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資料2

これまでの議論の整理(03/07/02)

1.薬学教育の考え方
   (1)薬学教育への期待

     ○    我が国の薬学は、医療薬学から、創薬科学・基礎薬学までの幅広い分野をカバーしている。したがって、大学・大学院卒業後の進路も、病院・薬局の薬剤師、薬学研究者・指導者、製薬会社のみならず食品会社等も含めた企業における研究・開発・製造・情報担当者、薬事行政関係者など、幅広い人材を輩出している。今後、ますます薬学教育の充実が求められる。
   社会から期待されているのは、難病を治すための新薬の開発などの創薬研究の推進と、基礎的な力と生涯学びつづけていく意欲にプラスして社会性を身に付けた薬剤師の養成である。
   薬学とはどういう学問かということについて、科学的に表現すると、生体と化学物質との相互作用、更に言えば、生体の生理条件に応じた相互作用を総合的な観点から追求する学問である。より広い意味でとらえると、薬は人間の体に役立つものであり、社会の中で使われるものであるから、「モノ」中心でなく「人間」中心の学問としていく必要がある。
   薬学の中で、創薬研究と薬剤師養成の双方を充実させていく必要があるが、創薬研究も、医療を踏まえたものであるべきであるし、他方、薬剤師の業務も、科学技術の進展に対応し、薬学研究の基礎の上に成り立つものである。したがって、薬学研究と薬剤師養成とは分離して考えるべきではない。
   研究者であろうと薬剤師であろうと、薬の力を安全有効に使える人材の養成を目指しており、実務と研究は無関係、臨床と研究とではレベルが違う、といった考え方を改める必要がある。
   薬学を学んだ者に求められるのは、進路の如何を問わず、コミュニケーションをとることのできる豊かな人間性、問題発見解決型能力、根拠に基づく医療に貢献できる能力、研究する心と態度、生涯にわたり学び続ける意思と能力、創造性・論理的思考力などである。
   製薬企業においては、薬学出身者は研究・開発から営業まで幅広く活躍しているが、今後薬学の発展とともに、製薬会社もますます発展すると考えられ、薬学出身者に対する期待も大きい。企業では薬学出身者に対して高い倫理観を備え、薬学の基礎的な能力と臨床に関わる知識をもち、各業務をリードする実践力を求めている。
   製薬会社において、創薬の分野で活躍する薬学者についても、患者のニーズを現場の経験を通じて知っていることが求められる。
   医療現場において何が大切なのかということ、患者や疾患のことを、知識としてではなく経験として身につけている人材が製薬企業に入ってくることを強く望んでいる。

   (2)「薬剤師の役割」と「薬剤師養成」
     ○    医薬分業率が50%を超えるなか、患者に安心してもらえるような知識や科学的問題解決能力が薬剤師に求められる。
   医薬分業の急速な進展、医療の高度化等に伴い、薬剤師に求められる業務・役割が変化してきている。薬剤師はこれまで、薬局・病院薬局における調剤・窓口業務がメインであったが、近年は、医療チームの一員として積極的な役割を果たし、患者への服薬指導、薬歴の管理・医薬品の適正使用と薬に関するリスクマネジメント、安全な薬物療法の提供などを行うことが求められるようになってきている。
   現状では、医療現場において、薬剤師が求められる役割を十分に果たしているとはいえない。例えば、病棟における薬剤師の位置付けはまだはっきりしておらず、医師・看護師との連携や、患者に関する情報の共有などの点でまだ不十分な印象がある
   医療現場において薬物の専門家がこれまで以上にコミットして、他の医療人の中に入って活躍することが、薬物療法の効率をあげるとともに安全性を高めるためにも必要である。
   薬について多くの情報が出回り、薬の安全使用には有資格者としての薬剤師の助けが求められるが、現状では、得られた知識を患者に分かりやすく還元されることが少ない。
   薬学部は、他の医療職種に比べて臨床教育が不足しているなど、薬剤師養成の観点から必ずしも十分な教育ではないのではなかった。
   薬学部が国家試験予備校になっている、という指摘もある。
   薬を扱う者としてのバックグラウンドとして、科学的な視点も必要である。
   日本で教育した薬剤師が、国際的にも通用しうる薬剤師であるのか。今後の薬学教育を考える上では、こういう視点も必要であり、その意味で、国家試験にも改善すべき点があるのではないか。

