国際教育協力懇談会(2006年2月17日~)(第4回) 議事録

1.日時

平成18年4月18日 15時00分~17時00分 (火曜日)

2.場所

文部科学省 省議室

3.議題

  1. 開会
  2. 事務局より資料説明
  3. 自由討議
  4. 閉会

4.議事録

1.開会

 (事務局)

2.委員等紹介

出席者

 木村座長、荒木委員、内海委員、片山委員、工藤高史委員、工藤智規委員、白石委員、千野委員、廣里委員、弓削委員、渡辺委員

オブザーバー

 国際協力機構国内事業部・加藤部長
 国際協力銀行開発セクター部・橋本部長
 外務省経済協力局・高橋参事官

事務局

 近藤文部科学審議官、井上前国際統括官、瀬山国際統括官、町田国際交流官、渡辺大臣官房国際課長

3.資料説明

 (事務局)

4.自由討議

【木村座長】
 資料の3が、過去3回行いましたこの会議で、委員の皆様からご発言をいただきました事柄を項目ごとにまとめたものでございます。国際協力分野において大学が担うことが適当な役割、大学の知を効果的に活用するために必要となる周辺環境整備として、どんなものが考えられるか。さらに、国際協力に積極的に参画する大学に求められる改善事項等です。 資料5は、この委員会として報告書を出す必要があるということで、事務局のほうで作っていただいた案です。今のところ、ブレットポイントの形でしかまとめてありませんが、この中に、いただいた意見を入れていこうと考えています。
 資料6は、資料5の矢印の、3の2、3のところにございますように、1つの問題としてサポートセンターの抜本的見直しについて、どういうことを考えているかということを記述したものです。それから、国際協力に役立つ研究への支援を充実する必要があるということで、1つの提案がされております。
 資料の3、4はよろしいのですが、主に5と6について、4をごらんいただきながら、ご意見をいただければと思います。まず、資料5、こういう柱立てでいいか。それから、一応の案でありますけれども、盛り込むべき内容はこれで良いか。その辺のことについてご意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。いかがでございましょうか。
 白石先生に、議論が終わってからお願いをしようと思っておりますが、いかがでございましょう。はい、ありがとうございました。そうさせて頂きます。
 どうぞ、内海さん。どんな観点からでも結構でございます。

【内海委員】
 前回休みまして、大変失礼いたしました。
 ご説明いただきました柱立てについては、大変うまくまとまっていると思います。ただし、サポートセンターの根本的な見直しの部分と、国際協力に役立つ研究の支援というところに関して発言させていただきます。サポートセンターの抜本的見直しといったときに、多分、中期的なものと、短期的に今すぐできることと、2つぐらいあるのではないかと思います。短期的には、資料の6で展開されたサポートセンターの機能強化とか、応用研究の資金の助言というようなことだろうと思いますが、中期的には、大学と国際機関あるいは援助機関とを結ぶ一種の中間組織として機能するべきではないかと思っています。
 それはどういう意味かと申しますと、サポートセンターそのものが、UNESCOやUNICEF、アジア開発銀行あるいはJICA(ジャイカ)等のプロジェクトを受注して、サポートセンターと大学が連携してプロジェクトを実施することです。その場合、実施主体は大学になると思いますが、管理運営に関してはサポートセンターが行うわけです。そこまでできるような大幅なサポートセンターの組織強化が必要だと思います。
 なぜかと申しますと、大学の教員のみならず事務部門も含めた強化にはかなり時間がかかると思いますので、サポートセンターが一種の中間組織として機能して、そこが受注する形で、プロジェクトを大学に実施していただくというワンクッション置いた形が必要です。大学と援助機関、国際機関が直に仕事をする、つまり大学がコンサルタントとして動くというのは、現状ではかなり難しいと思うからです。サポートセンターの機能強化の方向として、短期的にはご提案のあった形にしても、中期的にはサポートセンターそのものがプロジェクトを受注し得るようなところまで持っていく必要があると考えます。そのためには、法的、組織的な面で幾つかの課題があるかと思いますが、そのような方向を見据えた形での強化を進めていくことが必要だと思っております。

【木村座長】
 はい、ありがとうございました。
 ほかにご意見ございませんでしょうか。確かに今のようなご意見、あり得ると思います。しかし、相当強力な組織にしないと、できませんね。
 どうぞ、工藤さん。

【工藤(智)委員】
 資料5についてですけれども、当懇談会、あと、初中関係も含め、他にも論点がこれからだと思いますが、全体の最終レポートをどういうイメージでするかですけど、事務局のご苦労もあるんですが、あまり分厚いものだと、余計だれも見ないレポートになっちゃうんで、できるだけ簡潔にまとめたほうがいいのかなというイメージを私は持っているんです。そうしますと、1のバックグラウンドとか、それから、2の大学を活用する意義となると、もちろん大学に特化した意義づけもあるんでしょうが、他の分野での国際協力の必要性とか意義づけというのと、かなり共通する部分もあるんじゃないかと思うんですね。そうすると、レポートをまとめるときに、いわばそれは前書きかどこかで幾らか書けばいいわけで、大学についての、あるいは初中についての、文化やスポーツについてのという、個別にそういう能書きを長くすると、かえって読みにくくなるかなという気がいたしておりますが、それは全体、まとめ方、これだけじゃなくて、他の部分をまとめてからでございましょうから、お任せいたします。
 それから、大学で、皆さん方いろいろご苦労されていらっしゃるんですけど、多分大学というのは国際的にも知の拠点ではあるわけですが、国際協力というと、ODAで時々、変にやっかみだとか、いろんな問題が起きますように、企業戦略で乗り出すと、やっぱり痛くもない腹を探られるところがありますが、大学の先生方というのは基本的には、キューリオシティー・オリエンティドで国益とかなんとかから離れたニュートラルな存在というのがありますから、わりとコンタクトしやすいというメリットがあるんだと思うんですね。
 それと、白石先生のペーパーを見せていただきますと、従来の伝統的な大学の役割ということからすれば、何か余計なことをしているという意識が大学人の中にかなりあると思いますので、できるだけ本来の教育研究に結びつけるほかに、ノブレス・オブリージェといいましょうか、ある程度、日本がここまでになった中で、大学人としても途上国への支援に、知の拠点と誇るんであれば、若干そういう協力が義務だよという、言い方が難しいんですけれども、大学の立場として、余計なことをしているんじゃなくて、ある部分はやる必要があるんだよということを、何らかの形でそろそろ打ち出す必要があるのかなという気がいたしました。
 といいますのは、昔の記憶なんですが、大変以前に、永井大臣のころに、永井大臣のアメリカのお友達がサバティカルリーブでいらっしゃいまして、ご夫婦で、日本でどこか教鞭をとるようなところがないかというようなことだったんです。その際に、略歴といいますか、自分はこういう者だという、オハイオ大学の先生の履歴書といいますか、能書きを見たらびっくりしたのは、日本人と違って、3分の1は自分の研究業績なんですね。どういう論文を書いた、どういう研究をしている。あとの3分の1は、ご自分の学生時代の活動なんです。何ていいましたっけ、同窓会の何とかクラブに入っていたとか、ラグビーでどういう試合に出たとか、全く学問と関係ないことでございます。あとの3分の1が、実は、地域でこんな活動をしているということだったんですね、ボーイスカウトを指導しているとか。
 日本の学者の伝統的な価値基準と違って、アメリカでのステータスというのは、単に論文だけではない、そういう地域貢献といいますか、ごく普通に地域社会の一員としてどういうことをやっているかというのが、義務というか役割というか、当たり前のようになっているというのでびっくりしたことがありますけど、この国際協力というのも、日本がこれだけの国になった以上、大学だけじゃなくて、日本国民全体で、ある程度、オブリゲーションはあるのかなという気が、私、かねがねしているものですから、どういう言い方をするかはあるんですけど、そういう個人的な感想を持ちました。

