国際教育協力懇談会(2006年2月17日~)(第1回) 議事録

1.日時

平成18年2月17日(金曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 省議室

3.議題

  1. 開会
  2. 挨拶
  3. 事務局より資料説明
  4. 自由討議
  5. 閉会

1 開会

 (事務局)

2 小坂文部科学大臣挨拶

おはようございます。文部科学大臣の小坂憲次でございます。皆様には公私ともにご多忙の中、このたびは当懇談会の委員をご就任賜りましてまことにありがとうございます。心から御礼申し上げます。
 国際社会におきまして、教育開発に加えて感染症や災害、食糧、エネルギーなど、地球的規模の問題が次々と顕在化しております。これらの問題に対して、我が国の知識や経験を生かして国際協力や国際交流に取り組み、国際社会において積極的な役割と責任を果たして、世界から信頼される国となることは極めて重要なことでございます。
 また、平成15年にはODA大綱が改定されまして、途上国援助を進める上で、「人づくり」への協力を重視するという方針が打ち出されました。過日私もイギリスにおきましての教育大臣会合に出席いたしましたが、そこでのプレゼンテーション後のパネルディスカッションにおきまして、開発途上国の皆さんからは、日本に対する熱い期待が表明されたところでございます。人づくりへの協力を重視するという方針が打ち出されましたが、我が国はこれまでも人づくりの協力に取り組んでいるところでございまして、質量ともに充実させるための方策をご論議賜りたいと存じます。
 また、こういった状況の中で、我が国の教育関係者に対する期待が非常に高まっております。これまでも初等中等教育分野におきまして我が国の教育経験の活用を図ってまいったところでございますけれども、今後一層「大学の知」を国際協力に生かすことが重要であると考えております。一方で、大学みずからもこれを契機として、個性化・国際化を進めることができるのではないかという期待も抱いているわけでございます。
 さらに現在、政府においてODAのあり方に関する検討がなされております。国際協力を進めるに当たっては、広く国民の理解と支持を得ることが大切であり、当省といたしましては、関係省庁・援助機関・NGO等と密接に連携して、国際協力に積極的な役割を果たしてまいりたいと考えております。
 最後になりましたけれども、お集まりの皆様方におかれましては、ぜひともそういう意味で、それぞれの皆様のこれまでの広いご見識をご提供賜りまして、ご協力を賜りますように、心からお願いを申し上げる次第でございます。特に、木村孟大学評価・学位授与機構長には、本懇談会の座長をお願いしたいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。以上、一言ごあいさつ申し上げ、皆様の本懇談会におけるご活躍を祈念いたします。どうもありがとうございました。

3 木村座長挨拶

木村でございます。私、これまでいろいろな懇談会、委員会のまとめ役をやってまいりましたが、大臣から座長をやれと言われたのは多分初めてではないかと思います。少し驚いています。
 私、東京工業大学に33年おりまして、留学生、その他、さまざまな国際交流活動にかかわってまいりました。JICA(ジャイカ)の専門家としても、短期ではありますが、随分いろいろなところへ参りました。東工大総体としても、相当多くの方がJICA(ジャイカ)の専門家として海外へお出になって、大学の知を発展途上国にトランスファーするという仕事をされております。学長になりましてそういうものを整理してみてあらためて感じましたのは、一生懸命東工大としてやっているわりに、国際協力における、東工大のプレゼンスがほとんどないということです。
 そういうことで、国際協力という仕事の中で何とか1つの大学のプレゼンスが出ればいいなと思っておりましたが、伺うところによりますと、この懇談会、そういうことも議論するということでございますので、経験、見識豊かな委員の皆様の助けをおかりして、いい提案が出せればと思っております。よろしくお願いいたします。

4 委員等紹介

出席者

荒木委員、内海委員、片山委員、工藤高史委員、工藤智規委員、廣里委員

欠席者

 白石委員、千野委員、弓削委員、渡辺委員

オブザーバー

 外務省経済協力局・佐渡島参事官、国際協力機構人間開発部・末森部長、国際協力銀行開発セクター部・橋本部長

事務局

 近藤文部科学審議官、井上国際統括官、森大臣官房国際課長、町田国際交流官

5 資料説明

 (事務局)

6 議事

自由討議

【木村座長】
 それでは、残りの時間、かなり時間がありますが、今回は、第1回ということでございますので、自由討議ということでお願いできればと存じます。まずただいまの資料説明について、ご質問等ございましたらお願いしたいと思います。いかがでございましょうか。何か。
 私、1つ質問があるのですが、ご説明のありました11ページのJICA(ジャイカ)の高等教育協力案件ですか、アセアン工学系高等教育開発ネットワークというプロジェクトについては全く知らなかったのですが、どういうことをやっているのですか。

【事務局】
 ASEAN(アセアン)のトップの大学、二十数大学と日本の大学のネットワークを強めるということで、日本の大学のグループとASEAN(アセアン)の大学のグループが工学系の7つの分野において、それぞれグループで人材育成をするための研究を行うようなプロジェクトになっています。特に目指しているのは、ASEAN(アセアン)においてそういう大学のネットワークがちゃんとできることになっておりまして、日本の国立大学、私立大学を含めて、日本の大学とASEAN(アセアン)のトップの大学がそういった活動をするようなことをやっております。

【木村座長】
 もう既にある程度進んでいるということですか。

【事務局】
 はい、もう既に数年やっておりまして、この後数年ありますけれども、中には修士課程に学生をASEAN(アセアン)域内で受け入れて教育するプログラムですとか、博士課程にあるプログラムとかありますので、博士課程を出るまでやっている部分もありまして、今後まだ数年は続きますけれども、既にもう開始はされております。

【木村座長】
 どうぞ、末森さん。

【末森部長(JICA(ジャイカ))】
 今文科省からご説明があった概要はそのとおりでありますけれども、ASEAN(アセアン)の10カ国の19大学と、日本の私立4大学、国立7大学、計11大学、全体で30大学のネットワークの強化を支援しております。先ほど7分野とおっしゃいましたけれども、今9分野に変更になっておりまして、工学系の9分野について、それぞれの分野のホスト大学にメンバー大学から留学生を送り、域内で修士を取らせようということが1つです。
 それから、ホスト大学、間の一年は日本の大学、ホスト大学とサンドイッチ・プログラムでドクターを取らせようということで、学位取得とともにホスト大学の大学院レベルも上げるため、スタッフの養成と研究機材等を支援しています。
 1つ、例を挙げますとインドネシアのガジャマダ大学と九州大学が地質工学の分野で連携しております。ガジャマダ大学にASEAN(アセアン)の地質関係の人が修士で入りまして、そこで勉強する。勉強するに当たって、共同研究といったものをJICA(ジャイカ)がサポートしてレベルを上げるということをやっております。
 既に5年たっておりまして、あと2年の協力の予定です。日本にも留学生の枠で9名ほど、各大学においでいただいて、ASEAN(アセアン)の19大学のキャパシティビルディングをやろうというのがこのプロジェクトのねらいであります。

