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資料1

薬学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第5回)議事要旨(案)

1.日    時    平成15年2月20日(木)13:00〜15:30

2.場    所   文部科学省分館201・202特別会議室

3.出席者   末松座長、佐藤副座長、野村副座長、秋尾、市川、乾、北澤、桐野、佐村、
全田、高柳、寺田、富田、福田、望月、矢内原、吉岡の各協力者
日本薬剤師会児玉孝理事、日本病院薬剤師会矢後和夫副会長
文部科学省:木谷審議官、小松医学教育課長、新田課長補佐、宮田課長補佐、
ほか関係官

4.議事
(1) 千葉大学病院を見学した委員から意見・感想等を述べた。発言の概要は以下のとおり。(○:委員)
   医療現場は、多忙かつ常に緊張を要する職場であり、実務実習を長期化するには受け入れ体制が不備であると感じた。
   
   病棟での服薬指導を見たが、薬剤師の資格をまだ得ていない学生が、病院内をウロウロするのは患者に迷惑との印象を持った。アメリカでは、患者は医学生も含め、学生に診てもらうことに対して理解をもっているが、日本ではこのような理解はまだないと思う。この点をどう解決するかが実務実習における課題と認識。
   
   実務実習の教育は大事であるというのは充分わかるが、現実の医療現場における薬剤師像と将来のあるべき実務実習像との間には隔たりがあると感じた。薬学教育を変えても現場の薬剤師が変わらなければ意味がない。
   
   病院における薬剤師の在り方が変わらないと教育も変わらない、教育が変わらないと病院における薬剤師の在り方も変わらないというのが実感である。
   
   薬剤部の仕事は、注射薬の確認など正確性が求められ、非常に神経の要る仕事であるが、一方でルーティンワークが多い。スキルアップしても、その能力をどこで発揮させればよいのかモチベーションの持ちようが難しい職場だと感じた。
   
   現在の、病棟における薬剤師の位置付けははっきりしておらず、医師、看護師との連携や、患者に関する情報の共有などの点でまだ不十分な印象であった。患者についても、病棟での薬剤師の役割を理解してもらうことに時間がかかる。
   
   学生のうちに、なぜ自分が薬剤師になりたいのかモチベーションを高めるため、実務実習は有効。ただし、最低限コアカリキュラムをこなし、共用試験をパスしている学生でないと患者としても不安が残る。
   
   薬剤師の仕事の内容が世間にあまり知られていないと思う。様々な方法によるイメージアップを図っていくことも考える必要がある。

(2) 「実務実習の在り方」について議論があった。議論の概要は以下のとおり。(○:委員、←:質問に対する発言)
   平成8年の協力者会議の最終まとめでは、当時2週間程度であった実務実習期間を、当面4週間程度を目標に長期化し、内容も充実させるとのことであったが、これを受け、どのような改善が図られたのか。
   
   10日間から19日間の実習を必修としている大学10、20日〜29日24大学、30日以上1大学であるが、他方、選択のみとしている大学は、それぞれ2大学、9大学(30日以上なし)である。また、病院実習・薬局実習の割合、また指導体制にあたっての大学の関与は、実習先ではほとんど大学が関与していない場合、あるいは大学が指導を行っている場合など、様々である。
   
   近畿地区薬学部学生実務実習に関する協議会に関連して、大阪薬科大学の教員が行ったアンケート調査(実習実施240医療施設)によれば、実務実習の責任者を決めているか否かについて、決めているとの回答は61%であった。また、実習指導薬剤師数は6名以上いるところが40%であり、あとはそれ以下の人数。薬剤部内の指導者の養成を考えているか否かに関しては、65%が考えていないという回答であった。
   
   現状では指導体制はどうなっているのか。
   
   日本薬学会の医療薬学委員会が行った調査を見ても、実習に対する各大学の意識は高まっていると考えられる。実習期間も3〜4週間に増えてきている傾向がある。また、学生の実習に対する評価であるが、使命感を持つことができたり、緊張感を持って取り組むことができたということであった。日本医療薬学会の昨年度末の実績によると認定薬剤師が542人、指導薬剤師が446人、研修施設が206ヶ所である。平成8年時の実態に比べ進んでいると言える。
   
