平成22年4月8日木曜日17時15分から19時15分
3F1特別会議室
資料1 東アジアにおける交流に関するワーキング・グループ(第2回)議事要旨(案)
資料2 東アジアにおける交流に関するワーキング・グループ(第3回)議事要旨(案)
資料3 東アジアにおける文化交流のあり方について(文化庁提出資料)
資料4 東アジア共同体構想に関連する国際文化交流事業(外務省提出資料)
資料5 国際交流政策懇談会 東アジアにおける交流に関するワーキング・グループ今後の予定について
参考資料 国際文化交流の実績(文化庁提出資料)
青木委員、白石委員、角南委員、田中委員、恒川委員、寺島委員
赤堀広報文化交流部文化交流課長
清水文部科学審議官、森口文部科学審議官、土屋総括審議官、芝田大臣官房国際課長、坪井大臣官房政策課長他
合田次長、戸渡長官官房審議官、大路長官官房国際課長
• 議事に先立ち、事務局からの説明後、田中委員が本ワーキング・グループの座長代理に選任された。
• 文化庁大臣官房国際課大路課長より東アジアにおける文化交流のあり方について、外務省広報文化交流部赤堀交流課長より東アジア共同体構想に関連する国際文化交流事業について発表が行われた。その後自由討議が行われ、概要は以下の通り。
東アジアの範囲をどう捉えるかが重要。中印の仲が悪いという問題がある。地域性・民族性が大きく異なるアジアにおいて、域内の学生、知識人、一般大衆といった対象別に文化に対するニーズ調査を行う段階と考える。日本語の普及と文化交流は一緒に発信すべき。日本文化を享受するために日本語学習や日本への留学を行うような事例もあり、相互発展が期待できる。現在の東アジアにおける取組は国レベルの話が中心だが、戦略性・持続性・継続性という観点が希薄で、効果も限定的。アニメや漫画、日本語が、国の関与ではなく、アーティスト等の努力により世界に広まった点は素晴らしいが、国としての文化援助が少ないことは課題。中韓も文化に力を入れている。文化産業は観光等と並び経済的効果も大きく、海外の注目を日本に惹き付ける一つの手段。戦略的に取り組む必要がある。
文化の範囲をどこまでとするかが課題。大衆レベルの交流を考えるのであれば、生活文化なども含めて広く捉え、相互理解を図ることが重要。留学生やEPAで日本に来る介護士・看護師との間でも、互いに異なる価値観・考え方に触れ、生活文化も含めた文化交流が行われることが期待できる。東アジアの若者がポップカルチャーを中心とした日本文化に惹かれている点も重要。若者人口が多く、所得が上昇傾向にあるアジア都市圏の若者をいかにターゲットにしていくかが課題。東アジアにおける経済統合が加速し、価値観や文化の多様性が容認される中でも、長期的に域内の共通認識を醸成しようという理念は存在する一方で、文化産業という観点で中韓などは積極的に自国を売り出している印象だが、我が国も同様にすべきか。
科学技術と芸術文化の世界は関係が深い。国際交流基金は理系の分野には手を出しにくいと聞くが、例えば科学技術関係機関が海外進出を図る際、交流基金の海外事務所を活用し科学技術に関する交流を行えるのではないか。総合科学技術会議で科学技術外交について議論した時もJICAや交流基金について同様の議論が出たが、今後重要な観点になるだろう。
文化と接点のある科学を扱おうという意向はあるが、新しいことに着手することで今まで行ってきた取組が既存の予算内でできなくなるのではないかという懸念もある。基金の在外拠点を活用し、文化と科学技術との接点に当たる事業を行うのはよい。現在も幾つかの取組があるようだが重要な視点。基金とも話をしていきたい。
文化交流のベースとなるメディア、特にNHKの国際放送は重要。中国はCCTVに力を入れ、戦略的に展開。例えば、南太平洋やアフリカの諸国にもパラボラアンテナを寄贈し、視聴可能な環境を整備。CCTVを継続視聴した若年層の間で中国に対する関心や好感度が増しているというデータもある。NHKの海外向け放送として、駐在員向けに大河ドラマや相撲放送の日本語放送を行っていたが、国際放送の必要性が高まり、英語で発信するNHK国際放送が開始された。特に、フィリピンにおいてジャパンポップ番組に対する反応が高い。しっかりした方向性と戦略性を持った国際放送は文化交流のベースになり得る。国益追求の観点や中国への対抗意識からではなく、アジア全域の文化を欧米向けに発信し、その過程でアジアとの関係も深めたいということであれば、日本らしい国際放送になるのではないか。「脱イベント主義」もキーワード。演劇・伝統文化等の紹介を中心とした文化交流が定番化するあまり、海外では日本の生活文化に対する誤解が生じている。国際放送を有効に活用し、実態を適切に報道した上でイベントを行うような手法をとる必要がある。
