ここからサイトの主なメニューです

知的国際貢献の発展と新たな留学生政策の展開を目指して-ポスト2,000年の留学生政策- (平成11年3月24日 留学生政策懇談会)

平成11年3月24日
留学生政策懇談会

目  次 



         はじめに


          I.知的国際貢献の意義と今後のあり方

          1.我が国の知的国際貢献の意義

          2.知的国際貢献の今後のあり方


          II.21世紀の留学生政策の基本的なあり方

          1.21世紀の留学生政策の基本的考え方

          2.21世紀の留学生政策の基本方針

          3.留学生政策推進体制の充実


          III.留学生政策の充実改善の方策

          1.大学の質的充実のための構造改革の推進
                〜大学の国際競争力の強化を図るために〜

          (1)魅力ある教育プログラムの開発及び普及

          (2)留学生のハンディキャップ等への配慮

          (3)受入れ体制の整備充実と自己評価の改善

          2.世界に開かれた留学制度の構築
                〜我が国への留学にあたっての障壁の除去のために〜

          3.官民一体となった留学生支援の充実
                〜世界の各国からの優れた留学生の確保のために〜





          はじめに    


  昭和58年以来、我が国は「留学生受入れ10万人計画」に基づき、留学生(外国人留学生をいう。以下同じ。)を迎えるための総合的な政策(以下「留学生政策」という。)の実現に努めてきた。この結果、我が国の留学生数は飛躍的に増大し、大きな成果をあげたと言えよう。10万人という目標は、我が国に対する国際社会の期待や我が国の高等教育の規模の大きさ等に鑑みると決して過大なものではない。近年の留学生受入れの動向は厳しい状況にあるが、文部省においては、今後ともこの目標を維持しつつ最善の努力を望みたい。

  今や、留学生政策を取り巻く環境は大きく転換しようとしている。留学生の教育研究ニーズは大学院志向が高まり、理工系技術者のほか将来を担う指導者や高度専門職業人の育成などに多様化しつつある。また、大学の国際的な評価が進みつつあり、留学生の受入れについても、欧米諸国等の大学との競争が強まる傾向にある。国際競争力を強化するため、大学の構造改革は今や避けて通れない課題である。また、厳しい財政状況の中、留学生施策のほとんどを依存するODA予算についても見直しが進められており、我が国の留学生政策についても、質的充実への重心の転換を迫られている。

  21世紀の我が国の留学生政策はどうあるべきであろうか。我々はこの命題を審議するにあたり、留学生政策を「知的国際貢献」の一つとして捉えた。このことによって、留学生政策の意義がより明確になるとともに“留学生を受け入れる”という姿勢からさらに進んで、世界の国や地域から優れた“留学生を引きつける”ためにはどうしたらよいのか、というこれまで以上に積極的な問題意識で議論を行うことができた。

  この報告書は、このような視点から、21世紀に向けた新たな留学生政策の展開の方策について提言をまとめたものである。我々はこの中で多方面の問題に言及しているが、特に大学等に対しては大胆な改革を求めている。国、大学等はもとより、地方公共団体、民間団体、企業、地域社会などのすべての国民に対し、この提言の実現に向けた取組みを強く要請したい。なお、この報告書ではほとんど触れていないが、留学生交流は双方向で行われることが望ましい。日本人の海外留学についても積極的に推進すべきであり、今後の諸施策のさらなる充実を望みたい。



I.知的国際貢献の意義と今後のあり方


1.我が国の知的国際貢献の意義

   一国の経済・社会の安定と発展のためには、優れた人材の育成が不可欠であり、我が国が留学生を迎えることは、いわば世界の安定と発展のための「知的国際貢献」といえよう。そして、アジア太平洋諸国をはじめ世界から、我が国の留学生政策への期待は大きい。
  知的国際貢献は我が国にとっても、(1)我が国と諸外国の相互理解の増進と友好関係の深化、(2)国際社会に対する知的影響力の強化、(3)経済・社会構造の国際化に資するなどの重要な意義を有する。


(知的国際貢献としての留学生政策)
  我々は、複雑な相互依存関係を有する国際社会の中に生きている。世界の平和、安定そして発展なくしては、海外に資源や市場の多くを依存する我が国の安定と繁栄はありえない。
  一国の経済・社会の安定と発展のためには、優れた知識や技術などを修得した人材はもとより、諸外国の異文化に触れ、豊かな国際感覚を備えた人材の育成が不可欠である。
  我が国が留学生を迎えることは、外国人への教育研究の機会の提供とこれを通じた日本人との交流を促進し、このような人材を育成するための国際社会への貢献であり、いわば知的国際貢献と呼ぶことができよう。21世紀において教育立国、科学技術創造立国そして文化立国を標榜する我が国に対し、アジア太平洋諸国をはじめ世界の国や地域から、世界の安定と発展のための知的国際貢献として、我が国の留学生政策への期待は大きいと考えられる。

(知的国際貢献の我が国にとっての意義)
  知的国際貢献は、我が国にとって次のような重要な意義を有する。
  第一に、知的国際貢献は両国民の間に親密な人的なつながりを形成し、我が国と諸外国の相互理解の増進や友好関係の深化を図るうえで非常に効果的である。これにより、我が国の安全保障と平和で安定した国際関係の構築に大きな役割を果たす。
  第二に、我が国に学んだ留学生が海外で活躍することにより、我が国が研究面や経済面などでグローバル・スタンダード(世界標準)の形成に主導権を確保したり、人的ネットワークが世界中に拡がることにより、国際社会に対する知的影響力を高めることができる。
  第三に、外国人との異文化交流を通じて、我が国自身をより広い視野から見つめ直す機会を得ることができる。これを契機として、我が国の諸制度や慣行の見直しなどをはじめ、国際化に対応するための経済・社会構造の改革に資する。
  大学等(大学、高等専門学校、専修学校(専門課程)をいう。以下同じ。)が留学生を迎える場合にも、これが大学等の教育改革の契機となり、大学等の水準向上に重要な役割を果たすことが期待される。留学生を迎えることは、大学等にとっても大きな意義があることを指摘しておきたい。
  現下の厳しい財政状況ではあるが、このような知的国際貢献の重要性にかんがみ、留学生受入れ体制の充実に向けて、最善の努力をしていくことが必要である。


