歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第5回) 議事要旨

1.日時

平成20年11月25日(火曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省5階5F3会議室

3.議事要旨

(1) 事務局より資料1から4ついて説明。

(2) 俣木委員より、第三者評価について下記のとおり説明がされた後、質疑応答を行った。

 ・第三者評価は機関別と分野別があるが、学部教育は専門分化している。評価手法が決まった形になる傾向にあるが、パターン化しない手法を考案する必要がある。

 ・知識領域に比べ、技能・態度領域の質の評価については不十分である。

 ・技能教育については、基礎的教育(模型実習など)がきちんと実施されているかを評価することも大事である。

○:質保証については前回までにご議論いただいているが、卒業時及び臨床研修修了時の臨床能力を高めるにはどうすればよいかという方向性で議論をすすめたい。その上で、質の評価をどうするか、組織をどうすればよいか等、中教審の議論も踏まえ考えていきたい。

○:臨床研修の在り方検討会においても共用試験をどうしていくか、というのは問題になっている。評価基準をきちんと決めておく必要があり、そのためには、卒業時の到達目標を設定しなければならない。卒前、卒後の重複・乖離、コアカリの改訂含め、卒前・卒後が連動した教育内容となるようにする必要がある。評価をシステム化し、評価基準を見える形にすべきである。

○:卒業時及び臨床研修修了時の到達目標を明確にし、研修内容と摺り合わせをすべきである。

○:技能評価は目標と内容の設定が重要。診療行為と歯科技工士の領域とにはグレーゾーンがある。コアカリではどの程度規定されているのか。

○:模型実習には具体的、明確な定めはない。

○:模型実習=臨床基礎実習であり、歯科では非常にウェイトが高い。

○:歯科の模型実習は、医科のシミュレータ実習と似ている。第一段階は模型やシミュレータでやるしかない。医科はシミュレータ実習が多い。

○:外国でもシミュレータを使用する方法は普及しつつある。歯学系でもシミュレーション機器は発達してきている。従来の模型実習もシミュレータ実習と同じである。きちんと模型実習をやっていないと臨床研修で不都合が生じる。段階を追った技能教育が必要である。

○:医科でも重複と乖離があるようだが、歯科は非常に多い。卒前でできておらず中途半端なために、臨床研修で繰り返すのは無駄である。第三者評価が導入され、教育内容が難しくなり、さらに国試も難しくなれば、6年間で十分な教育ができなくなるのではないか。

○:大学がきちんと教育している保証がないため国試が導入された経緯がある。卒前教育で臨床実習ができていないから卒後の臨床研修が導入されたた。臨床研修病院へのアンケート結果を見ると、卒業生の技能レベルにいかに期待していないかが分かる。大学での臨床実習ができていないという意見が多い。また、卒業時の臨床に必要な能力が明示されていないのも問題である。

○:欧州では国試はなく、大学の卒業試験が難しい。有名大学出身であれば能力に信頼が持てる。一方、米国、韓国、日本は国試で個人を評価している。特に日本はペーパー重視で、知識があれば医師になれる。欧州のように第三者評価による大学評価を厳しくして(認可取り消しも有り)、国試を簡単にするというのも一つの方法である。

○:国試をなくすかどうかはともかく、国民の信頼を得られる方法で歯科医師の質を担保していくべきである。

事務局:欧州では第三者評価の結果で大学を潰すということもあるのか。訴訟にならないのか。

○:オランダでは地域の医療人を活用するなど割と柔軟に運用されており、一度閉鎖したが社会的ニーズが多かったため開学したという例がある。

○:フィンランドでは、需給問題がもとで学生募集停止したが、5年くらいで再開したという例がある。また、カナダでは、国試はあるがレベルの高い大学はパスできる。毎年、国が大学を査定し、レベルが下がると国試受験対象大学になる。

事務局:欧州とは設置形態が違うため、制度にも違いが生じているのではないか。欧州では公立の大学が多いが、米国では私立が主流である。

○:日本は国公立と私立の割合が半々なので、両方取り入れるべきか。

事務局:技能評価は質を担保できる方法でなければならない。個々の学生の能力担保は大学でやるべきだが、それとは別に第三者評価で大学自体の評価をすることも必要である。

○:第三者評価を導入するかどうかはよく考えるべきである。個々の学生の質を担保するには卒業時の能力をみれば明白である。卒業時の臨床能力の質の担保が重要である。

○:国試と大学の質の評価ということだが、卒業時の質の担保は難しいため、大学の教育自体の質を評価するという流れになっている。卒業時の質の担保は重要だが、ぎちぎちになりすぎるのはよくない。あるレベルに到達していれば国試はパスできるなど、卒業時の臨床能力の質の担保が必要である。

○:医科でも全く同じことが言える。専門分化が原因であり、国試作成者は大学の教員なのだから、質の担保ができるよう考慮すべきである。共用試験でさえ、専門医レベルの問題を出題するなど、教員の意識の問題が大きい。各人が専門領域を大事にしすぎている。

○:現在の枠組みの中で改善すべきである。共用試験の当初の目的は、1.学生の質の担保、2.患者を診る能力があるかどうかの判定であり、実習の際に患者の理解を得る手段であったはずだが、現在はその機能を果たしていない。CBTは必要であるが、4年後期ではなく3年後期辺りに実施時期を早め、歯科医師としての適正判断に使用すべきではないか。4年後期で歯科医師の適正がないと言われても潰しがきかない。学生のためにもできるだけ早い時期に適正判断すべきである。OSCEは国試や卒業試験と重ならないよう実施時期・方法について検討すべきである。