【木村座長】
 はい、ありがとうございました。
 いかがでございましょうか。どうぞ、荒木さん。

【荒木委員】
 私のイメージですけれども、知の活用といった場合、ここに出てくるのは、ODAに反映させるための知の活用だと思いますが、我が国全体の知の活用は、もっと国際的に幅広く活用していくという道を示していく必要があると思う。例えば、二国間援助ではODA、多国間援助では国際機関、あるいは世界銀行等々、たくさんあります。例えば世界銀行ジャパンファンドというのがありまして、そこに個人で有名な人たちが登録して、いろいろ仕事をしているんですけれども、そういう分野とか、あるいは場合によっては、企業、中進国の需要というのもあるんじゃないかと思います。大学間協力もありますけれども、物によっては、科学技術等々になればなるほど、企業と連携して、あるいは途上国でいろんな知的な貢献、ある意味で知的ビジネスを展開することもできるんじゃないかということで、知の活用の場面をあまり狭くせずに、もう少し広げておいたほうが、未来的な展望としては非常にいいんじゃないかということを感じております。
 したがって、そういう観点からすると、サポートセンターももう少し、例えばコンサルタント機能にしても、我が国のODAのみならず、国際的な仕事、つまり、世界銀行等も含めたもっと広い意味での、知を活用できる道を開いていく、そういう意味の機能、つまり「知のマーケット」を扱うコンサル機能を持たすなどの展望が、イメージとしては非常に狭められているような感じがしてなりません。
 以上です。

【木村座長】
 はい、ありがとうございました。
 ほかにございませんでしょうか。どうぞ、弓削さん。

【弓削委員】
 はい、ありがとうございます。今の荒木さんのコメントと関連することなんですが、国際協力分野での日本からの発信ということを考えると、知の活用を広い意味でとらえることも重要だと思います。
 資料6の最後のページに、応用研究に必要な資金の確保、事例1、事例2という途上国の現場での応用と支援の例として、環境管理や都市計画が挙げられていますが、これらは非常に重要な部分だと思います。このような個別のプロジェクト、あるいは個別のセクター、または技術面での途上国との協力はとても重要だと思いますが、それと同時に、もう少しマクロな面での開発援助や国際協力についての研究を、途上国の大学または研究機関と一緒にやるということも大事だと思います。このような研究にも2つの面があり、援助の理念ですとか、援助の概念というサブスタンスの部分での研究、それからもう一つは、援助の方式やアプローチ、援助行政のモダリティーというような、やり方の課題があります。これらの研究を途上国と一緒にやることによって、ドナーの観点に加えて途上国の援助を受ける側の観点の両方をとらえることができる。そうすることによって、よりバランスのとれた見方、研究、調査、そして、より信憑性の高いものが結果として出てくるということになると思います。
 そこで出てきた結果を日本が、援助大国、ODA大国として世界に発信していくということが重要です。前回も申し上げたんですが、国際社会での援助潮流のリーダーシップを日本がとるということはできることだし、もっとやってもいいと思うんですよね。今までのODAの経験ですとか、途上国の大学やシンクタンクなどとの協力関係やネットワークを生かして、世界へ発信していく。資料6の事例と関係していることですが、少しとらえ方を大きくしてもっといろいろとできるのではないかと思いました。
 ありがとうございます。

【木村座長】
 はい、ありがとうございました。
 どうぞ、渡辺先生。

【渡辺委員】
 大学間ネットワークについてでありますが、お話を伺っていると、どうも開発協力のための大学間の研究ネットワークといいますか、研究のコンソーシアムというふうなイメージで語られているような気がするんですね。もちろんそのことは大変大事なことであると思いますが、それはもちろん前提ですが、大学に身を置いている、特に私立大学の小さな大学に身を置いている人間からすると、開発協力のために人間が、教員が、研究者が外へ出ていく、派遣ですね、こういった場合、どうしても大きな問題になるのは、そもそも人員が不足しているということなんですよね。協力はしたいんだけれども、出ていってもらったんでは、大学のほうが空洞化してしまうという問題があります。
 そこで、大学間の、幾つかの大学でコンソーシアムをつくっていって、そして、出た人間は、そのコンソーシアムの間でお互いに補い合うような、そういうやり方。そのためにバジェッタリーなサポートをしてくれるというふうな機能をこのサポートセンターなんかが持ってくれたら、大変ありがたいと思います。そうでないと、研究者、教員が外へ出ていくことは、インセンティブじゃなく、ディスインセンティブになりかねないですね。「何だ、あのやろう」という感じになってしまうんですね、残った人に労働が増えてまいりますから。ここのところは、よほど注意しなければならない点じゃないかと思うんです。それは国公立だって、独法化して、そういう傾向がだんだん強まってくるんじゃないかと思うんです。サポートというのは、えらく下世話に評価して申しわけないんですが、サポートの重要な一部がそういうところにありはしまいか、そういう感じが一つします。
 全く別の話ですが、今、弓削さんがおっしゃったことに触発されて申し上げるんですが、内外の大学間ネットワークと言った場合、外の大学とのネットワークをどうするかというのは非常に重要なテーマに私はなってくるだろうと、今後なっていくだろうと思うんですね。例えばということで申し上げれば、インドチャイナの森林破壊、これをどう修復するかという問題がある。その場合、日本はそのためのノウハウも持っていないわけですけれども、タイは豊富に持っていると。で、タイがインドチャイナの植林計画に、積極的にタイの研究機関が、大学がやるという場合、日本の大学とタイの大学が協力してそれをやるとか、あるいは熱帯農業、熱帯医学等々、日本の大学、日本の研究機関が比較優位を持っていないけれども、他のアジアの国々が持っているものがあった場合、そういう大学間のコンソーシアムで第三国に協力するというふうなことですね。大学間ネットワークと言った場合、内外の「外」をどこに設定するかというのはかなり重要なテーマだというふうに、僕は経験等を通じて実感しておりますけれども、差し当たりその2つを申し上げます。

【木村座長】
 はい、ありがとうございました。
 ほかに。どうぞ、廣里さん。

【廣里委員】
 今、弓削先生と渡辺先生が言及なさったことにも関連すると思うのですが、資料の6で具体的に応用研究に必要な資金の確保案というのを拝見しまして、これがODA予算ということで、ODAの供与が可能な低所得国だけに限るのかどうかということです。私のイメージとしては、もう少し広い活動範囲という理解をこの案から受けまして、いわゆる非ODA予算でもこういった資金を確保なさるというイメージを持っていいのかどうかを確認したいと思います。と言いますのは、中進国がODAを卒業していくと、そういったODAの対象国として制約とか限界が生じることが懸念されるんじゃないかと思います。
 また目標として、研究成果の社会への還元による国民の理解促進とか、国際的な知名度向上を図るということを拝見しておりますが、これは、国際協力という枠組みとか文脈で実施されるのであれば、こういった大学による国際活動が、従来の国際共同研究事業とどのように異なるのかという特徴をアピールすることが大切じゃないかと思います。と言いますのは、前回の懇談会で、国際協力における拠点システム構築事業で牟田先生が言及された報告の中で、日本の教育経験は集約されたのですけれど、実際の国際協力にこれから生かしていくのが今後の課題というご指摘がありまして、私も、途上国の教育開発とか改革の方向性や戦略に、そういった拠点システム構築の方向性を合致させていくということで、実際の活用に結びつけていけるのではという点を指摘させていただきました。資金の確保案も、研究成果を、いかに実際の途上国自身、あるいは日本を含む援助機関によって活用されるのかということがポイントになってくると思いますが、その点、どのような戦略みたいなものを想定なさっているのかを確認させていただきたいと思いました。

