モデル・コア・カリキュラムの改訂に関する専門研究委員会(平成22年度)(第5回) 議事録

1.日時

平成22年6月16日(水曜日)15時00分~17時30分

2.場所

旧文部省庁舎 第2会議室(旧文部省庁舎2階)

3.議題

  1. 調査研究チーム(委託先)における検討状況について
  2. その他

4.議事録

【江藤委員長】  それでは,定刻になりましたので,ただいまからモデル・コア・カリキュラム改訂に関する専門研究委員会(第5回)を開催いたします。

 本日の委員会は,前回までの歯学・医学合同の会議ではなくて,歯学教育単独の開催となります。

 本日は,都合により,辻本委員,邉見委員が欠席でございます。

 また,前回までの委員会に引き続きまして,聖路加看護大学学長の井部俊子さん,社団法人日本病院薬剤師会会長の堀内龍也さん,まだお見えになっておりませんが,この2人にゲストスピーカーとしてお越しいただいております。本日の会議全般を通じまして,何かお気づきの点がございましたら,適宜ご発言をしていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。

 それでは,事務局から本日の配付資料の確認をお願いいたします。

【唐沢課長補佐】  委員の先生方には,本日の配付資料の一部につきまして,先週金曜日にメールでお送りしておりますが,その部分につきましては内容に変更はございませんが,改めまして資料の確認と,本日は具体的な議論をしていただきますので,資料の構成等についても少し詳しく,この場をおかりしてご説明申し上げたいと思います。

 茶色い封筒をお出しいただくと議事次第の後に資料1から資料5までの資料と,参考資料1,参考資料2,そして,委員の皆様方の机上には,その後に机上資料として2種類の資料をお配りしております。順にご紹介申し上げます。

 まず,1枚目が議事次第でございます。

 1枚おめくりいただくと,右肩に資料1と付した今回のモデル・コア・カリキュラム改定に係る基本方針【修正版】,これは9月30日に開かれました連絡調整委員会との合同会議でご審議いただいた内容について,その後の修正を経て,各委員長の合意が得られたものでございます。後ほど江藤委員長より変更点についてご紹介いただけたらと思います。

 続きまして,右肩に資料2と付された資料でございます。これは本日の議題に関連いたしまして,歯学教育に関する調査研究チームのリーダーであられる荒木委員からご説明いただく歯学教育モデル・コア・カリキュラム改訂に向けた検討状況に関する資料,左上ホチキスどめで合計7ページにわたる資料でございます。

 引き続きまして,右肩に資料3と付され,左端に2つホチキスどめをしてある両面の資料でございます。これは今年の6月16日に開催されました連絡調整委員会と専門研究委員会の合同会議以後,9月30日までに計3回の会議を開催いたしましたが,その会議において出た主な意見をまとめたものでございます。なお,まとめる際には先ほどご紹介申し上げました資料1の今回の改訂に係る基本方針の4つの柱に沿いまして,おおむねその4つの柱に関連した意見ということで整理させていただきました。また,整理に当たりましては,7月28日に開催いたしました医学・歯学教育指導者のためのワークショップにおけるグループ別全体報告会の総合討論・講評におきましても,この柱に沿った観点のご意見等がございましたので,この資料3におきましては,四角囲みでそのご意見等も含めた形で整理させていただきました。

 引き続きまして,右肩に資料4と付されたものでございます。この資料に関連しましては,前回までの会議におきましても関連団体からの要望書等々という形でご紹介させていただいたところでございますが,その中でとりわけモデル・コア・カリキュラムに係る内容に少し焦点化したような形で整理したものが資料4でございます。具体的には,目次にございますように1から8,これは関係者からのヒアリング,さらには要望書としていただいたもののエッセンスをまとめたもので,資料の1ページから8ページまで記載させていただいております。また,資料9ページ以降,参考と付されているものは,直接このモデル・コア・カリキュラム云々といった内容が記載されているものではございませんけれども,医学教育,あるいは歯学教育の改善等々に関連した提言ということで,参考までに添付しているものでございます。

 資料3,資料4については,事前にメール等でもお送りしておりますが,これまでにこういったご意見,あるいは要望等があったということで,参考までにお示ししているものでございます。

 資料5,今後の検討スケジュールについて(案),これは本日の議事の最後でご紹介申し上げます。

 引き続きまして,参考資料1の前にカラー版でA4横長の歯学教育モデル・コア・カリキュラム(概要)というものを添付させていただきました。これは今回,歯学教育のモデル・コア・カリキュラムの中身のご議論をいただく前に,なかなか分厚い資料でもあり,構造がわかりづらい部分もございますので,事務局で現行の歯学教育モデル・コア・カリキュラムの概要を整理させていただきました。本日は,これに関連した細かいご議論等もあるかと思いますので,この場をおかりして,この概要,コア・カリの構造について簡単に私からご紹介申し上げたいと思います。

 まず,この概要の上の囲みにございますが,歯学教育モデル・コア・カリキュラムというのは,すべての歯学部学生が卒業時までに共通して修得すべき必須の基本となる教育内容を一般目標として,また,あわせて到達目標を明記したものでございます。また,内容量といたしましては,学生の履修時間数のおおむね6割程度を目安としており,残り4割程度は各大学が特色ある選択制カリキュラムを実施することを念頭としたものでございます。

 全体構成といたしましては,下の図にございますように,まず緑で囲っている歯学教育モデル・コア・カリキュラムでございますが,全体構成の中では冒頭に歯科医師として求められる基本的な資質というのが7つ掲げられております。そのほか,構成としてはAからFまでの項目,さらに臨床実習の項目で構成されております。具体的な教育をどの段階でやるかということにつきましては,AとBに関することは,基本的な事項といたしまして,臨床実習前,臨床実習全体を通じて学習するような内容として,また,CからF,具体的には社会と歯学,生命科学,歯科生体材料と歯科材料,臨床歯学教育に係るものはどちらかというと臨床実施前教育にかかわること。さらに,臨床実習に関する項目で構成されております。

 さらに,歯学専門教育に至る前段階の生物学をはじめとする基礎科学につきましては,別途,準備教育モデル・コア・カリキュラムとして基本となる内容が明記されているところでございます。なお,この準備教育モデル・コア・カリキュラムにつきましては,医学教育のモデル・コア・カリキュラムと共通の内容になってございます。

 さらに上段の5つ目のポツにございますけれども,学習項目AからF,つまり臨床実習以外の部分でございますけれども,その内容の中で臨床開始前に修得すべき内容についてはアスタリスクの印で明記されているという状況でございます。後ほど本文にも記載がありますけれども,逆に言えば,アスタリスクの印以外の内容は臨床実習開始前にとどまらず,卒業時までに修得することが適当なものという全体の整理になっております。

 さらに,臨床実習につきましては,この歯学教育モデル・コア・カリキュラム,特にABCD等のアルファベットは臨床実習に関しては付されておりませんけれども,全般的な臨床実習に係る一般目標と到達目標,さらに別表といたしまして,臨床実習として実施すべき内容が水準1から水準4として提起されております。このコア・カリキュラムにおいては,そのうち水準1がコアとして実習すべきこと。逆に水準2から4に関しましては,選択的な実習として実施すべきという整理がなされているところでございます。

 その次に右肩に参考資料1と付された歯学教育モデル・コア・カリキュラムの本体をあわせてごらんいただけたらと思います。少し大部な資料でございますが,実際にはお手元にファイルとして緑色の冊子でお配りしておりますけれども,本日の会議の使い勝手を考えまして,関係部分を抜粋したものをお配りしております。

 参考資料1をおめくりいただければ,もともとの冊子のページの振り方がイレギュラーな形になっているので,この抜粋版も少しイレギュラーな形でページを付させていただいておりますが,まず,目次を1枚おめくりいただくと,下にP1とページを付した部分からP8という部分,ここまでがおよそ前文に相当するような部分でございます。P8という部分の後に目次を付した後に,算用数字で1からページを付しており,これが歯学教育モデル・コア・カリキュラム本体という構成でございます。

 念のため,この内容について簡単にこの場をかりてご紹介申し上げたいと思います。

 まず,前文の部分のPと付された部分のP3をごらんください。中段に2,「歯学教育モデル・コア・カリキュラム-教育内容ガイドライン-」と各歯科大学・歯学部固有のコア・カリキュラムとの関係とございますが,その上から4行目あたりを見ていただければと思いますが,4行目中段にございますが,このガイドラインというのは,すべての学生が履修すべき必須の教育内容を精選し,必要最小限度の内容を提示する方針。ここに記載された教育内容を,どの程度の時間数または単位数で,また,どのような授業科目の中で履修させるかは,各歯科大学・歯学部がその教育理念に従って決定すべきもの。およそ従来の6割程度の時間数で履修させることが妥当。さらに残りの4割程度の時間には,各歯科大学・歯学部の教育理念や特色に基づいたカリキュラムや選択科目を取り入れることが望ましい。さらにガイドラインは教育内容を提示するものであって,教育方法は各歯科大学・歯学部の決定に任されている。また,ガイドラインは,従来の専門分野別講座の枠にとらわれずに,基礎と臨床を統合する形で記載する方針ということで,全体の構成の趣旨等が記載されております。

 また,1枚おめくりいただきましてP5と付された部分でございますが,ここのP5という部分は歯学教育モデル・コア・カリキュラムの中の臨床実習に係る部分,このガイドラインの中では臨床実習内容ガイドラインとなっておりますけれども,第2段落で,臨床実習内容ガイドラインには基本的歯科医療として卒前に修得すべき最低限の内容を具体的に明記。これらの含まれる臨床実習内容としては云々とあります。その3行後にございますが,臨床実習内容の水準1,指導者の指導,監視のもとに実施が許容される歯科医療行為,つまり臨床実習内容ガイドラインのコアに相当するのは水準1。一方,その後段にございますように,水準2,状況によって指導者の指導,監視のもとに実施が許容される歯科医療行為。水準3,原則として指導者の歯科医療行為の介助にとどめるもの。水準4,原則として指導者の歯科医療行為の見学にとどめるものについては,原則として選択実習とし,各歯科大学・歯学部の判断により実施するものとしたということで,現行のガイドライン上,整理されております。

 引き続きまして,1枚おめくりいただきましてP7をごらんください。コア・ガイドラインの表示のことでございますが,P7の4で表示,(2)一般目標とございます。後ほどごらんいただければと思いますが,このコア・カリキュラムには一般目標と到達目標という記載がございますけれども,(2)に記載がございますように,一般目標は,該当する項目についての一般的な教育内容を示す指針。一方,(3)到達目標でございますが,到達目標は一般目標に記載された項目について,学習者が具体的にどの程度のレベルまで修得しなければならないかの指標。なお,アスタリスクをつけたものは,臨床実習開始前の学生評価のための共用試験システムの出題範囲となり得るものであるが,共用試験システム実施後も引き続いて卒業までに修得することが適当であると考えられる項目も含まれているということで,一応アスタリスクの部分は,どちらかというと臨床実習開始前までに修得することを念頭に置いた項目でございます。

 なお,P7の量的提示でございますが,第1段落の最終行にございますように,既定の必修科目単位数のおおむね6割程度を目安とすることが適当ということで,先ほど申しましたようにコア・カリキュラムは大体6割程度というようなことが記載されております。

