モデル・コア・カリキュラム改訂に関する連絡調整委員会(平成27年度~)(第1回)・モデル・コア・カリキュラム改訂に関する専門研究委員会(平成27年度~)(第1回)合同会議 議事録

1.日時

平成28年3月30日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省(中央合同庁舎7号館)13階 13F1~3会議室

3.議題

  1. 委員長の選任について
  2. 開催趣旨等について
  3. モデル・コア・カリキュラムの策定及び改訂の経緯について
  4. モデル・コア・カリキュラム改訂の方向性について
  5. その他

4.議事録

【佐藤大学改革官】  皆様,おはようございます。定刻になりましたので,ただいまからモデル・コア・カリキュラム改訂に関する「連絡調整委員会」及び「専門研究委員会」の合同会議を開催させていただきます。後ほど委員長が選任されるまでの間,事務局の方で進行を務めさせていただきます。
  まず,会議に入ります前に御報告させていただきますが,本会議は冒頭より公開とさせていただきますので,御了承のほどよろしくお願いいたします。なお,本日のカメラでの撮影は,委員長の選任までとさせていただきますので,御協力のほどよろしくお願いいたします。
  初めに,本日は,今回の改訂に係る第1回目の会議ですので,本会議の庶務を担当いたします文部科学省を代表いたしまして,常盤高等教育局長より一言御挨拶を申し上げます。
【常盤高等教育局長】  おはようございます。このたびは,医学教育及び歯学教育に関するモデル・コア・カリキュラムの改訂に関しまして,連絡調整委員会そして専門研究委員会それぞれの委員に御就任いただきまして,また本日も年度末で大変御多忙の中をこの会議に御出席賜りまして,誠にありがとうございます。深く感謝申し上げたいと存じます。
  今回,皆様方に御議論いただきますモデル・コア・カリキュラムでございますけれども,医学部生・歯学部生が卒業までに最低限修得すべき内容を取りまとめたものとして,平成13年3月に策定されたものでございます。以後,二度の改訂を経まして,今日では全ての医学部・歯学部において御活用いただき,各大学での特色あるカリキュラム作りを進めていただいているものと認識をしております。
  現在用いられております現行のモデル・コア・カリキュラムが改訂されましたのは,平成23年度でございます。これ以降,今日に至るまでの間にいろいろな医学・歯学を取り巻く環境の変化というものがあると受け止めてございます。幾つか例を出しますと,例えば,国際基準に基づく医学教育認証制度への対応,あるいは医療供給体制や地域包括ケアシステムの構築を目指した社会保障と税の一体改革,さらには医療事故調査制度の開始,こういう教育の在り方にも関わる制度面での変化が続いていると認識しております。また,国際的な脅威となりつつあります国際感染症の問題など,専門的な知見及び技術を用いて対処すべき新たな諸課題が生じてきていると考えております。
  さらに,近年では,こうした社会構造も大きく変化をしておりますし,医学・歯学を取り巻く環境も大きく,しかも急速に変化をしている状況にございますので,その中で社会の期待に応える質の高い医療人の養成という観点からは,卒前教育と卒後教育の連携の必要性ということについても各方面から御指摘を頂いております。医師・歯科医師を始めとした医療従事者に対する社会的ニーズは高まっております。その中で,臨床現場での活躍のみならず,革新的な医療技術の開発を担う人材の養成という観点からも,医学教育・歯学教育の期待が一層増しているというところであると受け止めております。
  こうした中で,今回,医学教育・歯学教育に係る専門的な事項につきまして,先生方にお集まりいただき検討を始めるということになった次第でございます。先生方におかれましては,是非それぞれの先生方のこれまでの豊富な御経験の中での高い御見識に基づく忌憚のない御意見を頂きまして,新しいモデル・コア・カリキュラムの策定,そしてそれが今日の社会の要請を踏まえた実効性ある形となるよう,積極的な御議論をお願いしたいと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【佐藤大学改革官】  次に,配付資料の確認をさせていただきます。本日ですが,まず,座席表を配付させていただいております。そのほか,議事次第の下に配付資料ということで掲げておりますので,それに沿いまして確認させていただければと思います。
  まず,資料1でございます。医学教育モデル・コア・カリキュラム及び歯学教育モデル・コア・カリキュラム改訂に関する恒常的な組織の設置についてでございます。資料2でございます。1枚紙で,医学教育・歯学教育に係るモデル・コア・カリキュラムの改訂について(案)。資料3,モデル・コア・カリキュラムの策定及び改訂の経緯。資料4,医学教育調査研究チームからでございますけれども,医学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂に向けた医学調査研究チーム第1回会議報告。資料5,歯学教育調査研究チームからでございます,歯学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂に向けた歯学調査研究チーム第1回会議報告。資料6については,厚生労働省からの提出資料でございます。まず資料6-1,厚生労働省における医師養成課程を巡る近年の取組,資料6-2,臨床研修の到達目標,方略及び評価の骨格案。資料7につきましては,釜萢委員からの提出資料でございます。資料7-1,医の倫理綱領,資料7-2,日本医師会綱領,資料7-3,平成28年度「日本医師会生涯教育制度」実施要綱,資料7-4,日本医師会生涯教育カリキュラム<2016>。資料8につきましては,奈良委員からの提出資料でございます。2016年3月14日付の『週刊医学界新聞』抜粋でございます。資料9につきましては,柳川委員からの提出資料でございます。資料9-1,日本歯科医師会倫理綱領,資料9-2,日本歯科医師会生涯研修に係るグランドデザイン及び意見書,資料9-3,平成26・27年度日歯生涯研修事業実施要領でございます。
  このほか,机上資料といたしまして,こちらの黄色いファイルの方に関係法令であるとか,あるいは現在の医学教育・歯学教育のモデル・コア・カリキュラム等の資料を配付させていただいております。机上資料の個別の確認は省略させていただきます。
  続きまして,委員の御紹介をさせていただきます。資料1の2ページ目に委員名簿がございますので,それの記載順で御紹介させていただきたいと思います。
  まず,連絡調整委員会の方でございます。
  荒川委員につきましては,本日御欠席でございます。
  そして,井出委員でございます。
【井出委員】  よろしくお願いいたします。
【佐藤大学改革官】  江藤委員でございます。
【江藤委員】  江藤でございます。よろしくお願いします。
【佐藤大学改革官】  寺門医学教育課長でございます。
【寺門医学教育課長】  よろしくお願いいたします。
【佐藤大学改革官】  寺野委員については,本日御欠席でございます。
  永井委員でございます。
【永井委員】  永井でございます。よろしくお願いいたします。
【佐藤大学改革官】  守山委員でございます。
【守山委員】  守山でございます。よろしくお願いいたします。
【佐藤大学改革官】  そして,オブザーバーとして,高久先生に御出席いただいております。
【高久オブザーバー】  高久です。よろしくお願いいたします。
【佐藤大学改革官】  続きまして,専門研究委員会の委員の方々を御紹介させていただきます。
  泉委員でございます。
【泉委員】  泉と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【佐藤大学改革官】  梶井委員でございます。
【梶井委員】  梶井でございます。よろしくお願いいたします。
【佐藤大学改革官】  釜萢委員でございます。
【釜萢委員】  どうぞよろしくお願い申し上げます。
【佐藤大学改革官】  北村委員については,本日御欠席でございます。
  齋藤宣彦委員でございます。
【齋藤(宣)委員】  齋藤でございます。よろしくお願いいたします。
【佐藤大学改革官】  田中委員でございます。
【田中委員】  田中でございます。よろしくお願いいたします。
【佐藤大学改革官】  奈良委員でございます。
【奈良委員】  奈良でございます。どうぞよろしくお願いします。
【佐藤大学改革官】  福井委員でございます。
【福井委員】  福井です。よろしくお願いします。
【佐藤大学改革官】  福島委員でございます。
【福島委員】  福島です。よろしくお願いします。
【佐藤大学改革官】  五島委員でございます。
【五島委員】  五島です。よろしくお願いいたします。
【佐藤大学改革官】  斎藤隆史委員でございます。
【斎藤(隆)委員】  斎藤でございます。よろしくお願いいたします。
【佐藤大学改革官】  嶋田委員につきましては,本日御欠席でございます。
  関本委員でございます。
【関本委員】  関本でございます。よろしくお願いします。
【佐藤大学改革官】  田上委員でございます。
【田上委員】  どうぞよろしくお願いいたします。
【佐藤大学改革官】  西原委員でございます。
【西原委員】  よろしくお願いいたします。
【佐藤大学改革官】  前田委員でございます。
【前田委員】  前田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【佐藤大学改革官】  俣木委員につきましては,本日11時半頃の御到着ということになっております。
  柳川委員でございます。
【柳川委員】  柳川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【佐藤大学改革官】  邉見委員でございます。
【邉見委員】  邉見でございます。よろしくお願いします。
【佐藤大学改革官】  南委員は,今,ちょっと席を外されてございます。
  山口委員でございます。
【山口委員】  よろしくお願いいたします。
【佐藤大学改革官】  そして,オブザーバーとして厚労省の方から,渡辺医事課長。
【渡辺医事課長】  渡辺です。よろしくお願いいたします。
【佐藤大学改革官】  そして,鳥山歯科保健課長に御出席いただいております。
【鳥山歯科保健課長】  鳥山でございます。
【佐藤大学改革官】  あわせて,事務局の方でございますけれども,先ほど御挨拶をさせていただきました常盤高等教育局長。
【常盤高等教育局長】  よろしくお願いいたします。
【佐藤大学改革官】  そして,連絡調整委員会の委員も兼ねさせていただいております寺門医学教育課長。
【寺門医学教育課長】  よろしくお願いします。
【佐藤大学改革官】  そして,医学教育課の佐々木企画官。
【佐々木企画官】  よろしくお願いいたします。
【佐藤大学改革官】  私,医学教育課の大学改革官の佐藤でございます。
  このほか,文科省の方から松尾大臣官房審議官が,11時頃から出席させていただく予定でございます。
  次に,委員長の選任に移らせていただきます。各委員会に置く委員長につきましては,前回の平成22年のときと同様に,各委員会の会務を掌理するお立場として,連絡調整委員会に1名,専門研究委員会には医学教育と歯学教育の分野ごとに1名ずつ置くこととし,委員長が都合により会議に出席できないなど,委員長に事故があるときは,当該委員長が指名する委員に委員長代理をお務めいただくこととしてはどうかと考えております。
  また,本日のような合同会議の際には,議事を円滑に進行するため,座長を置くこととし,連絡調整委員会の委員長に座長をお務めいただくこととしたいと考えております。
  各委員長の選任方法につきましては,事務局としては,連絡調整委員会の委員長については委員の互選により選任,専門研究委員会の各委員長については,連絡調整委員会委員長の指名により選任という形でさせていただきたいと考えておりますけれども,いかがでございましょうか。
(「異議なし」の声あり)
【佐藤大学改革官】  ありがとうございます。それでは,まず,連絡調整委員会の委員長の選任を行いたいと思います。どなたか御推薦をいただければと思いますけれども,いかがでしょうか。守山委員,お願いいたします。