【木村座長】
 はい、ありがとうございました。その辺どうですか、事務局。

【大山国際協力政策室長】
 1点目のほうでございますけれども、研究の予算のことでございます。その辺、具体的にどういう姿にするかは、まさにこれから細かい点は詰めていかないといけないところかと思っているんですが、可能性としては、非ODAの予算ということで学術研究のお金として確保していって、低所得国に限らず、もう少し広い範囲でということもあり得るかなとは思っておりますが、その辺、ちょっとこれから、具体のところは調整というか、詰めていかないといけないところかなと考えているところでございます。

【木村座長】
 どうぞ、千野さん。

【千野委員】
 私は大学の現場にいないので、あるいは誤解もあるかもしれませんが、外から見ると、やはり大学間格差も、こういった知の活用に関しても生まれてきているのではないかなと思うんですね。そうすると、もちろん、できるところがやればいいという考え方もある一方、日本として発信していくには、できる限りたくさんの大学がそういうところに組み込まれていくことが望ましいのではないかと思うんです。で、そういう場合に、先ほど渡辺先生がおっしゃいましたけれども、人員とか力量とか、そういうところをも巻き込んでいくための仕組みというのを、1つはコンソーシアムということもあるかと思うんですけれども、それを意識的にやはりつくらないと、なかなかできないのではないかと思うんです。ですから、そういう配慮というか仕掛けというものを、ぜひとも考えていく必要があるのではないかなと思います。
 以上です。

【木村座長】
 はい、ありがとうございます。
 どうぞ、片山さん。

【片山委員】
 私も大学人ではないので、具体的な大学の制度とか、あるいは、先生方のお持ちになっていらっしゃるご苦労とかいうのはよくわからないところがありますけれども、きょうのこのプレゼンを聞いていまして、私、イメージがまたちょっと混乱しているので、整理をさせていただきたいと思います。前回もそうですけれども、大学が国際協力にかかわるということは、基本的にはゴー、そういう方向で考えようと。そこで何が問題なのかを整理してみよう、何が改善点なのかを考えてみようという流れだったと思うのです。その流れは基本的に正しいと思っているのです。
 で、きょうのお話の前半のところで、大学が持っている研究だとか教育、あるいは知の蓄積、そういうものを国際的に貢献していこうと、これも正しいと思います。それをもっともっと、弓削さんがおっしゃったみたいに、グローバルな中で発揮できるようにしていく。そのためのシステムや仕組みが必要だということも、そこまではいいのですね。その先がどうなるのかということで、つまり、大学が持っている研究だとか教育というところを生かした国際協力でいいのか、もう一つは、きょうのこの発表で言いますと、例えば環境の問題とか、いろいろな社会の具体的な問題に大学が入っていくということになると、かなり大きなプロジェクト、あるいは事業の実施になっていくわけですね。小さい教育支援の事業であれば、比較的規模が小さく大学単位、あるいはコンソーシアムのレベルでも、ある国の教育制度について、初等教育についての改善ですとか、それを受けてやってみる、実験的にやってみて、その成果を発表する、提言をするというのはわかるのです。けれども大学自体が事業を受け入れて、かなり大型なプロジェクトをやるというところまで考えているのかどうかが、ちょっと私はこんがらがってきたのです。
 といいますのは、きょういただいたこの6番で見ると、発展期は数億から数十億規模の事業を想定しているということになりますと、これは大学の知的なレベルでの貢献、提言というところにとどまらないで、かなり具体的な事業を実施していくことになります。そうしますと相当の人員、これは大学の人員だけじゃ足りないというふうに思いますし、かなりロジとか、いろんな問題が出てくるわけですね、現地の政府とのことだとか、地方政府との関係だとか。知的な分野だけではなくて、かなりプラクティカルな経験のある人がいないと、事業としては実施していかれないのではないかと思うのですね。その辺が、今回の大学の国際協力というのがどの辺をターゲットにして、どこまでを一応見ているのかというのが、ちょっとこんがらがってきている感じはします。その辺がクリアになれば幸いだと思っているのですけれども。

【大山国際協力政策室長】
 お手元の資料6の5ページをごらんになってのご指摘かと存じます。まさに先生、ここまではご理解いただけるというところ、前提としては、大学の研究教育のポテンシャルを生かした国際協力をもっとやりやすくしていきましょうという問題意識に立っているところでございます。それで、今回、まさにそういうことが活動できるためのサポートセンターのあり方ですとか、現在こういう資金形態がないので、そこの予算を措置していきたいというあたりですね、ぜひご議論いただきたいと思っております。
 ただ、大学によってさまざまな取り組みというのはあり得るわけでございまして、大学さんによっては、そういう大規模なものをやっていきたい、やっていけるというところもあるわけでございますので、その辺は大学さんのそれぞれのご事情、状況によるという部分もあると思いますので、すべての大学にそれを強制するということではないというふうに考えております。それは、それぞれの大学さんがそれぞれの大学さんらしさ、ポテンシャルなりリソースなりを生かして、主体的に活動できるためのサポートということで考えておりますので、必ずしも、すべての大学がそういう大規模なプロジェクトを目指すことをよしとしているわけではないという理解で考えております。そういうことをやりたいというところは、もちろんさらに展開していただければよろしいかと思うんですけれども、あくまで主眼は、それぞれのポテンシャルを生かした形での活動をしやすくというイメージで考えております。

【片山委員】
 それをサポートするサポートセンターを相当、予算規模なり人員の面でも、拡充といいましょうか、いろんな大学のニーズに合うサポートをしていくためには、さっき先生おっしゃったように、中間支援というよりももっと、かなり大がかりなものにしないと難しいのかなという気がします。

【大山国際協力政策室長】
 その点も多分2つ議論があって、まず、現実的な線で、近い将来においてどこまで何をやれるかという点と、理想的な将来像として、どういうものが理想像、何年か、5年後、10年後になるかもしれないんですけれども、何が期待されるかという理想像の部分と、多分2つあるのかと思いまして、この懇談会では、よろしければ、その両方のご意見をいただければありがたいというふうに考えております。

【木村座長】
 はい、ありがとうございます。
 どうぞ、工藤さん。

【工藤(高)委員】
 片山さんの今の発言に絡んで申し上げると、タイの例ですが、タイのシリントン王女が係っている工科大学についてです。SIIT、シリントン・インターナショナル・インスティテュートオブテクノロジーという大学なんですけど、タイに対する技術移転とエンジニア育成を目的として設立されたものです。そもそもタイ側には土地は用意しているが、お金がないということで、日本の経済界に協力を仰いで、経団連がお金を集めて作りました。10数年前ですが8億円募金しました。これが1つの例で、十億の単位で建物をつくったり、その後の運営費をサポートするような案件はやっぱりあるわけですよね。おそらく、今後いろんな国から大学を作ってほしいというリクエストがタイのように出てくるだろうと思います。そうすると、どこがそれをサポートするかがポイントとなる。今後そういう広義の教育協力というんでしょうかね、学校を建ててあげるようなこともあり得べしと思いますし、それに教授を日本から派遣する、かなりのコースを持つとなると、それなりの資金も必要でしょうから、発展期には数億、数十億規模の事業も出てくる可能性があるんじゃないかなと感じました。
 もう一つ申し上げたいのは、我が国の大学等が有する知の活用について資料第5の中の、2の(3)で、ODA戦略の中での大学の位置づけの明確化と書かれてあるのを見て、「あれっ」と思ったんですね。というのも、今まで、ODAのプレーヤーとして、おそらく大学、あるいは大学の先生方というのは、頭になかったのかと思いました。つまり、ODAの企画・立案は行政がやればいいし、実施機関があればいいし、また、その担い手は企業であり、NGOも参入してきました。多分大学というのは、担い手として大きな期待はなかったのかと思いました。でも、今後は、先ほども弓削さんもおっしゃいましたし、前回の会議で私も申し上げましたけど、ODA大国である日本からのメッセージを発信する、あるいは世界の開発分野で日本がリードすることが求められるので、やはり大学の先生方の知見というのを大いに活用する必要があるだろうと思います。
 前回、牟田先生がおっしゃっていましたけれども、今までは大学の先生がボランティアで国際協力に携わったというので、大学が国際化の中で一番おくれていると私は申し上げたんです。それが大学側に問題があるのか、あるいは、お金がないからできないのか、もしお金の面ということであるならば、ODAをもっと有効活用すべきだと思います。従って大学の先生方も、ODAを担い手として、プレーヤーとして、どんどん前面に出ていただきたいなと思います。資料5の中でODA戦略の中での大学の位置づけの明確化と書いてあるのを見て、まさにその通りだと思います。大学の先生方を、もう少しODAにインボルブするため、インセンティブを与えるようにすべきだと思いました。

