平成15年12月3日 実務実習モデル・コアカリキュラムの 作成に関する小委員会報告 |
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1.モデル・コアカリキュラム作成の経緯
(1) | モデル・コアカリキュラム作成の必要性 薬学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(以下、「協力者会議」という。)において、すべての薬学生にとって必須なものとして実務実習を位置づけ、その充実を図ることが重要であるとの点で認識の一致が見られた。他方、実務実習の現状を見ると、実施期間、実施内容ともに大学毎に異なっており、また、受け入れ体制についても、各団体において組織的な受け入れ方策についての検討が行われているものの、現段階では学生自身の努力に委ねられている部分が大きいとの指摘が行われた。 そこで、実務実習の長期化も含めた充実を図るためには、実務実習に関するコア・カリキュラムとなる到達目標を策定し、それを実施するための方略を作成することが必要である、との点で協力者会議は一致し、実務実習モデル・コアカリキュラムを作成することとなった。 |
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(2) | 作成の経緯 小委員会は第1回の会合を平成15年7月2日に開催し、作業の方針及び作業部会の設置について合意が行われた。7月16日に小委員会と作業部会の合同会合が開催され、作業の方針及び今後のスケジュールが示された。 作業部会は平成15年7月26日、27日及び8月10日に会合を開催した。この作業部会には、大学関係者、病院関係者、薬局関係者が参加し、実務実習モデル・コアカリキュラムの目標(一般目標と到達目標)及び方略についての検討を行った。この作業部会における検討の結果は、平成15年9月5日付で全国の薬科大学(薬学部)にアンケート形式でフィードバックされ、各大学から提出された意見を踏まえて、小委員会において9月22日に検討が行われた。 |
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(3) | 作業に当たっての留意事項
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目標においては、各大学が編成するカリキュラムの参考となるよう、習得すべきと考えられる必須の基本となる事項を提示しており、各薬科大学(薬学部)における実務実習において必ず習得させることが必要な事項を列挙している。また、さらに充実した実務実習を目指して、この到達目標に基づき作成されたカリキュラムの他に、各薬科大学(薬学部)がその教育理念や特色に基づいたカリキュラムを設定し、各大学の特色にあわせた多彩なメニューを発展的・選択的なカリキュラムとして作成することも可能である。 |
(1) | 現状における実務実習の問題点 医療薬学教育の充実のため、実務実習を量的にも質的にも充実することが必要であるが、実務実習の現状は、必修とされているところもあれば選択とされているところもあり、その期間も2週間から1ヶ月までと、大学によってまちまちである。また、病院実習のみが行われている場合もあり、病院と薬局においてバランスよく実習が行われているとは言い難い。 薬科大学(薬学部)における実務実習は、附属病院が必置とされている医学部や歯学部における臨床実習と異なり、大学あるいはその地域の調整機構の依頼により、病院・薬局において実施されているのが通例である。組織上の関係を有しない病院や薬局において実務実習が行われるという薬科大学(薬学部)特有の事情故、教育内容の水準が担保しづらく、また、指導体制の構築、受け入れ体制の構築にあたって様々な困難がある。これが、これまでの薬科大学(薬学部)における実務実習への取り組みがまちまちなものとなってきた原因の一つであると考えられる。 |
(2) | 方略作成の必要性及び方略の性格 実務実習のさらなる充実を検討する際には、すべての大学でこれを十分に実施することができるようにすることが必要であり、かつ、すべての大学で均一な内容のものとして行われる必要がある。 そこで、本小委員会においては、すべての大学において十分に教育の質が担保された実務実習が行われるようにするため、また、そのために充実した指導体制及び受け入れ体制が構築されるために、到達目標の作成とともに方略の作成を行った。 この方略は、到達目標を実現するために必要となる学習方法、場所、人的資源、物的資源、時間数の「標準」を示したものである。実務実習の質を担保するとともに、すべての大学において均一で良質な内容の実務実習が実施されるようにするためには、この方略に基づき、各大学においてカリキュラム編成が行われることが望ましい。 |
このモデル・コアカリキュラムにおいては、到達目標と、当該目標に到達するための教育の方法である方略について記載しているが、到達度を評価するための方法は記載していない。この評価の在り方については、後述するように、大学が中心となり、関係機関との間で評価方法の標準化も含めた検討が行われる必要がある。 |
(1) | 「到達目標」には、実務実習事前学習(「事前学習」)、「病院実務実習」及び「薬局実務実習」における到達目標を掲載した。 |
(2) | 「事前学習」においては、医療に参画できるようになるために、病院実務実習・薬局実務実習に先立って、大学内で調剤および製剤、服薬説明などの薬剤師職務に必要な基本的知識、技能、態度を修得することを一般目標として、到達目標を列挙している。 |
(3) | 「病院実務実習」においては、病院薬剤師の業務と責任を理解し、チーム医療に参画できるようになるために、調剤、製剤、服薬指導などの薬剤師業務に関する基本的知識、技能、態度を修得することを一般目標として、到達目標を列挙している。 |
