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資料2

薬学教育の改善について(最終まとめ)(教育制度関係部分)

平成8年3月19日
薬学教育の改善に関する
調査研究協力者会議
3.薬系大学院の在り方について

(1) 薬系大学院の在り方
     薬系の大学院は、医薬品の創製・製造及び適用、さらには衛生薬学にわたって、研究の推進と社会の要請する人材養成を行っていく使命がある。したがって、研究者養成機能と同時に高度専門職業人養成機能も重視しながら、量的にも質的にも整備充実を図っていく必要がある。

(2) 研究者養成機能の強化
     研究者養成機能の強化の観点では、特に、創薬基礎科学研究の推進とそのための人材養成を図ることが求められていることから、創薬基礎科学関係の専攻の整備を図る。

(3) 高度専門職業人養成機能の強化
     高度専門職業人養成機能の強化の観点では、特に医療チームの一員として高度の学識をもって専門的あるいは指導的に活躍する薬剤師を養成することがもとめられており、薬学教育の専門家による実証的研究では、下記の基本的視点に立って大学院修士課程における医療薬学専攻又はコースのモデルカリキュラム骨子を作成した。
   各大学では、病院・薬局等医療現場での、より資質の高い薬剤師に対するニーズに適切に対応する必要があり、学部段階において薬剤師全体の資質向上を図るとともに、薬学部を卒業して薬剤師免許を取得した後に、大学院修士課程において、より高い専門能力を身に付けた薬剤師を養成することが有意義であると考えられる。このため、本モデルカリキュラム骨子を参考としつつ、各大学の特色、独自性を発揮し、大学院修士課程において医療薬学専攻等を量的にも質的にも整備することが望まれる。
   (略)

(4) 社会人の現職教育への貢献
     薬剤師を含む社会人の現職教育に貢献する観点から、社会人特別選抜の実施、科目等履修生制度の活用や昼夜開講制の実施あるいは夜間大学院の開設などを通じて、社会人の受入体制の整備を図る。

(5) スクーリングの重視
     体系的なカリキュラムによる教育の実施や研究指導方法の改善を図るなど、スクーリングを重視した教育に大学院全体として組織的に取り組む必要がある。

4.薬学教育年限の在り方について

(1) 薬学教育年限の在り方についての検討点
     社会のニーズに応えられる薬剤師を養成するためには、医療薬学関連科目の充実や長期実務実習が必要なため、薬剤国家試験受験資格として薬学教育の教育年限を延長することが必要であるとの議論があり、本会議においても、時期を定めて学部6年の一貫教育へ移行することが望ましいとの強い意見があった。
   薬学教育の年限の在り方は、薬剤師の在り方、薬剤師国家試験と密接にかかわっている。このため、薬学教育の年限在り方の検討に際しては、将来の薬剤師の在り方等を念頭に置き、かつ、以下のような諸要因を見据える必要がある。

 
1 大学、大学院の現況
     平成7年現在、薬系大学の学部の入学定員は、7,720人であるのに対して、大学院修士課程の入学定員は国公私立あわせても1,200人程度(うち医療薬学専攻等は200人程度)である。このため、薬剤師養成のための薬学教育の年限の在り方として、学部の教育年限を延長する、あるいは、大学院修士課程修了程度とする場合のいずれにしても、大学の教員、施設・設備等の整備について莫大な投資を要することになり、国公私立を問わず、これら整備を容易には行い得ない。

2 病院等での実務実習を充実するための条件整備
     薬学教育において医療薬学教育の充実を図ることが重要であり、今後、医療の現場において薬剤師の果たすべき職責の重要性に鑑みると、病院・薬局等での実務実習期間の延長(関係機関の協力を得て、当面1ヶ月程度を目標)やプログラム作成による内容の充実を図る必要がある。このため、現在、各大学等において様々な努力がなされているが、現状では1ヶ月程度でも実習施設の確保、指導体制等において困難な点が多いため、今後、医療機関等の理解、協力を得つつ、これらの課題の解決に努めていく必要がある。

3 薬学部入学希望者への影響
     18歳人口の減少等、高等教育を取り巻く環境の変化のなかで、薬学教育の年限が延長された場合の薬学部入学を希望する高校生の進路選択への影響を十分見極める必要がある。

4 創薬基礎科学に関する教育研究機能への影響
     薬学教育においては、前述の通り、幅広く薬学関連の人材養成を行っていくことが適当であるが、病院・薬局等で勤務する薬剤師養成充実の観点のみから教育年限を延長した場合、研究面での優秀な人材の確保、養成が困難となり、薬系大学における装薬基礎科学に関する教育・研究機能に大きな影響を与えることが懸念される。

(2) 薬学教育の年限の在り方
     今後、薬剤師の資質向上を図る観点から医療薬学教育を一層充実していくことが急務であるが、上記の検討点を踏まえると、現時点で、薬学教育の改善にあたって、また、薬剤師国家試験受験資格として、現行の学部4年の年限を延長するには難しい課題が存しており、当面は、前期の方向に沿って、学部段階における薬学教育の抜本的改善と大学院修士課程の拡充を中心に現行制度の枠内で薬学教育の改善を図ることが現実的といえる。なお、この年限問題に関連して、将来、大学院の整備状況の推移によって薬系大学院が創薬基礎科学関係の専攻と医療薬学専攻の大きく二つの分野に発展・分化していく可能性があるとの意見もあった。
   年限の在り方の問題は、大学院修士課程の整備の進展や大学院修士課程修了者に対する医療現場の需要動向等、現実的に解決するべき問題点の推移等を踏まえつつ、今後とも継続して検討すべき問題であると考えられる。


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