要な専門知識や応用力を大学教育で身に付けさせ、実務ができる人材を育成するために、コース制を導入するべき。

 ○ 4年までに基本的な教育は全て終了させ、5年では臨床や公衆衛生といった獣医師として必要な知識・技能を学び、6年では産業動物診療獣医師、小動物診療獣医師、公衆衛生獣医師、あるいは製薬会社や研究者といった、それぞれの職域ごとのエキスパートとなるために必要な教育を、本人の希望に応じた形で行うようにすれば、世の中の期待にもこたえられる獣医師を養成できるのではないか。

 ○ 応用力を教育の中で修得させるためには、特に公衆衛生分野では、より実践的な内容や手法を用いて教育を行うことが有効。

 ○ 講義・実習において学生のモチベーションを高めていくということをが重要であり、PBLのような学生中心の授業を取り入れていく必要がある。

 ○ 諸外国における獣医学教育について、例えばコーネル大学の場合、最初の2年間は講義が中心であり、3年後半からローテーション形式の臨床実習が入ってくるが、何よりもPBLに多くの時間が割かれており、講義と実習とPBLの時間の割合は、3:4.5:6程度と非常にPBLが重要視されている。

 ○ 大学の立地により附属病院の患畜や学用患畜の種類や数が異なり、都市部の大学では小動物が多く、畜産県に位置している大学では産業動物の数が多い。そうした中で、畜産学や草地学といった獣医学以外の周辺の学問領域のための附属牧場等や農業共済、近接する大学との連携が重要である。

 ○ 大学以外のクリニックにおける実習や他の大学の臨床教育を単位化するといったようなフレキシブルな臨床実習が必要。

 ○ 全ての大学が家畜共済と連携できるようになれば、産業動物の診療件数が増えて実習も充実してくるのではないか。

 ○ 学外での教育病院の活用やインターンシップは、学生の将来の産業動物分野への進路決定に大きな影響がある。

 ○ 学内で繁殖した犬を動物実験に使用しているケンブリッジ大学では動物福祉の関係者を配置している。動物愛護団体が反対するので実験動物が確保できないとあきらめるのではなく、学用患畜を確保するために工夫をすることが重要。

 ○ 大学での実習では、遺体の供給がままならない状況である。それを仕方ないですませるのではなく、獣医師自身が関係者とのつながりの中で確保に努め、状況を改善していかなければいけない。

 ○ 基礎分野については教員の移動やIT技術を活用して行えるが、臨床実習等は実習が非常に多いため難しい。

 ○ 最短で教員数を確保して学生に効率よく教えるために、例えば導入教育に関しては役所の職員や愛護団体の長、補助犬の団体の長等に依頼して、どこかの拠点で集中講義で教育できれば、応用や実習に時間を使うことができるのではないか。

 ○ 15年ほど前に私の大学でも放送大学や通信衛生を使った遠隔教育システムが導入されたが、今はもうほこりをかぶっているのが現状である。獣医学は実学であるため、見たり触ったりすることが必要なため、遠隔教育には限界がある。

 ○ 現在のインターネットを使えば、比較的安いソフトで成果を出すことが可能になってきているので、全ての授業で動物に直接触らなければならないと言うことはない。

 ○ 公衆衛生関連の実習では、実際の現場の見学も必要だが、ト畜場とか食品加工場についていては衛生管理上の問題が厳しくなり、なかなか実施ができないという現状がある。関係機関と連携してその実施方法あるいは実施条件について検討することが必要。

 ○ 共通的な教育内容(コア・カリキュラム)の整備、共通テキストの作成等で教育内容の平準化が必要であり、実習のあり方や実施方法について検討する必要がある。

 ○ 卒前教育と卒後教育の有機的な連携が必要。

 ○ 実務実習にあたり、企業側になかなか受け入れて頂けないとう事実があることについてはこと大学でそれだけの教育ができていないということであり、本当に反省しなければならない。

  ○ 動物の命というものをどう見るのかという、しっかりした考えを持って現場に行かせるということが教育できていなければいけない。

教育研究体制

(総論)

 ○ 日本の獣医学教育について、理念はほぼ構築できているが、理念を動かす組織、施設あるいは設備が不十分である。

 ○ ここ10年で多くの新しいニーズが発生したにもかかわらず、ハードウェアそのものはほとんど変わっていない。

 ○ 以前は各大学20名程であった獣医学科の教員数が、改善の結果、現在30名程になったが、まだまだ諸外国に比べると不十分であると感じている。

 ○ 国立大学の教員1人当たりの学生数は諸外国と比べても遜色ないが、これを10に小分けをしてしまっているため、教員の絶対数が不足している。外科の研究室は2・3名体制がほとんどであるが、それでは総論から各論まで教育することは不可能。