(4) | 「薬局実務実習」においては、薬局の社会的役割と責任を理解し、地域医療に参画できるようになるために、保険調剤、医薬品などの供給・管理、情報提供、健康相談、医療機関や地域との関わりについての基本的な知識、技能、態度を修得することを一般目標として、到達目標を列挙している。 |
(5) | 「病院実務実習」及び「薬局実務実習」は、病院薬剤師、薬局薬剤師のいずれを目指すにせよ必要となる内容であり、双方を行うことが必要である。なお、病院実務実習と薬局実務実習の到達目標に一部重複が生じているが、この重複を避け、大学教育における効率的な学習を可能とするため、病院と薬局いずれかにおいて先に履修した事項を、別の機関において実習を行う際には履修済みとして免除可能にすることとし、病院実務実習と薬局実務実習のどちらを先に履修しても、同様の学習効果が得られるようにした。(で示した項目が該当。なお、免除の度合いについては、各大学における教育目標が達成できるよう、実習施設となる病院及び薬局との間で十分に調整を行うことが望ましい。) |
(1) | 「事前学習」については、共用試験受験前に行うことも可能である。なお、早期に実習の導入教育を行うことは、学生のモチベーションを高めるという観点、また、医療人としての知識・技能・態度が一体化した総合的な教育を実施するための有機的なカリキュラム構築という観点から望ましい。 |
(2) | 「病院実務実習」及び「薬局実務実習」については、実際に調剤等を行い、患者と接することになることから、原則として共用試験実施後に行われることが望ましい。 |
(3) | 医療の現場における実務実習を経てモチベーションを高めた学生が卒業実習を履修することにより、根拠に基づく医療に貢献できる能力、研究する心と態度、高い創造性と倫理性、問題発見・解決型の能力、論理的思考力、生涯にわたり学び続ける意思と能力を養うことが可能となる。 |
(1) | 単位数について 実務実習モデル・コアカリキュラムを実施した場合の単位数については、講義・演習については15時間から30時間を1単位、実習については30時間から45時間で1単位という大学設置基準の定めに従い、各大学において適切に定めることが必要である。 |
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(2) | 受け入れ体制整備の必要性 方略に記された人的資源・物的資源の確保及び時間数の確保に際しては、大学と各施設及び職能団体との密接な連携と協調が必要である。そのために、日本薬剤師会、日本病院薬剤師会及び薬学教育協議会(調整機構)においては、薬局や病院の十分な協力を確保するとともに、実習を受け入れる薬局及び病院のさらなる整備を行うことが必要である。 また、例えば、複数の施設がグループを形成して学生を受け入れることにより、実習内容の均質化を図るといった工夫が行われる必要もある。 |
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(3) | 指導体制の構築 実務実習は大学における教育として行われるものである。従って、大学が実習の質の担保を図る必要があり、医療施設との十分な連携・調整のもと、指導体制が構築される必要がある。また、制度所管官庁及び職能団体において、実務実習の指導が十分に行われるよう、適切な措置が講じられることが必要である。
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(4) | 各大学が行う実務実習の評価について 本モデル・コアカリキュラムに基づいて行われる実務実習に関しては、実習現場において学生をどのように評価するか、実習現場における指導体制をどのように評価するか、大学教育としての実務実習の内容をどのように評価するか、といった事項を明確化する必要がある。それぞれの評価が適切に行われることとなるよう、大学が中心となり、関係機関との間で評価方法の標準化も含めた検討が行われる必要がある。 |
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(5) | 違法性の阻却の問題 本モデル・コアカリキュラムは大学教育における薬学教育として必要となる実務実習内容を盛り込んだものである。従って、実習の内容が薬剤師法等の医療関連法規に抵触することがないよう、違法性の阻却のための要件がさらに検討される必要がある。 |
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(6) | 共用試験の実施 病院実務実習及び薬局実務実習を行う学生が、薬局や病院の現場に出る前に実習を行うに必要な基本的な知識・技能・態度を身につけていることを担保するため、共用試験が実施される必要がある。共用試験においては、知識が十分に習得されているか否かを問うための問題が作成される必要があり、また、技能・態度の評価方法についても工夫が行われる必要がある。 この共用試験については、実務実習モデル・コアカリキュラムの内容に従って学生が実習を開始する時期までに、本格的に実施される必要がある。 |
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(7) | 実務実習モデル・コアカリキュラムの実施時期についての考え方 実務実習モデル・コアカリキュラムは、社会のニーズに応える薬剤師等を育成するために必須の内容であり、各到達目標を実現するための方略を積み上げて作成したものである。この実務実習モデル・コアカリキュラムは、協力者会議報告書で述べられている6年間の教育において履修されることが適当と考える。 なお、このモデル・コアカリキュラムを参考にし、様々な工夫のもと、速やかに各大学において充実した実務実習の実施に向けた取り組みが行われることを期待する。 |