東アジアにおける交流に関するワーキング・グループ(第2回) 議事要旨

1.日時

平成22年2月17日水曜日14時から16時

2.場所

3F2特別会議室

3.議題

  1. 東アジア共同体構想に向けた今後の検討の方向性について
  2. 駐日欧州連合代表部よりヒアリング
  3. 恒川委員からの報告

4.議事要旨

配付資料

資料1 東アジアにおける交流に関するワーキング・グループ(第1回)議事要旨(案)

資料2 東アジアにおける交流に関するワーキング・グループ(第1回)における主な意見

資料3 国際交流政策懇談会 東アジアにおける交流に関するワーキング・グループ 今後の検討予定について(案)

資料4 駐日欧州連合代表部(EU)からのヒアリングについて

資料5 EUのプログラム:東アジア共同体への示唆となるか?(駐日欧州連合部代表部提出資料)

資料6 「東アジア共同体」における高等教育国際交流・協力に向けて JICA研究所(恒川惠一委員提出資料)

参考資料1 東アジア地域関連参考資料

出席者

(委員出席者)

青木委員、白石委員、角南委員、田中委員、恒川委員

(文部科学省出席者)

中川文部科学副大臣、後藤文部科学大臣政務官、坂田事務次官、清水文部科学審議官、森口文部科学審議官、土屋総括審議官、木曽国際統括官、芝田大臣官房国際課長、坪井大臣官房政策課長 他

(ヒアリング)

ルディ・フィロン駐日欧州連合代表部広報部長、マリ=エレーヌ・ヴァレイユ駐日欧州連合代表部広報部次長、バーバラ・ローデ駐日欧州連合代表部公使参事官/科学技術部長

議事概要

(1)東アジア共同体構想に向けた今後の検討の方向性について

•   議事に先立ち、事務局からの説明後、中川副大臣から挨拶があった。

(2)駐日欧州連合代表部よりヒアリング

•   ルディ・フィロン駐日欧州連合代表部広報部長、マリ=エレーヌ・ヴァレイユ駐日欧州連合代表部広報部次長、バーバラ・ローデ駐日欧州連合代表部公使参事官/科学技術部長よりEUの取組について発表が行われ、その後、質疑応答が行われた。概要は以下の通り。

【中川副大臣】  

 政権としての政策の方向性が、プロジェクトを重ねるたびにはっきりしてきた。環境分野から、あるいは、観光も含め文化という切り口から、あるいは、大学レベルでの質の確保や共通性をつくり上げながら、東アジア地域における戦略を検討する場面が多くなってきた。

 法務省においても、ビザをどのように見直していくか、日本に来る留学生や労働者をどう見ていくか等につき具体的検討が始まっている。本日のテーマも含めて本WGで検討いただき、新しい時代に向けての政策立案の材料を提示していただければありがたい。

【委員】

 エラスムス・プログラムについては、学生が均質にEU加盟各国に行っているのか、それとも、特定の国に集中しているのか。大学間交流は非対称的な交流になりがちだが、エラスムス・プログラムの場合、そのような問題をどのように対処しているか。

 それから、「20 by 2020」という、学生の20%が海外経験を持つという新しい目標に関して、現在の達成率について情報提供いただきたい。

【委員】  

 ボローニャ・プロセスは、エラスムス・プログラムの目標でもある共通意識の醸成以外に、欧州の教育機関の質の向上や欧州経済の国際競争力を高める目標があるとのことだが、教育の質の向上や経済の競争力の向上にボローニャ・プロセスがどれだけ貢献しているか、どのような指標を見ればわかるのか教えていただきたい。

【委員】  

 1991年にドイツ・ポーランド青少年交流センターができたとのことだが、例えば関係が難しい、ドイツとイギリス、或いは他の東欧諸国の間で、交流プログラム実施に向けた動きはあるのか。

 学生の交換プログラムについて、私の知る仏独の学生でEU域内の他国の大学に行きたいという者はおらず、皆米国の大学へ行きたいと言っていた。こうした事例は東アジア地域においても大きな問題を提起していると考えるが、御意見を伺いたい。

 欧州文化首都事業に関してだが、今年の文化首都の一つにトルコのイスタンブールが選ばれており、文化圏がEUの域を超えて広がっているようで非常に興味深い。文化庁では文化・芸術で実績を上げた都市に予算を組む等、EUの欧州文化首都事業を参考にしている。本事業の評価方法及びEUにおけるその他の様々な文化交流プログラムの実施状況について、教えていただきたい。

【ヴァレイユ次長】  

 エラスムス・プログラムにおいて、留学生の流入が多い国は、例えば、フランス、スペイン、英国、アイルランド、北欧諸国など、主に西側諸国に集中。一方、東欧諸国は流出のほうが多い。東欧諸国は2004年からEUに加盟をし始めたため、同年以降、エラスムス・プログラムを活用しており、徐々に留学生の受入れに向けた環境整備等も行っているので、今後東西の不均衡は解消されていくのではないかと考えている。

 「20 by 2020」は実現までほど遠く、野心的な目標。エラスムス・プログラムにおいて、現在国外に留学している学生は3%ほど。

 国際競争力とボローニャ・プロセスとの関係についてだが、ボローニャ・プロセスの中に大学の質保証を担保するような仕組みがあり、EUの高等教育の国際競争力向上に貢献している。高等教育における国際競争力の向上により、最終的には、経済における国際競争力の向上が期待される。