省庁間の連携や整合性という観点で言えば、経産省の産業構造審議会産業競争力部会においても、成長戦略に関する検討の中で文化産業について盛んに議論していた。経産省も文化産業が日本の今後の活性化の鍵だと捉えており、産業論としての文化に力を入れているようだが、国際交流の視点と経産省的な文化産業論の観点との間で整合性をとり、方向観を持っていかなければオール・ジャパンとして齟齬が生じかねない。
日本が東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)に委託しているプロジェクトは、インフラ整備、アジア共同総合開発のようなものばかりだが、例えば、著作権、知財権等文化交流を行う上で必要なソフト分野の共通ルール形成こそテーマに掲げるべき。但し、厳格に法律等を整備し規制するのではなく、実態的に知財権を持つ者が損失を被らないようなビジネスモデルを考えることが必要。東アジアで議論すべきテーマの一つとして文化交流を促進するためにも、知財権についてしっかり方向づけを行う必要がある。
日本の東アジア共同体構想とは無関係にASEANが結束力を強め、2015年にASEAN共同体が動き始める。今年1月に発効したASEAN・インド、ASEAN・中国のFTAは日本の産業界に重大なインパクトを与え、インドネシアを中心にASEANへの日本企業の進出も始まっている。企業進出や経済活動との関連でも文化交流は非常に重要。国の施策だけではなく、国際展開している企業等に学生の就職等の出口戦略と絡め、産業界との連携の中で文化交流を考えるスキームづくりや具体的なプログラムの検討が重要。
文化庁の資料によれば、東アジア向けの文化交流政策は数も少なく、方針も不明瞭だったということか。実績を見ても、日本の国際文化交流施策は基本的には欧米向けだったという印象。資料のデータを拝見してよくわかったが、アジアに対してさほど伝統的日本文化の発信を行ってこなかったのもアジアのニーズがなかったからかもしれないが、これはよいことかもしれない。現状により即した文化交流を考える素地がアジアについてはあると言える。
文化庁等が開催するイベントよりもはるかに大勢の若者が世界中から来る「コミケ」が国際社会や東アジアに対して与える文化的インパクトについて、分析する必要がある。説明にはなかったが、民間や地域主導で行っている文化イベントについても整理する必要がある。
観光、料理、文化等を通じ、若者の間では東アジア文化に対する理解の度合いが向上している。文化交流を通じ、日本人のアジア理解も深めていかなければならない。
文化庁の資料の中に訪日動機に関する世論調査が出ていただが、日本人がアジアに観光旅行に行く動機は何か。ショッピング或いはリゾート地で過ごしたいというものか。
東方神起を追いかけて毎週末ソウルに行く渡航者もあると聞く。ショッピングだけが観光の魅力ではない。
文化を捉える際、生活文化は重要。文化庁資料p11の「ASEAN主要6カ国の対日世論調査」によれば日本に関しもっとも知りたいと思う分野として、「日本人の生活・考え」と「文化・芸術」の両方合わせると70%以上になる。生活様式から価値や芸術が文化の定義。単に芸術中心だけでは駄目。文化庁では、海外に出すなら、まず歌舞伎、能など日本の伝統文化が優先される。それを簡単に否定しアニメやJポップに代替するわけにもいかないが、今後少しずつポップカルチャーや生活文化も入れていくことも必要。
自由な立場で言わせて頂けば、オール・ジャパンで文化に取り組むのであれば、国際交流基金に予算をつけ、科学技術から文化芸術、生活文化まで扱うような海外拠点的センターを主要国につくり、連携させるべき。
日本の立場を表明する一つの手段として、NHKの国際放送はもっと努力が必要。CNNやBBC並に日本の発言力を示すものにしていくべき。
文化産業という観点では、アジア地域では東京からイスタンブールまで、文化芸術、芸術、娯楽等様々な面での需要空間ができつつあり、そこに向けて色々と発信をしていく必要がある。中国は今、北京から100キロのところに巨大な映画スタジオを建設中。ハリウッドよりも大きな映画スタジオとして将来的には世界中の映画監督による作品を制作する旨表明しており、実際に中国の主要な監督が大作を制作中。中国の映画人口は現在約2億人と言われているが、2015~2016年には5億人、2020~2030年には10億人になると見込まれており、インド、中東、東南アジア諸国を含めると巨大な市場になる。
EU等のように、東アジアにおいても政治的な哲学、思想も含め、共通の理念や思想を形成するための基盤を日本中心に整備していく必要がある。白石先生や田中先生は東アジア共同体論のシンポジウムを行っているが、こうした取組も必要。