【守山委員】  全国医学部長会議常置委員長の守山でございますが,これまでの医学教育,研究,診療等の実績を踏まえて,永井良三先生を推薦したいと思います。
【佐藤大学改革官】  ただいま守山委員から,永井委員を連絡調整委員会の委員長ということで御推薦いただきましたけれども,よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【佐藤大学改革官】  それでは,連絡調整委員会の委員長は,永井委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。先ほど申し上げましたように,永井委員には,本日の合同会議の座長も務めていただきたいと思います。恐縮ですけれども,永井委員長は,この後座長として進行の方をよろしくお願いいたします。
  続いて,専門研究委員会委員長の選任を行います。それでは,永井委員長の方から,専門研究委員会の医学教育・歯学教育の各委員長の指名をお願いできればと思います。
【永井座長】  それでは,座長を務めさせていただきますが,専門研究委員会の委員長を,医学教育担当につきましては齋藤宣彦委員,歯学教育担当は前田委員にお願いしたいと思いますが,いかがでございましょうか。
(「異議なし」の声あり)
【永井座長】  それでは,齋藤委員と前田委員におかれましては,今後の専門研究委員会の運営についてよろしくお願いいたします。
【佐藤大学改革官】  ありがとうございます。
  それでは,ここからの進行は永井座長にお願いしたいと思いますけれども,それに先立ちまして,永井座長から一言御挨拶を頂きたいと思います。永井座長,どうぞよろしくお願いします。
【永井座長】  座長に御推挙いただきました自治医科大学の永井でございます。先ほど局長さんのお話がありましたように,世の中いろいろ変わっております。新しい時代の医学教育にふさわしいモデル・コア・カリキュラムを皆様の御協力を頂きまして,鋭意進めてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【佐藤大学改革官】  ありがとうございます。
  報道機関によるカメラでの撮影はここまでとさせていただきます。御協力よろしくお願いいたします。
  それでは,永井座長,改めましてよろしくお願いいたします。
【永井座長】  それでは,本日は,議事次第の2から4にございますように,会議の開催趣旨,モデル・コア・カリキュラムの策定及び改訂の経緯,調査研究チームにおける検討の方向性についてを議題といたします。
  まず,本会議の開催趣旨等について,事務局から御説明をお願いいたします。
【佐々木企画官】  医学教育課の佐々木でございます。座ったままで恐縮ですが,資料の説明をさせていただきます。
  資料1及び資料2をお手元に御用意ください。簡単に開催趣旨,そして検討体制,スケジュールの3点について御説明をいたします。
  まず,開催趣旨でございますけれども,資料1の目的,そして役割にありますとおり,6年ぶりに医学教育モデル・コア・カリキュラム,そして歯学教育モデル・コア・カリキュラムを様々な法改正等の変更に対応した形での改訂をお願いしたいというのが趣旨でございます。
  検討体制でございますけれども,先ほどの資料1,2ページ,3ページをお開きいただきながら,資料2を併せて御覧ください。資料2の真ん中ほどの右側にありますとおり,検討体制は3層構造,一つは連絡調整委員会,資料1の2ページに相当いたします。そして,中心となって中身を精査していただきます専門研究委員会,資料1の3ページに当たります。そして,その素案等を作成するための調査研究チーム。これは後ほど資料4,資料5で,泉委員,五島委員から御説明いただくことになりますけれども,このような形で検討体制を構築したいと思っております。
  スケジュールでございますけれども,資料2の(3)を御覧ください。大まかな流れで申し上げますと,1年,来年の3月を目指して改訂版のモデル・コア・カリキュラムを策定したいと考えております。その後,1年,平成29年度いっぱいを掛けて各大学での教育カリキュラムを策定いただき,そして平成30年4月から,それに基づいて各大学における教育を開始していきたいと考えております。これが大まかなスケジュールでございます。
  この合同委員会等で御検討いただきたい1年間のスケジュールは,(3)の大括弧の中にありますとおり,本日が連絡調整委員会の第1回,専門研究委員会の第1回の合同で,改訂の方向性について御議論いただきたいと考えております。
  その後,6月から7月に掛けまして,歯学教育・医学教育のそれぞれの専門研究委員会で個別論点について,本日御指摘いただいた内容も踏まえて御審議いただきたいと考えております。
  また,その次の7月27日の医学・歯学教育指導者のためのワークショップでございますが,これは(3)の上の行にありますとおり,私ども文部科学省の主催の形で,医科大学・歯科大学の学長,医学部長・歯学部長の先生方を対象として,直面する教育課題等について意見交換等を行い,各大学の主体的かつ組織的な教育内容の改善につなげることを目的として毎年実施しているものでございます。恐らく今年の7月の時点での直面する教育課題最大のテーマは,このモデル・コア・カリキュラムの改訂かと思いますので,基本的にはこのモデル・コア・カリキュラムの改訂をワークショップでは意見交換をしていただきたいと考えております。
  その後,ワークショップでの意見も含め,10月から11月に掛けて連絡調整委員会をもう1回開催していただき,そして専門研究委員会と合同での形で,このときは改訂の骨子案を御議論いただきたいと思います。その御議論いただいた骨子案を基にパブリックコメントを頂こうと思っております。
  そして,年が明けた平成29年の1月から2月に掛けて専門研究委員会で骨子案を基にした改訂原案の取りまとめを行い,1年後の3月には連絡調整委員会の第3回で改訂版モデル・コア・カリキュラムを決定いただきたいというスケジュールで考えております。
  なお,この検討スケジュールの中にはございませんが,先ほどの資料2の真ん中の右側にあります調査研究チームですけれども,この間に適宜開催いただくこととしております。また,資料中にはございませんが,医学教育チームにつきましては,形式的には文部科学省からの委託という形になりまして東京大学に,歯学教育チームにつきましては東京医科歯科大学にお願いしているということを併せて御報告したいと思います。
  以上,開催趣旨,検討体制,スケジュールについて御説明いたしました。以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございます。
  それでは,ただいまの御説明につきまして御質問等おありの方は,御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
  よろしいでしょうか。よろしければ,これからこのような形で議論を進めてまいりたいと思います。
  続きまして,モデル・コア・カリキュラムの策定及びこれまでの改訂の経緯について,事務局から御説明お願いいたします。
【佐々木企画官】  続けて,佐々木から御説明をいたします。資料3をお手元に御用意ください。資料3に基づきまして,現在のモデル・コア・カリキュラムを中心に御説明したいと思います。
  まず,このモデル・コア・カリキュラムにつきましては,先ほど高等教育局長の常盤からも御紹介申し上げたとおり,平成13年が最初のものでございます。この平成13年に先立ちまして,平成11年,西暦で申し上げますと1999年でございますけれども,21世紀医学・医療懇談会第4次報告が提言されました。その中で,今後の医学・歯学教育改革を一層加速させるための積極的かつ具体的な方策をまとめるために,本日も御出席いただいております高久文麿先生を座長に,医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議が発足,設置。そして,平成13年3月に最初のモデル・コア・カリキュラムが策定されました。
  そのときのポイントとなる内容は,四角囲みでございます。「近年の医学・歯学や生命科学の著しい進歩,医療を取り巻く社会的変化に対応して,医学部・歯学部における教育の抜本的改善を目的に作成」,また,「医学部・歯学部の学生が,卒業時までに共通して修得すべき必須の基本となる教育内容と到達目標を提示」という趣旨のものでございます。
  それから約6年経過いたしました平成19年12月に最初の改訂が行われました。そのときのポイントは,四角囲みにありますとおり,「地域保健・医療,腫瘍,医療安全に関する学習内容の充実,『医師として求められる基本的な資質』についての記載や『地域医療臨床実習』に関する項目の新設,学部教育における研究の視点に係る記載の充実,法制度,名称等の変更に伴う用語等の修正」等でございました。
  2ページでございますが,また歯学につきましても,「『歯科医師として求められる基本的な資質』についての記載を新設するなど,主としてモデル・コア・カリキュラムの運用解釈を基本とした必要最小限の改訂」という位置付けでございました。
  そして,それから約3年経過をいたしました平成23年2月に,現行のモデル・コア・カリキュラムに改訂いただいたものです。ポイントは,同じく四角囲みにありますとおり,「基本的診療能力の確実な習得」,「地域の医療を担う意欲・使命感の向上」,「基礎と臨床の有機的連携による研究マインドの涵養」,「社会的ニーズへの対応」,「モデル・コア・カリキュラムの利便性向上等に係る対応」,「大学,学会等へ期待する事項」というものになっております。
  また,いわばその総論的な内容として,「医師として求められる基本的な資質」の見直しを行い,8項目に整理いたしました。一つが「医師としての職責」,二つ目が「患者中心の視点」,3ページに移りまして,三つ目が「コミュニケーション能力」,四つ目が「チーム医療」,五つ目が「総合的診療能力」,六つ目が「地域医療」,七つ目が「医学研究への志向」,八つ目が「自己研鑽」となっております。
  同様に,歯学教育のモデル・コア・カリキュラムにつきましても,「歯科医師として必要な臨床能力の確保」,「優れた歯科医師を養成する体系的な歯学教育の実施」,「未来の歯科医療を拓く研究者の養成」,「多様な社会的ニーズへの対応」,「モデル・コア・カリキュラムの利便性向上等に係る対応」,4ページに移りまして,同様に,「歯科医師として求められる基本的な資質」を見直しを行い,これも8項目に整理を行いました。「歯科医師としての職責」,「患者中心の視点」,「コミュニケーション能力」,「チーム医療」,「総合的診療能力」,「地域医療」,「研究志向」,「自己研鑽」となっております。
  このように,いわば現行のモデル・コア・カリキュラムが三代目に当たるわけですけれども,医学教育・歯学教育を踏まえ,その先にある医師・歯科医師としての求められる基本的な資質にまで言及,見直しを行ったものでございます。
  続く5ページは,今申し上げました現行のモデル・コア・カリキュラム医学教育・歯学教育のそれぞれを模式図的に表したものです。委員の先生方には釈迦に説法でございますが,念のため御説明を加えますと,このモデル・コア・カリキュラムにつきましては,医学教育におきましては,四角囲みの丸の二つ目にありますとおり,履修時間数の3分の2程度を目安としたもの(残り3分の1程度は各大学が特色ある独自の選択的なカリキュラムを実施),同様に,歯学教育につきましても,丸の二つ目にありますとおり,このモデル・コア・カリキュラムで6割程度(残り4割程度は各大学が特色ある独自のカリキュラムを実施)というような位置付けになっております。
  また,モデル・コア・カリキュラムのカバーする範囲につきましては,資料の多くを占めておりますこの模式図にありますとおり,準備教育モデル・コア・カリキュラム等を,そして教養教育を受けて,CBT,OSCEを経て医師国家試験までつながるものという体系的な整理になっております。
  モデル・コア・カリキュラムの経緯,そして現行のモデル・コア・カリキュラムを中心とした内容の説明は以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございました。策定とこれまでの経緯の説明でしたが,いかがでしょうか,何か御質問ございますでしょうか。
