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高等教育

国内外のマルチメディアの活用の事例  
2  国内外のマルチメディアの活用の事例

  マルチメディアに関する技術の進展等に伴い、国内外において、マルチメディアを高等教育の充実に活用しようとする取組が見られる。

  • マルチメディアの活用の可能性 
    • マルチメディア技術の進展や、インターネットによる世界的なネットワークの普及により、誰もが、双方向で、文字・音声・映像等の情報を交換することが可能になってきた。そのため、コミュニケーションの在り方に関する社会的な変革が、地球的規模で生じている。 
    • こうした高度情報通信社会の実現は、社会のあらゆる分野に様々な影響を及ぼしつつある。高等教育の分野においても、マルチメディアを活用し、1に述べた高等教育の改革を一層進めようとする動きが、国内・国外において生じている。 
    • (なお、本報告の末尾に、ここに挙げている以外の取組についても、資料として紹介している。) 
      • 一般に、マルチメディアとは、技術の進展により、文字・音声・静止画・動画等をデジタル処理し、一体的に扱うことができる状態を指しており、以下のような特徴を有する。 
        • 同時性 
        • 双方向性 
        • 表現の多様性 
        • 情報の蓄積・検索能力の向上  
(図)マルチメディアとは

(1)メディアを活用した遠隔教育の実施

  各種メディアを活用して、映像や音声を伴う遠隔教育への取組が行われている。

  • 通信制の大学 
    • 通信制の大学である放送大学が、関東地方を中心に、放送授業等による教育活動を行っており、将来の衛星放送を利用した全国化に向けて準備を進めている。また、メディアの発展を踏まえた効果的な教育方法の改善・充実に関する検討も進められている。 
    • 放送大学以外の通信制の大学においても、ラジオを活用した通信教育や、通信衛星等による同時・双方向の授業を行うなどの取組が見られる。 
  • 同時・双方向の遠隔教育 
    • 同時・双方向による映像・音声のやりとりが可能になってきたことを利用して、 
      • 複数の高等教育機関の間 
      • 同一の高等教育機関の中の分散キャンパスの間  
    • などで、遠隔教育の実施を試行的に行うところが見られるようになってきた。 
      (イメージ図)
    • 各高等教育機関においては、遠隔教育により、次のような取組が進められようとしている。 
      • 全学共通科目のような学部横断的な授業の実施 
      • 離れたところにある他学部の専門科目を受講 
      • 理工系の大学と法文系の大学が、それぞれの専門分野についての交換授業を実施 
      • 高等専門学校の学生が大学の授業を受講  
      • 通信衛星の利用による社会人のリフレッシュ教育 
      • 海外の高等教育機関と授業等の交流  
    • 文部省では、国立大学や高等専門学校等を結ぶ、衛星通信大学間ネットワーク構築事業(スペース・コラボレーション・システム事業)を開始した。一部の私立大学からも、このネットワークへの参加の希望が出ている。 
      (図)スペース・コラボレーション・システム事業
    • また、文部省では、国立大学附属病院を通信衛星で結び、最先端医療に関する情報提供や、学生・研修医等の教育や研修に活用することとしている。 

(2)ネットワークを活用した情報の収集や発信

  インターネット等のネットワークを活用した情報のやりとりも盛んに行われている。

  • インターネット等の教育への活用 
  • ネットワークを使った情報収集等 
    • 授業以外の場においても、インターネットを活用し、意見交換や情報収集を行う教員・学生が増えている。とりわけ、電子メールは、学内だけでなく、学外さらには海外の研究者等と、簡単な文書のやりとりから、高度な内容の情報交換に至るまで、時間的・地理的制約を超えて交流することが可能であり、高等教育関係者にとって必須のツールとなりつつある。 
    • 一部の大学において、マルチメディア機能を持った電子図書館システムの実施の取組が進められており、教育研究活動に大きく資することが期待される。 
    • シラバスや講義録等の、学内における各種の情報を学内LANやインターネットに掲載し、学内生活の利便化等を図っているところも次第に増えている。 
    • 学生の就職活動に際し、インターネットを活用して、企業に関する情報収集を行ったり、電子メールのやりとりをすることが注目されている。 
  • 学外に対する情報発信 
    • インターネット上でホームページを開設している高等教育機関が増加し、社会に対し情報発信に努めるようになっている。 
      (グラフ)大学のインターネットのホームページ開設状況
    • 大学入試センターの「ハートシステム」において、キャプテンシステムにより、各大学における大学改革の状況、教育・研究内容、入学者選抜方法等の情報を掲載し、高校生等への情報提供を行っている。 

