審議会情報へ

調査研究協力者会議

2001/08/22議事録

国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会(第13回)議事要旨

国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会(第13回)
議事要旨

1  日時

平成13年8月22日(水)  13:30〜16:00

2  場所

文部科学省分館2階「特別会議室」

3  出席者

(委員)

高倉翔[主査]、赤岩英夫、阿部充夫、市川正、牛見正彦、大澤健郎、小笠原道雄、岡本靖正、兼重護、川口千代、木岡一明、桐村晋次、金藤泰伸、椎貝博美、渋川祥子、谷合明雄、永井順国、中津井泉、渡辺三枝子  の各委員

(文部科学省)

工藤高等教育局長、西阪専門教育課長、合田大学課長、石井教育大学室長  他

4  議事

(1)開会

(2)  主査から、資料3の第12回議事要旨(案)について、意見があれば後日事務局へ連絡するものとし、調整・確定は主査及び事務局に一任願いたいとの提案がなされ、了承された。また、確定後の議事要旨は、文部科学省ホームページに公開することとなった。

(3)金藤委員より資料「統合・再編についての私見」について説明があった。

(4)組織・体制のあり方について

  事務局から配付資料について説明があり、その後以下のような意見交換が行われた。

【大学・学部について】

【委員】

  教員という職業の高度化に対応するため、大学院教育の重要性が高まっていくものと考えており、組織・体制の在り方の検討については、大学院まで視野に入れて考えるべきである。
  本学の教員養成学部はいわゆる新学部と呼ばれるものであり、教員養成以外の役割ももった学部というように考えている。そのような学部を国立大学として担うべきかという問題があるが、私どもの大学には人文的・教養的な学部が存在しないため地域的な必要性があってこのような形で設置されている。新課程での人材養成に対する評価も悪くはない。教員養成学部のみでは、教員養成の色合いが一律化しやすい中で、複合学部のようなところで色合いの違う教員養成を行うことも大切なことと考えており、その点で社会的な意味はあるのではないか。
  仮に非教員養成学部という位置付けにするのだとしても、十分な人的資源があるのだから、教員免許を取得できるようにするだけの体制は整えておくべきではないか。
  また、大学院の在り方についてだが、統合再編により学部がなくなったとしても大学院はある程度の数を残すべきではないか。教員は修士課程修了を基礎要件とするような動きもあり、また、現職教員の再研修の観点からも通学が困難な遠隔地にしか大学院がなくなってしまうようであれば、十分に役割を果たしていけないのではないか。

【委員】

  教員養成学部以外の一般学部になって教員養成を行う場合、一般的には開放制にもとづく課程認定方式ということになるが、被統合大学に残すのはその程度の機能と考えるのか、それとももっと強い意味で教員養成の機能を残した方がよいと考えているのか。

【委員】

  小学校教員養成の場合は決まったコースとして教員養成のためのカリキュラムをきちんと用意して行いたいと考えている。

【委員】

  神戸やお茶の水女子大学のような非教員養成大学と呼ばれるところは、課程認定方式による小学校教員養成を行っているが、実質的にどのような役割を果たしているのか。例えば教員就職率などはどのようになっているのか。

【事務局】

  正確なデータを用意していないが、神戸大学では十数名程度が教員になっているようであり、就職率は教員養成学部の平均と比べると著しく低い。

【委員】

  神戸大学の実態についてインタビュー調査をしてきたので説明させていただくと、初等教育学コースに所属する学生は各学年十数名であり、必ずしも定員を満たしていないようである。このコースは他のコースに比べて必修科目のしばりが緩いため、免許法に定める基礎的な科目を修めながら、空き時間を利用して他学部の授業を履修し、中等教員の免許状も取得する。教員志望の学生にとっては非常に有利なシステムであるというような説明を受けた。

【委員】

  教員養成課程の1万人体制をどのような形で支えるかということを考えた場合、多くの大学が教員養成を目的とはしないが、そのような機能を果たす学部への改組を行っていったらどうなるのか。教員の計画養成や充実した教員養成の観点から、1万人の養成は教員養成課程で担うべきではないか。

【委員】

  計画養成というものは、計画どおりに教員就職者が確保できるというところに意味があるが、現実は必ずしもそうなっていない。何年かの後には教員の養成数は1万人では足りなくなるだろうという研究報告も出ていることから、養成数はもう少しフレキシブルに考えてよいのではないか。教員養成があまり画一化されるのは如何なものかと考えているので、特化したところはパワーアップを図り、それ以外のところは多様化という観点から教員養成を行うということがあってもよいのではないか。