 ○ 一定数の教授・准教授がいないと専門的な教育を十分行えない。

 ○ 今の教員数では国家試験のレベルの教育をクリアーすることがやっとの状態。

 ○ コース制の導入や専門の科目を設置しても、それに見合う専門性を持った教員がいるかという視点がなければ、教員数だけが増えても教育は充実しない。

 ○ まずカリキュラムをしっかりと決めて、そのカリキュラムの内容をきちんと教育できるような教員の在り方ということについても検討しなくてはいけない。

 ○ 必要とされる科目を専門性を持って担当できる教員をそれぞれの大学では用意できていないというのが現状。

 ○ 小動物診療の領域でも、国立10大学の附属家畜病院は一部を除いて惨憺たる状況下の中で臨床教育がなされている。施設・設備はもちろんのこと、スタッフも足らず、専任教員が十分張りついていない。外科の担当する教員がメスをほとんど持ったことがないとか、画像診断の教授が画像診断が全く不得手であるといった状況が見られる。

 ○ 臨床教育を改善させるためには、臨床教員数を増加させること、診療科を増やして少なくともポリクリニックが可能な臨床教育を確立することが必要。また、医学病院並みにこのAHT(動物看護師)などの補助員を増やして臨床教員の研究時間を確保することも必要である。

 ○ 日本と欧米の獣医学教育の教育体制で最も大きな相違点は、教育補助員及び研究補助員の有無であり、欧米では教員と同数近くの補助員が配置されている。

 ○ 大学において教員の有機的な連携体制の確立が重要。

 ○ 産業動物に関するクローン研究ができるような施設・設備・スタッフがいる大学はほとんどなく、地方の衛生試験所や家畜衛生保健所のほうが進んでいる。

 ○ 公衆衛生分野ではリスクの高い病原体を使うことがあるが、大学には対応した設備がない。

 ○ 現在の大学設置基準の必要教員数は現実から離れたものである。現状でも基準を上回る教員がいるが、それでも不足しているのであればどこまで必要なのか。もう一度この数を検証することは必要だろう。

 ○ 標準的なカリキュラムができ上がれば、主要科目が指定できる。主要科目が指定できれば、主要科目は原則、准教授以上で講義すると大学設置基準で規定されているため、准教授以上の数が決まってくるだろう。さらに、獣医学教育は准教授以上だけで教育を行うこと無理であるため、私はその3倍程度の教員数が必要になってくる。そうすれば、おのずから必要な教員数は出てくるのではないか。

 ○ どの分野でも人は足りないので、非常勤講師や資格のある人材を活用している。獣医学だけ教員が足りないという認識は納得できない。

 ○ 基本的に傾向としては専任教員が比較的多い大学のほうが兼任教員に依存する単位数が少なく、すべての分野において教育内容・教育体制が充実している

 ○ 学生教員比の高い大学は、特に実習科目において複数回に分けて実施するということになるので、教員にとって負担になっており、十分な教育、特に実習を行うのに適正な学生教員比を検討する必要がある。

 ○ 産業動物患畜数がゼロから十数頭という非常に少ない大学がある。学生が産業動物に接触する機会を確保するということが必要。産業動物の患畜数の多い大学というのは、大学の立地環境等もあるが、卒業生の産業動物診療分野への就業割合が高く、相関があるといえる。産業動物の患畜数の少ない大学は、産業動物の患畜数の多い大学、あるいは近隣都道府県の農業団体等と連携することによって、学生が産業動物に触れる機会を確保するということが必要である。

 ○ 教育内容、教育研究体制を充実するためには、学内の関係学科、関係他大学、学外の関係機関との連携協力を促進し、専門性を有する教員を確保するということが必要である。

 ○ 公衆衛生の実務を学ぶ為には単に見るだけの見学ではなく、最低2週間程度の実務を経験 すべきであり、これについては各自治体の協力を得ることは困難な問題ではないのではないか。1施設には1名程度、自治体数は全国で保健所のある市が136あるということで、関東地域に固まらないようにすべきことを考慮すれば実際に可能と考える。