2.知的国際貢献の今後のあり方

   我が国の留学生数は、先進工業国と比較するとまだ少ない。欧米や豪州では、知的な魅力や積極的な募集活動などによって、世界から優れた留学生を迎えている。
  我が国が優れた留学生を引きつけるには、(1)日本留学への関心を高めるためのアーリー・エクスポージャーの推進、(2)日本語の世界への普及、大学等を含め我が国の知的な魅力の向上と世界へのアピール、(3)異文化に対する日本人の理解の増進、国際化に対応する教育の充実、大学等を含め世界に開かれた経済・社会構造の構築、(4)国際大学村の建設の推進などの取組みが必要である。
   このうち、留学生の就職については、日本企業や母国の日系企業などに就職する者がさらに増加することを期待したい。


(欧米と比して少ない我が国の留学生)
  我が国の留学生数は「留学生受入れ10万人計画」の策定以降、飛躍的に増大してきた。しかし、我が国に対する国際社会の期待や我が国の高等教育の規模の大きさ等に鑑みると、先進工業国の留学生数と比較してまだまだ少ない状況にある。
  我が国の大学等の努力にもかかわらず、なお欧米諸国等の大学等への留学の志向が強いことは否定できない。欧米諸国等では旧宗主国という特別な立場にある国もあるが、留学生にとっての知的な魅力の大きさや海外における募集活動の積極的な展開などを通じて、世界の国や地域から多数の優れた留学生を迎えていることは注目に値しよう。

(アーリー・エクスポージャーの推進)
  我が国が優れた留学生を引きつけるためには、まず、我が国に対する親近感を醸成し、興味や関心を高めるよう、外国の児童生徒や大学生などに効果的に働きかけていかなければならない。
  このため、海外において、外国人が日本の芸術や伝統文化などに接したり、映像や図書資料などを通じて日本事情を理解する機会を増やすなど、我が国自身を海外に積極的に紹介していくことが望まれる。
  また、我が国の魅力を体験するため、海外の小・中学生、高校生、学校の教員などの短期招へい、JETプログラムによる外国語指導助手等の外国青年の招致、ワーキング・ホリデー制度の活用、日本でのホームステイなどを推進していく必要がある。
  これらの様々なアーリー・エクスポージャーの機会を通じて、我が国への留学に対する興味・関心をできるだけ年少の頃から高めていくことが必要である。

(我が国の知的な魅力の向上と発信)
(1)  フランスの開発援助は、仏語や仏文化の海外への普及を基本理念の一つとし、仏語の教員等の海外派遣などを積極的に進めていることは注目に値しよう。日本語についても、国際語の一つとして認められるよう、世界に積極的に普及していくことが期待される。
  すでに海外では、大学の日本語コースや民間の日本語教育施設などが数多く設置されている。我が国としても、これらとの協力を進めるとともに、インターネットや衛星通信等を通じて外国人に母国で日本語の学習機会を提供することもこれからの課題である。
(2)  我が国には日本語や日本文化などの固有の文化的所産のほか、留学生の母国の経済・社会の発展のために役立つ知的な財産も多い。例えば、行政、経済、社会等に係る整備された諸制度、企業の経営ノウハウ、優れた技術開発力、独創的な科学技術などは、留学生が学習したり、研究するに値する我が国の貴重な財産といえよう。
  我々は、我が国の貴重な文化的所産を今後も大切に引き継いでいくとともに、大学等を含め、我が国の有する知的な財産の水準をさらに高め、世界に向けて積極的にアピールしていかなければならない。

(日本人の意識改革と経済・社会の構造改革)
(1)  我が国が真に世界に開かれるものとなるためには、まず異文化に対する我々の意識を見直すことが不可欠である。留学生の中には学校、職場、地域社会等において、異文化に対する日本人の無理解に接したのをきっかけに日本嫌いになった者も多いという。
  すでに、民間団体などでは留学生と日本人との様々な交流活動が実施されているが、より多くの人々の参加を積極的に呼びかけていくことが肝要である。家庭でも、ホームステイの受入れや交流事業への参加などを通じ、親子で国際理解を深める努力を望みたい。
(2)  我々が異文化を拒絶するのではなく、文化の相違を理解しこれを受け入れるためには、学校教育や社会教育の場で、小学校段階から外国の生活や文化等に親しんだり、外国語に接することが大切であろう。この際、留学生を講師とすれば、日本人にとっても交流を図る良い機会となる。
  また、大学や高校段階では外国人とのコミュニケーション能力、ディベイト能力、情報活用能力などのリテラシーを重視した外国語教育に力を注ぎ、国際的に通用する人材を育成することが求められる。あわせて、我が国の大学生や高校生等の海外留学を推進し、若いころから海外での生活体験を積ませることも重要である。
(3)  さらに、大学等を含め、我が国の経済・社会構造を世界に開かれたものとしていかなければならない。このためにはまず、現行の諸制度やこれまでの慣行などを主体的に再点検してほしい。
  特に、我が国での就職については留学生の要望が多い。今後、インターンシップなどを通じた留学生と企業関係者との交流、APEC人材養成パートナーシップ事業や労働省の外国人雇用サービスセンターによる就職情報の提供などを通じて、我が国の企業や母国の日系企業等に就職する者がさらに増加することを期待したい。企業等においては、今後人材の需要が見込まれる分野など、世界の優れた頭脳を関係する業務に効果的に活用していこうという姿勢を望みたい。
  また、留学生がこれらの企業等に就職した場合、同等学歴の日本人との待遇や昇進の開きが大きいといった不満もある。企業等においては、留学生の能力や経験等に応じ、適切な対応を期待したい。