   京大病院では他大学薬学生を中心とした夏期実習に加え、7年前から本学の薬学部実習生を受け入れている。薬学部としても、当初は選択であったが2年前から必修とし、4週間を目途に行い、そのうち病院実習は2週間である。平成14年度も11月から12月にかけて、2回に分けて各40人を2週間行ったところ。新4年生に対しては、これまでの秋2回の実習を、春休み中に1ヶ月実習を行い秋に2週間実習を行うことを予定している。
   
   実習体制は広がってきてはいるが、全国的に見れば、実習施設が教育施設として十分機能するかという問題は残るのではないか。実習体制は、最終的には大学人の責任において構築されるべき。
   
   2週間より長期の実習、例えば6ヶ月にした場合、具体的に何をやるつもりなのか。
   
   京大病院では、約80人の修士課程学生のうち、上位5人が臨床薬学コースに進み、6ヶ月実習を行っている。従来の薬剤業務を2ヶ月程度行い、残りの期間は主に病棟実習を充てている。学生も長期の実習になれば問題解決能力も身についてくるし、モチベーションも違う。ただ短期・長期に対する捉え方はいろいろあり、どういうやり方で行うかは各大学で考えていくべき。
   
   長期間にわたる実習は、医学部があり、附属病院があるから可能なのではないのか。附属病院を持たない単科の薬科大学ではそういうわけにはいかない。
   
   日本病院薬剤師会や日本薬剤師会が調整機構などを作っている。その中で42の国立大学病院が中心的な役割を果たしていけばいいと思う。大学病院で全てできるわけではなく、近隣の病院や関連病院、保険薬局と連携してやることが必要。
   
   千葉大病院の見学でわかったように、1つの大学病院の業務ですら非常に多岐にわたる。薬学教育の実習でどの程度まで最低限身につけるようにすべきかという内容を整理する必要がある。
   
   卒前の資格がない状態で学生がどの様に患者に関わっていくのかという議論も必要。医学分野においては、平成の始めのころから議論があり、共用試験によって臨床実習前に学生を評価するという裏付けのシステムを作ることにより、診療への参加が可能となった。
   
   実習を受け入れる病院・薬局において、具体的にどの内容をどのように指導し、何人受け入れるかという指導体制をどう考えるか、難しい問題。
   
   実習において学生が行い得る範囲について、平成8年に厚生省の委員会では、人の生命・健康に害を及ぼすおそれが少ない行為(調剤の非本質的行為)については、薬剤師の指導下において行為をさせることは可能という考えが出されている。
   
日本薬剤師会からの発言)平成8年から大きな変化があるのは薬局実務実習ではないか。その頃は、処方せんを受けている薬局がまだまだ少なかったが、現在は全国で約50%の受取率となっている。教育の実習という観点から、北海道から沖縄まで公平性と均一性を保ち、それをどう担保していくかが問題。日本薬剤師会としても平成15年度からシステムを構築しようとしているところ。大学とコミュニケーションを図りながらやっていきたい。システム構築のポイントは指導する薬剤師の質の担保と施設の担保である。
   また、実務実習の内容であるが、薬局の実務実習は病院のそれとは違うところがある。薬局は、医療用薬品の供給のみならず、一般用薬品、工業用薬品、検査用薬品、漢方薬といったあらゆる医薬品を供給するため、これらを薬局で学ぶこととなる。また、公衆衛生面や在宅医療もやっている。また、診療所の医師や患者への情報提供もある。
   
   実務実習は講義や実験と異なり、それぞれが違うことをやるため、指導者1人が1人か2人を指導するのがやっとではないか。そうすると、年間8000人〜9000人の学生を実習させるには、1人の指導者が5人受け持つとしても、1500人〜2000人近くの指導者を用意しないといけないということになる。更に、仮に6ヶ月間の実習となると、1人の指導者でつきっきりということはできないであろうから、サポートをする人も含め、数千人の指導者層を作る必要があることとなる。短期実習・長期実習とで指導者の確保数が異なってくる。
   
   内容についての議論や実習先の確保策についての議論がなく、単に「実習を行えばいい」との議論であると危険だ。
   
   日本薬学会の「モデル・コアカリキュラム」と「卒業実習・実務実習カリキュラム」を同じレベルで考えるのは正しくないのではないか。後者は「ガイドライン」の段階であり、例えば病院によってはできない実習も含まれており、検討が不十分で疑問。このような内容は、病院のローテーションでやるという方法もあろうが、その方法なども現段階でははっきりしないままである。
   