【木村座長】
 くどいですけれども、留学生の枠というのは国費の枠を使っているんですか。

【末森部長(JICA(ジャイカ))】
 これはJICA(ジャイカ)の長期研修員枠100名枠の一部です。

【木村座長】
 わかりました。そのようなことができるようになったのですね。以前はできなかったのですが。

【末森部長(JICA(ジャイカ))】
 今、やらせていただくということで始めさせていただきました。

【木村座長】
 わかりました。ほかに何かございますか。どうぞ。

【内海委員】
 2ページ目にございます教育協力の世界的潮流ということですけれども、おっしゃるように、まさに基礎教育開発に焦点が当たっていることは確かでございますが、次のページにございますように、基礎教育分野はある意味では先がかなり見えてきていると思います。もちろん、サブサハラアフリカとか、南西アジアのように問題のある地域はいろいろありますが、基礎教育に対する世界的な協力支援は、ある意味では先が何となく見えてきました。昨年USAIDや世銀を回って教育協力の関係者とお話ししたところ、ポスト・プライマリーというか、基礎教育の後をどういうふうにするのかが話題でした。
 また、私は特に紛争後とか難民の方たちへの教育ということを考えているのですが、紛争後の国では教育の意識が高まりまして、基礎教育だけではなくて、その後の中等教育、高等教育支援に対するニーズが非常に高くなっています。日本の教育協力は基礎教育一辺倒ということではなくて、バランスのとれた教育支援ということで、中等、高等教育にも目配りした協力を90年代からしてきていますので、日本のやり方はかなりよかったのではないかという逆の評価も受けていると思います。
 ですから、この世界的潮流ということで、基礎教育に焦点が当たっていることは確かでございますけれども、いまはそれを超えた幅広い教育協力のニーズがあるということだと思います。

【木村座長】
 基礎教育の定義は何ですか。

【内海委員】
 私でよろしいですか。ベーシック・エデュケーションというのは、何もプライマリーだけではなくて、時代と場所によって変わってくると理解しております。日本の場合には、基礎教育というと中等教育までを含める形です。先進国の中には18歳までの教育義務ということを課している国もあります。また、今のアフリカなどでは6年制とか7年制、8年制、いろいろな小学校があるのですが、そうした小学校を基礎教育と考えているところもあるかと思います。
 廣里委員が詳しいのではないかと思います。

【木村座長】
 お願いします。

【廣里委員】
 今、内海先生がご説明なさった以上につけ加えることは、定義としてはありません。世界的潮流ということでは、ユネスコも、世銀もですけれども、これまでのEFA戦略というのを見直しており、2005年から2015年の残された10年で戦略の再構築というのをユネスコ総会あたりでも議論しております。
 先ほど内海先生もおっしゃったようにポスト・プライマリー・レベルでいろいろな問題がありまして、例えばリテラシーに関するイニシアチブ、これはエンパワーメントと絡んでくるイニシアチブです。あるいは、ティーチャー・トレーニング、特にサブサハラアフリカの国々での教師教育のイニシアチブ、あるいはHIV、エイズと教育の問題に関するイニシアチブ。それから、従来やってきたFTIですとか、女子教育というものは継続していくものと思います。
 ただ単に初等教育の完全普及化ということだけを目標にせずに、戦略の再構築を図ろうとしているという状況だと思います。
 そこで2002年、日本政府もBEGINを発表しまして、これが2007年まで5カ年ということだと思うんですが、例えば本年のサミットといった場で日本のEFA戦略の再構築をする意味で、先ほど基礎教育に中等教育も含むという話がありましたが、例えばSecondary Education For Allとか、何かBEGINに続くイニシアチブを表明するのが、世界的潮流と絡んで意義があるのではないかと思いました。

【木村座長】
 ありがとうございました。ほかの問題について、何かございませんでしょうか。どうぞ。

【片山委員】
 過去3回の懇談会でどういうことをやってきたかというご説明、あるいは項目の表が資料3でもありましたし、前回の内容のご説明があって、いろいろな新たな動きが出てきたということを非常に評価をしております。
 私の質問は、過去のやってきたことに対する評価が全体的になされているのかどうかということを伺えればと思っております。つまり、新たなことができました、こういうことが今進んでおりますというご報告だったのですが、できなかったことがあったのか、あるいは何がまだ課題として残っているのかということが、もし何かの形でこの懇談会の議論の中でご提示していただければ、次の提言を出すのに非常に参考になると思うのです。
 例えば、この資料の5ページで、留学生交流が非常に大きな予算を使って活動しておりますけれども、留学生の交流が今まで結果としてどういう効果があったのか、あるいは何が課題で残っているのか。これだけ大きな予算を使っている事業を見ると、今後もこれは多分継続していくし、留学生の強化ということは1つの方向だと思うのですけれども、それに対してもう少し戦略的に考えていくためには、過去の評価というものが当然必要だと思うのです。そういうものがもし出ていれば、ぜひ懇談会の中で今後出していただければと思っています。

【木村座長】
 お願いします。

【大山国際協力政策室長】
 ありがとうございます。項目も多いので、ものによっても評価のやり方等は違うのですが、評価をやっている部分というのももちろんございます。その辺につきましては、例えば例を申しますと、初等中等教育面の拠点システム構築事業につきましては、ちょうど今年度が3年度目でございますので、今まさに評価の作業を行っているところでございます。
 それ以外も含めまして、評価のどういうことをやっているかにつきましては、また準備をさせていただきまして、ご紹介をできればと。
 あと、文部科学省といたしまして、国際関係だけではなくて、全体的に政策評価ということをやっております。そういう観点からも評価はございますので、またご紹介させていただければと存じます。

【木村座長】
 ありがとうございました。学生支援機構の事業部長の西村さん、外務省から出向されている方ですが、その方から最近お手紙をいただきました。西村さんがどこかでお話しになった、留学生関係の非常に詳しい資料を送って頂きました。それをぱらぱら見ていたら、アメリカは留学生を受け入れることによって、どのぐらい経済的にインパクトがあるかというところまで計算していることを知りました。
 日本では、日本の役割として留学生を受け入れる必要があるという議論はなされているのですが、それによって経済的なインパクトがどのぐらいあるかということについては、ほとんど議論がなされていませんね。その辺のところを今のお話と関連して考えていく必要があるのではないかと思います。
 ほかにございませんでしょうか。何か、どういう観点からでも結構ですが。井上さん。

【井上国際統括官】
 ただいま留学生のことについてのお話がございましたけれども、今留学生は高等教育局のほうでこの仕事を主としてやっているわけですが、中央教育審議会でこの留学生のことについて審議するかどうかというのを今検討されていると聞いております。ここのところで直接的に議論するのか、あるいはほかの場で議論されていることをこういうところでもご紹介いただくとか。そこら辺、そちらのほうの動きも見ながら、また座長とご相談させていただければと思っております。

【木村座長】
 私、一度既にやらされましたけれども、あれに続いてまたやろうということですね。

【井上国際統括官】
 そうですね。数年前にやったのをまた改めて、10万人計画が達成された後の留学生政策を今後どうするかということを、いろいろと高等局も含めて考えているところでございます。

【木村座長】
 また西村さんだったかの資料で見ると非常におもしろいのは、留学生は確かに増えているのですが、トレンドはものすごく変わっているんです。韓国、中国は減り始めているんです。びっくりしました。私、知らなかったんですが、韓国も3年ぐらいずっと減っているし、中国も減っている。それについて、いろいろな理由を西村さんは分析されておりましたけれども。
 それに対して、ベトナム、カンボジア、モンゴルが非常に増えて、第2の中国かと書いてありましたけれども。今後、その辺も細かく分析する必要があるかもしれませんね。
 ほかにございませんでしょうか。どうぞ、時間はたっぷりありますので、発言がないと、私、困ってしまう。フリーディスカッションというのは非常に困るんですね。

