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資料15

我が国の教育経験について

[環境教育]



我が国の初等中等教育における環境教育について


   環境教育推進の背景
  我が国の学校における環境教育は社会科、理科、保健体育科などで環境に関する内容
が取り扱われていたが、一般的には公害問題などを契機として、昭和40年前後から注目されるようになった。学習指導要領には、昭和44年の中学校学習指導要領の改訂において保健体育科に「公害と健康」が取り上げられ、さらに昭和52年の中学校学習指導要領の改訂において、社会科で「公害の防止など環境の保全」、理科で「人間と自然」、保健体育科で「健康と環境」などが、また、昭和53年の高等学校学習指導要領の改訂では、「現代社会」で「人類と環境」、「理科1」で「人間と自然」、「保健」で「健康と環境」の内容などが取り上げられ、環境教育にかかる内容が充実されるようになった。
  平成元年の小・中・高等学校学習指導要領の改訂では、多くの教科、道徳、特別活動において、環境教育にかかわる内容が重視されている。中でも、小学校低学年において「生活科」が新設された。また、環境教育は環境にかかわる内容の理解だけにとどまらず、環境問題の解決に必要な能力を育成することが重要であり、社会の変化に主体的に対応できる能力や態度の育成、体験的な学習や問題解決的能力の育成が強調された。

   新学習指導要領(H10改訂)における改善のポイント
  児童生徒が環境についての正しい理解を深め、責任をもって環境を守るための行動が
とれるようにすることは極めて重要であり、上記1にあるとおり、これまでも、各学校において、社会科、理科、家庭科などの教科や道徳、特別活動など、学校の教育活動全体を通じて指導が行われてきた。平成10年に改訂(高等学校は平成11年)した新学習指導要領においても、理科などの各教科等における環境に関わる内容の一層の充実を図るとともに、新設された「総合的な学習の時間」において、体験的・問題解決的な学習を通して、環境問題について、教科横断的・総合的に学習を深めることができるよう改善充実が図られたところである。
<例>
    ・小 学校理科(6年)
…自然環境を大切にする心やよりよい環境をつくろうとする態度
    ・中 学校社会科(公民的分野)
…地球環境、資源・エネルギー問題について課題学習
    ・中 学校理科(第2分野)
…実際に身近な自然環境を調べる活動
    ・高 等学校家庭科
…環境負荷の少ない生活を目指して生活意識や生活様式を見直すこと
    ・総 合的な学習の時間(小・中・高)
…体験的・問題解決的な学習を通して、環境問題について、教科横断的・総合的に学習



新学習指導要領における環境教育に関わる主な内容について

   小学校 中学校 高等学校
社会科、
公民科
(3・4学年)
飲料水,電気,ガスの確保や廃棄物の処理と自分たちの生活と産業とのかかわり


(5学年)
公害から国民の健康や生活環境を守ることの大切さ
国土の保全や水資源の涵養のための森林資源の働き
(地理的分野)
環境やエネルギーに関する課題

(公民的分野)
公害の防止など環境の保全
地球環境,資源・エネルギー問題について課題学習
(現代社会)
公害の防止と環境保全
地球環境問題などについて課題学習

(政治・経済)
○公害防止と環境保全
理科   (6学年)
自然環境を大切にする心やよりよい環境をつくろうとする態
(第1分野)
環境との調和を図った科学技術の発展の必要性
人間が利用している  エネルギーには水力,火力,原子力など様々あること,エネルギーの有効利用の大切さ

(第2分野)
自然環境を調べ,自然環境は自然界のつり合いの上に成り立っていることの理解
自然環境保全の重要性の認識
(理科総合A)
化石燃料と原子力及び水力,太陽エネルギーなどの特性や有限性及びその利用

(理科総合B)
水や大気の汚染,地  球温暖化,生物の多様性などを取り上げ,生物と環境とのかかわり,地球環境の保全の重要性などを扱
生活科   (1・2学年)
自分と身近な動物や植物などの自然とのかかわりに関心をもち、自然を大切にすること
    