 ○ 医学部では4年生から5年生に上がるときに、共用試験を行い、それに合格した者は5年、6年でベッドサイド教育や病院で診療をやることができるという制度ができている。その制度を獣医学教育にも取り入れるべきではないかと思っている。

(大学の在り方)

 ○ カリキュラムについては、関係団体が作成した標準カリキュラムで良いと思うが、教員の絶対数が少ないため標準カリキュラムのような充実した教育ができない。最終目標はやはり大学再編ということしかないのではないかと思う。

 ○ 大学のエゴや地域の事情というがあり、思うように再編統合は進まないが、個々の大学の自助努力のみで改善を行うことも無理だと思う。

 ○ 平成16年の国立大学における獣医学教育に関する協議会において、獣医学教育の再編が必要であると言われており、それから5年間たっているので、そういう観点で見直しているのかという検証が必要ではないか。

 ○ 長年の議論の中で、現在10校のある国立大学を3校か4校に分ければ、十分な教育を行う規模の教員数が確保でき、問題は一気に解決すると言われているが、様々な障害があり、十分な教育を実現するには、「基準の見直し」、「外部評価の実施」、「世論喚起」等が必要。

 ○ 大学を統合する予算は国にはないので、まずは緩やかな統合ということで共同学部を作っていくことが重要。その上で構成大学ごとに特色を出せば魅力ある共同学部を作ることができる。

 ○ 国公立大学は獣医学教育に必須の最低限の教員数を満たすため、複数の獣医学科が連携してカリキュラムを充実させる努力をすべきである。

 ○ 共同学部を設置する際には、学部と大学院の在り方、入学試験の実施方法、学生や教員の移動方法が大きな問題になる。さらに、複数の大学が共同で学部を設置した際に、もともとあった大学の独自性をどのように発揮するかという点が次の問題になる。

 ○ 共同学部の設置は、連合大学院の教訓を踏まえると、できれば1カ所に設置しなければ十分な機能はしないだろうと感じる。

 ○ 獣医系の大学が非常に広域にわたっている中で、共同学部を実施した際には、学生や教員の移動、あるいは寮をつくる等、色々なことを考えなければならないが、それで教育効率が上がるのだろうか非常に悩ましい問題がある。 

 ○ 複数の大学が優位な教育資源を結集して連携を進めることが求められると書いているが、連携といってもいろんな連携の仕方がある。

 ○ 連携を行うならば、学生に負担を与えない方法を考えなければいけない。

 ○ 今回の学部教育充実という観点からは、もし短期的には足りない部分を互いに補うという方法があるとしても、長期的にはスケールメリットを活かしたスクラップ・ビルドがないと対応できないのではないかと思う。連携という言葉をもし使うならきちんと定義して使わなければならない。

 ○ 獣医学教育は学部教育を行わなければ整備充実と、それから社会と学生からの要求に応えられないのではないか。

 ○ なぜ学部が必要なのかという根拠を示す必要がある。例えば医・歯・薬が6年制であり獣医も6年制であるにもかかわらず、医・歯・薬で学部の中の1学科でやっているところはないと思う。ないとすればそれはなぜなのか。なぜ獣医だけそれをやらなくてはという問題がある。

  ○ 学部教育のために何をしたか、何が不足しているのか、改善するためには何が必要かという目安を示さなければならないのではないか。大学設置基準の見直しも含めて検討する必要があるのではないか。

 ○ モデル・コア・カリキュラムとの対応の問題、それから専任教員数との問題、あるいは諸外国の獣医学教育の動向の問題など、あらゆるものを勘案した上で、獣医学部が農学部の中の1学科であるということが本当に教育のシステムとして重要なものなのかどうかということまで考えなくてはいけない。

 ○ 各大学に関しては将来的な分野別第三者評価の実施を見据え、授業内容をより具体的に記載したシラバスを作成すること。学生・第三者に対して積極的にそれを公開して、教育状況の透明性を高める必要がある。

 ○ 各大学は獣医師や獣医学教育に対する社会ニーズの高まりに対応していくためには、共通的な教育内容に加えて専門分野、職域別に特化した専修教育を大学の特色に応じて行う、アドバンスを付加して即戦力として社会の期待に応えられる獣医師を輩出することが期待される。

(教員養成・確保)