【荒木委員】
 前回も私、メンバーでこの作業に参加させていただいたんですけれども、その結果、サポートセンターなり、拠点大学等の整備についてかなり進んできているという感じなんですけれども。当時、ご存じのように万人のための教育とか、要するに世界教育フォーラム、あるいは日本の基礎教育イニシアチブ、BEGINというものを発表して、そういう情勢に対して日本が追われるがごとく、何かしなければならないというような感じで対応してきた感じです。
 もっと基本的なことを考えると、一体、日本並びに日本人が教育協力にどのぐらいの力を持っているのか。現状の掌握にもとづく教育援助(ODA)を作ってきたとはいいがたい。今、貧困削減計画の中で一番大きな課題になっている、教育とエイズ等を含む保健衛生等に関する日本の分野別のセクターの能力というか、実際どのぐらい潜在能力があるのかということがあまりよく見えない形で、過去、とにかくばらばらにヒット・エンド・ランでやってきた。
 もう少し腰を落ち着けて、これから日本が本格的に教育援助なり保健衛生援助をやるならば、その分野別のトータルの力を計測して、それをODA国別援助計画の中に反映していくという作業をやらなければ、相手国のニーズを知ることはいいとしても、ニーズに対応する日本の能力が潜在的に一体どのぐらいあるのか、その辺のところがよく見えないような感じがします。現場から見ると、ばらばらにやってきた感じです。
 援助については、言うまでもなく戦略性というのを各国持っていて、欧米は冷戦の時代からポスト冷戦時代にかけてちゃんと戦略を持っている。日本は一体何をもって戦略構築するのか。それは教育の我々の援助の目標、目的を設定して、それに対してどうするのかという作業も必要です。
 その辺のところも含めて、日本の長期的な意味の国益というか、あるいは国のイメージを強化するという意味においても、私は今文科省が中心に進めている科学技術立国政策が大いに注目されるべきだと考えている。しかし、教育援助とODAがちゃんとリンケージしているのか、よく見えてない。そのことも含めて、我が国の土台のところをちゃんとせずに対外的煙幕を張っている感じがしてならない。

【木村座長】
 ありがとうございました。ほかにございませんでしょうか。オブザーバーの方もどうぞ。オブザーバーといっても会議構成員ですから、どんどん発言していただきたいと思います。どうぞ。

【工藤(高)委員】
 それでは一つ質問させて頂きます。今までこの懇談会におけるテーマなど種々話を伺いましたが、日本語教育というのも国際教育協力の中に入っているんでしょうか。
 というのも例えば、ベトナムなんかはそうですけれども、日本の企業が進出すると、日系企業としてはやはり、できれば日本語のできるベトナム人を雇いたいと希望する。しかし、なかなかいないのが実情です。日本語教育はODAでやっていないかもしれません。ハノイに日本センターがあって、若干日本語教育をやっていますけれども、結局足らないんです。
 海外で日本語を教えるという意義をもう少し戦略的に考える必要があると思います。もちろん留学生を日本に呼んで、日本語を教えて、日本のことを理解させるのもいいですが、海外にトータルの日本を紹介する拠点を持って、日本語を教えつつ日本のカルチャー、歴史、経済を教えるというのも重要ではないか、効果的になるのかなと思います。
 ということで私の質問でございますけれども、日本語教育というのもこの国際教育協力懇談会のアジェンダに入っているのかどうか、教えていただければと思います。

【木村座長】
 井上さん。

【井上国際統括官】
 日本語教育もこの懇談会の検討のアジェンダになると思います。今、日本語教育については、役所的に言うと仕切りというのがありまして、例えば外国における日本語教育というのは国際交流基金とか外務省がやりますと。こちらのほうのは文化庁とか、そういうのがやりますということなんです。
 この国際教育協力ということを考えた場合、いろいろな日本のことをどういうふうに伝えていくのか、これは外もうちもぐるぐる回っているようなところがございますので、その1つの重要な要素として、日本語教育のあり方もご議論をいただければと思っております。

【木村座長】
 ありがとうございました。今ちょっと工藤さんがお触れになりました文化的なことに対してメッセージを発信すると。私は、もう何十年も前ですけれども、ブリティッシュカウンシルの奨学金をいただいて英語圏に行ったんですが、その辺はブリティッシュカウンシルは徹底しています。世界戦略でやっていて、世界中幾らオフィスがあるのか、随分縮小したとはいえ、ものすごい数のオフィスがあって。
 殊に私がフェローシップをいただいたときはまだ日本でのアクティビティーは非常に高かったんですが、今どちらかというと発展途上国にシフトして、すさまじい勢いで英国文化というものの、言葉を通じて植えつけみたいなのをやっています。ですから、そこら辺、日本もそういうことが必要なのではないかなと30年思い続けて、結局あまりその後進歩しないんですが。
 ほかにございませんか。どうぞ、佐渡島さん、お願いします。

【佐渡島参事官(外務省)】
 ありがとうございます。本日、この会議にオブザーバーとして初めて出させていただきましたが、今日は、いろいろな今後の議論の玉を探すためにテーブルにとにかくたくさん乗せてみるというご趣旨かと理解しております。その理解が間違っていなければ、2つほど申し上げさせていただきたいと思います。
 1つは、今の戦略の話でございますけれども、まさに今官房長官が有識者の方を集めて、日本の援助全体をどうしていくかというご議論が進んでおります。今までの日本の援助のというのは、私は、戦後、日本がまさに敗戦国から立ち上がって、国際社会に復帰し、さらにその中で周りも助けて、自分の名誉ある地域を占めていく、また少資源国日本というのを前提にして、周りを豊かにしながら、その中で自分も豊かになっていく、ということをずっと追求してきた中で行ってきたと理解しております。そして、戦後50年、あるいは60年、援助をやって50年でございますけれども、大体その目標は達成したのではないでしょうか。しかし今財政的にも非常に苦しい中、少なくともソースは右肩上がりではない、左肩というか、むしろ非常に厳しい中でやっていく時代に来ているわけです。
 井上さんのほうからもご指摘がありましたけれども、世の中も冷戦構造が崩れ、国境を超える問題、新たないろいろなリスクが出てきている中にあって、日本はどちらに向かって進んでいくのだろうかという問題があります。まさに戦略的な援助をきちんとやれと言われていることの背景には、古い言葉ですけれども少資源国、加工貿易という中で、日本が自国の持っているリソースを如何なるところに投入していくことによって、どのようにして生き残っていくのかということが問われていると思います。
 したがって、例えば教育の分野でも、国内、あるいは外をにらみながら日本としてどういうところに力を集中していったら、最もその力が上がっていくかというところに、1つ着目すべきではないかと思います。私はその観点で、ずっと最近いろいろなものを眺めてみまして、例えば去年の財政諮問会議などにも出ておりますけれども、日本の知的な貢献をやっていくことが重要ではないかと思います。
 そうすると、例えば今の日本語も1つの例かもしれませんし、環境だとか、そういうところでアジアに知的な一種のマーケットをつくり上げていく。アジアというのは、まだまだその意味では弱いところがあると思うんですけれども、その観点でまさに日本に埋もれている知をどうやって掘り起こしていくかという課題があります。
 私が援助の仕事をしておりまして、1つ非常に問題意識として持っていますのは、日本のいろいろな大学、国立、私立も含めた、あるいは中央の大学、地方大学も含めて、各地で行政と協力しながら、まさに知を提供しておられる大学も各所にあると思いますけれども、なかなか知そのものがマーケットに出ていませんし、マーケットに出て幾らと売ってもいないわけです。もしマーケットにそれが出ていると、日本の援助というのはもっとにぎやかになると思うし、それを外に向かって売れるのだろうと思います。
 そしてそれを、日本だけやるのではなくて、近隣の韓国にしろ、中国にせよ、いろいろな人を引き込んで、アジア流の知的なマーケットをつくれないか。これは、私はぜひやっていただきたいことの1つだと思っております。
 個人的な経験を1つ申し上げますと、ベトナム時代ですけれども、南のホーチミンのほうに病院をつくりますというとき、病院1棟を作るというのは日本はそのデザインはすごく上手なんです。ところが、北ベトナムで仕事をして医療水準を上げていきたいんだけれども、例えば向こう3年間で50億円ぐらい費やしたいという場合、医療アクセスを、例えばパーセンテージを向上させるにはどういうデザインがいいだろうか。その50億をどこに投入したらいいだろうか。中央病院だろうか、県庁所在地の中継病院、あるいはディスペンサリーだろうか。そういうデザインをしたいと思うときに、日本では、わかりました、それは私、1カ月ももらえば、70パーセントの精度で、1,000万円で答えを出しますという知恵がマーケットに出ていないんです。
 その結果何をしているかというと、JICA(ジャイカ)さん、JBIC(ジェイビック)さんも一部そうかもしれませんが、我々もそうなんですけれども、調整しながら、いろいろなところから引っ張り出してくるということをやっているわけです。もし、マーケットに1,000万なら1,000万で売っていれば、それは調達すればいいんです。
 結局、我々は困ってしまって、WHOとか、いろいろなところに相談に行ったわけですけれども、そういう社会に早くなってもらいたいなと思います。日本は多分能力はあるんですけれども、マーケットにそういうものが出ていない。知のマーケットというのを、日本も厚くできないだろうかということが1つあります。
 もう一つは、文科省の井上さんのところにお頼みして、拠点大学というのをやっていただいて、サポートセンターもつくっていただいたんですけれども、これは日本ばかりではなくて、アメリカのUSAIDなども注目をしております。既に広島大学や名古屋大学が、アメリカでそういうことに関心を持っている大学を連れてきて、シンポジウムをやったり、アイデアの交換会をやったり、ペアリングできないだろうかいろいろな仕掛けをしてきているんですけれども、私はこの傾向をもっとやっていったらいいだろうと思うんです。
 こうしたものは非常に国際的な広がりも見せているものなので、もうちょっと豊かに、にぎやかにしていくにはどうしたらいいだろうか、そういうことも、ぜひ時間とあれがあればお話しいただけると、我々としてもうれしいし、文部科学省さんのところのご努力もさらに大きい実を生んでくるのではないかと思います。
 ちょっと長くなりました、恐縮です。

