国際交流政策懇談会(第3回) 議事要旨

1.日時

平成23年3月29日(火曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.議題

  1. 最終報告書の作成について
  2. その他

4.出席者

委員

金澤座長、青木委員、池上委員、池田委員、佐藤委員、田中委員、田村委員、牟田委員、渡辺委員

文部科学省

笹木文部科学副大臣(途中のみ)、金森文部科学審議官、藤嶋国際統括官、池原国際課長 

5.議事要旨

○最終報告書案について、浅井国際協力政策室長より概要説明が行われたのち、自由討論が行われた。

【委員】11ページの「大学の国際化」について、「英語の授業数」を増やすということか、あるいは「英語での授業数」を飛躍的に増やすということか。また、「教員のみならず、国際的に活躍している者が学生に講義を行う」という記述についても、国籍を問わないというニュアンスが含まれているのか。

【委員】該当箇所は私の意見が採用された部分だと思うが、「英語での授業数」を意味しており、英語の授業の方法を変えれば話は別だが、英語の授業数を増やしても意味はないように思う。また、「国際水準の授業が行える教員」というのは日本人である必要はないが、逆に日本人が英語で授業を行う場合は、その内容は国際標準である必要がある。

【委員】今般の震災において、来日中の留学生が独自のネットワークを形成して情報収集しているという事実がある。この震災を踏まえて、留学生人材交流の面から我々が認識すべきことは何かあるか。また、ニュージーランドの震災においても語学学校の学生が被害を受けたが、文部科学省として課題や問題点がどこにあると認識しているか。

【池原国際課長】ニュージーランドの震災については、語学留学やホームステイを含め、年間9,000人以上の方が渡航していることが報道等により判明したが、一方で文部科学省では、大学間の正式なプログラムで派遣されていた方しか把握できていなかった。民間の保険に加入していた学生についてはある程度の把握ができたが、情報の把握・提供については改善方策を検討する必要がある。東日本大震災については、多くの小中高校及び大学が被害を受けたことから、その被害状況の把握を進めている段階である。大学等に対しては、奨学金や授業料・カリキュラムについて弾力的に運用するよう通知しているが、さらなる情報収集が必要。

【委員】全体として総花的になった印象がある。「おわりに」に、国家戦略を策定とあるが、優先順位をつけないと難しい。また、小学校英語については、教員の果たすべき役割が大きいと思うが、それについての記述がないように思える。教師の英語力について課題があることは一般的に知られているので、一歩踏み込んだ記載が必要。

【池原国際課長】初等中等教育段階での英語については、文部科学省において「外国語能力の向上に関する検討会」が開催されており、今年の夏頃を目途に方向性を示すことになるが、初等中等教育における外国語教育の方策は検討会の状況に委ねたいので、具体的には踏み込んではいない。高等教育段階についていえば、「産学連携によるグローバル人材の育成についての検討会」が設置されており、省内でも分野ごとに様々な方向性が示されていることも踏まえ、本懇談会の報告書は、全体の大きな方向性を出していくようなものとしたいと考えている。これらの問題については文部科学省に加え、経済産業省、外務省、さらにはJICAでも問題意識を持っており、各省が連携した形で打ち出しができるよう議論を進めているところである。

【委員】「外国語能力の向上に関する懇談会」は、私も委員として出席しているが、初等中等教育と高等教育で別々に行うのではなく、小中高大で1つの筋の通った方針を出していく必要がある。そのためには、具体的にどの教育段階でどの方策をとるかという点を議論することが重要。例えば、Critical Thinkingのマインドをもったディベートについては、留学してすぐに必要なスキルであるが、これは、初等中等教育段階でこそ必要なのではないか。大学入学試験で、「聞く・話す」等のスキルよりも知識について問われる比重が高くなっている現状も含め、検討の必要があるのではないか。なお、大学の国際化を考えるときには、企業側の採用方法に対して行うのと同様、大学の入学選考に際しても、初等中等教育段階で国際経験を積んだ者を積極的に評価していく姿勢が大事だと考えており、その点記述できないか。