  よろしければ,ただいまの件,御了解いただいたということで,これより本日の中心議題であります調査研究チームにおける検討の方向性について,医学教育と歯学教育各チームからそれぞれ御説明いただきたいと思います。質疑応答の時間は,それぞれのチームの御説明ごとにお受けいたしますが,両チームの御説明,審議応答の終了後に自由討議の時間を設けております。医学教育・歯学教育に共通する御意見等につきましては,その際に御発言いただければと思います。
  では最初に,医学教育につきまして,泉委員から御説明お願いいたします。
【泉委員】  それでは,医学調査研究チームより報告させていただきます。本来でしたら,北村聖チームリーダーの方から報告させていただくところ,本日は御欠席ですので,僣越ながら泉の方から報告させていただきます。
  1ページおめくりください。本日,皆様にお示ししますのは,この1から7までの七つの基本方針で,最後に今後の方針についてお示しできればと思っております。
  まず,第1ですけれども,コアカリとグローバルスタンダードや国家試験の出題基準などとの整合性についてです。このコアカリとグローバルスタンダード(医学教育分野別評価基準と申しますけれども)は,皆さん御存じのように,GIO,SBOで示してあり,グローバルスタンダードは学習成果基盤型教育という異なった学習法を使っておりますので,人によってはこれがダブルスタンダードのように見えてしまいます。従って,この両者の関連性を明確化する必要があると考えております。もしこれを統一した形で示すのであれば,最低の変更にとどめるということであれば,文言を統一する,つまりGIOで示してある「一般目標」を「到達目標」に,SBOである,「到達目標」を「コンピテンシー」と置き換えることが考えられます。もし抜本的な改訂ということであれば,6年間の到達目標を大きく定めて,その内容によってコアカリの内容を再検討,あるいは削除といったことを考える必要があると思います。
  もう一つが,コアカリと国家試験出題基準との整合性です。このコアカリが共用試験の出題範囲になっておりますので,その性格上,4年生まではコアカリの内容が重視されています。ところが,共用試験が終わりましたら,学生や現場の指導者などの目は国家試験の出題基準の方を向いてしまいます。従って,5,6年生で履修すべき内容(現在は米印で示されておりますけれども)は,どうしても軽視されがちになっていると思いますので,どのように両者の整合性を取っていくか,さらには,卒後の初期臨床研修制度,それから来年から導入される新専門医制度,ひいては生涯教育との一貫性の中でのコアカリの位置付けを検討していかなければならないと考えております。
  2番目が,総量のスリム化です。先ほど佐々木さんから御報告ありましたように,コアカリというものは,本来,3分の2程度の時間数をかけて履修する内容と定められていましたけれども,現在,共用試験の対策という点で,全ての時間をこれに費やして教え込んでいるのが現状ではないかと思います。本来のコアという原点に戻り,項目を厳選する必要があるのではないかと考えます。
  一つ厳選する内容の見直しの一つとしては,準備コア・カリキュラムが挙げられます。準備コア・カリキュラムは,主に高校の履修内容,物理,化学,生物,数学といったような内容が含まれていますので,医学教育の中のコア・カリキュラムとしてはそぐわないのではないかと思われます。。もし可能であれば,削除も含めて見直しを図ってはどうかと考えています。
  3番目が,参考資料の整理です。コアカリの中には,幾つか参考資料が付されていますけれども,一つ現場からの声として,コアカリをどのように指導するか,その指導方略を示してほしいという意見がございます。指導者に対してこのコアカリの内容をどのような方法,指導法で明示するか,あるいは一番良い資料がないものだろうかといったような問い合わせです。もし可能でしたら,全国の80大学が同じ内容のコアカリに対して違った教科書や資料を使用するのではなくて,共通した教科書の作成など可能であればそういったことも考えられるかと思います。
  それから,現在,既に参考資料として入っている臨床実習に関する資料についてです。この臨床実習のためのガイドラインが導入されたのはまだグローバルスタンダード以前の時期ですので,これを現在の診療参加型臨床実習の内容でさらにグローバルスタンダードに沿った形に刷新する必要があると思っています。
  4番目を御覧ください。前回の改訂で非常に重要な内容が盛り込まれました。「医師として求められる基本的な資質」です。これには,見事に最近のグローバルスタンダードの潮流ですとか,あるいは国民からのニーズといったものが反映されています。内容のいくつかを②に記載しましたけれども,この大切な資質を列挙だけにとどまらずに,一つ一つ具体的にどのようなコンピテンシー,あるいは到達目標を求めるのか,現場でその指導方略を示して,実質化するにはどうしたらいいかについて考える必要があります。
5番目ですけれども,世界への発信です。グローバルスタンダードを今,医学・歯学ともに英文翻訳をしている最中で,世界に対して英語で発信していくということは非常に重要です。ただ,これに際しては,もちろんグローバルスタンダードと整合性を取り,日本がグローバル化の潮流の中でどういった方向でコアカリを捉えているのかを示すことも同時に必須になるかと思います。
  それから,6番目ですけれども,最近の医学・医療の進歩や疾患構造の変化を踏まえた内容の再整理ということで,例えばここに腫瘍及び複数の臓器にまたがる疾患の強化というものを挙げてみました。各論については,そこに示しましたように,各学会などが主導するモデル・コア・カリキュラムを作成するといったようなことも視野に入れていきたいと思っています。
  次ですけれども,これは歯科の方から示していただいたのですが,今回のコア・カリキュラムの改訂に際して,キャッチフレーズを作ったらどうだろうかという御提案がありました。「多様な医療ニーズに対応できる歯科医師の養成」ということでしたので,なるほど,これは医科の方でも非常に良いなと思いまして,医科だけが単独のキャッチフレーズというものはあり得ないだろうと思いまして,是非歯科と一つにしたキャッチフレーズにしていただいて,広く受け入れられるような形に打ち出していけたらいいなと思いまして,これをこのまま活かさせていただき,「多様な医療ニーズに対応できる医師・歯科医師の養成」といったキャッチフレーズを提案させていただきます。
  最後に,コアカリ改訂に関する今後の方針ですけれども,医学からは,多方面からの多様な意見を聴取するために,調査研究チームにより主要な学会,医師会,日本医学教育評価機構(JACME),それから患者の会など,多彩なところへのインタビューあるいはアンケート調査などを実施する予定にしております。来る医学・歯学教育指導者のためのワークショップでも事前アンケートを考えております。
  あとの2枚については,これまで申し上げたようなことを,全体的な事項と個別の事項についてまとめたものですので御覧になってください。
  医学からは,以上です。
【永井座長】  ありがとうございました。先ほど,ここで御質問をお受けするというふうにお話ししましたけれども,その前に卒前教育と関係の深い卒後教育につきまして,厚生労働省から御説明いただけるということでございますので,一緒に御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【渡辺医事課長】  厚労省医事課長,渡辺と申します。資料6-1と6-2に基づきまして,御説明をさせていただきます。
  資料6-1の2枚目になりますけれども,卒前・卒後の医師養成課程を巡る近年の動きということでございまして,医学部教育,医師国家試験,卒後臨床研修,専門教育,生涯学習ということで並べていってございますけれども,既に御案内のとおりと思いますが,臨床研修につきましては平成16年から必修になったということで,5年ごとに見直しがされているというのが下から二つ目ぐらいの四角でございます。
  医師国家試験につきましても,近年では,医師国家試験改善検討部会というのを4年に一遍程度設けまして見直しをしていっているところで,その翌年には出題基準の改定でお示ししているところでございまして,それぞれにつきまして文部科学省からもオブザーバーとして会議に御参加いただいているところでございます。
  めくっていただきまして,3ページ,4ページになりますけれども,医師国家試験改善検討部会報告書,直近のものがございますのでざっと御紹介をさせていただければと思います。昨年の3月に出たものでございますけれども,ポイントは大きく4点,1.出題数について,2.OSCEについて,3.コンピューター制について,4.医師国家試験受験資格認定について提言がされたところでございます。1番のところが一番大きいものでございますけれども,共用試験とか合格基準が統一されて,臨床実習も充実してきているところから,表のところが見やすいかと思いますけれども,一般問題については縮小していくことが可能ではないかと。ただし,丸3になりますけれども,保健医療論・公衆衛生等の一般問題の出題数は担保していくような見直しを行うべきじゃないかということになっている次第でございます。
  OSCE,コンピューター制,医師国家試験受験資格認定につきましては,引き続き検討ということになってございますので,ここでは省略させていただければと思ってございます。
  もうちょっと詳細説明になりますけれども,医師国家試験の出題基準はどのようなものかというのが4ページになりますけれども,平成25年版の概要がそこに書いてあるとおりでございます。こういうものをお示ししながら,国家試験を作っていっているということでございます。これが現在動いているものでございまして,次回のものは,今年度,3月中には取りまとめ予定ということになってございます。
  5ページ,6ページになりますけれども,今度は臨床研修の方でございますが,臨床研修の到達目標は,大目標といたしまして,臨床研修の基本理念に書いてありますような,2行半になってございますけれども,そういうところで整理をされているところでございます。幾つかのマイナーチェンジを重ねていってございますけれども,基本的には,5ページにございますような行動目標が6項目,経験目標がA,B,C,こういった目標で進められているという現状でございます。
  6ページになりますけれども,到達目標の評価について,平成25年の会議,臨床研修部会の報告書におきましては,少し見直し提案がされているところでございまして,キーワード的に申し上げますと,下線で引いてございますけれども,人口動態や疾病構造の変化にもう少し対応するようなものにすべしとか,入院医療から外来医療への移行ということも視野に置くべし,また診療能力の評価をさらに重視すべき,あるいは何らかの簡素化が必要というような提言を頂いて,32年以降の見直しに向けて今鋭意議論をしていただいているところでございます。
  その関連のもう少し詳細が7ページ,8ページになりますけれども,ワーキンググループを医政局長が主催で厚労省で進めているところでございます。本日お見えの田中先生,福井先生にもワーキンググループに御参加いただきまして,福井先生には座長を務めていただいて議論が進められているところでございます。開催状況は,8ページにあるところでございまして,平成26年8月から,現在28年2月19日の第9回まで進んでいるところでございます。
  まだセットでないんですけれども,資料6-2に移りますが,28年2月19日にワーキンググループで出された骨格案,研究班の方から御提言いただいているというような現状になってございますけれども,研究班の方からは,臨床研修の到達目標として,医師として基本的な価値観についてそこにありますような5項目,そしてめくっていただきまして資質・能力について8項目御提案を頂いているところでございまして,4ページのローマ数字2が臨床研修の方略,ローマ数字3が臨床研修の評価ということまで含めて御提案いただきつつありまして,平成32年度の見直しに向けて,鋭意議論いただいているところでございます。
  繰り返しになりますけれども,臨床研修の方の会議におきましても,文科省の医学教育課の方からオブザーバーで御参加いただいているという状況でございます。
