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資料6

第1回〜第5回における意見

検討の視点

       最近発表される事項は、納得できる説明が不足していることが多い。この会議の議論では、どのような目線をもって決めたのか、次世代のことを考えて決めたのか明らかにすることを念頭に進めたい。患者の目線を念頭において議論すれば、社会からも納得していただけると思う。

     これまでの、薬学を巡る動きは、薬学関係者のみによる動きであった。世間からの視点を意識して、いい薬ができるか、いい薬剤師活動ができる薬剤師を養成できるかを考える必要がある。

     薬学教育について全般的な視点からすると、薬学知識の普及と教養教育への貢献ということも重要ではないか。教養教育との関係も視野において議論したい。

     今、医療ではEBMが言われているが、この場の議論がEBDでありたい。感情論ではなく、しっかりとしたデータの基に本会議の目的とする結論が導かれることを願う。

     これまでの議論では、国際的な視点が出されていない。例えば教育サービスに関してWTOなどで自由競争を求められており、またEU内では資格の相互乗り入れが議論されている。世界的に活躍できる人材を作らないといけない。

     一般教育的な部分まで含んだ薬学教育の議論をすることが必要。

     薬学教育の目指すべき理念をどこに設定するかを議論する必要がある。医学教育では患者中心の医療を実践できる医療人の育成、コミュニケーション能力の優れた医療人の育成、倫理的問題を真摯に受けとめ、適切に対処できる人材の育成、幅広く質の高い臨床能力を身につけた医療人の育成、生命科学研究者となり得る人材の育成を掲げて、改革がすすめられてきた。

「薬学教育」の考え方

【薬学教育への期待】
       薬学教育はサイエンティストを育てる第一歩であると同時に、職業教育でもある。また、その職場は現在一層広がっている。薬を必要とする方々がもっとそのメリットを享受できる、実質的に役に立つ教育であって欲しい。

     健康な人間を作ることを教育方針としている早稲田大学人間科学部に移り、薬学や医学と接点を持ち、社会学や心理学という要素も入れた教育を行ってる。医学部や薬学部と異なり、直面する国家試験がないが、人間の命を大事にするという立場で考えると、健康を最終ゴールにおいた仕組みをつくる必要があると考えている。小分けにすることがこの国にとっていいかという視点で色々意見を述べたい。

     大学では、3つの内容をカリキュラムとして充実することが必要。1つは生命倫理。質の高い倫理観と研究における科学性である。研究部門のみならず全ての職種において肝心なこと。2つ目は、体がいかに健康を保っているかという、非常に細かい仕組みについての知識。最後に、医薬品の適正使用のための情報を、倫理性・科学性を確保した上で付与していくための医療現場での活動を学生の時代に積み、見識・知識を習得すること。

     薬学部を卒業し製薬企業に進むと、研究、開発、生産、営業、市販後調査を担当する学術情報の5つの部門が活動分野としてある。

     創薬について、日本人は非常に発想が狭いと感じる。これは全体的な視点から考える教育をしてきてこなかったからである。この点はおそらく薬学の分野だけではなく、あらゆる分野において日本の課題となってくる。

     EBMについて語る際に、エビデンスを「つくる」「つたえる」「つかう」という表現があるが、薬学を理解する上でも、くすりを「つくる」「つたえる」「つかう」という3つの視点から考えると分かりやすい。

     薬学教育を受けた者の進路はかなり幅広く、今後益々薬学の知識が実社会で広く必要とされる。

     一つの薬効を持った薬に多くの名前が付けられ、多くの会社から出るようになると、有能な薬剤師でも全てを把握するのは不可能。これからはITを外部メモリーとして使いこなせないと膨大な知識量には対応できない。使いこなすには生命科学として捉えることが重要。理学とは異なる薬学という立場から新しい見方・切り口で教育ができればいいと思う。

     薬学部には優秀な学生が入学して来るが、今の薬学教育は自由な考え方を育てるようになっていない。理学部の学生は自由にのびのびと考えているが、薬学部の学生は国家試験の影響で受験勉強的になっている面がある。

     21世紀の薬学教育、製薬企業が発展することは間違いない。

     薬学部に入ってくる学生は入学時の偏差値は高いが、卒業時にはモノトーンになっている気がする。医療に対する責任感がないのではないか。また自ら研究することが必要だが、現在の薬学教育がそうなっていない。

     いい薬剤師、薬学の研究者広くは技術者を養成するために必要なのは、広い意味でのサイエンス、研究する心の教育である。

     薬学出身者にとって理解が必要な基本的項目としては、生命倫理、品質・信頼性、生体・恒常性維持の仕組み、疾病発症の仕組み、医療現場の実態が挙げられる。

     薬学出身者に望まれる知識としては、1研究部門では、業務内容に関しては、実験計画の立案、化学合成、毒性試験、薬理試験があり、業務遂行に必要な知識としては、ゲノム・遺伝子、薬理・薬剤学、薬物動態学、病理学など、2開発部門では、業務内容については、試験計画の立案、モニタリングなどがあり、業務遂行に必要な知識としては、薬理学、薬剤学、Regulatory Scienceなど、3製造部門では、業務内容について、製造管理、品質管理、業務遂行に必要な知識として、製剤(薬剤学)、医薬品分析の知識や技能などがある。また4学術部門では、業務内容について、市販後調査計画の立案、モニタリング、データマネジメントなど、業務遂行に必要な知識として薬理学、薬剤学、薬力学など、5営業部門では、業務内容について、製品情報説明、安全性情報伝達などがあり、業務遂行に必要な知識として、薬事法、疾病に関する知識などがある。

     薬学部は唯一薬剤師の受験資格を持っている学部であると強く認識すべき。薬学の基本は人との絡みを持った学問であるということ。

【薬学研究・薬学研究者養成教育と薬剤師養成教育】
       検討に当たっては、薬剤師・研究者の育成という2つの社会からの要請に対して十分に応えなければならない。

     薬剤師養成教育と研究者養成というものが対立する部分があると言われる。確かにフロンティアの分野ではそういう面もあるかもしれないが、今後、薬剤師も、問題発見解決型の能力を持ち、根拠に基づく医療に貢献できる人材でなければならないし、また、生涯にわたって学び続ける意志と能力をもった人材でなければならず、このような根本のところでは研究者養成と薬剤師養成は重要な点は重なっている。

     「薬学」とは何かということはわかりにくい。その問題は、「創薬研究者」と「薬剤師」の養成をどう統一化していくかということであった。創薬研究を中心としている薬学者から見ると、薬剤師の養成、特に実務実習が持ち込まれることは問題だという認識があった。「薬学」が社会から評価されるのは、いい薬を創ることと、質の高い薬剤師を養成すること。