 ○ 獣医学教育の研究者がほとんど枯渇している。講座制の崩れていく中で大学院生が減少している。

 ○ 大学では専任教員が十分配置されていないため、大学内で知識・技能が伝承されず、普遍化で平準化された知識・技能を身に付けさせる教育が行われていない。平準化された教育を責任をもって行う教員体制の構築が必要。

 ○ 公衆衛生分野は食品安全、感染症、疫学等、色々な分野を幅広く組み合わせた分野であるが、例えば食品安全にはリスク分析やレギュラトリーサイエンス、行政科学の考え方が必要である。ただ、食品安全は体系立った学問になっていないため研究者が育っていない。

 ○ この数年間、各大学が自助努力で教員数を増やしたが、数値上は教員数は充実しても専門性を持った人材が確保できていない。募集をかけても適任者が集まらないのが現状である。特に臨床分野は、研究業績による評価と収入減が壁になり人材が集まらない。

 ○ 手術例数や外来診療の件数による評価や、診療事例のケースレポートも業績の一つにカウントすることが必要であると考えるが、結局はどの大学も論文数だけで教員を採用しているという状況が今でも続いている。

 ○ 臨床系教員は応募が少なく、応募があったとしても、専門分野を担当できる人材が集まらない。特に動物診療の臨床分野では関連する研究機関がないため、人材が不足しているのではないか。

 ○ 公衆衛生の分野でも、研究機関や行政、民間から大学教員になる者は皆無で、臨床分野と同じように大きなハードルがある。任期付きでも良いので、外部講師や特任教授を活用しなければ必要な人材が確保できない。

 ○ 公衆衛生行政獣医師の養成・確保については、保健所や研究機関が受け皿となって大学との連携を図らなければならない。

 ○ 獣医学教育の教室や講座を増やすために、助手を教員に振り替えていった経緯があるが、助手や助教というのは教授の研究を助けながら教員としての訓練を積むシステムであると考えている。近年は後継者不足が問題視されており、後継者を育成し講座を継続させていくためには、どうしても各講座に3人は必要であると考える。

 ○ 日本の大学は論文至上主義の業績評価を行っているため、どれだけ経験や実績があっても論文数の少なさで採用されない。農学部内に獣医学科がある限りこうした状況が続くのではないか。

 ○ 教員を増やすだけではなく、教員の考え方が変わらなければ駄目だと思う。例えば、1大学3人程度を海外に5年間送り出すようにすれば大学はずいぶん変わる。今の大学の教員は出身者が7割から8割を占め人が動かないが、これでは改革は進まない。組織や人、獣医学に対する社会の考え方が変わらなければ、カリキュラムだけを変えても解決しない。

 ○ 今後どのように専門性のある教員を確保するのかという課題に対しては、人材バンクの様な制度にするのか、どこかで人材確保するのか、専門家の教育をどこで行うのか等の議論も行わなければならない。

 ○ 論文一辺倒での教員の資格審査には疑問が常につきまとう。だとすると、獣医学教育に携わる教員の資格要件について明文化することが必要になってくるのではないか。

 ○ 今の大学のスタッフでは、統廃合したとしても教える内容がそんなに変わるとは思えない。実際に公衆衛生に携わっている外部教育スタッフを非常勤や特任教授という形でうまく使えないか検討していただきたい。インターンシップでも集中講義のような形でもよいので、とにかく現場を見せて現場に携わらせることが、やはり一番効果がある。

 ○ 公衆衛生に関しては範囲が広いにもかかわらず、教員数が非常に少ない。微生物や感染症の専門教員が担当しているということが多く、特に環境衛生学、獣医疫学の教育内容の不十分さが目立つ。

 ○ 毒性、あるいは野生動物学、魚病学などの分野は専門性を持った教員が確保できていない大学が多く、特に専任教員がやや少ない大学ではそれが顕著であり社会ニーズの高い分野の教員の確保、教育内容の充実が必要

 ○ 専任教員がやや少ない大学は、疾病の多様化・高度化に対応した科目の教育内容を充実させるため、専任教員の充実が必要である。また、実習科目の教育内容の充実ということで、実際に実習を担う専任教員、主として助教や講師の充実が必要である。

 ○ 教育体制については、導入教育を除いてはおおむね専門性をもった教員が担当しているが、専任教員がやや少ない大学は専任教員1人当たりの担当単位数が多い。

 ○ 専門家のいない授業科目を複数人で担当している科目というのがあるが、この  場合教育内容に偏りがあって、全体的なバランスに欠けるというケースが多く、一方で、外部からの非常勤講師でも専門家による授業内容というものは、履修項目のバランスが良く教育体系が精査されているケースが多い。