 さらに1ページおめくりいただきまして,P8,このコアカリが平成13年にできた段階の概要図で,少し構図がわかりづらくて恐縮ですが,P8の冒頭,例えば4という部分でも,繰り返しになりますが,本歯学教育内容ガイドラインは量的には従前の約6割程度を想定したもので,残りの枠外は各歯科大学・歯学部の個性を輝かせる最大の教育機会ととらえ,幅広い選択が可能な教育内容の設定や,学生の自学自習の時間を確保するように努めることが期待というような記載がされているところでございます。

 右ページ以降に目次とございますけれども,目次を見ていただきますと,Aとして医の原則,B,歯科医師としての基本的な態度,これが先ほど申しましたけれども,臨床実習前,臨床実習全体を通じた基本的な事項に関すること。その後,C,社会と歯学,D,生命科学。1枚おめくりいただきまして,中段から下段にございますが,E,歯科生体材料と歯科材料,F,臨床歯学教育,そして,右ページに臨床実習の一般目標と到達目標,そして臨床実習内容という構成になっております。

 さらに1枚おめくりいただくと,ここから算用数字でページが振っているところでございますが,1と書いてあるところがまず冒頭,歯科医師として求められる基本的な資質,これは平成19年度改訂の際に新しく盛り込まれた事項でございますが,歯科医師として求められる基本的な資質として7つが掲げられております。

 そして,2ページ以降は,先ほど申しましたように,まず,Aとして医の原則,さらにA-1,患者の尊厳,そこに先ほど申しましたように一般目標と到達目標,さらにアスタリスクの星がほとんど付されていますけれども,これは臨床実習開始前に到達すべき内容ということで印がついているものでございます。

 2枚おめくりいただいて5ページにいきますと,B,歯科医師としての基本的な態度。ここには生涯学習,問題発見・解決能力,学習の在り方等々,さらには6ページには対人関係能力としてコミュニケーション,医療面接等の内容が盛り込まれております。

 さらに1枚おめくりいただき7ページは,Cとして社会と歯学,健康の概念,健康と社会,予防と健康管理等々の内容が盛り込まれているところでございます。

 続きまして,1枚おめくりいただきまして10ページ,D,生命科学,ここは生命の分子的基盤や,また1枚おめくりいただいて,D-2として人体の構造と機能等々の内容が盛り込まれているところでございます。

 数枚おめくりいただきまして,18ページをごらんいただきますと,18ページはEという項目で,歯科生体材料と歯科材料ということで,E-1,素材と所要性質,E-2,成形法と成形用材料というような内容です。

 そして,1枚おめくりいただきまして,19ページがF,臨床歯学教育ということで,F-1,診療の基本として基本的診療技能,画像検査,歯科麻酔の基本。

 1枚おめくりいただきまして,22ページには口腔・頭蓋等々の内容が記載されております。

 31ページをごらんください。31ページが臨床実習の内容です。昨日,医学のほうにも参加された先生方もいらっしゃると思うので,ここが医学と大分構成が違う形になっておりますが,歯学教育のモデル・コア・カリキュラムにおきましては,臨床実習についてはまず一般目標が大きく9点,到達目標が11点掲げてあります。32ページにはそういった内容が大体量的にどのくらい必要かという目安が提示されているところでございます。

 さらに1枚おめくりいただきまして33ページから34ページは,冒頭申しましたように,一般目標と到達目標に向けてどういった内容の実習を行うべきかという臨床実習内容について整理されております。33ページの上段にございますように,水準1から水準4,これも冒頭前文のところでご説明申し上げましたけれども,水準1が指導者の指導,監視のもとに実施が許容される歯科医療行為ということで,コア・カリキュラムにおいてはコア実習的な位置づけに,一方,水準2から水準4の内容については,各歯科大学・歯学部の選択実習というような形で整理をしているところでございます。

 なお,36ページ以降には,参考までにこの冊子の索引が添付しておりますので,適宜,ご活用いただければと思います。

 引き続きまして,右肩に参考資料2と付された準備教育モデル・コア・カリキュラム,実はこの準備教育モデル・コア・カリキュラムの作成クレジットは医学における教育プログラム研究・開発事業委員会,平成13年3月と書かれております。検討会の名前は医学と書かれておりますけれども,内容的には1枚おめくりいただきますと,この内容の趣旨が書かれておりますが,特に2番にございますけれども,医学・歯学教育における準備教育コア・モデル・カリキュラムの構成と考え方。あくまでも準備教育モデル・コア・カリキュラムは医学のみではなく,歯学教育におけるものでもあり,内容として,よき医療人を目指す医学・歯学教育の前提として身につけておくべき基本的な事項を整理して提示したもの。構成としては,そこに4つございますように,物理現象と物質の科学,生命現象の科学,情報の科学,人の行動と心理というような構成になっております。

 1枚おめくりいただきますと,今申し上げた4つの柱に沿って,先ほどの歯学教育モデル・コア・カリキュラムと同様に,一般目標,到達目標の記載がなされているところでございます。

 最後に本日,委員の先生方のみにお配りしておりますが,後ほどご発表いただきます荒木委員で説明の際にご活用される資料といたしまして,机上資料と右肩に書かれているものでございます。これは机上資料と書かれておりますが,適宜,委員の先生方にはお持ち帰りいただいて結構でございます。内容としては,CBT委員へのアンケート調査の集計,OSCE委員へのアンケート調査集計,学会からの要望内容という構成になっています。

 さらに一番最後に,一般社団法人日本小児歯科学会,これも机上限りということで委員の皆様方のみにお配りしておりますが,後ほど荒木委員からご発表いただく際に適宜ご活用いただけるというものでございます。

 長くなりましたが,私からの配付資料の説明は以上とさせていただきます。

【江藤委員長】  ありがとうございました。

 大学の先生方はモデル・コア・カリキュラムの内容を,共用試験の問題をつくらなければいけませんので理解をしているんでございますが,その他の委員の先生方,これを十分に読まれるということはあまりなかったかと思いますので,少し時間をかけましたけれども,説明いただきました。

 ただ今のコアカリの内容説明につきましては,議事進行途中でもかまいませんのでご質問,ご意見をいただきたいと思っております。

 それでは,本日の議事に入ります前に,資料1の今回のモデル・コア・カリキュラム改訂に係る基本方針というのがございます。これは前回の会議でのご意見等を踏まえたものを修正したものでございます。高久委員長,福田委員長と私に一任をされたものでございます。

 かいつまんで申し上げますと,主な変更点は,今回の改訂に係る検討内容の1行目から2行目にかけて,社会的ニーズ(医学・歯学等の連携を含む)ということが主な修正内容でございます。これにつきましては,よろしゅうございますか。

 それでは,この基本方針をベースにして,今回の改訂に向けた具体的な議論を進めてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは,本日の議題でございます。議事次第にございますように,前回に引き続いて調査研究チームにおける検討状況についてとして,まず,個別のテーマごとに歯学教育に係る調査研究チームのリーダーであります荒木委員から検討状況を説明いただいて,それに対する質疑応答といった形にさせていただきます。

 まず,1つ目のテーマでございますが,歯科医師としての必要な臨床能力の確保についてということで,荒木委員から検討状況を大体20分程度で説明をお願いいたします。

【荒木委員】  調査研究チームの歯学教育のチームリーダーをやっております荒木でございます。ただいま座長からのご指名で,ご説明させていただきます。

 まず,資料の2をごらんください。全体としてまずご説明いたします。9月30日に第3回の専門研究委員会が開催されまして,そこから今日までの間に行ってきたことにつきまして,資料2の1に書いてありますのでまず説明しますが。9月30日に行われた後に10月13日に第3回の調査研究チームを開催いたしました。その前後に共用試験実施評価機構のCBT委員,OSCE委員から歯学教育モデル・コア・カリキュラム改訂に向けた意見調査のアンケートをとりまして,その結果を集計しました。これにつきましては,本日の机上資料として配付させていただいております。それから,全国29歯科大学大学・歯学部,日本歯科医学会の39専門分科会・認定分科会へ歯学教育モデル・コア・カリキュラム改訂に向けた意見調査を依頼しました。実は11月1日ぐらいに締め切りを設定したのですが,その後もかなり遅れて返却されてくるものがありまして,ただいま集計中でございますが,本日,その一部につきまして開示した部分がございますので,そのときに改めてご説明させていただきますが,全体としての取りまとめはまだ集計中でございますので,ご了承いただきたいと思います。それから在宅関連,あるいはチーム医療関連の教育内容について,積極的に取り組んでいる大学の資料の収集と専門領域の先生からの意見の聴取を実施しまして,これにつきましても本日のこの資料2の後ろの2ページについておりますが,意見をいただきましたので,それにつきましてもそのときにご説明させていただくことにさせてください。

 最初に,検討状況の中の1番目,臨床実習ということで,歯科医師として必要な臨床能力の確保,臨床実習の系統的・体系的な充実ということでございますが,基本的にはまずモデル・コア・カリキュラムの内容の中でこれにかかわる部分についての改訂と,臨床実習をどのようにするかということについての改訂という2つの内容になるかと思いますが,現時点での検討状況について少しご説明させていただきます。

 次のページをおあけいただきますと,資料の2-1としまして,臨床系科目のコアカリ改訂の方針案というのがございます。これは各委員のいただいた意見を少しまとめたものでございますが,総量を増やすのはやめましょうとか,臨床系の科目間で記載内容に少しレベルの差がある、すなわち到達目標にかなり深いところまで入っている記載内容と,かなり上べだけしか書かれていないものが確かにコアカリの中にございまして,それを統一する作業をしなければいけないということで,現在それについての洗い出しを行っております。それから,仕方ない部分はあるのですが,いろいろな臨床の科目の中で非常に重複内容がございます。この重複内容につきまして,すべて1個にまとめればいいかどうかということも含めた議論をしなければいけないのですが,少し整理したほうがいいのではないか,用語の統一が少しあいまいな部分があるということで,これも統一を図りたいということでございます。

 それから,臨床実習の項目立てでございますが,こちらの厚いとじた中に医学系のコアカリがあると思いますが,そちらを見ていただきますと,臨床実習の項目立てを医学教育のコアカリはされていて,歯科のほうはあまりそれがされていません。歯科につきましては参考資料の1を見ていただきますと,先ほど見ていただきました水準の1から4までの前のページの31ページをあけていただきますと,歯学教育の臨床実習はこのような形で大きく一般目標と到達目標が書いてありまして,32ページはこのような形にしたらいいのではないかという例示ですが,それの具体的なものにつきまして,先ほど唐沢補佐からも説明がありましたけれども,このように33と34ページでそれぞれの大学の実情に合わせて歯科医療行為を学生さんにやらすのに対して,これぐらいの水準のレベル分けをしているというようなことで示しております。