     他の科学と異なり、「薬学」は物と人の機能という2つの点で評価されることが大きな特色。

     薬学教育とは創薬研究か薬剤師養成かという議論になるとかなり深刻になるが、建設的な姿勢であれば、必ず両立できる。

     薬剤師の養成においても、創薬研究者の養成においても、創造性、理論的思考力を有する人材の養成という点で一致する。

     創薬・研究開発では、理工学系や農学系の研究者も創薬に関わっているが、その中で、医療現場でのニーズを十分に把握できる立場は薬学者しかないという独自の立場がある。薬剤師養成を含め、新しい薬学教育の中に十分に共通の問題として盛り込まれるものと理解。

     薬剤師も医療の流れと同じ方向に進むことが必要。また、薬学研究もこれまで以上に医療との関係を深くしなければならず、薬剤師養成と薬学研究者養成は分離して行うべきではない。

     例えば糖尿病についても個性があるが、現在の医療は糖尿病を一括して治療するために副作用が起きる。将来テーラーメード医療になると医療現場の人間がそこまで理解していないと必ず副作用が起こり危険。このため、創薬の心を持った薬剤師が必要。研究者養成と分化したらこれからの医療は成り立たない。また、私学は薬剤師養成だけ、国立は研究だけやるということではこれからの医療は立ちゆかなくなる。

     研究的な創薬と薬剤師の業務である医薬品の適正使用は一体化していることが大切。

     医学の教育の原点は人体にあるが、薬学の場合は化学からきており、臨床教育が不十分であった。そのひずみがある。人を基本に考え、基礎薬学と医療薬学をいかに融合するかが総合科学としての薬学の一番の特徴となる。

     これからの薬学者に必要なのはシャープな分析能力だけでなく、人文、社会科学も含んだ統合的な能力であると考える。研究者や薬剤師の教育を考える際に、単なる一方的講義ではなく双方向性であること、又セミナー等で課題を与え調査、研究させレポートを作成、プレゼンテーションをさせるなどにより、能動的、積極的に課題にチャレンジできる薬学者を養成することが必要である。

     薬剤師養成のみに国際性の視点を含めるだけでなく、研究者養成においても国際性の視点を含める必要がある。日本の薬学は研究にも比重を置いており、この点で欧米型とは異なりユニークな存在となっており、欧米も日本の薬学教育に注目している。

     薬学には、薬学の研究者・技術者の養成と、薬剤師の養成があって、両者がコンビネーションを保ちながら、いかに多様性を保ちつつ生かしていくかが非常に大事な理念である。

     カリキュラム以前の問題として、「薬学の実務者」と「研究者」とのみの分類は妥当ではない。研究者というと純粋の研究者というイメージがあり誤解を招く。医学の場合ほとんどが実務者で、研究者の割合は極めて低いと推測するが、薬学の場合は分布が非常に多様性を持っており、研究者は少ないのが一般だが、他方薬剤師として実務に就く者の割合が50%に満たない大学もある。これらをまとめて単に「研究者」「技術者」「実務者」とのみ区分・分類することは不適当ではないか。このように考えた場合、カリキュラムの在り方の検討にあたっては、広く薬学卒業生が社会に出て働く場合に学ぶべき基本は何かということが重要なのではないか。

     北大薬学部・大学院の卒業生の進路についてまとめたので、参考にご報告させていただく。学部卒では約7割が進学、薬剤師が1割、2割がその他となっている。修士修了者では約3割が進学、研究職への就職3割強、薬剤師が1割、その他が3割となっている。博士課程修了者では、ポスドクが4割弱、研究職への就職2割、薬剤師1割強、その他が3割となっている。その他としては、製薬企業以外に、化学メーカー、食品企業、市役所、銀行などもあり、多様な進路となっている。

【薬剤師の役割と薬剤師養成教育】
       薬学部は唯一の薬剤師養成学部であるが、薬剤師養成の観点から必ずしも十分な教育でない。他の医療職種に比べて臨床教育がほとんどなされていない。

     世論の中で、患者からみて薬剤師がいかに信頼してもらえるかが重要。我々薬剤師は、医薬品の適正使用についての関与や、薬に関するリスクマネージャーとして、社会的に大きな役割を果たしているが、これまでそれに見合う人材の育成がなされてなかった。

     安全な医療を提供するため、チーム医療において薬剤師の役割と教育の充実という視点での議論が必要。

     過去、病院薬剤師は窓口業務がメインだった時期もあったが、今は診療報酬上服薬指導が評価されたことも相俟って、積極的に医療現場に入るようになった。服薬する患者の傍らで直接指導を行うことは患者の個性別に対応でき、医療チームのメンバーとしての役割も明確になり、専門的知識の提供ができるなど薬剤師の職務満足にもつながっているという話を聞く。

     薬について多くの情報が出回っているが、薬を安全に使うには資格を持った薬剤師の助けが必要。しかし、医療現場で、薬学を学ばれた方々は得た知識を患者にわかりやすく還元することが少ないのが現状ではないか。

     患者にとって、薬剤師の存在を知っていながら、薬のことに関して得てして医者に聞いてしまうのはなぜなのか。また、薬害がなくならないのはなぜなのか。こうした問題意識による議論が必要。

     薬により病気を克服した多くの人々がいる一方で、薬の副作用や誤った使用で健康を害する人が少なくない実態がある。

     薬剤師を取り巻く環境は大きく変化し、資質向上への社会的要請が高まっている。医薬分業の急速な進展、調剤業務の大きな変化により、薬剤師の業務も多様化している。医薬品の適正使用を一層推進するためには、薬剤師の介入が必要。安全な薬物療法を患者・国民に提供し、結果として現在深刻な問題である医療経済にも貢献することが可能。

     病院薬剤師の業務・役割が大きく変わってきた。国民に安心した医療を提供するための、医薬品の適正使用のリスクマネージャーとしての責務をどう果たしていくかを考えている。そのためには、薬剤師の資質の確保が重要。

     医薬品の切れ味が鋭くなり、よく効くと共に非常に危険な面を持っているという時代に、薬剤師・薬学の専門家が医療の現場によりコミットしていかなければ、安全で効率のいい医療ができないとの認識は、既に共通のもの。