  厚生労働省からの説明は,以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございます。それではここで,お二人の御説明につきまして御質問がございましたら御発言お願いしたいと思います。本日は,特に意見の集約を図ったり,何か決定するということではございませんので,御自由に御発言いただければと思います。また,共通の課題については,後ほど御発言いただければと思いますが,いかがでしょうか。
  山口委員,どうぞ。
【山口委員】  山口でございます。二つ質問がございます。
  まず,準備教育コア・カリキュラムについて,先ほど泉委員から,これを外してもいいのではないかというお話がございました。そもそもこれが入ることになった経緯というものを教えていただければと思います。先ほどの御説明では高校時代のことをもう一度ここで確認するというお話でした。最近,基礎学力の低下というようなことも言われていると聞いていますと,必要性があって入れられたのかと思います。でも現場では,そこまでやる必要はないということになっているのでしょうか。経緯と,これを外したときの問題点はどんなことが考えられるのかということが,まず1点目です。
  二つ目として,「医師として求められる基本的な資質」,これは患者の立場から見ても非常に大事なことが羅列されていると思います。ただ,これを具体化するためにどういうことがあればいいかというようなお話があったということは,ここに資質として並んでいたとしても,それを現場で実現していくことが具体的には難しいのかなというふうにお聞きいたしました。
  特に,倫理とか,患者中心の視点とか,社会性とか,こういったことを本当に学生さんに教えていくというのはとても難しいことだと思いますし,試験で養えているかどうかを判定することもなかなか難しいところではないかと思います。そういうことから考えると,具体化するために実際に教育の現場で苦慮していらっしゃる,ここに並んでいるだけではこういうものが足りなくて難しいんだというようなことがもし具体的にございましたら,教えていただければと思います。
  以上,2点です。
【永井座長】  では,佐々木さんから。
【佐々木企画官】  2点御指摘がございましたので,1点目の準備教育がなぜ入ったかということでございます。これを取りまとめられた高久先生の前で恐縮でございますけれども,もともと平成13年の3月におまとめいただいた報告書の中では,ちょっと読み上げになりますけれども,準備教育モデル・コア・カリキュラムについて,「医・歯学生が,医療人となる前に,一個の人として人間性や教養を身につけることは,近年の社会的要請となっている。しかしながら,どのような内容の教養教育を行うかということについては,各医・歯学生の人間性,各大学の特色・独自性に関わることもあり,本協力者会議においては整理を行わなかった」とありますが,同じ報告書の別冊の中で,「準備教育と臨床前医学教育の内容」というところの「医学の専門教育を開始するに当たっては,基礎科学とくに生物学などの概念・知識・技能が十分備わってなければならない。これらについては,高等学校の教育内容や,大学入学試験,教養教育の問題として議論されている」という文脈の中で,準備教育についても記載するというような整理を行ったものになっております。
【永井座長】  高久先生。
【高久オブザーバー】  よろしいですか,オブザーバーですが。最近は知りませんが,その頃は生物を高校で取らないで来る学生が結構多かったものですから,生物はどうしても教えないと困るというので,そこにかなり視点が置かれたと思います。
【永井座長】  はい,どうぞ,福島先生。
【福島委員】  よろしいでしょうか,福島です。すいません,その頃関係していたので。あの頃は,要するに教養教育を2年間と,専門教育4年間という形をどういうふうにしようかという議論がありました。そのときに,どうしても教養教育の2年間というのが,医学教育から見た教養教育というものでなかったので,あのときの議論というのは,医学教育から見て,今,高久先生がおっしゃったように,生物学で最低これが必要だとか,例えば物理学でも,生理学を学ぶためにどうしてもこういう概念が必要だということ,それと,あの当時は医学教育の中での行動科学という概念がなかったので,心理学系の行動科学系のものを教養教育の中でまとめていこうという考え方で,言ってしまえば,医学教育の方から求めた準備教育というものは,だから準備教育という名前になるんですけれども,準備教育が必要だということを見返したと。それが平成12年,13年の頃だと思います。
  でも,実際にそれから15年ぐらい時間がたってきたときに,例えば心理学系だとか行動科学というのは,むしろ医学の中で学んだ方が,患者中心という考え方だとか,チーム医療とかコミュニケーションということで視点が変わってきています。それと同時に,例えば物理学だとか化学だとかという領域のものも,実際には生理学,生化学というところで取り込んでいく。いや,むしろ臨床医学を考える基盤としてと言った場合には,基礎医学と教養教育,自然科学教育というのをもっと融合させていくべきであろうという考え方が出てきたと思います。
  そういう意味で,従来,医学教育から見て教養教育はこれをしてねという概念ではなくて,そして先ほど泉先生がおっしゃっていましたけれども,アウトカムという概念が出てきたときに,何も教養の先生は教養で独立するんじゃなくて,一人の医者を作っていく教育の共同者であり,チームですから,そういう意味ではそれを分けて考えるよりも,統合していていく方がアウトカムという卒業時の能力というものを作っていくには論理的だし,現実的ではないかということで,そういう議論が進んでいるということがあります。
  それからもう一つ,コンピテンスという言い方をしていますけれども,要は卒業時にこういう能力が必要だし,それからそれが臨床研修にこうつながるというのが,いわゆる学習成果とかアウトカムと言われるものだと思いますけれども,これはどうしても標語になってしまう。標語になったときに,標語では,実際に学生がその能力を身につけたかということをどうしても保証できないわけです。大変玉虫色なものですから。それを少なくともこういう能力,こういう力,こうやって測れる学習成果というものを羅列していこう,羅列していこうというか,それを挙げていこうと。たとえそれを全部出したからといって必ずしもアウトカムにはならないかもしれないけど,でも測れるものをちゃんと測れるように項目化していく。それは試験をしたり,能力判定して学生にフィードバックしてここが足りないよということが言えるためには,そういうコンピテンスというものを,たとえ不十分であっても作り始めた方がいいということで,こういう提案をさせていただいているということです。
  以上です。
【山口委員】  はい,よく分かりました。
【永井座長】  はい,どうぞ。
【泉委員】  2番目について。福島先生にかなりおっしゃっていただいた後で,もう本当に付け足しになりますが,二つ目の山口さんの御質問の「医師として求められる基本的な資質」の実質化をどうするか?,現場で何を一番困ってらっしゃるかということなのですが,一つが,今,福島先生に言っていただいたとおりの,少なくとも何か項目として示すということが大事だと思っています。現在は1ページにまとめられたものですので,実際にそれについてどういったことができるようになるかについて項目を示して,求められているものを学生や教育者に示すことが大切です。例えばですけれども,先ほど研修医,臨床研修の到達目標のところでは,資料6-2で御説明があったように,同じような項目として人間性の尊重,チームワーク,自らを高める,あるいはコミュニケーション,チーム医療といったように幾つかの項目が挙げられています。例えばですが,こういったものと整合性を取って,卒前にもこのようないわゆるノンテクニカルなスキルには何が求められているのか示すことが一つです。
  現場で何が一番困るかという質問に対しては,何といっても評価です。これらを評価する良い術がなかなかありません。あなたは態度が悪いから留年しなさいというわけにはなかなかいきません。チーム医療があなたはできませんでした,というふうに評価することは非常に難しいのです。実際の現場で,この医師として求められる基本的な資質の評価をどのようにするかというところまで改訂作業において話が及べば良いなと思っていますが,この辺に関しましては,今後調査研究チームの方に持ち帰って検討させていただきます。ありがとうございます。
【山口委員】  特に基本的な資質は,6年間にわたって,全体を通して教育していくという部分のとても重要な要素かなと思いますので,特にこの見直しのところでは力を入れていただけたらと思っております。
【泉委員】  是非そうさせていただきます。ありがとうございます。
【永井座長】  ほかにいかがでしょうか。釜萢委員,どうぞ。
【釜萢委員】  まず,泉先生にお伺いいたしますが,今日お示しいただきましたスライド番号の5番ですが,指導者が指導していただくのに大変御苦労いただいているということはよく分かります。これはもう昔からずっとそうだったわけですけれども,指導法,あるいは方略を明示する,それから資料と共通教科書の作成というようなことが書かれてありますが,現在は,医学教育においてコア・カリキュラムもそうですし,それに基づいてシラバスがあったり,かなりしっかりとした,少なくとも教えるべき範囲とか方向性については今きっちり示されていると私は理解しておりますが,さらに共通教科書ということについて議論が進んでいるのかどうかです。私自身の経験を振り返りますと,どの教授に教えてもらったかということは非常に大事で,その先生の全人格が講義に出てくるわけで,それを学生が受け止めて,自分はどういう医師になりたいと,あるいはならなければならないかというようなことを考えたように思いますので,そのあたりで共通教科書というのはどういうふうな発想になるのかなというのを1点教えていただきたいと思います。
  それから,渡辺課長さんにお伺いいたしますが,どういう医師を育てていくかということは,どのような医師がふさわしいかということについては,もう医学教育から,あるいは臨床研修,あるいは専攻医,その後どこかで途切れるものではなく,もうずっと一連の流れの中で,しっかりとそれぞれ身につけて一人前になってもらうということだろうと思います。
  その考えの中でしますと,卒前の教育と卒後の教育が別の方向を目指すなんていうことはあり得ないだろうと思うんですけれども,一方で,4年次の共用試験が非常に充実して,参加型の臨床実習がさらに充実する中で,卒後の臨床研修とダブってしまうというような面が出てきて,それをなるべくダブらないように前倒ししてできるものはやり,卒後の研修はまたさらに高みを目指すというような方向が医学教育で考えられているというふうに今認識しておりますが,そのあたりについての厚労省のお考えをお聞かせいただきたいと思います。その2点,お願い申し上げます。
【泉委員】  では,私から申し上げますが,これは指導者側の現場の方から出てきた意見だと理解しています。たくさん教えることはあるけれども,実際どういうふうに教えるべきか,今,指導方法が非常に多岐にわたっています。釜萢先生がおっしゃるように,教員の個性が出るというのは,それはもうどのような授業をしても非常に重要なことで,これを統一しようというようなことではないと思っています。ただ,最近,授業方法が非常に多様になってきましたので,一人がしゃべって学生がただ聞いているだけではどうしようもない時代ですので,グループディスカッションなのか,どういった形で教えるのが一番いいのかというような話なんだと私は捉えています。
  それから,共通教科書のことですけれども,結局,これだけある程度同じ内容を教えようということが決まっていますのに,実際には80医科大学で,別々の先生が各々の資料を作成するという,莫大な労力を割いておられるわけです。今これだけデジタル化して知を共有するということができる時代になりましたので,共有できるものは共有して,それぞれが活かして,その先生なりの教え方,使い方で授業をするということができれば,それは決して各先生の個性を摘むことなしに,ある程度決まった内容,しかも良い資料を使って教えるということが可能になるのではないかと,そんなふうに私自身は理解しております。
【釜萢委員】  どうもありがとうございました。