【木村座長】
 はい、どうぞ、荒木さん。

【荒木委員】
 大学、先生方の役割というのは、これまでもあったんですよ。プレーヤーとして重要な役割を果たしてこられたんですけれども、それは、いわゆる実施機関との関係から言うと、一本釣りのような形で、一本一本プレーヤーとしての先生を釣っていったといえます。で、大学として、組織体として、ODAに向かってどういうような対応をしていくかという、仕組みを考える必要があります。先ほど渡辺先生がおっしゃったように、一本釣りに会って、一人欠けたら後釜をどうするかということもあって、大学側が非常にネガティブになってくる。
 ある東大医学部の先生が、十何年前ですけど、大学とJICA(ジャイカ)は協定を結んで、契約を結んでもらえないかと言い出したことがありました。それが可能になると、ある一定の割合でプレーヤーとしての先生を次々と送り出していくことができる。一人のプレーヤーを派遣すると、次の担い手、その次の担い手を大学で組織的、計画的に養成することができるということです。組織対個人じゃなくて、協力団体と大学との協力、つまり契約によって計画的に人材を育成するという「知」の提供の話です。
 そもそもを言うと、サポートセンターは、そういう人も含めて、大学のそういう専門、いわゆる知を売るためののマネジャーというか、そういうスタッフを養成する、そういう意味のところもサポートセンターがやるべきじゃないかという議論があったんですよね。ですから、まさにおっしゃるように、ODA戦略の中で大学の位置づけというのは、今までは個人の位置づけであって、やっぱり大学の位置づけをやるべきだというのは全く同感だと思いました。

【木村座長】
 工藤さん、どうぞ。

【工藤(智)委員】
 手短かに3点ほど申し上げたいんですが、先ほど渡辺先生がおっしゃったように、多分、国際協力をやっておられる方というのは、たまたま研究などの延長線上でご熱心にやっている方もいれば、いわば、しようがなくおつき合いしてやっている方もいる。いずれにしても、全体としてクリティカルマスになるほど多くはないというのは確かでございますから、サポートセンターの機能充実は大変大事なことだと思うんですね。ただ、その機能充実のあり方として、1カ所へ全部集められればいいですけど、多分そうもいかないんで、今、こういうインターネットだとかの時代ですから、サブセンターといいますか、全国の大学とか研究所、あるいはJICA(ジャイカ)やJBIC(ジェイビック)なども含めて、関係機関とうまく連携をとりながら、どこでボタンを押してもすべてがわかるというような仕組みでの機能充実も必要なのかなという気がいたしました。
 それから第2点目は、それに関連してでもあるんですけれども、何をやるにも多分、大学人というのは個人の世界ですから、個人の能力と好奇心を追求することを中心にやりますけれども、国際協力の場面は、個人でできる場合もありましょうけど、ニーズが多様でございますから、いろんな分野の方々のご協力のほうがより効果的な場合も多いと思うんですね。そのときに、サポートセンターでのお見合いといいますか、供給と需要をうまくくっつける役割をするときに、それぞれの学内で多様な方々をくっつけられればいいですけど、そうじゃないと、国内の他の大学とくっつける、あるいは、渡辺先生がおっしゃったように、国外の関係者も加えて、そういういろんな分野の方々をコーディネートする機能なり、協力体制なりも必要なのかなという気がいたしました。
 3つ目は、先ほどの資料6の5ページで、ぎらぎらっと書いてあるところでございますけれども、従来のいろんな助成措置も含めて、各機関、関係方面でいろんな助成、あるいは支援措置を講じている中で、足りない部分はやはり今後充実しなきゃいけないと思いますが、一番大事なのは受け手の側だと思うんです。協力をする主体である大学関係者も受け手でございますし、相手国の関係者も受け手でございますから、これが文科省の援助だ、あるいはJICA(ジャイカ)、JBIC(ジェイビック)の援助だというのは、受益者からすれば全く関係ないわけで、既存のいろんな支援措置をうまく組み合わせながら、足りないところをぜひ充実してほしいと思いますし、場合によってはそれぞれが相乗りして、重層的に支援することもあっていいんだと思います。
 それから、この図ですと、黎明期と発展期の間あたりが足りないかなというお話でございましたが、私の聞き及んでいる話、事例を1つ申し上げますと、これだけじゃなくて、黎明期でも足りない部分があるんじゃないかという気がいたします。その事例といいますのが、九州工業大学に生命体工学研究科という大学院だけの組織があるんですが、そこの先生がマレーシアと協力していまして、マレーシアはご承知のようにヤシの産地でございますから、パームオイルを随分産出しているんですね。ところが、そのパームオイルを抽出した後の廃液というんですか、それが田んぼみたいなところに流しっ放しで、メタンガスが大発生して、地球温暖化にも相当なゆゆしき事態です。それを、せっかくそこからメタンガスが出ますから、エネルギー源として活用するほかに、もうちょっとクリーンな処理方法があるんじゃないかというんで、ちょうど生命体工学ですから、バイオとエンジニアリングの競合する、たまたまぴったりした研究テーマで、先方の大学と協力して始められたんです。
 結果は、先方の大学ももちろん乗り気ですし、向こうでのパームオイルの大企業がスポンサーになってお金を出しながら、かつ、そういう装置をどうするかといえば、日本の某企業がいろいろ工夫してつくったりという、どんどん広がって、今定着しているんですけど、その立ち上げを聞いてみますと、学長裁量経費でやっているんですね。もちろん科研費とかアプライしたかもしれませんが、残念ながら目が行き届かないというか、審査で落ちた中でもなかなか有用なものもあるわけで、既存の科研費などの運用を改善するという手もありますけれども、学長裁量経費というのはほかにももっと使いでがある中で出されたようですが、この黎明期、立ち上げで、もうちょっと別の支援措置があればということもあったのかなという気がいたしました。

【木村座長】
 はい、ありがとうございました。
 じゃ、渡辺先生、お願いします。

【渡辺委員】
 もう諸先生方がおっしゃっているので、繰り返しになるかもしれませんが、要するにサポートセンターの機能でありますが、いろんな重層的な機能があり得るとは思いますが、やっぱり一番重要なことは、大学の研究を開発協力に向けて組成していくという、つまり、オーガナイザーとしての機能がどうしても必要だろうと思うんですね。荒木さんがおっしゃったように、今までも大学人、この開発協力にいろんな形で携わってきたわけですけど、おっしゃるように一本釣りであったわけですね。それでは困るというわけですね。やはりオーガナイザー的な機能を持ってほしいと。
 工藤先生がおっしゃったように、やはり研究者というのは多分に個人的に仕事をしている場合が多くて、自分のやっている研究というものが、ほんとうに開発途上国の協力に寄与し得るものかどうかという自覚すらない場合もあり得るわけですよね。これを道づけをしてやるということは必要だろうと思うんです。先々週出させてもらったとき、九州大学、名古屋大学の法制度支援についての協力、これ、非常に感銘深くお話を伺ったんですけれども、なぜそういうプロジェクトが出発したのか、私、残念ながらお伺いしていないんですけれども、おそらくは、想像するに、オーガナイザーがどなたかいて、そして、こういういいプロジェクトが出発したんだろうと思います。
 そうすると、サポートセンターには、くどいようですが、オーガナイザーになってほしい、各プロジェクトの。そうなると、サポートセンター自身に開発途上国についての専門的知識を持った人をやっぱり急募しないと、そういう機能が果たせないということにもなってくるだろうと思うんですね。いろんな機能があると思いますけど、私は、本格的に大学の知を協力のために生かすというためには、そのぐらいの精神と財力を持ってやってほしいというふうに思いますけれども。