【委員】最近、ショックな話があったので、御紹介したい。ある企業が日本から撤退してしまったのだが、理由は、我が国が内向きで、国際社会に対して敏感でないからということらしい。それにとうとう耐えられなくなったからと聞いている。今回の震災後の対応でもそうだが、(気象庁が70%の確率で大規模な余震が発生すると公表したことについて)真実を伝えることは大変重要だが、それが国際的にどのような影響を与えるかという視点が欠けている。特に、官公庁にその傾向が強い。国際的にどう影響があるのかということを真剣に考えていかないと、日本は二流、三流国になってしまう。この会議でも、グローバリズムに対して本気で向き合うために、文部科学省だけでなく他省庁とも連携し、国家戦略として行うことが重要であり、本報告書でもより強調すべきだと考える。

【委員】日本には優秀なインターナショナルスクールが多くあるが、各種学校扱いであるために国内の大学に進学できない。日本の高校から海外への留学を推進するのであれば、海外からの留学生を含むインターナショナルスクールに在籍する学生についても、日本の大学に入学できるような制度が望ましい。この点について示唆する記載があってもよいのではないか。

【池原国際課長】国際バカロレア、バカロレア(フランス)、アビトゥア(ドイツ)等、国際的に認められた大学入学資格を持つ場合、日本国内の大学入学資格が認められることになっているが、このような条件を満たしていない場合、インターナショナルスクールの卒業後、必ずしも大学入学資格を得ることができない。

【委員】インターナショナルスクールにいる人材を日本の大学が積極的に受け入れれば、非常に強力になる場合もある。各校の上位層の半分くらいでも日本の大学に入れば人材としても有効と思うが、今のところそれはできないのか。

【座長】本報告書案の8ページあたりが該当箇所になると思うがどう記載すべきか。

【委員】1条校についての記載があるので、これで十分ではないか。

【委員】インターナショナルスクールが1条校になれば、卒業と同時に大学入学資格は当然発生するが、現状ではそのほとんどは各種学校であるため、各国で認められた資格を取得することで、大学入学資格が得られる制度になっている。

【委員】その制度では、日本の大学には現実的にほとんど入れない。日本には優秀な大学がたくさんある。インターナショナルスクールと言っても、日本で教育を受けている人材であり、それが確保できないのはもったいない。

【委員】私は実際に県と協議して1条校であるインターナショナルスクールの設立に携わったが、手続は非常に煩雑で苦労した。規制を緩和するようにという記載ができないか。

【委員】その可能性を示唆できるような文を追加できないか。

【池原国際課長】各種学校については、教育内容などの自由度がある程度認められている反面、1条校とは違う扱いをしてきた。一方、各国で認められている大学入学資格を得た場合は、日本国内での大学入学資格を認めるという制度となっている。

【座長】頂いた意見について検討をお願いしたい。

【委員】10ページに「入試におけるTOEFLの活用」が記載されているが、TOEFLは、留学を見据えた英語力の向上への活用にとどまらず、学部レベルでの英語教育の充実にも有用であると思われる。学部レベルで英語の授業を増やすのであれば学生の英語力も引き上げる必要がある。この報告書において、更に踏み込んで、例えば、従来の受験英語に代えてTOEFLで問われる能力を測るという方向性が示せないか。TOEFLは留学のツールだけでなく、大学における英語力の向上にも資するこという効果について記載できるとよいと考える。

 ~笹木文部科学副大臣入室~

 【座長】議論の途中であるが、笹木文部科学副大臣より一言御挨拶を頂く。

【笹木副大臣】国際交流政策懇談会の委員の皆さまには、2年3か月にわたり、御指導いただいたと聞いている。報告書もまとまりつつあり、自分もざっと読ませていただいたが、魅力的な御提案が多数盛り込まれており、大変興味深い。自分は、今、「共生」、つまり共に生きていくという考え方が非常に重要だと考えている。エネルギー、環境、人口、食糧、核管理、軍縮、様々な地球規模の課題がある。日本は他のアジアの国々に比べて、国家が成立して2倍くらい長い歴史を持っている。つまり、失敗の歴史も体験も持っており、そうしたものを近隣諸国と共有して生きていくという意識の醸成と、一人一人の活動の仕組みを整えていくことが急務であると考えている。