   (3)「薬学研究」の在り方・可能性
     ○    医療の原点は人体にあるが、薬学の場合はこれまで化学にあった。人を基本に考え、基礎薬学と医療薬学をいかに融合するかが総合科学としての薬学の特徴になる。
   創薬研究は、今後、ゲノム科学、ポストゲノム科学を含め、広く健康科学、ライフサイエンスという視点からとらえる必要がある。
   国際的に通用する研究者養成には、論文博士を排し課程博士とすることが必要。
   日本の薬学を欧米の薬学部と比較して、欧米のものを持ち込むべきだとする議論には問題がある。例えばアメリカでは薬科大学は80ほどあるが、そのうちアクティブに研究活動を行っていると認識できるのは約15大学くらい。相対的にみて、日本の大学の薬学部においては研究・研究者養成教育を良くやっている。単純に米国の薬学部と同じがいいという議論は、日本の優れた点を失うことになる。

2.薬学教育カリキュラムの在り方
   (1)薬学教育のカリキュラムの在り方
   【多様性への対応】
     ○    薬学の範囲は幅が広く、また、学生の進路も医療の担い手、医薬品の供給者、薬品衛生行政の担い手というように多様な職域があり、薬学教育のカリキュラムの在り方の検討に当たっては、多様性の確保という視点が必要である。
   日本の薬学は、基礎研究分野にも比重を置き、カバーする分野が極めて多様性に富んでいる。この点が国際的にもユニークな存在として評価されていることを認識する必要がある。
   薬剤師を取り巻く環境の変化に対応するため、医療薬学分野の充実が必要がある。
   薬剤師養成に関わる内容と、基礎薬学・創薬研究に関わる内容とは分離せず、融合したものである必要がある。
   カリキュラムの内容を考えるに当たっては、医療関係以外の、人間性を涵養するためのプログラムや、いわゆるリベラルアーツの充実も必要である。
   【内容の精選】
   現行のカリキュラムは、国試の問題に対応するために知識教育が中心となってしまい、同時にほとんどが必修となっているため、過密であることが問題点である。
   科学技術の進展とともに増え続ける情報量の増大に対応し、常に内容を点検し、膨大となった情報の整理・精選が必要である。その際重要なのは、いたずらに先端知識を追うことではなく、最先端の知識の元となる習得すべき基礎がどこにあるかを明確にし、その習得を図ることを基本とすることである。
   【指導方法の工夫】
   薬学教育カリキュラムに必要な視点は、1科学技術の進展、社会からの要請に対応した薬学生の育成、2知識偏重教育でなく技能・態度もバランスよく教育する、到達度を客観的に評価できること、である。
   現状では、大学によっては、国家試験対策のために知識詰込型の教育が強いられていたり、またこれに多くの時間が割かれている例があり、この改善が必要である。
   【国際通用性】
   薬剤師養成、創薬・基礎薬学研究者養成の双方につき、国際通用性・グローバリゼーションの視点が非常に重要である。