日本病院薬剤師会の発言)カリキュラム内容の検討には日本薬剤師会、日本病院薬剤師会も参加して検討している。現在の実習内容は病院により格差があるのは事実だが、そのままにしておくと病院実習は成り立たない。日本病院薬剤師会としては、すべての内容をクリアできる病院を中心にグループ化すれば質の確保は可能であると認識。
   
   日本薬学会の実務実習カリキュラムの作成に当たっては、全大学にアンケートをとり、使えるかどうか検討は行った。ただ、カリキュラム内容については各大学の意識もあり、様々な意見が出され検討が行われたが、実務実習については、これから先のものとして、大学の意識もまだ希薄であり、あまり意見がでなかったことも事実である。
   
日本病院薬剤師会の発言)日本病院薬剤師会では、現在、神奈川県でグループ病院の実習制度のシミュレーションを行っているところ。全体として、一期での実習受入可能数は4734人であり、二期ということであれば約9500である。
   
日本薬剤師会の発言)保険薬局は全国で約46600程ある。その中で基準薬局は20000程度。それらが中心となって、今後日本薬剤師会の作成した認定用件に対する募集を行い、10000程度は確保できると認識。1人の指導薬剤師が指導できる学生の数は2名が限度。1保険薬局の指導薬剤師数は平均2、3名であり、学生受け入れ数は4名を想定。
   
   指導者の質をどのように担保するのか。
   
   当面は自主的に資格要件を設定して質を担保するが、将来的には第三者評価機関で行う予定。
   
   実務実習は、大学の科目として行うわけであるから、その内容・指導の質の確保は、それぞれの薬科大学の責任において行うべきもの。
   
   実務実習を充実させるにはコストがかかるが、これは大学がきちんと確保すべきもの。私立においては学生の負担増にせざるを得ないと考える。
   
   医療現場は本来医療を行うことを本務としているのであり、実習受入にあたり医療現場を侵すようなことがあってはならない。指導体制の構築にあたっては、大学の関与が不可欠である。
   
   例えばアメリカのように、薬剤師も医療に対する責任を負うようにするということが将来の目標であるが、日本では現時点では必ずしもそうなっていない。病院での実務実習指導は薬剤師のみでは無理であり、医師や看護師の協力も必要である。

(3) 日本薬学会のモデル・コアカリキュラムを参考に、これまでのカリキュラムの在り方に関する議論を踏まえながら、カリキュラムイメージ例の発表があった。

(4) 「大学における教育と生涯学習の関係」について議論が行われた。議論の概要は以下のとおり。(○:委員、←:質問に対する発言)
   薬科大学としては、学生を卒業させたら終わりということでなく、生涯にわたり学習活動をサポートする必要がある。
   
   修士課程の医療薬学コースを夜間開講しているが、多くの社会人受講生が学生と一緒に熱心に受講している。
   
   土日には公開講座を開催しており、さらに時間的余裕のない人に向けては、通信講座を行っており、各年度500人程度受講している。他大学の卒業生が半分以上を占めている。様々な面で大学の使命として生涯学習をサポートしていかなくてはならないと考えている。
   
   社会人受講生からは、こういうカリキュラムが欲しいなどの要望はあるのか。
   
   受講者にアンケートを行っているが、希望が多いのは疾患説明と服薬指導。医師と薬剤師が組んで行う内容についてのカリキュラムが求められているようである。
   
   薬系大学でもきちんと生涯学習ができるという精神が大事。一度薬剤師になった人も生涯学習での教育が活きてくるかと思うがその点どうか。
   
   医師との連携をとる薬剤師が少ないのは事実。患者とも話す機会がとりにくい。医療知識を学ぶために大学に戻り生涯教育を受ける人がいる。大学としてそういう機会を与えていかないといけない。全国の大学の統一的な生涯学習のカリキュラムができれば理想的だ。
   
   最新の知識が医療現場では必要だ。大学がその情報提供機能を担っている。継続的に専門教育を繰り返し行っていくことが大事。

(5) 次回は、教育制度の在り方を中心に議論することとなった。
   
(6) 閉会


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