【木村座長】
 ありがとうございました。どうぞ。

【荒木委員】
 今佐渡島さんから話があったのにつけ加えますと、まさに知のマーケットの話が出ましたけれども、現場から見ていると、例えばアメリカのケースの場合だと、民間のコンサルタントのかなり巨大なものが、ほとんどアメリカの知を、もちろん援助で予算がついた形ですけれども、うまく吸収して、それをそのままアレンジして、USAIDと協力しながらやっているという実態があります。
 日本の場合、どうもよく見ていて、言葉は悪いが、もう一度日本の知を外向けに加工しなければやれないような感じがあります。私は、日本の知を外国に出していくための知的な研究、インフラづくり、国内にそういうものの資金を投入する仕組みがない。外向けにはODAを世界のトップドナーということでばらまいてきた感じがあるんですけれども、もう一度足元を見て、足元の知的インフラづくりにもう一工夫して、何か対外的なプロジェクトと絡みながらでも、そういうところの人材も含め、組織化を図っていく必要があるのではないか。
 それをやらないと、ある意味で援助する機関、JICA(ジャイカ)とかJBIC(ジェイビック)にだけに任せておけばいいという問題ではない。だから、それをどうやってみんながバックアップするのかという体制がないまま、一本釣りをしてこなければならないということでは、組織的な対応能力というのは欧米にはかなわないという感じを持っています。

【木村座長】
 ありがとうございました。今の佐渡島さんの知のマーケットという考え方ですが、それほど大きなことではないかもしれませんけれども、先ほど申し上げたJICA(ジャイカ)の専門家派遣もその範疇に入りますね。何か案件があって、どなたか大学の先生が要るというときに、だれがそのプロジェクトにぴったりなのかというのはほとんどわかっていない。
 JICA(ジャイカ)さんはいろいろなところをサウンディングされて、うわさであの人がいいのではないかということを知り、文部科学省を経由してアプローチされて、それで出ていくというのが現状ですね。多分ここでの課題はそうではなくて、大学で……。
 話を突然変えますが、産学協力が同じだったんですね。予めインフラとして信頼できるデータベースを揃えておくべきだという物ですね。私が前にいた東京工業大学は非常に大きな外部資金を導入していました。それはあくまでも先生1人と企業との関係に基づいた物なんです。ところが、東工大が随分いろいろな産学協力をやっているようだからといって、東工大のことを全くご存じない中小企業の方が東工大にアプローチしようと思っても、どうしていいかわからない。窓口も何もありませんから。
 そういうことで、文科省のイニシアチブでTLOをつくって、そこへ窓口を設けて東工大ではこれこれこういうことをやっていますよということを外部に発信するようにしました。そういうようにしておくと、企業の方が来られた場合、どの先生がどういうことをやっているかというのがわかる。それによってやっと組織的なコミュニケーションができてきたということです。
 多分国際協力もそういうことが必要だと思います。先ほど佐渡島さんがおっしゃった知のマーケットというのは、もっと包括的なものだと思いますけれども、今私が申し上げたようなことも大いに必要ではないかと、考えています。どうぞ。

【井上国際統括官】
 この教育協力、教育というと狭い意味での教育、ここで議論するのは、さらにはもっと広く工学とか、農学とか、医学とか、いろいろとあると思うんです。今幾つかお話がございましたけれども、最後に座長からございました、我々、目きき人材というか、日本の大学が持っているたくさんの人材、知というものを途上国からのニーズとどういうふうにマッチングできるか。そのマッチングできる人が要ると思うんです。だから、そこの目きき人材をできるだけ養成し、確保し、その人たちに活躍してもらいたい。そういう仕組みをこういった委員会でご指摘いただければと思っております。
 それから、2つ目の、先ほど加工というお話がございました。日本の知をどういうふうに加工するか。実は拠点システムで、保健教育とか、障害児教育、環境教育とか、日本の大学はいいことをたくさんやっているのです。この前その発表のときに、コメンテーターの方から、これは日本人ですけれども、そのままでは持っていけないと。やっぱり加工して、うまく途上国の現場に、それは英語であるかもしれないし、もしかしたら現地語かもしれない、そういうふうに加工しないとだめだねというお話がございました。むしろ、加工することによって、原石が非常に磨かれて、いいダイヤモンドになるのではないかというのがたくさんあるのではないかと思っております。
 先ほど佐渡島参事官のほうからペアリングの話がございました。私も佐渡島さんと一緒に名古屋大学の農学協力、あるいは広島大学の教育協力のところに参加したのですけれども、アメリカも、例えば実は農学も非常に幅広い分野がございまして、農業の生産から、加工から、マーケティングから、いろいろありまして、今の世界情勢から考えて、アメリカが入りにくいところもありますし、そういうところでアメリカの大学も日本の大学、あるいは関係者と協力してパートナーシップを組んで入っていきたいということが、強くそのときに指摘されたところでございます。
 以上、コメントでございます。