(国際大学村の建設の推進)
  文部省、科学技術庁及び通商産業省が、東京都の臨海副都心に国際研究交流大学村(略称「国際大学村」)の建設を進めている。国際大学村には、日本人との共同生活方式を取り入れた留学生・研究者宿舎のほか、産学官連携による研究を行う施設、科学技術情報の発信や流動的な体制による研究を行う施設等を設置する予定である。国際交流、産学官連携、情報発信の各機能を有機的に連携させた、これまでにない新しい国際的な知的交流の拠点施設として、国内外から大きな注目を集めている。
  国際大学村の運営については開かれた施設となるように留意し、世界の国や地域の留学生や研究者に積極的に活用されるよう望みたい。そして、ここを拠点として、高度で多彩な知的交流や知的活動等が展開され、我が国の知的資産の形成と知的国際貢献の拠点として大きな成果をあげることを期待したい。また、国際大学村が世界に誇りうる知的な魅力として、留学生を含め、世界の優れた知性を引きつけ、その育成に大いに役立ってほしい。



II.21世紀の留学生政策の基本的なあり方


1.21世紀の留学生政策の基本的考え方

   平成10年の留学生数は若干増加したが、厳しい状況に変わりはない。近年の留学生数の停滞には、アジア諸国の経済危機、我が国の景気低迷、留学生受入れ体制の不十分さなど、多くの要因が複雑に絡み合っており、総合的な対策を講じることが必要である。
旧社会主義国の民主化と市場経済への移行、地球的規模の課題の増大等の急激な国際状況の変化の中で、我が国の留学生政策に対するアジア太平洋諸国をはじめ世界の国や地域からの期待は大きい。


(留学生数の停滞の要因)
  我が国の高等教育機関に在籍する留学生数を見ると、平成10年5月1日現在51,298人であり、平成9年に比して251人の微増となったが、留学生数の多い韓国や台湾等については依然として減少しており、平成8年以降の厳しい状況に変わりはないといってよい。
  留学生数が停滞している原因としては、アジア諸国の経済危機、我が国の景気低迷をはじめ、留学生のニーズの多様化、海外における我が国の留学情報の不足、母国での日本語教育体制の不足のほか、我が国の大学等の教育・研究指導体制の不備、留学生の経済的負担の大きさなどが指摘されている。いずれにしても多くの要因が複雑に絡み合っているものと考えられ、総合的な対策を講じる必要がある。

(留学生政策の必要性)
  近年、開発途上国間の格差の拡大、旧社会主義国の民主化と市場経済への移行、アジア諸国の経済危機などにより、これまでの世界秩序は大きく転換しようとしている。また、地球環境、食料、人口爆発など国際的な拡がりを持つ諸問題が山積し、これらによって地球全体の安全保障に大きな影響が及ぶことが懸念されている。
  このような状況の中、我が国は平成9年12月にはASEAN諸国、平成10年10月には韓国、同年11月には中国との間で、留学生交流や青年交流に関する計画等に合意した。また、各大学においても、中国、韓国のほか、アメリカ、イギリス、オーストラリアなど欧米諸国も含め、大学間交流協定の締結が活発に行われている。
  このように急激な国際状況の変化の中で、我が国の留学生政策に対するアジア太平洋諸国をはじめとする世界の国や地域からの期待は大きい。


2.21世紀の留学生政策の基本方針

   21世紀の留学生政策は、世界から優れた留学生をいかに引きつけるかという、より積極的な姿勢が必要である。このため、センター・オブ・ラーニングを形成するための大学改革を中心に、次の3点に重点的に取組む必要がある。
(1)大学の質的充実のための構造改革を推進し、その国際競争力の強化を図ること。(2)我が国の諸施策や制度などが、留学生に対して広く開かれたものとなるようその改善を図ること。(3)留学生の経済的社会的負担を考慮し、官民一体となった留学生支援の充実を図ること。


(21世紀の留学生政策の基本方針)
  今後の我が国の留学生政策は、知的国際貢献の今後のあり方や近年の留学生数停滞の要因等を踏まえながら、世界の国や地域から優れた留学生をいかにして我が国に引きつけるかという、より積極的な姿勢で臨むことが不可欠である。今後、知的国際貢献の拠点機能(センター・オブ・ラーニング)を形成するための大学改革を中心として、次に掲げる3点について今後重点的に取り組む必要がある。
  そして、我が国が留学生政策の充実改善を着実に実行し、その実績を積み重ねていくことによって、留学生や派遣国の信頼と評価を一層高めることができる。ひいては、これが我が国の留学生数の量的拡大につながっていくことになろう。

(大学の質的充実のための構造改革の推進)
  近年、大学の海外展開や国際的な評価が進みつつあり、留学生の受入れについても国際的競争が強まる傾向にある。また、インターネット等の情報通信革命は、大学教育の国際化に大きなインパクトを与えており、例えば、母国に居住したまま、外国の大学の教育を受けるようなことも予想される。
  このような状況の中、今後我が国の大学が欧米の大学に比肩しうる質の高い教育研究機能を備えるには、現在進行中の大学改革をさらに押し進めることが肝要である。特に、留学生のニーズは、学校種別で見ても大学院志向が強まっており、従来の理工系技術者の養成のほか、母国の将来を担う指導者や高度専門職業人の育成など、その目的も多様化してきている。今後、我が国はその知的な魅力を活かしつつ、大学の教育研究機能のさらなる質的充実を図ることが急務である。
  この際、海外において我が国の大学等に係る情報の入手が容易でないことや、日本語能力の不足など外国人ゆえのハンディキャップがあることなどについて適切に配慮することが必要である。

(世界に開かれた留学制度の構築)
  今後、留学生にとって我が国の諸施策や制度を世界に広く開かれたものとすることが必要である。このためには、まず留学生が海外に居住していることによるハンディキャップに適切に配慮しなければならない。例えば、我が国の大学等に入学するために必要な諸試験を海外で受験できないことなどは留学希望者にとって大きな負担となっている。
  また、外国の学校教育制度と我が国のそれとの相違などのため、例えば、我が国の大学入学資格などが障壁となって、優れた能力を有しながら我が国への留学を断念した者も多いという。このような留学にあたっての障壁は、できるだけ除去することが必要である。他方、現行の留学生の募集方法や選考方法などについて、さらに改善を図ることが必要である。

