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2)病院実習

一般目標:
   病院薬剤師の業務と責任を理解し、チーム医療に参画できるようになるために、調剤および製剤、服薬指導などの薬剤師業務に関する基本的知識、技能、態度を修得する。

(1)病院調剤を実践する
一般目標:
   病院において調剤を通して患者に最善の医療を提供するために、調剤、医薬品の適正な使用ならびにリスクマネージメントに関連する基本的知識、技能、態度を修得する。


《病院調剤業務の全体の流れ》
1.    患者の診療過程に同行し、その体験を通して診療システムを概説できる。
2.    病院内での患者情報の流れを図式化できる。
3.    病院に所属する医療スタッフの職種名を列挙し、その業務内容を相互に関連づけて説明できる。
4.    薬剤部門を構成する各セクションの業務を体験し、その内容を相互に関連づけて説明できる。
5.    処方せん(外来、入院患者を含む)の受付から患者への医薬品交付、服薬指導に至るまでの流れを概説できる。
6.    病院薬剤師と薬局薬剤師の連携の重要性を説明できる。

《計数・計量調剤》
7.    処方せん(麻薬、注射剤を含む)の形式、種類および記載事項について説明できる。
8    処方せんの記載事項(医薬品名、分量、用法・用量など)が整っているか確認できる。
9    代表的な処方せんについて、処方内容が適正であるか判断できる。
10    薬歴に基づき、処方内容が適正であるか判断できる。
11    適切な疑義照会の実務を体験する。
12    薬袋,薬札に記載すべき事項を列挙し、記入できる。
13    処方せんの記載に従って正しく医薬品の取りそろえができる。(技能)
14    錠剤、カプセル剤の計数調剤ができる。(技能)
15    代表的な医薬品の剤形を列挙できる。
16    代表的な医薬品を色・形、識別コードから識別できる。(技能)
17    医薬品の識別に色、形などの外観が重要であることを、具体例を挙げて説明できる。
18    代表的な医薬品の商品名と一般名を対比できる。
19    異なる商品名で、同一有効成分を含む代表的な医薬品を列挙できる。
20    毒薬・劇薬、麻薬、向精神薬などの調剤ができる。(技能)
21    一回量(一包化)調剤の必要性を判断し、実施できる。(知識・技能)
22    散剤、液剤などの計量調剤ができる。(技能)
23    調剤機器(秤量器、分包機など)の基本的な取扱いができる。(技能)
24    細胞毒性のある医薬品の調剤について説明できる。
25    特別な注意を要する医薬品(抗悪性腫瘍薬など)の取扱いを体験する。(技能)
26    錠剤の粉砕、およびカプセル剤の開封の可否を判断し、実施できる。(知識・技能)
27    調剤された医薬品に対して、鑑査の実務を体験する。(技能)

《服薬指導》
28    患者向けの説明文書の必要性を理解して、作成、交付できる。(知識・技能)
29    患者に使用上の説明が必要な眼軟膏、坐剤、吸入剤などの取扱い方を説明できる。
30    自己注射が承認されている代表的な医薬品を調剤し、その取扱い方を説明できる。
31    お薬受け渡し窓口において、薬剤の服用方法、保管方法および使用上の注意について適切に説明できる。
32    期待する効果が充分に現れていないか、あるいは副作用が疑われる場合のお薬受け渡し窓口における対処法について提案する。(知識・態度)

《注射剤調剤》
33.    注射剤調剤の流れを概説できる。
34.    注射処方せんの記載事項(医薬品名、分量、用法・用量など)が整っているか確認できる。(技能)
35.    代表的な注射剤処方せんについて、処方内容が適正であるか判断できる。(技能)
36.    処方せんの記載に従って正しく注射剤の取りそろえができる。(知識・技能)
37.    注射剤(高カロリー栄養輸液など)の混合操作を実施できる。(技能)
38.    注射剤の配合変化に関して実施されている回避方法を列挙できる。
39.    毒薬・劇薬、麻薬、向精神薬などの注射剤の調剤と適切な取扱いができる。(技能)
40.    細胞毒性のある注射剤の調剤について説明できる。
41.    特別な注意を要する注射剤(抗悪性腫瘍薬など)の取扱いを体験する。(技能)
42.    調剤された注射剤に対して、正しい鑑査の実務を体験する。(技能)