 それで,一応参考までに医学系の方を見ていただきたいのですが,これの51ページをあけていただけますか。G,臨床実習という項目がございまして,ずっと見ていただきますと,最初に全期間を通じて身につけるべき事項,それぞれ細かく項目立て,それから53ページが内科系臨床実習,外科系臨床実習と続きまして、最後に,56ページが地域医療臨床実習と,このような形に分けられています。ただし,実はこれ,昨日,医学系の同じような会議がございまして,今回ここを大幅に変えたいというようなご意見があって今作業をされているようなので,歯科は最初はこれに合わせてやろうかなと思ったんですけれども,逆に医科のほうがこれを変えようかというような状況になっています。今回初めて医科の改訂の情報が得られましたので,私たちのチームもまた考えなければいけないと思っております。例えば具体的には,簡単に言いますと,53ページの部分の内科系の臨床実習の例えばこのような実習形態とか症例とか,こういうのにつきましては全部カットしましょうとか,そういうようなことを今,医学系のモデル・コア・カリキュラムの改訂ではやっていることが昨日,ご報告がありましたので,もとに戻っていただきますと,参考資料1の33から34ページ,これがちょうど先ほど言いましたとおり,医科のほうだとそれぞれの細かい病名等とか,診療の内容とかそういうのが書かれていますが,歯科のほうは非常に細かく書かれておりますが,これをどのように改訂するかということにつきまして,今後作業チームで考えていくということになると思います。特に医学系と全く同じに合わせるという気持ちはございませんが,あまりにも医科と歯科の表記が違うのはよくないのではないかというのも歯学系のチームの意見としては出ていますので,その辺については表記の仕方についての統一をとったほうがよいと思ってい。

 この臨床実習の水準ですけれども,このように明確にしたこと自体は非常にわかりやすい、というのは多くの各大学,あるいは多くの委員の先生方も評価しているのですが,診療参加型という定義が非常にあいまいでして,ほんの一部分だけでも患者さんに何かやったことが,もうそれで診療参加型なのか,それとも診療担当型といって,普通の開業医の先生と同じように,例えば水準1は最初から終わりまで1人でこなすのが水準1なのかとか,こういうことについてが明確じゃないということで,各大学の臨床実習に統一性がないということが出てきていますので,それにつきまして,もう少し明確にしようかという意見が出ております。

 それから,内科的知識を持った歯科医師の養成。これはまた後で詳しくご説明しますが,医学教育,特に内科学をもっと取り入れて,全身状態を把握できる歯科医師,全身から口腔を診ることのできる歯科医師を養成する必要があり,それに応じてモデル・コア・カリキュラムを改変する必要があるという意見がいろいろな方々からいただいております。

 ところが,例えば19ページをあけていただきますと,Fの臨床歯学教育のF-1-1)に基本的診療技能がございまして,そこの2に明確に歯科医療と全身疾患との関連を理解し説明できるというようなことで,もう既に現在のモデル・コアカリでも歯科治療を行うのに全身疾患の関連はちゃんと知らなければいけませんよということについて書かれております。例えば15,これは各種臨床検査の基準値ですが,この基準値の中で重要な異常値の意味を説明できるということですが,今私が知る限り,細菌検査はありますけれども,歯科の疾患自体が臨床検査で診断できるというのはほとんどございませんので,実際は全身の疾患についての臨床検査の基準値を知ることによって,その異常値から全身の疾患を予想する,理解するということをここで求めていると思います。

 それから,20ページの歯科麻酔の基本を見ていただきますと,F-1-3)の(1)全身管理,ここの部分につきましては,もちろんこれは歯科の治療についてが中心でございますが,実際ここの項目を見ていただきますと,バイタルサイン,血圧,脈拍,呼吸の状態を診るとか,6以降は歯科治療時に留意すべき薬物とか,それぞれ小児,妊婦,高齢者への薬物の適用の注意とか,8は全身疾患を有する患者への薬物適用とか,このようにきちんと書かれておりまして,実際は内科学の知識をかなり入れなければいけないということにつきましては,現行のモデル・コア・カリキュラムの中に私はかなり書かれている思うのですけれども,どうもそこが読みとる方々にとってはあいまいととられているのではないかと思いまして,ここの部分につきましては違った角度からもう少し書き込もうかというのが今やっている作業でございます。

 それから,社会的ニーズの変化に対する対応ということで,歯科の中でも現在のモデル・コア・カリキュラムにほとんど詳しく触れられていない歯科のほうの新しい学問分野で,しかし,今後重要になる,あるいは今後の歯科医師が社会に貢献するのに非常に重要な学問分野が幾つか出てきております。具体的にはインプラント歯科とか摂食・嚥下リハビリテーション,スポーツ歯学等々ありますが,このような項目ももう少し詳しく入れたいと。それから,社会構造の変化によって重要視されるようになった学問分野,これは歯学単独ではございませんが,例えば医療安全,チーム医療,在宅医療等々の社会的なニーズもコアカリに入れて,十分こたえるのが必要だと。これにつきましては,本日の4の社会的ニーズ等のところで細かくご説明させていただきたいと思います。

 これは別の委員の先生が具体的な提案として出された提案書でございまして,臨床実習の項目案といいまして,ここでは細かくはご説明しませんが,このような形で具体的に入れていったらどうなんだろうかということにつきまして,かなり詳しく書いていただいておりますが,まだ案ということでございますので,これがそのまま最終的な臨床実習の充実に対する部分のコアカリの改訂の項目になるというところまではまだいっておりません。1つの案として出ているということで、ご承知いただきたいと思います。

 今の時点までの進捗状況は以上でございます。

【江藤委員長】  ありがとうございました。

 それでは,ただいまの報告について,何かご質問,ご意見ございましたらお願いいたします。

【荒木委員】  もう一つ,すみません。ちょっとつけ加えます。机上資料を見ていただきますと,机上資料に先ほどご説明しました平成22年度の歯学のCBT委員とOSCE委員全員にモデル・コア・カリキュラムの改訂に関するアンケートの調査集計をさせていただきました。そのまとめがずっと書いてございます。

 アンケートの内容として,一番最初がそれぞれの項目で,例えば現在のモデル・コア・カリキュラムはどう思われますか,十分満足から大いに不満とか,このような形の評価をいただきまして,その評価の理由と今後どうすればいいのかというような項目立てで,例えばご自分の専門分野,ご自分の専門分野以外,そういうような形でところどころページに大きく四角で1,2,3,4と書いてあるのが大きな設問でございまして,その後に細かい設問が入っているということをご理解していただいて,見ていただけるといいと思います。

 それぞれの回答していただいた委員によっては,非常に大きな目から見たご意見と,ご自分の専門分野の細かいところについて,もう少しこういうふうに書き直したほうがいいんじゃないか,あるいはこうやって入れるべきじゃないか等々の修正につきましてのご意見をいただいているということをそのままそっくり載せまして,各委員がお一つお一つ見ていきまして,吟味というか,取捨選択をしているということでございます。これは参考までに皆様方にお渡ししてありますので,見ていただければと。

 ただ,今,これを見て一番感じているのは,歯学系のCBT委員,OSCEの委員というのは共用試験を実質上,今やっている先生方からの意見でございますから,どうしても試験を行うという立場の先生方の意見なんですね。つまり,直接大学からの意見をもらっていますけれども,大学からの意見の方々としては,教育を行う方々からの意見なんですけれども,そちらについては今まだ集計中でございまして,各学会からの意見はもうちょっとそれとは別の次元の意見が来ているんですが,それがまだ入っておりませんので,その辺のことについては今の時点ではご承知おきいただきまして,あくまでも試験をやるほうの立場の先生方からの意見の集約ということでご理解いただきたいと思います。

 大変すみません。追加でございます。

【江藤委員長】  ありがとうございました。

 ご質問等,お願いいたします。どうぞ。

【関本委員】  この資料2の2というのに在宅歯科医療ということで大項目,中項目,小項目と分かれて載っておりますけれども,これはどういう資料ですか。

【荒木委員】  これは後でまたご説明します。先生のご質問は後の方で詳しくご説明いたします。

【関本委員】  はい。

【江藤委員長】  どうぞ。

【宮村委員】  ごく一般的な質問なんですけれども,要らん質問をしないほうがいいのかもしれませんけれども,荒木先生のご説明の中で,2ページに下から2番目の内科的知識を持った歯科医師の養成ということで,今までのコアカリに入っているし,それを整理すればどうなんだろうと。僕もそうだと思うんですけれども,よく僕なんかがメディアの人とかとお話をするときに,僕は歯科医師会ですけれども,例えば歯と全身の健康というようなことを言ったりするわけですよね。メディアの人なんかは,先生,歯と全身というけれども,歯は全身と関係ないのというふうに言うわけですよね。要するに,医学教育,内科学をもっと取り入れた全身状態を把握できる歯科医師というのはある意味では当たり前だと思うんだけれども,全身から口腔を診ることができるというのは法的なことなので,全身と口腔,全身と歯を分けなければならない形になっているんでしょうかね。医学のカリキュラムを見たときに,例えば循環器系と全身とか,腹部と全身なんてことをあえては書いてはいないんだけれども,前野さんがいらっしゃいますけれども,そういう記者の人たちとしゃべっていると,先生,これは一元論のほうがいいんじゃないなんていうこともおっしゃったりするんだけれども,彼らから言わせると,全身もわからん歯科なのとか,歯科って全身がわかっているのは当たり前じゃないのということをよく言われるんですけれども,こういったカリキュラムの中で口腔,つまり歯科というものと全身というのは分けなければならないという何かがあるんですか。

【荒木委員】  ご質問ありがとうございます。私個人の意見としては全然そんなことは思っていません。例えば私が受けた教育の中でも,もちろん最終的には歯科のことに特化して,口腔内の疾患を治す歯科医師というのは法律上決まっていますので,当然,高学年に行って臨床実習をやって,卒業して歯科医師になったらそういうふうになるんですが,しかし,現実に低学年のころは,今の歯科のモデル・コア・カリキュラムを見てもわかると思うんですけれども,生命科学を習って,その後に,それと一緒に解剖学の中でも顎口腔の解剖学だけやるわけじゃなくて,頭のてっぺんから足の爪先まで解剖学の知識を教わって,骨学も筋学も内臓学も何もかも全部教わって,その後に人体解剖実習というのは,別に顎口腔だけじゃなくて全部やるわけです。全身のことを全部知った後に結局,当然,私たちは目とか心臓とかは触われないわけで口腔内をやっていくという,これは昔からずっとそういう教育は行われていて,モデル・コア・カリキュラムの中にも実はそのようなことは書き込まれているのですね。

 見ていただくと全部わかるのですけれども,ただ,それがどうも,お恥ずかしいのですが、,日本の29歯科大学・大学歯学部全体としてだんだん口腔内の部分だけに特化していっているような教育が行われてきているというのは間違いなくいろいろな調査で出てきていて,それをモデル・コア・カリキュラムで少し直そうということは入れたのですけれども,なかなか意図したとおりにはなっていません。さらに、今宮村先生が言われたように,もっと実は歯と全身の関係がわかってきたのとともに,これからの歯科医師になる人たちは,在宅とか高齢者の方々を今以上に多くの歯科医師が診なきゃいけない役割を担うことはわかっているわけで,そのときに,今の現状の全身の医科の知識だけでいいのかというような命題というか,そういう問題が出たときに,もう少し今以上に詳しい,あるいはレベルの高い知識を持った歯科医師をつくりたいと考えております。

 例えば私自身は,患者さんの治療のことで医師の先生とある程度会話はできますけれども,日本全国のすべてのこれからの若い歯科医師が、そのような教育を受けていないのに医師の先生と会話ができるかということです。すなわち、疾患についてディスカッションができるかというようなことについて心配な面が確かにあるので,そういう憂いを少しでも教育の中で少なくしていきたい、というのが今回の改訂の1つの大きな目玉だと思っております。