【木村座長】
 はい、ありがとうございました。
 ほかに。どうぞ、内海先生。

【内海委員】
 先ほど、今までのやりかたが一本釣り的だったというご指摘がありました。それは前々回ですか、JICA(ジャイカ)の加藤部長がおっしゃっていましたが、大学の教員、研究者の比較優位点は何かというと、代替不可能性にあるかと思います。つまり、その人しかできない役割というのがある。そこに着目した援助機関やコンサルタントがその人にアプローチするというやり方をしてきたわけですから、大学が組織として、果たして適切な人を当てはめるようなオーガナイザーとしての機能を果たし得るかというと、非常に疑問です。例えば渡辺先生は学長先生ですが、すべての教員が何をやっているか、全部知っているわけではないです。そうなりますと、やはり個人的なネットワークが非常に重要で、プロジェクトと教員をいかにオーガナイズするかは大学としても難しいわけです。ですからサポートセンターの強化の方向性として、先ほど先生がおっしゃったような、その中にそういうネットワークを持った人を抱え込むことは非常に重要だと私も思います。
 そして、最初に私が申しましたサポートセンターそのものが、将来的にはプロジェクトを受注できるようになるべきだというのは、要するに、厚生労働省の国際医療協力センターのように、そこがプロジェクトを受注した形で、その配下や関係機関と一緒にプロジェクトを実施していくような形にしませんと、一人一人の代替可能性というか、特殊な技能を持った人たちをうまくまとめていくのは非常に難しいだろうと私は思うのです。ですから、そういう意味で、今、渡辺先生がおっしゃったようなことを、短期的にできるだけ進めて、長期的にはもう少し、組織としてプロジェクトを受注できるような形が望ましいのではないかと思っております。

【木村座長】
 はい、ありがとうございました。
 ほかにございませんか。どうぞ、加藤さん。

【加藤部長(JICA(ジャイカ))】
 ありがとうございます。
 3点ほどあるんですけど、1つは、きょうご提案いただいているこの資金の提供という話なんですけれども、下手をすると、個別のプロジェクトのばらまきに終わるリスクがあると思うんですね。で、私、JICA(ジャイカ)に奉仕をして、もう二十数年たちまして、ODAの1つの反省は、個別のプロジェクトが終わったときに跡形もなくなるというんじゃなくて、インスティテューションをつくるような協力をやっぱりやってくるべきだったと思うんですけれども、それをどういう形でインスティテューショナライズするのかと、そういう協力にこのような新しい試みがどのように役立っていくのかということの検証が必要だろうというのが1点です。
 2点目は、こういう形で各大学の発意を促すようなシステムをつくることはいいことだと思うんですが、おのずと資金というのは限界があって、何でもありでいいんだろうかという気もいたします。ナノテクあり、バイオあり、建築あり、いいんですけれども、つまり、渡辺先生の言葉をおかりすると、オーガナイズする力が必要だと。で、何に向かってオーガナイズするんだという、向かっての部分が必要ではないかと。これはODAの政策の問題かもしれませんけれども、とにかく途上国に、あるいは国際的に知の発信をしさえすればいいんですということではなくて、何に向かってという部分が必要ではないかというのが第2点目です。
 3点目、国際的な協力における日本のリーダーシップというご発言がありましたけれども、残念ながら、最近、日本のODAは額も下がってきておりまして、世界第2位ということではありますけれども、アメリカの半分近くになってきていると。3位、4位から猛烈な追い上げを受けていて、いずれ、2位という地位を明け渡すかもしれないということですから、かつてのODA大国だったというイメージが我々の間にひょっとして残っているとすれば、そこは、今のODAにおける日本というのはどういうところにあって、どういう過去の反省に基づいて、我々は巻き返しを図ろうとしているのかというところを考える必要があるんじゃないかと、私は常日ごろ考えています。これは、すいません、高橋参事官が外務省としてお考えいただいていることだと思いますけれども、私どもはそういうふうに、やっぱり今のODAというのは、本来、JICA(ジャイカ)としての反省としては、過去にやるべきことをやってこなかったことを、今どういうふうにリカバリーするかという反省に基づいて努力をしていくべき時期じゃないかと、私自身は実は思っておる次第でございます。
 以上、3点申し上げたいと思います。

【木村座長】
 ありがとうございました。
 高橋さん、何かありますか。

【高橋参事官(外務省)】
 私も今、加藤部長がおっしゃったことに非常に近い感じを持つんですけれども、ODAに対していろんな反省がある中で、顔の見える援助の代替性ということをよく言われます。顔の見える援助といいましても、いろんな定義があるわけですが、日本から持っていった機材やハードに日の丸がついていれば、顔の見える援助ということではもちろんございません。やはり日本人でなくては、なし得ないような知的な付加価値をどういうふうにつけるかと。それによって、なるほど日本の援助というのはこういうことをやってくれた、日本人がこういうふうに我々を助けてくれたということが残る。できれば、今、加藤部長がおっしゃったように、1つのプロジェクトが終わったら雲散霧消するのではなくて、その国に根づいた制度、あるいはやり方として残るというような援助をやっていく上で、大学が持っておられる知の資産というものをどういうふうに生かすかということは大変大事なテーマだろうと思っております。  これも加藤部長がおっしゃったように、予算上の制約等々、難しいことはございますけれども、すそ野は私は広くていいと思うんですね。大学がおやりになっているいろんな研究の中で、もちろんすべてが国際協力に直ちに役立つわけではございませんし、当然のことながら、そのときそのときで、あるいは相手国によって、こういうセクターが優先度が高い、あるいはこういう協力をしてほしいということはあるわけですけれども、広いすそ野の中でいろんなメニューを、何ていうんでしょうか、テーラーメードできるような、そういう需要と供給の間をつなぐ機能みたいなものをサポートセンターがお持ちになって、それがJICA(ジャイカ)とうまく協力できるような形に持っていくと。
 先ほど、サポートセンターがプロジェクト自体を受注できるようになるべきだというお話がございました。当然、大学独自で大きなプロジェクトをやることが難しいのは全くそのとおりだと思いますけれども、他方で、サポートセンターがありとあらゆるプロジェクトをすべて受注できるようなものになれば、それはJICA(ジャイカ)さんと同じ組織がもう一つできるような話になってしまうわけですから、そういうわけにはなかなかいかない。そこはやはり、技術協力の担い手であるJICA(ジャイカ)さんと、大学の持っておられる知的なリソースをJICA(ジャイカ)さんにうまくつないでいただけるサポートセンターの機能が、うまく役割分担できればいいんじゃないかというふうに思います。
 どうも失礼いたしました。

【木村座長】
 はい、ありがとうございました。
 ほかに何かございませんでしょうか。よろしゅうございますか。どうぞ。

【工藤(智)委員】
 白石先生のペーパーに触発されて思うんですけど、国際協力が余計なことだと思われていることがあるようですが、意識改革といいますか、それをある程度払拭するためにいろんな手だてがあるんだと思いますけれども、このまとめの素案のほうにも書いてありますように、大学人の教員評価というのが大事だと思います。設置審での審査の仕組みとか、随分変わってきているんですけど、実際はやはり、大勢として、論文の数という研究業績が中心になっている面があるように思います。やはりそこは、今、法律的にも認証評価という仕組みが出来ましたから、大学評価をするに当たって、それぞれの評価ポイントとして、教員評価について、研究だけじゃなくて、教育、それから、学内マネジメントということ、さらには国際協力といいますか、地域でのボランティアも含めて、まあ、ボランティアという言葉がよくないのかもしれませんが、自分の知を生かしての外への貢献といいますか、社会あるいは国、世界の構成員の1人としてどういうことをやっているかというのも大変大事な教員評価の側面だというのをどこかでメッセージを出しながら、大学人を鼓舞するような仕掛けも必要なのかなという気がいたしました。