○:医科と歯科を比較した場合、毎年、歯科のCBTの平均点は下がってきている。有効に使われていないというのは一部事実であり、OSCEにおける医療面接の平均点が他の項目に比べて相対的に低い。また、OSCEについては、模擬患者団体から、この程度では不十分だという根強い反発がある。

○:現在、歯科医師の国試の合格率は大学によって90~40%まで差がある。国試をなくしたほうがいいとまでは言えないが、国試の難しさが教育内容を阻害しているのは事実。本来医療人としての知識を評価することが国試の目的であったはすだが、専門分化が進みすぎている。国試が難しすぎるため、医療人としての教養やコミュニケーション能力等の教育が阻害されているのは問題である。また、資質に関するハードルを設けるべきである。それはもっと手前で設ける必要があるが、CBTを利用するのは不適切である。大学は資質がないと分かっていてもその学生をきれないだけで、どの大学も実施できるような、資質のない学生を選別する方策を検討すべき。   

○:制度の問題が大きく、国試、共用試験、大学の質の評価はこれまでも議論されてきたが進展がない。熱心になりすぎて、精緻な議論になり、全体の制度設計の議論がなされてこなかったのが原因である。技能試験の導入や大学評価、国試については、どういった議論をするか検討したい。

 (3) 古谷野委員より歯学部附属病院について下記のとおり説明がされた後、質疑応答を行った。

 ・歯学部附属病院では、診療単価を上げるには、インプラント等の私費診療の増加が主であり、組織として収入を上げる手だてがないため、個人の努力になりがちである。また、細かい物品が多く流通コストが高いのも問題である。

 ・医科は入院診療中心であり、コメディカルの配置や高額医療機器が多いなど、大きな病院が儲かるような診療報酬体系となっている。一方、歯科は外来診療が中心であり、医療費率は低いがコメディカルの配置で診療報酬の増を図るのは難しい。また、現在の会計方法では増収部分しか見えず、純益が見えないのは問題である。

 ・医科病院から、歯科のチェア回転率は低すぎると言われるが、歯科教育の特殊性を考えれば当然であり、理解を得る必要がある。

○:チェアで実際に実習をしたときの評価手法が問題である。現在、日大松戸歯学部では観察記録を重視しているが、実態調査をして評価手法を確立すべきである。一つの方法としては客観的方法でよいが、観察記録は主観的な評価方法となるOSCEについては実施時期が問題である。また、技能教育などのチェアサイドティーチングは教員の負担も大きい。教育の現場=収入の現場となっている現状は厳しい。   

○:歯学部附属病院は、病院全体としてみたとき、教育病院としてのウェイトが高く、医科の理解が必要である。また、目指すべき歯科医師像の提示など、キャリアパスの設定が必要である。教育病院としての具体像を示してはどうかということか。

○:OSCEも医科は入院、歯科は外来中心に構成されている。臨床実習開始前に実施するため、詰め込みすぎになる傾向があり見直しが必要である。また、卒業時、学生に何を期待するかは様々であり、例えば研修病院では即戦力となることを期待している。

○:患者の立場である前野委員にお聞きしたいのだが、歯科の場合、簡単な疾病であっても、一度削ってしまったら取り返しがつかないなど、致命的なことが起きやすい。このような現状で、卒業時の歯科学生は、専門的基礎知識と基礎的診療知識、どちらを備えておくべきと考えるか。

○:医科の大学病院と比して、一般国民は歯科の大学病院にかかる機会は少ないのではないか。そういう意味では高度医療をあまり必要としていない。一部歯科病院の不信感を煽る報道があるのも確かだが、研修施設としてのアピールの仕方が問題であり、教育病院と言うからには、きちんと診療してほしい。また、患者はどこに受診してよいのか分からず、歯科を選ぶ基準としては、曖昧な口コミと実績ではないのか。その為、どこに受診してよいか分からず、大学病院の歯科に受診するというのが多いのではないか。

○:教育病院としての側面と先端技術の提供という相反する面を両立しなければならない。

○:九州大学の歯学部附属病院は、外来患者600名/日であるが大部分はケアも含め難しい患者が多く、初心者に任せられない。また、歯科は先進医療ではなく私費診療とされることが多く、先進医療に指定されるもの自体が少ない。

○:学生に任せられる患者は非常に少ない。直接患者に交渉するが、承諾を得られないことが多い。病院で研修施設として認定されているのは9%、医学部ある大学病院の口腔外科では80%を受け入れている状況である。

○:大学以外の歯科病院の施設基準等を緩和し、臨床実習を行えるようにすべきである。

○:大学集中を改善するための検討をしており、5年以内に見直す予定である。公立病院に希望を出してもアンマッチになったり、マッチしても国試に通らず、欠員となっている例もあると聞いている。

○:教育病院としての位置づけを明確にすることが必要である。先進医療は各大学に任されている状況だが、今後どうしていくか検討すべきである。

○:国立は、病院経営ということにどの程度切迫感があるのか。教育病院としての機能と地域病院としての機能は相反するため、分けるべきではないか。歯科の診療報酬は小さな診療所であれば採算が取れる制度である。1人の歯科医師が衛生士を使って、2,3台のチェアを置いて診療するのがベストである。

○:教育コストをどこにどう盛り込むかが明確ではない。法人化の際にも明確にならなかった。

○:収入だけはっきり見えて、支出のはり付けが難しい。支出のはり付けの参考として、タイムスタディを実施する程度である。

○:経営の裏付けがなければ教育もできないということである。

○:歯学部附属病院の経営は難しい。研究予算であれば節約も可能だが、診療に関する費用はそうもいかない。建物も借入金で建てているため借金返済もある。

(4)事務局より次回の会議日程案について12月15日(月曜日)13時30より文部科学省3F2特別会議室で開催する旨、説明がされた。

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