     これまでの薬剤師養成には反省すべき点もある。

     薬剤師会にとって、薬学教育の改善は最重要課題。

     薬剤師については、医療事故に関する記事などを見ると、もっと権限を与えられてしかるべきと思うが、一方で医者と薬剤師の意見が衝突することがある。その整理についても同時に考えていかないといけない。病院に属さず、例えば第三者機関から派遣され、チェックすることも一つの方法だと思う。

     薬を買う際、成分を見てもわからないので相談したいが、普通のドラッグストアに薬剤師が不足している。

     薬剤師の教育としては、心理学の要素を取り入れ、患者が何の不安に怯えているかを的確に把握しそれに対応できる能力を身につけないといけない。

     患者の存在は変わらない。医療人たる薬剤師を育てることが薬学の使命。

     患者の心理的な不安要素を取り除くことはこれからの薬剤師に求められる姿だと思う。

     病院薬剤師の役割は、患者への適正な薬剤使用への貢献、リスクマネージメントへの貢献、医療チームの一員としての貢献、そして病院職員に対する薬剤に関する教育の貢献がある。

     東大附属病院では5つの病棟で病棟薬剤師がおり、注射薬の混合を専任で行い安全性を確保している。また、医師や看護職からの薬剤に関する質問についてリアルタイムに回答できるため、医師の処方へ反映し、医療全体の質をあげている。

     薬剤師の活動の拠点が病棟に大きくシフトしており、このことは患者一人一人にあった適切な服薬指導を行い、治療効果を上げる面からも非常に重要である。

     今後の薬剤師には、積極的な参加を期待したい。また、医師に対する疑義照会も重要だと考える。医療チームの中の職種はそれぞれ独立しており、立場も対等である。

     薬学部では、薬剤師の養成は非常に大きな要素であるが、現在では薬剤師の免許を取るための予備校的なものになっている。

     サイエンスとしての医療薬学の確立が薬剤師業務の基盤をなすことになる。臨床医学ではサイエンス、アート、ヒューマニティが医師の立場だと思うが、医療薬学でも同様。

     養成をどうするかだけを変えても現場の薬剤師が変わらなければ意味がない。病院における薬剤師の在り方が変わらないと教育も変わらない、教育が変わらないと病院における薬剤師の在り方も変わらないというのが実情である。

     病院の薬剤部の仕事は、注射薬の確認など正確性が求められ、非常に神経の要る仕事であるが、一方でルーティンワークが多い。スキルアップしても、その能力をどこで発揮させればよいのかモチベーションの持ちようが難しい職場だと感じた。

     薬剤師の仕事の内容が世間にあまり知られていないと思う。様々な方法によるイメージアップを図っていくことも考える必要がある。

【薬学研究の在り方・可能性と薬学研究者養成教育】
       ゲノム科学、ポストゲノム科学あるいは情報科学等、薬学の周囲にあるサイエンスにおける先端の成果を柔軟・率先して取り込み、将来の薬剤師・薬学研究者を養成するための教育と研究を展開する必要がある。

     薬学は、健康科学の1分野として、従来の治療科学から、今後は予防科学の観点での教育・研究が重要となる。

     人の病態に酷似するユニークな病態マウスやラットを作出する研究が大切。これを、治療薬、予防薬、診断薬の研究・開発に役立てたいものである。

     産学共同研究を視野に入れて創薬を考えていかないといけない。

     特に薬をつくることに関しては、ライフサイエンスという広い捉え方が薬学教育の基盤としても重要。

     薬学部を出て、企業に入った場合、研究、開発と生産、営業、市販後調査を担当する学術の5種類の活躍の場がある。適正使用をするための情報を創製していくことが全ての職務に共通したものである。

     仕事の信頼性、品質の重要性を、なぜ重要かも含めて教育することが重要である。

     開発では病気のこともよく知り、薬のこともよく知った上で、高度な専門性、例えば生物統計などを付与して適正な試験計画をつくり、計画通りに実行し、評価する。このようなことを薬学部を出た人が中心となって行われることを期待する。

     現在東京大学では、理科系の研究者養成について大学院教育の改革が薬学部も含めて議論されている。現在、多くの場合、修士を卒業して社会に出て研究者・技術者になり、後で論文を提出し論文博士として学位を取るが、これでは世界に伍していく高度な研究者・技術者の養成は不可能。高度研究者・技術者養成には博士課程まで修了する「課程博士」とすることが必要。

     国際的に通用する研究者養成には論文博士を排し課程博士とする必要があるとの点は、非常に重要な論点。

     ゲノム研究、ポストゲノム研究がこれからは重要であるが、それとともに慢性疾患の予防に生活習慣、とくに食材が重要となることを考える。その点で予防科学についても、薬学研究がカバーすべき領域ではないか。

     理想的な創薬研究者になるには、総合的な知識・情報が必要である。この点、他学部出身者を否定するわけではないが、薬学部であれば総合的な専門性が整っている。

     日本の薬学を欧米の薬学部と比較して、欧米のものを持ち込むべきだとする議論には問題がある。例えばアメリカでは薬科大学は80ほどあるが、そのうちアクティブに研究活動を行っていると認識できるのは約15大学くらいであろうが、その点、日本の薬科大学は研究・研究者養成教育を良くやっている。単純に米国の薬学部と同じがいいという議論は日本の優れた点を失うことになる。


カリキュラムの在り方
  ・国公私立大学の検討結果を参考に、カリキュラムのガイドラインについて検討
  ・国公私立共同の「モデル・コアカリキュラム(実務実習内容・期間を含む)」の作成
  ・各大学における、「モデル・コアカリキュラム」に基づくカリキュラム(実務実習内容・期間を含む)の作成

【コアカリキュラム論】
       医学教育モデル・コア・カリキュラムの作成経緯、理念の中には、審議の参考になるものがある。コアカリキュラムの理念としては、1膨大な情報から基本・重要部分を摘出し精選すること、2各大学の特色を踏まえた選択科目の余地や多様性を拡大すること、3詰め込み教育ではなく、自己学習を奨励し、問題解決・課題探求能力を育成すること、4既存の学体系・学問領域の枠にとらわれない、統合的内容であること、5生涯学習など卒後の継続的専門教育を念頭においた、学部教育を可能とする内容であること、6一般教養、準備教育とは区分した専門教育のコアであること、7作成手順として、内容を精選する際には、その特定領域以外の専門家を中心としてコアの内容を確定していったこと、などが挙げられると認識。

     コアの部分は必修・共通部分とはいえ各大学により濃淡の違いがあり、さらに選択科目としてのアドバンストの取入れ方などで多様性のある時間割が組める。薬科大学協会として統一の案というものとはせず、協会の個々の教員、個々の大学が多様なカリキュラムが組める。