【木村座長】
 はい、ありがとうございました。
 それでは、よろしゅうございましょうか。もう既に、白石ペーパーに関連したような話が出ておりまして、先生がお話しされることがあまりなくなってしまったのではないかと思いますが、資料の2を先生に簡単にご説明いただいて、また、ひとしきり議論をしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【白石委員】
 この委員になりながら、きょうまで一度も出ておりませんで、申しわけありませんでした。さっきから、発言すべきかどうかいろいろ迷いながら、じっと出番を待っていたような状態です。お手元にございますのは、第2回目のときに、出席できないということもあって準備したものですが、きょうは、こういうものを書いた裏にあります考え方から、少しお話しさせていただきたいと思います。
 当たり前のことですけれども、大学には非常にさまざまの知識と技術と能力を持った人がいて、それは別に大学だけではなく、企業にも、政府にもいるわけですが、大学の場合には、企業と違って、そういう人たちが、それぞれネットワーク的に外の世界とつながっているけれども、大学という組織としてはもちろん、多くの場合には、大学院の研究科、学部、あるいはもっと下の学科の単位としても、組織としては動かない、そういうばらばらの人たちの集まりだということを注意しておくことが重要と思います。
 そういう中で、大学を国際協力にどう巻き込んでいくか、これは大学改革のまさに一環であります。これをまず申し上げた上で、総論的に、資料5の2に相当することについて4点、それから各論的に、資料5の3に相当するところで3点申し上げたいと思います。
 まず最初に、総論的には4点ございます。1つは、大学を巻き込んだ形の教育協力、あるいは国際的な教育協力において、既存の大学を前提にして、その上で、大学として何をするかを考えるのではだめだということです。協力をするにはこういうシステムを作るとよい、そういうアイデアがあって、その上で、それでは、大学のこのシステムはこう変えたほうがよい、そういう発想が必要だろうということです。
 次に2点目として、教育の問題です。私はもちろん文系の教育のことを考えております。理系の教育の場合には、今でも既に、例えば実験をチームとして行い、大学院生に留学生が入ってくると、その留学生もチームの一員として、オン・ザ・ジョブ・トレーニングの形で訓練を受ける。その意味で、理系には訓練のシステムがあります。しかし、文系には残念ながら、私が知る限りでは、そういうシステムはございません。
 それはどういうことか。例えば、このメモにも書いておりますけれども、大学に入ってきた学生を、100番台、200番台、300番台といったシステマティックなカリキュラムによって教育するシステムはありません。まして、英語でそれを外国人にシステマティックに行って、論文まで書かせるシステム、世界的にどこの大学と比べても、これはすばらしいというシステムは、あるかもしれませんけれども、私は知りません。その意味で、文系の教育については、システマティックな教育をやる必要がある。
 しかも、そこで非常に重要なことは、数が問題だということです。例えば、スハルト時代のインドネシアでは、バークレーマフィアという言葉がございました。どういうことかといいますと、1970年代から80年代にインドネシアの経済政策を担当した人たち、これは、大臣、局長クラスの人たちですが、こういう人たちはほとんど全部アメリカに留学したPh.D、特にバークレーに留学したPh.Dでした。それで、バークレーマフィアという言葉ができた。では、どうしてバークレーマフィアができたか。非常に単純です。1950年代にフォード財団が、450人から600人ぐらいの人たちをアメリカに留学させた。その中から数十人が、バークレーマフィアとしてインドネシアの経済政策を担当するようになった。
 どういうことか。数が力となるということです。ところが日本の大学はどうか。私の大学は今定員が3人足りない、だから留学生を3人受け入れましょう、こういう今の多くの日本の大学の留学生の受け入れ方では、全く話にならない。その意味で、数がこなせる教育、これが非常に重要なポイントです。
 第3番目は研究です。大学の任務は研究と教育にあり、研究者のやっている研究がそのまま途上国、あるいは、受け手にとっても役に立つ、そういう研究ということがよく言われます。しかし、実際には理系は別として、文系、それも経済学、法学以外の文系においては、多分そういうことはほとんどない。研究者にとって第一線の研究というのは一般にかなり狭いものが多く、一方、受け手にとって役に立つものは、もっとはるかに広いものである。したがって、重要なことは、国際協力によって、研究者の問題関心そのものが変わっていく、その結果、研究者が同人から、つまり、せまい専門の世界で仲間内で「あんた、これやれ。私、これやる」みたいなことをやっている世界から大きい世界に成長していく、その上で、実はもっとも重要と思います。その意味で、私は研究に直接つながる交流というのは賛成しません。研究者が成長するようなプロジェクトこそが大事だ、というのが3点目です。
 4番目はポスドクのことです。私が20代だったころに比べますと、今は20代で日本でPh.Dを取って、文系で就職することは不可能です。大体30代の半ばまでは、学振の特別研究員とか、大学の助手で何とか研究者として生き延びて、30代の半ばぐらいになってやっと講師、助教授になっていく。つまり、一世代前に比べると、日本ではポスドクがあふれ始めている。アメリカでもかつて、ポスドクがあふれて、その人たちがコンサルタントなどになって、アメリカのコンサルタントの競争力が強くなったというところがあります。その意味で、日本も今、ポスドクがあふれ始めているわけですから、それを有効活用する。そのことが、彼らが将来、日本の知的な力になっていく上でも重要と思います。
 この4点を総論的に申し上げて、その上で、各論的に3点申し上げます。
 1つは大学の体制づくりということで、これはお手元にお配りしておりますポイントで申しますと、(1)と(2)でございます。そこでのポイントは非常に単純で、やはり、大学にとっても研究者にとっても、インセンティブになるような仕組みをつくらないと、多くの場合、ずうずうしい人が得をする。
 先ほど、渡辺先生がいみじくもおっしゃいましたけれども、研究者のひとりが、例えばJICA(ジャイカ)のコンサルタントなどで外に出ていくと、その間、そのしわ寄せはほかの人にかかってきて、しかも、その人は、外国に行っている間も給料はもらっている。こういうところは制度を変える必要があります。また、教育について、あるまとまった数の人を本当に受け入れるのであれば、受け入れることができるような体制をつくり、それが大学にとっても、教育負担が増える先生にとっても、あるいは事務にとっても利益になるような形にしないと、やはり無理がどこかで生じてしまう。これが1つのポイントであります。
 それから2番目に、知的マーケットをどうつくるかということで、先ほどからサポートセンターの話が随分出ておりまして、それについてとりあえず私が書いておいたのは、ここの(3)でございますが、これを考える上で最近つくづく思うのは、マーケットというのはどうやってできるのかということで、マーケットというのは多分、何か向こうのほうに需要があって、それで、受け手がこっちにいて、需要者と供給者の間がつながったら、それでマーケットができるという、そういう単純な話ではないというのが私の実感です。
 具体的にどういうことかと申しますと、GRIPSの例ですが、この7月、GRIPSでは、タイ政府の依頼を受けて、タイ政府のお金でタイの幹部候補公務員の短期研修を始めます。タイの場合には、すべての公務員が局次長以上に昇進するときには、1年間の公務員研修が義務づけられております。大体、毎年180人の人が1年間の公務員研修を受ける。そのうち成績の優秀な60人が、1週間から2週間、外国に研修に行く。昨年まで、それはイギリスであったり、ドイツであったり、韓国であったり、中国だったけれども、一度も日本には来たことがない。私はたまたまこの1月、タイにいてこれを知りました。それで、どうしてか調べたところ、要するに、日本はコストが高い、そう思い込んでいた。それで、JICA(ジャイカ)と話をして、コスト削減の措置をとり、向こうからも依頼が来ました。
 どういうことか。プロジェクト形成のところで大学が関与することが重要だということです。サポートセンターをつくったら、それでうまくいくという話ではない。
 これは、ほかに幾つも例はございます。例えば、渡辺先生のところと私のところと一緒になってやりますインドネシアの行政官の教育のプロジェクトも、私は、2年以上、インフォーマルに話しております。
 その意味で、知的なマーケットをつくるといったときに必要なことは、サポートセンターとともに、プロジェクト形成のできるプログラムオフィサーを養成することです。幸か不幸か、日本の伝統的な大学のシステムでは、教員と技官と、今では技官とは言わないかもしれませんけれども、技術担当の人、それから事務はいますが、プログラムオフィサーというカテゴリーはない。しかし、プログラムオフィサーというカテゴリーがあって、そこでプロフェッショナルとしてそういう人が育っていけば、そういう人が知的マーケットをつくっていく。
 3番目は、先ほど工藤委員が言っておられたことですけれども、教育というのは、やっぱり相手がいる。それで、相手が何を期待しているのかきちっと理解しないと、大体うまくいかない。その上で、特に大学のことで申しますと、今、日本の国内では競争がどんどん激しくなっておりますけれども、グローバルにも非常に激しくなっているし、アジアの大学も、やはり自分たちの競争力をつけようと非常に努力している。そういう中で、大学の知的貢献といって、日本の大学、あるいは日本の大学の研究者が教えてあげるというのではなく、お互いに一緒になってコンペティティブな大学をつくっていく、そのための能力向上を一緒にやっていく、そういう発想が、非常に重要だと思います。
 特に、そこで私が具体的な経験として痛感しましたのは、ポスドクの養成です。具体的に申しますと、これはJICA(ジャイカ)の支援でインドネシアとやりました日イ経済政策対話ですけれども、これは、日本の大学の研究者6人と、インドネシアの政治家、研究者6人の間の対話です。その下に、政策提言を行う上でのさまざまのスタディーをやる仕組みをつくりました。そこにはポスドクレベルの人に入ってもらって、彼らが、要するに、ポリシースタディーズというのはどういうものかということも勉強できるような場にした。そこで、例えばインドネシアの金融制度改革について、日本で非常に嘱望されている若手のエコノミストがインドネシアの経済制度について勉強する、あるいは、日本の若手の安全保障の専門家が、インドネシアの世論調査機関を立ち上げて、それがインドネシアの政治の予測に非常に役に立つ、そういうことができるようになったわけです。そういう意味で、お互いにメリットになるような人材育成、それから研究インフラの整備ということも、相手の需要をきちっとわかった上でやる必要があると思います。
 少し長くなりましたけれども、以上で私の報告を終わらせていただきます。