文化庁の努力もあり、中国側の発案から日中韓の文化大臣フォーラムが実現され、東アジア史上初めて3国の対等な文化交流が行われることになる。中韓ではフォーラムに対する反響が大きい、日本国内の反応は薄い。今年は日本で開催なので、この機に日本国内でも周知すべき。
今、世界の学術文化、文学の中心は米国、続いてEUだが、第三の拠点は東アジアになればいい。学術文化を含めた文化拠点を形成するという意識でやっていただきたい。最近アジアの大学に対する評価は高まっており、科学技術、生活文化、芸術、ポップアート、ポピュラーカルチャー等を幅広く学術文化として捉え、研究、教育面を含めた諸活動を通じ、次世代の若者に働きかけを行っていくべき。
昨年の中国人の海外出国者数は香港、マカオを含めると約4,800万人であり、日本の海外出国者約1,545万人と比較すると驚異的であり、10年以内に1億を超すと言われている。日本は今、観光立国論の中で、中国人出国者の1割を日本に引きつけようとしているが、将来1,000万人の中国人を受け入れる上での文化面での体制整備は可能なのか。日本経済活性化のために観光が大切だという観点だけでは不十分。文化インパクトの重要性を認識し、単に渡航者の量を増やすのではなく、医療ツーリズム、食文化交流等にまで視野を広げ、滞在型で日本文化を理解させる取組や、リピーターを満足させるような取組等を含める等、観光立国論の中に文化戦略を盛り込む検討をオール・ジャパンで行うべき。
日本人にはある程度高度な学術面でのアジア理解が必要。例えば、21世紀のアジアの教養教育を域内の大学が共に考えていくことにより、理念形成に貢献したい。
「東アジアの教養」とはどのようなものになるか。共通に知っておかなければならないものとは何か。
日本文化に一度関心を持った学生を日本語学習や留学といった次の興味につないでいくことが非常に難しい。アニメやロボット、ポップカルチャー等日本文化に何らかの興味を持った東アジアの若者が次に何に関心を持つのか、また、次の興味や行動につなげるには何が必要なのか早急に分析すべき。
文化にも、我が国を代表するような洗練・形式化されたもの、ポップカルチャー的なもの、生活に密着したものなど色々な種類がある。このWGにおける東アジアにおける文化交流の目的は日本を売り込むことか、それとも東アジア協力か。私は、日本を売り込む、或いは日本を知ってもらうという発想よりは、交流を積み重ねることにより相互理解を深めるような仕組みを考えていく方向でよいと思う。
海外で売れる日本の文化産業には、メディアコンテンツ等くっきりとした日本文化の形を持たず、例えば映像は日本製、音声は現地語というように、まさに「フュージョン(融合)」された状態で需要されることが多い。このような状況を踏まえた上で、東アジアにおける文化交流を考えることが重要。まず、人の移動が大事。日本に留学してファッションや料理の勉強をしたくてもビザがおりないケースもあると聞くが、特に若者の移動を妨げないための方策を検討する必要がある。また、文化産業における利益の一部を作成元の日本に残すにはどうすればよいかも考えるべき。
小泉政権末期に文化外交推進のための懇談会が設置された時も同様の議論があった。橋本政権下では、ASEANが6カ国から10カ国になる変革期と重なり、橋本首相(当時)のシンガポール講演に基づき、多国籍文化ミッションに関するアジェンダを出したが、政権退陣によりフォローアップもできなかった。現政権下では東アジアに注目していることを重視し、様々な具体策に取り組むべき。日本も東アジアもグローバル化の時代において、その国古来の文化、アジア文化、仏教・儒教文化、欧米文化などが融合し、次第に似通ってくるなかで、様々な国において日本文化が享受されていけばよいのではないか。
これまで日本文化に対して国が責任を持ってこなかった印象が強い。文化観光立国を謳っているが、文化施策の予算は削減されがち。本WGの設置を機に、東アジア文化における日本の積極的な役割について、観光庁、外務省、文化庁で連携してオール・ジャパン体制で検討し、対外的に発信すべき。シンガポールや中韓は文化担当省をつくり、対外発信に力を入れている。フランス・米国なども対外発信に積極的。日本の文化交流施策は対外関係という観点でこれまで脆弱だったので、その点もしっかり議論していただきたい。
日本のポップカルチャー・漫画・アニメ等が世界で流行している理由、文化としての魅力・良さ・背景等について、学術的に分析すべきではないか。現在、日本のポップカルチャー研究の中心は欧米。東アジアにおける文化交流のあり方を支える学術基盤の整備は、日本の学界の責務ではないのか。
大臣官房国際課