【木村座長】
 ありがとうございました。どうぞ。

【廣里委員】
 大学の知を活用してマーケットをつくるという話との関連なんですけれども、平成14年の懇談会提言の後、SCP、サポートセンターが名古屋大学も協力して、国際協力プロジェクト受託の手引というのを作成しました。そのプロセスで、知が出ていけないいろいろな要因というものに光を当てて、いろいろな制度や仕組みの改革というか、改善を図ってきたと思うんです。
 そういうことがありまして、ご承知だと思うんですけれども、広島大学とか、神戸大学とかが、JICA(ジャイカ)の案件を、コンサルタントとジョイントベンチャーにて、実際にバングラデシュとかイエメンで始めておられます。その他、幾つかの大学も、準備中だと思うんですが、やはりまだ知が出られない要因というのが幾つかあります。
 例えばですが、私は以前は国際機関でまさに調達する立場にいたんですけれども、日本の大学教員の場合、国際機関の仕事はまだ兼業扱いといいますか、自分の年次休暇をとって、国際機関に兼業扱いで働く。自分の年次休暇というのは限りがあり、せいぜい1カ月とか、そういうことしかできないというのが現状だと思うんです。これは各大学によって扱いは若干違うと思うのですが。
 国際機関の案件にかかわれるというのは、ある意味で国際水準の証でもあります。そういったことが続くことによって、日本の知の国際競争力というのが維持されるといったファクターがあると思います。
 欧米などは大学、あるいは大学のコンソーシアムという形で実際に案件を実施しているわけです。日本は、現状ではコンサルタントとのジョイントベンチャーという形で補完関係を作りながらやっているわけですけれども、行く行くは大学同士のコンソーシアムなどによって、知が実際の国際開発協力の現場で活用できるのかなと、将来的な話ですけれども。そのためには、まだいろいろな出られないファクターがあるということだと思います。

【木村座長】
 ありがとうございました。ほかに、内海先生。

【内海委員】
 資料の10ページにあります紛争締結後の教育復興支援ということについて申し上げたいのでございますが、私、それから、今ここにおります渡辺一雄さんもアフガニスタンの教育省にアドバイザーとして派遣されました。その経験から申し上げたいんですが、紛争後、ポスト・コンフリクトでの教育支援というのは非常に重要でございまして、かつて、10年以上前はポスト・コンフリクトとか、難民に対して教育支援というのはなじまないという意見もあったんですが、今は将来の生活設計とか、いち早い国づくりのためには教育は非常に重要だということで、非常に大きな支援が教育の分野に入っていると思います。
 日本がそういう分野に支援するということに対して、日本の立場というのは国際的に非常にニュートラルでポリティカル・ウイルがないということで、我々がアドバイスすることは非常に高く評価され、いろいろなところで採用されていると思います。ですから、こういう面の支援というものは、文部科学省、外務省、一体となって積極的に進めていくべきだと思います。
 その中で、現在ポスト・コンフリクトとか緊急支援といったときに、多くの資金が国際機関、UNDPとか、ユニセフとか、HCRとか、外務省からかなり流れていくわけですけれども、それはほんとうに必要な資金だと思います。しかし、日本としての支援に対しても、もう少し手厚く支援があってもいいのではないかと思います。緊急支援についてまだ日本は経験の浅い分野でございますけれども、今回のアフガニスタン、また東チモールなどへの支援に対しては、文部科学省も力を入れて実施していろいろな教訓を得てきたと思いますので、そういう面での指針、今後の教育協力のあり方の中で重要な役割を果たすのではないかと思います。
 そのときに1点、今はポスト・コンフリクト、人道支援、アーリー・リカバリー等の分野では、国際的にはクラスター制というか、教育の分野はどこがやる、農業はどこがやる、保健の分野はどこがやるという、国連の中でのクラスター制が実施されて、また、その援助を実施するに当たっても、さまざまなスタンダードとかチャーターとかが用意されておりまして、ある意味では勝手にできない。ルールのもとで紛争後の支援とか、人道支援というものをしていこうと、そういう国際的な枠組みがどんどん強まっていると思います。
 もちろん、その中でユネスコなども大きな役割を果たしているわけでございます。紛争後とか、自然災害の後の復興支援をどういうふうにやるかというときには、国際機関との連携ということが非常に重要になってきますので、教育協力であっても、外務省、国際機関と一体になって動くような仕組みづくりというのは日ごろから準備しておきませんと、いざというときに逆にお金が役に立たないと言うと変な言い方ですけれども、適切でないところにも流れていってしまうという傾向があるのではないかと思いますので、日ごろからそういうシステムを構築していく。
 また、国際機関との連携ももっと強めていく必要があるのではないかと。人事交流なども含めての話だと思いますけれども、そういうシステムづくりを少し目を向けていただくと、今後は大学もそういう中でしか動けないのではないかと、私は思っております。

【木村座長】
 ありがとうございました。工藤さん、どうぞ。

【工藤(高)委員】
 よろしいですか。只今国際機関との連携という話が出ましたので、関連で申し上げたいと思います。配付資料を見ると、国際機関ともいろいろなワークショップを行ったり、セミナーを開いたりしているようですけれども、私は国際機関で働らく日本人を、もっと増やす教育が必要だと考えております。外務省など各省から大体2年程度、国際機関に出向しますが、要するに人事ローテーションの中の歯車で行っている。ほんとうに国際機関で長く働く日本人職員を育成する必要がある。国際機関との連携、連携と言うより、国際機関を動かすようになってほしいと思います。
 世銀など国際機関へ日本のODAバジェットが拠出されていますが、日本の旗があるかというと、ない。そんな悲しい状況の援助が続いているわけです。
 国際機関に人材を送るような教育というか、日本の大学でそういうコースはないわけです。従ってアメリカでドクターを取って国際機関に入ることになる。そうでないと通用しない。日本の大学でこれだけ開発経済学のコースがあるわけですから、ドクターを取りやすくして国際機関に送るような教育、英語でどんどん授業をやって、国際機関で働く人の養成コースを設けてはどうでしょうか。
 国際機関の中に日本人がいれば日本とのオペレーションはうまくいくでしょうから、外務省との連携、JICA(ジャイカ)との連携がうまくとれるようになると思います。国際機関に対してもう少し人材を送り込むような教育のあり方というのも、ここのテーマになるかどうかわかりませんけれども、考えるべきだと思います。
 もう一つ、思いつきで申しわけないんですけれども、JICA(ジャイカ)の専門家についてですが、何とかシニアを活用できないかと思います。もちろん向こうのリクエストに果たして合致する人材がいるかどうかわからないという側面もあるかもしれません。現行では、シニアボランティア制度がありますが、これを拡充する方法はないかと考えます。というのも、これから団塊の世代が2~3年の間に600万人も退職する。この団塊の世代は、かなりの企業戦士で、いろいろな国で活躍された方々が多い。まだ働く意欲もある、国際貢献したいと望む方も少なくない。
 バハサ・インドネシアを話せる人間もいれば、スワヒリ語を話す人もいるでしょうから、退職する企業戦士をモビライズするような何かいい方法があればと思います。

【木村座長】
 どうぞ。

【佐渡島参事官(外務省)】
 それに関しましては我々も注目しております。1つは、JICA(ジャイカ)はシニアボランティアというのをずっとやってきております。同時に、あと経済産業省さんが、商社のOBの方を組織化して、リソース・リストの管理をして、JICA(ジャイカ)のほうも早速リクルート先としてこちらにお世話になることも少なからずあるやに聞いております。
 先般外務大臣もまさに日本にあるリソースがもったいない、それをもっと使ったらいいではないかということを言っておりました。この話は、教育のほうでご議論いただく前に、とにかくやれるところからやろうということで、やるべき話かなと、私は感じます。
 もう一つ、国連の人材の話ですけれども、おっしゃるとおりいろいろな手だてを講じてきています。お金を出すときも、ちゃんと日本人をたくさん採ってくれと常々言うんですけれども、丁々発止と英語で議論をし、資料を作る能力があることは言うまでもありませんが、国際機関の中で上に上がっていくのは大変なんです。一匹狼で、もちろん仕事はできないといけないし、競争力もきちっと発揮できないといけない。そういう人材をもっとたくさん輩出していかないといかんというのは、そのとおりだろうと思います。
 日本の場合には危険地域に人を出す場合のセキュリティープロテクションがないですから、よその国に頼るか、自分は非常に用心しながら、あとは国際機関の人と連携しながら仕事をするというところに行かざるを得ないですけれども、そこの国の国際機関に日本人の職員の方がおられる、おられないで仕事の効率がかなり違うのは間違いございません。
 クラスター制云々の話は、どちらかというと、国連の中のマネジメントの話でございます。あまりにも機関が多過ぎてばらばらやっているものですから、グループごとに分けたマネージをUNDPがやっている話でございます。
 ただ、最近はイギリスなどが、いろいろなグループをまとめて仕事をさせようというやり方をアフリカでやっていますが、だんだんこちらのほうにも拡大しています。これはイギリスでは、英語を母国語としていて、さらに知的マーケットが発達しているものですから、そうしたほうが仕事がたくさんとれるということかもしれないんですが、我々もそれに負けないような仕事をするにはどうしたらいいのかなというのを、今一生懸命考えつつあるところです。