(官民一体となった留学生支援の充実)
  近年のアジア諸国の経済・通貨危機の影響を受け、経済的困難に至る者も多くなった。このため、文部省においては平成9年度及び平成10年度、緊急的な支援措置として、アジア諸国の私費留学生に対し緊急一時金や学習奨励費の支給が行われたほか、外務省においては平成9年度に外国政府派遣留学生事業への無償資金協力がなされた。
  我が国の留学生の約9割がアジア諸国からの留学生であり、経済的に余裕のない者が多い。今後、官民が連携を密にし、私費留学生に対する学習奨励費や地方公共団体等による奨学金(以下「奨学金」という。)の支給や留学生宿舎の整備などを通じ、留学生への支援を進めていくことが必要である。


3.留学生政策推進体制の充実

   文部省においては、この報告の提言を踏まえ、今後とも努力するとともに、留学生政策の企画調整機能の充実を図る必要がある。
  また、文部省を調整の中核とし、関係省庁が一体となって整合性のとれた留学生政策に取り組むことが必要である。

  大学においても、学長のリーダーシップのもと、学内の関係部局が一致協力し、留学生受入れの方針を明確化し、これを実施していく体制を確立すべきである。
さらに、企業等では社員寮の提供などをはじめ留学生支援に積極的に取り組むことが期待されるとともに、ボランティア団体等による交流活動等の一層の推進が望まれる。

(文部省の企画調整機能の充実)
  留学生政策については、これまで必要に応じて本懇談会のような有識者会議を設置して審議が行われ、多くの提言がなされ、順次実施に移されてきた。しかし、この報告で提言するように、今後は、知的国際貢献や大学改革のあり方などを含めた広範な視点に立って、新たな留学生施策を展開することが求められており、今なお多くの課題が残されている。このため、文部省においては、この報告の諸提言を踏まえ、今後とも努力していく必要がある。これとあわせて、文部省の留学生政策の企画調整機能の充実を図ることが望まれる。

(政府の連絡調整機能の充実)
  留学生政策には、留学生の渡日前から帰国後のフォローアップまで総合的な施策が求められ、その遂行に当たっては政府部内においても多くの省庁が関係している。
  留学生政策は国際社会に対する我が国の姿勢を示すものでもあり、政府として整合性のとれた施策を講じていくのでなければ、意図した政策効果が十分にあがらないだけでなく、諸外国の不信感を招くことになりかねない。
  平成10年7月の小渕内閣初閣議において、総理大臣から海外からの留学生の受入れ体制の一体化、留学環境の充実、人員の増加について特段の指示がなされた。今後、関係省庁の連絡協議の場である留学生交流関係各省会議の場などを活用し、関係省庁が一体となって留学生政策のさらなる充実に取り組むことが必要である。

(大学のマネジメント機能の充実)
  我が国の大学の運営については従来から学長のリーダーシップが発揮しにくいとか、大学としての適時適切な意思決定がしばしば困難であるなどといった問題が指摘されている。そして、各大学の留学生受入れの方針などマネジメント戦略が明確になっていないとか、独自の教育プログラムを実施しようとしても教員等の協力が得られないなどといった声が聞かれる。
  留学生受入れの方針などは、大学にとっていわば対外政策ともいうべき重大な戦略であり、学長のリーダーシップのもと、関係部局が意見を交換しながら決定するべきであろう。そして、留学生センター等を中心として学内の関係部局が一致協力し、これを着実に実行していく体制を確立すべきである。あわせて、留学生の受入れのための体制の充実を図る必要がある。

(企業等の支援機能の充実)
  企業等では、留学生支援企業協力推進協会を中心に社員寮を留学生の宿舎として提供する事業を推進したり、企業等の寄附によって設立された公益法人等が、奨学金の支給や留学生宿舎の建設を行うなど、企業等が留学生支援の重要な主体となっており、今後ともこのような取組みが多くの企業等に拡がっていくことが期待される。
  また、地域のボランティア団体や国際交流団体等においては、留学生と日本人との交流活動やホームステイ等の機会を提供するなど、留学生に対するきめ細やかな支援を行っておりさらなる充実が望まれる。地方公共団体においても、留学生支援に積極的に取り組むとともに、このような民間団体の健全な育成を支援することが必要である。



III.留学生政策の充実改善の方策


1.大学の質的充実のための構造改革の推進
〜大学の国際競争力の強化を図るために〜



(1)魅力ある教育プログラムの開発及び普及

   留学生の教育研究ニーズの多様化に対応するため、その目的に応じた留学生プログラムを用意することが必要である。
  文部省においては、アジア諸国等の将来の指導者を養成するヤング・リーダーズ・プログラムの創設を検討するほか、大学においては企業等での就業体験(インターンシップ)を取り入れたプログラム、母国で一定の高等教育を受けた後、我が国の大学に編入学するツイニング・プログラムなど、新しい教育プログラムの開発及び普及の検討が必要である。
  また、大学院においては、渡日前入学許可や奨学金予約制度、外国語による授業等を取り入れた留学生のための特別プログラムの充実のほか、修士課程1年制コースの普及や高度専門職業人の育成のための大学院の充実を図る必要がある。
  短期留学については、英語による特別プログラムの充実を図るとともに、大学間交流協定の活性化や組織としての継続的な留学生交流に努めるべきである。


