国際教育交流政策懇談会(第5回) 議事要旨

1.日時

平成21年6月2日(火曜日)13時から15時

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 日本の教育の特徴を生かした国際交流・協力
  2. その他

4.出席者

委員

金澤座長、田村座長代理、池上委員、池田委員、川勝委員、佐藤委員、角南委員、高橋委員、田中委員、恒川委員、牟田委員

文部科学省

玉井文部科学審議官、木曽国際統括官、芝田大臣官房国際課長、藤原大臣官房会計課長他

オブザーバー

(有識者)アフタブ・セット元在日本インド大使(以下「セット大使」という)、西本関西学院大学教授(以下「西本教授」という。)、長瀨UNV駐在調整官(以下「長瀨UNV調整官」という)

5. 配付資料

資料1 国際教育交流政策懇談会(第4回)議事要旨(案)
資料2 日本の教育の特長を生かした国際交流・協力に関して-インドからの提言(セット大使提出資料)
資料3 国連学生ボランティア(関西学院大学西本教授提出資料)
資料4 国連ボランティア計画(UNV)(UNV長瀨駐在調整官提出資料)
資料5 国際教育交流政策懇談会におけるこれまでの主な意見
資料6 国際教育交流政策懇談会におけるこれまでの主な意見から考えられる施策例(国際協力分野)

参考資料1 各省庁の主な人材育成関連ODA事業予算(2008年度)と事業概要
参考資料2 文部科学省における国際関係施策
参考資料3 文部科学省平成21年度補正予算案における国際交流関係予算の概要        
参考資料4 これまでの審議のまとめ-第四次報告-(教育再生懇談会)

6. 議事概要

(1)日本の教育の特長を生かした国際交流・協力

•   有識者からの発表に先立ち、事務局より、配布資料についての説明が行われた。質疑応答の概要は以下の通り。

【委員】

 日本の若者の海外留学を増加させるという施策があるが、その成果について具体的にどのように検証していくのか。 

【事務局】

 現在のところ情報を得ていないため、次回懇談会までに確認して報告させていただく。

【委員】

 参考資料3に留学生宿舎の整備予算について記載されているが、留学生に留学生専用の宿舎に入居してもらうことは留学生を隔離することになるのではないか。このような予算は、必ずしも、留学生と日本人学生の交流という目的に即したものになっていないのではないか。

【事務局】

 以前から、留学生宿舎にはメンター、チューターなどの立場で日本人学生を入れるなどの対応はしてきている。御意見は担当課にお伝えする。

【委員】

 留学生をお客様扱いすることが、結果的に差別につながるのではないか。留学生も日本人学生も対等に扱うべきだ。

【委員】

 国際交流に関しては大きな予算がついているが、それがどのように使われ、最終的にどういう効果があったかという実績評価が見えてこない。また、国際交流というテーマは、関係省庁が縦割りで取り組むのではなく、省庁横断で対応すべきで、その方が、予算に対して大きな効果が得られるのではないか。

【委員】

 参考資料3には、若手研究者等の海外への留学支援予算について記載されているが、どのようなスキームでこのプログラムを進めていくかについて、次回懇談会で大筋を示してほしい。

【委員】

 日本は異質のものが入ることを嫌がる傾向がある。例えばホームステイ先を確保するにも苦労する。こうした状況を放置していては国際化は進まない。国全体をあげての取り組みが必要ではないか。

 

•   続いて、アフタブ・セット大使より日本の教育の特長を生かした国際交流・協力に関して-インドからの提言と題して、また、西本関西学院大学教授及び長瀨UNV駐在調整官から、国連学生ボランティアについてそれぞれ発表があった。

その後、自由討議が行われたところ、概要は以下の通り。

【委員】

 初等教育段階から生徒の目を海外に向けさせることは大事だが、今目の前にいる内向きの大学生の目を海外に向けさせるような取り組みについて、何か工夫をされていることはあるか。

【西本教授】

 国際社会での活動に興味を示す学生は多いが、UNVのプログラムでの途上国での生活環境などを説明すると、多くの学生は二の足を踏んでしまう。
 UNVプログラムとは別に、夏休み期間中に2週間ほど学生を国連本部やニューヨークに本部を置く国際機関に連れて行き、特に日本人の若手職員と会って情報収集するというプログラムを設けている。これには応募枠以上の応募者があり、参加した学生は、何らかの成果を得て帰ってきている。とにかく、短期間であっても、学生を海外に連れ出す機会を設けることが必要である。また、海外での活動を希望するのは女性の方が多いので、女子学生に焦点をしぼったプログラムを企画することも良いのではないか。