   (2)コアカリキュラムの考え方
     ○ 「コアカリキュラム」の理念
1 膨大な情報から基本・重要部分を摘出し精選すること
2 各大学の特色を踏まえた選択科目の余地や多様性を拡大すること
3 詰め込み教育ではなく、自己学習を奨励し、問題解決・課題探求能力を育成すること
4 既存の学体系・学問領域の枠にとらわれない、統合的内容であること
5 卒後の継続的専門教育を念頭においた、学部教育を可能とする内容であること
6 一般教養・準備教育とは区分した専門教育のコアであること
7 作成手順として、内容を精選する際には、その特定領域以外の専門家を中心としてコアの内容を確定していったこと
   コアカリキュラムは、全ての学生にとって共通・必修であるべき内容の部分であるが、この履修にあたり、大学の特徴により、指導・学習の方法や分野の濃淡に多様性がある。
   コアカリキュラム以外の部分では、選択に応じた内容として、発展的なアドバンストの内容の取り入れ方などにより、大学の個性・特色に応じた多様なカリキュラムとする必要がある。
   この場合の「選択に応じた内容」とは、一義的には、学生が自由に選べるという意味の選択ではなく、各大学が大学の個性・特色に応じて用意するカリキュラム内容であり、この中にその一部として学生毎の選択科目が在り得るものである。
   モデル・コアカリキュラムとは、各大学におけるカリキュラム構築を縛るものではなく、大学が教えるべき内容、学生が学ぶべき内容を整理したものに過ぎない。この内容をいかなる形で教授するかは、各大学が知恵を絞り特性に応じて工夫すべきもの。

   (3)薬学教育のコアカリキュラムの在り方
     ○    薬学の多様な内容、及びこれを学ぶ学生の多様な進路を考えた上で、全ての学生にとって必須なものという概念でコアを考える必要がある。
   薬学教育においては、大きく見れば、薬剤師養成・医療薬学に関する内容と、基礎薬学・創薬研究にかかる内容とが、ある意味並列的であるが、両者がコンビネーションを保ちながら、多様な選択肢を許容し選べるコア・カリキュラムであることが大事な理念。この点において、両者に共通の学習すべき内容がコアカリキュラムと理解する必要がある。
   実務実習についても、大学における教育の視点から、どのあたりがコアになるかを見極めることが重要。

   (4)日本薬学会モデル・コアカリキュラム
     ○    日本薬学会モデル・コアカリキュラムは、今後の社会の変動を見据えた上で、薬剤師・基礎薬学・創薬研究者等を目指す学生が学んで欲しい内容を整理したガイドラインである。
   このため、修業年限が6年であるということを前提としている医学教育のコア・カリキュラムとは異なり、これまでの薬学教育よりも更に必要なもの、社会から今後求められているもの等を加味してモデルカリキュラムを作成し、その7割をコアとしている。
   残り3割に当たる部分において、各大学において選択・選択必修を加えることにより独自性を出すことを念頭においている。
   生命科学という視点から見ると、日本薬学会のモデル・コアカリキュラムはかなり細かく出来ているとの認識。また、重複する部分も何ヶ所かあり、整理する必要があるのではないか。
   コア・カリキュラムの整理を行いながら、どのような薬剤師を育てたいのか、という論点を明確化する必要がある。