(新しい留学プログラムの創設の検討)
(1)  帰国留学生の中には、母国において政府機関、大学、企業等の要職につき、指導者として活躍している者も多い。我が国で学んだ留学生が母国で活躍することは、我が国にとっても大きな意義がある。
  このため、文部省においては、アジア諸国等の指導者として活躍が期待される政治家、行政官、経済人、ジャーナリスト等の若手指導者を、我が国の大学院等に招へいし、1年程度の短期間で学位を授与する新たな留学プログラム(ヤング・リーダーズ・プログラム)の創設を検討することが必要である。
  このプログラムが諸外国の指導者の育成に大きな効果をあげるためには、このプログラムに学んだという経験が留学生のキャリア(職業経歴)に組み込まれ、帰国後の職業生活において政府機関や企業等から高く評価されることが望まれる。
(2)  我が国の留学生の中には、企業等の技術や経営ノウハウを学びたいという者も多い。我が国でも、大学等での授業等に企業等での就業体験(インターンシップ)を組み入れたプログラムが理工系学部を中心に実施されているが、人文・社会系学部ではほとんど行われていないのが現状である。大学等においては、インターンシップの導入に積極的に取り組むよう望みたい。
(3)  近年、アジア諸国などでも学部レベルを中心に、高等教育機関が徐々に整備されつつある。マレイシアなどを中心に、国内において一定の高等教育の課程を修了した後、我が国の大学の相当の学年に編入学して学習できるプログラム(ツイニング・プログラム)の創設について強い要望がある。このプログラムが導入されれば、留学生はこれまでより短い年限で大学を卒業することが可能となる。
  現行の学校教育制度上は、外国の高等教育機関を卒業した者について我が国の大学への編入学が認められているものの、双方の教育機関のカリキュラムの接続の問題などから、あまり活用されていないのが現状である。今後、大学においては海外の教育機関との連携を図りつつ、ツイニング・プログラムの開発について検討することを望みたい。

(大学院教育の充実改善)
(1)  近年の留学生の大学院志向を反映して、大学院の中には書類選考による渡日前入学許可や奨学金の予約、英語による授業などを取り入れた留学生のための特別プログラムを開設するところが年々増加しており、大きな成果をあげている。今後とも、このような取組みをさらに拡充するとともに、日本人学生も参加させることが望まれる。
(2)  留学生の中には、1年間程度の短期間で学位を取得できることを望む声も多い。大学審議会答申においては、原則として社会人を対象とする修士課程1年制コースが提言されているが、留学生も対象とすることが望まれる。すでに、一部の大学院では1年間で修士課程を修了できる特別のプログラムに試行的に取り組んでいるところもあり、今後の成果が期待される。また、国際協力事業団(JICA)の研修制度等で来日している研修生を対象に、1年程度の短期間で修士課程を修了できるプログラムの開発について検討することも肝要であろう。
(3)  特に開発途上国においては、経営管理、国際法、公共政策、国際開発・協力等の分野において専門的な職業人が求められている。一部の大学院では、修士課程に専修コースを設置したり、実務的な能力の育成を重視した社会人向けの研究科などを設置する例も見られる。今後、ケーススタディーやフィールドワークなどを取り入れたり、実務経験豊かな社会人を教員に登用するなどして、このような取組みが多くの大学院に拡がっていくことが期待される。また、高度専門職業人養成に特化した大学院修士課程を設置することも検討する必要があろう。
(4)  今後、専門職業人教育には、国際社会で通用する職業資格を付与することが要請されよう。このため、大学院教育においては、国際社会に通用する人材育成を重視する必要がある。例えば、我が国ではアメリカのPE(プロフェッショナル・エンジニア)のようなエンジニアの公的な職業資格が存在せず、工学部の卒業生が国際社会で不利益を被ることがあるとの指摘がある。今後、我が国でも大学のエンジニア教育を認定する制度を確立することが望まれる。

(短期留学の推進)
  短期留学については、英語による特別のプログラムを開設するところが増えている。今後、このような取組みをさらに拡充することを望みたい。また、サマースクールなどのように、大学の夏期休暇期間中を利用した短期集中方式によるプログラムの普及も期待される。
  また、我が国の大学は海外の大学との間に、すでに5,000にも及ぶ大学間交流協定を締結しているものの、実際に機能している協定はその一部にすぎないとの指摘がある。担当の教員が異動や退職した場合でも、他の教員がこの職務を引き継いでいくなど、大学が組織として適切に対応するのでなければ、我が国の大学に対する信頼を高めることはできないことを指摘しておきたい。
  各大学においては、既存の大学間交流協定の活性化を図るとともに、大学が組織として継続的な留学生交流に努めることが必要である。


(2)留学生のハンディキャップ等への配慮

   留学生には海外での居住や日本語能力の不足などのハンディキャップがあり、これらの点に適切に配慮することが必要である。
  大学等においては、日本留学説明会に参加するなどにより、海外での積極的な募集活動を行うことが必要である。
また、単位互換制度を活用した大学相互の連携協力等により日本語教育体制の充実を図るほか、外国語による授業や研究指導の普及等により、特に文系における博士の学位授与の一層の改善を期待したい。
  留学生の学籍管理と入国管理については、大学等が地方の法務省入国管理官署と定期的に連絡協議を実施し、日頃から意思の疎通を図っておくべきである。
  さらに、留学生の帰国後のフォローアップについては、大学等が組織として行うように努め、元留学生のデータベースの作成や留学生会の設立などが望まれる。


(海外での情報提供の充実)
  留学を希望する者にとっては、我が国の大学等に関する情報や奨学金、宿舎などに関する情報などが必要となるが、海外においてこれらに関する適確な情報を求める者が容易に入手できる状況に至っていない。
  すでに、インターネットを通じて自らの大学等に関する様々な情報を提供しているところもあるが、各大学の概要等だけでなく、専門科目や教員等に関する情報の提供を含め、多くの大学等にこのような取組みが拡がることが望ましい。また、在外公館などを通じて我が国への留学に関する相談や各大学等に関する情報の提供を行っているが、今後さらに充実することが期待される。
  また、各大学等が連携協力して、海外に出かけて積極的に募集活動を行うことが必要である。すでに海外において日本留学説明会が開催されているが、大学関係者の協力は必ずしも十分とはいえない。特に、国立大学の関係者には積極的な参画を望みたい。

(大学における日本語教育の充実)
  国費留学生は別にしても、私費留学生については大学等の日本語教育体制がまちまちであり、十分な体制が整っていない大学等も多い。このことは、大学等への入学前に一定の日本語能力を修得することを求める要因の一つとなっていると考えられる。また、一定の日本語教育を受けた者についても、大学等での専攻等によっては入学後に補講を要するため、日本語教育体制の充実は不可欠である。
  このため、例えば、大学の日本語担当教員や日本語別科の充実を図るほか、単位互換制度を活用して、他の大学等の留学生が国立大学の留学生センターなどの日本語の講義を受けることができるようにするなど、大学等の相互の連携協力によって日本語教育体制を整えていくことが必要であろう。
  あわせて、大学においてはコミュニケーション能力の育成を重視した日本語教育の専門家を養成するとともに、教授法の改善や教材の開発などが急務である。

