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資料16

我が国の教育経験について

[家庭科教育]



我が国の家庭科教育の経験と特徴



  家庭科教育の概要
(1) 教科「家庭」について
   昭和22年の新教育制度発足により,民主的な家庭建設ができるようにすることを目指した教科として,小学校と高等学校に新教科「家庭」を創設した。それまでの女子教育として位置付いた「家事裁縫」は教科名称・目標・内容ともに改められた。中学校においては,戦前の職業の中の1科目,職業・家庭科,技術・家庭科と変遷し,新学習指導要領では,技術・家庭科の家庭分野として位置づけられている。
(2) 家庭科教育で育てる資質・能力
  家庭科では,家庭生活を中心とする人間の生活を健康で文化的に営むことのできる能力,生活課題を解決し生活を創造することのできる能力の育成を目指している。
そのため,育てる資質・能力を次のようにとらえることができる。
1   日常の家庭生活に関心をもち,生活の現実認識をして見直すことができる。
2   生活の根底にある原理・原則について,科学的に追求して理解する。
3   実際の生活の場で実践できる技術・技能を身に付ける。
4   どうすればよいかを判断して,意思決定しよりよい生活を創造することができる。
(3) 小・中・高等学校の家庭科の目標と内容
  家庭科で育てる資質・能力の育成を目指し,児童生徒の発達に対応して,小・中・高等学校の目標及び内容を設定している。新学習指導要領の目標と内容の概要を記す。

  
小学校  家庭 中学校技術・家庭 家庭分野 高等学校  家庭
  衣食住などに関する実践的・体験的な活動を通して,家庭生活への関心を高めるとともに日常生活に必要な基礎的な知識と技能を身に付け,家族の一員として生活を工夫しようとする実践的な態度を育てる。      実践的・体験的な学習活動を通して,生活の自立に必要な衣食住に関する基礎的な知識と技術を習得するとともに,家庭の機能について理解を深め,課題をもって生活をよりよくしようとする能力と態度を育てる。      人間の健全な発達と生活の営みを総合的にとらえ,家族・家庭の意義,家族・家庭と社会とのかかわりについて理解させるとともに,生活に必要な知識と技術を習得させ,男女が協力して家庭や地域の生活を創造する能力と実践的な態度を育てる。
家庭生活と家族,衣服への関心,生活に役立つ物の製作,食事への関心,簡単な調理,住まい方への関心,物や金銭の計画的な使い方,家庭生活の工夫 A生活の自立と衣食住(略)
B家族と家庭生活(幼児の発達と家族,家庭と家族関係,家庭生活と消費など)  
「家庭総合」
人の一生と家族・家庭,子どもの発達と保育・福祉,高齢者の生活と福祉,生活の科学と文化,消費生活と資源・環境,ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動   


2  家庭科教育の変遷  
(1) 明治時代
〔初等教育段階〕
   明治5年小学校女子には「手芸」(裁縫と行儀作法)が置かれた。明治12年「教育令」で女子には「裁縫」と改められた。その後,高等科で「家事経済」(衣服・洗濯・什器・食物・割烹・理髪・出納)が設置されたが,5年間で廃止された。女子教育として「裁縫」が重視され,明治24年には「小学校教則大綱」により「裁縫」の教授内容が明確化された。
〔中等教育段階〕
  明治19年東京高等女学校「生徒教導方要項」に女子教育の体系だった案が示された。「裁縫」「礼節」「家政」(養生,住宅,什器,飲食,割烹,衣服洗濯,理髪,出納,備役,応対,育児,看病)。その後,「高等女学校規程」が公布され,正科目として「家事(衣・食・住・家事衛生・家計簿記・育児)」「裁縫」,随意科目として「手芸」が示された。
明治36年「高等女学校教授要目並びに教授上の注意」が公布され,家事裁縫の教育が充実し,女子教育として,婦芸及び婦徳の涵養を目指す家事裁縫の教育がなされた。
(2) 大正時代から戦前まで
〔初等教育段階〕
  大正8年,理科に含まれていた「家事」が独立し,高等小学校では「家事裁縫」が必修,「家事」が選択科目となった。昭和初期は大きな改正なし。昭和16年「国民学校令」「同施行規則」により,家事裁縫を「芸能科」に統合した。
〔中等教育段階〕
  大正9年「高等女学校令」「同施行規則」改正により,5年制にして男子の高等学校に匹敵する教育を実施することとし,「家事裁縫」「裁縫」の授業時数を減少。大正10年「職業学校規程」公布。裁縫科を中心とする女子職業学校,女子専門学校ができた。戦時下の教育として,女子に「家政科」を重視。
(3) 戦後から現在まで
〔小学校〕
  昭和22年新教科「家庭」の創設。民主的な家族関係を根底とした家庭建設者の育成を目指し,5・6年男女共に履修させる。社会の変化や教育課題に対応して,目標と内容,授業時数などが改訂され現在に至っている。
〔中学校〕
  昭和22年新制中学校の発足時には教科名「職業」,26年改訂で「職業・家庭」となり,内容の改訂をしながら昭和36年まで。33年改訂(37年実施)で教科名を「技術・家庭科」と改め,内容については,37年から55年まで,男子向き(技術)と女子向き(家庭)で構成。52年改訂(56年〜平成4年実施)では,履修内容について男女の相互乗り入れを実施。平成元年改訂(平成5年〜13年実施)では,履修領域に男女による差異を設けないこととなった。平成10年改訂(平成14年実施)では,技術分野と家庭分野の構成としている。
〔高等学校〕
  昭和22年新教科「家庭」の創設。23年(24年〜30年実施)「一般家庭」14単位:被服,家庭経済,家庭管理,家族,食物,衛生,育児,住居の7分野で構成。選択履修。
31年改訂(31年〜37年実施)では,「一般家庭」を「家庭一般」に改め被服,家庭経営,食物,保育・家族の4分野構成。女子は4単位履修が望ましい。その後,35年改訂(38年〜47年実施)では,普通科女子は「家庭一般」4単位必修。45年改訂(48年〜56年実施),53年改訂(57年〜平成5年実施)では,すべての女子は「家庭一般」4単位必修。平成元年改訂(平成6年〜14年実施)で,家庭科は男女とも必修となり,「家庭一般」「生活技術」「生活一般」から1科目4単位必修となった。

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