【渡辺医事課長】  厚労省医事課長です。2点目の御質問に関しましてお答えさせていただきますけれども,当然ながら,医学生,お医者さんは一人でございますので,シームレスなものとして進めていくと,臨床研修も卒前のことを見ながらシームレスなものとして進めていくというふうな認識に立ってございます。
  それで,当然ながら,卒前の臨床実習が充実されてくれば,卒後の研修もそのことを踏まえて見直しをしていくというスタンスにあるところでございまして,まさに卒前の状況等々も踏まえながら,現時点におきまして平成32年度の見直しに向けて臨床研修部会の方で議論を進めていっているところでございます。
【永井座長】  じゃ,奈良委員。
【奈良委員】  奈良でございますが,今の1点目と2点目と関連することですけれども,実はモデル・コア・カリキュラムと,国家試験の出題基準と,それから臨床研修到達目標,これを一覧表にしたことがございますけれども,それを見ると,かなり整合性は取れていまして,医学部ではどこまで教える,国家試験はどこまで教える,臨床研修はこういうことの到達がしっかりとリンクが取れていますということをまず確認したいと思います。
  ただ,ここで問題は,医学部でどこまで勉強しなければいけないか,その深さがモデル・コア・カリキュラムには出ていない点です。私も,平成13年のコア・カリキュラム策定の議論に参加しましたが,その折りにも共通のテキストを作ってはいかがかという意見が出ました。しかしながら,医学はどんどん発展しますし,教科書として規定するのは学習者に学習内容を制限してしまうことから,見送った経緯があります。ただ,考え直してみますと,学生がどこまで勉強すれば良いか,ある程度の指標を提示するが方が卒然-卒後の教育を一貫して実施するのに,必要ではないかと思っています。,コア・カリキュラムを御覧いただきますと,何々が説明できる,概説ができる,列挙できるなどと記載されており,どこまでを修得しておくのか,明確でないと思います。この辺りを今回の改訂で盛り込まれればいいかなと思っています。
【永井座長】  邉見委員,どうぞ。
【邉見委員】  邉見でございます。泉先生のスライドの今後の基本方針ですか,3のところに総量のスリム化とありますね。今の準備コアカリを減らそうというのもそういうところから出てきたのかなと思ったりするんですけれども,といいますのは,後ろの方が,我々が学生のときと違って,遺伝学も増えたり,MRIとか,診断学もエコーとかいっぱい増えています。それから分子標的薬とか,薬理学も随分様変わりしています。もう6年では無理か,8年やらんといかんのじゃないかと思うぐらい,例えば夏休みに休んでいなんですね,学生が。病院実習に来てくださいと言ってもなかなか来れない。みんなマッチングの面接にあちこち走っておると。私は,ボート部で瀬田川と琵琶湖で育ったんですけれども,最近の学生はもうクラブは余りできない。東医体,西医体も余り出られない。だから,非常にかわいそうなので,スリム化も考えなくちゃいかんのかなと思うんですけれども。
  ただ,先ほど高久先生がおっしゃった生物学を取っていないような人が医者になるというのはちょっと問題ですので,やっぱり私は,まずは準備コアカリの前の入試で医育機関80の大学が,ある程度の基準を作らないとまずいんじゃないかと。地学で医学部へ行くのはちょっと。物理,化学は必要,生物学も。地学で医者になるというのはちょっと問題かなと思ったりしますので,準備コアカリの前の時点でもうちょっと考えないと,この問題は解決しないんじゃないかと。
  最近,大事な患者心理学とか,コミュニケーション学とか,こういうものは絶対ここの準備コアカリでやっていただかなくちゃいけないですし,医療財政とか,社会保険制度とか,こういうのもちゃんと教えていただかないと,群馬大学みたいに保険収載されていない手術をいっぱいやって失敗するとか,いろんなことがありますので,その辺のところを余り削ってもいけないですし,なかなか難しいので,是非その辺のところをこの会議でやっていただきたいと思います。
【泉委員】  ありがとうございます。
【永井座長】  福井委員,どうぞ。
【福井委員】  今までの御発言とかなりオーバーラップするかも分かりませんけれども,大きな方針として,もし可能であればお願いしたいことが,何度か出てまいりましたけれども,卒前のカリキュラムと卒後臨床研修と,それから専門医の研修,生涯教育,やはり全て共通した大本のカリキュラムを用いれるようにできないかなというのが,提言といいますかお願いです。
  その上で,奈良先生もおっしゃいましたけれども,それぞれの項目についての深さが違うと。卒前で到達すべき深さというか高さが違って,卒後の臨床研修ではさらにこのレベル。それから,専門医のレベルではこのレベルというふうな,大きな目標は共通のものにして,到達のレベルを求める,それがそれぞれのステージで違うという作りになれば一番いいのではないかと思っています。
  それから2番目が,モデル・コア・カリキュラムと同じですけれども,渡辺課長が御説明されましたように,私たちは今,臨床研修の到達目標として,医師としての基本的な価値観と,それから資質,能力という言葉を使っていますけれども,今回はプロフェッショナリズムとかコンピテンシーというのを全面に出したカリキュラムにしたらどうかと考えておりますので,できましたらモデル・コア・カリキュラムとの整合性をとれる方向で議論が進めば,今後,今回の見直しで完全に統一したものはできないかも分かりませんけれども,将来の統一に向けて一歩を踏み出していただければありがたいと考えています。
【永井座長】  先に田中委員,どうぞ。卒後研修のこと。
【田中委員】  福井先生の今のお話にも重なりますけれども,要するにコアカリの改訂と,それから専門研修の時期と,それから臨床研修の改訂がこんなにシンクロナイズドされるタイミングってなかなかないと思うんですね。ですから,今,福井先生が言ったことは,是非,実現していただければと思います。
  そのときに,どこに合わせるかという話になりますけれども,やはり最終的には生涯教育で到達するところを基準に考えるのがいいのではないかと思いますので,この後,釜萢先生がお話しになられるかもしれませんけれども,医師会が出しておられるものが一つのベースにはなるのかなと思います。
  そこに,例えばもう少しこれを加えた方がいいとか,そういう議論があって,ナショナルスタンダード,ナショナルゴールみたいなものができるのがよいのではないかと思います。
【永井座長】  ありがとうございます。
  釜萢先生,資料の7-1から4まで,生涯教育について御提出いただいていますが。
【釜萢委員】  お時間を頂戴いたしまして,ありがとうございます。日本医師会で多くの皆様に御検討いただき,現在において取りまとめておりますものを今日は持ってまいりました。資料7-1,医の倫理綱領です。この内容につきましては,これまでの議論の中にみんな含まれておって,皆様に御賛同賜れることであろうと思います。
  それから,資料7-2は日本医師会綱領,医師会というものについて国民の皆さんに幅広く御理解を頂き,そして,御支援を賜りたいという思いも込めて,医師会綱領を作っております。
資料7-3が生涯教育制度であります。これは,医師はどのような部門で仕事をしておりましても生涯にわたって日々研鑽を積み,さらに,現在の新しい知見を取り入れて患者さんのために役に立つというためには,そういう教育を行うサポートをする仕組みが是非必要であろうという中で,なるべく効率的に限られた時間の中で医師がしっかりと生涯にわたって教育ができるようにということでこの制度を作っております。そして,医学が進歩しますし,また,社会からのニーズがそれぞれ変わってきますので,これを逐次改め,カリキュラムの内容を更新していかなければということでございます。
  今日持ってまいりましたのは,最新の平成28年度でありますが,資料7-3の4ページを御覧ください。カリキュラムとしては,この総論,症候論,継続的なケアということでございまして,最近のいろいろな知見も踏まえて作っております。それぞれの学習状況がきちっと進むように,e-ラーニングなども含め,セルフアセスメントがしっかりできるようにということでやっておりまして,きちんとそれが履修できたということが評価できるような体制になっております。
  12ページの日本医師会の生涯教育のカリキュラムというのは,このカリキュラムコードをきちっと付けまして,そして,まずこの内容を身につけてもらうということ。そして,生涯教育がきちっと行われているということで,16ページにこういう認定証を出しているということでございます。
  生涯教育のカリキュラムについて,また検討しておりますのが7-4でありまして,これがその目標をしっかり掲げて,パワーポイントのスライド番号で8番,総論のところからずっと内容が出てまいります。時間の限りがありますので省略いたしますけれども,これらの内容をしっかりとそれぞれが自分で履修することによって,必要な内容を更新して身につけていってほしいという願いでございます。
  もう一つ付け加えますと,日本医師会はかかりつけ医ということを,是非これが国民の皆さんに役立つしっかりしたものになるように進めておりまして,かかりつけ医というのは患者さんが非常に気軽に相談できるということ,そして,最新の医学の知識になるべく精通していて,そして専門医,あるいは専門の医療機関にきちんと紹介して差し上げることができる。そして,常に患者さんに寄り添って,地域医療や,あるいは保健福祉,そういうところにもしっかりと役割を担える幅広い能力を持った医師ということを求めております。これはそれぞれの医師の専門性,大学で何のどの分野を究めたということも,もちろんそれはそれぞれありますけれども,それを踏まえた形で地域に出てきて,また,地域の医療に携わっている医師が今の地域の医療を支えておりますので,それぞれ,日本の場合にはかなり専門性を持った医師が,地域において非常に役割を担っているというのが特色だろうと私どもは認識しておりますが,そういう形で,それぞれの専門性を踏まえた上でしっかりと地域で役に立つ医師がかかりつけ医として患者さんの役に立つということを目指しております。このための研修を,また,生涯教育を基本にして,かかりつけ医,例えば看取りの技術などについてなかなか学ぶ機会がなかったような方々が,しっかりと在宅の医療に携わるというための講習などをさらに強化した形で,かかりつけ医の研修制度というのがちょうど4月からスタートするということでございます。既にお話が出ておりますように,医学部に入った時点からのずっと生涯にわたった教育の大きな流れをまずお示しし,田中先生も御指摘いただいて大変うれしく存じますが,その中でそれぞれの時期,医学部,あるいは臨床研修などでの到達目標がそれに沿った形で示すことができれば,大変よろしいのではないかなというふうに思っております。
  お時間を頂きまして,ありがとうございました。
【永井座長】  ありがとうございます。
  では,守山委員,どうぞ。
【守山委員】  2点発言させていただきたいと思います。
  1点目は,先ほど北村先生と泉先生のスライドからありました「コアカリと,国家試験基準等との整合」という項目がございまして,これを是非とるべきであるという御発言があったかと思うんですが,それに対しまして奈良委員の方から,結果としてちゃんと整合性がとれているんだよというお話がございました。北村先生と泉委員の趣旨というのは,単に結果として整合性がとれているのみならず,お互いのクロストークといいますか,話し合って,コミュニケーションをとって作っていってほしいという意図というふうに私は感じましたので,そういったようなことは,今後,さらに卒前卒後のシームレスな教育という観点からもお願いできたらありがたいなというふうに思います。
  もう1点でございますが,先ほど統一した教科書ということもあるんじゃないかというお話がございました。これは,従来は何とか学,何とか学をそれぞれ単独に学んだ結果として,ちゃんと医師としての要件を満たす学生になっているはずという,そういう見込みで教育がなされてきたわけですけれども,それを反省してアウトカムを設定して,達成されたアウトカムを重視して評価をするというふうに変わってるということだと思います。ここで,要するにアウトカムを設定するということは,おしなべてどうしてもマニュアル化されやすいですね。何ができるということになりますので。