家庭科、
技術・家庭科   
(5・6学年)
環境に配慮した自分の家庭生活の工夫
(家庭分野)
自分の生活が環境に与える影響について考え,環境に配慮した消費生活の工夫
(家庭基礎・家庭総合・生活技術)
環境負荷の少ない生活を目指して生活意識や生活様式を見直すこと
体育、
保健体育  
(3・4学年)
健康に過ごすためには、生活環境を整えることが必要であること
  
(保健分野)
環境の保全に十分配慮した廃棄物の処理の必要性
地域の実態に即して公害と健康の関係を取り扱う
(保健)
人間の生活や産業活動は,自然環境を汚染し健康に影響を及ぼすこともあることこのための様々な対策
学校や地域の環境を健康に適したものとするよう基準が設定され,環境衛生活動が行われていること
道徳    (5・6学年)
○自然環境を大切にする
○自然の愛護   
総合的な学習の時間
体験的,問題解決的な学習を行う
体験的,問題解決的な学習を行う    体験的,問題解決的な学習を行う   

      は新学習指導要領において新たに追加



「総合的な学習の時間」について
1   趣旨
  自ら課題を見付け、自ら学び自ら考え、問題を解決する力など「生きる力」を育てること
  
  各教科等で身に付けた知識や技能を相互に関連付け、総合的に働くようにすること

2   学習活動
  各学校は、国際理解、情報、環境、福祉・健康などの教科横断的・総合的な課題に関する学習などについて、地域や学校、児童・生徒の実態等を踏まえ、創意工夫を生かした学習活動を実施
  
  自然体験やボランティア体験などの社会体験、観察・実験や見学・調査などの体験的な学習、問題解決的な学習を積極的に取り入れるとともに、地域の人々の協力や地域の教材、学習環境を積極的に活用

3   授業時数
1  小学校は第3学年以上に週当たり3単位時間程度
2  中学校は各学年週当たり2単位時間以上
3  高等学校は卒業までに3〜6単位



学校における環境教育推進のための施策


平成14年度予算額(13年度予算額)
教育内容及び指導方法の改善   

環境のための地球学習観測プログラム(GLOBE)モデル校の指定
1,357万円(1,357万円)
アメリカ合衆国の提唱に係る「環境のための地球規模の学習及び観測(GLOBE)計画」に参加し,児童生徒への興味・関心を高めるための指導方法の研究,普及等を図るため,モデル校を指定する。
     (平成13年度指定  24校)

教員の指導力の向上   

環境教育指導資料の作成 (平成13年度から国立教育政策研究所教育課程研究センターにおいて実施)
学校における環境教育の意義と役割,学習指導要領における環境教育に関する内容を解説するとともに,指導の実践例を掲載し,学校における環境教育の推進に資することを目的として,教師用指導資料を作成する。
    (新学習指導要領に対応した環境教育指導資料を各学校段階ごとに編集し順次刊行予定(小学校編,中学校編,高等学校編))

環境教育担当教員講習会の開催 (平成13年度から独立行政法人教員研修センターにおいて実施)
学校における環境教育に関する指導内容,指導方法等に関する講習会を開催し,環境教育を担当する教員の資質の向上を図る。
    (平成13年度予定  全国2会場  各4日間  計152名)

家庭・地域との連携及び啓発・普及   

環境教育推進モデル市町村の指定
3,137万円(3,137万円)
地球環境問題や都市・生活型公害などの環境問題の解決に向けた循環型社会の形成を目指し,学校・家庭・地域が一体となった環境教育の推進に取り組む市町村を指定する。
    (平成13年度指定  36市町村)

環境学習フェアの開催
2,413万円(2,413万円)
学習成果の発表,教員による研究協議会,産学官の連携による研究発表・展示等を実施し,児童生徒,保護者,産業界や大学関係者など様々な人々が環境について共に考える場を設ける。
(平成14年度(第5回)は石川県で開催予定)

情報提供体制の整備   

環境教育に関する総合的な情報提供体制の整備2,000万円(新規)
学校の全ての教室にコンピュータ・インターネット環境が整備される2005年度に向けて,児童生徒や教員が活用できる環境教育情報提供システムを構築するため,環境教育に関する実態やニーズの把握,望ましい情報提供の在り方等について検討を行い,その成果を教育情報ナショナルセンターの整備に生かすなど,環境教育に関する総合的な情報提供体制の整備を推進する。

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