(3)マルチメディア教材の活用や、ネットワークとの組合せ

  各種のマルチメディア教材を活用した教育の実施や、さらに、ネットワークと組み合わせた総合的な取組も開始されている。

(図)マルチメディア・ユニバーシティ・パイロット事業

(4)諸外国の取組の事例

  諸外国においては、我が国以上にマルチメディアの教育活用に積極的に取り組んでいるところが多い。

  • 北米における取組 
    • 北米(アメリカ・カナダ)では、全般的にマルチメディアの高等教育への活用に積極的であり、メディア技術の教育への応用や、ネットワークの高速化など情報基盤の整備に相当の投資が行われている。 
    • アメリカでは、多くの大学が通信衛星の送信設備を保有し、また、視聴覚教室やメディアセンターによる支援態勢も整っていることから、以下をはじめとする様々な形での遠隔教育が行われている。 
      • ITFS (Instructional Television Fixed Services)
          教育専用に確保されたマイクロ波を使って、全米の多数の大学が周辺の学習センターや企業に教育プログラムを配信している(1989年は、745カ所で2,358の教育チャンネル)。受講者側からの質問等も、マイクロ波により送信することが可能である。 
      • NTU (National Technological University)
          通信衛星により、170社の企業の社会人や、加盟大学に在籍する学生等を対象に、全米規模で大学院教育のプログラムを配信している。13の分野について、修士号を授与する。 
      • ME/U (Mind Extension University)
          ケーブルテレビと通信衛星を利用して、2,500万世帯の家庭と、8,500以上のコミュニティに教育プログラムを配信している。学位は、加盟大学、あるいはNUDC(NationalUniversity Degree Consortium)が授与する。 
    • また、最近、地上波や通信衛星等の放送による遠隔教育だけでなく、インターネット等のコンピュータ・ネットワークを利用した教育システムの開発に関心が高まっている。 
      • 映像や音声を組み合わせた学習ソフトや学習用の素材については、CD-ROM等に収録して使用しているところも多いが、インターネット等のネットワークを通じて、教員や学生が、いつでも利用できるようにしているところも見られる。 
      • 例えば、授業において、教員が、教室の端末から引き出した教材やデータを用いて課題を提示し、学生も、端末から情報を引き出しながら討論するディベート型の学習が行われている。 
      • さらに、ネットワークの活用は、教室内での教材利用にとどまらず、コンピュータ・ネットワーク上に、仮想のクラスを設定して問題解決型の授業を行うところも見られている。 
    • また、学内にマルチメディアの活用を進めるための中心的なセンターを設けているところでは、教職員に対して、「インターネット」「オンラインコースのための教授設計」「教育と新技術」等の様々な研修が実施されている。 
  • アジア・オセアニアにおける取組 
    • シンガポールでは、IT2000事業として、教育のみならず、社会・経済を含めた国家プロジェクトが進んでおり、1992年から15年間で、すべての家庭、オフィス、学校、工場をネットワークで結ぶこととしている。この事業の一環である、STW(Student'sand Teacher's Workbench)においては、教員は、学校や自宅からネットワーク上のデータベースを利用し、電子化された情報(文字・図表・画像・音声)を基に、教材やテストを作成している。また、学生も、学校や家庭から、データベースや教員の作成した教材にアクセスすることが可能になっている。 
    • オーストラリアは、広い国土における教育を実現する必要性から、従来から、遠隔教育が行われている。近年、コンピュータ・ネットワークやマルチメディアの導入による新しい教育システムを構築する動きが活発であり、ネットワークを活用したオン・ライン授業を実現しているところも見られる。 
  • ヨーロッパにおける取組 
    • フランスでは、国立視聴覚研究所(INA)の活動が注目される。INAでは、映像・音響資料やメディアに関する文献の収集・保存・提供、メディアの活用に関する研修、マルチメディア作品の制作等が行われている(フランスの主要テレビ・ラジオ番組は、INAに寄託され、INAで管理・保管することとなっている)。作品目録はコンピュータによる検索が可能で、教育・研究機関には無償で提供される。オリジナル作品の改編を希望する者に対しては、著作権者との交渉の仲介も行っている。 

(高等教育局  企画課)

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