【フィロン部長】 

 ボローニャ・プロセスの効果を図るための指標を設定する前に、ボローニャ・プロセスの内容として具体的に何に取り組むことにより、国際競争力の向上を達成するかという点を考えなければならない。ボローニャ・プロセスは、流動性、単位互換制度(ECTS)、質保証等の要素を有しており、これらがボローニャ宣言で掲げた目標の達成状況の測定を可能にしている。

 青少年交流に関しては、27加盟国において行われているすべてのプログラムについて熟知しているわけではないが、特に独仏の間の交流プログラムについて申し上げたのは、戦後の独仏間の関係改善に大きく役立ったからだ。戦後何年も経った後、ドイツ・ポーランド間でも独仏間の取組に関する関心が高く、1991年、類似の組織ができた。英国・ドイツ間の青少年交流は、確証はないが、互いの言語、特に英語に対する関心が高いため、恐らく既に、自然にでき上がっているのではないか。

 今でも米国は、研究や留学先として大変魅力的であるが、コストの面でEUの高等教育機関や研究所は魅力的であり、多くの域外の学生や研究者の関心が集まりつつある。EUで提供されているカリキュラムも、米国に比べて文化的多様性に富んでいる。

 EUの文化首都に関しては、2010年、イスタンブールが文化首都に選ばれたが、トルコはEU加盟への候補国の1つとして考えられているので、完全に域外というわけではない。

【ローデ参事官】  

 マリー・キュリー・アクションに関しては、研究者が対象であり、学生を対象としているものではないが、かつては米国に流出する、ほとんど一方向の交流だったが、年を経るにつれ、決して同規模ではないが双方向の交流になってきている。米国からの人材流入も増えており、優秀な者から中程度の者まで、様々なレベルでの双方向での交流の枠組みや研究奨励金のスキーム等が形成されてきている。交流の経路も次第に多様化している。以前は頭脳流出の段階にあったが、今は頭脳循環の段階に入っていると言える。

(3)恒川委員からの報告

•   恒川委員より「東アジア共同体」における高等教育国際交流・協力について発表が行われ、その後、質疑応答が行われた。概要は以下の通り。

【委員】  

 資料6で提言されていることに賛成。図1の「学生交流と直接投資」のデータも大変ありがたい。「AUN+1はあるが、AUN+3はない」という指摘について、今後考えていく必要がある。ASEAN+1でやるのが日本の国益だという意識をそろそろ変えていかなければならない。

 参考資料1「東アジア地域関連参考資料」のp20戦略6「ASEAN研究と東アジア研究の促進を通じた東アジアのアイデンティティーを育成」の行動1として、「ASEAN大学ネットワークの調整の下にある東アジア研究ネットワーク(NEAS)など既存の仕組みを利用」とあるが、NEASはASEAN+3のサミットにおいて小泉元首相が提唱し、外務省中心に日本が検討を進めてきた話。最初の3年間ほど私も東洋文化研究所で事務局を務めたが、日本ばかりが進めるのもよくないので、AUNに事務局になっていただき、より広く展開していただこうと思った。日本の省庁はやや縦割り的なので、文科省はほとんど知らない話なのではないか。このNEASの提言等をタイが取り入れ、「教育に関するASEAN+3行動計画2010-2017」を作っていただいたと思う。今後も日本がASEAN+3、東アジア全体を牽引する形をとっていただければと思う。

【委員】  

 資料6の提言3「域内高等教育の調和化や『質』保証制度の構築は、少数の大学間で開始し、段階的に拡大すべきである」に関連して、早稲田大学がフランスの大学と博士課程を実施している例があるが、同様のプログラムは日・ASEAN間では実施されているのか。

【座長】 

 日本の幾つかの大学のコンソーシアムと、マレーシアの大学の間のダブルディグリー・プログラムは、15年程前にできている。

【委員】  

 JICAでも、SEED-NetでASEANの幾つかの国に、エンジニアリング関連の諸学科を割り振り、ASEAN諸国の大学生・大学院生を受け入れ、さらに1年間日本の大学に留学させる取組を行っている。学位も出している。

【委員】 

 恒川委員の報告内容は経済を強調すべきだという点等現実的なアプローチ。数年以内に実現できそうな政策提言。他方で、仏独青少年交流センターは、EUを形成していく上で非常にインパクトがあり、長期的に重要な役割を果たしている。このような青少年の交流プログラムと、現実的なSEED-Netプラスアルファのような話の両方を盛り込みつつ、日中韓をどうするか、中国をどう巻き込んでいくかを検討していくのは、多様性という面でもよい。日中韓の青少年交流は、かなり大規模に行うべき。

【委員】  

 独仏は過去の様々な歴史的経緯を経て、最低限のコンセンサスを形成しEU統合に至っている。EU統合があったからコンセンサスができたのではないという歴史認識でいる。日中韓をめぐる歴史的背景はEUとは異なるが、交流施策を行うならば独仏のように2,000万人規摸で行うくらいの政治的な意思があればと思う。それが無理であれば、小規模ながらも、実利面で中韓を引きつけていくアプローチがよいのではないか。

次回以降の日程

•   次回ワーキング・グループは2月24日に開催予定。

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大臣官房国際課