【委員】震災や原子力発電所事故の対応で、日本に対する信頼が衰えている。早急に世界に向けて正確な情報を発信できる体制を確立することこそが、グローバル時代を生き抜くことの前提になるのではないか。世界から信頼される体制の確立が急がれる。

【笹木副大臣】様々な情報をホームページで公開しているが、御指摘のとおり、海外に発信されていないというのが問題なのだろう。官邸もようやく動き出している状態だ。

【委員】ポイントは、多言語にて、書面にて正確な情報を発信し続けるということである。官房長官が記者会見したとか、ホームページを見てほしいという類の話では、国際社会は納得しない。とりわけ、IAEAを巻き込んで、情報発信をしなければならない。当事者である日本がいくら会見しても、世界は信頼しない。

【笹木副大臣】御指摘はごもっともである。了解した。

【座長】学術会議でも同様の指摘はしており、官邸にも伝わっていると思うが、海外の信頼を得るところまで入っていないのは事実だと思う。

【委員】自分は、本懇談会設置当時からのメンバーであるが、報告書(案)について反対するところはない。ただ、久しぶりの出席なので、感想として、幾つか述べさせてもらう。我が国は国際水準の教育はしているが、国際水準の発信ができていない。これには、学長・総長が皆、日本人であることがひとつの要因であり、大学の国際化は、大学の顔の国際化から始めないといけないのではないか。また、欧米に留学を希望する学生が減少している一方で、日本に留学する学生の数は増えている。これは学生の内向き志向があるだけではなく、憧れの対象が欧米圏ではなくなったことでもあり、これを機に日本語の国際化を進めることの方が重要である。英米を追いかけるのではなく、日本語の国際化を図る戦略を柱に据えることが重要ではないか。報告書(案)に、青年海外協力隊のことが書かれているが、高い志を持って、途上国にボランティア活動に行く若者たちを人材として高く評価することが重要である。例えば、青年海外協力隊の若者たちに学位を授与するような仕組みができればと長年主張しているが、なかなか実現しない。

【委員】青年海外協力隊でも海外留学でも、帰ってきてから誰も引き受けないということが問題ではないか。帰国後に海外でのキャリアが生きないのがもったいない話だ。今回の震災や原子力発電所の事故に関連して、日本に対して危機感を感じている留学生や関係者も多いが、一方で、留学生本人から日本は安全であるとのメッセージを発することが非常に効果的に働いた。留学生に、そのような発信をしてもらうことも重要ではないか。

【委員】国際化については、アングロサクソン的な価値観が支配的になっている。西欧社会に対して東洋の文化や価値観を知ってもらうことが長期的な観点からは必要なのではないか。異なった価値観や社会もあるということを前提に、国際化を考えないと日本はいつまでたっても誰かを追いかけるだけになってしまう。それは、真の国際化ではない。

【委員】最近の企業関係者に聞くと、採用した学生の過半数は留学経験者だという。それにも関わらず内向き志向が進んでいる。実際のところ、諸外国に比べて日本の方が快適に生活できる。一方で海外に行くことで得るものは非常に大きい。大学の国際化を最も効率よく行うには、一定期間海外に行くことを卒業要件にすることだろう。

【委員】日本の大学は確かに水準が高いが、海外に出ることは経験としてはとても有意義である。最近の学生は、日本文化や日本の思想に関する意識が非常に低い。戦後の日本社会は世界に誇るべきものであるにも関わらず、日本人自身がそれを全く信じていないのが問題ではないか。それを意識させるようなことを記載として盛り込むべき。

【委員】日本語での発信は当然広げるべきだが、現実的には日本語での対外発信を中心にすることには限界があるのではないか。大学の国際化とは、対外的なコミュニケーション能力があり、それを行える人材を輩出すること。このテーマは長年議論しているが一向に前に進まない。文部科学省内でも同様の内容を扱う懇談会が乱立しているなど課題があり、大学の国際化を阻む課題は何かを明確にすべきだと考える。

【委員】11ページの「キャンパス・アジア」構想については、自国の優位性を意識している中国が、他国と同じ目線でのプラットフォーム作りに参加してくること自体に意味がある。日中韓の単位互換の枠組み作りが必要という記述自体はこの通りだが、実現に向けては思想的な違いが表面に出てくる可能性があり、その点についても十分に意識しておく必要があるだろう。