   (5)実務実習の在り方
   【実務実習の意義と現状】
     ○    薬剤師を取り巻く環境の変化への対応、医療従事者としての使命感・倫理観を備える薬剤師の養成には、実務実習が重要である。また、医療を理解することは、基礎薬学・創薬研究に携わる者にとっても重要である。
   「臨床と研究とではレベルが違う」、「実習はつけたしだ」というような感覚は改める必要がある。
   体験を通じて学ぶ実習の意義が大きく、臨床面での教育を充実させるためには実務実習の期間を現在よりも長期化する必要がある。
   平成8年の協力者会議の最終まとめでは、当時2週間程度であった実務実習期間を、当面4週間程度を目標に長期化し、内容も充実させることとされた。
   現在は、10日間から19日間の実習を必修としている大学10、20日〜29日24大学、30日以上1大学であるが、他方、選択のみとしている大学は、それぞれ2大学、9大学(30日以上なし)となっている。
   また、病院実習・薬局実習の割合、指導体制の中での大学の関与は、実習先ではほとんど大学が関与していない場合、あるいは大学が指導を行っている場合など、様々である。
   平成8年の協力者会議のまとめで、実務実習を4週間を目標に充実することが提言されているが、7年経ったいまでも実習を選択にしている大学もある。どうあるべきかを語ると同時に、現状を直視し、実行可能性にも配慮した案を考えていくべきである。
   学生の質も指導者も施設もきちんと整っている理想形の実務実習をどこの大学でもできるようにするには、条件整備が必要である。
   実習は教育の一貫であることから、学生一人一人に大学が責任をもって実習を受けさせるようなシステムを作り上げていく必要がある。
   医学・医療の変化に対応できるような薬剤師の養成には、講義だけでは十分でなく、講義と実習があいまって、履修したことが身についていくものなので、実習も大学教育の中で実施する必要がある。
   医療法によって、薬剤師は、人の命に直接関わる業務を担当することから、専門性と医療人としての高い倫理性を備えなければならない、とされている。このことは、医療現場における実務実習を通じて培われるものである。
   医療の現場において何が必要とされているのか、ということを、教育現場にフィードバックしてもらう必要があり、これを行う際には、学生からの意見を反映させることも必要。
   【実務実習内容の在り方】
   実務実習の内容についても、コア・カリキュラムに位置付け内容面でのレベルの統一を図ることが必要である。
   薬学教育において、実習内容がカリキュラムの中でどうあるべきか、ということを十分に整理し、実習の内容を具体化する必要がある。
   実務実習を通じて、病院実習と薬局実習の相違点を理解することが重要である。
   国公立大学では実務実習の内容を詰めるためのワーキング・グループの設置が検討されている。
   日本薬学会の実習ガイドラインは、実務実習に関してはコアの概念で作っていない。これは、現状では実務実習を行うハード面、ソフト面いずれも条件がそろっておらず、コア化の作業が難しいためである。また、実務実習については今後の課題として大学の意識もまだ希薄であり、あまり意見が出なかったことは事実である。
   実務実習において、実際に調剤に関わることが必要となるが、そのためにも実務実習前に、医学・歯学教育と同様の共用試験を行う必要があるのではないか。
   実務実習の充実にはコストがかかるが、これは大学がきちんと確保すべきものである。特に私立大学においては、学生の負担にせざるを得ない。
   実務実習では、実習生一人ひとりのレベルの違いが問題であり、コアカリキュラムだけでは対処できないのではないか。今後どうやって教える内容を標準化していくかが課題である。
   【指導体制の在り方】
   実務実習は、大学における教育として行われるものであるから、実習先に任せきりではなく、大学が指導に責任を持つ必要がある。またその質は、大学教育として行われる以上、最終的に大学の責任において担保されるべきものである。
   医療現場は、本来医療を行うことを本務としているのであり、実務実習の受入にあたり医療現場に混乱を来すようなことがあってはならない。指導体制の構築にあたっては、大学の関与が不可欠である。
   特に病院においては、チーム医療の一員としての薬剤師の役割について認識を深める実習である必要がある。病院での実務実習指導は薬剤師のみならず、医師や看護師を含めた、病院一体となった指導体制が重要である。
   【共用試験の実施】
   実務実習においては実際に調剤に関わることが必要となるが、実務実習の前に学生の質を保障するという意味で、医学・歯学教育と同様の共用試験の実施が必要である。
   医学の場合、かつて実習は見学中心だったが、診療参加型の実習に変えるために共用試験が導入された。共用試験は、知識や問題解決能力をみる試験と技能・態度をみる試験の2本柱で行っている。これが薬学の場合でも参考になるのではないか。
   共用試験の実施から得られている教訓は大きく、共用試験を薬学に適用することにより、薬学教育の様々なことが改善できる。
   共用試験とコアカリキュラムの関連について、医学の例も参考にしながら、検討する必要がある。
   現在、医学及び歯学で実施されている共用試験は、薬学教育においても、免許を持たない学生が薬を扱い、患者に接するという実習を可能にしていく有力なプロセスであり、このプロセスにより、カリキュラムが実習を含めて体系化される。
   共用試験において、共通の基準で評価を行い、それが客観的な数値となって大学にはね返るということは、教える側の意識改革に大きく寄与すると思う。一番大切なのは学生のための教育の改善であり、それが国民の期待に応えるということ。薬学についても共用試験を実施すべきである。
   将来的には、医歯学教育システム研究センターの共用試験のシステムを薬学にも応用できると考える。