     コア以外の部分を選択でという場合の「選択制」とは、各学生が勝手に選択するという意味の「選択」ではなく、各大学が個性・特徴に応じ必修科目をコースとして用意するという意味の選択と理解している。

     各大学がコア・カリキュラムの他の部分で特色を出すことが望ましい。

     薬学の場合、薬を使う側の薬剤師と作る側の創薬研究とが、ある意味並列的であり、このため 教育も非常に多様であり、多様な選択肢を許容し選べるコア・カリキュラムである必要がある。

     「モデル・コアカリキュラム」とは、各大学におけるカリキュラム構築を縛るものではなく、教えなければいけない内容、学生が学習しなければいけない内容を整理したものに過ぎず、この内容をいかなる形で学習する、あるいは教育するかは、各大学が知恵を絞り、大学の特性に応じ工夫すべきもの。

     医学教育では、従来の基礎研究分野と、医師養成も含めた臨床分野とが、統合して教育していると認識。例えば解剖学の講義で臓器の教育を行う際、併せて超音波診断、CT、MRI診断の説明を同時に行うなど、基礎と臨床とが授業を協力して行うことで基礎と臨床の区分をなくしている。医学の研究者養成については、コアカリキュラムの中に盛り込み、授業科目でも基礎系・臨床系が一体となって授業を行い、選択制としても先端研究への道をつくるなど、これらの組み合わせで対応している。

     大学設置基準の大綱化以降、医学教育分野においても様々な問題点が明らかになり、教育改革の契機となった。モデル・コアカリキュラムの検討にあたっては、多様な選択肢を与えるため、従来の学問体系は取り外して考えた。

【薬学教育のコアカリキュラム】
       日本の薬学がカバーする分野が極めて多様性に富んでおり、そのことが国際的にも評価されているということをコアカリキュラム作成において認識する必要がある。

     大学での薬学教育の中でコアカリキュラムは6割から7割を占め、残りの3・4割は各大学が独自性を出して特色ある多様な教育をすることとなるべきもの。

     医学教育の場合、コアの部分は教養部分を除き94単位であり、卒業要件188単位の半分程度となっている。

【日本薬学会モデル・コアカリキュラム】
       日本薬学会モデル・コアカリキュラムは、薬剤師、薬学研究者等を目指す学生が学んで欲しい内容を整理したガイドラインであり、各大学がその特徴を生かし、専門教育の内容の過不足を考慮しつつ柔軟な適用をしていくことが期待されている。

     日本薬学会のモデル・コアカリキュラムの現時点での問題点として、1コアカリキュラムが若干大きいこと、2これまで経験がない分野等の工夫や充実、教材・教員を新たに準備する必要のあるユニットがあること、3年限を延長することを前提にカリキュラムを作成するには、制度の問題、共用試験の問題、実務実習の問題、卒業実習の問題、コース制・専攻の問題など、不確定要素が多数存在すること、が挙げられる。

     日本薬学会のモデル・コアカリキュラムは67ユニットからなっており、1ユニットは通常1単位を想定しているが、講義・演習・実験のいずれの方法により教育するかにもよる。
   また、薬学会でモデル・コアカリキュラムを作成した際には、年限を念頭に置いていない。この点は規定の年限を前提としている医学教育の場合と異なっており、多様な進路を考えた上で、全員に対して絶対必要なものは何かという概念でコアを考えた。

     今後の薬剤師は例えば研究者的な態度がないと現場のいろいろな問題に対応できないと考えるが、日本薬学会のモデル・コアカリキュラムはそういったものも加味している。

     日本薬学会のモデル・コアカリキュラムは、1モデルカリキュラム案へのアンケート回答結果の重視、2今後期待される薬剤師像を盛り込むこと、3医学教育、歯学教育のコアカリキュラムの構成に準じること、4実務実習・卒業実習を重視することを基本的な考え方とし、国公立、私立の壁を取り外し、今後薬学に求められる学習者主体の教育を体系化したものである。

     薬学教育モデル・コアカリキュラムの波及効果としては、1薬剤師国家試験出題基準の次期改定への反映を強く希望、2各大学におけるFD等、3より充実する内容(薬物治療、患者対応等)など、これまで以上に社会のニーズに応えることのできる薬剤師、薬学研究者が育つことが挙げられる。

     日本薬学会のモデル・コアカリキュラムができたが、今回全大学の参加によりいいものが出来たと思う。このコア・カリキュラムを各大学で活かし、医療現場で働く薬剤師、創薬研究、公衆衛生、薬事行政など、多様な人材養成に対応できる薬学教育でありたい。

     日本薬学会のモデル・コアカリキュラムの誇るべきところは、全ての大学の教官が理解し、普及してきたこと。この機会を実りあるものすべき。他方、薬学教育のワークショップでこれを実際に実施するための教育者を育成しており、これをさらに発展させ、ほぼ全薬学教員が学ぶようになれば、能率のいい教育が出来ると考える。このカリキュラムの延長線上に年限というものが捉えられるべきものとして考えている。

     これまで医療現場と薬学教育との乖離があった。日本薬学会のモデル・コアカリキュラムの作成でその乖離が解消され、非常に評価できる。

     日本薬学会のモデル・コアカリキュラムの内容を妥当と評価しており、速やかに取り入れて欲しい。実務実習も必須と認識している。

     今回日本薬学会がまとめ役をして作成したモデル・コアカリキュラムは重要なものであり、これをどうやって実施するかがこれからの問題。大学で本物のカリキュラムを作り上げなければ、大学人の役割はないのではないかと強く思う。まず、大学でしっかりとしたカリキュラムを作り、実際に学生に当てはめ、よい薬剤師が養成できる、という結論が出せるものをまず実現して定量化するということを早急に考えたい。

     学部カリキュラムについては、今回の日本薬学会のモデル・コアカリキュラムは、国公私立大学の多くの関係者の努力によりすばらしいものができた。

     日本薬学会よりモデル・コアカリキュラムが提出されたが、このコア・カリキュラムを基に、国際的なレベルで薬学の発展や薬剤師・研究者の養成を考えた行動を取る必要があろう。

     生命科学という立場から見ると、薬学部のカリキュラムが一番よくできていると考えていたが、日本薬学会のモデル・コアカリキュラムを見ると量が膨大だという印象を持つ。

     医学教育改革については、臨床中心になったことは評価できるが、例えば社会医学的なことなど、周辺を見ることが軽視されていると聞いた。日本薬学会で作成されたコアカリキュラムはすばらしいが、もう少し周辺に関する内容が必要。