 以上です。

【宮村委員】  了解しました。そこは大事だということは間違いないんで,入れていくべきだと。ただ,そんなことをまた言っちゃいけないんだけれども,歯と全身というときに何かしゃくだなという気がするというのはあるんだけれども,もともとおれたちだって全身のうちの1個じゃないかと思うものですから,そういうことを申し上げただけで,カリキュラムの中にそういうものを入れていくというのは当然必要だと思います。

【江藤委員長】  よろしゅうございますか。追加をいたしますと,ここにございます全身から口腔を診ることのできる歯科医とございますが,具体には口腔疾患を修飾する全身疾患。どういうことかといいますと,例えば糖尿病があると歯周病が憎悪するといったことであります。もう一つは,原因とは断定できないんですが,口腔疾患に影響を受ける可能性がある全身疾患。これは循環器疾患,そういったものでございますけれども,こういうふうに具体には分けられるんだろうと思います。それじゃ,今までの歯学部の教育の中に隣接医学があって,こういうことを教えてこなかったのかと。そんなことはないんでございますけれども,今,荒木委員から申し上げましたように,医師法,歯科医師法,それから医学,歯学の設置基準,だんだんお互いに疎遠になってきたと。隣接医学を医学部の先生が教えに来るんですが,隣接と名前がついている分だけ,教えるほうも教わるほうも真剣になってこなかったということなんです。改めて全身が診られる歯科医が必要だということが,特に高齢者で全身疾患を持った患者さんが増えてきたことも理由なんですけれども,そういった背景があるということでございます。

 今のことでなくても結構でございますから,ご意見ございましたら。

 どうぞ。

【俣木委員】  先ほどのチームリーダーの荒木先生からご説明があったんですけれども,資料2の1の臨床実習の項目について,少し追加といいますか,私も調査研究チームの一員でございますので,補足の説明をさせていただきます。

 臨床実習の項目案につきましては,共用試験のOSCEの課題とかなり関連づけた項目立てを意識して並べていく方針となっております。歯学部の学生が共用試験,臨床実習開始前の技能,態度の評価を受ける前に,このような共用試験のOSCEの課題に関連した項目立てでこのように臨床実習の項目を並べたということでございます。

【江藤委員長】  ほかにございますか。

 どうぞ。

【関本委員】  さっきの医科と歯科のところなんですけれども,この前の委員会のときにも隣接医学という,僕もその隣接医学という名前はあまり好きじゃなくて,隣接している以上は全然中に入ってこれないだろうというような気がしているものですから,これは僕の理想論なんですけれども,最終的には歯科に関連する内科学というのは歯科医師が教えるべきことであって,医科の先生に来てやってもらっている以上は,歯学生もなかなかその中に入り込みづらいということがあるので,コアカリの中にそういうものを入れる以上は,医師ではなくて歯科医師が教育をするということを大前提にやっていくべきではないだろうかと感じます。

【江藤委員長】  最初の基本方針のところで修正の点で一番大事なのは,医学,歯学の連携を含むというふうに追加されたわけでございますが,その辺のところを前野委員,ご意見ございましたら。

【前野委員】  医学,歯学ともそれぞれの分野で,全身からみた口腔領域を習得しているのは当然でしょうが、臨床現場において患者は、医科と歯科の治療が別個に行われ、その間に連携がないというが一般的に受ける印象ではないでしょうか。どちらが責任を持つかという問題ではなくて,患者は両方が同じ土壌に立って,知識を共有して連携を図ってほしい。しかし、医科、歯科にはお互い「隣接医療」として深い垣根 しっかりボーダーラインがある。両者が連携したボーダーレスな総合力を実現する方法について,コアカリで連携を深めてもらいたいと思います。

【江藤委員長】  ありがとうございました。

 いかがでございますか。

 この医科と歯科との連携というのは,日本だけの話ではなくて,アメリカでもヨーロッパでも非常に大きな課題になっております。例えば全米歯科医学教育学会(ADEA)からMacyレポートが最近出されておりますが,医師法,歯科医師法,歯学部,医学部という別立てにできているところをどうやって連携するのか,そのレポートには,連携の方法については全米の歯学部の数ほど連携の方法は多様であります。レポートとして提言はされていますが,現場での運用となりますと,これからの話だろうと思います。これについて,さらにご意見ございましたらお願いいたします。

 もう一つ追加いたしますと,医歯の連携だけではなくて,地域医療におけるチーム医療となりますと,医,歯,看護,薬,衛生士,技工士,理学療法士,そういったところまで広がってきます。そういったことまでを含んでいると,この提案は意味しております。

 医と歯の連携について,福田先生,ご意見。

【福田委員長】  今のご意見をお聞きしていて,それから資料1の今回の改訂にかかわる検討内容のところに,医学・歯学等の連携を含むという表現になっています。この意味するところは何かということは今いただいたご意見の中によくあらわれていて,社会が求めるのが2つぐらいあるかもしれません。1つは,歯のほうの方々にとって,教育プロセスの中できっちり教えなければならないことがあります。そうなりますと,先ほどご意見があったように,いきなり試験に出す云々よりも,歯学系の教員の方々がそれなりに幅広い体系立った教育内容についての考えを持つことが必要になってくる。それを学生に向ける。ただ医学部の先生を呼んでやるだけではなくて,それはあまりにも受け身になってしまう可能性がある。これが1点です。

 2点目は,我々の医のほうから見た歯,これはかなり前から意識しておりました。口腔内の状況は我々も口腔内の観察をして診ているわけですね。どういう状況なのか,そこから得られる情報はかなり多いものがあります。それから,粘膜からの吸収の問題とか,こういう問題は常に意識しております。ただ,歯の病気のことについて深入りすることは私どもとしては避けている。それは担当分野が違うので避けていたためです。ただ,耳鼻咽喉科との間では,診療内容の問題に関してそれぞれの大学病院等でうまくいっているところといっていないところがあるんじゃないか。そういう意識は持っております。ですから,私どもとしては,歯あるいは口腔のこと,全身への影響等は,昨日も申し上げましたけれども,病巣感染ということは昔から言われていて,その中の歯の部分はかなり大事だと考えております。もう一方は栄養の点ですね。きちんとかんで食事をするということは動物でもみんな同じなんです。年とってくると歯が抜けるのは人間だけではなくて,動物もみんなそうで,そうなってくると栄養の問題になってきますから,そういう全体的な観点の中から考える必要がある。それは両方共通のことだと思います。私からはそういうコメントをさせていただきます。

【江藤委員長】  ありがとうございました。

 せっかく井部さんにおいでいただいておりますので,ご意見をお願いします。

【井部氏】  私は臨床で歯科と医科はあまり仲がよくないと思って見ていました,看護の立場からすると。さっき福田先生が、お互いの領域への介入は避けているとおっしゃった,そのとおりで,お互いの領域にはあまり関心を持たないというような感じです。そこをナースが取り持っている。それはほかの診療科でも言えます。それぞれの専門領域についてはお互いに深入りは避けているなということと,相互の尊重みたいなのが多くない。高齢社会になってきておりますので,これからは歯科の領域で,今福田先生がおっしゃった栄養とか,そしゃくとか嚥下というものがとても重要になってきている,看護にとってはその領域と歯科の診療とは密接に関係があるので,ぜひ深入りしていただいて,相互に高めていけるような状況になればいいと思います。

【江藤委員長】  ありがとうございます。

 それでは,この医歯の連携のところ,直接かかわります歯科麻酔の嶋田先生,お願いいたします。

【嶋田委員】  嶋田と申します。よろしくお願いします。

 従来の歯学教育の中で、隣接医学として医学部の先生方が歯学部に来られて教えていましたが,それと同時に歯科麻酔や口腔外科の歯科医師が,歯科治療に注意を要する重要な全身疾患を教えていました。例えば高血圧,心臓病,腎疾患,内分泌疾患,それが単なる内科的疾患として教えるのではなくて,歯科治療を行う上でどのような全身管理が必要であるかを,従来,歯科麻酔や口腔外科を中心として教育をされておりました。そして,荒木チームリーダーがおっしゃったように,従来のモデル・コア・カリキュラムの中にもその項目はすでに入っております。入ってはいるのですけれども,大きな項目として,目に見える形として入っておらず、小さい項目として入っておりました。従って、一般的な方がごらんになるとどこに入っているのかわかりにくく,医と歯の連携という形で明確には認めにくい状態でありました。従来の教育の中でもある程度入っておりますし,国家試験とかCBTの問題にも実際には十分入っております。我々,歯科医師が,先ほど申しましたように,こういう内科的疾患のこういうところを歯科治療でこういうぐあいに注意すべきだというのをちゃんと教えてはいるわけです。それが社会にあまり周知されていなかったのではないかと思います。

 すなわち今回,このモデル・コア・カリキュラムの改訂を行う場合,医科と歯科の連携を十分にしかも明確な形として組み込む場合,目に見える形で医科と歯科の中にお互いに入れ合えばいいのではないかと思います。例えば歯科のほうには大きな項目を新設し、歯科医師に必要な医学的知識とか,口腔と全身との関わりとか,項目を作り明確な形で入れればいいのではないか。一方,医学教育の中でも歯とか歯周疾患とか齲歯,歯周病,いろいろな言葉でもう既に入っています。ただ,それも非常に細かい単語で入っており,一般の方には認めにくいのだと思います。歯、舌、唾液腺の構造や機能が説明できるとか、う歯と歯周病を概説できる などという表現ですでに医科のコア・カリキュラムに書いてあります。しかし,それがなかなか目立たないので見えてこないと。実際の医療の現場では、心臓の手術の前には、歯科医師が歯周病やむし歯の有無やその程度を確認し、必要なら治療を行い、よい状態に改善してから手術を行う、このようなことが医療の現場ではすでに行われていますが,なかなか一般の国民にはそれが見えてこない。だから,教育現場としてカリキュラムの中に,医科の中でも歯科のそういうところを目に見える形で,もう少し入れていただきたい。

 あと,口腔の常在細菌と全身疾患との関係があります。たとえば歯周疾患と糖尿病との関係などがあります。従ってむし歯や歯周病など、歯性病巣感染の概念を医科の中に少し入れていただきたいと思います。

 その他、福田先生がおっしゃったような栄養と摂食・嚥下機能との関係もありますし,チーム医療,例えば在宅要介護者の医療の中に歯科医療を明確に,目に見える形で項目として入れていただきたい。現実的には歯科,医科がそれぞれ仲よくやっており、努力はしていると思います。さらに、睡眠時無呼吸の治療にも歯科医師がマウスピースの製作に関与していますし,スポーツ歯科の場合もマウスガードをつくることがありますので,医学部,歯学部それぞれの教育カリキュラムの中に既に今までやっていることを明確に目に見える形で入れていただくと,より社会に見えるのではないかなと。

 以上です。

【江藤委員長】  ありがとうございました。

 ここは医と歯の連携と同時に,内科的知識を持った歯科医師の養成ということでございます。これは国家試験にもかかわる話でございますが,本日,厚労省から上條歯科保健課長がおいでになっています。上條課長,コメントをお願いいたします。