(学位授与の改善)
  我が国の大学院では、日本人学生の場合も同様であるが、特に文系を中心として博士の学位の取得が極めて困難であるといわれている。留学生が我が国で学ぼうとする場合、日本語能力などのハンディキャップが学位の取得をさらに困難にしており、大学としても適切な配慮が望まれるところである。
  すでに多くの大学院において、英語等の外国語によるプログラムを開設したり、外国語による論文作成を認めたり、あるいは外国語の試験の一つを日本語で代替するなどの措置を講じている。これらの措置の普及によって、留学生の博士の学位の取得状況は改善の方向にある。
  各大学においては、我が国の大学院が課程制大学院である趣旨を踏まえ、今後とも学位授与の改善に向けた一層の取組みを期待したい。

(学籍管理の徹底)
  留学生の中には、留学のために入国を許可されながら大学等に通学しない者がおり、これらの留学生が不法就労活動や不法残留などにつながっていると指摘する声もある。留学生の受入れは国策としてさらなる推進が必要であるが、このような違法行為は許されるものではない。
  大学等においては、自らが入学を許可した留学生については自らの責任において適切な対応を望みたい。例えば、留学生の学籍管理を徹底するとともに、学業成績が良くない留学生に対してはきめ細かな教育指導が望まれる。
  留学生の学籍管理と入国管理のこれらの諸問題については、大学等が地方の法務省入国管理官署と定期的に連絡協議を実施し、日頃から意見交換等を行うことによって双方の意思の疎通を図っておくことが必要である。

(帰国後のフォローアップの充実)
  留学の効果を長く継続させるためには、帰国後の適切なフォローアップが必要である。すでに外務省などで行われているが、今後とも元留学生の再来日や指導教員の派遣などを通じ、帰国後の教育研究活動や交流を促進することが必要である。
  今後は、企業などに就職した者についても適切にフォローアップするよう努めるとともに、指導教員だけでなく大学等としても組織的にフォローアップしていくことが必要である。このためには、まず大学等が元留学生のデータベースを作成するとともに、元留学生の同窓会など海外の既存の関係団体とのネットワーク化を推進することが必要である。また、留学生会など現役の留学生の組織化を進めることが望まれる。



(3)受入れ体制の整備充実と自己評価の改善


   大学等においては、留学生担当職員数が留学生数の増加に十分には対応できておらず、引き続きその整備充実を図る必要がある。また、教職員には研修会への積極的な参加等により、一層の研鑽を望みたい。
  私立大学等においても、今後とも留学生の受入れに積極的に取り組んでほしい。文部省においては現行の各種の援助策の推進を図ることが必要である。
  さらに、大学においては、留学生受入れの実績を適切に自己点検・評価することを期待したい。このため、例えば、大学基準協会の策定した自己点検・評価の基準において、留学生の受入れを一層重点的に位置づけることも望みたい。


(大学の指導・相談体制の整備充実)
(1)  「留学生受入れ10万人計画」の策定以降、大学が留学生受入れの中核的機関と自覚し、積極的に取り組んできたことは大いに評価されるべきであろう。しかし、大学関係者の間にはこのような前向きな姿勢が見られる一方、大学とは日本人のためだけの教育研究機関であるとの意識が残っているとの指摘がある。留学生の受入れに伴う教職員の負担の加重も、このような意識をなお残存させる要因となっていることは否定できないであろうが、今後の意識の改革を望みたい。
  大学の指導・相談体制は着実に充実されてはいるものの、留学生数の増加になお十分に対応できておらず、引き続き充実に努めるとともに、留学生受入れの総合的な窓口となる留学生センターや留学生課などの整備を図る必要がある。また、国際経験豊かな外国人教員や元留学生などの効果的な活用を期待したい。
(2)  留学生問題については臨機応変な対応が求められたり、きめ細かな対応などが必要とされることが多く、特に経験年数の短い教職員などは対応に苦慮する場合もある。
  このため、大学の教職員においては各種研修会への参加や他の大学の取組みなどに関する情報を収集するなどして、日頃から研鑽に努めることが不可欠である。
  私立大学の教職員を中心にして、大学の教職員の自主的な研修を目的として、外国人留学生問題研究会(JAFSA)などの団体が設置されているが、今後は国公立大学の教職員についても、このような研修会などへの積極的な参加が望まれる。

(私学に対する援助の推進)
  留学生の受入れに取り組む私立大学に対して、日本私立学校振興・共済事業団が私立大学等経常費補助金の特別補助を実施している。また、留学生の受入れなどの総合的な窓口となる国際交流センター等の施設を建設する場合には、日本私立学校振興・共済事業団が長期かつ低利の融資を行っている。さらに、留学生に対して授業料を減免する学校法人や留学生宿舎を建設する学校法人に対しては、日本国際教育協会が一定の補助を行っている。
  私立大学等においては、これらの支援措置を効果的に活用しつつ、今後とも留学生の積極的な受入れに取り組んでほしい。また、文部省においては国費留学生の配置について、留学生の受入れに積極的に取り組む私立大学等に対し、適切に配慮することが望まれる。

(大学の自己点検・評価の改善)
  大学の教職員からは、留学生の受入れの実績が学内で必ずしも十分な評価を受けていないとの不満の声が聞かれる。留学生の受入れに関する業務は、ともすれば個々の教職員の努力が表に見えにくい部分がある。また、一部の教員に負担が偏る場合があるとの指摘もある。しかし、このような地道な努力が適切に評価されるのでなければ、その後の努力が続かなくなってしまうであろう。
  また、各大学においても、留学生の受入れを学内の重要課題の一つとして位置づけ、適切に自己点検・評価を実施するよう期待したい。このため、例えば、大学基準協会においては、自己点検・評価の基準において、留学生の受入れをさらに重点的な項目として位置づけることも望みたい。