     医学教育のコア・カリキュラムももっと削減すべきだと考えている視点から見ると、それに比しても日本薬学会のものはかなり細かくできているという印象を持つ。また、重複する部分も何ヶ所かあり整理する必要があるのではないか。

     実習についてもどのあたりがコアになるかを見極めることが重要。医学の臨床実習でも細分化された各分野との葛藤があるが、教育の視点からどうしていくのかがわれわれ教育者の側に求められていると考える。また、卒業研究の位置付けも明確にする必要がある。

     薬学教育のモデル・コアカリキュラムは、医学のものと共通の問題点を抱えている。研究者育成と薬剤師育成がひとつの学部で行われていることであり、片一方だけとはいかない。医学の場合も同様であった。良い医師の育成を国民は求めており、他方で先端の生命科学の研究等も必要。医学の場合、コア・カリキュラムとは両者に共通の学習すべき内容にすべきとの結論に達した。それぞれに必要なものは選択制コースをつくることで対応することが大事。どのような領域でも共通なものをコアカリキュラムにすべきである。

     薬学には、薬学の研究者・技術者の養成と、薬剤師の養成があって、両者がコンビネーションを保ちながら、いかに多様性を保ちつつ生かしていくかが非常に大事な理念ではないか。
   この意味で、両者がオーバーラップするところが「コア」カリキュラムと思うが、日本薬学会のものはあくまでガイドラインであり、まだ本当のコアになっていないのではないか。このため、各大学が特色を持っていくことができないのではないか。策定には苦労があったものと思うが、この点を深めていかないと良いコアカリキュラムにはならない。

     医学教育の場合と異なるのは、医学教育の場合修業年限が6年ということからスタートしているが、薬学教育の場合は今までのよりも更に必要なもの、社会から求められているもの等を加味してモデルカリキュラムを作り、その7割をコアカリキュラムとした点。今4年間で行っているカリキュラムを7割にしたものではない。

     多様な進路まで考慮したコアに加え、薬剤師養成・研究者養成それぞれに必要な部分を選択にまかせるという議論になっていると思うが、この場合、薬剤師養成を考えた場合では個々の学生の選択ではない部分を要求しなくてはならず、他方、研究者養成も同様の部分があり、これら要求されるものを全てコアの部分に入れるので、コアの部分が膨らむことになる。

     実務実習についてもどのあたりがコアになるかを見極めることが重要である。また、卒業研究の位置付けも明確にする必要がある。

     実務系と研究系の両方に共有し、必要・必須なものがコアであるという概念で進め、全教官に意見を聞いて作成した。これが全体の7割になり、残り3割で選択・選択必須を付け加えることで独自性が出る。

     今のコアカリキュラムは全てに共通するもののコアカリキュラムであるが、薬剤師養成・研究者養成、それ以外の薬に関係していく方面のそれぞれのコアというものが必要なのではないか。このようにした場合、本来のコアは小さくて済むのではないか。

【カリキュラムの在り方】
       この分野では薬学研究と臨床と教育する人を分け、基礎的なことを4年間習得し、プラス2年でプロフェッショナルを育てるべきではないかと考えている。

     薬学基礎科目と実務実習はコントラストに捉えるものではない。

     医学分野では、カリキュラム等の改革が近年急速に動いている。これらの改革は、常に制度が先行し、制度をつくれば一件落着したと大学人は思いがちだが、まず内容を点検し、膨大となった情報を整理・精選することが大事だ。量が増えたからカリキュラムを増やすというのは安易に過ぎる。

     医療薬学の充実につとめることについては、薬学視学委員の視察においても、各大学に医療薬学教育の現状等について訊ね、またその推進を助言してくるようにという努力がなされ、実際に教育現場で医療薬学教育は急速に充実されてきた。

     薬剤師を取り巻く環境の変化に対応するため、医療薬学分野の充実が必要。

     今後の薬学教育カリキュラムに必要な視点としては、1科学の進歩、社会の要求に合った薬学生の育成、2知識偏重教育でなく、技能・態度もバランスよく教育する、3到達度を客観的に評価できる、ことである。

     カリキュラムの在り方の検討にあたっては、広く薬学卒業生が社会に出て働く場合に学ぶべき基本は何かということが重要なのではないか。

     日本では学生は学科に属し、卒業時には学部卒という概念であるが、アメリカは日本とは違って、この勉強をするとこの能力がつくという「プログラム」を単位とする発想であり、それぞれの学生が自らに必要な科目の集合であるプログラムを選択するという発想である。このような発想に切り替えないと多様性に対応できないのではないか。

     薬剤師養成・研究者養成のそれぞれにおいて基礎となる科目が用意され、個人が出口に応じて勝手に選択するのではなく、大学の責任でプログラムをつくらないといけない。

     現状では大学によっては国家試験対策のために多くの時間を費やされ、卒論実習をしていない ところもあるが、本来大学教育として、薬学のカリキュラムの中には、卒業実習が含まれるべき。卒業実習の中でより深い研究者となるべき教育、あるいはより臨床に根ざした薬剤師となる教育など多様な進路づけが可能となる。

     業務遂行に必要な知識として例えば、ゲノム・遺伝子とあるが、これは最先端で行われているゲノム遺伝子の研究を指すのではなく、ゲノムとは何か、遺伝子とは何かという基礎であって、それを押さえておけば応用が利くという内容と理解。基礎なくして応用は絶対出来ないが、応用問題だけをさせておくのでは、日進月歩の科学も使いものにならない。自分で物事を考えて解決できる人間を育てる教育が薬学のみならず教育全般で求められており、企業も、社会で役立つ全てのことを卒業生には求めているのではなく、その基礎を求めているものと思う。


実務実習環境の整備
  ・最低限必要とされる実習の完全実施
  ・「モデル・コアカリキュラム」において示される実務実習期間において充実した教育が行えるための教員・施設等の確保
  ・充実した実務実習を送るための、指導者用教育ガイドラインの作成
  ・病院・薬局との協力体制の構築
国立大学附属病院等における実務実習環境の整備
  ・実習環境の整備
  ・実務実習体制の構築
  ・国立大学附属病院等における今後の薬剤師(特に薬学修士)受け入れ方針の整理
臨床実習の充実
  ・臨床実習ガイドライン(評価方法等の雛形)の作成

【実務実習の意味・重要性】
       日本薬学会のモデル・コアカリキュラムでは、実務実習に係る内容が分けられているが、これが実施されれば、薬剤師の教育として満足できる。