【委員】

  事務局へお願いするが、教員養成学部と非教員養成学部の違いを制度などの観点から整理していただきたい。また、計画養成ということは、数の観点からのものか、あるいは内容的な面に重点があるのか、ということを整理しておいていただきたい。

【委員】

  教育学部が無くなった場合にどのような問題が生じるかということを現職教員の立場から考えてみた。現職教員と教員養成学部との関係は研修ということになるが、教員の研修には大きく分けて3種類ある。研修センターを利用した日常的あるいは実践的な研修、教員免許の上進に係る認定講習、そして大学院への進学である。まず、1つ目の研修センターでの研修だが、これは近隣の統合大学から教員を呼ぶことになるが、財政的な措置だけで対応でき、大きな支障はない。しかし、残りの2つには問題がある。サテライトでの遠隔教育等により対応するという例示もあるようだが、認定講習については、今後専修免許状の取得希望者が増加したときに十分な対応ができるのか。また、大学院への進学については、遠隔地への通学は困難となる。通信制の大学院という計画もあるが、そもそも教員養成という観点から通信教育がどの程度馴染むのか疑問である。特に最近、現職教員に希望の高い分野はカウンセリングや生徒指導、臨床心理といった人と人のふれあいが大切な分野であることから、地域によっては対応が非常にむずかしくなると考えている。

【委員】

  通信制大学院での教育については、臨床心理やカウンセリングだけの問題だけではなく教員養成そのものにいえることである。やはり人と人との関わり合いのなかで教育が行われていくのであるから通信制が単位をとって知識だけで論文を書くというやり方になるならば望ましいことではない。

【委員】

  交通網の発達状況などを考えると、統合再編した場合、大都市圏と地方都市とは状況が異なることになるだろう。
  また、教育委員会の立場から教員養成学部に期待することは、教員養成自体はもちろんだが、子供たちにどういったことをやって頂けるのかということである。学生を入学させて卒業させるための議論が今この場での中心になっている気がするが、問題はどういう先生が現場で働くかということである。その観点からすると今まで議論のあった単科大学での教員養成か総合大学での教員養成かはどちらでもよく、また、非教員養成学部でもかまわない。

【委員】

  教員養成系の学部とりわけ教育学研究者には学校現場に行き、そこで現場の先生方と交わり校内研究を中心として研究促進を図っていくという役割がある。70年代以降スクールベーストと言われてきたものである。実態的にも全国的に学校レベルに関わる研究者が増えてきている。それがより広がっていくことを教員学の発展のためにも期待したいし、それこそが今後教員養成学部が大きな展望をもてるものではないか。

【委員】

  研修というのは個人と集団でやる場合とがある。学校でやるとき、外部講習というのは非常に重要な位置を占める。もう1つの方向性として現職研修の場合にいつかはやらなくてはならないのが現場を離れての集中研修だ。例えば年間10回やるよりは10日間続けてやった方が非常に効果が出てくる。例えば文部科学省初中局で行っている1ケ月間の中央講座を終える先生方は非常に資質、能力とも向上して戻ってくる。学校でやる研修には、グループ研修と個人研修とがある。特にグループ研修のほうではもう少し大学の先生に実証的な面での援助をいただきたいと考えている。

【委員】

  研修が順番がまわってくるというケースでは学ぶという意欲に個人差がありすぎる。以前は大手の企業は会社の中で選んでアメリカの大学に留学させるということをしていたが、今は自分なりに努力してきた者が次のステップを踏むために行きたいと手を挙げた者を選抜している。その場合にも休暇制度が整い、全部会社持ちで行かせるというケースは日本の企業では大変珍しくなっている。どんな目的意識をもって勉強するか、何のために勉強するかが一番大事。私自身も産、官、学、労が揃っているところで学んだことによって大変刺激を受けた。通信制やサテライトで教育を受けるというのは従来の域をあまり出ない。お金を掛けて時間を掛けてどうぞいってらっしゃいという、丁寧な研修の送り出し方は今の世の中ではなじまないのではないか。意欲があってそこで踏ん張って自分でさあ行くぞ、というモチベーションが必要である。

【委員】

  学部の教員養成や地元教育委員会との連携協力にあたるための何らかの組織を置くということで教職センターがあげられたが、教職センターは具体的にはどのようなものになるのか。統合大学の出先機関なのか非統合大学の機関なのか。統合という以上は教員なり学生定員なりが相当数が統合大学のほうに行くことになると思うが、非統合大学、つまりなくなるほうの大学への残し方によっては、統合というのは名目だけでほとんど効果が表れない格好になってしまうのではないか。