【上條歯科保健課長】  コメントをということなので,私はあくまでも意見を聞かせていただく立場ですから,あまりこっちが言うのも何かと思っているところでございますけれども,内科的というのは私もよくわかりませんで,実は先週,正直言いまして,歯科大学学長会議ですか,そこから要望書をいただきまして,歯科医師国家試験でも少し全身のかかわりやなんかを,結局,言葉上では内科的とは言っていますけれども,内容は歯科疾患に関する全身のかかわりやなんかももう少し充実して出題できるような形に変えられないのかなというご要望を要望書としていただきました。それで,何を言えばいいかなと思うんですが,教育現場もそうですけれども,そもそも医療現場においても,日本歯科医師会から出ている要望書の中で在宅の歯科医療の推進ということが言われていましたから,在宅歯科医療と考えれば,今の流れから言ったら平成20年以降,後期高齢者の流れから来ていますから,確かにこれからは24年の診療報酬改定なんかもありますけれども,要は病院から今度は在宅に出ていく流れなんだから,おのずと現場自体は歯科治療の際に考慮しなければならない基礎疾患が増えているという実感を私も持っているんですね。だから,当然コアカリをやったって,きっと教育内容というのはおのずと反映するんだろうなという実感を持っています。

 それから,国家試験というのはおもしろいもので,今は実技能力を臨床実地問題に切りかえましたので,臨床実地問題というと,結局,実際の患者さんをもとにして問題がつくられてきていますので,昔から比べると,全身と今出ていましたけれども,おのずと基礎疾患に関係する検査結果をもとにしたものが増えてきているような印象を非常に受けております。在宅の現場なんかの出題なんかも増えていますから,コアカリでというのでも確かに流れの1つなのかなという印象は正直受けております。

 ですから,歯科は歯科としてあって,安心・安全な歯科医療を提供するという観点から、医科と歯科の連携というのもおのずとやらざるを得ないことから出ているんだろうというような印象は正直持っておりまして,きっとこれから免許を取られる方自体も当然,歯科診療所でそのままというわけにいかなくて,今はどこでも在宅とか基礎疾患を持った方の歯科治療をやるケースが結構増えてきていますえら,そういうのにおのずとかかわるということになれば,全身とのかかわりが出てくるのは当たり前だろうと思いますから,結果的に病院等や医師・看護師等の医療関係職種の方、介護・福祉関係職種の方と連携していく場面は当然増えるんじゃないかと思うんです。

 ただ,これは私はあまり言っていいのかわからないですけれども,さっきも話が出ましたけれども,内科的という表現はそんなに印象的に言葉としてあまり好きじゃないんですね。なぜかというと,特定の診療科を限定するというイメージを持つものですから,医科や歯科の各科でそれぞれみんな貢献されているんで,特定の診療科を限定するような表現ではなく、また、医科と歯科の棲み分けも考慮して,あくまでも歯科診療をやっていく上で何が必要かという視点で考えたとき,実際のサービスで何かというような視点じゃないかなという印象を持っております。。

【江藤委員長】  ありがとうございました。

 どうぞ。

【福田委員長】  あと,もう一つ,ここで話題にならないかもしれませんが,医学系の大学病院の診療科の問題があります。それから,歯医者さんの方々は大学病院があまりないわけですね。ほとんどは開業をされている場合,そういう場合にはコンサルタントとしてそこに同時に医師がいれば非常にいいんでしょうけれども,そうではなくて単独でやられていますね。一方,大学病院の場合には歯科口腔外科があって,そこがさっきおっしゃったとおりのことがあって,うまくいっているところを聞きたいと思うぐらいで,その辺のところの診療科の体制の問題もかなり大きな問題ではないかと考えられます。

 そうなってくると,教育の中でどういうことをしていったらいいかということが検討課題になってくると思っています。我々としては,医師の方々が開業医の先生方を含めて歯のことを考えるかどうかは,ちょっとまだわからないですね。足りないんじゃないかと思うところはありますし,大学病院等であれば歯科口腔外科がありますから,そこへ単純に相談すれば済んでしまうということで,現状とコア・カリキュラムで何をねらうのかということも,ただこれもやってくれ,あれもやってくれといろいろな要望が出るのと同じではちょっとまずい。

 もう一点は,医と歯だけじゃないということは非常に大事な視点で,実は等と書いてあるのがまさに漢字の一語ですけれども,医と歯だけではないという広い意味を込めて入れさせていただいた。それは基本的にチーム医療,どういうことをやらなきゃいけないかという意識を我々自身が持たなきゃいけないということです。ですから,よそにやれということを言うのは非常に簡単ですよ。ですけれども,我々がどうやっていったらいいかということを考えることが大事なんで,そこのところの広い考え方が必要と思っています。

【江藤委員長】  ありがとうございました。

 今,福田先生のおっしゃった中で,病院歯科というのは大学病院の歯科ではなくて,普通の医科病院の中にある歯科を指しております。これがかなり減ってきております。病院歯科というのは歯科と医科をつなぐ接点になるんですが,そこがうまく機能していないんではないかと指摘されております。ですから,医歯の実際の臨床現場での連携の拠点になるべき病院歯科が少し弱体化しているという別の次元の問題がございます。これはむしろ歯科医師会でも今お考えいただいているところでございますが,医歯の連携というのは教育にとどまらないものがあるということでございます。

 この議論はここでおしまいにしますけれども,こういった問題というのは縦割りの医学部,歯学部の教育の中でやられてこられました。大学の教育が変われば臨床現場が変わると思っていたのですが,どうも高齢化社会で全身疾患を持った患者さんが増えることによって,むしろ臨床現場のニーズが上がって大学の教育を変えろという方向,別のベクトルが今動いているように思われます。その辺のところは大学関係者だけではなくて,むしろ職能団体である歯科医師会のほうからも臨床現場で医歯が連携できるような教育をしろという声を上げていただくということもあり得ると思われます。 

【西原委員】  私,西原でございますが,基礎教育をしている立場から少しお話しさせていただきたいんですが,今回,モデル・コアを改変していく中で,歯学部の今のD-1からD-5に分けているそれぞれの書かれていることはわりと的を射ているんですね。ただ,私,細菌学なんですけれども,1つ1つ考えたときに,これだけ歯科疾患が変わってきて,齲蝕という感染症が減ってきて,それでどうだというのではなくて,我々は学生のころから基礎科目は医と歯,両方習ってきたんですね。ただ,その勉強に取り組ませる姿勢がなかなか成り立っていなかった。つまり,医業と歯業として齲蝕の治療をしていけばよかったわけですが,今は違ってきた。そのときに,29大学の教員が音頭をそろえて歯科基礎教育をやっていかないと,私立と国公立という分け方はいけないんですけれども,かなり大学間でばらつきがある。それを今度のモデル・コアでどのような方向性を示して教員にあるべき姿をある部分提示するかというのが,基礎の立場のD領域を変えるときに非常に大事なんじゃないかなと思って,私もCBTに長いことおつき合いさせていただいてきましたから,その辺は荒木先生にお伝えしてきたところです。

【宮村委員】  大変貴重なことをお聞かせいただきました。歯科医師会もまさに現実に,本当に私が学生で出たころと今と全然違って,医科と歯科の医療連携というのは具体的にどうしてもあるものですから,コアカリなんかにそういったものにこたえられる内容は盛り込んでほしいとほんとうに思います。そういうことを言うべきでした。それはぜひともここで発言したい。

 したがって,私は,医科と歯科の連携がとれるコアカリの内容は当然今の時代,盛り込むべきだと思うんだけれども,上條課長もおっしゃっていられたように,全身が診れる歯科医とか,そういうのは実は当たり前なんだから,全身を知るという項目だけで,それを診れる歯科医というのは実は当たり前なんだから,それは書かなくていいんじゃないかなと思うわけです。当然それはありなんだし,在宅なんかに絡んだら,医科と歯科の連携から言えば,当然知識としてカリキュラムに盛り込まなきゃいけないんだけれども,初めから全身の状況を診れる歯科医なんていうふうにいうことはないというのが僕の言いたいことなんです。歯科医というのはもともと当然カリキュラムに入っているわけだから,当然知っていますよという形で,あえて取り出してそれが診れる歯科医というものまで立場のリセッションなんか要らないんじゃないかなと。

 1点目はぜひともお願いしたいと思います。

【江藤委員長】  どうぞ。

【前野委員】  カリキュラム,学問としてはしごく当然なのはわかります。でも,先ほど申し上げたとおり,現実的には決してそうではない。患者サイドからすれば,全身を把握した上で歯科医療をしている歯科医がどれほどいるのか。医科でも歯科,口腔ケアに関してどれほど知識を持って,医療をやっているでしょうか。そこに大きな隔たりがあるというのが現実の感覚ですね。ところが,一部の志のある医科,歯科の先生たちの連携することによって,患者,特に高齢者を中心に生活のクオリティがよくなっているのを見聞きする。大学の先生方は,学問から知識を積み上げていくことによって臨床が変わると思われているのでしょうか。むしろ一部の現場で患者にとって非常に有意義な医療が行われている面があります。それを、もっと日本全体で行ってほしい。そのためには大学の学問レベルで広げていくべきではないか。患者サイドからはそういう感覚だと思います。医科、歯科どっちの先生がどれを診るかどうかということではなくて,患者の全身,特にいろいろな疾患を持っている高齢者に対して,有効なチーム医療を実現としていくためには,コア・カリキュラムという共通の基盤が必要だと思います

【江藤委員長】  ありがとうございました。

 歯科医療の現場があっての歯学教育でございます。それをきちんと認識しろということでございまして,決して大学のほうも認識していなかったわけではないんですが,組織というのはできてしまいますと自己増殖しますので,今改めてそれを国民目線にしようというのがここでございます。

【福田委員長】  医学のほうでコア・カリキュラムをつくった初めの動機は,今前野さんがおっしゃったのと直接関係しますが,専門診療の弊害なんです。これも診療科体制の問題になってきています。そこで,学生は先々何を専門にしようかということを入ってくるときから考えてしまうのです。それはではまずいのではないかという反省があった。第一線の現場に出ていった場合に,まず最低限,重要な命にかかわるようなことはきっちり判断できる医師,対応ができる医師ということになると,総合的な視点を持つべきとなります。教育の観点はそこに置くべきだろうということが最大のポイントでした。だけれども,それがまた今度は総合医という「専門医」のカテゴリーの一部に入ってしまっているんですね。非常にわかりにくくなっている。ですから,そういうところを改めて,今回も私どもの改訂の段階では,総合的な診療能力の基礎をつけるということに焦点を絞りました。

 そうなってくると,当然,あまり細かいところに関してはある程度削減していく必要があります。現場の診療科の体制と本来持つべきものとのギャップが厳然とあるのは正直認めざるを得ない。それを埋めていくのが我々の役目ではないかと考えております。

【江藤委員長】  ありがとうございました。

 それでは,最初のテーマはここまでにいたしまして,次にすぐれた歯科医師を養成する体系的な歯学教育の実施につきまして,荒木委員からお願いいたします。

【荒木委員】  それでは,続きまして,今言われましたすぐれた歯科医師を養成する体系的な歯学教育の実施で,実際はこれに医学医療との連携を含むということで,先ほど来の部分につきましては既に皆さんのご意見をいただいていますからよしとしまして,もう一つ,歯科のほうでかなり強く今後の歯学教育に取り込まなければいけない内容に在宅関連というのがございます。もっと外にいけば地域医療という単語になると思うんですけれども,資料の2-2を見ていただきたいのですが,後ろの2ページです。この在宅歯科治療と,その次に摂食・嚥下リハビリテーションという,これは実はメーンは老年医学会の先生方が歯学教育の中のカリキュラムをつくられて,それを日本歯科医学会にこの内容で送られたということなんです。今般,そういうのがあるならいただきたいということで,ファイルを送っていただきまして,今日ここにお見せしているわけで,これを全部取り入れるということではございません。ただ,専門領域の学会のほうとしては,もしきちんと学生に教える場合,これぐらい内容が必要なのだということを学会としてつくられたということであります。これは非常に重いのですが,ただ,これを全部,モデル・コアカリに入れるとかなりボリュームが出てしまうということで,これを今後どのようにモデル・コア・カリキュラムの中に入れていくかということは,これからチームで考えたいと思います。