【木村座長】
 どうぞ。

【廣里委員】
 国際機関との人事交流システムについてなんですが、話が具体的になり過ぎてどうかなという気がしますが、この資料の2ページ目に、ユネスコの事務局長、松浦さんの写真が出ています。
 でも私が聞いた話では、ユネスコの教育関係でディレクターレベルの日本人のスタッフがいなくなってしまっているんです。スタッフレベルの最高がP5というポジションで、あと、わりと若い人たちが日本人の拠出金に見合ったクオータを埋めるという意味ではもう達成はされているんですが、ディレクターレベル、すなわち意思決定にかかわる人たちがいない。特にEFAの残された問題とか、グローバル・モニタリング・レポートという非常に影響力のあるユネスコが出している報告書作成とか、そういったところに日本人が意思決定レベルではかかわっていない現状なんです。
 大学なりの人材で、もしそういう人がいればですけれども、人事交流システムの観点からも、人材が派遣できないというのは非常に懸念材料かなと思います。例えば、先ほど出ましたように拠点システムの構築をなさっているわけですけれども、それの成果を国際的に展開するということでは、しかるべき直接関連する国際機関、ユネスコなどにシニアというか、ディレクターの人材がいないというのは非常に懸念するところかなと思います。

【木村座長】
 先ほど工藤さんのほうから出ました、団塊の世代、シニア人材の使い方ですが、経産省の産業構造審議会でもその点が大問題になりました。ものづくりの分野でも、たくさんのノウハウを持った人たちをリストラしてしまった。その人たちが中国、東南アジアに大挙に出て行き、日本のノウハウを大量にそれらの国へトランスファーしてしまった。その結果、日本との技術力差が狭まってしまったという状況があります。
 それはそういうシニアの人達を受け入れるシステムがなかったから、仕方なく行ってしまったということで、うまくシステムをつくっていれば、こういうことにならなかったのではないかという議論でした。ですから、シニアの人たちの使い方というのは、その辺は国として考えていかないと、自分の首を締めることにもなり得ると思います。
 どうぞ、末森さん。

【末森部長(JICA(ジャイカ))】
 先ほどから出ております人材の件ですけれども、国際協力人材につきましては、外務省のODA戦略会議の提言も受けまして、JICA(ジャイカ)のほうで「PARTNER」というウェブサイトを通じて国際協力人材登録制度を設けておりまして、日本に事務所を置く国際機関からも情報が見られるようになっています。
 もう一つ、専門家の人材はどうかといいますと、例えば、工学系の人でどういう人が関心を持っておられるかというのがなかなかわからないということがあります。医学系、農学系で大学の先生でどういう方が関心を持っておられるのか、そういうことがわかると非常にやりやすいと、我々、実施機関としては考えております。
 もう一つ、個人で参加されるというのが従来のやり方で、大学が法人として参画いただくような側面は弱かったと思います。これに関し、今JICA(ジャイカ)でしていますのは、大学が法人格で受託する、先ほど廣里さんが言っておられました、大学とコンサルタントが共同企業体を組んで受託する場合も含め、大学にJICA(ジャイカ)のコンサルタント登録に登録いただいて、法人として国際協力プロジェクトを受託いただく方法を進めています。
 こうした方法については、手続的に煩雑だということも大学側にあろうと思いますけれども、そのあたりをどういうふうに解決していくかというのも非常に重要だと思います。
 もう一つ、シニアボランティアについては、企業戦士の方もありますけれども、今、年間400名ぐらい出すべく枠はあるんですけれども、先ほど木村座長がおっしゃっていた以外にも、例えば地方自治体をやめられて、豆乳を南米に持っていって学校給食に導入とか、ネパールで竹細工等を教える、そういうシニアボランティアの方もたくさんおられます。

【木村座長】
 テレビでやっていましたね。

【末森部長(JICA(ジャイカ))】
 ええ。そういうシニアボランティアの活躍の場があります。それと、企業戦士も、専門家で派遣される場合と、ボランティアで派遣される場合では制度が異なるため、取り扱いが難しい面もあります。
 もう一つは、若い人も、シニアの方も試験には合格にされるんですけれども、健康診断でひっかかってしまうという問題もあります。

【木村座長】
 ありがとうございました。工藤さん、何かありませんか。

【工藤(智)委員】
 1つは、最初に申すべきことだったんでしょうが、この懇談会は国際教育協力ということでやっておりますけれども、マンデートの中にある大学の知の活用ということで言いますと、大学の知というのは別に教育だけではなくて、研究面も含めていろいろな側面がありますね。
 現に今、このフリートーキングの中で教育だけではない、いろいろな国際協力のあり方、しかも文部科学省の縄張りも超えて、どう日本全体がやっていくかというご議論になっていますから、自然にそういう流れでいいんでしょうねと。つまり、例えば文部科学省のマンデートで言えば、教育だけではなくて研究、科学技術、スポーツ、文化、あるわけですけれども、広い意味での文部科学省の所掌を中心にしながら、どう提言をまとめていくかというぐらいの広がりでよろしいんでしょうね。
 そうすると、例えば、今オリンピックは振るいませんけれども、いつか衛星放送でやっていたように、ミャンマーかどこかでボランティアで野球チームを支援している例がありました。あちこちで野球を広げることによって、またオリンピックに野球復活とかいうことも含めて、スポーツとか文化の側面も含めて、私自身はそういう途上国の現場の仕事の経験はございませんけれども、実際においでになると、教育面のニーズだけではなくて、学校づくりでお手伝いに行ったつもりが、風邪を引いたから頓服はないかとか、家族関係がややこしくて、こんなことの相談はどうだとか、多分よろずいろいろなニーズがあるんだと思うんです。
 それを、いや、うちは知らないから別の人に聞いてとか、日本はそこまでやっていないよと言うわけにはいかないので、トータルでどう相手の目線に立った支援のネットワークをつくるか。自分ができなければ、ここでちょっと相談するから待ってねとかいうことも含めて、いろいろな知恵が出てくるかという気がしております。
 それから、荒木さんが最初お話しになったのを聞き間違いでなければ、日本の教育協力でそんな立派なものがあるのかという反省点は確かにあるんですけれども、総体として、初中教育は世界に冠たるものと言われながらも、例えば最近はあまり本を読んでくれないとか、幾つかの問題もあります。大学教育はほんとうにそんなにすぐれているかとなると忸怩たるものがありますが、それは人により、大学により、学校により違うわけですから、多分できるところでどう応えていくかというのが大事なのかなという気がいたしました。
 いずれにしましても、相手の目線で、しかも、教育とか、文部科学省とか、政府とか、そういう仕切りを自己限定しないで、トータルでいろいろな議論をしながら、結果として相手国、相手側に喜ばれるような援助の仕組み、援助の手だてをどうするかというのが今まで以上に充実できればという気がいたしました。そういう意味で、外務省さんとか、JICA(ジャイカ)、JBIC(ジェイビック)さんとか、関係の方々も一緒のテーブルでご議論するのは大変有意義なことだと思っております。