     実務実習をしっかり行わないといい薬はできない。また、実務実習を含めた薬剤師の業務はサイエンスと接点を持つことが大事。

     薬剤師を取り巻く環境の変化に対応するため、長期実務実習の必修化が必要。

     これからの薬学教育の中でも、医療の現場で教育をし、基本的な実習をすることにより、チーム医療が成り立つと思う。その意味で、臨床実習を評価しなければならない。

     医療従事者としての使命感、倫理観を備える薬剤師の育成には、医療現場での実務実習が不可欠である。

     学生の実務実習に対する評価のアンケートの結果があるが、学生が実務実習からインパクトを受けている雰囲気が理解できる。

     医学教育では、臨床実習でも問題解決型を実践している。

     実務実習の教育は大事であるというのは充分わかるが、現実の医療現場における薬剤師像と将来のあるべき実務実習像との間には隔たりがあると感じる。

     学生のうちに、なぜ自分が薬剤師になりたいのかモチベーションを高めるため、実務実習は有効。ただし、最低限コアカリキュラムをこなし、共用試験をパスしている学生でないと患者としても不安が残る。

【指導内容】
       日本薬剤師会のガイドラインでは、実務実習に関してはコアの概念でつくっておらず、必要なものを示したもの。現状では、薬学部では全員で実務実習をやるためのハード面、ソフト面いずれもそろっておらず、コア化の作業が難しい。

     実習についてもどのあたりがコアになるかを見極めることが重要。医学の臨床実習でも細分化された各分野との葛藤があるが、教育の視点からどうしていくのかが教育者の側に求められている。

     病院での実習と薬局での実習の相違点を大学・学生が理解することが必要。薬局実務実習をすると、幅広い知識が必要だと実感する。薬局ではカルテを見ることができないことから、薬局独自の調剤がある。薬局では医薬品だけでなく、工業薬品等も供給することから、あらゆる医薬品の知識が必要。地域の医療、学校保健、生活習慣病、在宅介護等を学ぶことが基本となり、病院実習とは異なる。

     病棟での服薬指導を見たが、薬剤師の資格をまだ得ていない学生が、病院内をウロウロするのは患者に迷惑との印象を持った。アメリカでは、患者は医学生も含め、学生に診てもらうことに対して理解をもっているが、日本ではこのような理解はまだないと思う。この点をどう解決するかが実務実習における課題と認識。

     千葉大病院の見学でわかったように、1つの大学病院の業務ですら非常に多岐にわたる。薬学教育の実習でどの程度まで最低限身につけるようにすべきかという内容を整理する必要がある。

     卒前の資格がない状態で学生がどの様に患者に関わっていくのかという議論も必要。医学分野においては、平成の始めのころから議論があり、共用試験によって臨床実習前に学生を評価するという裏付けのシステムを作ることにより、診療への参加が可能となった。

     実習において学生が行い得る範囲について、平成8年に厚生省の委員会では、人の生命・健康に害を及ぼすおそれが少ない行為(調剤の非本質的行為)については、薬剤師の指導下において行為をさせることは可能という考えが出されている。

     日本薬学会の「モデル・コアカリキュラム」と「卒業実習・実務実習カリキュラム」を同じレベルで考えるのは正しくないのではないか。後者は「ガイドライン」の段階であり、例えば病院によってはできない実習も含まれており、検討が不十分で疑問。このような内容は、病院のローテーションでやるという方法もあろうが、その方法なども現段階でははっきりしないままである。

     日本薬学会の実務実習カリキュラムの作成に当たっては、全大学にアンケートをとり、使えるかどうか検討は行った。ただ、カリキュラム内容については各大学の意識もあり、様々な意見が出され検討が行われたが、実務実習については、これから先のものとして、大学の意識もまだ希薄であり、あまり意見がでなかったことも事実である。

     実務実習を充実させるにはコストがかかるが、これは大学がきちんと確保すべきもの。私立においては学生の負担増にせざるを得ないと考える。

【指導体制】
       実務実習については、受け入れが可能か否かと、それが公的な教育施設として認定され得るものであるのかは、別問題であり、今後の課題であると考える。

     薬局での実務実習の基本的な考え方として、実務実習は薬学教育の大学の授業の一環として位置付けられ、病院及び薬局における両方の実務実習を受ける必要がある。また薬学部は医学部・歯学部と異なり附属病院を持たないため、諸外国と同様に実習を外部に委託するという特性を十分に認識する必要がある。

     本来、病院に対し大学の教員を送っていただきたいとの現場の声もあるが、それは数的に絶対不可能と理解。

     医療現場は、多忙かつ常に緊張を要する職場であり、実務実習を長期化するには受け入れ体制が不備であると感じた。

     近畿地区薬学部学生実務実習に関する協議会に関連して、大阪薬科大学の教員が実習施設240医療施設に対して行ったアンケート調査によれば、実務実習の責任者を決めているか否かについて、決めているとの回答は61%であった。また、実習指導薬剤師数は6名以上いるところが40%であり、あとはそれ以下の人数。薬剤部内の指導者の養成を考えているか否かに関しては、65%が考えていないという回答であった。

     実習体制は広がってきてはいるが、全国的に見れば、実習施設が教育施設として十分機能するかという問題は残るのではないか。実習体制は、最終的には大学人の責任において構築されるべき。

     実務実習は講義や実験と異なり、それぞれが違うことをやるため、指導者1人が1人か2人を指導するのがやっとではないか。そうすると、年間8000人〜9000人の学生を実習させるには、1人の指導者が5人受け持つとしても、1500人〜2000人近くの指導者を用意しないといけないということになる。更に、仮に6ヶ月間の実習となると、1人の指導者でつきっきりということはできないであろうから、サポートをする人も含め、数千人の指導者層を作る必要があることとなる。短期実習・長期実習とで指導者の確保数が異なってくる。

     指導者の質の担保は、当面は自主的に資格要件を設定して質を担保するが、将来的には第三者評価機関で行う予定。

     実務実習は、大学の科目として行うわけであるから、その内容・指導の質の確保は、それぞれの薬科大学の責任において行うべきもの。

     医療現場は本来医療を行うことを本務としているのであり、実習受入にあたり医療現場を侵すようなことがあってはならない。指導体制の構築にあたっては、大学の関与が不可欠である。

     例えばアメリカのように、薬剤師も医療に対する責任を負うようにするということが将来の目標であるが、日本では現時点では必ずしもそうなっていない。病院での実務実習指導は薬剤師のみでは無理であり、医師や看護師の協力も必要である。