  ところが,それぞれの学問というのは100年,200年の歴史をもって独自に発達してきた,要するにサイエンスに基づいた蓄積によって作られてきたものでございます。ですから,そこの,例えば病理学,例えば組織学,あるいは生化学といった学問を,やっぱり体系的な姿といいますかこれまでの経緯,要するにもっと分かりやすく言うと教科書がいかに定まってきたかという根拠といいますか,そういったことをやはり理解することによって,それぞれの個別の知識というものが非常に深く理解できるようになるというふうに私は考えておりまして,したがって,いわゆるアウトカムを設定する縦糸と,それとオロジーと申しますか,それぞれの学問体系というものは横糸の関係で,それがある程度バランスをとった教育というものが必要なのではないかなと考えておりまして,どちらかゼロ・100にすると,医師国家試験と車の試験はちょっと違うと思っておりますので,その辺のバランスが必要なのではないかと考えます。
  以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございます。
  梶井委員,どうぞ。
【梶井委員】  今回の改訂は,非常に大事な時期に差し掛かっているというふうに思います。皆さんがいろんな意見を出されましたので,私はあえて言う必要はないかなと思うんですけれども,このカリキュラムにおいて知識とかスキルの部分へのアプローチは比較的明確だと思います。しかしながら,姿勢とか態度,ここのところをカリキュラムの項目にこう盛り込んであるからできますというのはなかなか難しいと思います。逆に,ここは医学教育の根源だと思います。そこのところが果たして今できているかということを,きちっと,それぞれの教育者がみずからに問い返さなければいけないのではないかと思います。
  プロフェッショナリズムという言葉があります。言葉だけが先行していないかと。みずからが本当にそれができているか,倫理をきちっと,自分が身につけて,本当にそういう立場で学生に接しているか。そこのところを,まず教育者がみずからに問いかける時期ではないのかなというふうに思います。
  ややもすると机上になりがちなこういう部分は,机上では困るわけですよね。そして,そのたびにいろいろなトラブルが起こっているというのが現状ではないかと思います。しかも,今度は大学から外に出て地域で教わる時間が今増えています。そうすると,背中を見てきなさいだけではなくて,地域の教育環境をどういうふうに作っていくかというところまできちっと触れていかなければいけないと思います。そういう意味での,泉委員がおっしゃったような,そういうときにはテキストをどうするんだとか,どういうようなスキルを地域で指導していただく先生方に求めるのかということは,きちっと盛り込んでいく必要があるのではないかと思います。
【永井座長】  ありがとうございます。
  時間の関係で,次に進めさせていただきますが,歯学教育について五島委員から御説明お願いいたします。
【五島委員】  資料5をお願いいたします。本来,歯学調査研究チームはチームリーダーが嶋田先生なんですが,今日御欠席のため,私,五島が務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
  資料,3ページからお願いいたします。第1回会議は平成28年1月25日に開催されました。協議事項といたしましては,モデル・コア・カリキュラムの改訂の方向性について,今後の進め方について討議がされました。改訂の基本方針についてですが,今回は親会議が未開催のため,第1回会議の報告を,今回,今後開催予定の親委員会で報告して検討する予定です。
  今回の歯学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂に関わる企画提案書について説明を行いました。改訂ないし検討すべき検証事項としては,診療参加型臨床実習の体系的・段階的な実施と,多様な歯科医療ニーズ等に対応できる歯科医師の養成という二つの観点が挙げられました。
  この日は文部科学省より,近年から昨今の医学に関する論点について,当日,追加提示がされました。また,前回,歯学チームリーダーであった荒木教授より,平成22年度改訂版における方針について説明がありました。平成20年度に文部科学省主催で開催されました「歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」において提言された三つの観点から改訂が行われたこと。
  まず1番目,歯科医師として必要な臨床能力の確保。2番,優れた歯科医師を養成する体系的な歯学教育の実施。3番,未来の歯科医療を拓く研究者の養成。それ以外について,4番として多様な社会的ニーズへの対応として,歯科医師として普遍的に求められる資質,医療安全,患者中心のチーム医療,これは医療分野における多職種連携ですけれども,などが挙げられ,全体の量的抑制に留意しつつ,可能な範囲で改訂されたいということでした。このように総量規制をかけましたが,基本的事項を外して先端的な内容を項目に入れても,実際の現場では必ず基本的事項を教えることから始めると。その部分を外してしまうと不要と勘違いされるので,全体としての教える量は増える。できる限り項目を増やさないように話し合ったが,バランスが難しい状況であったということでした。
  モデル・コア・カリキュラムはCBTとOSCEの出題範囲になっています。項目に余裕がなかったので少し包括的な項目立てにして,各大学の授業に合わせて,各大学が変えて教えられるような内容とした。医科と歯科の内容のすり合わせが必要であったという報告がされました。こうした前回の経緯を踏まえ,当日は今後の進め方として,改訂の基本方針について,改訂の日程,役割分担,あと,意見調査について話し合いました。
  改訂の基本方針についてですが,資料10,11を基に,1番として,診療参加型臨床実習の体系的・段階的な実施。あと,多様な歯科医療のニーズ等に対応できる歯科医師の養成。歯学教育の質向上のための施策の方向性,これは平成24年12月歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議まとめを含みます。これに基づいて,また,本日の合同会議の議論を踏まえて進めていこうということになりました。
  以上のとおり,実質的には研究チームとして当日始まりましたけれども,改訂の日程と役割分担は資料の12番目に示すとおりです。また,幅広く意見を頂くために,歯学教育モデル・コア・カリキュラム改訂に関わる意見調査の依頼(アンケート)を行っております。現在,関係部署に意見調査を行っており,現在のところ,共用試験実施機構歯学系CBT,OSCE委員,日本歯科医学会(専門分科会,認定分科会),あと,各歯科大学・大学歯学部にアンケートを送っております。
  今回,キャッチフレーズとして多様な歯科医療のニーズ等に対応できる歯科医師の養成ということを考えましたので,御意見を頂きたいと考えております。
  本日,特に議論いただきたい事項として挙げさせていただきました。まず,全体的な問題ですけれども,コア・カリキュラム,歯科医師国家試験,歯科研修医到達目標との整合性のために用語を整理していただきたいという,ある程度のすり合わせを行う必要があるのではないかということです。あと,歯科医師国家試験出題基準とのすり合わせ,多職種連携,地域包括ケアシステム,在宅医療等医学・歯学のすり合わせ。これは医学・歯学ともに共通の内容が含まれますので,大きな相違が認められないようにすり合わせが必要と考えております。
  前回,改訂後からの修正考慮依頼事項の検討。前回,22年度の改訂から,各団体から修正の依頼があったため,今回の改訂の際に以前の指摘事項についても検討を行う必要があると考えられます。グローバルスタンダードへの対応についてですが,これは医学と共通です。大学ごとにアウトカムを定めるよう促す必要があるのではないかということ。あと,グローバルスタンダードにおいては何を学ぶかではなく,どう学ぶかというのが重要と考え,このことを何らかの形で盛り込んではどうかということです。
  あと,個別の事項としましては臨床実習内容,これは歯学教育モデル・コア・カリキュラムの47ページに載っている水準表についてなんですが,診療参加型臨床実習の実態に合わせた水準に変更が必要ではないかということです。臨床実習内容に,現在の歯科医療に適合していない部分があると考えられますので,実態に合わせた水準内容に変更が必要と考えられます。
  あと,多職種連携の取組の強化,周術期口腔機能管理も含めた医療機関連携について。
  8番目,地域包括ケアシステムの構築,在宅歯科医療の充実。
  9番目,全身疾患と歯科医療,口腔状態の関連について。
  10番目,歯科法医学。死因究明,個人識別などに関わる業務に従事する警察などの職員,医師,歯科医師などの人材の育成及び資質の向上が求められており,教育体制の充実が必要と考えられる。
  11番目,準備教育に国際社会に対応できる人材育成に関する取組について。こちらの方は医学と共通事項として考えております。グローバル化した社会に実践的で高度な英語コミュニケーション能力で貢献できる人材を育成することが必要と考えられております。
  12番目ですが,臨床実習開始前までの基礎模型実習を含めた技能教育に関する到達目標についてです。参加型臨床実習を推進していく上では,基礎模型実習による技能教育が重要でありますが,現在のコア・カリキュラムはその点が明文化されておりません。前文にシミュレーター教育の重要性を記載されているのですが,臨床実習開始までの基礎模型実習を含めた技能教育に関する到達目標が不明瞭であり,現実にはOSCE課題の一般目標,到達目標により各大学で実習がなされておりますが,今回の改訂ではF領域,臨床実習の領域を見据えた技能,態度教育としての基礎実習の検討が必要と考えられるということです。
  以上,報告を終わります。
【永井座長】  ありがとうございました。
  それでは,ただいまの御説明に御質問をお願いいたします。
  はい,どうぞ。
【前田委員】  前田でございますけれども,質問というよりも,コアカリの改訂の基本方針が,例えば歯科の場合だと,スライド9ページのような,非常に各論的な内容になっています。やはり,私,これは医学と歯学が,医学教育,歯学教育をどうにか改善していきましょうというんでしたら,やっぱり医学が出されているスライドの3枚目でしょうか,こういったような基本方針を統一していって,議論していって,その後に各論の議論をしていくべきじゃないのかと考えていますけれども,いかがでしょうか。
【五島委員】  今回,改訂に関しては医科歯科でかなり共通部分ということが多いと思います。ですので,基本方針の方もグローバルスタンダードであるとか,国家試験出題基準との整合性,総量のスリム化,歯科医師として求められる基本的な資質の実質化,あと,世界への発信ですね。いろいろ共通するものが多いと思いますので,そこは御討議いただければと思います。
【前田委員】  やはりこれを統一した基本方針をもって,歯科の特有の課題とか,特に歯科も医科も同じようなグローバルスタンダードに歯学教育の認証評価の問題があるということになれば,当然ながら,その内容も,ちゃんと方針は一緒に合わせる。個別の事項は個別の事項で考えていくべきだと思います。
  そのほかに,やっぱりグローバルスタンダードということを考えたときに,歯科の場合はかなりアイテムベースのカリキュラム,モデル・コアになっている。やはり,先ほど来いろいろ御意見の出ている到達目標をきちっと合わせて,卒前,臨床実習,卒後研修の到達目標をきちっと明確にしたコンピテンスベースを明らかにすれば,改訂もやりやすくなるのじゃないかと思っていました。特に歯科の場合は,医科と異なる技能教育の比重が非常に高いわけですから,何度も文部科学省の方からの臨床実習の充実化ということがあれば,きちんとした臨床実習のところのコンピテンスをどうするかということにして,いわゆる卒業時の臨床の技能評価につなげていくという考え方が必要ではないかと思いますが,いかがでしょうか。
【永井座長】  いかがでしょうか。はい,田中委員。
【田中委員】  私,医科歯科大学で医歯学融和教育というのを4年前に始めたときの責任者だったので,その観点からお話しさせていただきます。