《安全対策》
43    リスクマネージメントにおいて薬剤師が果たしている役割を説明できる。
44    調剤過誤を防止するために、実際に工夫されている事項を列挙できる。
45    商品名の綴り、発音あるいは外観が類似した代表的な医薬品を列挙できる。
46    医薬品に関わる過失あるいは過誤について、適切な対処法を討議する。(態度)
47    インシデント、アクシデント報告の実例や、現場での体験をもとに、リスクマネージメントについて討議する。(態度)
48    職務上の過失、過誤を未然に防ぐための方策を提案できる。(態度)
49    実習中に生じた諸問題(調剤ミス、過誤、事故、クレームなど)を、当該機関で用いられるフォーマットに正しく記入できる。(技能)

(2)医薬品を動かす・確保する
一般目標:
   医薬品を正確かつ円滑に供給し、その品質を確保するために、医薬品の管理、供給、保存に必要な基本的知識、技能、態度を修得する。


《医薬品の管理・供給・保存》
1.    医薬品管理の流れを概説できる。
2    医薬品の適正在庫の意義を説明できる。
3.    納品から使用までの医薬品の動きに係わる人達の仕事を見学し、薬剤師業務と関連づけて説明できる。
4.    医薬品の品質に影響を与える因子と保存条件を説明できる。
5    納入医薬品の検収を体験し、そのチェック項目を列挙できる。
6    同一商品名の医薬品に異なった規格があるものについて具体例を列挙できる。
7.    院内における医薬品の供給方法について説明できる。
8.    請求のあった医薬品を取り揃えることができる。(技能)

《特別な配慮を要する医薬品》
9    麻薬・向精神薬および覚せい剤原料の取扱いを体験する。(技能)
10    毒薬、劇薬を適切に取り扱うことができる。(技能)
11.    血漿分画製剤の取扱いを体験する。(技能)
12    法的な管理が義務付けられている医薬品(麻薬、向精神薬、劇薬、毒薬、特定生物由来製剤など)を挙げ、その保管方法を見学し、その意義について考察する。(態度)

《医薬品の採用・使用中止》
13.    医薬品の採用と使用中止の手続きを説明できる。
14.    代表的な同種・同効薬を列挙できる。

(3)情報を正しく使う
一般目標:
   医薬品の適正使用に必要な情報を提供できるようになるために、薬剤部門における医薬品情報管理(DI)業務に必要な基本的知識、技能、態度を修得する。


《病院での医薬品情報》
1.    医薬品情報源のなかで、当該病院で使用しているものの種類と特徴を説明できる。
2.    院内への医薬品情報提供の手段、方法を概説できる。
3    緊急安全性情報、不良品回収、製造中止などの緊急情報の取扱い方法について説明できる。
4.    患者、医療スタッフへの情報提供における留意点を列挙できる。

《情報の入手・評価・加工》
5    医薬品の基本的な情報を、文献、MR(医薬情報担当者)などの様々な情報源から収集できる。(技能)
6.    DIニュースなどを作成するために、医薬品情報の評価、加工を体験する。(技能)
7    医薬品・医療用具等安全性情報報告用紙に、必要事項を記載できる。(知識・技能)

《情報提供》
8.    医療スタッフからの質問に対する適切な報告書の作成を体験する。(知識・技能)
9.    医療スタッフのニーズに合った情報提供を体験する。(技能・態度)
10.    患者のニーズに合った情報の収集、加工および提供を体験する。(技能・態度)
11.    情報提供内容が適切か否かを追跡できる。(技能)

(4)ベッドサイドで学ぶ
一般目標:
   入院患者に有効性と安全性の高い薬物治療を提供するために、薬剤師病棟業務の基本的知識、技能、態度を修得する。


《病棟業務の概説》
1.    病棟業務における薬剤師の業務(薬剤管理、与薬、リスクマネージメント、供給管理など)を概説できる。
2.    薬剤師の業務内容について、正確に記録をとり、報告することの目的を説明できる。
3.    病棟における薬剤の管理と取扱いを体験する。(知識・技能・態度)

