歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第3回) 議事要旨

1.日時

平成20年9月18日木曜日15時30分~17時30分

2.場所

文部科学省17階17F1会議室

3.議事要旨

(1)森田意見発表者、米田委員からそれぞれ「教育者・研究者養成に関する課題と改善方策」について説明後、質疑応答。

○:東京医科歯科大学の大学院では、コースワーク等いろいろな取組を行っているようだが、もう少し具体的に説明してほしい。

○:元々、3人指導体制をとっているが、基礎の学生に臨床の先生がつくということまではしていなかった。今回は、基礎と臨床を分けず、ボーダーレスということで、基礎の学生には臨床の、臨床の学生には基礎の指導教員を必ずつけるを担任制度を設け、基礎と臨床を分けずにボーダーレスに指導を行っている。

○:教育・研究・診療の3つを同じように行うのは不可能ではないか。

○:東大内科のある医師は、夜中の二時、三時までかかって、教育・研究・診療を行っている。歯学の基礎の先生は、臨床の学生をもっとみられるはずだし、歯科の臨床の先生も医科の先生に比べれば時間があるのではないか。

○:アカデミック・ドクターとは?

○:高度な専門医ではなく、問題解決ができる、という意味。

○:臨床系大学院はいらないのではないかという意見もあるが、どう思うか。

○:医療系の大学院は、臨床のデータに基づいた研究をするものであり、そうでないなら理工系へ行けばいいのではないか。

○:大学院生の段階で、どれだけ臨床について知っているのか疑問。臨床を徹底的に研究した上で、基礎の先生の指導の下、基礎的考え方を学ぶ方がよいのではないか。

○:九州歯科大学においても基礎配を試みたが、うまくいかなかった。

○:基礎研究は時間がかかるし、失敗も多い。臨床の教室で基礎的研究を行うのは向いていないのではないか。臨床の教室ではPatient-Oriented Researchを行うべきであり、 そうすれば棲み分けもできる。米国に比べ、日本のこの分野は遅れている。

○:臨床系の学生がやっている研究を見ても基礎が多い。

○:臨床研究は業績として認められにくい。基礎研究の方がImpact Factorがでやすいが、Nature Scienceに偏りすぎるのは問題であり改善すべき。

○:国立のほうが、若干研究志向が強い。私立大学の歯学部の学生は、臨床歯科医になることを目指して入学してくる。学年が進んでもその最初の思いこみは消えず、研究に興味を向けさせるのは難しい。研究や教育に興味を持つ学生もいるが、ごく一部。

○:医学部では専門医志向が強く、学位をとらない学生が多い。歯学はどうか。

○:医学と比較するとPhDは多い。医学は歯学と違い、臨床そのものがbasic scienceの色が濃い。

○:学位をとる学生が多いのはよい傾向。

    教育者をどのように育てるか?FDは表面的ではないか。

○:本日の発表の主な要点である、研究者養成に論点を絞ることにする。臨床を念頭においた基礎研究者の養成、臨床と基礎を融合した指導者の養成が問題。共用試験では、臨床基礎問題を作成できる人間がいないのが問題。歯科医療を念頭においた研究者の養成が必要。

○:コアカリ策定、大学院教育に携わってきた立場からすると、基礎の先生は積極的アピールが足りない。魅力ある教育をしなければ学生は集まらない。逆に言えば、学生が集まらないのは魅力に乏しいから。基礎と臨床を対立の構図で考えるべきではない。 

    大学院も従来の考え方ではそぐわなくなっている。社会は、医学部・歯学部の学生は、医師・歯科医師になるのが当たり前だと思っているが、先生はそうではなく、社会の中での考え方と乖離している。

    臨床に学生が流れるのは仕方がないが、基礎的視点を持った臨床医を育てるべき。資格さえ取ればいいという風潮が強すぎる。医学でも歯学でも、コアカリにもあるようにResearchの視点を取り入れ、臨床医としてResearchもきちんとやっていくという姿勢を示すべき。

    全員が同じことをする必要はなくなってきている。研究者は研究をすればよい。また、先の見通しがなければ若い人は集まらない。

  コアカリの最初の部分に「準備教育」として記載があるが、生物学的基礎知識や基礎科学も重要。米国に比して日本は非常に弱い。この分野の良問を作るのは非常に難しく、基礎の先生に依頼をしても、使える問題がなかなかない。教員の能力そのものも問われており、いい人材を囲わないで外に出すようにしなければ先はない。