   (6)実務実習の受け入れ
   【受入方策】
     ○    実習施設の受け入れ体制の在り方を具体化する必要がある。また、日本中どの地域でも同じ質が確保できるようにしないとカリキュラムとしての実務実習とはいえない。
   薬局における実務実習は、これまで大学が個々の薬局との契約により行ってきた。日本薬剤師会では、今後、個々の対応ではなく組織対応とし、当面は地区調整機構の下部組織として薬局実務実習関連業務のみを行う調整機関を置き、地区薬剤師会、地区調整機構内大学関係者で共同で運営する方針。
   日本医療薬学会では認定薬剤師制度を設けており、現在、指導薬剤師がいる研修施設は全国で206箇所である。今後とも充実させて行く方針であり、学会としても実務実習の受入れについて準備している。
   実務実習の受け入れに関し、日本病院薬剤師会は全面的に協力することとなっているが、病院での受け入れには様々な困難がある。理想と現実のギャップを埋め、実現可能な方策を検討していく必要がある。
   現在は薬局と病院とで実務実習受入体制を別々に構築しているが、将来一本化することで合意がとれている。
   指導者の資格についてはいまのところ厳密な評価体制はないが、将来的には指導者の資格評価はきちんとしなくてはならない。
   日本薬剤師会は、指導者の質の担保に関して、当面は自主的に資格要件を設定して確保するが、将来的には第三者評価機関(薬学教育協議会)が行う予定である。
   病院における実務実習では、病院により薬剤師の業務も異なり、実習内容に差が出ることとなるが、例えばグループ化して小さな病院等も対象とするなどの工夫が必要である。
   実務実習を受け入れる病院・薬局をグループ化し、個々の機関における実習の質のアンバランスをなくすことは重要。
   【受入可能性】
   薬剤師はその病院の薬剤業務を行うことが第一任務である。病院薬剤師の人数は非常に厳しい状態にある。各病院において経営方針も全て異なっており、実務実習の受入は病院次第である。現状でも、学生の希望が多いにもかかわらず、その全てを受け入れるだけのキャパシティが病院にはない。
   内容についての議論や実習先の確保策についての議論がなく、単に「実習を長期化すればいい」との議論であると危険。
   医療現場は、多忙かつ常に緊張を要する職場であり、実務実習を長期化して受け入れるには、現状においては受入体制が不備であると感じる。
   実習を受け入れる各病院・薬局において、具体的に、どの内容をどのように指導し、何人受け入れ、指導体制をいかに構築するかは、非常に難しい問題である。
   【大学附属病院での実務実習】
   大学附属病院には、コメディカルスタッフも含めた、将来の医療を担う医療従事者の育成を図る教育研修機能があり、薬学生の実務実習についても積極的に受け入れる必要がある。
   長期間にわたる実習は、教育研究施設としての附属病院がある国公立大学及び私立大学の一部では可能であるが、附属病院を持たない私立単科薬科大学では困難な面がある。