《医療チームへの参加》
4.    医療スタッフが日常使っている専門用語を適切に使用できる。(技能)
5.    病棟において医療チームの一員として他の医療スタッフとコミュニケートする。(技能・態度)

《薬剤管理指導業務》
6.    診療録、看護記録、重要な検査所見など、種々の情報源から必要な情報を収集できる。(技能)
7.    報告に必要な要素(5W1H)に留意して、収集した情報を正確に記載できる(薬歴、服薬指導歴など)。(技能)
8.    収集した情報ごとに誰に報告すべきか判断できる。(技能)
9.    患者の診断名、病態から薬物治療方針を把握できる。(技能)
10.    使用医薬品の使用上の注意と副作用を説明できる。
11.    臨床検査値の変化と使用医薬品の関連性を説明できる。
12.    医師の治療方針を理解したうえで、患者への適切な服薬指導を体験する。(技能・態度)
13.    患者の薬に対する理解を確かめるための開放型質問方法を実施する。(技能・態度)
14.    薬に関する患者の質問に分かり易く答える。(技能・態度)
15.    患者との会話を通して、服薬状況を把握することができる。(知識・技能)
16.    代表的な医薬品の効き目を、患者との会話や患者の様子から確かめることができる。(知識・技能)
17.    代表的な医薬品の副作用を、患者との会話や患者の様子から気づくことができる。(知識・技能)
18.    患者がリラックスし自らすすんで話ができるようなコミュニーケションを実施できる。(技能・態度)
19.    患者に共感的態度で接する。(態度)
20.    患者の薬物治療上の問題点をリストアップし、SOAPを作成できる。(技能)
21.    期待する効果が現れていないか、あるいは不十分と思われる場合の対処法について提案する。(知識・技能)
22.    副作用が疑われる場合の適切な対処法について提案する。(知識・態度)

《処方支援への関与》
23.    治療方針決定のプロセスおよびその実施における薬剤師の関わりを見学し、他の医療スタッフ、医療機関との連携の重要性を感じとる。(態度)
24.    適正な薬物治療の実施について、他の医療スタッフと必要な意見を交換する。(態度)

(5)薬剤を造る・調べる
一般目標:
   患者個々の状況に応じた適切な剤形の医薬品を提供するため、院内製剤の必要性を認識し、院内製剤の調製ならびにそれらの試験に必要とされる基本的知識、技能、態度を修得する。


《院内で調製する製剤》
1.    院内製剤の必要性を理解し、以下に例示する製剤のいずれかを調製できる。(軟膏、坐剤、散剤、液状製剤(消毒薬を含む)など)(技能)
2.    無菌製剤の必要性を理解し、以下に例示する製剤のいずれかを調製できる。(点眼液、注射液など)(技能)

《薬物モニタリング》
3.    実際の患者例に基づきTDMのデータを解析し、薬物治療の適正化について討議する。(技能・態度)

《中毒医療への貢献》
4.    薬物中毒患者の中毒原因物質の検出方法と解毒方法について討議する。(知識、態度)

(6)医療人としての薬剤師
一般目標:
   常に患者の存在を念頭におき、倫理観を持ち、かつ責任感のある薬剤師となるために、医療の担い手としてふさわしい態度を修得する。


到達目標:
1.    患者および医薬品に関連する情報の授受と共有の重要性を感じとる。(態度)
2.    患者にとって薬に関する窓口である薬剤師の果たすべき役割を討議し、その重要性を感じとる。(態度)
3.    患者の健康の回復と維持に薬剤師が積極的に貢献することの重要性を討議する。(態度)
4.    生命に関わる職種であることを自覚し、ふさわしい態度で行動する。(態度)
5.    医療の担い手が守るべき倫理規範を遵守する。(態度)
6.    職務上知り得た情報について守秘義務を守る。   (態度)




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