2.世界に開かれた留学制度の構築
〜我が国への留学にあたっての障壁の除去のために〜


   留学生の入学選考については、専攻分野等に応じ必要とすべき日本語能力の水準に適切に配慮するほか、書類選考や海外での入学試験の実施等により、渡日前の入学許可の普及が望まれる。これとあわせて、現行の日本語能力試験及び私費外国人留学生統一試験の在り方については、留学生、大学等の双方が活用しやすいものとなるよう検討を進めることが必要である。
  また、文部省においては施設や教員などの体制が整備され、適切な内容の教育を施すなど一定の要件を満たすものについて、準備教育機関として今後適切に指定を行っていくべきである。
  大学においてはUMAPの活動やUCTSの利用に積極的に取り組むほか、コンソーシアム方式などによる大学間交流協定の締結の推進を望みたい。
  国費留学生については引き続き計画的整備を進めるとともに、世界から優れた留学生を募るため、現行の募集・選考・配置方法の改善が必要である。


(留学生の入学選考の改善)
(1)  多くの大学等においては日本語能力の判定材料として、日本語能力試験1級の受験を課し、この成績を合否の判定に使用している。しかし、必ずしも高度な日本語能力を要しない専攻分野等への留学については、日本語能力試験の成績を合否判定から除外したり、合否判定に用いる場合でもその比重を減らすなどの配慮も必要であろう。
    また、日本語能力が必要とされる場合であっても、入学試験の段階では高度な日本語能力を要求しないで、入学後に日本語教育を重点的に実施する方法も考えられよう。文部省はこのような取組みを行う大学が日本語教育体制を整備しようとする場合、この支援を検討すべきである。
(2)  大学等においては、書類選考の重視や海外での入学試験の実施などにより、渡日前に入学許可を出せるよう一層の努力を望みたい。書類選考については、成績評価などが国や学校によってレベルが異なり、他の学生との比較が困難であるとの指摘もある。このため、過去の留学生の成績などをデータベース化するなどにより、的を絞って優れた学生を募集するなどの工夫も必要であろう。また、将来的には、アドミッション・オフィスによる一元的な選考方法などの試みも検討すべきであろう。
(3)  現行の日本語能力試験の1級試験は、入学選考に利用する場合、出題内容、実施時期、実施回数などについて問題点が指摘されている。また、私費外国人留学生統一試験は、実施回数、実施時期、試験教科・科目などについて改善を求める声があり、私立大学の活用があまり進んでいないという課題もある。
  文部省においては、大学教育を受けるにふさわしい日本語能力と基礎学力の水準を判定でき、留学希望者と大学との双方にとって利用しやすい新たな試験を開発することが必要である。その際、日本語能力のグローバル・スタンダード(世界標準)化を図るためにも、TOEFLのようなシングルスケールで判定しうる試験を開発・普及することが望まれる。

(準備教育機関の指定の拡大)
  外国における正規の12年の課程を修了した者には大学入学資格が与えられるが、一部の国では、高校相当の学校教育が12年未満の期間で修了するため、これらの国の学生には我が国では大学入学資格が与えられない。このような制度をとっている国の留学生については、文部大臣が指定した準備教育機関に入学し、これを修了することによって大学入学資格が与えられる。
  現在、この制度により指定を受けるものは6機関であるが、いずれも国費留学生及び外国政府派遣留学生の受入れを中心としている。このため、留学希望者や大学等から準備教育機関の指定の拡大を求める声が強い。文部省においては、施設や教員などの体制が整備され、予備教育にふさわしい内容の教育を実施するなど、一定の要件を満たす教育機関については、今後指定の拡大を図る必要がある。

(大学間交流の枠組の充実改善)
(1)  アジア太平洋諸国の大学間交流を推進するために設立されたUMAP(アジア太平洋大学交流機構)の今後の活動が期待される。平成11年1月には単位互換の国際的枠組(UCTS)が承認され、大学の単位の換算の際の国際的基準などが示された。平成11年度から参加国の大学でモデル事業を開始することとしている。文部省においては、このモデル事業に取り組む大学に対し、奨学金の重点措置などにより支援していくべきである。
  今後、UMAPにおいては大学間交流に関する情報提供などの活動の充実が望まれる。また、各大学においては、UMAPの活動に積極的に参画し、UCTSを効果的に活用してほしい。
(2)  海外に人脈のある教職員が少ない大学等などでは、留学生交流の相手方となる海外の大学等を新たに見つけることが困難であり、国際交流がなかなか拡がっていかない大きな要因になっている。
  そこで、海外に人脈を有する大学や団体等が中心となって、海外の大学との協定の締結を希望する大学等を募り、我が国と相手国の複数の大学等が同時に協定を締結する方法が考えられる。このようなコンソーシアム方式による協定の締結は、とりわけ核となる大学や団体等の役割が重要であるが、例えば国立大学協会などを中心に試行的に実施されることが期待される。

(国費留学生制度等の充実改善)
(1)  国費留学生については現在8,323人に達しているが、今後ともその整備を推進していくことが必要である。
  国費留学生への応募は誰にでも開かれた平等なものであるべきであり、大使館推薦の場合、今後もできるだけ幅広い機関から優れた人材を募ることが望まれる。また、留学生を迎える大学等から不満が出ないよう、大学の教員が選考過程に十分参画する機会を確保するよう工夫するとともに、国費留学生の推薦にあたってはその人物、識見とともに学力を一層重視すべきである。
  他方、大学推薦については、今後受入れ枠の拡充を図ることが望ましい。しかし、特定の国に偏る傾向があるとの指摘があり、今後世界から優れた人材を募るように努めていく必要がある。
  また、国費留学生の大学への配置にあたっては、個々の希望と能力が最大限生かされるよう、ミスマッチを防ぐ努力が求められる。
(2)  外国政府派遣留学生についてもその充実が期待される。我が国としては、すでにマレイシア、タイに対して無償資金協力を行っているが、今後とも外国政府による留学生の派遣を支援することが求められる。