 先ほど来の話の中で,私が1つ思っていることは,今お見せした在宅歯科医療にしても,摂食・嚥下リハビリテーションにしても,実は日本の29歯科大学の中で,すべてではないですけれども,多くをやられている大学が複数あるのは承知しております。問題は,それが一体カリキュラムとしては何なのかといいますと,先ほどのカラーの,選択制という単語はおかしいんですけれども,モデル・コア・カリキュラムの範囲外で,ご自分たちの大学の特色ある選択制カリキュラムというところで実施しているということでしか判断できないわけです。モデル・コア・カリキュラムに入っていないわけですから,それを大々的にこのようなカリキュラムをつくって,それぞれの大学の学生さんに教育しているわけですから,問題はその後ですね。このようなことを結局どこに入れるかということになるということです。もしこれをモデル・コア・カリキュラムの中に何らかの形で入れれば,一応形式上は日本の29歯科大学・大学歯学部全体に反映しますから,そこから卒業される学生さんには必ず何らかの形で在宅歯科医療と摂食・嚥下リハビリテーションにつきまして今以上の教育が行われるというのは間違いない。これがモデル・コア・カリキュラムの意味だと思っています。つまりこれを選択制にするか,必須のモデル・コア・カリキュラムに入れるかどうかということだけだと思っています。先ほど来言っているとおり,今後の高齢者社会のことを考えたときには,絶対にこれらの教育内容をモデル・コア・カリキュラムに入れなければいけないということで,今般,私たちはその作業を進めています。このことは多くのほかの項目も全部同じことだと思います。

 先ほど前野委員が言われたように,いろいろなことで現実そうなっていないことの1つは,いろいろなことにつきまして教育を行っている大学もあるのですけれども,大変お恥ずかしいのですけれども,コアカリに入っていないことは全国の29歯科大学・大学歯学部を卒業した学生さんが全員一律にある一定のレベルのことを教わっていないということが非常に問題となってしまいます。でも,すべて教えるとなるとパンクする,ここがモデル・コア・カリキュラムと選択制のバランスだと思うし,ある意味ではプラスで、ある意味でマイナスだと思うのですね。問題は,今回こういうモデル・コア・カリキュラムの改訂が来たときに,基本的には6年から10年ぐらいこのモデル・コア・カリキュラムの内容で教育が行われて行く予定になるはずですので,このときに将来,あるいは近未来を見据えた歯学教育,あるいは医学教育の内容を入れて,その時点で教育されて医師免許,歯科医師免許を持つ学生さんにどういうことを強く教えるかということを,このモデル・コア・カリキュラムがかなり規定するのでないかと思うので,十分考えなければいけないということだと思います。

 1つの例としまして,この厚い冊子の医学系のコアカリの56ページをあけていただきたいのですが,ここに地域医療臨床実習がございまして,昨日の医学系のコアカリの専門委員会では,これは全くいじくらずに残すと言われていました。これがほんとうに実現した場合,何が起こるかといいますと,例えば到達目標の5を見ますと,地域における疾病予防・健康維持増進の活動を体験する。実習形態,学外の地域病院,診療所,保健所,社会福祉施設などと書いてありますから,これを入れるということは,日本全国80大学の医学部はこれを常に実施しなければいけないということが規定されているわけですね。歯科には大学の外に出ていかなければいけないという項目は現在のモデル・コア・カリキュラムの中に入っていません。ですから,各大学のスペシャルの中でやっている大学もあれば,全くそんなことをやっていない大学があるということです。ここがモデル・コア・カリキュラムの一番大きな影響力だと思うので,私たち,ここまで踏み込めるかどうかわかりませんが,できればこういうところまできちんと書いて,今後の歯学教育を受けた歯科医師は,地域医療,在宅,摂食,リハビリをもっともっとすべての歯科医師が臨床の現場で活躍できるようなものを教えていかなければいけないということを強く私は思っている次第でございます。

 ほかの内科系とか医科との連携につきましては,先ほど来もう既に皆さんの議論が尽きておりますので,私のご報告としてはこれだけにさせていただきます。

【江藤委員長】  地域医療は資料2の5ページ目の一番最後,7,1行とちょっとですが,研究チームとしましては地域医療と在宅と摂食・嚥下については基本的にはコアカリの中に入れると考えています。ただ,その入れ方の問題で,地域医療の場合には医と歯とかなり違っています。地域医療,在宅を含めまして,むしろこれは臨床の現場から最初に,宮村先生はもうお時間がないようですから,どうぞご意見をお願いします。

【宮村委員】  もう少しじっくり考えて発言させてください。何か今,発言しようとしても,ちょっと軽々になるかもしれないと思うんで,要するに,こういう地域医療に関しては入れていただきたいんですけれども,当然入れるべきだと思うけれども,摂食・嚥下というのがちょっとひっかかるもんですから,要するに,上條課長がおっしゃったような医科との棲み分けとの,そういうものは全く無視して入れていいのかどうかがちょっとわからないものだから,在宅歯科医療について,これはここまでやれるかどうかはわからないにしても入れていただきたいけれども,摂食・嚥下がコアカリの中で扱っていいのかは,大丈夫なんでしょうかとこれを見ていて思いました。

【福田委員長】  地域医療につきましては昨日も議論になって,中での意見の不一致はないと思っています。これは前回の平成19年度の改訂のときには,医と歯の根本的な違いで,医師,歯科医師の需給関係との関係ですね。そこでどうしても地域へ行く医師が少ない。従来は厚生労働省の基準でいくと,対策としては、僻地離島対策という形で行われてきた。僻地という言葉は非常によくないんで,地域になったんですけれども,それでも何となくイメージが悪いんです。ですから,例えば東京の中だって,23区以外のところは僻地に近いところがありますよね。そういうところも含めて,医療資源の人的資源の格差の問題があるんですね。そこを何とか解決しないと,本来の医療供給体制上の問題があるということから,地域医療を早くの段階から学ばせる必要があると考えています。

 それから,研修等も含めて,大学ではできない,より一般的な疾患も体験する必要があります。それから現場のやっている介護等も知らなきゃいけないということでこれが入ってきた経緯があります。しかも地域医療実習だけでなくて,入学時当初からそれを体験して現場でやることの重要性がかなりの大学で行われるようになっています。やっていない大学はほとんどないと言っていいくらいです。それをきちんと位置づけることを目標にこれがつくられた経緯があります。ただ,この点に関しては,歯では大学病院と協力病院という関係が少ないのではないかと思ったりしますから,そこは問題があるんじゃないかと思います。

【荒木委員】  これまで私たちのチームでも明確に議論していないのですけれども,歯科も一応1年間の臨床研修がございまして,研修医が大学の外に出て研修していることが多いのですね。大学の中に残った人も,その多くの人協力型医療施設へ期間は半年とか数カ月ですけれども,大学の外の診療機関で何らかの研修をするということが、現在の日本の歯科の研修制度の中に入っています。そうなると,もしかしたらこの地域医療の部分は,歯科の場合は,在宅等は大学のところでは知識と1回ぐらい外部施設を見学するぐらいで,それさえ経験しておけば,それから臨床研修につなげるようにして、臨床研修の中では必ず全員がやらなければいけないとか,そういう規定が入れば一番よろしいのでしょうけれども,そういうふうに卒前と卒後をつなげてもいいのかなと私は思っています。全国29歯科大学・大学歯学部で医科のような56ページのことを全部実現するというのは,今の時点では時期尚早ではないかと私は考えてしまいます。

【福田委員長】  別にそれは同じでなくても全然構わない話で,私どもとしては,研修との連動性をかなり考えておりましたので,そこがうまくいくといいなという観点はありました。

【江藤委員長】  どうぞ。

【嶋田委員】  先ほどの摂食・嚥下につきましては,進学教育モデル・コア・カリキュラムの30ページに摂食・嚥下リハビリテーションを説明できると既に記載がありますので,チーム歯科医療のところはそこに在宅歯科医療を概説できるとか,そういうものは書いてありませんので,そういったことを荒木先生のチームで少し入れていただいて,摂食・嚥下に関しては従来は入ってはいると思います。

【宮村委員】  だから,その辺はわかっているんですけれども,この荒木先生のを見る限りはものすごく内容が濃いものですから,1つは,医科との棲み分けは大丈夫なのかなというのが1点と,前野さんとも先ほど話していたんだけれども,結局,全身的な数値であるとか状況を読める読めないというのを大学で教える,カリキュラムに入れる,それからこういった摂食・嚥下なんかもVFだとかVEとか,そういうのもを入れてやらせる。現実の問題は,僕なんかも教育としては受けたんだけれども,実際に臨床の現場で全身のための検査をしたときに,その検査の評価が保険の点数にあるかというとないとか,VEだとかVFが使えないとなったときに,学生は教育を受けてきたけれども,現場に出たときに,医師としてあるべきだというものの,実際に評価されなかったらちっとも進んでいかないというのが,実は僕でも卒業して開業したときにそれが生かされるなら知識は忘れないんだけれども,今すっかり忘れちゃったという,それはあるものだから,教育は何でもいいんだ,教育なんだからどういうものを入れてもいいけれども,でも,例えば医科の先生に,こんなことをお前やっちゃいけないじゃないかということになるとどうなのかなと,うまく言えないけれども,そういう現実はあると。

【福田委員長】  今の境界領域と同じ問題がありますね。診療報酬上のことも考えなきゃいけないですよ,はっきり言って。

【宮村委員】  でしょうね。

【福田委員長】  そう思いますよ。

【荒木委員】  これはあくまでも学会のほうが考えると派手にこういうふうになってしまうのですね。現時点で、どこを抜いて,どこを残していいかわからないから,全部そのままそっくりお見せしただけで,現実にこれを全部,すべての29歯科大学。大学歯学部に入れることは絶対無理なので,ただ,先ほど言いましたようにモデル・コア・カリキュラムに入れると,それが現実に行わなければいけなくなりますので,教育にしても実習にしても,宮村先生が言われるように十分考えないと混乱が生じます。ただ,この場所で言っていいかどうかわかりませんが,歯学教育自体は保険の治療がどうのこうのということを前提に教えるわけにいきません。しかし、当然,卒業した瞬間から,日本全国の歯科医師の免許を持った人間が保険治療を行うことになるわけですから,この辺のことは教育としては意識しなければいけないことは事実です。ただ、意識はしますけれども,教育のカリキュラムをつくるのに,これは保険点数が取れないから教わらないでいいよと,そういうわけにはさすがに言えませんので,その辺は学問的な体系として構築した部分は学生に与えなければいけないということは当然だと思っております。