【委員】

  新課程の取り扱いがテーマのひとつであるが、新課程は教員就職率低下がもたらしたものである。その必要性は教員養成のあり方とは区別して考えたほうがよい。ここで議論するのは優秀な教員を養成するにはどういう組織であるべきかであって、新課程について議論するのはあまり建設的ではない。
  大学院の重要性はわかるが、現状をみると第二理学部、第二文学部的になっている。それでは現職教員の再研修にあまり役立たない。教員養成学部であればそれにふさわしい指導を行っていくべきではないか。
  また、最初の頃、教員養成学部は小学校教員養成に特化した方がよいのではないかという議論があったが、どうなったのだろうか。

【委員】

  本学は大学同士の統合を予定しているが、相手方は教養教育や一般教育が増えることを期待している。そのため、教育関係の学部の教員も相当に張り切っているようであり、少なくとも最初のうちは非常によい相互作用があるということは十分に考えられる。

【委員】

  養成の在り方あるいは新課程そのものの在り方を各大学が自主的に判断すべき時期にきているのではないか。新課程に大学の中で新しい機能を持たせることを地域性の問題とからめて生かす、新課程と教員養成を1つの学部の中であわせてやっていくのか、教養教育を担うような新課程を中心にし、教員養成をやらないのか、教員養成をやるとした時にどのような組織を残すのか、という選択をする時期なのではないだろうか。学部では少し地域を越えても養成はできるかもしれないが、大学院の現職教員の研修機能を考えると、通学が可能な地域と困難な地域ができることになる。現職教員への研修機能を統合大学だけが担うのであれば、現職教員の側に一種の不公平感が生ずることにもなるので、そういった地域格差をカバーしていくための方法をもう少し具体的に考える必要がある。
  また遠隔教育による対応も様々な方法が考えられるが、例えば、放送大学と連携し、放送大学の開設科目の中に一定の構造化されたカリキュラムを組み立て、それらの修得された単位を生かして、修士論文の作成あるいは課題研究は、教員養成大学・学部の大学院に在籍して行うような方法も考えられないか。
  ついでに言えば、学部の入学定員だけを基に、その変動のたびに教員定員がたえず変動することのないよう、学部・大学院を合わせた規模で教員を配置するという制度に改め、中長期的に安定した組織を作る必要がある。

【委員】

  統合の際の新課程の取り扱いは大学によって異なるものと考えている。例えば、本学には文系学部がほとんどなく、教養教育における当該分野の担当を教育学部にたよっている状況である。したがって、教員養成学部の統合で教員が移動してしまった大学では入試問題をどうするかなど新たな問題が発生することになるため、総合大学における新課程の扱いは各大学の全体構想の中で考えていくべきではないか。

【委員】

  統合再編後の教員養成学部には新課程は必要ないのではないか。新課程が社会に対してこれまで果たしてきた役割は理解するが、例えば地域に即した学部が必要であるところは地域○○学部といったものを作ればよいのであって、教員養成課程と連動して取り扱う必要はないのではないか。

【委員】

  教員養成学部の統合に新課程を連動させるか否かをはっきりと整理するべきである。私としては必ずしも連動させる必要はないと考えている。新課程はそれぞれの大学の中でしかるべきところと結び付けて改組再編するなりの方法で、その従来の力を十分発揮していくのがよいのではないか。
  ただし、環境教育や情報教育など、教員養成に密接な関連をもっている分野については教員養成課程に組みこむなどして、教員養成のために尽力することが期待されるのではないか。

【委員】

  仮に統合再編に新課程を連動させるのであれば、社会からは組織防衛をしているのだと受け取られる可能性もある。新課程の取り扱いは切り離して考えるべきであり、その必要性について別に検討するべきである。

【委員】

  環境教育、情報教育、国際理解教育、カウンセリングなどは力量ある教員養成の観点から必要な分野だと考えている。これらは新課程の取り扱いをどうすべきかという立場ではなく、教員養成の立場から考えていかなければならない。
  また、教員養成のパワーアップを図る、教員養成学部の充実を図ろうとする一方で、教員養成学部が非教員養成学部となり、そこで教員養成をすることを認めていたのでは方針に逆行する。教員養成のパワーアップのため何をすべきかということが議論の根幹であり、統合後の教員養成学部の中には新課程のように学部の性格を曖昧にするような組織は置くべきではない。
  次に通信教育のことであるが、放送大学で大学院設置のPRを現職教員に向けてしたところ募集要項の取り寄せが7000件もあった。教員と学生とのコンタクトという永遠の課題はあるが、技術の進歩による遠隔教育の発展が反映された数字だと思っている。現職教員の研修は校内研修に偏っている傾向があるが、これからは学校単位にとらわれるのではなく、広域のネットワークを用いた遠隔教育による研修も推進されていくべきではないか。