【委員】

 国連ボランティアでの学生の派遣期間は約5か月程度となっているが、その短期間で現地での業務の役に立つことはできるのか。

【長瀨UNV調整官】

 その点も含めて、現在評価の途中である。個人的見解だが、5~6か月という短期で大きな成果をあげることは難しいという実感はある。ただ、短期でできる職種や、出せる効果もあると考えているが、現場の受け入れ側の理解と協力が必要だと思う。

【委員】

 派遣期間の問題だけではなく、学生がそもそもどんなスキルを持っているかということ自体が問題ではないか。参加学生のスキルは、途上国の役に立つことができるのか。  

【西本教授】

 映像処理ができる学生が作成したマダガスカルでの環境問題の写真集による環境問 題に関する啓発活動に貢献した例、キルギスでのエコバックの作成や年金受給者の生活実態のUNV本部での写真展の実施などの例がある。ICTやコンピューターのスキルだけではなく、他のスキルも必要だとも考えている。

【委員】

 日本とインドはビジネス面では交流が盛んであるが、留学生交流についてはまだまだ少ない。現在、学術提携だけに限らず、ビジネスと同時に人材開発を行うようなビジネスを軸とした交流や学術交流で両国のつながりを多面的に広くしていくような動きはあるか。また、そのためには何が一番有効な方法とお考えか御教示いただきたい。

【セット大使】

 日本とインドの間には、ある程度のビジネス交流はあるが、日本に住んでいるインド人、インドに住む日本人が少なく、影響力があまりない。知識人を対象とした受入施策が必要ではないか。インドの技術者、専門家の関心を引くことは重要で、それによりビジネス交流は増える。インドではインフラをつくると同時に、日本語学校、専門学校などを合わせてつくるような経済開発が大事だと考えている。

【委員】

 国際教育交流を戦略的に進めていく場合、関西学院大学の国連学生ボランティア派遣のように手間暇かけた活動は有益だと考えているが、インセンティブ・ストラクチャーを作ることによって、それほど手間をかけなくても国際交流推進への効果が大きくなるような政策も本懇談会で考えていく必要があるのではないか。他方、中国からの留学生に比べ、インドからの留学生は異常に少ない。漢字がネックになっているとは思うが、大学院での英語で学位が取得できるプログラムを、教員にあまり負担をかけないやり方で増やすことはできないか。

【セット大使】

 日印の国際教育交流の推進には、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドのように、インドに対して日本の教育を紹介するセンターが必要ではないか。

【委員】

 インドの優秀な人はアメリカに行くと言うが、それ以前にインドで日本に関する情報が少なすぎる。例えば、インド工科大学(IIT)のような優秀な大学の卒業者が日本で就業機会があり、ビジネスをしているといったような情報を紹介できると、それが日本への留学のインセンティブになるのではないか。
 また学生等の国連に対する関心は高いかもしれないが、国連に就職する日本人は少ない。このギャップを埋めるようなボランティア制度をつくるといったことも考えられるではないか。

【委員】

 教育再生懇談会等でも、小学校から大学における奉仕活動、また、海外における活動の重要性が議論されている。特に大学における奉仕活動の重要性をこの懇談会でも何か提言できないか。 

【西本教授】

 たとえ大学生が国際奉仕活動に携わるようなシステムづくりをしたとしても、現在、3年生の秋から学生は就職活動でいなくなる。新卒でなくても採用する、企業や社会が求める人材像は外国のことも理解している人だということを明確化するなど、企業や社会も責任をもつべきだと考えている。

【委員】

 確かに企業と大学側のミスマッチが起きている。これを機会に、新しい大学のあり方、あるいは企業の求める人物像というものも掘り起こしていきたいと考える。  

 【セット大使】

 インドのトップクラスの大学で日本の教育に関する情報が少ない。例えば、日本でのビジネスで成功したインドからの元留学生の体験談をセミナーなどで広めることも一案である。 

【委員】

 国際教育の促進のためには、文部科学省自体の鎖国主義的なところを改める必要がある。文部科学省と外務省が縦割りで仕事を行っているようでは、教育の国際化は進まないのではないか。
 海外でのボランティア活動期間が5か月程度では現地において役に立てないことがほとんどであるという話があったが、まさにその役に立たないことを理解すること自体が最も大きな効果であり、その後のスキルアップのきっかけになるのではないか。 

【委員】

 国際化の取組は初等教育段階から行うべきである。

7.次回以降の日程

•   次回は本懇談会7月2日(木曜日)15時~17時に開催予定。本懇談会のこれまでの論点整理を行う。

お問合せ先

大臣官房国際課国際協力政策室

(大臣官房国際課国際協力政策室)