○ 臨床の一部では教員、主として准教授が不足している。特に、実習に関しては 専任教員であっても専門分野の違いによって、専門分野を重点的に教育する一方、専門外の分野では実習項目の教育がなされていないといった大学もあり、教育内 容に偏りがある。

 ○ 大学内、大学間あるいは関係機関との連携・協力を促進し、専任、兼任にかかわらず専門性を有する教員を確保するということが必要である。

 ○ 現場の専門の行政の人に来てもらい講義をしてもらうということは、重要な点と思う。

 ○ 専門家が不足している分野においては今後、若手教員など確保していく必要があるとはいうが、獣医学のほとんどあらゆる分野で若手教員が不足している。

国際的通用性

 ○ 獣医学教育はライセンス教育であり、グローバル化の中でどのような獣医学教育を進めていくかということが大きな課題。

 ○ 議論の中で国際通用性の確保が論点にあがるが、獣医師に対する要求は国によって違うので、日本の要求や特徴を活かしながら議論をした方がよい。

 ○ 6年制教育がスタートして二十数年を数えるが、獣医学教育の改善・充実が図られたとは言えない。特に欧米と比較して、実務教育はいずれの分野においても余りにも貧弱である。

 ○ 欧米、特にアメリカではインターン制度があり、獣医学教育を修了した学生は、卒業と同時に応用能力を発揮して実務ができるような教育がなされている。

 ○ 日本の獣医師は、社会に出てから再教育をしなければならない。欧米に留学させて国際的な技術と知識を身につけさせなければ、国際機関で働ける人材を養成できない状況である。

 ○ OIEが獣医学教育の国際的な平準化に向けて進むことを表明しており、獣医学教育の基準はできるだけ高いところに設定することが望ましいと考えている。

 ○ グローバル化を目指すというのは重要だが、我が国固有のデマンドに対応することも重要である。

 ○ 日本の獣医学教育はその成り立ちから、基礎分野が半分以上を占めているという海外と比べると異常な状況になっている。基礎分野が大事なことは理解した上で、臨床分野と公衆衛生分野が極めて弱い日本の状況をどうするのかを考えていきたい。

 ○ 国際通用生を確保する上ではリベラル・アーツが重要な部分であるが、獣医学教育課程においても、獣医師や動物に関連した法規の不備や動物福祉といったアニマル・リベラル・アーツを充実させなくてはならない。実際は獣医系大学よりも動物看護学校や動物科学系の大学のほうがアニマル・リベラル・アーツに重きを置いているので、こうした学校との連携は、獣医学系大学にアニマル・リベラル・アーツの部分で国際通用生を確保する手段として有効であると考える。

 ○ 国際的な貿易関係、動物検疫はいずれの国も獣医師が、国際獣疫事務局等のアニマル・ヘルス・コードに基づいて行っているため、学問的内容のみならず獣医師の資格としての国際通用性が必要とされている。

 ○ コア・カリキュラム作成にあたってはこの秋に、OIEで獣医学教育の基準について検討する会が開催されるがそこで国際基準としてどんなものが取り入れられるのかも勘案する必要がある。

 ○ 国際的通用性をどういうふうに定義をするのか、それは果たして英語ができることなのか、あるいは国際基準での研究体制の中ですんなり入っていける枠をつくるということを指すのか。その辺が見えてこなければ、カリキュラムをいじるだけでは非常に表面的なものになってしまうのではないか。

 ○ アメリカなどでは専門大学院で教育をしているので、一般教養科目をきちんと単位を取らせ、それなりの成績をもって卒業できない学生は専門大学院に入れないという現状がある。ところが日本では一般教養科目での評価が非常に甘い。つまり学生の評価に対して何を求めるかということを、どの程度の厳しさをもってやるかということは、国際通用性に大きな影響を与えるのではないかと思う。

教育の質保証システム

 ○ これからの大学教育は、入り口管理である学生確保と出口管理である進路指導が重要な課題である。

 ○ 日本はアジアの獣医学のリーダーシップを果たす義務があるため、一日も早くアジアで通用するアクレディテーションシステムを構築すべき。

 ○ 獣医学教育の質の最低保障をどうするかというのが重要な問題である。我が国の獣医学教育の質の保障をどのように担保していくのか、獣医学教育をどのように向上させていくかという議論に絞ったほうが良い。