【江藤委員長】  診療報酬として請求できなければ忘れてしまうというのは,医療制度というのは結局は教育,場合によっては研究まで規制してしまうというのは世界共通でございます。ただ,そうはいっても診療報酬の中にないから手抜きをするというわけにもいかない。ここはジレンマでございます。ただ,先ほど前野委員がおっしゃったように,業界の中での話じゃなくて,国民あっての歯科医療ですから,そこら辺のところは医療制度と歯学教育といったものは別々にあるものじゃないということを共通認識として先生方,お考えいただきたいと思っております。

 何度も言いますけれども,隣接医学はかなり膨大な時間数を割きながら,ほとんど身についていないという反省の上に立って医歯の連携を検討しているところでございます。だから,また同じ轍を踏むのかということのないように,コアカリを検討していきたいと、思います。

 先生方,何かご意見ございましたら。

 それでは,2つ目のテーマはここまでにいたしまして,3つ目の未来の歯科医療を拓く研究者の養成でございます。これについて,荒木委員からお願いいたします。

【荒木委員】  この3番の未来の歯科医療を拓く研究者の養成ということは,まだ細かく具体的にチームでどこまで何をするかということは決まっていません。ここに今2つ書いてありますが,学部教育のあらゆる機会を通じて,研究マインドの育成に努めるべきであることを前文に明示すべきではないかという意見,研究マインドの育成のための実践例,研究室配属等についてコアカリ本体の別添資料として参考にすべきじゃないかとか,こういう意見が出たぐらいですが,実は昨日の医科のコアカリの改訂のほうでどのようにするかということが具体的に明示されまして,それをご紹介して,歯科のほうはどうするかということをお時間が許す限り議論した意図思います。先ほどの医学教育の中の黄色の4ページをあけて下さい。これは同じものが書いてありますが,今の医学教育のモデル・コアカリの4ページ,大きな4に課題探求・解決と学習の在り方という項目がありまして,ここに1)から4)まであります。この中に実は3)をつけ加えるというのが医学系の今回の案でございまして,ここに明確に研究マインドの涵養を新設して,一般目標と到達目標を具体的に書き込むことをしたいということになりました。

 その結果,従来の医学系のモデル・コア・カリキュラムでは,4)に科学的研究という単語が入っていた。この科学的研究という部分についてすべて研究マインドの涵養のほうに移すというような形で,明確にモデル・コア・カリキュラムの中に研究マインドの涵養というのを入れるということにされるようです。歯科は先ほどご説明したとおり,現時点での調査チームの意見では,コアカリの中には何も入れないで,前文とか別添にしようかということなのですけれども,ここまで医科と歯科の記述内容が違うような状況になると非常にまずいので,よろしかったら福田先生に,ここに入れるようになった経緯をご説明いただけますでしょうか。お願いいたします。

【福田委員長】  医の話ばかりになって恐縮です。この研究マインドの関連については,前回のモデル・コア・カリキュラムの改訂にときに,既に学習の在り方というのも変えています。課題探求・解決能力など,ちょっと忘れてしまいましたけれども,ここにあえて選択制カリキュラム(医学研究等)に参加できるというふうにしました。これでもまだよく見えないところがあったんです。実はこれは,この点に関しての教育上のプロセスの中でこういうことをどうやってやったらいいかという長い議論がありました。それは一方で,臨床技能だけを教育すればいいような動きがあります。最近の特にヨーロッパ系統の教育の内容のガイドラインを見てみますと,例えばプロフェッショナリズムとか,倫理,態度ということと,それから技能のことが非常に強調されて,リサーチマインドのところはどんどん小さくなってきている現状があります。一方,アメリカはそういうことと逆に,もうちょっと将来の医師養成をどうしたらいいかということで,基礎科学やリサーチは不可欠であるということが出てきております。

 そこで,我が国ではどうあるべきかというのはほんとうに長い議論があって,特に基礎系の先生だけじゃなくて,臨床系で次世代の新しい技術開発なり研究をきちんとやっている方々からの要望もかなり強く,これは避けて通れないところだと思います。特に歯学部でもそうですけれども,6年間以上の教育の中の188単位ぐらいの単位数の中に,卒業要件として卒論なんかないんです。これをよその学部から鋭く指摘をされていまして,研究のケの字も知らないで威張っている医者がいると言われて,大学院でしかやっていなかったんです。それはお恥ずかしくて認めざるを得ないところです。

 ですから,学部教育6年の中で,基礎研究を全部やれというわけでは決してなくて,研究のあり方の基本,それから臨床研究的な集団を相手にした研究のあり方とか,実験研究の基礎技術とか,そういうのを含めて経験させることが必要であると思います。場合によってはレポートを書いて提出させることも必要だというのが共通の理解になってきました。そこで,あえてこういう研究マインドの涵養ということで,これもそんなに大したことを言っているわけじゃないんですけれども,非常に常識的に,一般のよその学部だったら当然こんなことはやっているだろうということを,あえてここに書かせていただいた次第です。ですから,これは全体としてあまり多く増やしているわけではなくて,内容の再構築を図った上で,非常に明確にしたというのが骨格です。これについては特に異論がないと思います。

【荒木委員】  ありがとうございました。実は歯科のほうも,あけていただきますと,参考資料1の5ページの一番下と6ページ,ここに実は今の医学系のモデル・コア・カリキュラムとほぼ同じような内容が一般目標と到達目標に書かれています。これは前回の19年の改訂のときに,医学系のほうもここにこういうふうな形で入れられたので,歯学系もほぼ同じようなものを入れて,研究マインドの育成については,文字は書いていませんけれども,そのような形で入れさせていただいたという経緯があるのですね。ただ,実は今日の資料にはありませんけれども,2年ぐらい前に文部科学省の受託研究で,第三者評価についての調査研究がありまして,その中で私が全29歯科大学・大学歯学部に,2年ぐらい前のカリキュラムの中で研究体験実習とか研究室配属という研究マインドの育成についてどのようにやっていますかといったら,詳細な数字は忘れましたが,半分ぐらいの大学が全くやっていないと答えてきていました。ただ,それはこのコア・カリキュラムが入るちょっと前ぐらいの調査なので,その後どうなっているかは調べていませんけれども,なかなか全大学がこういうことをやるということは、少し負担がかかるのではないかなというのはその時点で感じました。ですから,医科と歯科と違うかもしれませんけれども,こういう項目をきちんと記載すると,先ほど言いましたとおり,コアとしてやらなければいけないということになりますので,私のような国立大学にいる人間たちは研究マインド育成というのは大学の役目だということで,書かれていて当たり前なんですが,そういうところが悩み多いという感じです。

【福田委員長】  ただ,やり方としては,全員がやるという形ではなくて,1つの方法としては選択制の中に各学生の希望に応じてやることがあります。医学系はほとんどの大学が全部研究室配属をやっておりますので,そこでレポートを出しているところもあるし,義務づけている大学も出てきているんで,それは1つの進歩かなと思います。ただ,大方は基礎系の先生方が自分のところに人が来ないのを寂しがって抱え込むという傾向はありますけれども,臨床でもそれは全然構わない話であって,逆に臨床をやりながらリサーチをやっていかなきゃいけないというのは次世代の医師にとって必要なことなので,そういうスタンスで行われているようです。もうやっていないところはないと思います。

【江藤委員長】  ご意見ございますか。どうぞ。

【西原委員】  指導者ワークショップのときに医学部の先生方が卒論ということをかなり発言されていて,私も新たな感覚で聞かせていただいたんですが,うちの大学の場合も基礎系だけが研究室配属という形で5年ぐらいやっていて,今福田先生がおっしゃったように,基礎の先生たちが囲い込みに走る嫌いがあって,今は臨床系も含めた全教室がリサーチマインドを育てるという視点で預かっているというのが現状なんですね。そうしますと,確かに6年生で登院実習に入ってくると,そのマインドが歯学部の場合ほとんどなくなってしまう。

 もう一つ,医学部の場合は,何年か臨床を経験してまた大学院に戻るという医師が多いですよね。それが歯学の場合はほとんどない。そういうことでいうと,早い時期に涵養すべきはリサーチの楽しさ,そこから患者さんにとってどういうものが生まれるかという素地を培うことは非常に大事だと思っています。今,荒木先生が調べた限りでは全大学がされていないということであると,これも先ほどの基礎系の生命科学と同様に,大学の音頭をそろえる作業としてのモデル・コアのあり方を考えていただきたいなと思います。

【荒木委員】  わかりました。

【江藤委員長】  よろしゅうございますか。

 先ほどの福田先生のお話に追加いたしますと,医学のほうで課題探求・解決能力,学習の在り方に研究マインドを加えると。課題探求・解決能力というのが世界的に言われ始めたのが1991年のハーバードのニューパスウェイ,問題解決型の教育を導入したときからです。リサーチマインドが必要であるというのはアメリカも認識していたんですが,アメリカの場合はメディカルスクール,デンタルスクールなので日本のように研究室配属がなかなか難しいと。そのかわりにといってはなんですがPBLが出てきた。日本もそれをまねしたわけです。ところが,日本はもともと基礎配属と言わなくても,研究室に出入りしている学生が1学年に数人はいたわけです。それによって研究者の養成が行われてきました。ところが,だんだん基礎の研究室に来る学生がいなくなったと思います。経験的にはこの20年,課題探求型と言わなくても研究室に配属したほうがずっと研究マインドが養成されるじゃないかという,従来から自分たちでやってきたことを追認した傾向があるんではないかと思われます。それでもってここでリサーチマインドが出てきたんだろうと。歯学のほうもそういった背景がありますので,何らかの形で導入していったほうがいいのだろうと思っております。これは研究チームで検討していただきたいと思います。

 この件につきまして,ご意見ございましたら。

 それでは,この3つ目のテーマにつきましては以上にさせていただきます。

 この3つのテーマは一応終了でございますが,最後にその他といたしまして,資料1の基本方針の今回の改訂に係る検討内容の冒頭において,医学・歯学教育に係るさまざまな社会的ニーズ等も念頭に置きとありますので,これについて荒木先生からお願いいたします。

【荒木委員】  それでは,最後にその他,さまざまな社会的ニーズへの対応ということで,机上資料の41ページをごらんください。CBT,OSCE,モデル・コア・カリキュラムの集計の最後に学会からの要望内容(抜粋)というのがございまして,最初にご説明しましたけれども,まだ学会あるいは大学からの要望がすべてまとまっておりませんが,今回,この会議までの間に集まって,これに匹敵するようなところだけ抜粋してきましたので,そこだけご紹介させていただきます。実際,医療安全,医療倫理,チーム医療,児童虐待防止とか,様様なことがあるのですが,例えば41ページで,どの学会からかは書いてございませんが,複数の学会から禁煙指導・支援というのについて,これはどちらかというと,先ほど宮村先生が言われたように,もしかしたら保険の報酬とかそういうのも意識しているのかもしれないですけれども,ただ,それを考えなくても非常に重要な項目です。歯科の疾患に対して喫煙というのはリスク因子になっているのは間違いなくて,エビデンスもございますので,これについてぜひ歯科医師のほうでも禁煙指導・支援をやるんだということを教育の中で入れてほしいというのを希望されてきています。

 それから,障害者歯科医療の充実というのは,先ほどの現行の歯学モデル・コア・カリキュラムの参考1でいきますと,モデル・コア・カリキュラムの中で障害者の歯科治療というのは30ページにF-4-4がございまして,ここに障害者の歯科治療という1つの大きな項目がありまして,その中にこのように一般目標,到達目標4つが入っております。どこから出たかはわかってしまいますが,障害者歯科の歯科医療の充実をもっと入れてほしいということで書かれておりました。