  この研究チームに医師も入っていてもいいように思います。そういう立場で,少し医学との接点を練っていかれたらよろしいのではないかと思います。昭和大学も医学部がございますので,そちらの先生でもいいかもしれませんし,私どももやってきましたし,あと,千葉大学とか筑波大学が多職種連携で随分たくさんやっておられますので,いろんなノウハウがもう蓄積されていると思いますので,委員構成にそういうこともお考えいただいたらいいんじゃないかと思います。
【前田委員】  議論していただきたい事項の優先順位をきっちりして,見た感じ,思い付きで並んでいるような感じがしているので,何を優先順位として挙げていくかということをやっていかないと,なかなか時間が足りないんじゃないかと思います。御検討をお願いしたいと思います。
【永井座長】  ほかにいかがでしょうか。はい,どうぞ。
【関本委員】  関本です。
  医科の方と重複するかもしれないんですけれども,1年に1回,歯科医療振興財団というところが臨床研修のプログラム責任者講習会というのをやっておりますけれども,全国の施設からプログラム責任者がカリキュラムを持ち寄る,あるいは新しいカリキュラムを作っていくんですが,その大半がモデル・コア・カリキュラムと重なるんですね。極端なときには,臨床実習開始前までの到達目標までおりていくというようなことも少なくないんです。これはやっぱり,先ほどから何回も出ていますけれども,モデル・コア・カリキュラムと臨床研修の到達目標にすみ分けといいますか,一貫性がないんだろうと思いますので,今回,いい機会だと思いますのでそこはきっちりしていただいて,モデル・コア・カリキュラムの方にも臨床研修との関わりといいますか,つながりを書いていただくと。
  それから,今各施設が厚労省から出している到達目標,習熟コースと取得コースですね,これを参考に各施設が作っていますので,そちらのガイドラインといいますか,コースの方にもモデル・コア・カリキュラムとのつながりを記述していただくということで,お互いにその関連性が少しはっきりしてくるのではないかと思います。よろしくお願いしたいと思います。
【永井座長】  ありがとうございます。
  はい,どうぞ,斎藤委員。
【斎藤(隆)委員】  私もこのチームの実施体制の委員の1人でございますので,今,前田先生と関本先生がおっしゃったこと,全くそのとおりだと思いますが,先ほど来,医学部の先生方のお話の中にもありましたように,モデル・コア,それから出題基準,それから卒後研修の到達目標,それを生涯研修を最終目標としたところに合わせてそれぞれの到達レベルを設定していく,そういった努力が今後必要になってくると,歯学系の方でも当然そう思っております。ですので,先ほどもお話がありましたけれども,深さをどこまで,今は適切に何々ができるというような単純な表現でそれぞれの項目が表現されておりますけれども,どこまでできるのかというのを今後設定していく必要があるのだろうと思っております。
  以上でございます。
【永井座長】  柳川委員には生涯教育について資料を御提供いただいていますが,御説明いただけますでしょうか。
【柳川委員】  はい。貴重なお時間を恐縮です。また,お時間が少し押していると思いますので簡単に申し上げます。
  私ども日本歯科医師会から提出させていただいた資料は,右肩の9-1から3でございます。9-1は,先ほど永井先生からもお話がありましたが,歯科医師の倫理綱領,これがお題目にならないようにしたいというのは常々考えておりますが,今回のコアカリの改訂に当たっても医科歯科共通のキャッチフレーズの中にも,国民に求められる倫理のというところがございます。まさにそのとおりだと思います。かつては考えらないような事象がいろいろ起きていますので,不文律ではない,成文化したものが必要で,それに即した教育の内容が問われるということだと思います。
  9-2が,私どもの生涯研修のグランドデザイン二つでございますが,少し前のものです。それから,現在行われている生涯研修の実施要領が一番後ろの9-3ですのでお読み取りをいただきたいと思いますが,もともと日本歯科医師会は生涯研修,大学の教育と卒業直後の研修,それから生涯研修,合わせて一貫性が必要だろうということで,昭和39年ぐらいから検討を始めまして,現在の単位数も決めたものを始めたのは昭和63年からでございます。当時はOSCE,CBTはなかったんだろうと思いますが,現在,会員のほぼ80%がこの日歯生涯研修に参加していて,人数で言うと4万5,000人から5万人ぐらいでございます。また修了の一定の基準を設けておりますが,その基準に達しているのが45%から50%ぐらいでございます。
  一番後ろの実施要領の,前の前のページに,このグランドデザインについての検討,グランドデザインという限りでは,そうしょっちゅう変えるものではないんですけれども,学術担当の委員会で見直しをしておりまして,課題が幾つかございます。これはページ数が打っていなくて恐縮ですが,「おわりに」の少し前のところが現状の課題でございます。盛んに出ている地域包括ケアへの参画ということにつきましては,医科も歯科もコミュニケーションスキルのことは触れられておりますが,実際になかなか本当に難しくて,多職種協働といいながら,そこに普通に入っていける歯科医師の養成ということは,学部教育のみならず,私どもの生涯研修でもきっちりやらないと難しいだろうと考えています。
  それから,座長がおっしゃった新しい時代に即したということで申し上げますと,在宅歯科医療もそうですし,社会ニーズが変わっておりますので,そこのところに順応したものをやっていく。さらに,歯科の方は専門性に関する方向付けが若干遅れておりますが,日本歯科医学会と連携して,今,第三者機構の設置であるとか,専門性の整理に着手をしているところでございます。
  以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございました。
  はい,どうぞ。
【西原委員】  まず,五島委員のお話になった件について。泉先生からキャッチフレーズのところで,医科歯科共通について,歯科からの提案ということも含めてお話がありました。もう一つ,五島委員のスライドで,5ページ目にあえて1枚,近年から昨今,医学に対する論点,文部科学省より当日追加提示ということで3項目ほど出されている項目がございます。これをモデル・コア改訂に取り入れようとしたときに,どうしても今までのマイナー・モディフィケーションでとどめ,項目をそろえて,そして,増えないようにという総量規制の中での小さな考え方で動かそうという感じがします。このような当日追加提示のことを検討するような必要があったのではないかと思います。
  それともう一つ,今,歯学教育の特有の問題ですが,一気通貫で入学から卒業,そして研修教育,生涯教育の流れが医学ほど明確に定まっていないという環境にあります。まさにこの時期のカリキュラム,モデル・コアの改訂は非常に大事ですし,国家試験の改訂もあった時期ということを考えると,先ほど,こちらの専門研究委員会という立場で委員長が基本的な方針というのを言ったところで,ここからもう一度全体的に作り直す作業をすることから始めないとという気がしています。
  もう一つ,医学と歯学のメンバーの数を見ると,歯学ではいろいろな分野の方に入っていただいたメンバーによる再構築も,可能ならば嶋田先生とともにされた方が,より充実した活動になるのではないかという気がいたしました。
  以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
  いかがでしょうか。はい,山口委員。
【山口委員】  先ほど,どこまでという深さのお話があったんですけれども,このコアカリをどういうふうに展開していくのかというのは基本にして,各大学がどういうふうに教育に反映させていくかは大学自身に委ねられていると思います。その中で,いろいろと歯科に関する厚労,文科の会議に関わらせていただいていて,歯科は,医科とは比べものにならないぐらい――といったら言い過ぎかもしれませんが――かなりばらつきがあり,大学間の差が激しいと実感しています。
  そういった中で,このコアカリの中で一定ラインをある程度高めていく工夫みたいなことができるのかどうかというのが一つお聞きしたいことです。それから,例えば医科では全国医学部長病院長会議という一堂に会するような会議がありますが,歯科ではなかったということで,今,一堂に会する集まりはまだ緒についたばかりというお話も伺っていますが,そういったところで,こういった一定ラインの底上げみたいなことの話が出てきているのかどうかということをお尋ねしたいと思います。
【永井座長】  では,江藤先生からどうぞ。
【江藤委員】  ばらつきかあるから,もうちょっとレベルアップの方法を考えろと,そういうことですよね。
【山口委員】  はい。
【江藤委員】  医科の方は,スチューデントドクターとして,一応全国の,それは推奨の合格ラインですけれども,本年度から――本年度からというのは平成27年度から実施しております。歯科についても,可及的速やかにそういったでこぼこを直すべく,スチューデントドクターというのか,スチューデントデンティストというのか分かりませんが,そういった措置はしたいと考えております。
【永井座長】  奈良委員,どうぞ。
【奈良委員】  今回議論されていることは,日本だけではなくて,世界に共通した課題です。今回の改訂の趣旨説明でもグローバルスタンダードという言葉が出ていますが,国民が安心して掛かれる医師,歯科医師を作るためにはどういう教育が必要かということが世界で議論されています。そこでコンピテンシーという概念が出てきているのです。つまり,医学部なり,あるいは歯学部でどういう教育をして,学生が学び,卒業時にどういった能力を身につけておくべきか,すなわちコンピテンシーを明確にしておくことが国際基準で求められています。医師,歯科医師として必須のコンピテンシーが明記されれば,自ずとカリキュラムにも反映されることになります。
  医科の方では,資料8にありますように,日本医学教育評価機構(JACME)が昨年12月1日に発足し,高久先生に理事長として御就任いただいています。ここでの評価は,決して各医学部が同じ教育を行うことを推奨するのではなく,各大学医学部がどのような医師を育てるのかミッションを明示し,それを達成するのにどのような教育プログラムを提供し,実施して成果を挙げているかを評価しています。卒業の時点で学生がしかるべきコンピテンシーを修得し,卒後の研修さらには生涯教育にもつながることを評価しています。
  評価というと,よくマイナスのイメージにとられがちですが,医学教育評価機構の評価では,グローバルスタンダードを踏まえた日本版基準で各医学部が自己点検を行い,さらに外部委員とディスカッションすることで,医学部の教育の質を向上させるのに貢献しています。これまで11校でトライアル評価を実施していますが,受審された医学部全てで,評価を受けることで教育の改善につながったと明言されています。医科でも歯科でも求めるべきコンピテンシーを各大学が決め,達成するためにはどういうプログラムを持つかということを議論していく必要があると思います。そのためにもモデル・コア・カリキュラムがどういうふうに各大学の教育プログラムに組み入れられているかということを議論すべきだと思います。
【永井座長】  共通の問題に入ってきましたので,この際,資料8について,奈良先生,もう少し御説明いただけますでしょうか。
【奈良委員】  承知しました。
  資料8を御覧ください。タイトルに「2023年問題」と書いていますがアメリカ・カナダ以外の国の医学部出身者に対して,アメリカで医業を成す場合に,その資格審査をするECFMGという機構から,「2023年度以降は,国際基準で認定を受けた医学部の出身者にしか資格を与えない」という通告があり,2023年問題と言われています。ただ,ECFMGの通告はあくまでもきっかけに過ぎず,これを機に,日本の医学教育を――日本の医学教育は当然進んでいますので,国際水準よりはるかに上回っているのですが――見直して,より高めることに視点を置いています。1回きりの評価ではなくて,継続して評価し続けることで,社会,医学,の進歩当に対応した医学教育の質向上を図るのが日本医学評価機構の主なミッションであります。全国医学部長病院長会議,文部科学省,厚生労働省からも御支援をいただき,医学がこぞって参加して医学教育の質保証に取り組んでいる訳です。今後の活動としては,日本の医学教育を良くすると同時に,国際的にも発信することを目指しています。このため,世界医学教育連盟に当機構の評価体制を認知してもらうことを計画し,進めています。