【木村座長】
 はい、ありがとうございました。
 いかがでございましょうか。ただいまの白石先生のご意見発表に対して、何かコメントございましたらお願いします。サポートセンターについては、先生のご主張は前半の議論の方向と少し違っておりましたが、その辺いかがでしょうか。どうぞ。

【工藤(智)委員】
 サポートセンターの重要性と白石先生のプレゼンとは、矛盾しないんだと思います。国なりJICA(ジャイカ)なりJBIC(ジェイビック)、どこでもいいんですが、どこかがすべてを統べるとか、進行管理できるわけじゃありませんので、できるところ、大学なり機関がいろいろやられるのは大変結構なことですし、そうはいっても、せっかく国公私、全国でいろんなマンパワーもリソースもあるわけで、それが埋もれていると言っては語弊がありますけれども、活用できないでいるというのは大変もったいない話ですから、しかも、それぞれの大学にはぱらぱら、熱心な先生、おられるにしても、ごく少数ですから、そういう方々をサポートし、エンカレッジして、全体として、ほかの部分とつなげていくという機能は大変大事なことだと思います。
 だから、サポートセンターがすべてを牛耳るとか、進行管理するというイメージじゃなくて、いろんな人と人とのつながり、それから支援機関等のつながり、あるいは相手国のニーズの把握等々をうまくコーディネートするような機能、それから、そのベースとなるところの情報の収集と整理ということじゃないのかなというイメージを持っていますけど。

【木村座長】
 はい、ありがとうございます。
 どうぞ、内海先生。

【内海委員】
 どうもありがとうございました。
 白石先生のお話はサポートセンターではなくて、各大学にプログラムオフィサーがいればいいというご意見だと伺いました。では、一体そのプログラムオフィサーは、だれがどうやって養成するのか、そういうことをやれる人がほんとうにいるのだろうかという疑問を持ちます。教授でもない、事務官でもない、そういう人材が果たして、大学にポストをつくることで得ることができるのか。また、そういう人をどのように養成するのか、だれが養成するのか。途上国のニーズも知っている、JICA(ジャイカ)や外務省の政策も知っている、大学の教員の業績も知っているというような人材はいるのでしょうか。理論的には言えますけれども、実際としては不可能ではないかと、私は思うのでございます。

【木村座長】
 どうぞ。

【白石委員】
 ご質問はもっともだと思います。じゃ、いないかというと、おりますよ。ちょっと具体的に名前を挙げるのはまずいんですけれども、日本の民間のファウンデーションなんかには、そういうことでほとんど一生をかけたような人というのは、数は少ないけれども、おります。それで、そういう人は、まあ、これ、記録に残らないほうがいいかもしれませんが、意外と民間の財団では、年を食うと、不遇なんですね。ですから、もったいない話だと思います。
 それから、そのほかにも、やっぱり日本のODAのこれまでの仕事というのは全くむだじゃないんで、そういうところで実はいっぱい、NGOだとかNPOのところで、あるいはJICA(ジャイカ)なんかでも、そういうことをやってきた人というのはいるんです。だから、全部の、私が言った要件を最初から満たすとは申しませんが、少しそういう頭でプログラムオフィサーをやっていただければ、自己学習の能力のある人というのは、私は日本の社会の中には随分いるんじゃないかと思います。
 それともう一つ、工藤委員のさっき言っておられたことで、これは私も全く同感で、別に矛盾することではございません。ただ、申し上げたいのは、どうしてもサポートセンターに人を置くだけだと、プロジェクト形成みたいなところからインボルブすることというのはできないわけですね。だけど、プログラムオフィサーで、それこそ、何らかの援助案件というのはどうやって形成されるのだろうかということも知っている人が、そういうところで最初から関与しながら、プロジェクトを一緒につくっていくようなシステムが、大学の中に、人としてそういうポストがつくれれば、これはいろんなおもしろいことはできると。で、そこは全く、私は自由競争の世界でいいと思うんですね。このために文科省がお金を出す必要は私はないと思います。むしろ大学の、それこそ学長裁量経費か何かでやればいい話だと思いますが、そうやってうまく成功しますと、それはすごい大きなセンターになりますし、失敗すれば、失敗したまでだと、そういうことだと思います。

【木村座長】
 では、先に千野さんから、その後、弓削さん、お願いします。

【千野委員】
 今、お話を聞きながらの感想なんですけれども、結局これは、大学をいかに活性化するかということの大きな枠組みの中の1つのテーマ、知の活用が大学の、まさに大学というのは知の生産現場であるわけですから、その活用をどうするかという問題、それが、ひいては大学活性化、あるいは大学改革ということになるんだろうなと思います。 そして、サポートセンターの問題に関しても、サポートセンターというのは、文字どおりサポートなんですよね。ですから、大学自体が、つまりサポート、みずからをやるということが大前提としてあるということではないかなと思います。そして、こういった言い方をすると、これは大学だけに限らず、大学の先生にしても、ひいては新聞記者もそうなんですけど、それぞれが皆、自分のネットワークというのを構築して持ってきている。で、それを自分のために使うということが多いわけですけれども、大学の知の活性化のために大学自身にそれを提供し、かつ自分も受けるという、そういうメカニズムというものがそれぞれの大学の中で、理想論的な話になりますけれども、行われていかなければ、幾らサポートセンターをつくっても、それはうまく活用しないのであろうなというふうな感想を持ちました。