【委員】

  小学校教員養成をどうするのかという問題についても整理すべきである。まず総合大学として考えた場合、1県1教員養成大学の原則をなるべく残しながら、その教員養成学部は各大学のFDや教養教育を担うことと、スク−ルベ−ストの研究教育を行うことをベースにすべきではないか。その上で規模の問題から一定の特化を図ることということで2通りの案を考えてみた。
  1つ目は教科をある程度特化して中等教員養成を残す。さらに小学校教員養成は現新課程を再編する中で総合的な学習の時間と関連させて教員養成のための新課程とする。これにより、今まで小学校教員養成の卒業生に専門性が不足しているといわれた課題にも対応できる。2つ目は、これまでの教育学の歴史から方向転換することになるが、学部での教員養成は中等教員養成に特化し、小学校教員養成は大学院で行うということを提案したい。

【委員】

  地方移管の可能性については、国と地方が教員養成に対してどのように役割分担を果たすかというところを考えなくてはならない。教員養成のパワーアップと地方移管は矛盾した話だと考えている。国には国民の学力水準を一定に保っていくという大きな役割があり、そのための教員養成というのは国の責任においてやるべきことである。

【委員】

  養成、採用、研修の機能のうち、採用と研修については色々な選択性があってしかるべきである。養成はともかく採用も1つの地方大学からとなるとそれは昔の師範学校と同じようなことになるだろう。仮にそれを良しとするならば、統合再編の議論も起こらないはずである。
  また、財政的な観点では地方移管も可能だが、現状の教員採用率の低さでは地方移管をしたとしても効果がなく、その必要性がどこにあるのかということが大きな問題である。

【委員】

  本来、学校現場教育のための教員養成は、地方自治体が自らやりたいという希望をもって然るべきだと考えている。ただ、現実の問題として、教育のことはまったく素人であると堂々と言われる教育長もおり、力量や意識の問題として難しいのではないか。例えば研修事業などで大学教員に講演を依頼するとき、教育委員会では講演のテーマや内容について一切注文をつけない。うちの先生方にはこういう課題があるのでこういう話をしてほしいとかいうような要望を出すべきである。地方自治体が主体性をもって教員像を示すことが必要ではないか。また、養成段階でも、大学に対して積極的に意見を述べるべきであり、採用の時点になって大学から受け取るという形では、養成の大学と現場との距離が縮まらないのではないか。

【委員】

  事務局への質問が2点ある。まず、統合大学、非統合大学という用語が使われているが、これは対等合併の可能性を否定する意図があるのか。
  もう一つは大学院についてだが、教員養成学部の大学院修士課程は、これまで学部の上に設置してきたが、学部を基礎として大学院を設置するというのは揺るがない原則であるのか。例えば、大学院修士課程を学部単位のような縦割りではなく、大学全体で支えるものとし、教員組織についても教育学部の教員を中心としつつ、他学部の教員にも加わっていただくという設置の仕方が可能であるのか。

【事務局】

  対等合併の意味するものが不明であるが、統合大学、非統合大学という用語は統合再編を説明するために便宜上つけたものであり、対等合併を全く排除するとかしないとかいうこととは違うものである。ただし、例えば一方の大学は新課程を受け持ち、もう一方が教員養成課程を受け持つことで、教員の移動は生じないというケースを対等合併の一つの類型とするならば、教員養成学部の教員の層を厚くしようという元々の理念と抵触することになる。
  また、2つ目の質問は、被統合大学に大学院だけ残せないかということだと思うが、一般論としてはむずかしいと思う。いずれにしても1つの前提を置かないでいろいろな方策を考えた方が良いのではないかと考えている。

【委員】

  地方移管については、否定的な意見のほうが多かったように思うが、仮に何処かの都道府県で教員養成学部がなくなるのは困るということで手を挙げるところがあった場合に、その道は開いておくべきではないか。
  また、新課程の問題については、結局のところは各大学における環境や条件などに応じてそれぞれが考えるべきことであり、本懇談会の教員養成システムの議論とは性格が違うのではないか。