 3番目,これは大きな概念で言っていますので,具体的なことは書いてなかったのですが、今回多くの方がお話しされている、時勢に即した医療概念,疾病,治療法,診療器材等についての検討・追加をしてほしいということ。その前に,上から2行目に,日々刻々と進歩をしている上に,患者さん,あるいは社会が求める歯科医療の対象範囲が広がりを見せてきていると。当然,広がりを見せてきている上に,良質であることを期待している。これは当たり前ですが,それに対して,今のコアカリももっとそういう部分を入れるべきだというのがこの学会から来た意見でございます。

 最後に,今歯科の中ではMI,すなわちMinimal Interventionという概念がありまして,虫歯,あるいはほかの口腔内の治療をするときに,できる限り最小限の侵襲で済ませるべきだというような概念があります。この概念は,はっきり言いまして,今,全大学で教えられているのですが,コアカリにもう少しきちんと書くべきなのではないかということの意見だと思います。これはすでに教育内容として、そういうことが行われていますので,コアカリに書くことについては何も問題ないかな、というのが私の個人的な意見でございます。

 それから,これは資料として別添でお配りしていますが,社団法人日本小児歯科学会から,子ども虐待防止対応ガイドラインが出されています。ホームページでも出ていますが,先生方はご存じだと思いますけれども,今,児童の虐待が社会問題になっておりますが,児童の虐待の中で,虐待されているんじゃないかという疑いの中に,暴力を振るわれるために子供さんの歯が折れたり,悪いことになるわけですね。それで,最初に歯科医師を訪れる可能性があるというのがデータ的にあるんですね。歯科医師のほうでもこういうことをちゃんと知っておくことで,疑い事例が発見できるのではないかというようなことを小児歯科学会からきちんとレポートが出されておりまして,これについてモデル・コア・カリキュラムに入れたほうがいいのではないかと。すべての歯科医師がこれを教わりますから,今は一部の大学で選択授業としては教わっているわけですが、全大学で教えている訳ではありません。

 もう一つ,これは机上配付しておりませんが,ご存じの方もおられると思いますけれども,記録に残すとまずいのかもしれないですけれども,今年,東京の江戸川区で両親が小一の長男に対して虐待をして死亡したという事例があるのですが,問題はいろいろこれを調査してみると,最初に近所の歯科医師のところに長男の子が治療しに行ったらしいのですね。それで,歯科医師の先生がおかしいと。多分,歯がすごく折れていたかなんかしたんじゃないかと思うんですね。それで,虐待の疑いがあるということを区に通報したというような事例があるのですね。ですから,最初にとりあえず公にするということの1つに歯科医師がかかわる可能性が非常に高いというような事例が,結構あるというのがわかっておりまして,こういうのについても歯科医師の1つの社会的なニーズというよりは責任だと思うのですけれども,具体的にもう少し明確にコアカリに入れて,教育の内容の中に入れてほしいというのが来ております。

 もちろんそれ以外に今日配られました資料の4,一番最初に唐沢補佐から言われましたが,このような形でモデル・コア・カリキュラムの改訂に対していろいろ要望書が出ていますが,この中に明らかに医学系だけじゃなくて,歯学系のほうでもかなり意識して取り入れなければいけないような項目があるというのは認識しております。それにつきまして,こういう資料を見ながら,歯科のほうでもこのような中で必要なものについては入れたいと。できればこういうことについて医科と連携をとって,もちろん立場は違いますが,教える内容が医科と歯科で違うというのは私は逆におかしいのではないかと思う部分がありまして,例えば薬害関係のそういうものを入れるとしたら,医学系と歯学系とある程度項目が合わせられれば一番いいかなと思っています。

 社会的なニーズにつきましては,はっきり言って,今ご説明した内容以外にもいっぱいあるのではないかと思いますが,すべて取り入れられませんので,いろいろなご要望をいただいた中から必要だと思うものをチームで協議して,入れるべきものを入れていくというスタンスでおります。

 以上でございます。

【江藤委員長】  ありがとうございました。

 最後の幾つかございましたけれども,ご質問等ございますか。

 どうぞ。

【関本委員】  2点ほどお願いしたいと思うんですが,今の禁煙については,医科のほうは既に生活習慣のところで入っているんですね。歯科は口腔疾患の予防と健康管理というところで,口腔疾患の予防と健康管理を理解するという中の主な口腔疾患(う蝕,歯周疾患,不正咬合)の予防を説明できると。8ページですけれども,括弧書きで生活習慣病の改善指導を含むという形で入っているんですけれども,これを見ても禁煙指導には多分結びついていないんだろうと思いますので,禁煙指導という言葉が中に入るような形で入れていただけると,歯科のほうが直接的には非常に害のあるものだと思いますので,ぜひ入れていただきたいというのが1点と,今の子供の虐待なんですけれども,僕は専門は小児歯科なんですけれども,僕も経験が実はあります。これは知識があるのとないのとでは防止できるかできないかにかかわってくると思いますので,小児歯科をやっている先生はかなりここはシビアに見ていると思いますし,これは歯科医師全体で虐待を防止するという意味では,ぜひ教育の中に入れておくべきだと思います。

 以上です。

【江藤委員長】  ありがとうございました。

 ほかにございますか。

【荒木委員】  実は先ほど詳しくご説明しませんでしたが,昨日の医学系の会議でも同じようなメニューでやったのですが,最後のその他社会的ニーズの中で,ある委員の先生から,医療安全の中で,昔というか今もそうですけれども,院内感染とかそういう項目を中心に最初言われたのですけれども,今はそれ以外のこともいろいろな項目が出てきているということで,院内感染のことだけを考えるのではなくて,幅広く入れてほしいというような意見がありました。

 それから,新しい感染症,これは西原先生がご専門ですけれども,そういうのもありますので,当然,そういう病気にかかっている患者さんが歯科にも訪れるわけですから,そういうときに全然わからない,新型インフルって何ですかって,そういうわけにいきませんので,そういう項目もきちんと教えなきゃいけないとか,いろいろなことが意見として出ていましたので,歯科もできる限り取り入れたいと思っています。

【江藤委員長】  どうぞ。

【福田委員長】 今の点はかなり大事なところで,細菌感染とかの感染症との関連で,私どものコアカリは前からその辺のところの統一がとれてないなという実感をしておりました。それは基礎医学的な細菌,ウイルスのこと,それから医療者自身がみずからを守るための医療安全のこと,それから院内感染については既に記載が十分されているんですけれども,それが一体として見えないというところなんですね。そうしますと,記載を1カ所に持っていったらいいかとなると,これまたバランスが崩れてしまうんで,非常に難しいところがあります。

 そこで,どういう対応をしたらいいかということがあるんですが,1つの方法としては,関連するところは別のところを参照してくださいというような,矢印で見えるようにするという工夫をしていくことが実際上,コア・カリキュラムを読んでいただく上では必要になってくるんじゃないかと思います。今のところはそれぞれ書いてあるんですけれども,またどんどん追加しろとなるとこれまた問題があるので,今の段階でも歯のほうでももしそういうのが有機的に連携して,そこにまとめて言うのは簡単だけれども,全体の構成上は非常に難しくなるので,知恵を絞らなきゃいけないところだと思います。

 それからもう一点は非常に大事なところなんですが,いろいろご要望等は社会的な状況も勘案して,かなりいろいろなものが盛り込まれてくると思います。それをどう取り扱うかはかなり慎重に扱わなきゃいけないでしょう。詳細にわたるようなところについては,私どもが前から考えていたのは,外国の例を参考にしていたんですけれども,参考資料を提示するというようなことで,さらに各大学の参考のために提示するというのが1つの方法かなと思います。そうしないと,コアカリ本体がどんどん厚くなるばっかりで、本来の趣旨から外れてしまう。そういうやり方も検討に値するかなというのが1つの観点ですね。

【江藤委員長】  ありがとうございました。

 ほかにございますか。

 ほかにございませんようでしたら,本日の議論を含めまして,先生方のさらに追加等がございましたら,1週間後の11月22日までに事務局までメール等でご連絡をくださいということでございます。追加でいただける意見等につきましては,研究チームに提供いたしまして,今後の検討にご留意いただくということでございます。

 それでは,本日予定した議題はすべて終了いたしました。最後に,事務局から今後のスケジュール等についてご説明をお願いいたします。

【唐沢課長補佐】  長時間にわたりありがとうございました。

 まず1点,今,江藤委員長からお話がありました追加の意見等につきましては,本日ご欠席の委員も含めまして,本日夜,メール等にて,具体的にいつまで,どのような形でという形でご案内をさせていただきたいと思いますけれども,基本的には,本日,荒木委員からご説明があった内容等に関して,また改めて各委員で持ち帰りごらんになって,お気づきの点がありましたら,来週22日月曜日までに,メール文でも構いませんし,ワードか何かのファイルに打ち込んだものでも結構ですので,事務局に送付いただければ,事務局で整理して調査研究チームにも提供し,また,必要に応じて,この会議でも各委員の方にもお示しし,今後の検討に生かしていきたいと思っております。

 最後に今後の検討スケジュールについてでございますが,本日お配りした資料5と書いた一枚紙をごらんください。右肩に資料5と記載された今後の検討スケジュールについて(案)というものでございます。本日,11月16日火曜日,専門研究委員会<歯学>(第5回)ということが中段に記載されていますけれども,次回は事前に委員の先生方には日時のみご連絡さしあげたと思いますが,改めて申し上げますが,12月20日月曜日,今のところ15時から2時間ということで,次回は年内最後でもございますので,連絡調整委員会と医学と歯学の専門研究委員会の合同という形で開催させていただき,内容といたしましては,調査研究チームにおいて,少ない期間ではありますが,残り1カ月ぐらい引き続きご検討いただき,とりあえず改正素案の中間報告案のような形のものをまずご報告いただき,それを踏まえて総括的なご審議をいただけたらと考えております。

 その後の予定につきましては,これから日程調整等を行わせていただきたいと思いますが,その下にございますように,当面,年内に中間報告,その後,いただいた中間報告について12月20日の審議等の結果を踏まえた,その時点での中間とりまとめ案につきまして,パブリックコメントというようなことを今のところ1月あたりに,連絡調整委員会及び専門研究委員会のクレジットでさせていただき,そういったパブリックコメント等でいただいたご意見等も踏まえまして,引き続き調査研究チームにおいて1月,2月とご検討いただき,2月下旬ごろを目処に最終的なその時点での改訂素案を固めていただいて,その後,専門研究委員会で内容を精査して改訂原案を固め,最終的には連絡調整委員会の審議を経て,今のところ年度内を目途にその時点での改訂版を取りまとめて,大学等へ周知できればと考えております。

 なお,前回,9月30日の会議でも多少ご意見等がございましたが,このコアカリの改訂以降,例えばポートフォリオのような評価の仕組みにつきましては,実は今般の委託調査につきましては,2年度間の形での委託となっておりますので,来年度は評価の仕組みづくり等について,引き続き医学,歯学それぞれの調査研究チームにおきまして,いろいろとご検討いただきたいと考えております。以上でございます。

【江藤委員長】  ありがとうございました。

 それでは,本日の会議,終了させていただきます。どうも長時間ありがとうございました。

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