【木村座長】
 どうぞ、佐渡島さん。

【佐渡島参事官(外務省)】
 果たして適当かどうかよくわかりませんけれども、これは私の仕事の経験から、周りの国、出先で仕事をしていますと、日本の企業の方が、中間管理職の人材がいつも足らなくなると大概おっしゃいます。私には、こうした人材が途上国のマーケットの中で恒常的に不足しているように見えるんですけれども。逆に言うと、中間管理職の方の賃金は、トップマネジメント、そのラインの方、あるいはサービス業だったら別の呼び方があるのかもしれませんが、高いです。ということは、逆に、ひっくり返すと供給量が少ない。よくよく周りを見渡して見ると、トップワン、高等教育のところから生み出されるところの人材の供給量というのは、マーケット全体ではわりとある。地域全体で見ると、ラインのところもありますと。そうすると、むしろ、真ん中のところがどちらかというと足らないような気がするんです。
 ところが、振り返って日本を見ると、日本というのはバランスよくどこにでも人がいる。それはどうしてかとよく考えてみて、それを周りの途上国の人に、ここのところもちゃんとやった方がいいのではないんですかと提案してあげて支援してあげるというのは、周辺国のマーケットの足腰を強くしていくのと同時に、日本のビジネスの方が外国に出ていったときに、必要な人材の調達がよりやさしくなるという一石二鳥の話としてあり得ないだろうかというのを思ったんですけれども、いかがでしょうか。

【木村座長】
 どうぞ。

【工藤(高)委員】
 只今、佐渡島さんがおっしゃったことに対してですが、確かにトップのほうは、かなりハイレベルな高等教育を受けた方々がなると思うし、ある意味ではマネジメントですから、そういう方々が必要ですね。
 よく言われることは、例えば工場だとすると、熟練工がいない。従って、それは教育の分野と違うかどうかわかりませんけれども、日本の企業の担当者が行って手とり足とり教えることになる。場合によってはAOTSのスキームを通して日本へ呼んで、技能訓練をさせざるをえない。
 だから、いろいろな国々が日本企業に投資してくれという際に、この人材面、特に熟練技術者がどれだけいるかということが一つのポイントになると思います。だから、そういう意味で、途上国というのはその教育が欲しいのではないでしょうか。
 途上国側の期待が大きいにもかかわらず、それはビジネス側のオリエンテッドだから、政府ベースではやれないとしていますが、私はその辺は非常にグレーゾーンだと思うんです。途上国は非常に欲しているわけですから。ODAについては、サンキュー・ベリー・マッチ・ハウエバー、やっぱりインベストメントが欲しいというのが実情でしょう。インベストメントというのは途上国に人材がないと難しいと思います。
 だから、コマーシャル・ベースにかなり近いけれども、向こうの政府が欲しているという分野ですから、これに日本政府も協力する必要があるのではないでしょうか。

【木村座長】
 どうぞ。

【荒木委員】
 11ページ目で最初に木村座長が指摘されたJICA(ジャイカ)「アセアン工学系高等教育開発ネットワーク」、私もこの世界をやっていて少し勉強不足な点もありますけれども、こういう問題をよく考えると、予算がどこに所属しているかということでこういう話がスタートするのではないかと私は思うんです。
 これは、例えば日本のアジア政策、ASEAN(アセアン)政策というか、東アジア共同体構想も含めてパッケージで、今は21世紀は知の戦いと言われる時代で、ASEAN(アセアン)に対しても、我々が今まで行ってきた生産技術協力だけでなく高等教育も含めた知の戦いを挑まなければならない時代になっている。それにもかかわらず、個々ばらばらで戦略の体系がつくられていない感じです。
 だから、ASEAN(アセアン)共同体構想の中で、これからFTAとかEPAとかいろいろなことが経産ベースでは進んでいるけれども、今度は、一たん省から離れて縦割で動いていて、教育部門に入ると、それがあまり反映されないというのは、今の日本の安倍官房長官や、自民党の外交部会などでも議論されている戦略の司令塔構想というか、援助庁的なものが必要だということになってしまうので、もうちょっと外務省も中心に、この辺のところをトータルで考えて、省を超えて、知的なものの活用を図っていく。
 それでJICA(ジャイカ)、JBIC(ジェイビック)が実行するというフローチャートができていないような感じがします。今この世界で議論されているのは、戦略論とかいろいろ言っていることは、裏返すと、私は1月の論説、社説をずっと調べていたら、全国地方紙、中央紙の10紙ぐらいがこの戦略という言葉を使って社説を書いているんです。
 その裏は何かというと、やはり先ほど佐渡島委員が言った国民の危機感があって、日本は少子化傾向と高齢化の中で社会的なダイナミズムが喪失しつつあると。一方、アジアを見ると、すごいダイナミズムがある。その中で日本はどう生きていくかという大きなうねりの中で、マスコミのほうも、やはり戦略という裏には、日本はどうするのかという、日本の国益が張りついた感じが相当出てきて、それをODAにもぶつけて、それで頼むよと、こういう現状なんです。
 ですから、これはぜひノートしておきたいと思うんです。こういうのは戦略体系の中で知の活用ということを考えていかなければ意味がないのではないかと思った次第です。

【木村座長】
 どうぞ。

【廣里委員】
 私もODAの戦略という観点で言いますと、いわゆるODA二分論というのがあります。一つは、教育とか、保健とか、環境とか、グローバルな課題にどう日本が対応するかということだと思うんです。これは、平成14年の懇談会提言以降、貧困削減戦略体制の中での一般財政支援をどうするとか、あるいは、教育に限ってもセクター・プログラム支援をどうするとか、そういったいろいろな議論が出てきていますが、その中でどういうふうに日本が改善策を出しつつ貢献するかというところが、まだちょっと弱いかなと思います。ただ、ベトナムなどの例では、貧困削減に非常に重点を置いていた戦略が、日本のアドバイスなりで、成長という観点を入れた政策対応ができていったと聞いています。そういった意味で、一つは、グローバルな課題にどう戦略的に対応するかということ。
 もう一点は、今のアジアのダイナミズムの話です。特に、私はアジア開銀のメコン地域局にいたんですけれども、東南アジアとの戦略的なパートナーシップというのをどう構築し、強化するかというのが非常に気になっています。その中で、ASEAN(アセアン)の現加盟国ではなくて、新たに加盟したミャンマー、インドシナ3国のベトナム、ラオス、カンボジア、それとASEAN(アセアン)の現加盟国との格差というのがやはり問題かなと思います。こういったことも戦略的に対応していかないと。また日本のODAを卒業して、その穴をどこが埋めているかというと、オーストラリアであったり、アメリカであったり、イギリスであったりです。ODAを卒業していくASEAN(アセアン)の中進国を含めて戦略的パートナーシップをつくっていく、あるいはASEAN(アセアン)の地域格差に対処していくというふうなことが、もう一つの戦略というか。議論の範囲ということがあれば、そういったグローバルな課題と、特に東南アジアとの戦略的なパートナーシップをどうつくっていくのかを考えていただけたらと思います。

【木村座長】
 ありがとうございました。どうぞ。

【内海委員】
 先ほど、私はポスト・プライマリーに関してお話いたしましたが、Education For Allは世界的な大きな目標ですので、それを達成するためには、3ページのグラフにもございますように、サブサハラアフリカを中心としたアフリカ地域に対する支援を、遠い日本としても積極的に考えていかなくてはいけないと思います。ちょうど今エチオピアで会議が開かれておりますが、日本のアフリカに対するプレゼンスというのは年々大きくなってきておりますが、まだまだ足りないと思います。
 そういう意味で、アフリカの場合にはEducation For Allだけではなくて、スーダン、アンゴラ、コンゴ、ルワンダ等のように、ポスト・コンフリクトに対する対応とEducation For Allに対する対応の2つの戦略を立てていかないといけないのではないかと思います。それに対する教育協力を、是非ディスカッションの中に加えていただければと思います。