 ○ 設置基準の教員数では十分でないという認識は共通の理解としてある。設置基準というのは最低基準であって実態とはかけ離れているため、設置基準の教員数を満たせばそれでよいとはならない。

 ○ カリキュラムを検討する大前提として、基礎・臨床・応用という3本柱をベースに検討し、その中でコアの部分と各大学が選択できる部分に分けて考えということで進めていきたい。カリキュラムができた後に、それを教示するために必要な教員数や教員組織の規模の議論がある。そして、それを実現するためには、1つは大学設置基準の引き上げと外部評価の実施が有効である。カリキュラムができれば、それに沿った教育ができる組織なのかどうかを評価システムができるのではないか。

 ○ 現状を検証して分析し、どこに改善点があるのかを共通認識を持って改善していくことが重要である。私立大学間ではほぼ2年間隔で相互評価を行っており、現在は特に、動物病院の在り方と臨床教育についての検証を行っている。

   相互評価を行うと痛み(他大学と比較して充実していない部分)があるが、獣医学教育を求める学生によりよい教育・研究環境を提供するためには、勇気を持って痛みを次の改善に結びつけていかなくてはならない。

 ○ 評価を行うのは改善を行うことが目的であるため、私立大学間の相互評価のように全体がボトムアップしていけば良いが、国立大学は既に国立大学法人評価・認証評価を受けており、さらに外部評価も受けることになれば、「評価疲れ」を起こしてしまう。評価を受けて改善しなければ、在学生の履修単位が認められないとか、運営費交付金が減らされる等、もっとダイナミックに評価に対する目的・目標が設定されなければ、ただ労力が増えるだけになってしまう。

 ○ 達成目標を設定した上で評価制度も導入すれば、基準をクリアできない大学が再編・統合を考えざるを得なくなるのではないか。

 ○ 質保証の観点から、本小委員会の検討を踏まえ、大学・関係学協会が中心となって共通的な教育内容を整理し、獣医学分野の質保証のあり方の具体的検討を行うことが必要である。

 ○ 各大学に関しては将来的な分野別第三者評価の実施を見据え、授業内容をより具体的に記載したシラバスを作成すること。学生・第三者に対して積極的にそれを公開して、教育状況の透明性を高める必要がある。

 ○ 学生の評価というものをどの水準でやっていくか、学生に何をどのレベルで求めていくかということに関しても、どの程度の厳しさを要求していくかということをある程度考えなければいけないのではないか。

その他

 ○ 世の中全てを満たせるという話はどこにもなく選択と集中が必要。国家試験に合格するための最低限の教育は必要だが、あとは大学ごとに特徴があってもよいのではないか。

 ○ 獣医師国家試験は診療と公衆衛生に必要な知識及び技能を問うことを主たる目的としている。大学教育は獣医師国家試験に左右されるという意見を聞くが、あくまでも獣医師国家試験は大学の卒業試験ではなく資格試験である。

 ○ 大学教育をきちんと受けていれば、特別な対策をしなくても国家試験は合格できるはず。

 ○ EUの獣医系大学は大半が国立大学であり国からの補助でまかなっているが、近年、競合的資金が増加している。また、獣医学の学位を持たなくても研究に長けた人材を招いて競合的資金を獲得している大学もある。アメリカでは、アニマルウェルフェアと関連した寄付金に頼っている大学もある。

 ○ 欧米の愛護団体が莫大な資金を集め動物病院を設立できた背景には、企業寄附や個人寄附に対する税制の違いがある。寄附が促進されるような税金制度ができるとよい。

 ○ 獣医学教育に限らず大学教育は、学生をどうやって集めるか、優秀な教員をどうやって集めるか、そしてお金をどうやって集めるかという3つがないと成り立たない。

 ○ 獣医師のライセンスの中に限定ライセンスを設けて、小動物・大動物のライセンスや公衆衛生等の行政用のライセンスを設けることは考えられないか。全てを教育することが困難であるならば、教育範囲を限定して深く教えることはできないのか。

 ○ 小委員会報告で、16大学の教育内容と教育体制の分析結果を出したが、あの分析結果で課題と指摘された事項を改善するためには何をしなければいけないのかを協力者会議として考えるべき。

 ○ 「今後の獣医学教育の改善・充実方策に関する意見のまとめ骨子案」に一番欠けているのは、タイムテーブルがないところ。ある程度の時間的な組み立てが必要。

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