     現在の、病棟における薬剤師の位置付けははっきりしておらず、医師、看護師との連携や、患者に関する情報の共有などの点でまだ不十分な印象であった。患者についても、病棟での薬剤師の役割を理解してもらうことに時間がかかる。

【現状】
       平成8年の協力者会議の最終まとめでは、当時2週間程度であった実務実習期間を、当面4週間程度を目標に長期化し、内容も充実させるとのことであったが、これを受けた改善としては、10日間から19日間の実習を必修としている大学10、20日〜29日24大学、30日以上1大学であるが、他方、選択のみとしている大学は、それぞれ2大学、9大学(30日以上なし)である。また、病院実習・薬局実習の割合、また指導体制にあたっての大学の関与は、実習先ではほとんど大学が関与していない場合、あるいは大学が指導を行っている場合など、様々である。

     日本薬学会の医療薬学委員会が行った調査を見ても、実習に対する各大学の意識は高まっていると考えられる。実習期間も3〜4週間に増えてきている傾向がある。また、学生の実習に対する評価であるが、使命感を持つことができたり、緊張感を持って取り組むことができたということであった。日本医療薬学会の昨年度末の実績によると認定薬剤師が542人、指導薬剤師が446人、研修施設が206ヶ所である。平成8年時の実態に比べ進んでいると言える。

【実務実習受入体制】
       日本薬剤師会では、本年1月の六者懇の検討課題について、実習の受け入れを中心に検討しており、今後の会議の中で詳しく説明したい。

     六者懇で出された実務実習の受入れ体制の整備について、日本病院薬剤師会では現在検討を進めている。

     平成13年度の学生の薬局実務実習の受け入れ実績は、薬学生約八千数百名中2767名。薬局での実務実習が遅れているのは病院実習から先行したこと、薬局業務は物販であるというイメージがあり薬局での実務実習について理解が得られていないこと、薬局は小規模であることが多く調整が難しいという理由がある。

     日本薬剤師会としては、今後の薬局実務実習については、均一性・公平性・長期化をふまえたシステムとして、個々の対応ではなく組織対応とし、当面は地区調整機構の下部組織として薬局実務実習関連業務のみを行う調整機関を置き、地区薬剤師会、地区調整機構内大学関係者で共同で運営する方針である。少なくとも平成15年度中に全国的に立ち上げ、平成16年度の薬局実務実習についてはすべてこのシステムで動けるよう努力している。

     長期実習の受け入れには三つの問題点がある。一つは首都圏に学生、薬学部が集中しているため、首都圏近郊だけで施設を確保することは困難である。二つ目は薬剤部の業務が病院によって格差がある。三つ目は医療現場で実習に対する教育を行うための負担が増え、更に教育の質の確保を考えるとマンパワーの問題がある。日本病院薬剤師会としては、三つ目については今後薬科大学等と連携したいと考えている。

     今は薬学教育改革に向けての過渡期であり、薬局と病院で実務実習体制を別々に構築しているが、日本病院薬剤師会としては将来一本化するということで日本薬剤師会とも合意がとれている。

     日本病院薬剤師会は、今後の薬学教育に対して全面的な形で協力させていただきたいと考えている。

     以前は学生が現場に来るのが夏休み、春休みと限られていたが、今はほぼ一年通して学生を受け入れているところもある。

     病院実習については、今までの実績を踏まえると受け入れ態勢を作ることは十分可能。ただし、マンパワーの問題が心配である。

     実務実習の効果は極めて大きいと実感しているが、薬剤師はその病院の薬剤業務を行うことが第一任務であり、教育をすることも重要な役割ではあるが、各病院において経営方針も全て異なるものであり、それをどう受け取るかは病院次第と理解。現状でも、学生の希望が多いにも関わらず、その全てを受け入れるだけのキャパシティが病院にはない。

     具体的な方策については大学側と具体的に詰める必要があるが、一例としては、今後受け入れ施設数・受入人数を増やすため、グループ化して小さな病院等も拾い上げて様々な受け皿を用意して行く必要がある。

     今、病院薬剤師の人数は非常に厳しい状態にあり、病院によっては学生教育をする位ならもっと現業をやれという病院があるのも事実。これらも考えると教育スタッフが病院に十分という状態では決してない。これらの現状を考えると、複数の病院のグループの中に教員が入り、実務実習教育に参画して欲しいと言うのが、現在考えている1つの例。詳細は今後議論する必要。

     内容についての議論や実習先の確保策についての議論がなく、単に「実習を行えばいい」との議論であると危険だ。

     実習を受け入れる病院・薬局において、具体的にどの内容をどのように指導し、何人受け入れるかという指導体制をどう考えるか、難しい問題。

【大学附属病院】
       国立大学の薬剤部長会議でも、実務実習にどのように加わり貢献していくか色々努力している。国立大学附属病院でも地域によっては十分キャパシティがある。日本病院薬剤師会等でグループ化をしているが、それらと今の調整機構のシステムを併用すれば十分実習は可能と考える。国立大学附属病院も実習に関し各府県の中核病院として積極的に関わることは十分出来ると考える。

     京大病院では他大学薬学生を中心とした夏期実習に加え、7年前から本学の薬学部実習生を受け入れている。薬学部としても、当初は選択であったが2年前から必修とし、4週間を目途に行い、そのうち病院実習は2週間である。平成14年度も11月から12月にかけて、2回に分けて各40人を2週間行ったところ。新4年生に対しては、これまでの秋2回の実習を、春休み中に1ヶ月実習を行い秋に2週間実習を行うことを予定している。

     京大病院では、約80人の修士課程学生のうち、上位5人が臨床薬学コースに進み、6ヶ月実習を行っている。従来の薬剤業務を2ヶ月程度行い、残りの期間は主に病棟実習を充てている。学生も長期の実習になれば問題解決能力も身についてくるし、モチベーションも違う。ただ短期・長期に対する捉え方はいろいろあり、どういうやり方で行うかは各大学で考えていくべき。

     長期間にわたる実習は、医学部があり、附属病院があるから可能なのではないのか。附属病院を持たない単科の薬科大学ではそういうわけにはいかない。

     日本病院薬剤師会や日本薬剤師会が調整機構などを作っている。その中で42の国立大学病院が中心的な役割を果たしていけばいいと思う。大学病院で全てできるわけではなく、近隣の病院や関連病院、保険薬局と連携してやることが必要。


修業年限の在り方
  ・カリキュラムの在り方、実務実習内容・期間の検討結果を受けて、薬学教育の修業年限の在り方について検討
修業年限を延長する場合の措置等
  ・関係法令の整備
  ・上記に基づく予算措置等