【附属学校について】

【委員】

  「教育実習の実施は公立学校を基本とすべきではないか」という提案についてだが、これは附属学校と公立学校と両方でできることが本来は望ましい。本学では教育実習生の受け入れ先として、附属学校だけでは間に合わないため公立学校も利用しているが、それぞれにメリットとデメリットがある。例えば、公立学校では、学校によって教生の指導体制に差があるようであるが、附属学校では教生の指導を長年受け入れているということもあり、その指導はかなりきちんとできている。また、附属学校だから子ども達が均質で教育がやりやすいというのは一概にはいえないと考えている。そういったことを踏まえ、両方の学校で経験ができることが望ましいと思っている。
  次に「非教員養成大学・学部(被統合大学を含む)における附属学校の存廃」についてだが、これは各学校の歴史的背景もさることながら、それぞれの教育に特色があり、これらを一概に廃止してしまうことが日本のこれからの教育にとってベターなのか考えさせられるところである。附属学校はエリート校化しているという批判があるが、私はそうは思わない。私学でエリート校と呼ばれるところは、主要教科の教育のみに力を注ぎ、学校行事を廃止したうえ、学校週5日制への移行に反対して土曜日も授業を行うような受験のためのエリート教育を行っている。これに対して附属学校では、有名大学への受験のために本校を志願するのであればそれは歓迎しないという姿勢を取っており、学校説明会などでもそのように説明している。このことからすると本当の意味での人間教育としてのエリート教育を実施しており、名門私学よりも国立の附属学校の方が人気が高いという話も聞いている。附属学校としての位置付けか、独立した国立の学校かという議論もあるが、いずれにせよこれからの子ども達への教育にはそういう理念をもった学校が必要なのではないか。

【委員】

  附属学校の役割はもう終わったのではないかと感じている。教員養成学部における教育研究の場としての学校は、附属学校という特別なものである必要はなく、研究・教育の両面を受け入れられる体制があり、大学教員や学生がもっと自由に出入りできるような仕組みがあれば、公立学校や私学であってもよいのではないか。
  また、エリート教育については私学に任せても良いのではないか。むしろ、公立学校や私学では対応しきれないような引きこもりの児童生徒の教育を国の責任において行う。そのような学校こそ必要なのではないか。

【委員】

  この議論のきっかけが、附属学校のエリート校化という社会の批判から起きているのではないかという懸念がある。事実としてそのような学校もあるのだろうが、それには長い歴史があってそのようになってきたものである。そのようなところでは、体質改善にしろ、学校自体の存廃にしろ、その学校が自主的に取り組んでいけるようにしなければならず、まわりから壊すことは適当ではないのではないか。社会の批判だけを背景に、附属学校そのものの存続や意義について議論して良いのだろうかという疑問がある。
  また、附属学校の中でも養護学校は重要である。養護教育は採算性の観点から私学では対応がむずかしい。養護教育、特殊教育の在り方は国だからこそできる研究領域のひとつではないだろうか。さらに、引きこもりや不登校といったむずかしい問題を抱える子ども達がいる中で、不登校の児童生徒がいるからカウンセラーを配置するのではなく、不登校の児童生徒のための教育を行う学校が必要なのではないか。そういった教育的に恵まれない子ども達に積極的に目を配る教育こそ、国が担うべき役割である。さらには、理科離れや文字離れへの対応なども重要な課題であり、これからの附属学校はそういった分野に力を注ぐべきではないか。そして、そのような学校であれば、現職教員の再研修にも意義のあるものとなるはずである。

【委員】

  直接又は間接的に国の政策提言に繋がるような実績が、附属学校に今まであったのかという疑問をもっている。例えば学級定数の規模の在り方に関するデータは日本中のどこにもない。これは世界的にも少ないデータであるが、附属学校ならこの何十年間でできるはずだったのではないか。附属学校に対する様々な批判には、誤解されたようなイメージも混じっているのかもしれないが、少なくとも批判が先行するようでは国立学校としての存在意義に関わるのではないか。
  また、附属学校についても第三者評価が必要と考えるが、まずは自己点検評価の実施とその結果の公表が前提になる。これからは附属学校が独自に実施することが必要ではないか。その上で第三者評価を行っていくことが必要であると考えている。

5  次回以降の日程等

  9月及び10月については各月2回の開催とし、次回は、9月13日木曜日10時00分から文部科学省分館2階「特別会議室」で開催することとなった。

(高等教育局専門教育課)

ページの先頭へ