【座長】自分は、数年前から「日本の次世代リーダー養成塾」(塾長は米倉経団連会長)というものに参画しているが、これからリーダーとなる若者は、自国のことをよく知らないといけないと考えが根底にある。国際化について語る際は、日本のことを知った上で行うことが重要。

【委員】我々の議論の出発点は、日本は国際化で後れをとりつつあるという危機感であったが、それに対して日本はもう少し自信をもった方がよいという方向性の議論をしてきた。一方で、外に出て世界を引っ張っていこうという人材が少なくなってきているように感じる。外国人を多く採用する企業も増えており、もっと日本人の若者が国内外で活躍できるような知識若しくは力をつける方策を検討したいと思って参加してきた。改めて危機感を共有すべきではないか。

【委員】大学を国際化することは、平和な国際社会の形成を行う上でも重要。また、日本語での海外への発信は現実的に不可能だが、日本語の国際化について、併せて考える戦略を立てなければならない。我が国は、国内的に完結した教育という点では最高の成果を上げているが、現在、その欠点が見受けられる。海外に目を向けた学生に対する支援を省庁横断的に行うべきだと考える。

【委員】文化面で、日本は世界的な注目を浴び、先端を行っている国である。また、外国人であっても敢(あ)えて日本語での表現を行う人がいるなど、日本語について我々は大いに自信を持っていいのだが、学校教育においてそのような日本の文化的な強みを教えていないのが残念だと感じる。

【委員】11ページの「国際水準の授業が行える教員を育成する」という部分について、「育成」を「増加」とすることができないか。留学生の数をこれだけ増やそうというときに、大学の教員の構成は日本人ばかりであるというのはおかしい。留学生の比率が1、2割であれば、教員に占める外国人の割合も同様になることが本当の国際化であると思う。外国人教員数についての達成目標を定めるようなことも必要になってくるのではないか。

【委員】教師を国際化するという発想も必要だが、国際人を教師にするという発想も持つべき。また、幼児教育及び小学校の低学年における国際化に係る記載でテレビ番組について触れられているが、これは文部科学省としてそのような施策を実現できるという前提での記載か、あるいは一般論としての記載か。これは、文科省が影響力を及ぼせるものではないのはないかと考えるが。

【座長】これは私の意見として加えてもらった部分だが、文部科学省として施策を実行してほしいという意図ではなく、教育における国際化というと学校教育から始まってしまうので、就学前についても触れる必要があるということで、飽くまで一般論として記載してある。文部科学省では施策がないが、関係省庁や企業等にも本報告書は配布されるのではないだろうか。

【浅井室長】本報告書については、文科省内や他省庁だけでなく、企業も含めて幅広く配布をしたいと考えているが、御指摘の箇所については一般論として記載されているものである。

【委員】報告書自体が総花的であるという指摘もあったが、「資料2」の概要については、今すぐにできることや他省庁に訴えるべきことを強調し、優先順位をつけて並べ替えると効果的ではないか。また、概要を英訳し、在外施設又は留学生に対して示すこともアイディアとしてはあるのではないか。

【座長】5ページに「学校の国際化」とあるが、ここでは初等中等教育段階のみを指しているので、区別して記載すべきである。

【池原国際課長】「学校」の表現についても工夫する。

【委員】今回の震災を受けて、ドイツの学生が早々に帰国した一方で、フランスの学生は日本のアイドルに会いたいからと帰国を渋った。日本はクールジャパンとも言われているように、文化面ではフランスと比較して先進国である。

【委員】もともとはクールジャパンの前にクールコリアがあり、その前にはイギリスのブームがあった。韓国はかなり意図的に文化輸出を進めようとしてきた。また、今回の震災の影響を受けて、韓国産業界は日本の代替を果たすと意気込んでいる。日本が生き残るためには文化輸出についても戦略的・体系的に行っていく必要がある。

 

最後に、事務局より、本最終報告書案については座長預かりとし、本懇談会での意見を踏まえて最終版を作成し、4月中に金澤座長から笹木副大臣に手交し、報告書を公表する旨説明があった。その後、金澤座長より挨拶があり、閉会した。

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大臣官房国際課国際協力政策室

(大臣官房国際課国際協力政策室)