【木村座長】
 ありがとうございました。どうぞ。

【片山委員】
 今の内海先生の意見にエコーを出したいと思うのです。私は教育支援をやっているNGOのメンバーの意見をよく聞くことがあるものですから、多分現場での経験をこの懇談会の中でいろいろ反映するようにという趣旨で、私が委員に選ばれたのではないかと思います。そういう意味では、確かにアフリカの教育支援というのはNGOの中でも大きな課題ではあるのです。
 ただ、日本のNGOがアフリカ地域の、教育だけではなくて、支援しているのは比較的数が少ないというか、経験もあまりないという現状の中で、逆に今アフリカにもっと集中していかなければいけないという議論が出ております。ぜひ先生がおっしゃったことをこの懇談会の中で、アフリカ支援、教育支援をどうするのかというのを話し合っていただきたいと思います。それが1点です。
 それから、もう一つは、今まであまり出ていないところなのですけれども、NGOで現場でやっていく教育支援も含めて、いろいろな支援をやっていく中で感じてくるのは、政策レベルでの支援も必要だということと同時に、現場の具体的な働き方、支援の仕方についてもっといろいろ考えなければいけないということが出て来ます。さらに、そういうことを通して、今回の懇談会の一番最後の「その他」のところになるのですが、日本の社会の中でそれをどういうふうにフィードバックしていき、また、日本の社会の中でこういう国際協力あるいは、教育支援というものを認知していただくかというのが非常に大きな課題だということを、現場にいればいるほど、日本に帰ってきて感じることが多いわけです。
 例えば、1つの例としては、アフガニスタン支援のときに日本のNGOとユニセフが連合してバック・トゥー・スクールという、子供たちを学校に返すという運動をやりました。そのときに、これはNGOが現場で、あるいはユニセフと協力してやっているだけではなくて、もっと日本の人たちに理解していただく中で、支持の中でやっていく必要があるということを非常に感じました。
 幸い、そのときに文部科学省のバックアップがすごくありまして、あのときはたしか全国の教育委員会だったと思いますけれども、学校の中でこういうことについて取り組んでくださいというようなレターを出していただいたのです。それは非常に大きな反響がありまして、NGOに対して日本の多くの小学校、中学校から、例えば募金が集まったり、資料を送ってくださいということで、各学校で報告をしたりしたわけです。
 私も幾つかの小学校を回ったりもしました。そういう中で、ここに出ている国際理解教育、開発教育というような分野で、これをもう少し体系的に位置付ける必要があるのではないでしょうか。ここでは総合学習の時間ということになっていますけれども、今、地方の小学生、中学生、高校生が東京に来たときに、東京にある各NGOの事務所を訪問しているのです。
 子供たちが、単に修学旅行でいろいろなところに行くだけではなくて、NGOにも行ってみようということです。それから、出張で来てくださいということで、小学校、中学校に行って講演する機会も非常に増えております。むしろ、多過ぎて対応ができなというぐらいの状況でもあるのです。
 それでも、もう少しこの辺を体系的に、日本の若い人たちに途上国のこと、日本の社会全体と途上国の関係がどうなっているのかということをプログラムの中にしっかりと位置づけていくことが大切ではないでしょうか。教育支援というのは息の長い話ですので、日本がこれから国際社会の中にどういうふうな貢献ができるか、自分がどういうふうにかかわっていったらいいかということを若いうちにもう少し情報を提供するという意味から、この総合的な学習の時間の活用ということを、もうちょっと何か一歩深められないかなということを、もし時間があればディスカッションしていただければと思います。

【木村座長】
 ありがとうございました。今、片山さんがおっしゃったことは、中教審で現在議論しておりますことと深く関係しています。私、教育課程部会の部会長をしておりまして、間もなく審議経過のまとめを出すことになっています。そんな中で、私自身も非常に煩悶しているのですが、今また総合学習をどうするかということが問題になっています。
 教育課程部会の有力な委員である浅利慶太さんなどは、これによって初めて外の世界と学校がつながったのだから、絶対に総合学習の時間を減らすなと。ご存知だと思いますが、浅利さんはきれいな日本語だとか、ドラマのようなものを子供たちに小さいときから親しんでもらおうということでいろいろアクティビティーをやられています。大変な反響だと伺っています。また、日経団連も総合学習ができて初めて学校と経済界、外の世界がつながったとおっしゃっています。そういう状況ですが、片やこれを減らせというプレッシャーもあって、私は部会長としてどうしようかと思って困っていますので、今おっしゃったことは非常によく理解できます。
 それでは、時間が参りましたので、本日はそこまでとしたいと思います。今、最後に片山さんがおっしゃった国内での認知の問題ですが、15ページの「国立大学における国際開発協力への意識」の所をごらんいただきたいと思います。JICA(ジャイカ)等への協力を表明中の大学、これは軽い協力だと思うのですが、11の大学。国際開発協力プロジェクト受託推進の計画を表明中の大学、これはかなり積極的だと思われますが、全部で11しかないんです。これが問題だと思います。
 私、東京工業大学の工学部長をしておりましたときに、8大学の工学部長懇談会というのがありました。オランの科学技術大学の立ち上げについて、当時の京都大学の中川工学部長が、一生懸命やられて、それを8大学の工学部長懇談会に持ってこられた。議論の結果、8大学の工学部長のレベルで大いに協力しようということになりました。
 ところがそれを、東京工業大学へ持ち帰りましたら、先生方の反応は極めて非常に冷淡でした。自分達は研究で忙しくて、そんなことをやっていられないと、そういう反応でした。私は非常に困りまして、必至に説得して何人かの先生方にお手伝いをいただいたんですけれども、完全にフルボランティアでした。
 その辺の雰囲気を直していかないといけないと思います。この11と29を足すと40と、ほぼ半分というご説明があったのですが、これは中期計画ですから大学として出すんですが、実際にこれをお出しになった大学の中身がどうなっているかという点が問題です。つまり、一般の先生方がほんとうに理解を示しているかということになると、甚だ心もとないということです。その辺の雰囲気、これは多分、今片山さんがおっしゃったように小学校からの教育に関係してくるのだと思うのですが、その辺のところから、やっていかなければいけないのかなと思います。
 それでは、時間も参りましたので議論はこれで閉じたいと思います。大変大所高所からのご議論をいただきまして、ありがとうございました。はっきりとした結論は出せませんが、佐渡島さんのおっしゃった知のマーケット、そういうものをはっきり形成する必要はあると思います。私が意識していた知のマーケットよりも、佐渡島さんがおっしゃったのはもっと広い意味のマーケットだと思いますけれども、その辺をきちんとしていく必要があろうかと思います。
 ということは、大学なり、研究所なり、そういう機関が国際協力をどうやっていくか、それがやれるシステムをどうつくっていくか、そのような点を議論するのが残りの役割だと思いますので、今後ともひとつよろしくお願いしたいと存じます。
 かなり急ピッチで会議が行われますが、よろしくお願いしたいと思います。
 それでは事務局、今後の日程についてよろしくお願いいたします。

7 事務連絡

 次回は、3月8日(水曜日)13時から15時、文部科学省省議室に於いて開催する。

―了―

お問合せ先

大臣官房国際課国際協力政策室

(大臣官房国際課国際協力政策室)