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おわりに

   薬学教育にあって、医療の一翼を担う薬剤師の資質向上を図る観点から、医療薬学教育を一層充実していくことの必要性が平成8年3月「薬学教育の改善に関する調査協力者会議」において指摘された。その後、医療薬学教育を取り巻く社会環境の変化は大きく、早急かつ抜本的な教育内容の見直しが不可欠となった。本薬学教育実務実習モデル・コアカリキュラム報告書は、従来の医療薬学教育においては必ずしも十分でなかった実務実習教育の充実・改善の第一歩を記したものである。今後、教育環境や薬剤師受験資格の変化などに応じて、改善を進めて行くことが期待される。
   本報告書を纏めるにあたって、文部科学省「薬学教育の改善に関する調査協力者会議、実務実習モデルコアカリキュラムの作成に関する小委員会・作業部会」、日本薬学会「薬学教育カリキュラムを検討する協議会」のメンバー、ならびに日本薬剤師会、日本病院薬剤師会の関係者の方々の労に対して深甚なる感謝の念を表したい。
   本報告書は、実務実習モデル・コアカリキュラムとその実施に必要な方略を記載したものである。到達目標は、先に纏められた日本薬学会「薬学教育モデル・コアカリキュラム、実務実習・卒業実習カリキュラム」を基盤にしながら、文部科学省「薬学教育の改善に関する調査協力者会議、実務実習モデルコアカリキュラムの作成に関する小委員会・作業部会」において作成されたものである。今回の作成作業が短期間に集中的に行うことができたのは、直接作業に携わった多数のメンバーが費やした膨大な時間に加え、延べ450以上に及ぶ薬系大学、関係団体から送られてきた意見のお陰である。
   今後、これらの多大な労苦を無駄にせず、充実した医療薬学教育を実現化する必要がある。そのたには是非とも以下のようなお願いをしたい。



関係諸氏へ
   本報告書で提案するモデル・コアカリキュラムは、実務実習開始前の適切な教育評価を前提にし、薬剤師としてスタートするに必要な最小限の到達目標とその実践方法である方略の「標準」を記載したものである。薬系大学にあっては、それぞれの教育理念に基づいて、モデル・コアカリキュラムを基盤にした教育効果を挙げるための固有なカリキュラムを作成することを期待する。
   関係諸氏にあっては、今後、実務実習事前学習後の学生の能力の適切な評価法、実務実習受入先の均質な教育環境の確立、また教員と現場指導者の協力体制やその能力開発の在り方などについて、早急に検討を進め、実務実習カリキュラムの完全実施に向けて一層の努力を期待したい。

薬学生へ
   今回の実務実習モデル・コアカリキュラムは医療現場で活動する薬剤師の資質向上を図るため、薬剤師育成教育の主体を成す実務実習事前学習と病院・薬局実務実習を充実・改善をするためのものである。実務実習モデル・コアカリキュラムの改善は、学習する側の薬学生一人一人の意識改革が進まなければ成果はあり得ない。それには、医療チームの一員として働こうとする高尚な精神と態度、薬剤師職能に必要な最小限の技術・知識を習得しようとする学習意欲等が大事である。毎日の研鑽と努力を期待する。

国民の皆様へ
   21世紀、生命科学の技術・知識の著しい進展にともない、医療技術は一段と高度化し、薬物療法への期待が高まり、医薬品の適正使用が重要な課題となっています。薬剤師はこれまで医療人として医薬品の適正使用において責任を果たしてきましたが、医療や科学の進展に対応できる高い資質を有する薬剤師を育成するために、薬学での薬剤師育成教育を充実・改善させることが必要です。それには、薬剤師受験資格を得ようとする薬学生に対し、病院および薬局での臨場感ある実務実習の学習が教育上不可欠です。そのため、このたびの実務実習モデル・コアカリキュラムの策定は全薬学生の知識・技能・態度学習を均一化するためのものです。これまで行ってきた実務実習に較べて、内容と期間において非常に充実したものと成っています。さらに、病院・薬局において実務実習を実施する前には、大学は学生に対して十分な事前学習を実施し、その成果を適正評価します。
   国民の皆様には、薬剤師育成教育における実務実習の必要性を認識いただき、ご協力をお願いする次第です。

平成15年12月

実務実習モデル・コアカリキュラム策定に関する小委員会
座長      市川   厚



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