○:制度や方策については、第7回以降でまとめることとし、本日は意見のみ伺う。

  基礎から臨床へ転向した俣木先生の意見はどうか。

○:薬理だったので、比較的転向しやすかった。

    Research-Orientedなマインドが必要。臨床家でありつつもScientificな視点がなければよい医療は提供できない。後輩の育成にもResearch-Orientedなマインドが必要であり、車の両輪。いい人材を育てるためにも、基礎と臨床の対立がなくなるように制度を構築したい。「疫学的」という意味ではなく「全人的」という意味において、Patient-Orientedな考え方も医療とリンクしており必要。

○:東京歯科大学では、1/4~1/3の学生が大学院に進学し、そのうちの85%が臨床に進む。基礎を何十年も研究してから、臨床家へ転向するのは不可能。一方、臨床家であっても環境さえ整っていれば研究をすることは出来る。最初から基礎を進める必要はない。臨床に進んだ医師でも、興味のある分野を伸ばしてやればよく、臨床から基礎に転向した教授も多くいる。

○:PhD.でないと国際的に差がつき、キャリアにもかなり差がつく。

  1つの研究を一つの大学で完結させるのは難しくなってきており、複数の大学が集まって講座を運営するという例も増えている。

  専門医取得との関係から、大学院在籍中は経験年数に含めないなど、制限が多いと学生は集まらない。基礎研究の重要性についてはコアカリにも記載があり、研修の中にもResearch mindの養成は掲げているはずである。

○:医学でも歯学でもライセンスを取ったのだから、臨床に進むのは当然。卒後、いきなり基礎というのは、取ったライセンスが無駄になる。基礎はその後の仕事と考え、ポストの不足も深刻なため、政策的に誘導することをかんがえてほしい。

○:臨床から基礎に進むと裾野が狭まるが、臨床志向になることで、パラドックス的に裾野が広がり競争的になる。

  臨床の先生が本当に臨床志向で研究をしているのか。臨床を前に進めようという気持ちで研究をしている臨床家がどれだけいるか。

○:大学院については、やっと検討がはじまったばかり。しっかりやらないといけない。

  臨床研究や治験では、マイナスデータを発表する研究者が少ない。ブレイクスルーばかり求めていてはダメ。

    大学院では年限が短いのが問題だが、休学して続けるという手もある。休学中は経済的に苦しいので、補助するとか。

○:医科歯科では、医学・歯学両方の学生がいるが、医学の学生は一度外に出て戻ってくるため、臨床マインドがある。一方、歯学の学生は卒業してすぐ大学院に入るため、臨床マインドに乏しく、未熟。論文も書いていない学生もいる。

○:大学院GPの選定委員を何年かやっているが、論文を書いたことのない学生が多く、何とかすべき。

○:卒業時に論文を書き、修士・博士を経てきた理工系の学生と比し、歯学系大学院生は学士論文のレベルが違う。日本は外国に比べると論文引用率も低い。外国の制度のまねではなく日本の制度を活用して臨床研究制度を構築し、歯科独自の研究・・・・

○:教員組織や学生の質が違うため、各大学の大学院の存在意義も違う。新潟大学でエリート教育は必要なく、臨床から見込みのありそうな者に目をつけ育てるほうがよい。機能分化することが必要。研究科長や学部長がリーダーシップを発揮し、ビジョンを明確にすべき。学生がなかなか戻ってこないのであれば、基礎と臨床をミックスした講義をして学生のモチベーションを上げるなど、いろいろな仕掛けが必要。

○:医療のボトムアップが必要であり、それを支えている基礎研究は重要だが、研究者養成は少数精鋭でよいのではないか。医学はどこも同じことをやっているように見えるが、全ての大学で同じことをやる必要はない。国民にメリットがあるかどうかも考えることが必要。学位離れと言うが、学位を量産する必要はない。

○:修士課程にあるような、医工連携のように理工系出身の研究者を育てる道を開くのも一つの手。

○:来年4月から歯工連携がスタートする。

○:臨床研究が問題。学位をとるためのいい論文がみつからず、基礎研究の方が学位はとりやすい。科研費も基礎の方が有利。このため、臨床に戻っても基礎研究を続けている者が多い。

○:歯科は輸入超過。輸出入が均衡するくらいにしたい。

○:臨床研究をする研究者をどうやって育てるか。日本は比較的臨床研究が弱いが、今の大学院制度の中では難しい問題。日本にもNIHのような機関をつくるべき。臨床研究に関する制度設計出来ていないのが、日本の臨床研究が弱い原因。

○:技術的な論文はとおらない。

○:臨床研究を導く臨床家がいないのが問題。 

(2)事務局より次回の会議日程案について10月28日火曜日10時より文部科学省16F1会議室で開催する旨、説明がされた。

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