【木村座長】
 じゃ、弓削さん、どうぞ。

【弓削委員】
 はい、ありがとうございます。
 今の話の相手の需要を踏まえる必要があるというのは、全くそうだと思いますね、ディマンドベース、ニーズベースでなくてはいけない。その相手というときには、もちろん途上国自身のニーズということは重要であるわけですが、日本も援助国としての日本側のニーズという、その2つがあると思います。
 白石先生のご意見には私も賛成です。フィクサーと言うとちょっと名前が悪いかもしれないのですけれど、プログラムオフィサーは、フィクサー、キャタリスト、コーディネーター的な役割だと捉えています。途上国の問題が非常にたくさんある中で、それらをどういうふうにしてプロジェクトを形成するのか。JICA(ジャイカ)やJBIC(ジェイビック)などがいろいろな案件を発掘しているということは、問題が存在するところで、だれかがそれをプロジェクトという形でまとめている。そのためには、プロジェクト発掘能力、プロジェクト形成能力、プロジェクト化する能力が必要だということですよね。それは必ずしも自分の組織が全部解決法を持っているわけではなくて、どの組織とどの組織を連携させれば、どういう形でプロジェクトが形成されて、その問題に対してだれがどういうことができるのかということで、それが研究活動であったり、コンサルタント的な活動であったりするわけです。連携するためのパートナーをつなげる時にプラスアルファがないと、いい形でつなげて、それがプロジェクト化されない。プロジェクト化されて、そのプロジェクトに日本の大学が協力するという形まで進まなければならないので、サポートセンターの窓口機能、コンサルタント機能、資金の確保、推進などの重要な役割にプラスアルファの知恵がないと、うまくいかないのではないか。援助機関の職員や青年海外協力隊はプロジェクトを発掘しておりますし、大学の中にもそのような人がいて、プロジェクトを形成するというケースも私は見ておりますので、そこのプラスアルファのところをどういうふうに得るかということは重要な課題だと思います。

【木村座長】
 はい、ありがとうございました。
 ほかに。荒木さん、どうぞ。

【荒木委員】
 このサポートセンターですけれども、基本的に、JICA(ジャイカ)が現地、現場主義ということで現地へ入っていまして、現地の事務所にはいろんな日本の大学の知を求める情報が入ってくる。JICA(ジャイカ)とサポートセンターがもっと連携をとって、そして、各大学、物によってはいろんな大学間の連携で1つのプロジェクトを仕立てていくということもサポートセンターの役割だと思います。要するに、大学に関しても現場の情報というのがたくさんあるんです。それが、JICA(ジャイカ)サイドで切れて、大学までつながっていないというケースがあるわけですね。ですから、その辺のところをうまく、JICA(ジャイカ)との連携、現場との連携で、サポートセンターがうまくオーガナイズして、各大学をそれぞれの知の要請に振り向けるという役割は十分あると思います。
 ですから、今、サポートセンターで受注するというのは、私もこれは問題であって、そもそも大学の、つまり国際化というか、自立化というか、それを側面からどうやってサポートできるかということで、当面は、ODA、JICA(ジャイカ)の研修、あるいは派遣等を含めて、いろんなプロジェクトで大学の一本釣りをやっていたのを、大学とJICA(ジャイカ)との間の契約によってやっていく。そうすると、契約を結ぶスタッフ、大学側の人材の養成等も含めて、しっかりとその辺を事務的に固めていく、そういうことを大学側に、必要な人材を教育するための機能をサポートセンターに持たせる必要があります。つまり、大学の先生は個々に知の塊なんですが、その塊の知をどうオーガナイズして、途上国の要請にこたえてアレンジしていくかということがなかなかできない。それはサポートセンターもできない。大学側でやらなきゃならない。最初の段階では、大学のそういう人材を養成する拠点としてサポートセンターがあるんじゃないかというようなことを議論されたわけです。その点をもう一度、原点に戻って考えてみる必要があると思います。

【木村座長】
 はい、ありがとうございました。ほかにご意見ございませんでしょうか。
 今のプログラムオフィサーのことなんですが、欧米の大学に行きますと、例えば国際関係だと、必ずインターナショナルダイレクター、そういう人がいますね。バックグラウンドを聞くと、ほとんどがアカデミシャンですね。何人かの人に、どうしてアカデミシャンが、そういうキャリアを変えたんだと聞いてみたことがありますが、自分の興味だという答えが多いのですが、いろいろ探ってみると、やはりそういうキャリアパスがあるんですね。そこのところが日本との決定的な違いだと思います。
 私は実験屋ですから、イギリスでも実験致しましたが、彼らのテクニシャンのシステムは本当に良いですね。さきほど、我が国の大学の技官の話が出ましたが、幾ら制度をいじってもうまくいかない。しかしヨーロッパではテクニシャン制度というのは確立している。英国の大学も今大変ですが、いまだにフルタイムのリサーチャー1人に対して、0.8人ぐらいのテクニカルサポートがある。私、最初に英国に行ったときに、テクニシャンのスーパーインテンデントと仲よくなったので、どのぐらいの給料をもらっているのかとそれとなく聞いてみたのですが、プロフェッサーよりも少し少ないぐらいの給料は貰っている。そういうパスがありますから、そういうところはやはり人が来るんですね。スカンジナビアでも、相当高い給与をもらえるということですから、とにかくシステムをつくらないと、プログラムオフィサーだとか、インターナショナルダイレクターというのは育っていかないんじゃないかと思っています。
 そういうことから言うと、これまでの国立大学について言えば、公務員制度がある限り、このようなことは絶対無理だと私は思っておりました。だって、ものすごく有能で、英語のかなりできる人が留学生の担当になったとしても、2年ぐらいでいなくなってしまうのですから、どうしようもない。本人は有能であるだけに、ほかのパスへ行こう行こうとする。これはもうどうしようもない。しかし、独立行政法人化されたことによって、国際戦略強化事業などについて大変な数の大学が名乗りを上げてきました。こんなことは今までなかったのですが、国際化のようなことに対して非常に積極的になってきましたから、独立行政法人化したことによって、そういうキャリアパスをつくる可能性が出てきたのではないかという気はしています。何かご意見ございますか。
 もう一つ、資料の7というのがありまして、我々に課せられた課題として、ベーシックエデュケーションについての国際協力のあり方をどうするかというのがあります。これについては時間がなければ、きょうはパスしてもいいという事ですので、パスさせていただいて、次回に回したいと思います。一つ質問があるのですが、先ほどの報告書のことで、工藤さんがおっしゃいましたが、基礎教育についても報告書はつくる必要があるわけですよね。

【大山国際協力政策室長】
 教育協力についてと、それから大学の知の活用というのを、今回の懇談会の論点で掲げさせていただいておりまして。

【木村座長】
 そうしますと、2章立てぐらいで、大学のことと、それからベーシックエデュケーションのことを記述するということになりますか。

【大山国際協力政策室長】
 ベーシックエデュケーションだけではなくて、高等教育とか職業教育協力も含めての教育協力というのが1つの論点で、それを次回、次々回、ご議論賜れればというふうに考えております。

【木村座長】
 わかりました。きょうは時間がなくなりましたので、7の資料についてはパスさせていただいて、次回はここから始めるということにしたいと思います。
 先ほど申し上げましたが、大学の知の問題については時間的な制限がありますので今日で終えざるを得ません。いただきましたご意見、それほどコントラディクトリーなものもありませんでしたので、事務局でまとめて、先ほどの資料の5のスタイルでまとめさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 少し時間は残っておりますが、区切りの関係がありますので、以上としたいと思います。次回以降の予定等について、事務局からよろしくお願いいたします。

5.事務連絡

 次回は、5月23日(火曜日)14時から16時、文部科学省省議室において開催する。

―了―

お問合せ先

大臣官房国際課国際協力政策室

(大臣官房国際課国際協力政策室)