3.官民一体となった留学生支援の充実
〜世界の各国からの優れた留学生の確保のために〜


   奨学金は留学生政策の中心的役割を果たしており、官民一体となってその整備を図ることが必要である。また、渡日前に奨学金を予約できる制度についても普及が望まれる。
  留学生宿舎の整備についても官民一体となり、それぞれの立場から多様な方法で取り組まなければならない。
  地域においても、留学生支援の団体を育成するとともに、地方公共団体の総合計画に留学生支援を位置づけるなど、留学生交流を通じた地域づくりに積極的に取り組んでほしい。
   また、資格外活動許可に係る大学の取次申請の励行のほか、非正規生についても鉄道の旅客運賃に係る学生割引の適用を望みたい。
  就学生については、準備教育機関の指定を受けた日本語学校の学生に対する「留学」の在留資格の付与等について検討すべきである。


(奨学金の整備と予約制の普及)
  奨学金は留学生政策の中心的役割を果たしており、国、大学、地方公共団体、公益法人等官民一体となった整備の推進を望みたい。
  また、留学生への奨学金の支給を目的とする公益法人については、近年の金利水準の低下等の影響もあり、事業運営に苦慮しているところも多い。文部省においては、財政的に事業運営が困難と認められる場合には、基本財産の取崩しなどについて柔軟に対応すべきである。また、公益法人への企業等の寄附を促進するため、税制上の優遇措置の活用を呼びかけていくとともに、公益信託制度や日本国際教育協会の冠奨学金制度の活用についても、広く周知するべきである。
  さらに、我が国の大学等に入学することを条件に、渡日前に奨学金を予約できる制度が普及することが期待される。私費留学生に対する奨学金の中核である学習奨励費についても、渡日前に予約できる工夫をすることが優秀な留学生を確保するうえで不可欠である。

(低廉で良質な留学生宿舎の確保)
  留学生のための低廉で良質な宿舎の確保は、留学生受入れのための重要な基盤であり、国、大学、地方公共団体、公益法人等がそれぞれの立場から、多様な方法で取り組まなければならない。
  とりわけ留学生宿舎の不足が著しい東京都内において、現在、日本国際教育協会が国際大学村に新たな留学生宿舎の建設を進めているが、これが世界の優れた知性の育成につながることが期待される。
  また、文部省においては、学校法人、地方公共団体、公益法人等が留学生宿舎を建設する場合の支援を今後とも推進する必要がある。あわせて、公益法人への企業等の寄附を促進するため、税制上の優遇措置の活用を呼びかけるほか、今年から拡充された固定資産税等の非課税措置について広く周知すべきである。企業等においては、社員寮のさらなる提供を望みたい。
  宿舎の確保にあたっては、留学生と日本人との交流の推進に留意し、交流のための施設を整備することが必要である。また、留学生のみを入居させる方式よりも、できるだけ留学生と日本人学生との共同生活方式とすることが望ましい。この場合、その運営は学生に任せるのではなく、大学が管理責任を有する学習ハウスとし、留学生の教育研究と生活の指導に力を注ぐべきである。

(地域における留学生支援)
  地域社会においては、留学生を一人の学生、一人の地域住民として受け止めてほしい。地域社会における異文化への無理解が留学生にとって大きな精神的苦痛となることを深く認識すべきである。留学生においても自分の行動に責任と自覚を持ち、地域社会に積極的に溶け込み、地域住民の一人として地域に貢献していこうという気持ちがほしい。
  特に近年、留学生の受入れは関東地方から地方に徐々に分散化しつつある。すでにいくつかの地域においては、民間アパートへの入居に際して国際交流団体が機関保証するなど、官民が一体となって留学生支援の取組みが見られるが、今後さらにボランティア団体などの支援団体を健全に育成することが必要である。地方公共団体においては、留学生支援を積極的に総合計画の重点施策として位置づけ、留学生交流を通じた国際性豊かな地域づくりにまでつながっていくことを期待したい。

(資格外活動許可に係る申請取次の励行)
  留学生にとっては、奨学金や本国からの送金などとあわせて、アルバイトによる収入が家計を支える重要な収入源となっている。この点については、平成10年9月から、留学生の資格外活動許可の取扱いが変更され、従来より柔軟に留学生がアルバイトを行うことができるようになった。
  変更後の取扱いでは、大学等による学籍管理の一環として、資格外活動許可の申請については原則として留学生の在籍する大学が副申書の発行と申請取次を行うこととなっている。しかし、取扱いの変更後、まだ間もないこともあり、その実施状況は必ずしも十分でなく、大学等においてはその一層の励行を期待したい。

(学割制度の非正規生への適用)
  鉄道の定期券の学生割引制度について問題点が指摘されている。留学生の中には大学の研究生や聴講生等といった非正規生も多く、特に、大学院では正規課程の入学前にまず非正規課程への入学を求められることが一般的となっている。また、近年の短期留学の拡大によって、学部レベルにおいても非正規生が急増している。
  一般的に鉄道会社の規程では、非正規生については学生割引制度が適用されないこととされている。このため、非正規生の留学生の中には毎日の通学費用が経済的負担となっている者も多い。しかし、留学生についてはたとえ非正規生であっても、大学等の授業を一定時間数以上受けることが前提とされており、実質的には正規生と変わるところはない。今後、学生割引制度が非正規生の留学生にも適用されるよう関係当局に改善を望みたい。

(就学生に対する支援等)
  日本語学校の学生の多くは、我が国の高等教育機関への進学を目的としている。しかし、これらの学生に対する奨学金などの支援措置は、公的レベルにおいても民間レベルにおいてもほとんど設けられていない。このため、日本語学校の学生にも配慮した一貫した施策を展開する必要がある。
  日本語学校であっても、国際学友会日本語学校などのように、文部大臣の指定を受けた準備教育機関であって、法務大臣が告示したものの学生に対しては「留学」の在留資格が付与されている。今後、文部省が準備教育機関の指定を拡大するに当たり、関係機関においては、これらの準備教育機関の学生への「留学」の在留資格の付与等について検討すべきである。
  また、近年高等学校レベルの就学生の受入れも増加している。さらに、盲学校高等部専攻科でのアジア諸国からの就学生の受入れ実績に鑑み、特殊教育諸学校に就学しようとする者に対しても、同様に適切な支援措置を検討することが望まれる。

-- 登録:平成21年以前 --