       日本薬学会のモデル・コアカリキュラムを検討すれば、修業年限は4年では不足する。

     薬剤師養成の修業年限の問題については、医学部の6年制に対抗するという議論が出発点にあったと聞くが、そういう発想から議論を出発するとひずみが生じる。様々な面において、本当にいい薬剤師を育てること、創薬の研究者を育てることについて、十分な議論をしたと説明できるようにしたい。

     カリキュラムの延長線上に年限というものが捉えられるべきものとして考えている。

     ジャーナリズムの中で医療の知識のある人が非常に少ない。薬学教育を受けた人がメディアに入れば、スペシャリストとして育っていくと思う。無知なジャーナリストの中に薬学を学んだ者がいれば、医療事故に関しても間違ったレポートを書くことはなくなるのではないか。
   このような人材を育てることも薬学教育の中に必要であり、このように考えると一律に6年もかけて育てなくても、4年で薬剤師以外の道を選択をすることのできるようにする必要がある。

     6年制の議論があるが、結果として何が期待できるのかを明確にする必要がある。


薬学教育の改善
  ・FD等教育内容・質の向上
  ・「モデル・コアカリキュラム」に基づく大学間共用試験の実施
  ・教員の教育業績評価方法に関する検討
教育組織及び教員の教育能力の向上策
  ・大学関係者と協力しながら、教員の教育業績評価ガイドラインを作成
  ・実務実習指導者の養成等FDの推進方策の検討
学部・大学院の在り方
  ・他学部や薬学部のこれまでの経緯を参考に、大学院のあり方等を含め検討
教育体制の見直し
  ・文部科学省における学部・大学院の在り方等に関する検討結果を踏まえ、各大学における教育体制(大学院のあり方等)を見直し

       医師教育分野では、臨床実習開始前に学生を適切に評価するため、大学の教員による、大学間共用試験を行うこととし、現在そのトライアルを実施している。その際、問題作成や評価について、患者さん中心の医療に向けて、ボランティア団体や模擬患者さん等に積極的に参加いただき、厳しい指摘を受けながら行っている。

     修士課程の拡充に関しては、今後の問題として議論を期待。本協力者会議名にある「充実」に大きな意義を見いだしていきたい。

     町の薬局の薬剤師のレベルを高めることが国民の期待していることだと思うが、薬学の先生方の意識が希薄だと感じる。一番被害を受けているのは学生であることを踏まえて、薬学教育の在り方についての議論を展開していただきたい。

     医学教育分野においては、共用試験の実施により、1共通の必要最小限の内容について、到達レベル設定の具体的基準は共通の評価システムにより始めて検証可能、また良質な問題作成が教育内容改革に直結、2従来の学科目毎の個別試験に比べ統合型問題、事例・データ解釈応用問題が出題可能であり、教育内容ガイドラインのみならず教育方法改善等への具体的指標となる、3従来の担当者まかせの専門性が高く評価基準の曖昧な独善的試験内容の排除への効果、などの成果が明らかになっている。


薬学部卒業生(薬剤師)の生涯教育
  ・大学における生涯学習の在り方について検討
薬学部卒業生(薬剤師)の生涯学習体制の構築

       一般に専門職分野というのは養成教育と継続教育があり、仮に養成年限の延長等をする場合、同時に、既に実務に就いている人たちがこれに対応することも必要。継続教育も当然視野に入っていると思うが、その点の議論も注意していきたい。

     薬剤師資格は一度取ったらそれっきりというわけにはいかない。薬科大学では生涯学習を非常に重視している。さらに効果をあげるために、日本薬学会のホームページを使って、少なくとも各大学がやっている生涯学習・社会人学習の情報をひとつにまとめ、受講生が受けやすいものにしたい。薬剤師の研修の仕組がなければいけないし、それを受け入れる場所が大学を中心として日本中に存在することが必要。

     柔軟な頭脳を使える教育をする必要があるが、教育をする側の発想が今のままだといい結果が出てこないのではないか。

     調剤薬局にも子育てが終わった薬剤師資格者が新しい薬の知識がないままに復職する人がよくあるが、そのような薬剤師に研修をやっていかないと不安である。

     「つたえる」と「つかう」については、臨床現場の理解が不可欠であり、現場を知ることが重要。医療の現場は進歩が早く、大学での養成と同時に、生涯教育・継続教育も考えることが重要。

     各都道府県の薬剤師会は、未就業薬剤師の研修などを行っている。

     薬科大学としては、学生を卒業させたら終わりということでなく、生涯にわたり学習活動をサポートする必要がある。

     修士課程の医療薬学コースを夜間開講しているが、多くの社会人受講生が学生と一緒に熱心に受講している。

     土日には公開講座を開催しており、さらに時間的余裕のない人に向けては、通信講座を行っており、各年度500人程度受講している。他大学の卒業生が半分以上を占めている。様々な面で大学の使命として生涯学習をサポートしていかなくてはならないと考えている。

     社会人受講生からのカリキュラムについての要望については、受講者にアンケートを行っているが、希望が多いのは疾患説明と服薬指導。医師と薬剤師が組んで行う内容についてのカリキュラムが求められているようである。

     薬系大学でもきちんと生涯教育ができるという精神が大事。一度薬剤師になった人も生涯教育での教育が活きてくるかと思う。

     大学を卒業後、医師との連携をとる薬剤師が少ないのは事実。患者とも話す機会がとりにくい。医療知識を学ぶために大学に戻り生涯学習を受ける人がいる。大学としてそういう機会を与えていかないといけない。全国の大学の統一的な生涯学習のカリキュラムができれば理想的だ。

     最新の知識が医療現場では必要だ。大学がその情報提供機能を担っている。継続的に専門教育を繰り返し行っていくことが大事。


大学の設置認可
  ・カリキュラム・修業年限等を踏まえ、設置認可方法について検討


その他

       医学教育の分野では、その改革が迅速に行われている。薬学教育の改革方策についても早急に結論を出していただきたい。

     薬学教育の議論の方向付が出来た時点で、具体的な行政の力で薬剤師養成のシステムが変えられることを願っている。

     国際標準化は、国民への貢献のために必要。

     薬剤師養成のあり方の検討はかなり急がないといけない。

     医学部で15年間教員をしていた時から、医師と薬剤師との関係は色々ありそうだという感想を持っていた。

     中国では薬学教育の普通の課程の後に、3つのトレーニング(創薬、薬品管理、医療現場での経験)を3年間行わないと国家試験を受けさせないと聞いた。



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