【永井座長】  これは,歯学教育についてもかなり参考になるシステムになると。
【奈良委員】  なると思います。医科の方は,グローバルスタンダードという明確なスタンダードがあり,我々はそれに基づいて行っています。歯科にはそういったグローバルスタンダードがないと聞いており,評価基準策定から始めないといけない点が大変とは思いますが,医科での動向を是非御参考にしてください。
【永井座長】  はい,どうぞ。
【田上委員】  田上です。
歯科の方も,こうした評価については既にトライアルが行われているという状況は御承知のことかと思います。あと,各世界の地域において教育の標準化ということが議論されている状況でして,日本の近いところですとASEAN諸国でかなり統一的な方向が打ち出されつつあるというところですが,なかなか国の事情もありましてまとまりにくいというのは,日本の国内を見ての,大学それぞれで少し状況が違うのと似たようなところかと思われます。そういう中で,やはりこれまでに行われていますようなコアカリという考え方は非常に共通的に活用できるところかと思います。
  そういう中で,またちょっと先ほどの歯科の話に戻りますけれども,まだ少し歯科の報告書については準備が十分に整っていないようにも見受けられますので,このあたりは国家試験の出題基準等との整合性をとっていくという大きな一つの柱と,歯科については歯科に特有の臨床教育,あるいは卒前の臨床教育,あるいは臨床実習の前の臨床的な技能評価というところを優先的に考えていただくのがいいのかと,そのように思いました。
【永井座長】  ありがとうございます。
  ほかにいかがでしょうか。
  田中委員,どうぞ。
【田中委員】  コアカリでは,多分,評価のことも議論されることになるんだろうと思いますけれども,例えば臨床実習でどの程度のものを経験したかということが学生一人一人について履歴として残っていけば,その後の臨床研修でもそれを踏まえて臨床研修のトレーニングが効率的に行われるというふうに思いますので,先ほどナショナルゴールの設定を是非考えていただきたい,そうあってほしいというふうに申し上げましたけれども,それとペアになるような形で,1人の学生がどこまで経験し,そして臨床研修医になったときにどこまでそれが発展していったかというような,その記録が残るような仕組みも,できれば考えていただきたいと思います。
【永井座長】  ありがとうございます。
  邉見委員,どうぞ。
【邉見委員】  もう共通の問題でいいですか。
【永井座長】  はい,どうぞ。
【邉見委員】  ここには,医科歯科ともに教育学のリーダーの方たちが多いと思うんですけれども,大学には教育と臨床と研究という三つの業務がありますね。しかし,教育で教授になった人というのはほとんどいないわけです。ほとんどが臨床の力とか研究論文で教授になっているわけです。だから,先ほどのコアカリの医学の,総量のスリム化の次にあります指導方略の提示という,方略というのをちゃんと知っている教授がいるかどうかというのは,これは大変難しいことで,私の関連している大学では,12月29日から1泊2日でこれの勉強をしています。ほかのことも勉強しているんですけれども,こういう医学教育の。だから,こういうのをみんなほかの大学はしているかどうかというのをお伺いしたい。せっかくの偉いオピニオンリーダーの方たちがいっぱいおりますので,分かったら教えていただきたい。
【永井座長】  奈良委員,どうぞ。
【奈良委員】  教員の教育能力の件ですが,これは教員研修FDとして,ほぼ全国の大学医学部で行われています。実態は,全国医学部長病院長会議の調査に報告しています。ただ,FDには1泊2日かけてワークショップ形式で教員が相互の教育能力を高めるものから,ただ単に講師を招いて講演だけというのもあります。FDの内容も高めることは必要と思います。
  なお,各大学のFD以外にも,一つ富士山のふもとで医学教育学会が主催するいわゆる富士研ワークショップ,文科省が主催している医学教育指導者ワークショップなど,教育能力を高める機会が多く設けられています。これらに教員が参加することで,かなり教員の教育に対する意識は変わってきていると思います。
  先ほど山口委員からもプロフェッショナリズムをどう評価することかという御質問がありました。今,国際的に診療参加型の臨床実習が重視されています。その目的は,ただ単に知識とか技能を身につけるだけではなく,コミュニケーション能力であるとか,あるいは患者さんをどう思いやる,そういったことを学ぶことにあります。診療参加型臨床実習以外にも地域医療実習などが行われているのも,そうした目的があります。プロフェッショナズムや医療倫理などの評価をどうすれば良いかは難しい課題です。これには,ただ単に指導する教員からの評価だけではなく,例えば患者さんなり,地域住民だとか家族だとか,あるいはナースだとか,いろんな職種の方から360度評価を受けることも重要だと考えます。先ほど申しました日本医学教育評価機構でも,臨床実習のあり方,学生の評価等については,各大学と十分にディスカッションし,評価して医学教育に取り込まれるように推奨しています。
【邉見委員】  そういうお答えを頂いて安心しました。我々のときでは考えられなかったことで,非常にありがたいことだと思います。
  ただ,この間,特定機能病院の見直しのときに,やっぱり医療安全の担当副院長というのを置くことに決まりましたけれども,それは日本医師会の中川副会長なんかの御意見で,次の教授候補のような人を置いてほしいと。窓際族みたいな,王道から離れたような人では困るということを言っていましたから,教育も,教授になるような人は先に方略とか,教授というのは人を教える仕事ですから,教えることを知らずして教授になっちゃいかんわけです。だから,先にここを受けた者でないと,もう教授になれないような,そういうふうな体制にしないといかんのじゃないかなというのが私の意見です。
【永井座長】  江藤委員,どうぞ。
【江藤委員】  今の御意見と全く違う話ですが,コアカリを2001年に作って,それから2003年に共用試験のトライアルが始まって,2006年から正式実施になりました。2001年のコアカリから始まって,ずっと一貫して目標としたところは,医学も歯学も診療参加型臨床実施の充実です。コアカリもできました,それから共用試験としてのCBTもOSCEも,皆様方の御協力で軌道に乗りました。ただ,依然として,診療参加型の臨床実習は充実していないという評価があります。しかも医学の方は2023年問題が出てきたわけです。ですから,今回の改訂においても,診療参加型臨床実施の充実ということは,大きな眼目にしていきたいと思います。
【永井座長】  ほかに。はい,南委員,どうぞ。
【南委員】  もう最後になりますので,総合的なことを申し上げます。邉見先生が先ほど言われたことに近いんですけれども,やはり,一般の国民にとっては医学教育とか歯学教育という話は身近なことでない上,非常に難解で分かりにくい。医学部が6年制であることや,どういう教育内容になっているのかということなど,普通の国民は余り知らないのが現状なのです。教育・研究も総体として,「医療」という形でしか理解されず,医学部は医師,医療人を養成する場というようなイメージでしか一般の方に映らないわけですね。大学病院に対して求められるのは,先ほど御指摘がありましたように,やはり大学には研究と診療と教育という三つです。どれも欠くべからざる大事なことなのですけれども,やっぱり一般の国民には,診療というところでしかなかなか映りにくいものがある。
  そういう状況の中で,新聞社に30年以上の時間を過ごしてきた者としては,このモデル・コア・カリキュラムの今回の改訂に至るまでの十数年の間に,世の中自体が物すごく大きく変わったこと,人々の価値観も変わったことを指摘しておきたいと思います。それを受けての改訂ということになるわけなので,変わったことをきちと踏まえる必要があります。人口構造の大幅な変化とか,これから訪れる急激な人口減とかが大きな前提ですけれども,加えて世の中の価値観も,よく言われるダイバーシティーの尊重は,医療に関しても女性と男性の性差を加味した医療をやってほしいだとか,年齢に応じた,特に高齢者を尊重した医療の在り方を検討してほしい,終末期の問題を整備してほしい,などいろんな要望が起こってきております。
  そういう中ですので,是非このモデル・コア・カリキュラムの改訂は,やはり将来を見渡してよき医療人,国民にとって安心な医師,歯科医師をを育てていただくためのものでなければなりません。しかし,その足元にあるのは医学,歯学であり,な実は医学と医療というのは続いていて不可分なものではありますけれども違うものなのです。ここで議論すべきはあくまで医学教育であり,歯学教育だということです。そのことを前提にして申し上げたいのですがスリム化とは,何を残して何を切るのかというところ,これをそれぞれのグループで十分に議論をしていただきたいなと思っております。どうぞよろしくお願いします。
【永井座長】  今の点,私も非常に強く感じていまして,社会が激変しています。社会保障,保険制度もそうですし,地域包括ケア,あるいは医療経済まで含めて,社会システムの理解に基づくプロフェッショナリズムが重要です。是非その辺も御議論いただければと思います。
  泉委員,どうぞ。
【泉委員】  関連して,手短になんですけれども,できるだけ臨床実習を診療参加型にしたいということの,最も医療者側の足かせないしは萎縮している点が,やはり医行為の問題だと思うのです。もっともっと患者さんサイド,あるいは医師法も解釈だけではなくて法律を変えることによって,患者さん皆さんからの理解を得て,教育という観点で医行為に関して寛容というか,理解を頂かない限り,そこに非常に萎縮が生じているのが現状ですので,是非そういった点も総合的に御議論いただきたいと思っています。
【永井座長】  大体時間になりましたが,最後に一言,何か御発言の先生,よろしいでしょうか。
  はい,どうぞ。
【五島委員】  今回のコアカリ改訂におけるキャッチフレーズなんですけれども,医科歯科で共通ということで,医学部の方から提案のありましたキャッチフレーズということでよろしいのでしょうか。多様な医療ニーズに対応できる医師,歯科医師の養成という文言の方でよろしいでしょうか。
【永井座長】  江藤委員,どうぞ。
【江藤委員】  それは,今,泉先生がおっしゃったように,最初,歯学部から原案が出て,それを医学部の方で,医学部も包含できるような形にして,それで共通化ということでございますので,医学の方に出ているキャッチフレーズで行きたいということでございます。
【永井座長】  またさらに御議論いただければと思いますので,よろしいでしょうか。
  それでは,意見交換はここまでといたしまして,各調査研究チームにおかれましては,ただいまの御意見踏まえまして,医学の方は齋藤委員長,歯学は前田委員長を中心に各専門研究委員会で御審議いただき,骨子案をまとめていただき,次回のこの委員会で議論をしたいと思います。
  では最後に,事務局から今後の予定等,御説明をお願いいたします。
【佐々木企画官】  資料2を御用意ください。手短に3点申し上げます。
  資料2の(3)にございますとおり,今後の予定はこのスケジュールで進めたいと考えております。その日付が埋まっていないもの,日付が埋まっているものの詳細につきましては,追って事務局から御連絡いたします。これが1点目です。
  2点目が,本日の議論でも医学と歯学がお互いに相互乗り入れ的にということがございましたので,資料2の真ん中の右側にありますとおり,医学教育チーム,歯学教育チーム,そして齋藤委員長の医学教育の専門研究委員会,前田委員長の歯学教育の専門研究委員会,それぞれ,相互乗り入れ的にできないかということの工夫をしたいと思います。これが2点目です。
  3点目ですけれども,机上の資料ファイルにつきましては次回以降も使用しますので,重いので持ち帰ることもないと思いますが,机の上に置いていただければと思います。
  以上でございます。ありがとうございました。
【永井座長】  はい,ありがとうございました。
それでは,本日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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