3.薬学教育制度の在り方
   ○    日本薬学会のモデル・コアカリキュラムを参考にしつつ、上記のような議論を踏まえ、カリキュラムイメージ例の作成を行った。
   これからの薬剤師養成には、教育現場において実学的に患者に投薬することが必要であるから、6年程度の教育年限が必要である。
   薬剤師養成のための教育には、倫理のこと、現場のことを学ぶという点も含めて、その年限は6年間が必要である。
   4年の後に2年が必要な理由は、1医療事情の中で薬学は複雑化しており現状の4年間の教育では追いつかない、2薬をつくるという研究者養成も十分できていない、ということである。
   薬学教育として、トータル6年間の教育が必要であるとの点では、これまでの議論で概ね一致した認識ではないか。
   コアカリキュラムを4年もしくは6年でできるという議論は教育の「濃さ」の問題。理解度抜きに形式的にやるならば4年でも教育可能。コアカリキュラム以外の各大学の個性・特色に応じたカリキュラムを履修するためには、6年程度は必要なのではないか。
   教育制度の在り方については、広く社会から受け入れられる内容である必要がある。薬学教育を6年にするということについては、一般人、大学、学生などそれぞれの立場からさまざまな意見がある。この点で、議論が尽くされていない。
   4年制学部+2年修士、6年制学部それぞれの存在意義を明確化する必要がある。
   5年制も考えられるのではないか。
   薬学教育はコアカリキュラムを中心に決められたことだけやればよいのではなく、課題発見型、問題解決型、研究者的な態度が必要であるため、卒業実習・卒業研究をやるのが一番有効である。モデルコアカリキュラムは6年が前提であり、5年ではおさまらないと考える。
   6年一貫の教育ではなく、4年間の薬学教育で、コアカリキュラムを学んで一旦卒業し、卒後に6ヶ月の実務実習を行い国家試験の受験資格を得るという制度もあり得る。
   大学・学部の現状及び教育内容から見ると、学部4年間でコアカリキュラムを修了し、修士課程においてアドバンストの内容と実務実習を行うことが適当ではないか。この場合、学部卒業の段階で進路変更を可能とするメリットがある。
   薬剤師養成のための教育制度は、プロセスが重要であることから、分断された仕組みではなく、一貫した教育課程が優れており、薬剤師国家試験受験資格としては、6年一貫の教育が基本ではないか。この場合、カリキュラムの柔軟対応、また実務実習を複数回に分けて行うことが容易などのメリットがある。
   高校卒業の段階で、生涯の進路決定を強いることには批判がある。
   学部6年のメリットとして、1カリキュラム作成の自由度が増す22年の修業年限延長により実習を長期にすることが容易となる3大学の経営上、2年分の学納金収入増等が挙げられる。デメリットとしては、118歳で進路を決めて良いのか2全員に長期実習を課すにはインフラの整備が大変である3同じ学部6年なら学生が医学部に流れてしまうのではないか。
   高度専門職業人養成という観点のもと、医療人としての適性を見極めることができるため学部教育として行う必要がある。
   他方、学部4年プラス大学院2年のメリットとしては、1医療薬学系の大学院への移行がスムーズになる2学部の定員より修士の定員の方が少ないのであるから共用試験で学生を厳選できる3修士号が得られることが重要4一度社会に出た薬剤師の生涯教育の場を提供できる5多様な進路が4年生終了時で選択可能などが挙げられると思う。デメリットとしては、学費の増額である。
   修業年限を2年延長した場合の大学経営については、私立大学としては楽観視はしていない。
   6年一貫の制度となっている医学部の大学院においては基礎と臨床に分かれているが、基礎に来る学生の数は非常に少なく、研究者人口が圧倒的に減ってきてしまう問題点がある。
   大学教育において、コアカリキュラムや実務実習のほか、5年目、6年目にどのような教育を行うのかということが議論されていない。
   座学と実務実習を切り離した教育は良くない。大学はなぜ卒前に実務実習をさせようとしているのか、ということを大学人同士で議論する必要がある。
   現実として90%以上の学生が国家試験を受けている。薬学部に入ったら薬剤師資格を取れる、ということは基本にしなければならないと考える。
   学部4年プラス大学院2年という場合の大学院は、従来の研究者養成の入口としての修士課程と同様には考えられないのではないか。学位の名称も含めて、検討した方がよい。
   4+2年制の場合は4年段階を卒業した時点で、6年制の場合は6年を卒業した時点で、ともに「学士」という学位を得ることとなるという点に留意しておくことが必要。


4.大学における養成と継続教育・生涯学習の関係
   ○    薬学部・薬科大学は、薬学に関わる者に対し、生涯にわたる学習活動をサポートすることが求められている。
   特に薬剤師にとっては、科学技術の進歩に伴い、日々高度化する医療知識を身に付けることが求められており、大学がその情報提供機能を担うことが重要である。
   大学においては、夜間大学院の開設、土日を中心とする公開講座の開催、さらに通信講座の開設など、社会人が受講しやすい工夫が必要である。
   5年に1度、免許を更新する位の覚悟をもつことも必要ではないか。



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